説明

振動発電機構、表示システム及び照明システム

【課題】電源の配線を変更する手間が少なく、また、化石燃料を用いることなく、仮設構造物に付帯する設備に電力を供給できる振動発電機構を提供すること。
【解決手段】路面覆工1を構成する覆工板11と受桁12との間に、緩衝機能と発電機能を有する緩衝発電シート20を配置する。覆工板11の上を車両が走行して生じる振動により、緩衝発電シート20に増減する圧力が作用し、振動発電素子22内の圧電部材23に歪が繰り返して生成されて、圧電部材23に起電力が生じる。振動発電素子22で生成された電力は、整流部28で整流され、出力線29を通って覆工板11の表面側に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用の仮設構造物に適用される振動発電機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば路面覆工等の仮設構造物では、電柱等から仮設電源を引き込み、仮設構造物の上又は周囲の照明や表示灯等に電力を供給している。電線から仮設電源を引き込むのが困難な場合は、ガソリン等の化石燃料を燃料とする発電装置を電源に用いている。発電装置としては、特許文献1に記載のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−214176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路面覆工等の仮設構造物は、工事の進行に伴い、その上や周辺に設けられた通行路の経路が変更される場合が多い。この場合、通行路に沿って設けられた照明や表示灯の配置換えが必要となり、これら照明や表示灯のための仮設電源の引き込み線の位置や、配線の敷設経路を変更する必要があって、手間とコストが嵩む問題があった。
【0005】
また、化石燃料を燃料とする発電装置を電源に用いた場合、発電装置は可燃物である化石燃料を保持するので使用の際の管理が必要となり、また、燃料費が嵩むうえ、作動に伴って温室効果ガスを排出する問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、電源の配線を変更する手間が少なく、また、化石燃料を用いることなく、仮設構造物に付帯する設備に電力を供給できる振動発電機構と、それを用いた表示システム及び照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の振動発電機構は、工事用の仮設構造物に、工事に伴う振動を受けて電力を生成する振動発電素子を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、仮設構造物に設けられた振動発電素子が、工事に伴う振動を受けて電力を生成するので、この振動発電素子で生成された電力を、仮設構造物に関連して設置される例えば照明や表示灯に用いることにより、電力を消費する位置の近傍で電力を生成することができる。したがって、これらの電源のために、電線から仮設電源を引き込んだり、化石燃料を用いる発電装置を設置したりする必要が無い。その結果、電線から仮設電源を引き込む場合のように、仮設構造物の上や周辺に設けられた通行路の位置変更に伴って、引込み線や配線の敷設経路を変更する手間を削減できる。また、化石燃料を用いた発電装置を用いる場合のような、電源装置の管理が不要となり、また、燃料費を削除でき、しかも、温室効果ガスの排出の問題を解決できる。
【0009】
ここで、仮設構造物とは、土木構造物や建築構造物等の施工を補助するために、これら構造物に先立って一時的に構築される構造物をいう。仮設構造物は、工事の期間において一時的に使用されるものであるため、施工の対象である土木構造物や建築構造物よりも低い設計基準に基づいて構築される。したがって、仮設構造物は、荷重を受けたときの変位が比較的大きく、その結果、振動が発生しやすく、また、構成部材が互いに変位して騒音を発生しやすい傾向にある。一方、仮設構造物の設置場所やその周辺では、工事関係者や通行人、あるいは、工事車両や通行車両等に、工事に対する注意を促し、また、作業範囲やその周辺を照明により明示する必要がある。このような仮設構造物に関する事情に鑑み、本発明は、振動を受けて電力を生成する振動発電素子を仮設構造物に設けることにより、仮設構造物の本質的な特性を利用して、これまで利用されていなかった振動のエネルギーを電気エネルギーに再生し、仮設構造物に関連する電気機器を、簡易な電源構成や配線により、作動させることを可能とするものである。
