説明

拡張用子機システム

【課題】パイロット信号を用いて利得を調整することにより、精度良くケーブルロスを補正するとともに、中継装置アダプタと拡張用子機装置とが分配器を介して接続された場合でも、分配器による分配の際に生じる損失を精度良く補正すること。
【解決手段】親機制御部201は、切り替え部205における設定が測定モードの場合に、パイロット信号発生部203で生成したパイロット信号を出力させる。パイロット検波部215は、受信レベルを検出する。制御部216は、パイロット信号を検出するとともに、検出したパイロット信号の受信レベルに基づいて減衰率を設定する。可変減衰器206は、制御部216で設定した減衰率で上り信号及び下り信号を減衰させることにより利得を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋内など劣悪な電波環境下における無線通信を可能とする拡張用子機システム及び信号中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線中継装置は、リピータ、またはブースタともいわれ、電波不感帯エリアを簡易に無線通信可能エリアにするために、基地局装置から送信された信号を受信及び増幅してカバーエリア内に送信するとともに、カバーエリア内に位置する通信端末装置から送信された信号を受信及び増幅して基地局装置に送信する装置である。
【0003】
また、電波不感帯エリアを通信可能エリアとする装置として、特許文献1に示される移動体通信の中継装置が知られている。特許文献1において、子機側1Aでは、入出力端子2、配線用同軸ケーブル3−0、3−1、・・・、3−(n−1)及び高周波結合器4−1、4−2、・・・、4−nを介して各子機が備えるアンテナモジュール6−1、6−2、・・・、6−nが縦続接続されている。
【0004】
このような移動体通信の中継装置において、子機側1Aに複数の子機(アンテナモジュール)が縦続接続されている場合、各子機から出力される下り回線系の送信電力は、すべての子機に対して一定とするのが望ましい。そこで、高周波結合器4−1、4−2、・・・、4−nにおける各子機との結合度Ciを、それぞれ配線用同軸ケーブル3−0、3−1、3−2、・・・、3−(n−1)、15−1、15−2、・・・、15−nの引き回し長等に応じて、独自の値に設定する。このようにして各子機に下り回線系の送信電力を配分した場合、アンテナ10から送出される電力は、配線用同軸ケーブル15−1〜15−nの長さの偏差だけに依存することになるので、子機を分散配置する際の同軸ケーブル配線長を考慮すれば、何等の問題を生じさせることなく、すべての子機に対してほぼ同レベルの送信電力を供給することができる。
【0005】
さらに、特許文献1の図6に示す移動体通信の中継装置は、下り回線系のアンテナ直下に、BPF9と利得可変機能を有するアンプ12とを配備し、アンプ12の出力電力を検出回路12aの検出信号によって自己制御するようにした。これにより、同軸ケーブル長に依存する下り回線系の送信電力の偏差は、個々の子機のアンプ利得を調整することにより改善することができる。
【特許文献1】特開2004−215191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置においては、子機の利得を補正するための利得調整用の信号源が開示されておらず、精度良くケーブルロスを補正することができないという問題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、パイロット信号を用いて利得を調整することにより、精度良くケーブルロスを補正することができるとともに、中継装置アダプタと拡張用子機装置とが分配器を介して接続された場合でも、分配器による分配の際に生じる損失を精度良く補正することができる拡張用子機システム及び信号中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の拡張用子機システムは、中継装置アダプタと、前記中継装置アダプタと伝送路を介して接続される拡張用子機装置とを具備する拡張用子機システムであって、前記中継装置アダプタは、パイロット信号を生成するパイロット信号生成手段と、生成した前記パイロット信号の前記拡張用子機装置への伝送と、中継装置が受信した信号の前記拡張用子機装置への中継及び前記拡張用子機装置が受信した信号の前記中継装置への中継とを切り替える切替手段と、を具備し、前記拡張用子機装置は、前記伝送路を介して受信した信号の受信レベルを検出する受信レベル検出手段と、検出した前記受信レベルに基づいて前記パイロット信号を受信したか否かを判定するパイロット信号受信判定手段と、前記パイロット信号受信判定手段により前記パイロット信号を受信したと判定した場合に、受信した前記パイロット信号の受信レベルに基づいて前記中継する信号の利得を調整する利得調整手段と、を具備する構成を採る。
【0009】
本発明の信号中継方法は、中継装置アダプタが、パイロット信号を生成するステップと、前記中継装置アダプタが、生成した前記パイロット信号の前記拡張用子機装置への伝送と、中継装置が受信した信号の前記拡張用子機装置への中継及び前記拡張用子機装置が受信した信号の前記中継装置への中継とを切り替えるステップと、前記拡張用子機装置が、伝送された信号の受信レベルを検出するステップと、前記拡張用子機装置が、検出した前記受信レベルに基づいて前記パイロット信号を受信したか否かを判定するステップと、前記拡張用子機装置が、前記パイロット信号を受信したと判定した場合に、受信した前記パイロット信号の受信レベルに基づいて前記中継による信号の利得を調整するステップと、利得を調整した前記中継による信号を前記拡張用子機装置から通信相手へ送信するステップと、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイロット信号を用いて利得を調整することにより、精度良くケーブルロスを補正することができるとともに、中継装置アダプタと拡張用子機装置とが分配器を介して接続された場合でも、分配器による分配の際に生じる損失を精度良く補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る拡張システム100の構成を示すブロック図である。中継装置アダプタ103及び子機104(拡張用子機装置)は、拡張用子機システム120を構成する。
【0013】
中継装置102は、アンテナ101で受信した基地局装置(図示省略)から送信されたRF信号である下り信号を中継装置アダプタ103へ出力する。また、中継装置102は、中継装置アダプタ103から入力した上り信号をアンテナ101より基地局装置(図示省略)へ送信する。ここで、中継装置102における上り信号と下り信号の中継を行なう状態を運用モードと呼ぶ。
【0014】
中継装置アダプタ103は、子機104〜110へ電源を供給するとともに、パイロット信号を生成する。また、中継装置アダプタ103は、生成したパイロット信号及び中継装置102から入力した下り信号の何れか一方を切り替えて出力する。また、中継装置アダプタ103は、子機104または分配器111から入力した上り信号を中継装置102へ出力する。ここで、中継装置アダプタ103が生成したパイロット信号を中継装置アダプタ103から子機104〜110に送信する状態を測定モードと呼ぶ。なお、中継装置アダプタ103の詳細な構成については後述する。
【0015】
