説明

振動機能付き携帯端末

【課題】振動デバイスを用いて、危険情報および方向の伝達を可能とする携帯端末を提供する。
【解決手段】携帯端末は、外部情報を取得するセンサーと、外部情報に基づいて振動パターンを生成する生成手段と、独立に振動可能な複数の素子を有し、振動パターンに基づいて該素子を振動させる振動デバイスとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動機能付き携帯端末に関する。より詳細には、振動機能を用いて危険情報および方向の伝達を実現する携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)等に代表されるの携帯端末装置は、一般に、出力装置として、スピーカー、ディスプレイを備えている。一方、視覚、聴覚以外の手段を用いて各種の情報を操作者に伝達する携帯端末装置も提案されるようになってきた。
【0003】
特許文献1では、表示画面の前面に保持されたタッチパネルを操作箇所に応じて振動させ、このタッチパネルの振動により目的の方向をユーザに伝達することにより、煩雑な表示を有効に回避して、進行方向の方位、目的地の方向等を簡易かつ確実にユーザに伝達することができる情報伝達装置が開示されている
【0004】
また、特許文献2では、音を振動に変換し耳に伝達する装置であって、振動伝達部を耳に装着し、装置本体を携帯することによって周りで発生する音を振動に変換して耳に伝達伝達する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−10119号公報
【特許文献2】特開平10−290489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、携帯電話は、老若男女問わず広い世代にわたって使用されるようになってきており、高齢者、障害者等にも使用されている。それに伴い、高齢者、障害者等が使いやすい携帯電話が求められている。
【0007】
特許文献1は、振動により目的の方向をユーザに伝達するが、ユーザがタッチパネルを操作しているときのみ、振動による方向情報の伝達が行われていた。また、特許文献2では、常に音を振動に変換し耳に伝達していた。そのため、緊急情報、例えば危険情報等を振動によりユーザに伝達することはできず、高齢者、障害者にとってのサポート機器として有効ではないという課題があった。
【0008】
従って、本発明は、振動デバイスを用いて、危険情報および方向の伝達を可能とする携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による携帯端末は、外部情報を取得するセンサーと、前記外部情報に基づいて振動パターンを生成する生成手段と、独立に振動可能な複数の素子を有し、前記振動パターンに基づいて該素子を振動させる振動デバイスとを備えている。
【0010】
また、前記振動デバイスは、独立に上下振動可能な複数のピンを面上に有し、前記振動パターンに基づいて該ピンを上下振動させることも好ましい。
【0011】
また、前記振動デバイスは、表面が複数の面に分かれ、該面は独立して上下振動可能であり、前記振動パターンに基づいて該面を上下振動させることも好ましい。
【0012】
また、前記センサーは、方位を取得する装置であり、前記生成手段は、前記取得された方位を表す振動パターンを生成する手段であることも好ましい。
【0013】
また、位置情報を取得するセンサーをさらに備え、前記生成手段は、位置情報を表す振動パターンをさらに生成する手段であることも好ましい。
【0014】
また、前記取得された外部情報に基づき、危険レベルを判定する手段をさらに有し、前記生成手段は、前記危険レベルが高いほど多くの面積を振動する、振動の振幅を大きくする、または振動周期を速くする振動パターンを生成することも好ましい。
【0015】
また、前記取得された外部情報に基づき、危険物の形状を判定する手段をさらに有し、前記生成手段は、危険物の形状を表す振動パターンをさらに生成することも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高齢者・障害者に危険情報および方位情報を、面的な振動のパターンとして伝えることができ、高齢者・障害者に安心・安全を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】指先無毛部の4つの機械受容器を示す。
【図2】マイスナー小体とパチーニ小体の加齢による触覚受容能力の変化を示す。
【図3】本発明による振動デバイスを備えた携帯電話の実施形態を示す。
【図4】振動デバイスの例を示す。
【図5】振動デバイスによる方位表示のフローを示す。
【図6】振動デバイスによる危険情報表示のフローを示す。
【図7】振動デバイスによる方位の出力の例を示す。
【図8】振動デバイスによる危険レベルの出力の例を示す。
【図9】振動デバイスによる危険物の形状の出力の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
平均寿命の向上により、高齢者(65歳)人口は急速に増加している。例えば、日本では2005年1月1日現在、高齢者は2500万人以上と推定され、さらに増えると予測されている。一般に、高齢者は、加齢と共に社会生活をする上で欠かせない生体機能が低下する。例えば、老眼により視覚能力が低下する。従って、高齢者でも携帯電話のキーボードを快適に使用できるようにするためには、低下した生体機能を別の生体機能で補う必要がある。
【0019】