【0010】
なお、工事に伴う振動とは、仮設構造物に接して、又は、仮設構造物の周囲で工事が行われることにより、仮設構造物に生じる振動をいう。また、工事に伴う振動とは、仮設構造物に接して、又は、仮設構造物の周囲で、車両が走行することにより、仮設構造物に生じる振動をもいう。これらに該当する例として、地下鉄工事の路面覆工上を一般車両が走行することによって生じる振動や、ビル工事の仮設桟橋上に設置された杭打ち機によって生じる振動等がある。また、振動とは、物体の一部又は全部が揺れ動くことをいう。また、振動は、継続時間が比較的長い定常的なものと、継続時間が極めて短い衝撃的なものとのいずれも含まれる。また、振動は、振幅の大きさや定常性は問われない。また、振動は、仮設構造物の構成部材から振動発電素子へ直接的に伝達されてもよく、あるいは、仮設構造物の構成部材から振動発電素子へ、空気を介在して、音により間接的に伝達されてもよい。
【0011】
一実施形態の振動発電機構は、上記仮設構造物は、覆工板と、この覆工板を支持する桁材とを含む。
【0012】
上記実施形態によれば、覆工板の上を車両や人が通行する際、覆工板と桁材との接触や、覆工板と覆工板との接触に起因して振動が生じる。この振動により振動発電素子で電力を生成することにより、覆工板の上や周辺に設置した照明や表示灯等に、仮設電源の引込み線や発電装置を用いることなく、電力を供給することができる。また、振動発電素子で、覆工板の振動を電気エネルギーに変換することにより、覆工板の上を車両等が通行する際の騒音を低減することができる。
【0013】
一実施形態の振動発電機構は、上記覆工板に、内部に予め形成されたウェブで区画された室を臨むように、上記振動発電素子を設けたものである。
【0014】
上記実施形態によれば、覆工板の上を車両や人が通過する際、覆工板に生じる振動が、内部の室で共鳴して、振動発電素子に入力される。上記室を形成するウェブは、覆工板の強度を確保するために設けられたものであり、このように覆工板が本来有する構造を利用することにより、覆工板に生じる振動を、効率的に電気エネルギーに変換することができる。
【0015】
一実施形態の振動発電機構は、上記覆工板と桁材との間に、振動発電素子を挟持させたものである。
【0016】
上記実施形態によれば、覆工板と桁材との間に挟持させた振動発電素子により、覆工板の上を車両等が通過する際に生じる振動を、効率的に電力に変換することができる。
ここで、桁材で覆工板を支える構造は、桁材が複数の覆工板を支持していることにより、覆工板の上を車両が走行して移動するに伴い、桁材が継続して振動する。したがって、この振動を振動発電素子で受けることにより、電力を持続して生成することができる。
【0017】
一実施形態の振動発電機構は、上記覆工板の表面に、振動発電素子を内蔵したシートを被覆したものである。
【0018】
上記実施形態によれば、シートに内蔵した振動発電素子により、このシート上を車両が通過する際に生じる振動を、効率的に電力に変換することができる。また、覆工板の表面をシートで被覆することにより、車両が覆工板の上を通過する際に生じる騒音の大きさを低減できる。
【0019】
本発明の表示システムは、上記振動発電機構と、この振動発電機構で生成された電力が供給される発光素子を備え、
この発光素子を、上記覆工板の上又は周辺に設置される車道又は歩道に関する表示に用いることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、覆工板の上又は周辺を車両や人が通過する際の振動によって振動発電素子が電力を生成し、この電力により、覆工板の上又は周辺の車道又は歩道に関する表示に用いられた発光素子が発光する。このように、電力の消費位置の近傍で発電を行うことができるので、電線から仮設電源を引き込んだり、化石燃料を用いる発電装置を設置したりする必要が無い。したがって、電源線の敷設経路の変更の手間や、発電装置の管理の手間を削減でき、また、発電装置の燃料費の削減や、燃料の消費による温室効果ガスの排出の問題を解決できる。
【0021】
