挿入セット
【課題】適切に挿入する。
【解決手段】挿入装置(10)および挿入セット(14)。挿入装置(10)は、挿入ハウジング(28)と、キャリア本体(30)と、駆動体(36)を備える。キャリア本体(30)は、装置ハウジング(28)内に滑動自在に収容され、前進位置と後退位置の間を移動する。キャリア本体(30)は、挿入セット(14)を支持する収容構造(32)も備える。駆動体(36)は、キャリア本体(30)を、力および速度が制御される条件下において、後退位置から前進位置に向かって強制的に移動させ、挿入セット(14)の少なくとも1つの穿孔部材(12)の少なくとも一部を患者の皮膚を貫通させて配置し、挿入セット(14)を患者に装着する。キャリア本体(30)の収容構造(32)は、挿入セット(14)から取り外すことができる。
【解決手段】挿入装置(10)および挿入セット(14)。挿入装置(10)は、挿入ハウジング(28)と、キャリア本体(30)と、駆動体(36)を備える。キャリア本体(30)は、装置ハウジング(28)内に滑動自在に収容され、前進位置と後退位置の間を移動する。キャリア本体(30)は、挿入セット(14)を支持する収容構造(32)も備える。駆動体(36)は、キャリア本体(30)を、力および速度が制御される条件下において、後退位置から前進位置に向かって強制的に移動させ、挿入セット(14)の少なくとも1つの穿孔部材(12)の少なくとも一部を患者の皮膚を貫通させて配置し、挿入セット(14)を患者に装着する。キャリア本体(30)の収容構造(32)は、挿入セット(14)から取り外すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1997年12月31日出願の米国特許出願第09/002,303号および1998年12月18日出願の米国特許出願第09/215,356号の一部継続出願であり、これらの特許出願は本願に引用して援用する。
【0002】
本発明は、広くは、患者の皮膚を通して挿入セットを自動的に配置する挿入装置に関し、特定の実施形態においては、皮下挿入セットまたは同等物の挿入針を、力および速度が制御される条件下において、患者によって患者の皮膚を貫通して
配置する小型で操作の容易な挿入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用針は、患者の介護および治療の過程、より詳しくは、選択された薬物を患者に投与するために広く用いられる。一般的な一形態においては、中空皮下注射針を用いて、選択された薬物が注射器などから経皮投与される。別の一般的な形態においては、挿入針を用いて軟らかい比較的フレキシブルなカニューレを経皮配置し、その後、挿入針を取り出し、その結果、カニューレを通じて医療用流体が患者に輸液される。最近では、挿入針は、他の医療装置、たとえば、特定の患者パラメータ、たとえば、血糖値をモニタリングするため皮下センサを経皮配置するためにも用いられている。
【0004】
ある一定の治療摂生法においては、患者が医療用針を経皮配置することが必要である場合または望ましい場合がある。たとえば、糖尿病患者は、インシュリン注射剤を頻繁に自身で投与、またはカニューレを有する皮下挿入体を定期的に配置した後、米国特許第4,685,903号に開示されている一般型の薬物輸液ポンプによってインシュリンをプログラム化して投与する。このような皮下挿入セットは、たとえば、米国特許第4,755,173号、第5,176,662号、および第5,257,980号に開示されており、これらの特許は本願に引用して援用する。糖尿病患者は、皮下挿入セットを用いて経皮グルコースセンサを定期的に配置する場合もあり、このようなセンサ挿入セットは、たとえば、米国特許第5,390,674号、第5,568,806号、第5,586,553号に開示されており、これらの特許も、本願に引用して援用する。
【0005】
一部の患者は、自身の皮膚を医療用針によって穿孔することを嫌悪または躊躇し、その結果、正しく針を配置して薬物を適切に投与することが困難になる。このような困難は、適切な針配置を実現する手作業の器用さまたは熟練の不足が原因である場合があり、あるいは、針が皮膚を穿孔するときに予測される不快に関連する不安が原因である場合がある。この問題は、不正確な配置によってカニューレのよじれが生じ、その結果、患者への薬物流が阻害される場合があるので、皮下フレキシブル挿入セットによって投与される薬物の場合に特に重要である。カニューレのよじれは、患者の皮膚に対して正しくない角度による挿入セットの配置、および/または不適切な力および速度における挿入による針の配置が原因である場合がある。
【0006】
本発明は、自動注射器、より詳しくは、正しい挿入角度において、患者の不快を最小限度とする挿入の速度および力によって、患者の皮膚を貫通して挿入針を迅速かつ容易に配置するため、皮下挿入セットと共に使用する自動注射器に関する。
【発明の開示】
【0007】
本発明の実施形態は、前述した制限を実際上除去する、改善された挿入装置および挿入セットを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の実施形態によれば、患者の皮膚を貫通する医療用針の迅速かつ容易な経皮配置、より詳しくは、たとえば皮下挿入セットの挿入のための注射器が提供される。注射器は、選択される挿入角度において、挿入の力と速度が制御される条件下において、選択される挿入角度において皮膚を貫通して針を配置し、患者の不快が最小限度であり適切な針配置が保証されるように設計される。注射器は、特に、これらの目的を充足し、同時に、注射器が患者の皮膚に対して間隔をおいた状態で作動された場合、医療用針が望ましくなく自由空間中に突き出すことを防止するように設計される。
【0009】
注射器は、ヘッドを有するばね荷重プランジャを備え、ヘッドは、外側に突出し、患者の皮膚を貫通して経皮配置される挿入体を有する挿入セットを収容し正しい位置に支持する。プランジャは、胴体内において、プランジャヘッドに対して所定のばね力を加える様式で圧縮される駆動ばねによってセットされる位置まで後退されて保持されるように設計される。注射器胴体の前端または先端は、選択される針挿入部位において、正しいまたは所望の挿入角度に配置される針と同方向で、患者の皮膚に対して押し付けられて配置されるように設計される。トリガー部材は、プランジャを外すように作動可能であり、それによって、駆動ばねが、力および速度が制御される条件下において、挿入セットを患者の皮膚の方向に移動させることが可能となり、その結果、患者の不快が最小限度の状態で、挿入針が適切に経皮配置される。
【0010】
プランジャヘッドは、安全ロック機構を備え、挿入セットを注射器胴体から突出しないように保持する。好適な一実施形態によれば、安全ロック機構は、プランジャが完全な前進位置から後退するとき、係合して挿入セットを保持する少なくとも一つ、好ましくは一対の安全ロックアームを備える。各安全ロックアームは、挿入セット上の適切な形状の凹所と係合するカムローブを備え、プランジャヘッドが完全な前進位置に戻らない場合および戻るまで、挿入セットがプランジャヘッドから外されることを防止する。このような完全な前進位置において、カムローブの形状によって、最小限度の分離力による挿入セットから注射器の迅速かつ容易な分離が可能となる。
【0011】
作動中、胴体の先端が患者の皮膚から間隔をおいた状態においてトリガー部材が作動される場合、安全ロックアームは、挿入セットが注射器から突出することをこのようにして防止する。そのような場合、プランジャヘッドは、力および速度が制御される条件下において、完全な前進位置まで進められるが、挿入セットは突出体として注射器から突き出されることはない。その代わり、挿入セットは、プランジャヘッドと共に迅速に完全な前進位置まで移動され、ここにおいて、注射器は、最小限度の分離力によって挿入セットから分離することができる。
