説明

挟み込み検知装置

【課題】電動スライドドア等の開閉部材が閉動作中であることを乗降者が識別し易くすることで、安全性を高め、その結果、「ある程度の荷重が必要」という感圧式の挟み込み検知装置ならではの条件が原因の問題を解決することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、開閉動作する電動スライドドア12の端部の縁に沿って備えられ、人体や物体が接触し押圧することより、その形状が変形することで変化する電気抵抗を検知することで、電動スライドドア12に係る挟み込みを検知する感圧式の挟み込み検知部25と、電動スライドドア12の端部の縁に沿って発光するように、挟み込み検知部25の長手方向に沿って備えられる発光部23と、からなり、発光部23は、電動スライドドア12が動作中に発光することを特徴する挟み込み検知装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の電動スライドドアに取り付けられる挟み込み検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワゴン車、ワンボックス車、又はミニバンと称される自動車には、スライドドアが電動で開閉動作を行う電動スライドドアが備えられている。
【0003】
該電動スライドドアは、スライドドアを電動で開閉動作を行うため、電動スライドドアと車体との間に人体や物体を挟み込んでしまうおそれがあり、その対策として、閉動作中の電動スライドドアと車体との間に人体や物体が接触したことを検知する挟み込み検知装置を電動スライドドアの端部に備え、該挟み込み検知装置の検知結果に基づいて電動スライドドアの閉動作を緊急停止し、直ちに開動作に移行することで上記したような挟み込みを防止するシステムがある。
【0004】
ところで、挟み込み検知装置の従来技術として、人体や物体が接触し押圧することにより、その形状が変形することで変化する電気抵抗を検知する感圧式の挟み込み検知装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3707796号公報
【特許文献2】特開2005−329923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている感圧式の挟み込み検知装置は、比較的軽荷重の押圧でも人体や物体の接触を検知することが可能ではあるが、比較的軽荷重でもよいとはいえ、確実に異物の接触を検知するためには、どうしても、「ある程度の荷重が必要」という感圧式の挟み込み検知装置ならではの条件がある。この条件は、以下の問題を引き起こす可能性があった。
【0007】
例えば、自動車において、電動スライドドアの閉動作中に、乗降者の不注意により乗降し電動スライドドアの端部に接触するような場合、当該接触により、乗降者がバランスを崩し転倒してしまうという問題が考えられる。
【0008】
また、近年、電動スライドドアの開閉動作に係る操作スイッチをキー(無線式キー)に内蔵し、電動スライドドアの開閉動作をリモートコントロールする技術も定着しつつあり、上記した問題が顕在化する傾向にある。
【0009】
更に、挟み込み検知装置が有するゴム製の保護管は、通常、黒色(暗色)であり、例えば、夜間の屋外のように照度の低い場所では視認性が悪いため、こうした場所においても、上記した問題が顕在化する傾向にある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み成されたもので、電動スライドドア等の開閉部材が閉動作中であることを乗降者が識別し易くすることで、安全性を高め、その結果、「ある程度の荷重が必要」という感圧式の挟み込み検知装置ならではの条件が原因の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記事情を鑑み成されたもので、少なくとも、開閉動作する開閉部材の端部の縁に沿って備えられ、人体や物体が接触し押圧することより、その形状が変形することで変化する電気抵抗を検知することで、前記開閉部材に係る挟み込みを検知する感圧式の挟み込み検知部と、前記開閉部材の端部の縁に沿って発光するように、前記挟み込み検知部の長手方向に沿って備えられる発光部と、からなり、前記発光部は、前記開閉部材が動作中に発光することを特徴とする挟み込み検知装置である。
【0012】
また、本発明は、前記発光部は、側面発光型の光ファイバであることとしても良い。
【0013】
また、本発明は、前記挟み込み検知部は、外部環境から保護するための保護管を含み、前記発光部は、前記保護管の長手方向に沿って備えられることとしても良い。
【0014】
また、本発明は、前記保護管は、ゴム製であることとしても良い。
【0015】
また、本発明は、前記保護管は、前記発光部を配置するための溝が長手方向に沿って形成されていることとしても良い。
【0016】
また、本発明は、前記溝は、前記発光部を配置した状態において、前記開閉部材の略先端部に沿って配置されるように形成されることとしても良い。
【0017】
また、本発明は、前記発光部による発光は、前記開閉部材の動作状態に応じて、発光色が変化することとしても良い。
【0018】
また、本発明は、前記発光部の発光色を変更できる変更手段を備えたこととしても良い。
【0019】