さらに、上記構成によれば、車道又は歩道に関する表示に発光素子を用いることにより、覆工板の上又は周辺を車両や人が通過する際の振動で生成された電力を、上記表示を明示するために消費する。したがって、上記表示に注目させる必要があるときにのみ、しかも、表示の内容を知らせる対象である車両や人を生成源とする電力で、発光素子を発光させて表示内容を明示することができる。したがって、動作の効率とエネルギー効率が高く、しかも、情報の伝達効果の高い表示システムが得られる。
【0022】
ここで、車道又は歩道に関する表示とは、例えば、車両や人に所定の情報を図形で示す標識や、車道又は歩道の境界の標示や、工事に関する文字情報等、車両や人の通行に関するあらゆる表示をいい、工事ヤードに関する表示も含む。
【0023】
また、本発明の他の表示システムは、上記振動発電機構と、この振動発電機構で生成された電力が供給される発光素子を備え、
上記発光素子を、上記覆工板の上又は周辺の照明に用いる。
【0024】
上記構成によれば、覆工板の上又は周辺を車両や人が通過する際の振動によって振動発電素子が電力を生成し、この電力により、覆工板の上又は周辺の照明に用いられる発光素子が発光する。このように、電力の消費位置の近傍で発電を行うことができるので、電線から仮設電源を引き込んだり、化石燃料を用いる発電装置を設置したりする必要が無い。したがって、電源線の敷設経路の変更の手間や、発電装置の管理の手間を削減でき、また、発電装置の燃料費の削減や、燃料の消費による温室効果ガスの排出の問題を解決できる。
【0025】
ここで、照明とは、設置された場所や対象を明るく照らすことをいい、車両や人の通行を安全又は円滑に行わせる目的や、防犯の目的等、種々の目的に用いられるものが含まれる。換言すれば、照明の目的は限定されない。
【0026】
本発明において、覆工板の周辺とは、覆工板に設けた振動発電素子から電力を供給可能な程度に離れた位置をいい、覆工板の上方、覆工板の周り、及び、覆工板の下方のいずれも含む。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態の振動発電機構が適用される覆工板と受桁を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の振動発電機構が適用される位置の周辺部分を示す図である。
【図3】振動発電素子を示す模式断面図である。
【図4】第2実施形態の表示システムを示す模式図である。
【図5】第3実施形態の振動発電機構が適用される覆工板の縦断面図である。
【図6】第4実施形態の照明システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態としての振動発電機構が適用される仮設構造物としての路面覆工に含まれる覆工板と受桁を示す斜視図である。路面覆工は、地面の凹所や斜面又は水面等の上に歩道や車道を形成するために、構台や仮設桟橋や仮設橋等の上部構造として設置される。路面覆工は、例えば、地下高速道路工事や、地下鉄工事や、ビル建設工事等で、地盤の掘削工事を行いながら、地上に歩道や車道や作業領域を設けるために設置される。また、橋梁工事や護岸工事等で、河川や海の水面の上に、歩道や車道や作業領域を設けるために設置される。
【0030】
図1に示すように、路面覆工1は、覆工板11が受桁12で支持されて構成されており、受桁12は図示しない主桁や支柱等で支持される。覆工板11は、平面視において幅が約1mで長さが約2mの矩形状を有し、厚みが約20cmであり、質量が約400kgである。この覆工板11は、フランジの表面にすべり止め加工が施されたH形鋼を幅方向に配列し、上下のフランジの側部を互いに溶接で固定して形成されている。覆工板11の側面と端面には、鋼板で形成された側面板13と端面板14が夫々固定されている。また、覆工板11の表面部の四隅には、設置のために吊り具が掛けられる吊り穴15,15,・・・が設けられている。受桁12は、覆工板の長手方向に寸法をおいて平行に複数個配列されており、各受桁12の間を掛け渡すように、覆工板11の長手方向の両端縁が受桁12のフランジ12aの表面に支持される。図1には、覆工板11を1つのみ図示しているが、受桁12の配置方向と延在方向とにタイル状に配列され、車道や歩道や作業領域を形成するようになっている。このように覆工板11と受桁12を含んで構成された路面覆工1は、仮設構造物であるため、工事で構築される本体構造物よりも低い設計基準に準拠している。したがって、路面覆工1が車両や人等の荷重を受けた場合、振動や騒音が生じやすい。