子機104は、中継装置アダプタ103から同軸ケーブル112を介して入力した下り信号の利得を調整し、利得を調整した下り信号を配下の通信端末装置(図示省略)へ送信するとともに子機105へ出力する。また、子機104は、中継装置アダプタ103から同軸ケーブル112を介してパイロット信号を受信したか否かの判定を行い、パイロット信号を受信したと判定した場合に、受信したパイロット信号の受信レベルに基づいて上り信号及び下り信号の利得を調整する。なお、子機105〜110の構成は子機104と同一であるので、その説明は省略する。また、子機104〜110の詳細な構成については後述する。
【0016】
分配器111は、中継装置アダプタ103から入力した下り信号及びパイロット信号と電源電圧を子機107と子機109に分配する。また、分配器111は、子機107及び子機109から入力した上り信号を中継装置アダプタ103へ出力する。
【0017】
次に、拡張用子機システム120を構成する中継装置アダプタ103及び子機104の各々の構成について、図2を用いて説明する。図2は、拡張用子機システム120の構成を示す図である。
【0018】
最初に、中継装置アダプタ103の構成について説明する。
【0019】
親機制御部201は、後述する切り替え部205が運用モードから測定モードに切り替えられたことを検出した場合、電源制御部202に対して、電源を一旦オフにした後にオンとするように制御するとともに、切り替え部204に対して、パイロット信号を出力するように指示する。
【0020】
電源制御部202は、親機制御部201の制御により、同軸ケーブル112を介してDC/DC218に電源を供給するとともにパイロット信号発生部203へ電源を供給する。
【0021】
パイロット信号生成手段であるパイロット信号発生部203は、電源制御部202から電源を供給されることにより、パイロット信号を生成し、生成したパイロット信号を切り替え部204へ出力する。なお、パイロット信号発生部203で生成されるパイロット信号の振幅、周波数及び変調方式などは特に限定しない。
【0022】
切り替え部204は、親機制御部201の制御に従って、パイロット信号を出力する場合と出力しない場合とを切り替えること、即ちパイロット信号発生部203の出力のオンとオフとを切り替えることにより特定パターンの信号を生成し、生成した特定パターンの信号を同軸ケーブル112を介して可変減衰器206へ出力する。ここで、特定パターンを生成するのは、子機104に対して、子機104側の利得を調整する測定モードであることを確実に認識させ、誤動作させないためである。なお、切り替え部204は、パイロット信号を出力する場合と出力しない場合とを切り替える場合に限らず、パイロット信号の出力レベルを可変にすることにより特定パターンの信号を生成しても良い。
【0023】
切り替え部205は、運用モードと測定モードとを切り替え可能である。具体的には、切り替え部205は、運用モードに切り替えた場合には、中継装置102から入力した下り信号を同軸ケーブル112を介して可変減衰器206へ伝送する処理である中継を行うとともに、可変減衰器206から同軸ケーブル112を介して入力した上り信号を中継装置102へ伝送する処理である中継を行う。また、切り替え部205は、測定モードに切り替えた場合には、切り替え部204から入力したパイロット信号を同軸ケーブル112を介して可変減衰器206へ伝送する。
【0024】
次に、子機104の構成について説明する。なお、子機105〜子機110の構成は、他の子機から下り信号及びパイロット信号が可変減衰器206に入力し、可変偏衰器206から他の子機へ上り信号を出力するとともに、他の子機からDC/DC218に電源を供給される以外は子機104と同一であるので、子機104の構成のみを説明する。
【0025】
利得調整手段である可変減衰器206は、中継装置アダプタ103の切り替え部205から同軸ケーブル112を介して入力したパイロット信号及び下り信号と、共用器207から入力した上り信号とを、制御部216で設定した減衰率で減衰させることにより利得を調整する。そして、可変減衰器206は、減衰させたパイロット信号及び下り信号を共用器207へ出力するとともに、減衰させた上り信号を同軸ケーブル112を介して中継装置アダプタ103の切り替え部205へ出力する。また、可変減衰器206は、減衰率を固定または可変にすることが可能である。
【0026】
共用器207は、可変減衰器206から入力したパイロット信号及び下り信号を下り信号無線部208へ出力するとともに、上り信号無線部211から入力した上り信号を可変減衰器206へ出力する。
【0027】
下り信号無線部208は、共用器207から入力したパイロット信号及び下り信号を増幅して分配器209へ出力する。
【0028】
分配器209は、下り信号無線部208から入力したパイロット信号及び下り信号を二系統に分配し、二系統に分配したパイロット信号及び下り信号の一方を共用器210へ出力するとともに他方をパイロット検波部215へ出力する。
【0029】
共用器210は、分配器209から入力したパイロット信号及び下り信号を分配器212へ出力するとともに、分配器212から入力した上り信号を上り信号無線部211へ出力する。
【0030】
上り信号無線部211は、共用器210から入力した上り信号を増幅して共用器207へ出力する。
【0031】
分配器212は、共用器210から入力したパイロット信号及び下り信号を二系統に分配し、二系統に分配したパイロット信号及び下り信号の一方を切り替え部213へ出力するとともに他方を子機105へ出力する。また、分配器212は、切り替え部213から入力した上り信号を共用器210へ出力する。また、分配器212は、DC/DC218より電源を供給され、供給された電源をさらに後段の子機へ供給する。
【0032】
送信制御手段である切り替え部213は、運用モードの場合、後述する制御部216の制御に従って、分配器212から入力した下り信号をアンテナ214へ出力するとともに、アンテナ214から入力した上り信号を分配器212へ出力する。また、切り替え部213は、測定モードの場合、分配器212から入力したパイロット信号がアンテナ214に出力されないようにする。
【0033】
アンテナ214は、切り替え部213から入力した下り信号を図示しない通信端末装置へ送信する。また、アンテナ214は、通信端末装置から送信された上り信号を受信して、受信した上り信号を切り替え部213へ出力する。
【0034】
受信レベル検出手段であるパイロット検波部215は、分配器209から入力したパイロット信号及び下り信号の受信レベルを検出し、検出した受信レベルの情報である受信レベル情報を制御部216へ出力する。
【0035】
パイロット信号受信判定手段及び利得調整手段である制御部216は、パイロット信号を受信したか否かの判定の際、パイロット検波部215から入力した受信レベル情報に基づいて、パイロット信号を受信したか否かを判定する。制御部216は、特定パターンの信号を検出した場合に、パイロット信号を受信したと判定する。そして、制御部216は、パイロット信号を受信したと判定した場合に、パイロット検波部215から入力した受信レベル情報に基づいて、同軸ケーブル112における振幅損失であるケーブルロスに応じた減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。また、制御部216は、電源起動直後に、切り替え部213に対して、分配器212から入力したパイロット信号をアンテナ214へ出力しないように制御する。また、制御部216は、減衰率の設定を開始してから所定時間経過した際に、LED217に対して、測定モードが終了したことを報知するように制御する。また、子機107〜110の制御部216は、ケーブルロスに応じた減衰率に加えて、分配器111で下り信号を分配する際に生じた振幅損失である分配損に応じた減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。なお、制御部216の詳細な構成については後述する。
