説明

挟持装置及びこの挟持装置を有する設備

【課題】バイメタルを用いて、ワークにダメージを与えないように、ワークを微小な力で挟持することができ、かつ、信頼性、実用性及び生産性などに優れた挟持装置及びこの挟持装置を有する設備の提供を目的とする。
【解決手段】挟持装置1は、平行リンク機構の固定リンクとしてのベースプレート11と、原節としての一対のバイメタル13と、連接棒としての当接部材14とを有し、温度変化によりバイメタル13が変形すると、平行リンク機構により当接部材14が挟持方向に移動してベアチップ3を押圧し、ベアチップ3を挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアチップなどのワークを挟持する挟持装置及びこの挟持装置を有する設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ベアチップ、電子部品などのワークをハンドリングする装置は、ワークにダメージを与えないように、適切な力でワークを挟持する必要がある。この挟持力を制御するために、通常、ロードセル等が用いられており、チャック部が大型化するとともに、構成が複雑になっている。
【0003】
また、近年の電子部品は、小型化及び軽量化により脆弱化している。このため、従来にも増して、ワークにダメージを与えないようにワークを挟持することができ、かつ、信頼性や実用性などに優れた技術が要望されている。
さらに、電子部品は、様々な生産設備や検査設備などを用いて生産されており、これらの設備においても、ワークにダメージを与えないように、ワークを色々な方向から微小な力で挟持することができ、かつ、信頼性、実用性及び生産性などに優れた技術が要望されている。
上記要望に応えるために、様々な技術が提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、半導体チップからなる本体と、熱膨脹の異なる種々の材料の層から形成されている、把持部材としての舌片とを有する把持装置の技術が開示されている。
また、特許文献2には、2つの可撓性フィンガーと、これらの可撓性フィンガーを開閉させる開閉駆動手段とからなる超小型グリッパーの技術が開示されている。この開閉駆動手段は、2つの可撓性フィンガーのそれぞれに設けられた少なくとも2つの金属層からなり、この金属層は異なる熱膨張係数を有している。
さらに、特許文献3には、表面実装されたプリント配線基板上の電子部品を取り外す装置および取り外し方法の技術が開示されている。この技術では、加熱された不活性ガスを供給する取り外し具に、加熱により内側に向けて変形する変形素材が備えられている。
【0005】
また、特許文献4には、一対のバイメタルを用いた平行リンク機構を用いて、出力側ファイバの位置制御を行う、波長分割多重回路の技術が開示されている。
この波長分割多重回路は、光源の波長変化量と対応するように、バイメタルの材質、あるいは、バイメタルで構成した二辺の長さを適宜選択することにより、光源の温度に波長変化を補償することができる。
【特許文献1】特公平08−009148号公報
【特許文献2】特開平08−052673号公報
【特許文献3】特開2001−077526号公報
【特許文献4】特開昭58−009119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の把持装置は、ミクロン単位の小さな対象物を把持する技術であり、数mmから数十mmのベアチップなどのワークに適用することは、困難であった。
また、特許文献2の超小型グリッパーは、超小型機械部品、あるいは、生体等を掴む(把持する)ことを目的とした技術であり、量産用の汎用生産設備に用いることは、実質的に困難であった。
さらに、特許文献3の技術は、変形素材や半田などの温度制御を考慮すると、変形素材の動作が不安定となり、実用化が困難であった。
【0007】
このように、バイメタルなどの温度変化を変位に変換する部材を用いて挟持する技術は、様々提案されてきたものの、特に、量産用の汎用設備などにおいては、実現性が乏しいといった問題があった。すなわち、ワークにダメージを与えないようにワークを挟持することができるものの、信頼性や実用性などの要望に応えることができなかった。
【0008】