【0031】
図2は、本実施形態の振動発電機構が適用される位置の周辺部分を示す図であり、受桁12のフランジ12aと、覆工板11の端部とを示す図である。図2(a)は、受桁12のフランジ12aと覆工板11の端部とを示す側面図であり、図2(b)は、受桁12のフランジ12aと覆工板11の端部とを示す平面図である。図2では、受桁12の幅方向の片側に覆工板11が1つのみ支持された状態を示しているが、実際の路面覆工1では、受桁12の幅方向の両側に覆工板11が支持される。
【0032】
覆工板11は、連結具16によって受桁12に連結されている。連結具16は、クリップ17と、このクリップ17の下面にボルトヘッドが係合すると共に、軸部が覆工板11の裏面部に形成された貫通孔を貫通して配置されるボルト18と、覆工板11の裏面部から内側に突出したボルト18の軸部に螺合するナット19を有する。連結具16のナット19は、覆工板11の表面部に形成された吊り穴15を介してレンチで締結可能に形成されている。クリップ17が開いた状態で覆工板11が受桁12の上に配置された後、吊り穴15から内部にレンチを挿入してナット19を締結し、クリップ17をフランジ12aの裏面に圧迫することにより、連結具16で覆工板11を受桁12に連結するようになっている。
【0033】
覆工板11の裏面には、連結具16よりも端面に近い側に、緩衝機能と発電機能を有する緩衝発電シート20が設けられている。緩衝発電シート20は、合成ゴム等の可撓性を有する材料で形成された板状の緩衝体21の内部に、複数の振動発電素子22,22,・・・が内蔵されて形成されている。緩衝体21は、覆工板11の幅方向に向かって長い細長の矩形状を有し、この緩衝体21の長手方向に向かって複数の振動発電素子22,22,・・・が配列されている。
【0034】
振動発電素子22は、覆工板11と受桁12のフランジ12aとの間に挟持された状態で、覆工板11及び受桁12のうちの少なくとも一方から振動を受けて発電を行うものである。図3は、振動発電素子22を示す模式断面図である。振動発電素子22は圧電素子で形成されており、円盤状の圧電部材23と、圧電部材23を押圧する押圧体24とを有する。圧電部材23は、歪を受けて分極を生じ、これにより電力を生成する材料で形成されており、チタン酸バリウム、ジルコニア等の圧電セラミックスや、リチウムタンタレート等の圧電単結晶で形成される。この圧電部材23は、薄い円筒状のケーシング25の高さ方向の略中央に、このケーシング25の筒部によって周縁部が固定された状態で支持されている。ケーシング25は、上端面が可撓性の円板26で形成されており、この円板26の内側面に、押圧体24が圧電部材23に接した状態で固定されている。この振動発電素子22は、緩衝発電シート20が覆工板11から力を受けると、緩衝体21を介してケーシング25に上下方向の圧縮力が作用する。これにより、ケーシング25の上端面の円板26が下方に変形し、圧電部材23の中央部に下方向きの力を与える。圧電部材23は、周縁部がケーシング25の筒部に固定されているので、中央部に下向きの力が作用することによって歪が生じる。この歪により、圧電部材23に分極が生じて起電力が生成され、図示しないリード線に電流が流れるようになっている。
【0035】
覆工板11の内部には、振動発電素子22からの電流を整流する整流部28が配置されている。整流部28の出力線29は、覆工板11の表面部の吊り穴15を通って覆工板11の表面側に延出している。
【0036】
上記構成の振動発電機構は、次のように動作する。すなわち、覆工板11の上に車両が進入すると、車両の荷重により、覆工板11が受桁12に対して振動する。また、受桁12に支持された他の覆工板11の上を車両が走行することにより、受桁12に継続的な振動が生じる。このような振動により、覆工板11と受桁12との間に挟持された緩衝発電シート20に、増減する圧力が作用する。これにより、振動発電素子22内で押圧体24が圧電部材23の押圧を繰り返し、圧電部材23に歪が繰り返して生成されて起電力が生じる。こうして振動発電素子22で生成された電力は、整流部28で整流され、出力線29を通って覆工板11の表面側に出力される。
【0037】