【0036】
LED217は、制御部216の制御により発光し、発光することにより測定モードが終了したことを外部に報知する。
【0037】
DC/DC218は、中継装置アダプタ103の電源制御部202から供給された電源を子機104の電源として供給する。また、DC/DC218は、中継装置アダプタ103の電源制御部202において電源をオフした際に電源がオフになるとともに、中継装置アダプタ103の電源制御部202において電源をオンした際に電源がオンになる。
【0038】
次に、制御部216の詳細な構成について、図3を用いて説明する。図3は、制御部216の構成を示す図である。
【0039】
AD部301は、パイロット検波部215から入力した受信レベル情報に基づいて、受信レベルをアナログ値からディジタル値に変換し、変換したディジタル値をメモリ303に順次書き込むとともにCPU部304へ出力する。
【0040】
不揮発メモリ302は、後述するCPU部304で設定された可変減衰器206の減衰率を記憶する。
【0041】
メモリ303は、AD部301から書き込まれたディジタル値を順次記憶する。また、メモリ303は、減衰率を設定する際に使用する基準値を記憶する。
【0042】
CPU部304は、AD部301及びメモリ303と連係してパイロット信号を受信したか否かの判定を行う。また、CPU部304は、メモリ303に記憶したディジタル値と判定基準となる特定パターンのディジタル値とを比較し、比較結果が一致する否かを判定することにより、パイロット信号を受信したか否かを判定する。そして、CPU部304は、パイロット信号を受信したと判定した場合に、AD部301から取得したパイロット信号の受信レベル情報とメモリ303から取得した基準値とに基づいて、減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。さらに、CPU部304は、電源起動直後に、切り替え部213に対して、分配器212から入力した信号をアンテナ214へ出力しないように制御する。また、CPU部304は、減衰率の設定が終了した際に、LED217に対して、測定モードが終了したことを報知するように制御する。
【0043】
次に、拡張用子機システム120における中継装置アダプタ103及び子機104の動作について説明する。最初に、中継装置アダプタ103の動作について説明し、続いて子機104の動作について説明する。
【0044】
図4は、中継装置アダプタ103の動作を示すフロー図である。
【0045】
中継装置アダプタ103の電源制御部202は、電源を起動する(ステップST401)。また、電源制御部202は、子機104〜110へ電源を供給する(ステップST402)。
【0046】
次に、中継装置アダプタ103の親機制御部201は、切り替え部205の切り替えに応じたモード判定を行う(ステップST403)。
【0047】
ステップST403において、親機制御部201は、測定モードであると判定した場合に、測定モードを実行する(ステップST404)。なお、測定モードにおける中継装置アダプタ103及び子機104の動作については後述する。
【0048】
一方、ステップST403において、親機制御部201は、運用モードであると判定した場合に、運用モードを実行する(ステップST405)。
【0049】
次に、中継装置アダプタ103の運用モード及び測定モードの各々の動作について詳細に説明する。図5は、運用モードの動作を示すフロー図である。
【0050】
運用モードの場合、親機制御部201は、切り替え部205を常に監視し(ステップST501)、モード判定を行う(ステップST502)。
【0051】
ステップST502において、運用モードと判定した場合に、親機制御部201は切り替え部205によって、パイロット信号発生部203で生成したパイロット信号を出力しないように制御するとともに、中継装置102から入力した下り信号を子機104の可変減衰器206へ出力するように制御する。また、親機制御部201は、切り替え部205の監視を継続する(ステップST501)。
【0052】
一方、ステップST502の判定で、運用モードから測定モードへと判定が変わった場合には、電源制御部202によって子機側への電源供給を一旦オフとした後に再度電源をオンとするような電源制御を行なう。(ステップST503)。
【0053】
次に、中継装置アダプタ103の測定モードの動作について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、測定モードの動作を示すフロー図であり、図7は、パイロット信号を示す図である。
【0054】
測定モードの場合、中継装置アダプタ103は、親機制御部201の制御により、パイロット信号発生部203で生成したパイロット信号を出力する。これにより、中継装置アダプタ103は、パイロット信号の送信を開始する(ステップST601)。
【0055】
次に、親機制御部201は、切り替え部204を使って制御を行うことにより、特定パターンのパイロット信号を送信することが出来る。(ステップST602)。
【0056】
次に、親機制御部201は、パイロット信号の送信を開始してから時間T1が経過したか否かを判定する(ステップST603)。
【0057】
時間T1が経過していない場合には、時間T1が経過するまでステップST602の処理を繰り返す。一方、時間T1が経過した場合には、親機制御部201は、モード判定を行う(ステップST604)。
【0058】
モード判定の結果、測定モードの場合には、ステップST602〜ステップST604の処理を繰り返し、運用モードの場合には、パイロット信号の送信を終了する(ステップST605)。
【0059】
パイロット信号は、図7に示すように、所定時間T1で特定パターンを有する信号である。パイロット信号発生部203より発信されるパイロット信号は、切り替え部204で出力のオンとオフとを繰り返すことにより生成される。また、パイロット信号は、切り替え部205の状態が測定モードである間は、繰り返し送信される。
【0060】
次に、拡張用子機システム120における子機104の動作について説明する。
【0061】
図8は、子機104の動作を示すフロー図である。
【0062】
子機104のDC/DC218は、中継装置アダプタ103からの電源の供給を受けて電源を起動する(ステップST801)。
【0063】
次に、子機104の切り替え部213は、入力した信号がアンテナ214へ出力しないように、分配器212とアンテナ214との接続を切断する(ステップST802)。なお、切り替え部213は、電源を起動する際には、常に分配器212とアンテナ214との接続を切断するように設定しておく。
【0064】
次に、子機104の制御部216は、測定モードを開始するか否かを判定するための処理を行う(ステップST803)。なお、測定モードを開始するか否かの判定方法については後述する。
【0065】
次に、制御部216は、ステップST803における処理の結果に基づいてモード判定を行う(ステップST804)。