本発明では、加齢により低下した視覚を触覚で補うことを考える。図1は、指先無毛部の4つの機械受容器を示す。図1によると、指先にはメルケル細胞、マイスナー小体、ルフィニ小体およびパチーニ小体の4つの機械受容器がある。ここで、メルケル細胞は縦圧力の検出を行い、マイスナー小体はパタン認識と点字の触読を行い、ルフィニ小体は横圧力、すべりおよびずれの検出を行い、パチーニ小体は振動、ザラザラ・荒さ感の検出を行っている。
【0020】
図2は、マイスナー小体とパチーニ小体の加齢による触覚受容能力の変化を示す。図2によるとマイスナー小体の密度は加齢により低下し、それに伴い触覚の平均閾値は加齢により大きくなっていくことが分かる。一方、パチーニ小体の方は、足指(第1指)の振動感覚閾値は、加齢により増加するが、人差し指の振動感覚閾値は、加齢による影響をほとんど受けないことが分かる。従って、パチーニ小体が検出する振動感覚は加齢による影響をあまり受けないことが分かる。
【0021】
以上のことより、触覚の振動検知能力に着目し、振動により情報伝達を実現することを考える。図3は、本発明による振動デバイスを備えた携帯電話の実施形態を示す。図3aの形態は、携帯電話1が振動デバイス2を内蔵した形態である。図3bの形態は携帯電話1が振動デバイス2を外部機器として携帯電話外に備えた形態である。携帯電話1と振動デバイス2との接続は、有線または無線のどちらでも構わない。携帯電話1は外部から情報を取得するセンサー3を備えている。このセンサー3は、方位情報を取得する方位磁石、音情報を取得するマイクロフォン、画像情報を取得するカメラ等である。携帯電話1はセンサー3により取得された情報に基づいて振動デバイス2を振動させる。なお、このセンサー3は、携帯電話1に内蔵することも、外付けにすることもできる。
【0022】
図4は、振動デバイスの例を示す。図4aでは、振動デバイス2は多数のピンを備えており、携帯電話1からの指示によりピンを独立して上下運動することにより、振動パターンを操作者に伝えることができる。図4bでは、振動デバイス2は、表面が多数の面に分かれており、携帯電話1からの指示により面を上下運動することにより、振動パターンを操作者に伝えることができる。
【0023】
最初に、方位表示について説明する。携帯電話1に備えた方位磁石等が検知した方位に基づき振動デバイス2を振動させる。図5は、本発明の振動デバイスによる方位表示のフローを示す。
1.携帯電話1は、内蔵したまたは外付けの方位磁石、またはGPSや凖天頂衛星などから方位情報を取得する。
2.方位に応じて振動パターンを生成する。振動デバイス2には、複数の振動パターンが事前に登録されており、パターン番号が付されている。方向を表す振動パターンを決定する。例えば、以下のような実装が考えられる。振動デバイス2の上端が北を示すと仮定すると、北を向いた時に、縦方向に振動をさせることで、北の方位を示すことができる。他の方位の表示方法は2つある。第1の形態は、上端が北と仮定した場合、常に上記と同じパターンを振動させることで、東が振動の右側にあることを示す。西の場合、振動軸の左側が西となる。南の場合は、振動デバイス2の下端であると判断できる。第2の形態は、それぞれの方向に向けて振動させることである。西の場合は、左に向かって振動させることで方向を示す。
3.携帯電話1は、振動パターンを振動デバイス2に送信する。
4.振動デバイス2は、振動パターンを受信する。
5.振動デバイス2は、振動パターンに応じた振動を行う。
【0024】
次に危険情報表示について説明する。携帯電話1に備えたセンサー3が検知した危険状況に基づき振動デバイス2を振動させる。図6は、本発明の振動デバイスによる危険情報表示の例のフローを示す。
1.携帯電話1は、内蔵したまたは外付けのセンサー3などにより外部情報を取得する。センサー3としては、マイクロフォン、カメラ、着信メッセージ(地震速報も含む)などがある。マイクロフォンの場合、車の接近、緊急車両の接近、注意喚起の呼びかけなどを検知する。
2.外部情報を解析して危険レベルを判断する。マイクロフォンの場合、取得した音より操作者に及ぼす危険度および音の高さを判断する。例えば、コップの割れる音は高音であり、危険レベルは最小と判断される。また、火災報知器の鳴動は高音であり、危険レベルは最大と判断される。
3.振動パターンを決定する。危険レベルを振動面積の広さ、振動の動き、振動周期で示す。例えば、危険音の接近については、危険レベルが高いほど振動面積を大きくする、振動の振幅を大きくする、または、振動周期を速くする。また振動面を分割し、それぞれに異なる意味を持たせることもできる。例えば、音の場合、高音時、上部を振動させ、低音時、下部を振動させる。また、危険物が接近した場合は、上記の危険レベルの振動の後に危険物の形を表す振動を行うこともできる。例えば、車が近づいて来た場合、車の形の振動を行い、人が近づいてきた場合、人の形の振動を行う。
4.携帯電話1は、振動パターンを振動デバイス2に送信する。
5.振動デバイス2は、振動パターンを受信する。
6.振動デバイス2は、振動パターンに応じた振動を行う。
【0025】
携帯電話1がGPS等を内蔵して位置情報が取得できる場合、この位置情報に応じて振動デバイス2を振動させることも考えられる。振動デバイス2が画面に内蔵されている場合、画面に表示されている地図の現在位置の部分を振動させる。または、振動デバイス2が画面とは別にある場合、画面上の地図の相対的位置と同じ位置を、振動デバイス2上で振動させる。
【0026】