また、特許文献4の技術は、一対のバイメタルを用いた平行リンク機構を用いて、位置制御を行うものの、光源の温度に波長変化を補償するための技術であった。すなわち、一対のバイメタルを用いた平行リンク機構を用いて、位置制御を行う技術を、様々な生産設備や検査設備などに適用するには、ワークにダメージを与えないように、ワークを色々な方向から微小な力で挟持することができ、かつ、信頼性、実用性及び生産性などに優れた技術とする必要があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく、バイメタルを用いて、ワークにダメージを与えないように、ワークを微小な力で挟持することができ、かつ、信頼性、実用性及び生産性などに優れた挟持装置及びこの挟持装置を有する設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の挟持装置は、基部と、ワークに当接する当接部材と、基部と当接部材とを連結する少なくとも二つ以上の連結部材とを有している。また、この挟持装置は、二つ以上の連結部材のうち、少なくとも一つの連結部材がバイメタルからなり、さらに、バイメタルが温度変化により変形することによって、当接部材が挟持方向に移動してワークを押圧し、ワークを挟持する構成としてある。
【0011】
また、挟持装置は、通常、二つ以上の連結部材の全てがバイメタルであり、基部、当接部材及び二つ以上の連結部材が平行リンク機構を構成する。さらに、バイメタルの温度を制御する温度制御手段を有している。
なお、二つ以上のバイメタルは、基部に固定された状態で、温度変化に応じて変形する。すなわち、本発明における平行リンク機構とは、あたかも平行リンク機構のように動作する機構(擬似的な平行リンク機構)をいう。
【0012】
好ましくは、当接部材の挟持方向の所定の位置に、ワークと当接して該ワークを挟持する受け部材を有するとよい。
また、バイメタルと当接部材とが、軸支部材や可撓性を有する部材を介して、回動自在に連結されるとよい。
さらに、基部、当接部材及び二つ以上の連結部材を二組以上有し、二組以上の当接部材の挟持方向が、異なる方向であったり、あるいは、同一方向であるとよい。
また、ワークの挟持状態を解除する強制解除手段を有するとよい。
なお、本発明は、挟持装置に限定されるものではなく、たとえば、上述した挟持装置を有する設備としても有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の挟持装置及びこの挟持装置を有する設備によれば、バイメタルを用いて、ワークにダメージを与えないように、ワークを微小な力で挟持することができ、かつ、信頼性、実用性及び生産性などを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかる挟持装置を説明するための概略図であり、(a)は挟持していない状態の側面図を示しており、(b)はA−A断面図を示しており、(c)は挟持した状態の側面図を示しており、(d)はB−B断面図を示している。
図1において、本実施形態の挟持装置1は、ベースプレート11、受け板12、バイメタル13、当接部材14、軸支部材15及びセラミックヒータ16を有している。この挟持装置1は、ワークとしてベアチップ3を挟持する。また、挟持装置1は、矩形板状の断熱ブロック17を介して、エアスライダ2の下面に取り付けられている。
なお、挟持装置1が挟持するワークは、ベアチップ3に限定されるものではなく、たとえば、様々な形状の電子部品などを挟持することができる。
【0015】
ベースプレート11は、矩形状の金属板である。この金属板の材質としては、通常、熱伝導性に優れたアルミニウムや銅などが用いられる。また、ベースプレート11の上面には、矩形板状のセラミックヒータ16が、重ね合わせた状態で設けられている。これにより、セラミックヒータ16の熱が短時間でバイメタル13に伝達されるので、当接部材14の挟持方向への移動速度(挟持速度)や挟持動作の応答性などが向上する。
【0016】
また、ベースプレート11は、一つの辺(挟持方向の辺)に対応する下面の縁部に、受け板12が突設されている。図示してないが、受け板12は、通常、ねじなどによってベースプレート11に固定される。さらに、上記一つの辺と対向する辺(解除方向の辺)に対応する下面の縁部に、受け板12と対向するように、二枚のバイメタル13が突設されている。二枚のバイメタル13は、所定のピッチだけ離れた状態で、ベースプレート11に固定されている。各バイメタル13は、ベースプレート11に形成された二つの溝にそれぞれ埋設されている。ここで、上記所定のピッチは、平行リンク機構の固定リンクの長さであり、ベースプレート11は、平行リンク機構の固定リンクとして機能する。
【0017】
各バイメタル13は、同一であり、熱膨張率が異なる二枚の金属板を貼り合せた構成としてある。バイメタル13は、室温においては、図1(a)に示すように、側面方向から見ると垂直方向に直線状の平板であるが、セラミックヒータ16によって温度が上昇すると、図1(c)に示すように、挟持方向に撓むように変形する。
