説明

指紋照合装置、指紋照合方法

【課題】照合精度を低下させることなく、登録データと照合データとの照合に要する時間を短縮することを可能にする。
【解決手段】制御部10は、画像読取部16によって複数の指紋画像を読み取り、各指紋画像から抽出される特徴点をもとに相互照合を行う。制御部10は、相互照合により合致していると判定された回数を示す合致照合回数と、合致すると判定される根拠となった特徴点に対する合致使用回数とを相互照合の対象とする各指紋画像について計数する。制御部10は、計数された合致照合回数と合致使用回数とを元に複数の指紋画像の何れかを登録データの対象として選定し、この選定された指紋画像から抽出された特徴点の特徴量と合致照合回数と合致使用回数とを含む登録データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、登録指紋画像と照合指紋画像とを比較して同一性を判定する指紋照合装置、指紋照合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の指紋照合装置では、1対1照合方式、あるいは1対N照合方式により、予め登録された指紋画像(登録指紋画像)と照合対象として読み取られた指紋画像(照合指紋画像)との照合が行われる。
【0003】
1対1照合方式では、利用者がID番号などの識別情報を予め入力し、その識別情報と対応付けて登録された登録指紋画像を読み出して、入力された照合指紋画像との間で照合する方式である。また、1対N照合方式は、入力された1つの照合指紋画像に対して、登録されている全て登録指紋画像とを順次照合する方式である。
【0004】
一般の指紋照合装置は、登録処理によって、指紋センサから採取した指紋画像データから特徴点(端点、分岐点など)を抽出し、特徴点の位置、種類、方向を算出して、これらを登録データ(登録指紋画像)として保存する。
【0005】
1対1照合方式による照合処理では、指紋センサから採取した指紋画像データから特徴点を抽出し、特徴点の位置、種類、方向を算出して、これらを照合データ(照合指紋画像)とし、照合対象となる登録データに対して、特徴点の位置関係が合致するかどうかを比較して、登録データと照合データの同一性を判定する。
【0006】
また、1対N照合方式による照合処理では、指紋センサから採取した指紋画像データから特徴点を抽出し、特徴点の位置、種類、方向を算出して、これらを照合データとし、登録されている全ての登録データ(個数N)に対して、登録データ1つずつ、特徴点の位置関係が合致するかどうかを順次比較して、同一性を判定し、最も同一性が高い登録データを検出する。
【0007】
このように、指紋照合装置では、1対1照合では、登録データの複数の特徴点と照合データの複数の特徴点の全ての組み合わせについて、それぞれ位置関係が合致しているかどうかを比較するため、照合時間に多くの時間を要してしまう。また、1対N照合では、1対1照合に要する照合時間のさらにN倍の時間を要してしまう。
【0008】
従来では、照合時間を短縮するために、詳細な照合処理の前に、類似しない登録指紋を効率良く排除して、入力指紋と照合する登録指紋を限定する方式が考えられていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−145447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された指紋照合装置では、指紋照合に要する時間を短縮するために、詳細な照合処理の前に、指紋の特徴量を代表する選択用パラメータを使用し、パラメータ値どうしの比較により入力指紋と照合する登録指紋を選択する必要がある。従って、登録処理と照合処理において、通常の指紋照合に用いる特徴点の抽出とは別に、選択用パラメータ(例えば隆線占有率、隆線谷線境界数、重み付き特徴点個数、特徴点方向重み付き累積座標)を抽出しなければならない。また、特徴点を用いた照合処理の他に、選択用パラメータを用いた特別な処理を実行しなければならない。
【0010】
さらに、照合処理全体の処理時間の短縮を図ることができるが、個々の登録データと照合データとの照合に要する時間については短縮することができない。
【0011】
本発明の課題は、照合精度を低下させることなく、登録データと照合データとの照合に要する時間を短縮することが可能な指紋照合装置、指紋照合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、指紋画像から抽出される特徴点を比較することにより、登録データと照合データとの照合を行う指紋照合装置において、指紋画像を読み取る画像読取手段と、前記画像読取手段により読み取られた複数の指紋画像から抽出される特徴点をもとに、前記複数の指紋画像について相互照合を行う相互照合手段と、前記相互照合手段による相互照合により合致していると判定された回数を示す合致照合回数と、合致すると判定される根拠となった特徴点に対する合致使用回数とを、相互照合の対象とする各指紋画像について計数する計数手段と、前記計数手段により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを元に、前記複数の指紋画像の何れかを選定する画像選定手段と、前記画像選定手段により選定された指紋画像から抽出された特徴点の特徴量と、前記計数手段により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを含む登録データを生成する登録データ生成手段とを具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記登録データ生成手段は、前記合致照合回数と前記合致使用回数をもとに、前記画像選定手段により選定された指紋画像の特徴点に対する合致使用頻度率を算出し、前記登録データに含めることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記登録データ生成手段は、前記合致使用頻度率に応じて、前記特徴点に対する照合時の安定度を表す合致判定係数を前記登録データに含めることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用回数をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して照合を行う照合手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して照合を行う照合手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の前記合致判定係数を考慮した特徴