【0012】
別の好適な形態によれば、安全ロック機構は、円筒状形状を有し前方が開放された空洞を形成するプランジャヘッドを備え、挿入針と外側に突出するカニューレとを有する挿入セットが空洞内に収容され支持される。この実施形態によれば、プランジャヘッドは、その前端または先端において急速に内側に突出するリムを備え、このリムによって卵形の開口部が形成される。リム開口部のサイズによって、輸液セットをプランジャヘッドと胴体の中心軸に対して一定の角度に向けて、ハブを比較的自由に挿入セットに収容することが可能となる。次に、挿入セットは、方向を再調整して挿入針を胴体とプランジャヘッドの中心軸と同軸に整合され、その結果、リムは挿入セットの凹所に収容され、ばね駆動による挿入針の配置中に輸液セットが注射器から取り外される望ましくない事態を防止するため輸液セットを保持する機能を果たす。挿入針の配置後、注射器を挿入セットに対してある角度に向け、ハブが自由に滑動してその通路から外れ卵形のリム開口部を通過することを可能とすることによって、注射器は、最小限度の分離力によって挿入セットから外される。
【0013】
本発明のまた別の形態によれば、プランジャヘッドは、挿入セットの針のハブの比較的自由なすべりばめ収容に適したサイズである横方向に開口した下をくり抜いたスロットを形成する形状とされる。この形状の場合、挿入セットは、横方向に開口したスロット中にハブを横方向に滑動させることによって、注射器のプランジャヘッドと共に迅速かつ容易に組み立てられ、その結果、医療用針は、注射器胴体とプランジャヘッドの中心軸に対してほぼ同軸に方向付けされる。この位置において、プランジャヘッドは、後退してロックされ、その後、適切なトリガー部材によって外され、医療用挿入針を経皮配置することができる。針が患者に配置された後、注射器は、針のハブに対して横方向に注射器を滑動させることによって、挿入セットから取り外すことができる。あるいは、注射器を患者の皮膚から引き抜きまたは後退させ、患者の皮膚上のあるべき位置に配置される挿入セットから針を滑動自在として分離することができる。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、挿入装置は、挿入セットの少なくとも一つの穿孔部材の少なくとも一部を患者の皮膚を貫通して挿入し、装置ハウジングと、キャリア本体と、駆動体を備える。キャリア本体は、装置ハウジング内に滑動自在に収容され、前進位置と後退位置の間を移動する。キャリア本体は収容構造も備え、収容構造によって、キャリア本体が後退位置から前進位置まで移動すると患者の皮膚に対して所定の角度において患者の皮膚を貫通して挿入されるように方向付けされる少なくとも一つの穿孔部材を有する挿入セットが正しい位置に支持される。駆動体は、装置ハウジングとキャリア本体の間に適切に作用するように結合され、力および速度が制御される条件下において、キャリア本体を後退位置から前進位置まで駆動し、挿入セットの少なくとも一つの穿孔部材の少なくとも一部を、患者の皮膚を貫通して配置し、挿入セットを患者に装着する。キャリア本体の収容構造は、挿入セットを患者に装着した状態において、挿入セットから取り外すことができる。
【0015】
特定の実施形態によれば、皮膚に対する所定の角度は、約90°、90°から10°の範囲、または挿入後、0°から10°の範囲である。別の実施形態によれば、挿入セットは経皮挿入セット、皮下挿入セット、輸液セット、センサセット、などである。また別の実施形態によれば、挿入セットは、挿入後、主として皮膚の表面上に静止、または挿入セットは、患者の皮膚内に埋め込まれる。好適な実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、針である。別の実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、複数の針であり、また複数の極微針とすることもできる。また一部の実施形態によれば、挿入セットは、一体化装置として結合された輸液セットとセンサセットの両者とすることができる。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、装置ハウジングは、ほぼ平面であり患者の皮膚に対する所定の角度を反映する角度を有する挿入接触表面を形成する前端を有し、その結果、装置ハウジングは患者の皮膚に対して所定の角度になるように患者の皮膚に接して配置される。他の実施形態においては、駆動体を作動させるトリガー機構が備えられる。たとえば、トリガー機構は、指先による押し下げによって駆動体を作動させ、キャリア本体を後退位置から前進位置まで移動させる少なくとも一つのトリガーを備える。さらに、駆動体は、後退位置から前進位置までキャリア本体をばね荷重によって移動させる少なくとも一つのばねを備えることができる。その上、駆動体は、挿入サイクルごとに、後退位置から前進位置まで移動するキャリア本体を制御した力と速度を変更することを可能とする力変更機構を備えることができる。また別の実施形態によれば、装置ハウジングとキャリア本体は、共同して作用するように係合可能な軌道機構を備え、前進位置と後退位置の間のキャリア本体の移動を案内し、同時に、キャリア本体を装置ハウジングに対して回転しないように保持する。
【0017】
挿入装置の別の実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、挿入セットの一部として穿孔部材ハブを備える。さらに、キャリア本体の収容構造は、構造内に形成され、係合して挿入セットの穿孔部材ハブをすべりばめ収容する凹所を備える。その上、収容構造の凹所は、横方向に開口する下をくり抜いた凹所を備えることができる。あるいは、収容構造は、後退位置から前進位置までの移動中、少なくとも一つの穿孔部材を収容構造上に保持する安全保持器構造を備えることができる。この安全保持器構造によって、キャリア本体が前進位置にあるとき、キャリア本体から少なくとも一つの穿孔部材を取り外すことが可能となる。
【0018】
本発明のまた別の実施形態は、挿入装置によって患者の皮膚を貫通して挿入される挿入セットを目的とする。挿入装置は、前進位置と後退位置の間を移動する滑動自在のキャリア本体を有する。挿入装置のキャリア本体は、キャリア本体が後退位置から前進位置まで移動すると患者の皮膚を貫通して挿入されるように正しい位置に挿入セットを支持する収容構造を備える。挿入装置は、キャリア本体に適切に作用するように結合され、キャリア本体を力および速度が制御される条件下において後退位置から前進位置に向かって強制的に移動させて、挿入セットを患者の皮膚を貫通して挿入する駆動体も備える。挿入セットは、少なくとも一つの穿孔部材とセットハウジングを備える。少なくとも一つの穿孔部材は、患者の皮膚を貫通して挿入可能である、少なくとも一つの穿孔部材の部分を含む。このセットハウジングは、少なくとも一つの穿孔部材に結合される。また、セットハウジングは、挿入装置のキャリア本体内にはめ込まれる形状であり、少なくとも一つの穿孔部材の少なくとも一部が患者の皮膚に対して所定の角度において患者の皮膚を貫通して配置されるように少なくとも一つの穿孔部材の方向を定め、挿入セットを患者に装着する。挿入セットのセットハウジングは、挿入セットを患者に装着した状態において、キャリア本体の収容構造から取り外すことができる。
【0019】