本実施形態では、二つの連結部材をバイメタル13としてあるので、二つのバイメタル13が、平行リンク機構の二つの原節として機能する。これにより、ベアチップ3を挟持する力(適宜、挟持力と略称する。)が、一つのバイメタル13を有する場合のほぼ二倍となる。さらに、挟持力を二つのバイメタル13によって発生させることにより、挟持力の信頼性が向上し、実用的な構成となる。
また、バイメタル13は、当接部材14の幅寸法とほぼ同じ幅寸法を有する矩形状としてあるが、この形状に限定されるものではない。すなわち、バイメタル13に使用される二つの金属材料や、バイメタル13の幅、長さ及び厚さなどは、ワークの重量などに応じて適宜設定される。
【0018】
当接部材14は、樹脂や金属などからなる矩形平板としてあり、軸支部材15を介して各バイメタル13と回動自在に連結されている。軸支部材15は、金属などからなる細長い平板と、この両端から下方に突設されたほぼ半円状の一対の側板からなる。軸支部材15は、平板の上面に形成された溝に、バイメタル13の下端が埋設され、側板から突設されたピンが、当接部材14の側面の穴に回動自在に嵌入する。このようにすると、当接部材14がスムースに移動することができ、耐久性などを向上させることができる。
上記ピンのピッチは、固定リンクの長さと同じであり、当接部材14は、平行リンク機構の連接棒として機能する。すなわち、ベースプレート11、二つのバイメタル13及び当接部材14は、平行リンク機構(擬似的な平行リンク機構)を構成する。
【0019】
このようにすると、セラミックヒータ16の加熱によりバイメタル13の温度が上昇すると、バイメタル13が挟持方向に撓むように変形する。そして、平行リンク機構により、当接部材14は、挟持方向に移動し、当接部材14の挟持方向の端面が、ベアチップ3の側面を押圧する。
また、セラミックヒータ16への通電が停止されると、バイメタル13の温度が下がり、バイメタル13がもとの直線状態(平板の状態)にもどる。そして、平行リンク機構により、当接部材14は、解除方向に移動し、当接部材14の挟持方向の端面が、ベアチップ3の側面から離れる。
【0020】
受け板12は、金属や樹脂などからなる矩形状の平板であり、上述したように、ねじなどによってベースプレート11に固定される。この受け板12は、当接部材14の挟持方向の所定の位置に、設けられている。この所定の位置とは、バイメタル13が室温であるとき、当接部材14の挟持方向の端面と受け板12の解除方向の側面との距離(L)が、ベアチップ3の幅寸法(W)+適度のクリアランス(2×Δ)となる位置(L=W+2×Δとなる位置)である。また、挟持装置1がベアチップ3を挟持する際の、当接部材14の挟持方向への移動量(ΔL)は、ΔL>2×Δである。
【0021】
本実施形態の挟持装置1は、ベアチップ3を押圧する当接部材14と、ベアチップ3と当接する受け板12とによって、ベアチップ3を挟持する構成としてある。ここで、当接部材14はバイメタル13による弾性を有しているが、受け板12は剛体であり、弾性を有していない。したがって、当接部材14が解除方向に移動し始めても、ベアチップ3は受け板12と当接したまま移動しない。そして、当接部材14が解除方向にさらに移動しベアチップ3から離れると、ベアチップ3は、真下に落下する。すなわち、受け板12を剛体とすることにより、ベアチップ3の挟持を解除する際、ベアチップ3の位置精度が低下するといった不具合を回避することができる。
なお、上記構成に限定されるものではない。たとえば、受け板12の代わりに、一対のバイメタル13、軸支部材15や当接部材14を設け、ベアチップ3を対向する当接部材14で挟持することもできる。この場合には、当接部材14がベアチップ3から離れるタイミングなどによって、ベアチップ3の位置精度が低下することもある。
【0022】
セラミックヒータ16は、バイメタル13の温度を制御する温度制御手段であり、挟持のオン−オフや挟持力などを制御する。
また、本実施形態では、ベースプレート11の上面にセラミックヒータ16を設け、ベースプレート11を介して熱をバイメタル13に伝達する構成としてある。なお、この構成に限定されるものではなく、たとえば、バイメタル13に直接的にヒータ(図示せず)を取り付ける構成としてもよい。
【0023】
断熱ブロック17は、セラミックなどからなる断熱用の矩形状の平板であり、エアスライダ2とセラミックヒータ16の間に挟まれるように設けられている。
【0024】