量とを比較して照合を行う照合手段とを具備したことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項4または請求項5記載の発明において、前記照合手段による照合結果をもとに、前記登録データの前記合致照合回数と前記合致使用回数とを更新する更新手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記照合手段による照合結果をもとに、前記登録データの前記合致使用頻度率を更新する更新手段と、前記更新手段により更新された前記合致使用頻度率が有効条件を満たさない特徴点を削除する削除手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項4、請求項5、または請求項6の何れかに記載の発明において、前記照合手段による前記照合データと前記登録データとの比較において、前記登録データに対応する特徴点が存在しない前記照合データ中の特徴点があった場合に、前記照合データ中の特徴点を前記登録データに追加する追加手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用回数をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して類似度を算出する第1照合手段と、前記登録データ生成手段によって生成された複数の登録データから前記第1照合手段によって算出された類似度が高い上位の登録データを選定する登録データ選定手段と、前記登録データ選定手段により選定された登録データに含まれる全ての特徴点の特徴量と前記照合データに含まれる特徴点の特徴量との比較により類似度を算出する第2照合手段と、前記第2照合手段により算出された類似度をもとに前記登録データと前記照合データの合致を判定する判定手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して類似度を算出する第1照合手段と、前記登録データ生成手段によって生成された複数の登録データから前記第1照合手段によって算出された類似度が高い上位の登録データを選定する登録データ選定手段と、前記登録データ選定手段により選定された登録データに含まれる全ての特徴点の特徴量と前記照合データに含まれる特徴点の特徴量との比較により類似度を算出する第2照合手段と、前記第2照合手段により算出された類似度をもとに前記登録データと前記照合データの合致を判定する判定手段と
をさらに具備したことを特徴とする。
【0023】
請求項12記載の発明は、指紋画像から抽出される特徴点を比較することにより、登録データと照合データとの照合を行う指紋照合方法において、指紋画像を読み取る画像読取行程と、前記画像読取行程により読み取られた複数の指紋画像から抽出される特徴点をもとに、前記複数の指紋画像について相互照合を行う相互照合行程と、前記相互照合行程による相互照合により合致していると判定された回数を示す合致照合回数と、合致すると判定される根拠となった特徴点に対する合致使用回数とを、相互照合の対象とする各指紋画像について計数する計数行程と、前記計数行程により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを元に、前記複数の指紋画像の何れかを選定する画像選定行程と、前記画像選定行程により選定された指紋画像から抽出された特徴点の特徴量と、前記計数行程により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを含む登録データを生成する登録データ生成行程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1,12記載の発明によれば、複数の指紋画像から抽出される特徴点をもとにした複数の指紋画像についての相互照合を実行し、この相互照合により合致していると判定された回数を示す合致照合回数と、合致すると判定される根拠となった特徴点に対する合致使用回数とを相互照合の対象とする各指紋画像について計数して登録データに含めることができる。登録データを照合データと照合させる場合に、合致使用回数をもとに照合の対象とする特徴点を限定することで登録データと照合データとの照合に要する時間を短縮することができるようになる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、合致照合回数と合致使用回数をもとに指紋画像の特徴点に対する合致使用頻度率を算出して登録データに含めることで、この合致使用頻度率をもとに照合の対象とする特徴点を限定することで登録データと照合データとの照合に要する時間を短縮することができるようになる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、合致使用頻度率に応じて、特徴点に対する照合時の安定度を表す合致判定係数を前記登録データに含めることで、登録データに含まれる特徴点の特徴量を制限しても照合精度を低下させない。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、登録データ中の合致使用回数をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して照合を行うことで、照合に要する時間を短縮することができる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、登録データ中の合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して照合を行うことで、照合に要する時間を短縮することができる。
【0029】
請求項6記載の発明によれば、請求項3の発明の効果に加えて、登録データ中の合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の合致判定係数を考慮した特徴量とを比較して照合を行うことで、登録データに含まれる特徴点の特徴量を制限しても照合精度を低下させない。
【0030】
請求項7記載の発明によれば、請求項4または請求項5の発明の効果に加えて、照合結果をもとに登録データの合致照合回数と合致使用回数とを更新することで、照合処理の回数が増加するほど、照合判定に有効な特徴点を特定できるようになる。
【0031】
請求項8記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加えて、合致使用頻度率が有効条件を満たさない特徴点を削除することで、照合処理の回数が増加するほど、照合判定に有効な特徴点のみを登録データ中に残すことができる。
【0032】