また、本発明は、前記発光部による発光と連動して警報音が鳴らす警報音発生手段を備えたこととしても良い。
【0020】
また、本発明は、前記発光部による発光色は、前記開閉部材の色の反対色であることとしても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電動スライドドア等の開閉部材が閉動作中であることを乗降者が識別し易くなり、安全性を高めることができる。これにより、「ある程度の荷重が必要」という感圧式の挟み込み検知装置ならではの条件が原因の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に関し、本発明に係る挟み込み検知装置を取り付けた自動車の電動スライドドア及びその周辺を示した図である。
【図2】本発明の実施形態に関し、本発明に係る挟み込み検知装置の軸方向から見た横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図に従って説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に関し、本発明に係る挟み込み検知装置13を取り付けた自動車11の電動スライドドア12及びその周辺を示した図である。また、図2は、本発明の実施形態に関し、本発明に係る挟み込み検知装置の軸方向から見た横断面図である。
【0025】
本発明の実施形態は、例えば、自動車11の開閉部材としての電動スライドドア12に取り付けられる感圧式の挟み込み検知装置13であって、図1に示すように、少なくとも、開閉動作する電動スライドドア12の端部の縁に沿って備えられ、人体や物体が接触し押圧することより、その形状が変形することで変化する電気抵抗を検知することで、電動スライドドア12に係る挟み込みを検知する感圧式の挟み込み検知部25と、電動スライドドア12の端部の縁に沿って発光するように、挟み込み検知部25の長手方向に沿って備えられる発光部23と、からなり、発光部23は、電動スライドドア12が動作中に発光することを特徴する挟み込み検知装置である。
【0026】
電動スライドドア12は、ドアハンドル14、図示しない無線式キー又は自動車運転席付近に設置されている開閉スイッチによって、電動で開閉動作する。この電動スライドドア12の一端側には、電動スライドドア12に係る人体や物体の挟み込みを検知する感圧式の挟み込み検知部25が電動スライドドア12の端部の上端から下端にわたって備えられている。
【0027】
挟み込み検知部25は、図2に示すように、絶縁体からなり中央に空隙が形成される円筒状の本体部26と、導電体からなり本体部26の内面に2本ずつ対向して4本備えられる棒状の内部導体22と、本体部26を収容し外部環境から保護するための保護管21とからなる。更に、この内部導体22は、挟み込み検知部25の長手方向に螺旋状に構成されている。この様に構成することにより、柔軟性を向上させ湾曲形状に合わせて取り付けることが可能となる。
【0028】
この挟み込み検知部25は、所謂、感圧式であり、例えば、電動スライドドア12が閉動作中に、人体や物体に接触し押圧されると、挟み込み検知部25が潰れて内部導体22が相互に接触する。そして、内部導体22が相互に接触すると、内部導体22が接続されている電気回路内の電気抵抗が変化し、該変化した電気抵抗を検知することで、電動スライドドア12に係る挟み込みを検知する。なお、内部導体22の数は、2本であっても良く、その感知精度は変わらない。
【0029】
保護管21は、合成ゴム製であり、その内部に本体部26及び内部導体22が収容できるように形成されている。そして、図2には図示されていないが、その一端部は、電動スライドドア12の端部、より詳しくは、先端部に取り付けられるように取付部が形成されている。なお、上述したように、保護管21は合成ゴム製であるが、これにより、挟み込み検知部25への荷重が比較的軽いものであっても検知することが可能となり、検知精度が向上する。言うまでもないが、この保護管21は、電動スライドドア12が閉状態の際、自動車11の車内に雨滴や隙間風の侵入を防止するといった役割を果たしている。
【0030】
更に、保護管21には、発光部23を配置するための溝24が長手方向に沿って且つ略全長に亘って形成されている。この様に構成することにより、発光部23の位置決めが容易となる。また、発光部23の固定の強化も図り易くなる。なお、本発明の実施形態では、溝24は、発光部23を配置した状態において、電動スライドドア12の略先端部に沿って配置されるように形成されている。
【0031】
発光部23は、側面発光型の光ファイバを用いた。なお、この発光部23の発光源は、発光ダイオードであることが好ましい。
【0032】
本発明の実施形態では、発光部23としての側面発光型の光ファイバの直径を1.8mmとしたので、形成する溝24は、幅2.4mm、深さ1.0mmとした。
【0033】
以上、この様に構成された本発明の実施形態では、電動スライドドア12の閉動作中に人体や物体が挟み込み検知装置13に接触し押圧すると、電動スライドドア12に係る挟み込み、即ち、人体や物体の接触を検知し、電動スライドドア12を緊急停止させ、直ちに開動作に移行させる。
【0034】
更に、本発明の実施形態では、電動スライドドア12が閉動作中のときには、発光部23が白色に発光する。