このように、本実施形態の振動発電機構によれば、工事に伴って設置される路面覆工1の覆工板11の上を、車両が走行することによって電力が生成されるので、路面覆工1の上や周辺に、電線から仮設電源を引き込むことなく電力を供給することができる。したがって、仮設電源の引込み線を設ける手間や設備コストを削減することができる。また、化石燃料を用いた発電装置を用いることなく、路面覆工1の上や周辺に電力を供給することができるので、発電装置の管理の手間を削減でき、燃料費を削除でき、また、温室効果ガスの排出を防止できる。
【0038】
本実施形態において、振動発電素子22は、圧電部材23を押圧体24で押圧して歪を生成するように構成されたが、圧電部材23を、覆工板11と受桁12との間の振動によって歪を生成するように構成されれば、他の構造を採用してもよい。
【0039】
また、路面覆工1を構成する覆工板11は、クリップ17を有する連結具16で受桁12に連結したが、他の連結機構で受桁12に連結されてもよい。また、覆工板11は、連結具16で受桁12に連結されず、緩衝発電シート20のみを介して受桁12のフランジ12aの表面に支持されてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の表示システムを示す図である。この表示システムは、第1実施形態の振動発電機構と、この振動発電機構によって電力が供給される標識とを含んで構成されている。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同一の参照番号を引用して、詳細な説明を省略する。なお、図4では、覆工板11と受桁12を連結する連結具16は、図示を省略している。
【0041】
本実施形態の表示システムが含む標識は、覆工板11,11,・・・の上に設置される車道又は歩道に関する表示として用いられるものであり、車両の進行方向を指示する矢印を有する標識30である。この標識30は、樹脂製の矩形のパネル31と、このパネル31に矢印の形状をなすように配列された複数の発光素子としての発光ダイオード32,32,・・・を含んで構成されている。発光ダイオード32,32,・・・は、標識30に固定されて駆動回路を内蔵した駆動部33により、点滅駆動されるようになっている。駆動部33は、覆工板11の内部に配置された整流部28に接続されており、覆工板11と受桁12との間に配置された緩衝発電シート20で生成されて整流部28で整流された電力が供給される。
【0042】
本実施形態の表示システムによれば、覆工板11,11,・・・の上を車両Cが走行し、これにより覆工板11と受桁12との間に生じる振動から、緩衝発電シート20の振動発電素子22で電力を生成する。この電力で、標識30の発光ダイオード32,32,・・・を点滅させて、車両Cの運転者に進行方向を知らせる。
【0043】
このように、電力の消費位置である覆工板11の上の標識30に近接して、覆工板11の下側面に接する振動発電素子22で発電を行うので、振動発電素子22から標識30の発光ダイオード32,32,・・・に至る配線を短くできる。したがって、標識30を設置する際に、電源用の配線を敷設する作業を容易にできる。また、工事の進捗に伴い、覆工板11の上に設置する車道の位置を変更し、これによって標識30の位置を変更する場合、変更された位置に近い覆工板11の下側面に緩衝発電シート20を設置すると共に覆工板11の内部に整流部28を配置して、標識30の駆動部33に出力線29を接続すればよい。したがって、配線の変更を容易に行うことができる。
【0044】
本実施形態において、標識30の複数の発光ダイオード32,32,・・・は、矢印の形状をなすように配列されたが、他の形状をなすように配列されてもよい。また、標識30以外に、車道又は歩道の境界を示す標示や、工事に関する文字情報を、振動発電機構で生成される電力で表示してもよい。また、発光素子として発光ダイオード32を用いたが、例えば有機EL(エレクトロルミネセンス)等の他の発光素子を用いてもよい。また、整流部28を覆工板11に設けたが、整流部28を標識30に設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態において、振動発電素子22で生成した電力により、発光素子としての発光ダイオード32を発光させて標識30を明示させる例について説明したが、振動発電素子22で生成した電力は、発光素子による光(可視光)のほか、可聴音や、超音波や、赤外線等を生成して、車道又は歩道に関する表示を行ってもよい。