請求項9記載の発明によれば、請求項4、請求項5、または請求項6の何れかの発明の効果に加えて、照合処理において登録データに対応する特徴点が存在しない照合データ中の特徴点があった場合に、この特徴点を登録データに追加することで、照合処理に有効な特徴点を追加することができる。
【0033】
請求項10記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、複数の登録データを照合データと照合する場合に、合致使用回数をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較する第1照合により登録データの選定(絞り込み)を行い、その後、選定された登録データ中の全ての特徴点の特徴量を用いて第2照合を実行することで、照合精度を低下させることなく照合時間を短縮することができる。
【0034】
請求項11記載の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、複数の登録データを照合データと照合する場合に、合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較する第1照合により登録データの選定(絞り込み)を行い、その後、選定された登録データ中の全ての特徴点の特徴量を用いて第2照合を実行することで、照合精度を低下させることなく照合時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態(第1実施形態、第2実施形態)における指紋照合装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態における指紋照合装置は、制御部10、表示部12、キー入力部14、画像読取部16、記憶装置20、及びRAM22を有している。
【0036】
制御部10は、装置全体の制御を司るもので、プロセッサやプログラムやデータを記憶するメモリ等を含んで構成される。制御部10は、各種プログラムをプロセッサにより実行することにより各種機能を実現する。本実施形態では、登録プログラム20aにより登録処理を実行することで、画像読取部16により検出される指紋画像データをもとに登録データを生成して記憶装置20に記憶させる。また、照合プログラム20bにより照合処理を実行することにより、画像読取部16により検出される照合用の指紋画像データが、登録処理によって登録された登録データと一致しているかを判定するための照合を行う。
【0037】
表示部12は、制御部10の制御のもとで、例えば液晶ディスプレイにおいて各種データを表示する。
【0038】
キー入力部14は、制御部10の制御のもとで、ユーザ操作に応じて各種指示を入力する。キー入力部14は、例えば複数キー(ボタン)に対する入力操作の他、ポインティングデバイス等の他の入力デバイスに対する操作に応じたユーザからの指示を入力して制御部10に通知する。
【0039】
画像読取部16は、指紋画像を検出して制御部10に出力する。
【0040】
記憶装置20は、プログラムや各種データを記憶するためのもので、ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリ等により構成される。記憶装置20に記憶されるプログラムとしては、指紋画像を登録する登録処理のための登録プログラム20a、照合用の指紋画像と登録された指紋画像とを照合する照合処理のための照合プログラム20bを含む。また、記憶装置20は、登録処理によって登録される登録データ20cなどが記憶される。登録データ20cは、複数の人物から採取された指紋画像をもとに生成された登録データが含まれている。
【0041】
RAM22は、制御部10による処理の対象とするデータを記憶するもので、例えば照合処理に用いるために記憶装置20から読み出された登録データ22aや、画像読取部16から読み取られた照合対象とする照合データ22bの他、照合処理の実行に伴う各種データなどが記憶される。
【0042】
図2は、登録処理によって登録される登録データ22a(20c)のデータ構成の一例を示している。
【0043】
図2に示すように、登録データ22aには、指紋画像から抽出された特徴点の数(特徴点数22a1)、照合データとの照合により合致判定された回数を示す合致照合回数22a2、指紋画像から抽出された各特徴点についての特徴点データ22a3が含まれる。
【0044】
図3は、特徴点データ22a3に含まれるデータの詳細を示す図である。
【0045】
図3に示すように、特徴点データ22a3には、指紋画像から抽出された複数の特徴点M(M1,M2,…,Mn)に対応付けられた、特徴点の位置を示す座標(1,2,…,n)、特徴点の種類(端点、分岐点)、方向d(dr1,dr2,…,drn)の特徴量を示すデータの他に、合致使用頻度率UF(UF1,UF2,…,UFn)、合致使用回数UN(UN1,UN2,…,UNn)、合致判定係数α(α1,α2,…,αn)の各データが含まれる。
【0046】
合致使用回数UNは、登録データが照合データとの照合によって合致すると判定された際に、合致すると判定される根拠となった回数を示す。
【0047】
合致使用頻度率UFは、登録データが照合データとの照合によって合致していると判定された照合回数(合致照合回数VN)に対する、合致していると判定された際に使用されていた(合致すると判定される根拠となった)回数の割合を示す。
【0048】
合致判定係数αは、特徴点に対する照合時の安定度を表す数値であり、合致使用頻度率UFに対応して変動される。すなわち、合致判定係数αは、照合回数(合致照合回数VN)が多くなっても合致使用頻度率UFが高い値に維持されている場合に、値が大きくなるように更新される。合致判定係数αの値が大きい場合に、照合データの特徴量との比較の際に、類似度値を高くするなどの照合判定が行われる。
【0049】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態における指紋照合装置の動作について説明する。第1実施形態の指紋照合装置は、1対1照合を実行する。
【0050】
まず、登録処理について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0051】
まず、制御部10は、画像読取部16によって、登録対象とする指について指紋画像データの読み取りを実行する(ステップA1)。
【0052】