挿入セットの特定の実施形態によれば、皮膚に対する所定の角度は、約90°、90°から10°の範囲、または挿入後、0°から10°の範囲である。別の実施形態によれば、挿入セットは、経皮挿入セット、皮下挿入セット、輸液セット、センサセットなどである。また別の実施形態によれば、挿入セットは、挿入後、主として皮膚の表面に静止、または挿入セットは患者の皮膚内に埋め込まれる。好適な実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、針である。別の実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、複数の針であり、また複数の極微針とすることもできる。また、一部の実施形態によれば、挿入セットは、一体化装置として結合された輸液セットとセンサセットの両者とすることができる。
【0020】
本発明の他の特徴および長所は、例示によって本発明の種々の実施形態を説明する添付図と共に、以下の詳細説明によって明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
例示のため図示するように、本発明は、挿入セット、たとえば、輸液セット、医療装置、または同等物の挿入装置として具体化される。さらに、挿入装置の実施形態を用いて、他の挿入セットまたは医療装置、たとえば、生物分解可能体内埋植、カプセル、含浸糸(薬物などによる)を挿入することができる。他の挿入セットは、糸を通した針挿入セット、たとえば、1996年12月17日発行のLivingstonらによる米国特許第5,584,813号、発明の名称“Subcutaneous Injection Set”および1998年7月14日発行のMastrototaroらによる米国特許第5,779,665号、発明の名称“Transdermal Introducer Assembly”に開示されているセットを対象とすることができる。これらの特許は、本願に引用して援用する。さらに、挿入セットは、感染を防止および/または挿入部位の治癒を促進する薬物または他の薬品によって被覆することができる。挿入装置および挿入セットの好適な実施形態は、皮下組織中に挿入セットを経皮配置する場合である。しかし、別の実施形態によれば、挿入セットは他の皮下組織中に挿入することができる。さらに、また別の実施形態を用いて、セットを他の種類の組織、たとえば、筋、リンパ、器官組織などに配置し、また動物組織に配置することができる。本発明の好適な実施形態によれば、挿入装置は、標準手持ちサイズの挿入セットまたは同等物を備え、その状態において、利用者の皮膚に接して配置され、このとき、挿入装置が作動されて挿入セットまたは同等物の一部が、利用者の痛みおよび/または不快を最小限度とする様式によって、迅速に皮下に経皮配置される。しかし、さらに、本発明の実施形態を用いて、挿入セットの一部のみではなく、挿入セット全体または同等物を、皮膚の下に配置することができることは理解される。前述したように、挿入装置の好適な実施形態は、既製の挿入セットまたは同等物に適合するように設計される。しかし、別の実施形態を、特定の方向または外形に適合するように変更された特製の挿入セットまたは同等物と共に用いて、安全性の改善および/または挿入セットまたは同等物の適切な配置の保証をすることができる。さらに、別の実施形態によれば、挿入セットまたは同等物をある角度に向けること、および挿入セットの挿入後、皮膚表面に対して0°から90°の範囲の角度となるように挿入することができる。
【0022】
好適な実施形態によれば、挿入セットは、挿入中に皮膚を穿孔する少なくとも一つの穿孔部材を備える。特定の実施形態によれば、穿孔部材は金属針である。別の実施形態によれば、針は、中空、中実、半針(または他の小部分)などとすることができる。さらに別の実施形態によれば、穿孔部材は、他の材料、たとえば、セラミック、プラスチック、複合材、シリコン極微針、生分解性物質、親水性物質、身体および/または体液などと接触する場合に軟化および/または変化する物質から製作することができる。他の実施形態によれば、挿入セットは、一つ以上の穿孔部材を備える場合がある。たとえば、単独の挿入セットは、輸液部分のための穿孔部材、およびセンサ部分を分離するための別の穿孔部材または同等物を備えることができる。あるいは、挿入セットは、小さいパッチまたは基板上に複数の小さい穿孔部材、たとえば、薬物の輸液のための一連の中空極微針(たとえば、シリコン、プラスチック、金属などからなる)、あるいはセンサ適用のための一連の中実極微針(たとえば、シリコン、プラスチック、金属などからなる)を備えることができ、これらの極微針は皮膚を貫通するために用いられる。
【0023】
図に例示するように、本発明の第1実施形態による注射器(または挿入装置)は、一般に符号10で示され、医療用針、特に、たとえば、図4および図7に記載の皮下挿入セット14に備えられる形式の挿入針12の迅速かつ容易な経皮配置のため提供される。注射器10は、速度および力が制御される条件下において、挿入針12が患者の皮膚16(図1および図9)に対して所望の角度に向けられた状態において、挿入針12を経皮配置するトリガー型アクチュエータ機構を備える。
【0024】
本発明の自動注射器10は、例示の図に示すように、特に、皮下挿入セット14、たとえば、米国特許第4,755,173号、第5,176,662号、第5,257,980号に開示されている一般型の挿入セットの挿入針12を配置するように設計される。これらの特許は、本願に引用して援用する。このような挿入セット14を用いて、医療用流体、たとえば選択された薬物が患者に輸液される。一例を挙げれば、米国特許第4,685,903号に開示されている形式のプログラマブル薬物輸液ポンプ(図示してない)の作用による糖尿病患者に対するインシュリンの投与である。あるいは、注射器10を用いて、他の形式の挿入セット、たとえば米国特許第5,390,671号、第5,560,806号、および第5,586,553号に開示されている一般型の経皮センサ挿入セットに関連する医療用針を経皮配置することができる。これらの特許は、本願に引用して援用する。このような挿入セットは、たとえば、患者の血糖値をモニタリングするために用いられる。
【0025】
医療用流体を患者に輸液するための挿入セットに関して図4に示すように、挿入針12は、その後端または基部端においてハブ18に結合され、挿入セット14のハウジング20を貫通して突出し、ハウジング20によって輸液管22を経由して薬物を収容する内部チャンバ(図示してない)が形成される。通常、弾力性またはフレキシブルな翼の形態である大きな基部24が、ハウジング20に備えられ、患者の皮膚16に安定して固定される。挿入針12は、ハウジング20と翼状基部24を貫通して下側に突出し、軟らかいフレキシブルカニューレ26を通して延在する。挿入針12は、カニューレ26の経皮配置に使用され、挿入後、挿入針12はセット14から引き抜かれ(図16)、カニューレ26を経由して患者に薬物を投与することが可能となる。
【0026】
本発明の注射器10は、患者が用いて、選択された薬物挿入部位において、適切な経皮位置および方向で、皮下挿入セット14を迅速かつ容易に配置することができる簡単な装置の典型である。注射器10は、力および速度が制御される条件下において、患者の皮膚16に向けて挿入セットを突き出し、挿入針12とカニューレ26の適切な配置を保証する様式によって、迅速に皮膚を穿孔し、同時に、患者の不安および/または不快を最小限度とする。このようにして、挿入針12の不適切な配置および/または不完全な配置が、回避される。
【0027】