【0066】
ステップST804における判定の結果、運用モードである場合は、切り替え部213は、制御部216の制御により、分配器212とアンテナ214とを接続する(ステップST805)。そして、子機104は、運用モードを実行する(ステップST806)。
【0067】
運用モードでは、子機104の制御部216は、可変減衰器206の減衰率を固定にし、可変減衰器206に対して、電源が切れるまで同じ減衰率で減衰を行うように制御する。
【0068】
一方、ステップST804における判定の結果、測定モードである場合は、子機104は、測定モードを実行する(ステップST807)。そして、切り替え部213は、測定モードの終了後に、制御部216の制御により、分配器212とアンテナ214とを接続する(ステップST805)。なお、測定モードの動作については後述する。
【0069】
次に、図8のステップST803における測定モードを開始するか否かの判定方法について、図9を用いて説明する。図9は、測定モードを開始するか否かの判定方法を示すフロー図である。
【0070】
測定モードを開始するか否かの判定では、最初に、パイロット検波部215は、DC/DC218からの電源の供給がオフからオンになった際に、測定モードを開始するか否かの判定を開始し、続いて入力した信号の受信レベルを検出する(ステップST901)。そして、制御部216は、検出した受信レベルに基づいて、入力した信号のタイミング判定を行なう(ステップST902)。なお、タイミング判定の方法については後述する。
【0071】
次に、制御部216は、タイミング判定の結果に基づいて、パイロット信号を受信したか否かを判定する(ステップST903)。
【0072】
そして、制御部216は、パイロット信号を受信していないと判定した場合には、運用モードを実行し(ステップST904)、パイロット信号を受信したと判定した場合には、測定モードを実行する(ステップST905)。
【0073】
次に、図9のステップST902におけるタイミング判定の方法について、図10を用いて説明する。図10は、タイミング判定の方法を示すフロー図である。
【0074】
制御部216のAD部301は、パイロット検波部215で検波した信号に対して、検出した受信レベルに応じたアナログ/ディジタル(以下「AD」と記載する)変換を行う(ステップST1001)。そして、AD部301は、AD変換することにより検出したN(Nは任意の自然数)個目のAD変換後のディジタル値(以下「AD値」と記載する)を制御部216のメモリ303に保存する(ステップST1002)。
【0075】
図11(a)〜図11(e)は、メモリ303を示す図である。メモリ303の上段の行がAD部301で検出したAD値を保存する領域であり、メモリ303の下段の行が基準AD値をあらかじめ保存する領域である。図11(a)に示すように、メモリ303は、「1010」からなる基準AD値をあらかじめ保存している。そして、AD部301は、メモリ303の上段の左端の1列目#1101にN個目のAD値「1」を保存する。
【0076】
次に、制御部216のCPU部304は、あらかじめ設定しておいたN+α(αは0以上の整数)回のAD変換が完了したか否かを判定する(ステップST1003)。
【0077】
ステップST1003において、N+α回のAD変換が完了していない場合には、CPU部304は、AD部301に対してAD変換を指示し、AD部301は、AD変換を行う(ステップST1001)。そして、AD部301は、AD変換することにより検出したN+1個目のAD値を制御部216のメモリ303に保存する(ステップST1002)。
【0078】
図11(c)に示すように、AD部301は、メモリ303の上段の左から2列目#1102にN+1個目のAD値「0」を保存する。
【0079】
このように、ステップST1001〜ステップST1003の処理を繰り返すことにより、AD部301は、図11(d)に示すように、メモリ303の上段の右から2列目#1103にN+α−1個目のAD値「1」を保存するとともに、右端#1104にN+α個目のAD値「0」を保存する。
【0080】
そして、CPU部304は、N+α回のAD変換が完了したか否かを判定し(ステップST1003)、N+α回のAD変換が完了した場合に、AD変換したN+α個のAD値と基準AD値とを比較する(ステップST1004)。
【0081】
次に、ステップST1004での比較の結果、CPU部304は、メモリ303に保存したAD値と基準AD値とが一致するか否かを判定する(ステップST1005)。
【0082】
AD値と基準AD値とが一致する場合、即ち図11(e)の場合には、CPU部304は、パイロット信号を受信したと判定し(ステップST1006)、タイミング判定を終了する(ステップST1007)。
【0083】
一方、ステップST1005において、AD値と基準AD値とが一致しない場合には、CPU部304は、あらかじめ設定した一定時間Tが経過したか否かを判定する(ステップST1008)。
【0084】
そして、ステップST1008において、CPU部304は、一定時間Tが経過したと判定した場合には、タイミング判定を終了し(ステップST1007)、一定時間Tが経過していないと判定した場合には、ステップST1001〜ステップST1008の処理を繰り返す。
【0085】
図12及び図13は、AD値と基準AD値との比較方法を示す図である。図12及び図13において、縦軸はディジタル変換後の受信レベルであり、横軸は時間である。また、図12(a)及び図13(a)の縦軸は受信レベルの実測値であり、図12(b)及び図13(b)の縦軸は受信レベルの既定値である。図12は、AD値と基準AD値とが一致する場合を示すものであり、図13は、AD値と基準AD値とが不一致の場合を示すものである。
【0086】
図12に示すように、パイロット検波部215で検出した受信レベルの時間推移によるパターン(図12(a)のパターン)と、既知のパターン(図12(b)のパターン)とが一致した場合に、CPU部304は、パイロット信号を受信したと判定する。一方、図13に示すように、パイロット検波部215で検出した受信レベルの時間推移によるパターン(図13(a)のパターン)と、既知のパターン(図13(b)のパターン)とが一致しない場合に、CPU部304は、パイロット信号を受信していないと判定する。
【0087】
次に、図8のステップST807における子機104の測定モードの動作について、図14を用いて説明する。図14は、測定モードの動作を示すフロー図である。
【0088】
測定モードの開始により(ステップST1401)、制御部216のCPU部304は、AD部301から取得した受信レベル情報であるAD値とメモリ303から取得した基準値である基準AD値とが一致するか否か(AD値=基準AD値)を判定する(ステップST1402)。
【0089】
検出したAD値と基準AD値とが一致する場合には、CPU部304は、ケーブルロス判定時間Tが経過したか否かを判定する(ステップST1403)。
【0090】
例えば、図1のように子機104に子機105及び子機106が縦接続されている場合、各子機104〜106の制御部216は、子機104、子機105、子機106の順番で可変減衰器206の減衰率を設定するとともに、子機104が減衰率の設定を開始してから子機106での減衰率の設定が終了するまでの時間をケーブルロス判定時間Tにする。なお、子機107及び子機108、子機109及び子機110についても同様のケーブルロス判定時間Tを設定する。