図7は、本発明の振動デバイス2による方位の出力の例を示す。図7aは北の方位の出力の例を示し、図7bは、上記の第2の形態での西の方位の出力の例を示す。なお、図4aのように多数のピンを有する振動デバイス2の場合を示す。図7において、黒い丸は、ピンが上下に振動していることを示し、白い丸はピンの振動が行われていないことを示す。振動デバイス2には、複数の振動パターンが事前に登録されており、パターン番号が付されている。振動パターンには振動データが設定されており、この振動データに基づいて振動を行う。図7aの振動パターンには、振動データとして1818 1818 1818 1818の1つが登録され、図7bの振動パターンには、振動データとして0000 0002 2000 0000〜0000 00C0 C000 0000までの8つが登録されている。この振動データの場合、振動が下から上に伝わっていく。
【0027】
この振動パターンで振動デバイス2を振動させる場合、パターン番号、1データあたりの振動回数、およびパターンのリピート回数を指定して、振動デバイス2に指示をする。ここで、1データあたりの振動回数は、振動データの振動回数を表す。例えば、図7bの場合、1データあたりの振動回数に10が指定された場合、振動データ0000 0002 2000 0000の振動を10回行う、つまり上から4番目と5番目の右隅のピンの上下振動を10回繰り返し、次の振動データ0000 0006 0600 0000の振動に移り、この振動を10回行う。これを一番最後のデータまで繰り返す。パターンのリピート回数は、上記の繰り返し回数を表す。例えば、パターンのリピート回数に5が指定された場合、振動データ0000 0002 2000 0000から0000 00C0 C000 0000までの振動を5回繰り返すことになる。
【0028】
ピンは速く振動するため、パターンデータを一振動毎に変えたのでは一瞬に終わってしまい、パターンデータの判断がつかない。そのため、パターンのリピート回数により同じ振動を繰り返すことにより、確実に振動を伝える。また、1データあたりの振動回数により、振動回数を変更し、振動のスピードを変化させることができる。
【0029】
図8は、本発明の振動デバイスによる危険レベルの出力の例を示す。図8aは高音で危険レベル最小の場合を示し、図8bは高音で危険レベル最大の場合を示す。本例では、振動デバイスの上部を振動させることにより、高音を検出したことを表し、振動デバイスの下部を振動させることにより、低音を検出したことを表す。また、振動デバイスの振動面積により、危険レベルを表す。危険レベルが最小の場合、最も振動面積が少なく、危険レベルが最大の場合、最も振動面積が多くなる。図8aは高音で危険レベル最小の場合であるため、上部の一番左の部分のみが振動する。図8bは高音で危険レベル最大の場合であるため、上部のすべての部分が振動する。
【0030】
図9は、本発明の振動デバイスによる危険物の形状の出力の例を示す。車が近づいて来た場合、図9aのような、車の形状をした振動を行い、人が近づいて来た場合、図9bのような、人の形状をした振動を行う。
【0031】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 携帯電話
2 振動デバイス
3 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部情報を取得するセンサーと、
前記外部情報に基づいて振動パターンを生成する生成手段と、
独立に振動可能な複数の素子を有し、前記振動パターンに基づいて該素子を振動させる振動デバイスと、
を備えていることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記振動デバイスは、独立に上下振動可能な複数のピンを面上に有し、前記振動パターンに基づいて該ピンを上下振動させることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記振動デバイスは、表面が複数の面に分かれ、該面は独立して上下振動可能であり、前記振動パターンに基づいて該面を上下振動させることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記センサーは、方位を取得する装置であり、
前記生成手段は、前記取得された方位を表す振動パターンを生成する手段であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
位置情報を取得するセンサーをさらに備え、前記生成手段は、位置情報を表す振動パターンをさらに生成する手段であることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記取得された外部情報に基づき、危険レベルを判定する手段をさらに有し、
前記生成手段は、前記危険レベルが高いほど多くの面積を振動する、振動の振幅を大きくする、または振動周期を速くする振動パターンを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記取得された外部情報に基づき、危険物の形状を判定する手段をさらに有し、
前記生成手段は、危険物の形状を表す振動パターンをさらに生成することを特徴とする請求項6に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−278727(P2010−278727A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128807(P2009−128807)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【出願人】(599008654)
【Fターム(参考)】