エアスライダ2は、挟持装置1を上下方向(たとえば、直交座標系のZ軸方向)に移動させる移動手段である。また、図示してないが、エアスライダ2は、水平方向(たとえば、直交座標系のX軸方向及びY軸方向)などに挟持装置1を移動させる移動手段と連結されている。すなわち、挟持装置1は、ベアチップ3の搭載、配列、実装、及び、検査の少なくとも一つを行う設備に用いられる。このように、本実施形態の挟持装置1は、挟持装置1を有する設備の発明としても有効である。
なお、本実施形態では、移動手段としてエアスライダ2を用いたが、これに限定されるものではなく、電磁ソレノイドやリニアモータなどを用いてもよい。
【0025】
次に、上記構成の挟持装置1の動作及び効果について、説明する。
挟持装置1は、図1(a)、(b)に示すように、エアスライダ2などにより、ベアチップ3を挟持する位置に移動される。このとき、セラミックヒータ16には通電されておらず、バイメタル13は室温である。したがって、当接部材14と受け板12の距離は、上述したように距離Lである。また、当接部材14とベアチップ3は、適度のクリアランスΔだけ離れており、受け板12とベアチップ3は、適度のクリアランスΔだけ離れている。
【0026】
次に、セラミックヒータ16に通電すると、セラミックヒータ16の温度が上昇し、この熱がベースプレート11を介してバイメタル13に伝達される。そして、バイメタル13の温度が上昇すると、バイメタル13が挟持方向に撓むように変形する。これにより、図1(c)、(d)に示すように、当接部材14が、ベアチップ3を押圧し、挟持方向に移動させ、ベアチップ3が受け板12と当接し、挟持装置1がベアチップ3を挟持する。このようにすると、ベアチップ3を微小な力でチャッキング(挟持)することができ、ベアチップ3に損傷を与えるといった不具合を防止することができる。
【0027】
次に、エアスライダ2などにより、挟持装置1によって挟持されたベアチップ3が移動される。このとき、セラミックヒータ16への通電が制御され、バイメタル13が挟持する温度に維持されているので、ベアチップ3が落下することはない。
【0028】
続いて、挟持装置1がベアチップ3を解除する位置に移動されると、セラミックヒータ16への通電が停止する。これにより、バイメタル13の温度が低下して、もとの直線状態(平板の状態)にもどり、当接部材14が解除方向に移動する。そして、当接部材14がベアチップ3から離れると、ベアチップ3の挟持が解除される。
この際、ベアチップ3は、受け板12によって位置決めされているので、解除によってベアチップ3の位置がずれるといった不具合を回避することができ、挟持装置1としての信頼性や実用性を向上させることができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の挟持装置1は、バイメタル13を用いた平行リンク機構によって、当接部材14を挟持方向に移動させることができる。これにより、挟持装置1は、ベアチップ3を微小な力でチャッキング(挟持)することができ、ベアチップ3に損傷を与えるといった不具合を防止することができる。さらに、挟持装置1としての信頼性や実用性を向上させることができる。
また、挟持装置1は、ロードセルが不要であり、構造が単純化されるので、小型化することができる。さらに、小型化されることによって、吸着ハンド(図示せず)との流用を図ることができる。
また、本実施形態の挟持装置1は、様々な応用例を有している。
次に、これらの応用例について、図面を参照して説明する。
【0030】
<第一応用例>
図2は、本発明の第一実施形態の第一応用例にかかる挟持装置を説明するための、要部の概略拡大図であり、(a)は挟持していない状態の側面図を示しており、(b)は挟持した状態の側面図を示している。
本応用例は、第一実施形態の挟持装置1と比べて、軸支部材15の代わりに、当接部材14aが、可撓部142を有する点が相違する。その他の構成は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
当接部材14aは、樹脂製の矩形状の板部材であり、バイメタル13の下端が埋設される壁141が突設されている。壁141は、付け根の部分がくびれた可撓部142となっている。可撓部142は、可撓性を有しており、バイメタル13と当接部材14aとを回動自在に連結する。
【0031】
このようにすると、当接部材14aは、可撓部142が撓むことによって、バイメタル13に対して回動することができる。すなわち、この挟持装置1は、ベアチップ3を挟持する際、バイメタル13と当接部材14aとが摺動しないので、摺動によるダストの発生が抑制され、クリーンルーム内での使用に好適である。
【0032】
<第二応用例>
図3は、本発明の第一実施形態の第二応用例にかかる挟持装置の冷却手段などを説明するための概略拡大側面図を示している。