【0091】
ケーブルロス判定時間Tが経過している場合には、CPU部304は、可変減衰器206の減衰率の設定値を収束させる(ステップST1404)。
【0092】
次に、CPU部304は、収束させた可変減衰器206の最新の減衰率の設定値を不揮発メモリ302へ保存する(ステップST1405)。
【0093】
次に、CPU部304は、LED217に対して、測定モードが完了したことを報知するために点灯するように制御する(ステップST1406)。
【0094】
次に、切り替え部213は、CPU部304の制御により、分配器212とアンテナ214とを接続するように切り替える(ステップST1407)。
【0095】
次に、子機104は、測定モードを終了して運用モードへ移行する(ステップST1408)。
【0096】
一方、ステップST1402において、検出したAD値と基準AD値とが一致しない場合には、検出したAD値が基準AD値よりも小さいか否か(AD値<基準AD値)を判定する(ステップST1409)。
【0097】
検出したAD値が基準AD値よりも小さい場合には、CPU部304は、可変減衰器206の減衰量(ATT)を減少させる減衰率(調整値)を設定し(ステップST1410)、検出したAD値が基準AD値よりも小さくない場合は、検出したAD値が基準AD値よりも大きい場合なので、CPU部304は、可変減衰器206の減衰量を増加させる減衰率を設定する(ステップST1411)。
【0098】
また、ステップST1403において、ケーブルロス判定時間Tが経過していない場合には、ステップST1402、ステップST1403及びステップST1409〜ステップST1411を繰り返す。このようにして、CPU部304は、AD値と基準AD値とが一致するように可変減衰器206の減衰量を調整することにより、可変減衰器206にて、上り信号及び下り信号の利得を調整する。
【0099】
図14においては、段階的に減衰量を調整したが、これに限らず、制御部216は、受信レベルと減衰率とを関係付けた利得調整用情報をあらかじめ記憶し、パイロット検波部215から入力した受信レベルを用いて、利得調整用情報を参照することにより減衰率を選択し、可変減衰器206に対して、選択した減衰率で上り信号及び下り信号を減衰させることにより利得を調整するように制御しても良い。
【0100】
因みに、従来の移動体通信の中継装置である特許文献1の移動体通信の中継装置において、各アンテナモジュール6−1〜nの利得可変アンプ12は、結合器C1、C2、・・・、Cnを介して接続されている。即ち、特許文献1の移動体通信の中継装置では、各アンテナモジュール6−1〜nの利得可変アンプ12は、結合器C1、C2、・・・、Cnの後段に設けられている。一方、本実施の形態1の子機104では、図2に示すように、子機104の可変減衰器206は、分配器212の前段(分配器212の左側)に設けられている。このため、特許文献1の移動体通信の中継装置では、結合器C1から各アンテナモジュール6−1〜nの利得可変アンプ12までのケーブルロスを生じるケーブル長が、アンテナモジュール6−1〜n毎に異なるとともに、後方のアンテナモジュールほどケーブルロスが累積した値になるので、後方のアンテナモジュール6−1〜nほど精度良く利得の調整を行うことが困難になる。一方、本実施の形態1では、図2のような構成にしたことにより、後方に接続された子機において、同軸ケーブル112〜118におけるケーブルロスが累積することはないので、システム内の各子機104〜110での利得の調整をほぼ同じ設定値で行うことができ、同じ特性の子機を複数用いてシステムを構成することができる。
【0101】
このように、本実施の形態1によれば、パイロット信号を用いて利得を調整することにより、各子機に入力するまでに生じたケーブルロスを補正をすることができる。また、本実施の形態1によれば、各子機のアンテナからの出力レベルをほぼ一定にすることができる。また、本実施の形態1によれば、分配器212とアンテナ214との接続を切断してパイロット信号がアンテナ214から送信されないようにするので、通信端末装置に対する干渉を防ぐことができる。また、本実施の形態1によれば、パイロット信号の伝送を開始する際に、子機は必ず電源起動直後の状態になっているため、パイロット信号と、上り信号及び下り信号との誤判定を防ぐことができる。また、本実施の形態1によれば、直列に接続されている子機における利得調整が全て終了するまでは利得の調整を継続するので、直列に接続されている全ての子機において、最適な利得の調整を行うことができる。また、本実施の形態1によれば、設定した減衰率の設定値を不揮発メモリ302に記憶するので、停電等により予期せぬ時に電源がオフになっても、一度設定した設定値を継続して使用することができる。また、本実施の形態1によれば、分配器111における分配の際に生じる損失(分配損)をケーブルロスと共に補正することができる。
【0102】
(実施の形態2)
図15は、本発明の実施の形態2に係る拡張用子機システム1500の構成を示すブロック図である。中継装置アダプタ103及び子機1510(拡張用子機装置)は、拡張用子機システム1500を構成する。
【0103】
本実施の形態2に係る拡張用子機システム1500は、図2に示す実施の形態1に係る拡張用子機システム120において、図15に示すように、調整器1501を追加し、制御部216の代わりに制御部1502を有する。なお、図15においては、図2と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明は省略する。また、本実施の形態2に係る拡張システムは、図1の子機104〜110の代わりに子機1510を有する以外は図1の拡張システム100と同一であるので、その説明は省略する。
【0104】
調整器1501は、例えば手動により、任意のタイミングで測定モード及び運用モードを設定することが可能である。また、調整器1501は、子機1510の電源起動後、測定モードと運用モードのどちらの状態であるかを、制御部1502に通知する。
【0105】
制御部1502は、調整器1501より測定モードに設定したことの通知を受けた場合に、パイロット検波部215から入力した受信レベル情報に基づいて、同軸ケーブル112における振幅損失であるケーブルロスに応じた減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。また、制御部1502は、電源起動直後に、切り替え部213に対して、分配器212から入力したパイロット信号をアンテナ214へ出力しないように制御する。また、制御部1502は、調整器1501の設定が測定終了の設定となるまでの間、減衰率の設定を継続する。また、制御部1502は、LED217に対して測定モードが終了したことを報知するように制御する。なお、制御部1502の構成の詳細については後述する。
【0106】
可変減衰器206は、中継装置アダプタ103の切り替え部205から同軸ケーブル112を介して入力したパイロット信号及び下り信号と、共用器207から入力した上り信号とを、制御部1502で設定した減衰率で減衰させることにより利得を調整する。そして、可変減衰器206は、減衰させたパイロット信号及び下り信号を共用器207へ出力するとともに、減衰させた上り信号を同軸ケーブル112を介して中継装置アダプタ103の切り替え部205へ出力する。また、可変減衰器206は、減衰率を固定または可変にすることが可能である。