制御部10は、画像読取部16により読み取られた指紋画像データに対して特徴点抽出処理を施して特徴量を抽出する(ステップA2)。すなわち、制御部10は、指紋画像データに対して、2値化及び細線化の画像処理を施して、指紋隆線のパターンを表す画像を生成する。そして、指紋隆線の画像中から特徴点を抽出する。特徴点としては、例えば指紋隆線が途切れた端点や、指紋隆線が分岐している分岐点を特徴点として抽出する。そして、制御部10は、各特徴点の位置、種類、方向を算出して、これらを特徴点の特徴量に含める。
【0053】
ここで、予め決められた数の指紋画像データの採取が完了していなければ、前述と同様にして、登録対象とする同じ指の指紋画像データを採取して、特徴量抽出処理を施して特徴量を抽出する(ステップA1,A2)。ここでは、例えば3個の指紋画像データD1,D2,D3を採取するものとする。また、指紋画像データD1,D2,D3のそれぞれから抽出された特徴量を特徴量F1,F2,F3とする。
【0054】
図4(a)(b)(c)は、指紋画像データの採取を3回実行することにより読み取られた指紋画像データD1,D2,D3を概念的に示す図である。図4(a)(b)(c)では、破線によって指紋隆線のパターンを表し、指紋画像から抽出された複数の特徴点の位置を○あるいは□によって示している。なお、○は端点の位置、□は分岐点の位置を示している。
【0055】
次に、制御部10は、3個の指紋画像データから抽出された特徴量F1,F2,F3を用いて相互照合を実行し、登録データとして最適な特徴量を選定する(ステップA4)。すなわち、3個の指紋画像データD1,D2,D3から特徴量F1,F2,F3が抽出されている場合には、特徴量F1と特徴量F2、特徴量F1と特徴量F3、特徴量F2と特徴量F3との間で照合を行う。
【0056】
なお、以下の説明では、指紋画像データD1から抽出された特徴点を特徴点M11,M12,M13…、指紋画像データD2から抽出された特徴点を特徴点M21,M22,M23…、指紋画像データD3から抽出された特徴点を特徴点M31,M32,M33…として説明する。
【0057】
また、特徴量F1には、各特徴点M11,M12,M13…についての特徴量FM11,FM12,FM13…を含む。同様に、特徴量F2には、各特徴点M21,M22,M23…についての特徴量FM21,FM22,FM23…を含み、特徴量F3には、各特徴点M31,M32,M33…についての特徴量FM31,FM32,FM33…を含むものとする。
【0058】
まず、制御部10は、指紋画像データD1を基準として、指紋画像データD1の特徴量F1と指紋画像データD2の特徴量F2とを照合する。
はじめに、制御部10は、指紋画像データDの1つの特徴点M11を選定する。
【0059】
制御部10は、条件1として、例えば特徴点の位置、種類、方向について比較を行う。すなわち、制御部10は、選定した特徴点M11の特徴量FM11の位置、種類、方向と、指紋画像データD2に含まれる最初の特徴点M21についての特徴量FM21の位置、種類、方向とをそれぞれ比較する。
【0060】
種類については同一、位置と方向については、両者の差がそれぞれに対して設定された閾値範囲内にある場合に、条件1を満足するものと判定する。
【0061】
条件1を満足しないと判定した場合、制御部10は、現在対象としている特徴量FM21については合致しないものと判定する(合致数の加算なし)。
【0062】
一方、条件1を満足すると判定した場合、制御部10は、別の特徴量を用いた比較を行う。ここで、1つの特徴点から、他の特徴点へのベクトルを設定し、このベクトルについての特徴量を比較する。他の特徴点に向かうベクトルの特徴量としては、例えば終点特徴点の種類、終点特徴点の方向、ベクトルの水平成分、垂直成分、ベクトルの長さ、ベクトルの方向などを含む。
【0063】
制御部10は、特徴点M11から他の特徴点M12,M12,M13…に向かうベクトルと、特徴点M21から他の特徴点M22,M23…に向かうベクトルのそれぞれの特徴量の比較を行う。制御部10は、ベクトルの特徴量の比較において、条件2として、他の特徴点に向かうベクトルに関する特徴量に含まれる終点特徴点の種類、終点特徴点の方向、ベクトルの長さ、ベクトルの方向とをそれぞれ比較する。
【0064】
種類については同一、終点特徴点の方向、ベクトルの長さ、及びベクトルの方向については、両者の差がそれぞれに対して設定された閾値範囲内にある場合に、条件2を満足するものと判定する。
【0065】
制御部10は、特徴点M11から他の特徴点M12,M12,M13…に向かうベクトルと、特徴点M21から他の特徴点M22,M23…に向かうベクトルの特徴量の全ての組み合わせについて、前述した条件2について判定する。この結果、条件2を満足すると判定されたベクトル(合致ベクトル)があった場合、制御部10は、この合致ベクトル数を記憶しておく。
【0066】
次に、制御部10は、指紋画像データD2に次の特徴点M22があれば、この次の特徴点M22の特徴量FM22について、前述と同様の処理を実行する。以下、指紋画像データD2に含まれる残り全ての特徴点M23…の特徴量FM23…について同様にして処理を実行し、各特徴点M23…に対する合致ベクトル数を求める。
【0067】
そして、指紋画像データD2の全ての特徴点M21,M22,…について、指紋画像データD1から選定された特徴点M11との比較が終了すると、制御部10は、合致ベクトル数が最大となった指紋画像データD2中の特徴点Mを選択し、この時の合致ベクトル数を特徴点M11との類似度S11として記憶する。
【0068】
次に、制御部10は、指紋画像データD1に次の特徴点M12があれば、この次の特徴点M12の特徴量FM12について、前述と同様の処理を実行して類似度S12を求める。以下、同様にして、指紋画像データD1に含まれる残り全ての特徴点M13…について同様の処理を実行し、各特徴点M13…に対する類似度S13…を求める。
【0069】
次に、制御部10は、条件3として、指紋画像データD1の各特徴点M11,M12,M13…について求められた類似度S11,12,13…が予め設定された閾値以上となっているかを判別する。そして条件3を満足する類似度の数をカウントする。
【0070】
次に、制御部10は、条件4として、条件3の判別結果をもとにカウントした類似度Sの数が、指紋画像データD1を同一と判定するための基準値として予め設定された閾値以上となっているかを判別する。
【0071】
ここで、条件4を満たすと判定された場合には、制御部10は、指紋画像データD1と指紋画像データD2とが一致するものと判定する。一方、条件4を満たないと判定された場合には、制御部10は、指紋画像データD1と指紋画像データD2とが不一致であると判定する。
【0072】
制御部10は、指紋画像データD1と指紋画像データD2とが一致すると判定した場合、指紋画像データD1に対する合致照合回数VNを+1する。また、指紋画像データD2と合致すると判定される根拠となった特徴点、すなわち前述した説明において条件3を満たすと判定された特徴点Mについての合致使用回数UNを+1する。