本応用例は、第一実施形態の挟持装置1と比べて、バイメタル13を冷却するためのエアパイプ18や温度センサ19を有する点が相違する。その他の構成は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
エアパイプ18は、冷却用のエアーを吹き付けるパイプであり、電磁弁(図示せず)などと接続されている。また、温度センサ19は、バイメタル13に取り付けられており、バイメタル13の温度を測定する。図示してないが、セラミックヒータ16、温度センサ19及びエアパイプ18の電磁弁は、制御部によって制御される。
【0033】
このようにすると、ベアチップ3の挟持を解除する際、バイメタル13を強制的に空冷することができるので、挟持装置1の動作速度(解除する速度)を速くしたり、動作サイクルを短縮することができる。これにより、生産性などを向上させることができる。
また、温度センサ19を設けることにより、バイメタル13の温度を制御できるので、ベアチップ3を挟持する力を精度よく調節することができる。
さらに、バイメタル13の温度をモニタすることができるので、ベアチップ3を挟持した状態(又は、挟持可能な状態)にあるのか、あるいは、挟持を解除した状態にあるのかなどを、制御部にて確認できる。これにより、挟持装置1の動作の信頼性を向上させることができる。
【0034】
<第三応用例>
図4は、本発明の第一実施形態の第三応用例にかかる挟持装置を説明するための概略図であり、(a)は挟持していない状態の側面図を示しており、(b)はC−C断面図を示しており、(c)は挟持した状態の側面図を示しており、(d)はD−D断面図を示している。
本応用例は、第一実施形態の挟持装置1と比べて、ベースプレート11、一対のバイメタル13及び当接部材14による平行リンク機構を、直交する方向に二つ有する点が相違する。その他の構成は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
二つの当接部材14は、互いに直交する方向に設けられており、二つの受け板12も互いに直交する方向に設けられている。
このようにすると、ベアチップ3を二方向から挟持することができ、ベアチップ3をより確実に挟持することができる。
【0035】
<第四応用例>
図5aは、本発明の第一実施形態の第四応用例にかかる挟持装置を説明するための概略拡大側面図を示している。
図5aにおいて、本応用例の挟持装置1´は、第一実施形態の挟持装置1と比べて、ベースプレート11、一対のバイメタル13及び当接部材14による平行リンク機構を、同一方向に二つ有する点が相違する。その他の構成は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
二つの当接部材14は、同一方向に並べて設けられており、新たに追加された平行リンク機構は、ベースプレート11´、一対のバイメタル13´及び当接部材14´を有している。当接部材14´は、ほぼ当接部材14と接するように設けられている。また、セラミックヒータ16´は、セラミックヒータ16とは別の回路によって、通電される。
【0036】
図5bは、本発明の第一実施形態の第四応用例にかかる挟持装置の、ハーフ出力による挟持状態を説明するための概略拡大側面図を示している。
図5bにおいて、挟持装置1´は、セラミックヒータ16にだけ通電されている。これにより、一対のバイメタル13が挟持方向に撓むように変形し、当接部材14がベアチップ3を挟持する。すなわち、挟持装置1´は、ベアチップ3を一対のバイメタル13による力(ほぼ50%の出力)で挟持する。
【0037】
また、図5cは、本発明の第一実施形態の第四応用例にかかる挟持装置の、フル出力による挟持状態を説明するための概略拡大側面図を示している。
図5cにおいて、挟持装置1´は、セラミックヒータ16及びセラミックヒータ16´に通電されている。これにより、バイメタル13及びバイメタル13´が挟持方向に撓むように変形し、当接部材14´が当接部材14を押圧し、さらに、当接部材14がベアチップ3を押圧する。すなわち、挟持装置1´は、ベアチップ3を一対のバイメタル13及び一対のバイメタル13´による力(ほぼ100%の出力)で挟持する。
【0038】
このように、本応用例の挟持装置1´は、ベアチップ3を挟持する力を、二段階に制御することができる。すなわち、図示してないが、ベアチップ3に新たな部品などが実装され、ベアチップ3が重くなる場合であっても、確実かつ容易に対応することができる。
【0039】
[第二実施形態]
図6は、本発明の第二実施形態にかかる挟持装置を説明するための概略拡大側面図を示している。