一般的観点から、好適な一実施形態として図1〜5に示すように、注射器10は、円筒状前向き胴体28(または装置ハウジング)を備え、その中に、プランジャ30(またはキャリア本体)が前方の前進位置(図5)と後方の後退位置(図9)の間の中空孔内を縦方向に滑動して移動するように取り付けられる。プランジャ30は、皮下挿入セット14を以下に詳述する様式によって脱着自在に収容し保持するヘッド32を有する。プランジャ30の後端は、胴体28の後端に取り付けられるトリガー型アクチュエータ組立部品34と共同で作用する。トリガーアクチュエータ組立部品34(または駆動体)は、プランジャ30を、圧縮された駆動ばね36の力に抗して後退位置に保持することに適する。アクチュエータ組立部品34のトリガーボタン38は、指先で押し下げてプランジャ30を外し、ばね荷重によって前進位置に向けて移動させ、対応して挿入針12を患者の皮膚を貫通して経皮配置することに適する。
【0028】
図2〜5は、注射器胴体28の構造を詳細に示す図である。注射器胴体28の前端または先端は、平坦なほぼ平面状の表面を形成し、患者の皮膚に接して配置され(図1)、胴体28の縦軸は患者の皮膚16に対してほぼ垂直の方向とされる。胴体28は、挿入セット14を実質上係合してすべりばめ収容するサイズおよび形状を有し、挿入針12と関連するカニューレ26は、患者に対して配置される方向に突出している。この点に関して、胴体28の前端は、対向する対の比較的広い開口端切り取り部40を形成し、対向して突出する基部翼24をすべりばめ収容する。比較的狭いスロット42も、胴体前端において、輸液セット14に固定される輸液管22のすべりばめ収容に適する位置に形成される。このようにして、胴体28の前端または先端は、その中に皮下挿入セット14を滑動自在に収容し、切り取り部40とスロット42に沿って、胴体28の実質上最前端に位置する前進位置(図5)と後退位置(図9)の間を移動させることに適合し、基部翼24および輸液管22は実質上切り取り部40および関連するスロット42の中央寄り端部に位置する。
【0029】
プランジャ30は、一般に円筒形であり注射器胴体28内のすべりばめ収容に適するヘッド32を備える。ヘッド32の前端には、挿入セット14のハブ18およびハウジング20を収容する円筒状端ぐり凹所44が備えられ、拡大基部翼24は、胴体先端の切り取り部40内におけるすべりばめ収容に適合するように、一対の外側に突出する戻り防止フランジ46に接して収められる。一対の軌道アーム48(図5)は、プランジャヘッド32から後方に突出し、外側に折り返された指状ラッチ50を備え、ラッチ50は胴体先端から後部に間隔をおいた位置に胴体28内に形成される縦方向に延在する軌道スロット52内に収容されて案内する。このように、これらの軌道アーム48は、胴体軌道スロット52と共同して作用し、プランジャ30を前進位置(図5および図7)と後退位置(図9)の間において案内する。
【0030】
プランジャ30は、胴体内部においてプランジャヘッド32から後方に突出する中心駆動軸54(図5)も備える。駆動軸54の後端は、縦方向に分割され、一対のトリガーアーム56を形成し、トリガーアーム56の後端に外側に折り返された指状トリガー58が備えられる。
【0031】
トリガー型アクチュエータ組立部品34は、注射器胴体28の後端に取り付けられ、通常、プランジャ30を後退したセットされた位置に脱着自在に保持するように機能し、トリガーボタン38が押し下げられると、迅速にばね荷重を作動させ、挿入セット14を患者に配置するように準備されている。より詳しくは、図5〜図9に最もよく示されるように、トリガー組立部品34は、取付スリーブ62を有する主支持キャップ60を備え、取付スリーブ62は、注射器胴体28の後端または後尾端中に突出し、プレスばめおよび好ましくは接着結合様式で固定される。駆動ばね36は、プランジャ30上の駆動軸54の回りに配置されプランジャヘッド32の後面64と支持キャップ60上の肩部66の間において作用するコイルばねを構成する。駆動ばね36は、常態ではプランジャ30を前進位置に向けて偏らせる(図5および図7)。しかし、図9に示すように、プランジャヘッド32内に収容される挿入セット14を、プランジャ30に抗して後方に押し、プランジャを後退位置に移動させることができる。その結果、指状トリガー58は支持キャップ60内に形成される円錐状すなわち先細になった穴68を通過して支持キャップ60の反対側の肩部70と係合する。この点に関して、指状トリガー58は、ラッチ穴68を通過するとき、外側の面を反らせて半径方向において相互に接近し、指状部58の移動に適応する。指状トリガー58が穴68を完全に通過するとき、トリガーアーム56のばね弾力は指状トリガーを広げるのに十分であり、その結果、指状トリガー58は肩部70と係合する。このプランジャー後退位置において、駆動ばね36は、圧縮されセットされた状態で保持され、挿入セット14は、挿入針12と関連するカニューレ26を、胴体28の内部に引き込み、患者の皮膚16に対して間隔をおいて保持される。
【0032】
トリガーアクチュエータ組立部品34は、さらに、支持キャップ60内に形成される非円形孔74(図6および図7)内に取り付けられるアクチュエータピン72を備え、アクチュエータピン72はプランジャ30に対して短いストロークの間を縦方向に滑動して移動する。この点に関して、アクチュエータピン72は、非円形孔74内にすべりばめ収容される一つ以上の非円形平坦隆起部76を備え、孔内におけるアクチュエータピンの回転を防止する。アクチュエータピン72は、段付きロックリング78によって孔74内に保持され、ロックリング78は、その後端に内側に折り返されたリム82を有するプレスばめ外側保持器スリーブ80によって支持キャップ60の後端に接して保持される。重要なことには、図8に示すように、長円形平坦隆起部84が、アクチュエータピン72上に形成され、ロックリング78内に形成される長円形凹所85の中に係合されてすべりばめ収容される。復元ばね86(図7)は、支持キャップ孔74内に担持され、肩部70とアクチュエータピン72の先端の間で作用し、支持キャップ内においてアクチュエータピン72を後方に偏らせる。
【0033】
アクチュエータピン72の最後端は、トリガーボタン38を形成する。図11および図13に示すように、トリガーボタン38を指先で押し下げ、アクチュエータピン72を、プランジャ30の後端にある指状トリガー58の方向に短いストロークの間において、復元ばね86に抗して移動させることができる。図13に最もよく示されるように、アクチュエータピン72は、中空の円筒状前部先端88を有し、この中空の直径は、プランジャ30の後端において、指状トリガー58と係合し締め付けて合体し、これらの指状トリガー58が先細となった円錐状ラッチ孔68を通過して戻ることを可能とするサイズである。このようにして、指状トリガー58が、支持キャップ60の肩部70との係合から外れた瞬間に、駆動ばね36は、力および速度が制御される条件下において、挿入セット14をその上に有するプランジャ30を前進位置に向かって移動させ、その結果、図15に示すように、針12とカニューレ26が経皮配置される。重要なことには、駆動ばね36のばね速度特性およびプランジャストロークの長さは、針12とカニューレ26の経皮配置が実質上最適化され適切であるように選択され、すべては、針配置過程中、患者の不快が最小限度であるように実施される。さらに、図示のように、注射器胴体28の先端を四角に切り取った形状に形成することによって、注射器10は、皮膚16に対して実質上垂直に容易に方向付けされ、挿入セットが適切に配置される。
【0034】