【0073】
そして、合致使用回数UNが+1された特徴点Mについて、合致使用頻度率UFを算出する。すなわち、合致使用頻度率UF=合致使用回数UN/合致照合回数VNによって算出する。つまり、合致使用頻度率UFは、指紋画像データが他の指紋画像データとの照合によって合致すると判定された場合に、その合致の判定の根拠として使用された頻度を表している。
【0074】
ここで、制御部10は、全ての特徴点M11,M12,M13…のうち合致使用頻度率UFが1となる特徴点の総数NMを算出する。
【0075】
次に、制御部10は、前述と同様にして、指紋画像データD1の特徴量F1と指紋画像データD3の特徴量F3とを照合して、指紋画像データD1と指紋画像データD3とが一致しているかを判定する。指紋画像データD1と指紋画像データD3の照合についても、前述と同様にして、一致判定の結果に応じて、合致照合回数VN、各特徴点Mについての合致使用回数UN、合致使用頻度率UFを更新する。
【0076】
ここで、指紋画像データD1と指紋画像データD3とが一致すると判定された場合には、合致照合回数VNは2となり、指紋画像データD1との照合においても合致の判定の根拠として使用された特徴点Mについての合致使用回数UNも2となる。
【0077】
そして、合致使用頻度率UF=合致使用回数UN/合致照合回数VNを算出して、指紋画像データD1に対する総数NM1を算出する。
【0078】
指紋画像データD1を基準とした相互照合が終了すると、次に、制御部10は、指紋画像データD2を基準とした相互照合、すなわち指紋画像データD2と、指紋画像データD1及び指紋画像データD3のそれぞれとの照合を実行する。
【0079】
さらに、指紋画像データD2を基準とした相互照合が終了すると、次に、制御部10は、指紋画像データD3を基準とした相互照合、すなわち指紋画像データD3と、指紋画像データD1及び指紋画像データD2のそれぞれとの照合を実行する。
【0080】
各相互照合についても、前述と同様にして、一致判定の結果に応じて、合致照合回数VN、各特徴点Mについての合致使用回数UN、合致使用頻度率UFを更新する。
【0081】
こうして、指紋画像データD1,D2,D3の全ての組み合わせによる相互照合が終了すると、制御部10は、各相互照合の結果に応じて算出された合致使用頻度率UFが1となる特徴点の総数NM1,2,3のうち、最大値となる指紋画像データDの特徴量Fを選定する。
【0082】
制御部10は、この選定された特徴量Fから登録データ20cを作成して、記憶装置20に登録する(ステップA5)(図2、図3参照)。さらに、制御部10は、登録データ20cの各特徴点Mに対して、合致判定係数αの初期値として1を設定する。以上により登録処理を完了する。
【0083】
次に、照合処理について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御部10は、記憶装置20から登録データ20cを読込み、RAM22に記憶させる(登録データ22a)(ステップB1)。
【0084】
次に、制御部10は、画像読取部16によって照合対象とする指紋画像の読取を実行する(ステップB2)。
【0085】
制御部10は、画像読取部16により読み取られた指紋画像データをもとに照合データを作成する(ステップB3)。すなわち、制御部10は、指紋画像データに対して2値化及び細線化の画像処理を施して、指紋隆線のパターンを表す画像を生成する。そして、指紋隆線の画像中から特徴点を抽出する。特徴点としては、登録処理と同様にして、例えば指紋隆線が途切れた端点や、指紋隆線が分岐している分岐点を特徴点として抽出する。そして、制御部10は、各特徴点の位置、種類、方向を算出して、これらを照合データ22bとしてRAM22に記憶させる。
【0086】
次に、制御部10は、登録データ22aと照合データ22bとを照合して、登録データ22aに対して照合データ22bが合致しているかを判定する(ステップB4)。この照合において、制御部10は、登録データ22a内の特徴点において合致使用頻度率UFが高い上位K個の限られた特徴点を基準特徴点候補として選択し、この基準特徴点候補の特徴量と照合データ22bの特徴量とを照合し、登録データ22aに対して照合データ22bが合致しているかを判定する。
【0087】
また、合致使用頻度率UFが高い上位K個の限られた特徴点を選択するだけでなく、合致使用回数UNが上位の限られた特徴点を選択して、この特徴点の特徴量と照合データ22bの特徴量とを照合するようにしても良い。
【0088】
ここでは、登録データ22aの各特徴点に対して設定された合致判定係数αを考慮して照合判定する。例えば、合致判定係数αの値が大きいほど、類似度値を高くするなどして照合判定を行う。
【0089】
なお、照合の具体的な方法については、登録処理における指紋画像データD1,D2,D3の相互照合の場合と同様にして実行されるものとする。
【0090】
この結果、登録データ22aに対して照合データ22bが合致していないと判定された場合(ステップB5、No)、制御部10は、照合結果を出力して照合処理を終了する。
【0091】
一方、登録データ22aに対して照合データ22bが合致していると判定された場合には、制御部10は、照合結果を出力し、その後、登録データ22aに対する更新処理を実行した後に(ステップB6)、照合処理を終了する。
【0092】
次に、更新処理について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御部10は、照合処理において、登録データ22aに対して照合データ22bが合致していると判定される根拠となった特徴点を抽出する(ステップC1)。すなわち、基準特徴点候補として選択された、登録データ22a内の特徴点において合致使用頻度率UFが高い上位K個の特徴点を抽出する。
【0093】
制御部10は、登録データ22a内の抽出された特徴点における合致照合回数VN、合致使用回数UN、合致使用頻度率UFを更新する(ステップC2)。すなわち、合致照合回数VNと、合致判定に用いられた特徴点Mの合致使用回数UNを+1する。そして、更新された合致照合回数VNと各合致使用回数UNに応じて、それぞれに対する合致使用頻度率UF(=合致使用回数UN/合致照合回数VN)を算出して更新する。
【0094】
次に、制御部10は、登録データ22a内の特徴点において、合致使用頻度率UFに関する有効条件を満たしていない特徴点を抽出する(ステップC3)。例えば合致使用頻度率UFが0、すなわち合致判定された際に合致判定の根拠となったことがない特徴点、あるいは合致使用頻度率UFが予め設定された閾値以下であり、合致判定の根拠となる回数が少ない特徴点を、有効条件を満たしていないとして抽出する。