【0107】
次に、制御部1502の詳細な構成について、図16を用いて説明する。図16は、制御部1502の構成を示す図である。
【0108】
AD部1601は、調整器パイロット検波部215から入力した受信レベル情報に基づいて、受信レベルをアナログ値からディジタル値に変換し、変換したディジタル値をメモリ1603及びCPU部1604へ出力する。
【0109】
メモリ1603は、減衰率を設定する際に使用する基準値を記憶する。
【0110】
不揮発メモリ1602は、CPU部1604で設定された可変減衰器206の減衰率を記憶する。
【0111】
CPU部1604は、調整器1501より測定モードに設定した通知を受けた場合に、
AD部1601から取得したパイロット信号の受信レベル情報とメモリ1603から取得した基準値とに基づいて、減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。さらに、CPU部1604は、電源起動直後に、切り替え部213に対して、分配器212から入力した信号をアンテナ214へ出力しないように制御する。また、CPU部1604は、減衰率の設定が終了した際に、LED217に対して、測定モードが終了したことを報知するように制御する。
【0112】
次に、子機1510における測定モードを開始するか否かの判定方法について、図17を用いて説明する。図17は、測定モードを開始するか否かの判定方法を示すフロー図である。なお、本実施の形態2に係る中継装置アダプタ103の動作は図4〜図7と同一であるので、その説明は省略する。
【0113】
制御部1502は、調整器1501で設定されているモードを調整器1501から読み込む(ステップST1701)。
【0114】
次に、制御部1502は、測定モードであるのか運用モードであるのかを判定する(ステップST1702)。
【0115】
判定の結果、測定モードであった場合は、制御部1502は、測定モードの制御を行う(ステップST1703)。一方、測定モードでない場合、即ち運用モードであった場合は、制御部1502は、電源が切れるまで運用モードの制御を行う(ステップST1704)。ケーブルロスの補正は、例えば、調整器1501を測定モード終了の設定に切り替えるまで続ける。
【0116】
次に、図17のステップST1703の子機104の測定モードの動作について、図18を用いて説明する。図18は、測定モードの動作を示すフロー図である。なお、図18においては、図14と同一の動作である部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0117】
測定モードの開始により(ステップST1401)、制御部1502のCPU部1604は、AD部1601から取得した受信レベル情報であるAD値とメモリ1603から取得した基準値である基準AD値とが一致するか否か(AD値=基準AD値)を判定する(ステップST1402)。
【0118】
検出したAD値と基準AD値とが一致する場合には、制御部1502は、調整器1501が測定モード終了の設定であるか否かを判定する(ステップST1801)。
【0119】
調整器1501が測定モード終了の設定である場合に、CPU部1604は、最新の減衰率の設定値を不揮発メモリ1602へ保存する(ステップST1405)。
【0120】
このように、本実施の形態2によれば、パイロット信号を用いて利得を調整することにより、各子機に入力するまでに生じたケーブルロスを補正をすることができ、各子機のアンテナからの出力レベルをほぼ一定にすることができる。また、本実施の形態2によれば、分配器212とアンテナ214との接続を切断してパイロット信号がアンテナ214から送信されないようにするので、通信端末装置に対する干渉を防ぐことができる。また、本実施の形態2によれば、設定した減衰率の設定値を不揮発メモリ1602に記憶するので、停電等により予期せぬ時に電源がオフになっても、一度設定した設定値を継続して使用することができる。また、本実施の形態2によれば、測定モードと運用モードとを任意のタイミングで設定することができるので、パイロット信号を受信したか否かの判定をする必要がなく、子機1510における処理負荷を軽減することができるとともに、パイロット信号を受信したことの誤判定を防ぐことができる。また、本実施の形態2によれば、分配器111における分配の際に生じる損失(分配損)をケーブルロスと共に補正することができる。
【0121】
(実施の形態3)
図19は、本発明の実施の形態3に係る拡張システム1900の構成を示す図である。
【0122】
本実施の形態3に係る拡張システム1900は、図1に示す実施の形態1に係る拡張システム100において、図19に示すように、アンテナ101を除き、基地局装置1901と、光伝送装置(親機E/O)1902と、光伝送装置(子機O/E)1903を追加する。なお、図19においては、図1と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0123】
図19は上記実施の形態1における中継装置102と基地局装置との通信を、無線に限らず光ケーブル1904で行う場合の構成図である。この構成において、光伝送装置親機1902は、基地局装置1901からの伝送信号を光信号に変換し、変換した光信号を光ケーブル1904で伝送する。また、光伝送装置子機1903は、光ケーブル1904を介して受信した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を中継装置102へ伝送する。中継装置102以下の子機104〜110への信号中継方法は、上記実施の形態1と同一方法である。
【0124】
このように、本実施の形態3によれば、パイロット信号を用いて利得を調整することにより、各子機に入力するまでに生じたケーブルロスを補正をすることができる。また、本実施の形態3によれば、各子機のアンテナからの出力レベルをほぼ一定にすることができる。また、本実施の形態3によれば、図2に示す様に分配器212とアンテナ214との接続を切断してパイロット信号がアンテナ214から送信されないようにするので、通信端末装置に対する干渉を防ぐことができる。また、本実施の形態3によれば、パイロット信号の伝送を開始する際に、電源を一時的にオフにした後にオンにするので、パイロット信号を受信したことの誤判定を防ぐことができる。また、本実施の形態3によれば、直列に接続されている子機における利得調整が全て終了するまでは利得の調整を継続するので、直列に接続されている全ての子機において、最適な利得の調整を行うことができる。また、本実施の形態3によれば、設定した減衰率の設定値を不揮発メモリ302に記憶するので、停電等により予期せぬ時に電源がオフになっても、一度設定した設定値を継続して使用することができる。また、本実施の形態3によれば、分配器111における分配の際に生じる損失(分配損)をケーブルロスと共に補正することができる。
【0125】
なお、本実施の形態3において、子機104〜110を適用する場合に限らず、上記実施の形態2の子機1510を図19の子機104〜110の代わりに適用しても良い。
【0126】
(実施の形態4)
図20は、本発明の実施の形態4に係る拡張用子機システム2000の構成を示す図である。
【0127】