トリガーボタン38によるアクチュエータピン72の押し下げは、ロックリング78の長円形凹所85とアクチュエータピンの長円形平坦隆起部84とが整合される位置に、ロックリング78が回転されて方向付けされることを必要とする。したがって、これらの長円形構造が回転して整合されると(図13〜14)、注射器10は、トリガーボタン押し下げおよびそれに対応する後退したセット位置にあるプランジャの解除に対して準備される。しかし、図9〜12に示すように、ロックリング78を、アクチュエータピン72に対して回転させ、これらの長円形構造を不整合とすることができる。この場合、アクチュエータピン72は、押し下げおよび作動に抗して後方位置にロックされる。ロックリング78上のセットピン90は、保持器スリーブフランジリム82内に形成される精密なノッチ92内に設け収容することができる。これによって、ロックリングを、部分円周変化によって大体90度、往復して回転することが可能となる。適切な標識を保持器スリーブリム82に貼付、たとえば、図12および図14に示すように、「ロック」に対して文字“L”、また「準備完了」に対して文字“A”を貼付し、トリガー組立部品34の設定の可視指標を提供することができる。
【0035】
本発明の一態様によれば、プランジャヘッド32は、さらに、プランジャヘッド32内に形成される狭いスロット96内に枢動するように担持される一対の安全ロックアーム94の形態の安全ロック機構を備える。これらの安全ロックアーム94は、枢動ピン98によってヘッド30に結合される後端を有し、前端はプランジャヘッド凹所44内に突出し輪郭に従って進む指状ロック100を形成する。図7に示すように、安全ロックアーム94およびそれらに関連した指状ロック100は、指状ロック100が、たとえば、挿入セット14のハブ18とハウジング20の間に形成される凹所101にはめ込まれることによって、係合して挿入セット14のハブ18を保持することができるサイズおよび形状を有する。重要なことには、ロックアーム枢動点の位置は、プランジャ30が前進位置(図7)から後退位置(図9)に移動される場合は常に、ロックアーム94が挿入セット14を係合して保持することを保証するように選択される。プランジャ30が完全に前進位置に達すると、それぞれが各枢動ピン98を備える安全ロックアーム94は、広い切り取り部40内に配列されるので、挿入セット14に対して、外側に自由に振れ、実質上最小限度の分離力によって、挿入セットを注射器10から分離することが可能となる。この構成は、事前に注射器10を患者の皮膚16に密着して配置することなくトリガー組立部品34が作動された場合に、挿入セット14が発射物として注射器10から放出されることを防止する安全装置として非常に有効であると認められた。使用時は、皮下挿入セット14を、プランジャヘッド32内に形成される凹所44内に入れ、注射器胴体28の開放先端中に迅速かつ容易に配置することができる。挿入セット14と注射器10とのこのような組立部品は、基部翼24および輸液管22と、胴体28の先端内に形成される適切な切り取り部40およびスロット42との簡単な整合のみしか必要としない。次に、挿入セット14およびプランジャ30は、駆動ばね36に抗して、手作業によって後方に後退位置まで後退され、その結果、図9および図11に示すように、プランジャ30はセットされラッチされる。次に、注射器10を、患者の皮膚16に密着して配置することによって、挿入セット14を、適切な方向で、皮膚16から所定の間隔をおいて支持することができる。トリガーボタン38を押し下げるだけで、セットされたプランジャ30は外され、速度および力の制御される条件下における挿入であるにもかかわらず、ばね荷重によって迅速に移動され、確実に最小限度の不快しか伴わずに挿入針とカニューレを適切に配置する様式によって、患者の皮膚を貫通する。安全ロックアーム94によって、トリガーボタン38が早まって押し下げられた場合に偶発的に挿入セット14が自由空間中に突き出すことが防止される。しかし、挿入セット14が適切に配置されている場合、安全ロックアーム94は、最小限度の力によって挿入セットから外され、注射器10は挿入セット14から容易に分離される。
【0036】
好適な実施形態によれば、挿入装置の速度および力の制御は、適切な速度および力において挿入セットを推進して挿入し、最小限度の不快しか伴わない貫通が保証されるように、ばねのばね定数を選択することによって得られる。代替方法の実施形態によれば、図48a〜48dに示すように、挿入サイクルごとに、速度および力を変更し、挿入セットの差異(たとえば、細い針、センサセット脆性など)および挿入部位条件(たとえば、体重過剰、体重不足、児童など)に適応する必要がある。図48aに示すように、力変更機構1000は、密封区画1004内に封入されるばね1002を有し、設定(または調整可能)オリフィス1006と共に用いられ、挿入装置の挿入ストローク中、内部と環境圧力を平衡させることを可能とする。密封区画1004は、密封区画1004をシールするシール用O−リング1008および1010を備える。O−リング1008は、挿入セットキャリア本体1012をシールし、O−リング1010は、力生成機構1000のアクチュエータハウジング1014(これはオリフィス1006を含む)をシールする。力変更機構1000は、たとえば、ばね1018によって偏らされるトリガー1016によって作動され、押し下げられるまでオリフィス1006を閉塞することができる。オリフィス1006を通過する限定流量は、緩衝力として作用し、ばね1002によるばね力に反対に作用し、その結果、挿入速度と力の制御が可能となる。オリフィスサイズは、多数の手法、たとえば、オリフィス1006を閉塞してベアリング1020に対するばね1022の張力に基づいて空気流に抵抗を与えるベアリング1020とばね1022によって、調節して達成することができる(図48b)。後退期間中は比較的低い抵抗を示すが密封区画1004内に含まれる空気が圧縮されると、ベアリング1020にばね1022に抵抗する力が加えられ、強制的にベアリング1020がオリフィス1006から外されて最大オリフィスサイズが与えられ、ばね1002の圧縮期間中、空気が逃がされる。この構造は、オリフィス1006はばね1002によって制限されているので、密封区画1004内に圧縮するよりもむしろ、密封区画1004内の空気がオリフィス1006を通って自由に迅速に流出することを可能とすることによって、ばね1022を圧縮するために必要とされる力を最小限度とする。別の代替方法によれば、図48cに示すように、ディスク1024は、複数の種々のサイズの孔1026(L)から1026(N)を有する。ディスク1024は、オリフィス1006の上において回転可能であり、種々のサイズの孔1026(L)から1026(N)までによってオリフィス1006を閉塞することによって、オリフィス1006の流路を、連続的に妨害、完全に妨害、または部分的に妨害し、オリフィス1006の有効サイズを変更する。また別の実施形態によれば、図48dに示すように、先細のバルブプラグ1028がオリフィス1006に関係のある位置に差し込まれ、オリフィス1006の有効サイズが変更される。オリフィス1006のサイズの他の変更方法を用いてもよい。さらに、挿入速度および力を制御する他の方法を用いることができ、たとえば、摩擦の制御、ばね張力の変更、水力学、空気力学、などを用いることができる。
【0037】
配置された挿入セット14から注射器10を取り外した後、挿入針12は、図16に示すように、迅速かつ容易にカニューレから引き抜くことができる。その後、挿入セット14を用いて、通常の方法によって、選択される薬物を輸液管22とカニューレ26を経由して患者に投与することができる。