【0095】
合致使用頻度率UFに関する有効条件を満たしていない特徴点が抽出された場合(ステップC4、Yes)、制御部10は、登録データ22aから抽出された特徴点を削除して、登録データ22aを更新する(ステップC5)。
【0096】
そして、登録データ22a内の特徴点における合致照合回数VN、合致使用回数UN、合致使用頻度率UFに基づいて、合致判定係数αを更新する(ステップC6)。
【0097】
ここでは、照合回数が多くなっても、合致判定の際の使用頻度が高い特徴点Mについては、照合に際しての利用が安定している。従って、そのように特徴点Mに対する合致判定係数αの値を大きくするように更新する。合致判定係数αの値を大きくすることにより、照合データとの照合時に類似度値を高くするなどして照合判定を行う。
【0098】
次に、制御部10は、登録データ22aに対応する特徴点が存在しない照合データ22bの特徴点を登録データ22aに追加し(ステップC7)、登録データ22aを更新する(ステップC8)。以上により更新処理を終了する。
【0099】
このようにして、第1実施形態の指紋照合装置では、登録データとして保存されている特徴点の中で合致使用頻度率UFが高い上位K個の特徴点を基準特徴点候補として、照合データと照合することにより、照合時間を短縮することが可能となる。
【0100】
また、1対1照合を行って、登録データに対して照合データが合致していると判定されるたびに、登録データとして保存されている特徴点の合致使用頻度率UFを更新して、さらに、合致使用頻度率UFに関する有効条件を満足しない特徴点を抽出して、この特徴点に関するデータを登録データから削除して更新することにより、照合精度を低下させることなく登録データのデータ量を削減することが可能である。
【0101】
また、1対1照合を行って、登録データに対して照合データが合致していると判定されるたびに、登録データとして保存されている特徴点の合致使用頻度率UFを更新し、さらに、合致使用頻度率UFに基づいて特徴点の合致判定係数αを変動するので、1対1照合時に合致判定係数αを考慮して合致判定を行うことにより、経時変動に伴う本人拒否率の劣化を抑制することが可能となる。
【0102】
なお、前述した第1実施形態では、画像読取部16から採取した指紋画像データに対して、そのまま特徴点抽出処理を施しているが、画像読取部16から採取した指紋画像データに対して画質評価処理を施して、照合を行う上で適切な画質であると判断された場合にのみ、特徴点抽出処理を施すようにしても良い。照合を行う上で不適切な画質であると判断された場合には、画像読取部16から指紋画像データを再採取するようにしてもよい。
【0103】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態における指紋照合装置の動作について説明する。第2実施形態の指紋照合装置は、1対N照合を実行する。
【0104】
第2実施形態において登録処理は、第1実施形態と同様にして実行されるものとして説明を省略する。以下に説明する照合処理及び更新処理では、N個の登録データEDが格納されているものとして説明する。
【0105】
まず、照合処理について、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御部10は、画像読取部16によって照合対象とする指紋画像の読取を実行する(ステップD1)。
【0106】
制御部10は、画像読取部16により読み取られた指紋画像データをもとに照合データを作成する(ステップD2)。すなわち、制御部10は、指紋画像データに対して2値化及び細線化の画像処理を施して、指紋隆線のパターンを表す画像を生成する。そして、指紋隆線の画像中から特徴点を抽出する。特徴点としては、登録処理と同様にして、例えば指紋隆線が途切れた端点や、指紋隆線が分岐している分岐点を特徴点として抽出する。そして、制御部10は、各特徴点の位置、種類、方向を算出して、これらを照合データ22bとしてRAM22に記憶させる。
【0107】
次に、制御部10は、記憶装置20に記憶されたN個の登録データ20cを順に読込み、RAM22に記憶させる(登録データ22a)(ステップD3)。
【0108】
ここで、制御部10は、登録データ22aと照合データ22bとについて第1照合を実行して、登録データ22aに対して照合データ22bが合致しているかを判定するための類似度を算出する(ステップD4)。第1照合では、登録データ22aに含まれる合致使用頻度率UFが高い上位P個の特徴点Mを用いて、照合データ22bと照合を行う。
【0109】
また、合致使用頻度率UFが高い上位P個の限られた特徴点を選択するだけでなく、合致使用回数UNが上位の限られた特徴点を選択して、この特徴点の特徴量と照合データ22bの特徴量とを照合するようにしても良い。
【0110】
以下、記憶装置20に記憶されたその他の登録データ22aを順次読み出して、同様にして照合データ22bと第1照合を実行して、照合データ22bとの類似度を求める。
【0111】
制御部10は、記憶装置20からN個の登録データ22aを読込み終えると(ステップD5、Yes)、照合データ22bに対する類似度が高い上位Q個の登録データ22aを選定する(ステップD6)。
【0112】
次に、制御部10は、選定されたQ個の登録データ22aに対して、照合データ22bと第2照合を実行して、照合データ22bに対する類似度が最大となる登録データ22aを検出する(ステップD7)。第2照合では、登録データ22aに含まれる全ての特徴点の特徴量を用いて、照合データ22bとの照合を行って類似度を算出する。ここで、類似度が最大となる登録データ22aを検出した時の最大類似度値をSmaxとする。
【0113】
ここで、制御部10は、検出された登録データ22aが照合データ22bと合致しているかを判定する(ステップD8)。すなわち、制御部10は、最大類似度値Smaxと、予め設定された閾値TMとを比較して、最大類似度値Smaxが閾値TMより小さい場合には(ステップD9、No)、N個の登録データ22aの中に照合データ22bと合致する登録データが存在しなかったという判定結果を出力して照合処理を終了する。
【0114】
一方、最大類似度値Smaxが閾値TM以上であった場合には(ステップD9、Yes)、制御部10は、最大類似度値Smaxが検出された時の登録データ22aが、照合データ22bと合致する登録データであるとして照合結果を出力し、その後、登録データ22aに対する更新処理を実行した後に(ステップB6)、照合処理を終了する。