図6において、本実施形態の挟持装置1bは、第一実施形態と比べて、断熱ブロック17b、セラミックヒータ16b、ベースプレート11b、バイメタル13、軸支部材15及び当接部材14がエアスライダ2に対して移動自在に設けられている点が相違する。その他の構成は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
【0040】
挟持装置1bは、第一実施形態と同様の平行リンク機構(擬似的な平行リンク機構)を有し、第一実施形態に比べて、小型のベースプレート11b及びセラミックヒータ16bを有している。さらに、ベースプレート11b及びセラミックヒータ16bは、鉤状に曲った断熱ブロック17bに取り付けられている。
また、エアスライダ2の下面にエアシリンダ保持部材41が固定されており、エアシリンダ保持部材41に埋設されたエアシリンダ4に、断熱ブロック17bが連結されている。これにより、断熱ブロック17bは、挟持方向及び解除方向に移動する。
また、受け板12は、エアシリンダ保持部材41に固定されている。その他の構成は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
【0041】
上記構成の挟持装置1bは、通常(強制解除動作のときを除いて)、断熱ブロック17bが挟持方向に移動された状態にある。そして、ワーク(図示せず)を挟持する際、断熱ブロック17bが挟持方向に移動された状態を維持したまま、セラミックヒータ16bに通電される。これにより、挟持装置1bは、第一実施形態と同様に、ワークを微小な力でチャッキング(挟持)することができ、ワークに損傷を与えるといった不具合を防止することができる。
【0042】
続いて、ワークの挟持を解除する際には、セラミックヒータ16bへの通電を停止するとともに、エアシリンダ4が断熱ブロック17bを強制解除方向に移動させる。このようにすると、挟持状態の解除が強制的に行われ、解除動作を迅速かつ確実に行うことができる。そして、バイメタル13が室温にもどり、断熱ブロック17bが挟持方向に移動されると、次の挟持を行うことが可能な状態となる。これにより、挟持装置1bは、生産性や実用性を大幅に向上させることができる。
【0043】
以上説明したように、挟持装置1bは、ワークの挟持状態を解除する強制解除手段(本実施形態においては、エアシリンダ4)を有することによって、ワークの挟持状態を確実かつ迅速に解除することができ、生産性を大幅に向上させることができる。また、挟持装置1bは、挟持装置1と同様に、ワークを微小な力でチャッキング(挟持)することができ、ワークに損傷を与えるといった不具合を防止することができる。
【0044】
また、受け板12は、エアシリンダ保持部材41に固定する構成としてあるが、この構成に限定されるものではない。たとえば、図示してないが、リニアモータなどを設けて、受け板12を所定の位置に移動自在にエアシリンダ保持部材41に固定してもよい。このようにすると、ワークの大きさが変わっても、容易に対応することができ、挟持装置1bの付加価値を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明の挟持装置及びこの挟持装置を有する設備について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る挟持装置及びこの挟持装置を有する設備は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、当接部材14の形状は、上記矩形平板状に限定されるものではなく、たとえば、電子部品などのワークに対応した形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の挟持装置及びこの挟持装置を有する設備は、ワークを挟持する装置や設備に限定されるものではなく、たとえば、ワークを微小な力で移動させる位置決め装置などとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかる挟持装置を説明するための概略図であり、(a)は挟持していない状態の側面図を示しており、(b)はA−A断面図を示しており、(c)は挟持した状態の側面図を示しており、(d)はB−B断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態の第一応用例にかかる挟持装置を説明するための、要部の概略拡大図であり、(a)は挟持していない状態の側面図を示しており、(b)は挟持した状態の側面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態の第二応用例にかかる挟持装置の冷却手段などを説明するための概略拡大側面図を示している。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態の第三応用例にかかる挟持装置を説明するための概略図であり、(a)は挟持していない状態の側面図を示しており、(b)はC−C断面図を示しており、(c)は挟持した状態の側面図を示しており、(d)はD−D断面図を示している。