【0035】
この様に構成することにより、電動スライドドア12が閉動作中であることを乗降者が識別し易くなり、安全性を高めることができる。そして、「ある程度の荷重が必要」という感圧式の挟み込み検知装置ならではの条件が原因の問題を解決することができる。
【0036】
更に、発光部23という構成は、意匠性の価値を向上させる構成である。
【0037】
最後に、本発明の実施形態における変形例を説明する。
【0038】
1.発光部23の発光時期に関し、電動スライドドア12が開動作中に発光してもよい。この様に構成することにより、前方から接近する車両の運転手等に、人が降車する可能性があることを認識させることができ、更に安全性を高めることが可能となる。
【0039】
2.発光部23の発光色は、白色ではなく、赤色でもよい。この様に構成することにより、より注意を喚起することができる。また、車体(電動スライドドア12)の色を考慮し、注意を喚起し易い色、例えば、車体の色の反対色にしてもよい。
【0040】
3.発光部23による発光は、点灯でも点滅でも良い。
【0041】
4.発光部23は、色彩と発光パターンを工夫することにより、意匠性と注意喚起の両方に優れた構成を実現することができる。
【0042】
5.発光部23による発光に関し、電動スライドドア12の動作状態に応じて、発光部23の発光色が変化するようにしてもよい。より詳しくは、電動スライドドア12の動作を全開状態から全閉状態までの間を3等分し、全開状態から3分の1閉じた状態を青色に、3分の1閉じた状態から3分の2閉じた状態を黄色に、3分の2閉じた状態から全閉状態を赤色に、発光部23が発光するようにしてもよい。この様に構成することにより、電動スライドドア12の動作状態の更に認識し易くなる。また、装飾効果を奏させ、意匠上価値の向上が可能となる。
【0043】
6.発光部23の発光色は、発光部23の発光色を変更できる変更手段を備え、利用者の好みに応じたものを選択できるようにしてもよい。この様に構成することにより、更に、装飾効果を奏させ、意匠上価値の向上が可能となる。
【0044】
7.警報音発生手段を備え、発光部23の発光と連動して、警報音が鳴るようにしてもよい。この様に構成することにより、乗降者は、視覚及び聴覚両方によって電動スライドドア12が閉状態にあることを認識させることができる。また、視覚的に不自由のある人又は聴覚的に不自由のある人、両方に対応することができるシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 自動車
12 電動スライドドア
13 挟み込み検知装置
14 ドアハンドル
21 保護管
22 内部導体
23 発光部
24 溝
25 挟み込み検知部
26 本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
開閉動作する開閉部材の端部の縁に沿って備えられ、人体や物体が接触し押圧することより、その形状が変形することで変化する電気抵抗を検知することで、前記開閉部材に係る挟み込みを検知する感圧式の挟み込み検知部と、
前記開閉部材の端部の縁に沿って発光するように、前記挟み込み検知部の長手方向に沿って備えられる発光部と、
からなり、
前記発光部は、前記開閉部材が動作中に発光することを特徴する挟み込み検知装置。
【請求項2】
前記発光部は、側面発光型の光ファイバであることを特徴とする請求項1記載の挟み込み検知装置。
【請求項3】
前記挟み込み検知部は、外部環境から保護するための保護管を含み、
前記発光部は、前記保護管の長手方向に沿って備えられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の挟み込み検知装置。
【請求項4】
前記保護管は、ゴム製であることを特徴とする請求項3記載の挟み込み検知装置。
【請求項5】
前記保護管は、前記発光部を配置するための溝が長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の挟み込み検知装置。
【請求項6】
前記溝は、前記発光部を配置した状態において、前記開閉部材の略先端部に沿って配置されるように形成されることを特徴とする請求項5記載の挟み込み検知装置。
【請求項7】
前記発光部による発光は、前記開閉部材の動作状態に応じて、発光色が変化することを特徴する請求項1乃至請求項6の何れかに記載の挟み込み検知装置。
【請求項8】
前記発光部の発光色を変更できる変更手段を備えたことを特徴する請求項1乃至請求項7の何れかに記載の挟み込み検知装置。
【請求項9】
前記発光部による発光と連動して警報音が鳴らす警報音発生手段を備えたことを特徴する請求項1乃至請求項8の何れかに記載の挟み込み検知装置。
【請求項10】
前記発光部による発光色は、前記開閉部材の色の反対色であることを特徴する請求項1乃至請求項9の何れかに記載の挟み込み検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−58335(P2011−58335A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212570(P2009−212570)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】