【0115】
次に、更新処理について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御部10は、照合処理において、最大類似度値Smaxが得られた登録データ22aついて、この登録データ22aに対して照合データ22bが合致していると判定される根拠となった特徴点を抽出する(ステップE1)。すなわち、登録データ22a内の特徴点において合致使用頻度率UFが高い上位P個の特徴点Mを抽出する。
【0116】
制御部10は、登録データ22a内の抽出された特徴点における合致照合回数VN、合致使用回数UN、合致使用頻度率UFを更新する(ステップE2)。すなわち、合致照合回数VNと、合致判定に用いられた特徴点Mの合致使用回数UNを+1する。そして、更新された合致照合回数VNと各合致使用回数UNに応じて、それぞれに対する合致使用頻度率UF(=合致使用回数UN/合致照合回数VN)を算出して更新する。
【0117】
次に、制御部10は、最大類似度値Smaxが得られた登録データ22a内の特徴点において、合致使用頻度率UFに関する有効条件を満たしていない特徴点を抽出する(ステップE3)。例えば合致使用頻度率UFが0、すなわち合致判定された際に合致判定の根拠となったことがない特徴点、あるいは合致使用頻度率UFが予め設定された閾値以下であり、合致判定の根拠となる回数が少ない特徴点を、有効条件を満たしていないとして抽出する。
【0118】
合致使用頻度率UFに関する有効条件を満たしていない特徴点が抽出された場合(ステップE4、Yes)、制御部10は、登録データ22aから抽出された特徴点を削除して、登録データ22aを更新する(ステップE5)。
【0119】
そして、登録データ22a内の特徴点における合致照合回数VN、合致使用回数UN、合致使用頻度率UFに基づいて、合致判定係数αを更新する(ステップE6)。
【0120】
ここでは、照合回数が多くなっても、合致判定の際の使用頻度が高い特徴点Mについては、照合に際しての利用が安定している。従って、そのように特徴点Mに対する合致判定係数αの値を大きくするように更新する。合致判定係数αの値を大きくすることにより、照合データとの照合時に類似度値を高くするなどして照合判定を行う。
【0121】
次に、制御部10は、最大類似度値Smaxが得られた登録データ22aに対する特徴点で存在しない照合データ22bの特徴点を登録データ22aに追加し(ステップE7)、登録データ22aを更新する(ステップE8)。以上により更新処理を終了する。
【0122】
このようにして、第2実施形態の指紋照合装置では、登録データとして保存されている合致使用頻度率UFが高い上位P個の特徴点を用いて、N個の登録データから、照合データに対する類似度が高い上位Q個の登録データを選定し、そして、選定されたQ個の登録データに対して、登録データとして保存されている全ての特徴点を用いて、照合データに対して類似度が最大となる登録データを検出することにより、N個の登録データの中から、照合データと合致する登録データを検出する照合時間を短縮することが可能となる。
【0123】
1対N照合を行って、N個の登録データから、照合データと合致していると判定される登録データが検出されるたびに、照合データと合致していると判定された登録データの特徴点の合致使用頻度率を算出して、さらに、合致使用頻度率に対応して合致判定係数を変動させて、登録データの学習を行い、さらに、1対N照合時には、合致判定係数を考慮して、照合データに対する類似度が最大となる登録データを検出することにより、経時変動に伴う照合精度の劣化を抑制することが可能となる。
【0124】
1対N照合を行って、N個の登録データから、照合データと合致していると判定される登録データが検出されるたびに、照合データと合致していると判定された登録データの特徴点の合致使用頻度率を算出して、登録データの学習を行い、さらに、合致使用頻度率に関する有効条件を満足しない特徴点に対しては、登録データから削除して、登録データを更新することにより、登録データを保存するメモリ容量を削減することが可能である。
【0125】
また、指紋照合装置を実現するコンピュータに実行させることのできる登録プログラム及び照合プログラムを、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで、あるいは通信媒体を通じて提供することができる。登録プログラム及び照合プログラムによりコンピュータの動作を制御することで、前述した実施形態における機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施形態(第1実施形態、第2実施形態)における指紋照合装置の構成を示すブロック図。
【図2】登録処理によって登録される登録データ22a(20c)のデータ構成の一例を示す図。
【図3】特徴点データ22a3に含まれるデータの詳細を示す図。
【図4】指紋画像データの採取を3回実行することにより読み取られた指紋画像データD1,D2,D3を概念的に示す図。
【図5】第1実施形態における登録処理について説明するためのフローチャート。
【図6】第1実施形態における照合処理について説明するためのフローチャート。
【図7】第1実施形態における更新処理を説明するためのフローチャート。
【図8】第2実施形態における照合処理について説明するためのフローチャート。
【図9】第2実施形態における更新処理を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0127】
10…制御部、12…表示部、14…キー入力部、16…画像読取部、20…記憶装置、20a…登録プログラム、20b…照合プログラム、22…RAM、20c,22a…登録データ、22b…照合データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋画像から抽出される特徴点を比較することにより、登録データと照合データとの照合を行う指紋照合装置において、
指紋画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段により読み取られた複数の指紋画像から抽出される特徴点をもとに、前記複数の指紋画像について相互照合を行う相互照合手段と、
前記相互照合手段による相互照合により合致していると判定された回数を示す合致照合回数と、合致すると判定される根拠となった特徴点に対する合致使用回数とを、相互照合の対象とする各指紋画像について計数する計数手段と、
前記計数手段により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを元に、前記複数の指紋画像の何れかを選定する画像選定手段と、