【図5a】図5aは、本発明の第一実施形態の第四応用例にかかる挟持装置を説明するための概略拡大側面図を示している。
【図5b】図5bは、本発明の第一実施形態の第四応用例にかかる挟持装置の、ハーフ出力による挟持状態を説明するための概略拡大側面図を示している。
【図5c】図5cは、本発明の第一実施形態の第四応用例にかかる挟持装置の、フル出力による挟持状態を説明するための概略拡大側面図を示している。
【図6】図6は、本発明の第二実施形態にかかる挟持装置を説明するための概略拡大側面図を示している。
【符号の説明】
【0048】
1、1´、1b 挟持装置
2 エアスライダ
3 ベアチップ
4 エアシリンダ
11、11´、11b ベースプレート
12 受け板
13、13´ バイメタル
14、14´、14a 当接部材
15 軸支部材
16、16´、16b セラミックヒータ
17、17b 断熱ブロック
18 エアパイプ
19 温度センサ
41 エアシリンダ保持部材
141 壁
142 可撓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、ワークに当接する当接部材と、前記基部と当接部材とを連結する少なくとも二つ以上の連結部材とを有する挟持装置であって、
前記二つ以上の連結部材のうち、少なくとも一つの連結部材がバイメタルからなり、
前記バイメタルが温度変化により変形することによって、前記当接部材が挟持方向に移動して前記ワークを押圧し、前記ワークを挟持することを特徴とする挟持装置。
【請求項2】
前記当接部材の挟持方向の所定の位置に、前記ワークと当接して該ワークを挟持する受け部材を有することを特徴とする請求項1に記載の挟持装置。
【請求項3】
前記二つ以上の連結部材の全部をバイメタルとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の挟持装置。
【請求項4】
前記基部、当接部材及び二つ以上の連結部材が平行リンク機構を構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の挟持装置。
【請求項5】
前記バイメタルの温度を制御する温度制御手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の挟持装置。
【請求項6】
前記バイメタルと当接部材とが、軸支部材を介して、回動自在に連結されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の挟持装置。
【請求項7】
前記バイメタルと当接部材とが、可撓性を有する部材を介して、回動自在に連結されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の挟持装置。
【請求項8】
前記基部、当接部材及び二つ以上の連結部材を、二組以上有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の挟持装置。
【請求項9】
前記二組以上の当接部材の前記挟持方向が、異なる方向であることを特徴とする請求項8に記載の挟持装置。
【請求項10】
前記二組以上の当接部材の前記挟持方向が、同一方向であることを特徴とする請求項8に記載の挟持装置。
【請求項11】
前記ワークの挟持状態を解除する強制解除手段を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の挟持装置。
【請求項12】
ワークを挟持する挟持装置を有し、前記ワークの搭載、配列、実装、及び、検査の少なくとも一つを行う、前記挟持装置を有する設備において、
前記挟持装置を、上記請求項1〜11のいずれか一項に記載された挟持装置としたことを特徴とする挟持装置を有する設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83012(P2009−83012A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253535(P2007−253535)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】