本実施の形態4に係る拡張用子機システム2000は、図2に示す実施の形態1に係る拡張システム100において、図20に示すように、切り替え部204を除き、親機制御部201の代わりに親機制御部2001を有し、パイロット検波部215の代わりにパイロット検波部2002を有するとともに制御部216の代わりに制御部2003を有する。なお、図20において、図2と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明は省略する。また、本実施の形態4に係る拡張システムは、図1の中継装置アダプタ103の代わりに中継装置アダプタ2010を有するとともに、子機104〜110の代わりに子機2011を有する以外は、図1の拡張システム100と同一であるので、その説明は省略する。
【0128】
親機制御部2001は、切り替え部205が運用モードから測定モードに切り替えられたことを検出した場合、電源制御部202に対して、電源を一旦オフにした後にオンとするように制御する。
【0129】
電源制御部202は、親機制御部2001の制御により、同軸ケーブル112を介してDC/DC218に電源を供給するとともにパイロット信号発生部203へ電源を供給する。
【0130】
切り替え部205は、運用モードと測定モードとを切り替え可能である。具体的には、切り替え部205は、運用モードに切り替えた場合には、中継装置102から入力した下り信号を同軸ケーブル112を介して可変減衰器206へ伝送する処理である中継を行うとともに、可変減衰器206から同軸ケーブル112を介して入力した上り信号を中継装置102へ伝送する処理である中継を行う。また、切り替え部205は、測定モードに切り替えた場合には、パイロット信号発生部203から入力したパイロット信号を同軸ケーブル112を介して可変減衰器206へ伝送する。
【0131】
分配器209は、下り信号無線部208から入力したパイロット信号及び下り信号を二系統に分配し、二系統に分配したパイロット信号及び下り信号の一方を共用器210へ出力するとともに他方をパイロット検波部2002へ出力する。
【0132】
受信レベル検出手段であるパイロット検波部2002は、分配器209から入力したパイロット信号及び下り信号の中からパイロット信号を検出する。例えば、パイロット検波部2002は、特定の周波数を有するパイロット信号のみが通過できる帯域制限フィルタによりパイロット信号を検出する。そして、パイロット検波部2002は、検出したパイロット信号を制御部2003へ出力する。また、パイロット検波部2002は、検出したパイロット信号の受信レベルを検出し、検出した受信レベルの情報である受信レベル情報を制御部2003へ出力する。
【0133】
パイロット信号受信判定手段及び利得調整手段である制御部2003は、パイロット信号を受信したか否かの判定の際、パイロット検波部2002から入力した受信レベル情報に基づいて、パイロット信号を受信したか否かを判定する。制御部2003は、所定レベルの信号を検出した場合に、パイロット信号を受信したと判定する。そして、制御部2003は、パイロット信号を受信したと判定した場合に、パイロット検波部2002から入力した受信レベル情報に基づいて、同軸ケーブル112における振幅損失であるケーブルロスに応じた減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。また、制御部2003は、電源起動直後に、切り替え部213に対して、分配器212から入力したパイロット信号をアンテナ214へ出力しないように制御する。また、制御部2003は、減衰率の設定を開始してから所定時間経過した際に、LED217に対して、測定モードが終了したことを報知するように制御する。また、子機107〜110の制御部2003は、ケーブルロスに応じた減衰率に加えて、分配器111で下り信号を分配する際に生じた振幅損失である分配損に応じた減衰率を設定し、可変減衰器206に対して、設定した減衰率で減衰するように制御する。
【0134】
LED217は、制御部2003の制御により発光し、発光することにより測定モードが終了したことを外部に報知する。
【0135】
可変減衰器206は、中継装置アダプタ2010の切り替え部205から同軸ケーブル112を介して入力したパイロット信号及び下り信号と、共用器207から入力した上り信号とを、制御部2003で設定した減衰率で減衰させることにより利得を調整する。そして、可変減衰器206は、減衰させたパイロット信号及び下り信号を共用器207へ出力するとともに、減衰させた上り信号を同軸ケーブル112を介して中継装置アダプタ2010の切り替え部205へ出力する。また、可変減衰器206は、減衰率を固定または可変にすることが可能である。
【0136】
次に、子機2011における測定モードを開始するか否かの判定方法について、図21を用いて説明する。図21は、測定モードを開始するか否かの判定方法を示すフロー図である。なお、本実施の形態4に係る中継装置アダプタ2010の動作は、図4及び図5と同一であるとともに、図6のステップST602を削除する以外は図6と同一であるので、その説明は省略する。
【0137】
パイロット検波部2002は、パイロット信号を検出するとともに、検出したパイロット信号の受信レベルを検出する(ステップST2101)。
【0138】
次に、制御部2003は、パイロット検波部2002で検出した受信レベルに基づいて、レベル判定を行う(ステップST2102)。
【0139】
そして、制御部2003は、レベル判定の結果に基づいて、パイロット信号を受信したか否かを判定する(ステップST2103)。例えば、制御部2003は、検出した受信レベルとしきい値とを比較して、パイロット信号を受信したか否かを判定する。
【0140】
パイロット信号を受信したと判定した場合に、制御部2003は、測定モードの制御を行う(ステップST2104)。一方、パイロット信号を受信しないと判定した場合に、制御部2003は、電源が切れるまで運用モードの制御を行う(ステップST2105)。
【0141】
図22は、パイロット信号を示す図である。測定モードの場合、切り替え部205からは図22に示すような所定時間T1においてレベルが一定のパイロット信号が出力される。また、制御部2003は、検出した受信レベルがしきい値H1以上である場合に、パイロット信号を受信したと判定する。
【0142】
このように、本実施の形態4によれば、上記実施の形態1の効果に加えて、中継装置アダプタ2010において、切り替え部204の切り替え制御が不要になるので、中継装置アダプタ2010における処理を軽減することができる。
【0143】
なお、本実施の形態4に上記実施の形態2を適用しても良い。即ち、図20に図15の調整器1501を設けて、調整器により制御しても良い。
【0144】
上記実施の形態1〜実施の形態4において、可変減衰器206を用いて利得を調整したが、これに限らず、任意の手段によって利得を調整することができる。また、上記実施の形態1〜実施の形態4における中継装置及び中継装置アダプタの構成に限定されるものではなく、例えば中継装置及び中継装置アダプタが物理的にひとつの装置として構成されていても良い。また、拡張用子機システムの構成は、上記実施の形態1〜実施の形態4に限定されるものではなく、例えば中継装置アダプタと各子機が各々一対一の関係になるような構成でも良く、また、子機の数が実施例と同じでなくても良い。また、上記実施の形態1〜実施の形態4における子機は図2や図15、図20の実施例の構成に限定されるものではなく、例えばLED217が無い場合や、切り替え器213と分配器212がひとつの部品として構成されているなど一部の機能が変更されていても良い。また、上記実施の形態1〜実施の形態4において、その制御動作の実施例として図4、図5、図6、図8、図9、図10、図14、図17、図18、図21などにフローに動作を表したが、その順序や構成は上記フローに限定されるものではなく、順序が一部前後したり機能が一部省略、変更されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明にかかる拡張用子機システム及び信号中継方法は、例えば屋内など劣悪な電波環境下における無線通信を行うのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施の形態1に係る拡張システムを示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係る拡張用子機システムを示す図