【0046】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の振動発電機構が適用される覆工板11の縦断面図である。この覆工板11は、第1実施形態の覆工板11と同様の構成を有する。第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同様の構成部分には同一の参照番号を引用して、詳細な説明を省略する。
【0047】
図5は、覆工板11を、この覆工板11を構成するH形鋼の長手方向に沿って切断した様子を示す図であり、H形鋼の上下のフランジで形成される表面板41及び裏面板42と、覆工板11の長手方向の両端に固定された端面板14,14が表れている。本実施形態の振動発電機構は、覆工板11の内部に、隣り合う2つのH形鋼のウェブと両端の端面板14,14とで区画されてなる直方体の室43を、共鳴室として利用している。すなわち、この振動発電機構は、覆工板11の一方の端面板14に、1つの室43に対して円形の貫通孔14aを1つ形成し、この貫通孔14aを臨むように、振動発電素子44を端面板14に配置している。振動発電素子44は、端面板14の貫通孔14aを臨むように配置された円形の圧電部材を有し、覆工板11の内部の室43で共鳴された音によって圧電部材が振動し、これにより、圧電部材に歪が生じて起電力を得るようになっている。振動発電素子44は図示しない整流部に接続され、圧電部材で生成された電力を整流部で整流し、整流部に接続された図示しない出力線を通して、覆工板11の上又は周囲に電力を供給するように構成されている。
【0048】
本実施形態の振動発電機構は、次のように動作する。すなわち、覆工板11の上に車両が進入すると、車両の荷重により、覆工板11が受桁12に対して振動する。また、受桁12に支持された他の覆工板11の上を車両が走行することにより、受桁12に継続的な振動が生じる。これにより、振動発電素子44が設けられた覆工板11内の室43に、この室43の寸法に対応した周波数の音が共鳴する。共鳴によって増幅された音により、振動発電素子44の圧電部材が振動し、圧電部材に歪が生じて起電力が生じる。こうして振動発電素子44で生成された電力は、整流部で整流され、出力線を通じて覆工板11の上又は周囲に供給される。
【0049】
本実施形態の振動発電機構によれば、覆工板11の強度を確保するために設けられているH形鋼のウェブの間の室43を、共鳴室として利用することにより、覆工板11又は受桁12に生じる振動の強度が比較的小さい場合であっても、振動発電素子44で効果的に電力を得ることができる。
【0050】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態の照明システムを示す図である。この照明システムは、第3実施形態の振動発電機構と、この振動発電機構によって電力が供給される照明機器とを含んで構成されている。第4実施形態において、第1乃至第3実施形態と同様の構成部分には同一の参照番号を引用して、詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施形態の照明システムが含む照明機器は、覆工板11,11,・・・の下方で行われる掘削工事の照明として用いられる。本実施形態では、覆工板11,11,・・・と受桁12,12,・・・を含んで構成された路面覆工1が、複数の主桁51と支柱52,52,・・・により、地盤の上方に支持されている。これら覆工板11,受桁12,主桁51及び支柱52等により、覆工板11の表面の地表面レベルに車道及び歩道を確保しながら、地盤の掘削工事を行うようにしている。
【0052】
本実施形態の照明システムが含む照明機器は、覆工板11の下方を照らすためのものであり、主桁51から吊り下げられて発光ダイオードを光源とするランプ53,53,・・・である。このランプ53は、少なくとも1つの発光ダイオードと、発光ダイオードからの光を集めて所定の照射範囲に光を照射する集光レンズと、発光ダイオードから発光に伴う熱を放出する放熱部を有して構成されている。
【0053】
覆工板11には、一方の端面板14に貫通孔14aが形成され、この貫通孔14aを臨む位置に振動発電素子44が配置されている。この振動発電素子44の出力線が、覆工板11の内部に配置された整流部46に接続されている。整流部46の出力線47が、受桁12と主桁51を通ってランプ53に接続されている。