【0038】
本発明の代替方法の好適な実施形態を、図17〜図29に示す。これらの実施形態において、図1〜図16に関して前述した構成要素に対応する構造および機能を有する構成要素は、共通の符号に100ずつ加えた数字で示す。図17〜図29の実施形態は、部品の数を減らした構造を有し、挿入セット14の先端が患者の皮膚16に接して配置されることなく注射器が作動される場合、挿入セット14が望ましくなく自由空間中に突き出すことを防止するための代替方法の安全ロック機構を備える変形注射器110を示す。しかし、代替の安全ロック機構によっても、最小限度の分離力による、挿入セット14から注射器110の迅速かつ容易な分離が可能となる。繰り返すが、薬物流体を患者に輸液する挿入セットを図示し説明するが、前述したように、この注射器110は、それ以外の挿入セット、たとえば、経皮センサ挿入セットなどに使用できることは理解される。
【0039】
一般に、変形注射器110は、プランジャ130と、ほぼ円筒状中空胴体128と共に組み立てられるトリガー型アクチュエータ134と、を備える。プランジャ130は、端ぐり凹所144を形成するほぼ円筒状のプランジャヘッド132を有し、端ぐり凹所144に輸液セット14のハブ18が収容され保持される。図27〜図29に最もよく示されるように、半径方向に内側に突出するリム202は、通常、凹所144の先頭または先端において、プランジャヘッド132上に形成され、このリム202は、非円形および好ましくは卵形または長円形(図28)を有し、ハブ18がプランジャ130および胴体128の中心縦軸に対して角度を有する方向である場合、ハブ18の凹所144内への収容に適応する。これらの構成要素の同様な角度方向によって、これらの構成要素の迅速かつ容易な分離が可能となる。しかし、挿入セット14が胴体中心軸と同軸に整合される医療用針12と同じ方向である場合、リム202の一部は挿入セット凹所101中に突出し挿入セット14が注射器110から取り外されることを防止する。
【0040】
より詳しくは、図17〜図20を参照して、胴体128は、患者の皮膚に密着配置するための平坦でほぼ平面状の表面を形成する前端または先端を有する。胴体128の先端は、その中に形成される一対の比較的広いほぼ対向する切り取り部140を有し、切り取り部140は挿入セット14の基部翼24をすべりばめ収容し、同時に、狭いスロット142は輸液管22をすべりばめ収容する。このスロット142は、胴体先端の片側に形成または両側に形成される場合がある。
【0041】
プランジャ130は、図17,18,20および21に示す前進位置と、図23に示す後退位置の間を移動するように、胴体128内に滑動してはめ込まれる。プランジャ130は、ほぼ円筒形の変形プランジャヘッド132を備え、好ましくは、その片側に浅いノッチまたは溝133を備え挿入セット14に輸液管22をすべりばめ収容するように形成される。この点に関して、プランジャヘッド溝133は、胴体の先端の狭いスロット142と整合される位置に形成される。
【0042】
プランジャヘッド132は、胴体内側内で後方に突出する駆動軸154と一体化して形成される。図22に最もよく示されるように、駆動軸154は、一対の後方に突出する軌道アーム148の側面に立ち、それと一体化して形成され、軌道アーム148はその後端に形成される指状ラッチ150を有する。図21および図23に示すように、これらの指状ラッチ150は、胴体128内に形成され縦方向に延在する軌道スロット152内に滑動自在に収容され、前進位置と後退位置の間においてプランジャ130を案内するように機能する。緩衝材(図示してない)を、軌道スロット152の先端に備え、以下に述べるように、プランジャ130の運動を進めるばね駆動体に対する複合停止部を形成することができる。
【0043】
プランジャ130は、さらに、駆動軸154の後端から通常後方に突出し、その後端に外側に折り返された指状トリガー158を有する一対のトリガーアーム156を備える(図22)。プランジャ130が前進位置(図21)から後退位置(図23)まで変位される場合、指状トリガー158がシリンダ基体内で移動するとき、これらの指状トリガー158は、互いに相手に接近する部分的な半径方向の圧迫に適合するサイズである。後退位置に達すると、指状トリガー158は、トリガーアーム156の弾力によってばね荷重され、外側に動き、胴体128内に形成される比較的短いトリガースロット159内に部分的に収容される。この位置において、図23に示すように、指状トリガー158は、プランジャ130を後退位置に保持する。
【0044】
駆動ばね136は、胴体128内に取り付けられ、図1〜図16に関して前述した同じ様式で、トリガー型アクチュエータ134とプランジャ130の間で作用する。この点に関して、トリガー型アクチュエータ134は、胴体128の後端または上端において、胴体128内に滑動自在に取り付けられるほぼ円筒状のアクチュエータスリーブ188を備える。このアクチュエータスリーブ188は、先細または傾斜先端面188′(図22、23および25)を有し、傾斜先端面188′は、指状トリガー158の係合に適する形状の傾斜外側面と係合し、トリガーアーム156を半径方向に圧迫し、プランジャ130を外してばね荷重によって後退位置から前進位置まで移動させる。トリガーボタン138は、アクチュエータスリーブ188と一体化して形成され、胴体128の後部または頂部において指先で押し下げられ、アクチュエータスリーブ188を移動させ、その結果、指状トリガー158との係合が外される。
【0045】
図22および図24〜図26に最もよく示されるように、トリガーボタン138は、胴体128の後部に形成される開口部を貫通し、通常、胴体128と一体化して形成されるロックスリーブ178内に延在する。ロックスリーブ178は、対向して形成される一対の案内スロット192を形成し、案内スロット192内に、トリガーボタン138上に形成され中心から外側に延びる一対のロックタブ184が整合して収容される。タブ184が回転して案内スロット192と整合されると、前述したように、トリガーボタン138を押し下げて、ばね荷重プランジャを作動させることができる。しかし、ロックタブ184は十分な長さを有し、アクチュエータ134の指先による回転によって、案内スロット192に隣接して形成される浅いロック溝193内にタブ184の位置を変えることが可能となる。タブ184がロック溝193内に収容される場合、ロックスリーブ178によってトリガーボタン138の押し下げが阻止され、その結果、注射器110は作動しないように固定される。注射器を作動可能とする前に、アクチュエータ134を回転して戻し、タブ184を案内スロット192と再整合することが必要とされる。
【0046】
本発明の一態様によれば、プランジャヘッド132は、プランジャヘッドの凹所144の先端に非円形リム202の形態として安全ロック機構を備える。図27および図28に示すように、リム202は、ほぼ長円形であり、その長軸は挿入セット14のハブ18の直径より大きく、短軸はハブ直径より小さい。この幾何形状によって、またプランジャヘッド凹所144が十分な軸方向深さを有することによって、ハブ18は、構成要素を角度付けた方向とすることによってプランジャヘッド中にはめ込むことができ、ハブ18をリム202の主軸部を通してすべりばめすることが可能となる。その後、構成要素は再方向付けして、通常、プランジャヘッド132と同軸である医療用針12と整合され、リム202の短軸部分が挿入セット凹所101中に突出することが可能となり、その結果、構成要素が一体化して固定される。その後、挿入セット14が患者に配置されるとき(図29)、構成要素は、同じ角度で注射器110を挿入セット14から持ち上げ、ハブ18がリム202の主軸中心を通って自由に押し進むことを可能とすることによって容易に分離される。重要なことには、構成要素のこのような係合と脱係合は、本質上、分離に対する抵抗力なしに行われる。輸液セット14は、プランジャが前進位置にあるときのみ、プランジャ130に対して角度を付けて方向付けすることが可能であり、プランジャ130が限定された位置から後方に移動すると、隣接する胴体128によって、このような角度のある方向は防止される。