【図3】本発明の実施の形態1に係る制御部の構成を示す図
【図4】本発明の実施の形態1に係る中継装置アダプタの動作を示すフロー図
【図5】本発明の実施の形態1に係る運用モードの動作を示すフロー図
【図6】本発明の実施の形態1に係る測定モードの動作を示すフロー図
【図7】本発明の実施の形態1に係るパイロット信号を示す図
【図8】本発明の実施の形態1に係る子機の動作を示すフロー図
【図9】本発明の実施の形態1に係る測定モードを開始するか否かの判定方法を示すフロー図
【図10】本発明の実施の形態1に係るタイミング判定の方法を示すフロー図
【図11】本発明の実施の形態1に係るメモリを示す図
【図12】本発明の実施の形態1に係るAD値と基準AD値との比較方法を示す図
【図13】本発明の実施の形態1に係るAD値と基準AD値との比較方法を示す図
【図14】本発明の実施の形態1に係る測定モードの動作を示すフロー図
【図15】本発明の実施の形態2に係る拡張用子機システムを示す図
【図16】本発明の実施の形態2に係る制御部の構成を示す図
【図17】本発明の実施の形態2に係る測定モードの判定方法を示すフロー図
【図18】本発明の実施の形態2に係る測定モードの動作を示すフロー図
【図19】本発明の実施の形態3に係る拡張システムを示す図
【図20】本発明の実施の形態4に係る拡張用子機システムを示す図
【図21】本発明の実施の形態4に係る測定モードの判定方法を示すフロー図
【図22】本発明の実施の形態4に係るパイロット信号を示す図
【符号の説明】
【0147】
120 子機システム
103 中継装置アダプタ
104 子機
112 同軸ケーブル
201 親機制御部
202 電源制御部
203 パイロット信号発生部
204、205、213 切り替え部
206 可変減衰器
207、210 共用器
208 下り信号無線部
209、212 分配器
211 上り信号無線部
214 アンテナ
215 パイロット検波部
216 制御部
217 LED
218 DC/DC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継装置アダプタと、前記中継装置アダプタと伝送路を介して接続される拡張用子機装置とを具備する拡張用子機システムであって、
前記中継装置アダプタは、
パイロット信号を生成するパイロット信号生成手段と、
生成した前記パイロット信号の前記拡張用子機装置への伝送と、中継装置が受信した信号の前記拡張用子機装置への中継及び前記拡張用子機装置が受信した信号の前記中継装置への中継とを切り替える切替手段と、
を具備し、
前記拡張用子機装置は、
前記伝送路を介して受信した信号の受信レベルを検出する受信レベル検出手段と、
検出した前記受信レベルに基づいて前記パイロット信号を受信したか否かを判定するパイロット信号受信判定手段と、
前記パイロット信号受信判定手段により前記パイロット信号を受信したと判定した場合に、受信した前記パイロット信号の受信レベルに基づいて前記中継する信号の利得を調整する利得調整手段と、
を具備する拡張用子機システム。
【請求項2】
前記拡張用子機装置は、
前記中継装置アダプタから伝送された前記パイロット信号を通信相手へ送信しないようにする送信制御手段を具備する請求項1記載の拡張用子機システム。
【請求項3】
前記中継装置アダプタは、
前記伝送路を介して前記拡張用子機装置に電源を供給するとともに前記切替手段で前記中継から前記パイロット信号の伝送に切り替える前に電源を一旦オフとした後に再度電源をオンにする電源制御手段を具備し、
前記拡張用子機装置は、
前記電源制御手段から電源の供給を受けて電源をオンにする電源手段を具備し、
前記パイロット信号受信判定手段は、前記電源手段の電源がオフからオンになった際に前記判定を開始する請求項1または請求項2記載の拡張用子機システム。
【請求項4】
前記利得調整手段は、受信レベルと利得調整用の調整値とを関係付けた利得調整用情報を記憶するとともに、受信した前記パイロット信号の受信レベルを用いて前記利得調整用情報を参照することにより前記調整値を設定し、設定した前記調整値で前記中継による信号の利得を調整する請求項1から請求項3のいずれかに記載の拡張用子機システム。
【請求項5】
前記利得調整手段は、受信した前記パイロット信号の受信レベルに基づいて利得を調整するための調整値を設定するとともに、直列に接続した複数の前記拡張用子機装置における前記調整値の設定が全て終了するまで前記調整値の設定を継続する請求項1から請求項3のいずれかに記載の拡張用子機システム。
【請求項6】
前記拡張用子機装置は、
前記利得調整手段で利得を調整するために設定した調整値を記憶する記憶手段を具備する請求項1から請求項3のいずれかに記載の拡張用子機システム。
【請求項7】
前記パイロット信号受信判定手段は、前記受信レベル検出手段で検出した受信レベルの時間推移によるパターンと既知パターンとの一致を検出した場合に前記パイロット信号を受信したと判定する請求項1から請求項6のいずれかに記載の拡張用子機システム。
【請求項8】
前記拡張用子機装置は、
前記中継装置アダプタから前記中継により伝送された信号を他の前記拡張用子機装置に分配する分配手段を具備し、
前記利得調整手段は、前記分配手段で分配する前に、前記中継装置アダプタから前記中継により伝送された信号の利得を調整する請求項1から請求項7のいずれかに記載の拡張用子機システム。
【請求項9】
中継装置アダプタが、パイロット信号を生成するステップと、
前記中継装置アダプタが、生成した前記パイロット信号の前記拡張用子機装置への伝送と、中継装置が受信した信号の前記拡張用子機装置への中継及び前記拡張用子機装置が受信した信号の前記中継装置への中継とを切り替えるステップと、
前記拡張用子機装置が、伝送された信号の受信レベルを検出するステップと、
前記拡張用子機装置が、検出した前記受信レベルに基づいて前記パイロット信号を受信したか否かを判定するステップと、
前記拡張用子機装置が、前記パイロット信号を受信したと判定した場合に、受信した前記パイロット信号の受信レベルに基づいて前記中継による信号の利得を調整するステップと、
利得を調整した前記中継による信号を前記拡張用子機装置から通信相手へ送信するステップと、
を具備する信号中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−141408(P2008−141408A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324687(P2006−324687)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】