【0054】
本実施形態の照明システムによれば、覆工板11,11,・・・の上を車両Cが走行し、これにより覆工板11と受桁12との間に生じる振動により、覆工板11内の室43に所定の周波数の音が共鳴する。共鳴によって増幅された音により、振動発電素子44の圧電部材が振動して電力が生成され、この電力が整流部46で整流されてランプ53に供給される。
【0055】
このように、電力の消費位置である覆工板11の下方のランプ53に近接して、覆工板11の端面に接する振動発電素子44で発電を行うので、この振動発電素子44の振動発電素子からランプ53の発光ダイオードに至る配線を短くできる。したがって、ランプ53を設置する際に、電源用の配線を敷設する作業を容易にできる。また、工事の進捗等に伴い、ランプ53の位置を変更する場合、変更された位置に近い覆工板11の端面に振動発電素子44を設置すると共に覆工板11の内部に整流部46を設置して、ランプ53に出力線47を接続すればよい。したがって、配線の変更を容易に行うことができる。
【0056】
本実施形態において、発光素子として発光ダイオードを用いてランプ53を構成したが、例えば有機EL等の他の発光素子を用いてもよい。
【0057】
また、上記各実施形態において、振動発電素子22,44で生成された電力を蓄える蓄電部を設けてもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、振動発電機構として、覆工板11と受桁12との間に挟持された緩衝発電シート20に振動発電素子22を内蔵したものや、覆工板11の端面板14に形成された貫通孔14aに臨むように振動発電素子44を配置したものを例に挙げたが、他の形態の振動発電機構を採用することもできる。例えば、覆工板11の表面に、第1実施形態と同様の振動発電素子22を内蔵したシートを被覆して振動発電機構を構成してもよい。この場合、シートに内蔵した振動発電素子22により、このシート上を車両が通過する際に生じる振動を効率的に電力に変換することができる。また、覆工板11の表面をシートで被覆することにより、車両が覆工板11の上を通過する際に生じる騒音の大きさを低減できる。
【符号の説明】
【0059】
1 路面覆工
11 覆工板
12 受桁
20 緩衝発電シート
22 振動発電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事用の仮設構造物に、工事に伴う振動を受けて電力を生成する振動発電素子を設けたことを特徴とする振動発電機構。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発電機構において、
上記仮設構造物は、覆工板と、この覆工板を支持する桁材とを含むことを特徴とする振動発電機構。
【請求項3】
請求項2に記載の振動発電機構において、
上記覆工板に、内部に予め形成されたウェブで区画された室を臨むように、上記振動発電素子を設けたことを特徴とする振動発電機構。
【請求項4】
請求項2に記載の振動発電機構において、
上記覆工板と桁材との間に、振動発電素子を挟持させたことを特徴とする振動発電機構。
【請求項5】
請求項2に記載の振動発電機構において、
上記覆工板の表面に、振動発電素子を内蔵したシートを被覆したことを特徴とする振動発電機構。
【請求項6】
請求項2に記載の振動発電機構と、この振動発電機構で生成された電力が供給される発光素子を備え、
この発光素子を、上記覆工板の上又は周辺に設置される車道又は歩道に関する表示に用いることを特徴とする表示システム。
【請求項7】
請求項2に記載の振動発電機構と、この振動発電機構で生成された電力が供給される発光素子を備え、
上記発光素子を、上記覆工板の上又は周辺の照明に用いることを特徴とする照明システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−109753(P2011−109753A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260091(P2009−260091)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】