【0047】
別の様式の操作においては、注射器110が作動して挿入セット14を患者の皮膚に配置後、注射器110は、患者の皮膚16から簡単に引き抜きまたは後退させることができる。この場合、プランジャヘッド132の先端のリム202は、針のハブ18と係合し、その結果、医療用針12は挿入セット14から穏やかに引き抜かれる。この様式によれば、針12は、所望の経皮挿入部位に残留するカニューレ26から引き抜かれる。
【0048】
本発明のさらに別の好適な形態を、図30〜図34に示す。これらの実施形態において、さらに変形された注射器210は、ほぼ図17〜図29について図示し前述したように、構成され作動されるが、プランジャヘッド232に対しては別の構造が与えられる。図30〜図32は、胴体128の前端または先端内の前進位置にあるプランジャヘッド232を有する注射器210を示し、胴体128は、基部翼24をすべりばめ収容する広い切り取り部140と輸液管22をすべりばめ収容する狭いスロット142を備える。図示のように、変形プランジャヘッド232は、ヘッド内に形成される横方向に開口する凹所244を有し、凹所244は、下をくり抜いた幾何形状であり、プランジャが前進位置にあるとき、切り取り部140を通して横方向に露出される。挿入セット14は、ハブ18を凹所244の広い上部領域にはめ込むことによって、プランジャヘッド232とすべりばめ組立することが可能であり、その結果、プランジャヘッドの先端の内側に折り返されたリム302は挿入セット凹所101にはめ込まれる。横方向に開口する、リム302のギャップ303(図34)によって、ハブ18を凹所244にすべりばめ収容することが可能となり、短いキャリアポスト304(図32)を凹所244の基部に構成し、ハブの頂部の浅い移動止め内に収めることができる。
【0049】
図32に示すように、挿入セット14をプランジャヘッド232と一体として組み立てることによって、プランジャは、図17〜図29について図示し前述したように、後退位置としセットすることができる。切り取り部140とスロット142は、このような後退中に挿入セット14をプランジャ232と共に滑動移動させることに適応する。その後、注射器210の前端または先端は、患者の皮膚16に密着して配置し(図33)、トリガーボタン138を押し下げてプランジャを外すことが可能であり、その結果、医療用針12は力および速度が制御される条件下において経皮配置される。プランジャの前方への駆動移動中、プランジャヘッド232の前部リム302によって、挿入セットの突出体解除が阻止される。挿入セットを患者に配置後、注射器210は、挿入セットに対して横方向に変位させ迅速かつ容易に挿入セットから分離することができる。あるいは、図34に示すように、注射器210は、挿入セット14から引き抜きまたは後退させ、挿入セットを患者のあるべき位置に残した状態において、医療針12を滑動させて引き抜くことができる。
【0050】
図35〜図40gは、本発明の第2実施形態による挿入装置500を示す図である。挿入装置500は、表面座501および組立部品ポート503を有する胴体502(またはハウジング)と、組立部品リム505および取付フランジ506を有するキャリア本体504(またはプランジャなど)と、駆動ばね507(または駆動体)と、解除ボタン508と、二元的ばねトリガー510および512と、を備える。図35に示すように、胴体502は、ハウジングとしての機能を果たし、キャリア本体504を保持する。キャリア本体504は、キャリア本体が胴体502の表面座501の開口部を通して挿入され、次いで、キャリア本体504の組立部品リム505が胴体502の組立部品ポート503を通過することによって、胴体502と結合される。キャリア本体504の組立部品リム505を有する部分は、組立部品ポート503を通過するとき、圧迫スロット509が存在するため、僅かに圧迫され、次に、そのもとの形状に本質上復元され、キャリア本体の組立部品リム505は胴体502の組立部品ポート503と係合するので、キャリア本体504が滑動して胴体502から外れることが防止される。
【0051】
キャリア本体504は、駆動ばね507によって、前進位置から後退位置まで駆動され、トリガーボタン510および512によって後退位置に保持される(または外され前進位置に移動する)。この実施形態の挿入装置500は、主として、挿入セット400または同等物(輸液セットとして図39に例示するような)の挿入に適し、挿入セットは、挿入後、穿孔部材402(または針)と共に皮膚表面に対して90度(または垂直)となるように挿入される。好適な実施形態によれば、キャリア本体504は、胴体502に恒久的に結合され、新たな挿入の都度、新しい挿入セット400がキャリア本体504に取り付けられる。しかし、別の実施形態によれば、たとえば、キャリア本体504を事前に装着される挿入セット400と共に出荷し、次に、挿入装置500の胴体502中に詰め込む場合のように、キャリア本体504は、使い捨て、すなわち各挿入の都度、交換することができる。
【0052】
挿入装置500は、背の低い小型の外観を特徴とし、この特徴によって、挿入セット400の挿入中、手の動きの影響が最小限度になる傾向がある。この実施形態によれば、前述した図31〜図34に示すように、横方向のスロットを用いて挿入セット14と係合または脱係合するのではなく、解除ボタン508を押し下げ、挿入セット400または同等物を挿入装置500のキャリア本体504から外す。解除ボタン508は、挿入セット400または同等物の挿入前または後に用いることができる。挿入セット400または同等物の挿入を容易にするため、挿入装置500には、安全性の特別の余裕を与え、皮膚表面と接触するとき、挿入装置500が偶発的に作動することを実質上防止する二元的トリガーボタン510および512が用いられる。これによって、図1〜図34に示した初期の挿入装置の作動ボタン(またはトリガー)のロックおよび非ロック位置が必要なくなる。挿入装置500は、取付フランジ506を形成し挿入セット400または同等物のリム404(または翼)を保持し、挿入セット400を皮膚の表面に接着する接着剤406を担持する他のリムもキャリア本体504に備える。挿入装置500を作動させキャリア本体を進行位置に移動するとき、取付フランジ506は、挿入セット400の接着剤406とリム404とを圧迫し、皮膚に密着させ、挿入セット400を皮膚に明確に取り付け固定することができる。これによって、挿入セット400の挿入前または後に、接着パッチを追加して配置し、挿入セット400を挿入部位にしっかりと固定する必要がなくなる。挿入装置500は、さらに、穿孔部材(または針)ハブ408と穿孔部材402(または針)を、挿入セット400または同等物の挿入完了後、挿入セット400または同等物から自動的に外す装置も備える。これによって、挿入装置500を皮膚表面から取り外すことのみによって、穿孔部材ハブ408と穿孔部材402(または針)を残留することなく、挿入セット400を皮膚表面に残留させることが可能となる。この自動取り外し特性によって、患者が挿入セット400または同等物の穿孔部材402(または針)と接触する可能性も最小限度となる。