前記画像選定手段により選定された指紋画像から抽出された特徴点の特徴量と、前記計数手段により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを含む登録データを生成する登録データ生成手段と
を具備したことを特徴とする指紋照合装置。
【請求項2】
前記登録データ生成手段は、
前記合致照合回数と前記合致使用回数をもとに、前記画像選定手段により選定された指紋画像の特徴点に対する合致使用頻度率を算出し、前記登録データに含めることを特徴とする請求項1記載の指紋照合装置。
【請求項3】
前記登録データ生成手段は、
前記合致使用頻度率に応じて、前記特徴点に対する照合時の安定度を表す合致判定係数を前記登録データに含めることを特徴とする請求項2記載の指紋照合装置。
【請求項4】
前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、
前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用回数をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して照合を行う照合手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の指紋照合装置。
【請求項5】
前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、
前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して照合を行う照合手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項2記載の指紋照合装置。
【請求項6】
前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、
前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の前記合致判定係数を考慮した特徴量とを比較して照合を行う照合手段と
を具備したことを特徴とする請求項3記載の指紋照合装置。
【請求項7】
前記照合手段による照合結果をもとに、前記登録データの前記合致照合回数と前記合致使用回数とを更新する更新手段をさらに具備したことを特徴とする請求項4または請求項5記載の指紋照合装置。
【請求項8】
前記照合手段による照合結果をもとに、前記登録データの前記合致使用頻度率を更新する更新手段と、
前記更新手段により更新された前記合致使用頻度率が有効条件を満たさない特徴点を削除する削除手段をさらに具備したことを特徴とする請求項5記載の指紋照合装置。
【請求項9】
前記照合手段による前記照合データと前記登録データとの比較において、前記登録データに対応する特徴点が存在しない前記照合データ中の特徴点があった場合に、前記照合データ中の特徴点を前記登録データに追加する追加手段をさらに具備したことを特徴とする請求項4、請求項5、または請求項6の何れかに記載の指紋照合装置。
【請求項10】
前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、
前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用回数をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して類似度を算出する第1照合手段と、
前記登録データ生成手段によって生成された複数の登録データから前記第1照合手段によって算出された類似度が高い上位の登録データを選定する登録データ選定手段と、
前記登録データ選定手段により選定された登録データに含まれる全ての特徴点の特徴量と前記照合データに含まれる特徴点の特徴量との比較により類似度を算出する第2照合手段と、
前記第2照合手段により算出された類似度をもとに前記登録データと前記照合データの合致を判定する判定手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の指紋照合装置。
【請求項11】
前記画像読取手段により読み取られた指紋画像から抽出される特徴点の特徴量を含む照合データを生成する照合データ生成手段と、
前記照合データ生成手段により生成された照合データと、前記登録データ生成手段によって生成された登録データ中の前記合致使用頻度率をもとに選択された特徴点の特徴量とを比較して類似度を算出する第1照合手段と、
前記登録データ生成手段によって生成された複数の登録データから前記第1照合手段によって算出された類似度が高い上位の登録データを選定する登録データ選定手段と、
前記登録データ選定手段により選定された登録データに含まれる全ての特徴点の特徴量と前記照合データに含まれる特徴点の特徴量との比較により類似度を算出する第2照合手段と、
前記第2照合手段により算出された類似度をもとに前記登録データと前記照合データの合致を判定する判定手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項2記載の指紋照合装置。
【請求項12】
指紋画像から抽出される特徴点を比較することにより、登録データと照合データとの照合を行う指紋照合方法において、
指紋画像を読み取る画像読取行程と、
前記画像読取行程により読み取られた複数の指紋画像から抽出される特徴点をもとに、前記複数の指紋画像について相互照合を行う相互照合行程と、
前記相互照合行程による相互照合により合致していると判定された回数を示す合致照合回数と、合致すると判定される根拠となった特徴点に対する合致使用回数とを、相互照合の対象とする各指紋画像について計数する計数行程と、
前記計数行程により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを元に、前記複数の指紋画像の何れかを選定する画像選定行程と、
前記画像選定行程により選定された指紋画像から抽出された特徴点の特徴量と、前記計数行程により計数された前記合致照合回数と前記合致使用回数とを含む登録データを生成する登録データ生成行程とを有することを特徴とする指紋照合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−272769(P2007−272769A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100259(P2006−100259)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】