【0053】
好適な実施形態によれば、挿入セット400または同等物は、キャリア本体504の空洞514(または収容構造)内に適応し、ぴったりとはめ込まれる。キャリア本体504の空洞514には、挿入セットを特定の方向に方向付けする案内516と、キャリア本体504の空洞514の内部の中心部の底部にあり挿入セット400または同等物の穿孔部材ハブ408(または針のハブ)と係合する拡大部材518とを備える。挿入セット400または同等物の穿孔部材ハブ408(または針)は、拡大部材518と軽度の締まりばめによって係合する中心部410を備える。締まりばめによって、穿孔部材ハブ408の中心部410は僅かに拡大され、穿孔部材ハブ408をキャリア本体504の空洞514の側に拡大、圧迫し、挿入セット400または同等物を、キャリア本体504の空洞514内にしっかりと固定する。キャリア本体504内における挿入セット400または同等物の締まりばめによって、皮膚上において挿入装置500を作動し挿入セット400または同等物の挿入をよりよくする場合、挿入セットまたは同等物が無理に移動されることが実質上防止される。しかし、締まりばめによって、挿入装置400が皮膚表面に圧着されていない場合、挿入装置500が不注意に作動されるとき、挿入セット400または同等物が射出されることも防止される。好適な実施形態によれば、挿入装置500は、案内516と拡大部材518を有し、既存の挿入セット400または同等物と共に作用するように構成される。しかし、別の実施形態によれば、挿入セット400または同等物は、穿孔部材基部と、スロット(図示してない)を備えるハウジングまたは同等物とを有し、挿入装置500の案内と拡大部材とを収容し、挿入装置500と挿入セット400または同等物との結合を改善するように変形することができる。さらに別の実施形態によれば、案内と拡大部材は、挿入セット400または同等物に形成することが可能であり、対応する案内と拡大部は挿入装置500に形成することができる。
【0054】
図示の実施形態においては、二元的トリガー作動構造が用いられ、挿入装置500が無意識に作動される事例の可能性が最小限度とされる。図示のように、挿入装置500の胴体502は、2本の外側に延在する案内チャネル520および521を胴体502の側面に備える。案内チャネル520および521は、胴体502の基部524から胴体502の側面の入口開口部526および528まで延在する。二元的トリガーボタン510および512は、キャリア本体504の端部において取付フランジ506の対向する両側に担持される。各トリガーボタン510および512は、トリガーボタン510および512の端部と取付フランジ506の側面の間においてトリガーばね530および532によって、取付フランジ506の側面から外側に偏らせられる。挿入装置500のキャリア本体504が発射位置(または後退位置)にロックされている場合、トリガーボタン510および512は、トリガーばね530および532によって押し出され入口開口部526および528から外に延在する。この位置において、トリガーボタン510および512は、案内チャネル520および521を越えて延在し、その結果、トリガーボタン510および512が案内チャネル520および521を下に移動することが防止される。挿入装置500を作動するため、利用者は、両方のトリガーボタン510および512を押し下げる必要があり、その結果、トリガーボタン510および512は、次に、案内チャネル520および522の底部に沿って滑動することが可能となり、次に、挿入装置400または同等物が挿入されるまで、キャリア本体504が、胴体502に沿って下方に移動することが可能になる。好適な実施形態によれば、入口開口部526および528ならびに入口開口部526および528において終わる案内チャネル520および521の端部は、トリガーボタン510および512の形状に一致するように丸くされる。このことによって、トリガーボタン510および512の押し下げ中にトリガーボタン510および512に作用する抵抗圧力が最小限度となる傾向がある。しかし、別の実施形態によれば、他の入口開口部および案内チャネル端部形状、たとえば、三角形、四角形、多角形、などを用いることができる。
【0055】
組立部品リム505を有するキャリア本体504の端部は、キャリア本体504に対して押し下げられまたは僅かに延在する解除ボタン508と結合される。解除ボタン508は、キャリアスロット554およびキャリアロック556(図36および図38参照)と係合して解除ボタン508をキャリア本体504にロックする係合タブ550およびロック歯552(図35および図36参照)を備える。ロック歯552は、キャリアロック556と係合し(図36および図38参照)、キャリアロック556に沿ったロック歯552の移動の量によって、解除ボタン508が押し下げられ挿入セットをキャリア本体504から外すことができるようになる。また、解除ボタン508は、挿入セット400がキャリア本体504の内部空洞514内に配置され挿入セット400の取付が可能となる場合、キャリア本体504から外側に僅かに延在する。解除ボタン508とキャリア本体の係合によって、圧迫スロット509および組立部品リム505が圧迫されキャリア本体504の挿入装置500の胴体502からの解除が阻害されることが防止される。
【0056】
解除ボタン508が押し下げられると、挿入セット400または同等物が挿入装置500のキャリア本体504から外れる。解除ボタン508によって、挿入セット400または同等物は、挿入セット400または同等物が空洞514内の案内516および拡大部材518から外れるために十分な程度に、キャリア本体504の空洞514から押し出され、挿入セット400または同等物が皮膚上に配置される。あるいは、挿入セット400または同等物が挿入装置500によって挿入される前に、解除ボタン508を作動させ、挿入セット400または同等物を、キャリア本体504から外すことができる。解除ボタン508は、傾斜部分534(または他のトリガー機構)も備え、傾斜部分534は、挿入セット400または同等物の穿孔部材ハブ408(または針のハブ)を曲げまたは調整することに適合し、挿入セット400または同等物が挿入され挿入装置500が皮膚上に配置されたとき、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402(または針)が挿入セット400または同等物から外され分離されることを可能とする。これは、挿入セット400または同等物の要素を分離することによって達成され、その結果、挿入セットまたは同等物、ハウジング、および管系(または配線など)のみが皮膚に接触した状態で残される。穿孔部材ハブ408および穿孔部材402を取り外しできることは、挿入セット400または同等物の接着剤406によって容易にされることが好ましく、接着剤は、皮膚に接着し、挿入セット400または同等物を無理に移動させることなく、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402が挿入セット400または同等物の残部から分離することを可能とするのに十分な張力を与える。好適な実施形態によれば、挿入装置500は、挿入セット400または同等物上において既存の穿孔部材ハブ408と共に作用することに適する。しかし、別の実施形態によれば、穿孔部材ハブ408と、穿孔部材ハブ408と挿入セットハウジングまたは同等物の間の結合とは、挿入装置500の解除機構と共に作用するように変形される。
【0057】
好適な実施形態によれば、解除ボタン508は、プラスチックばねまたは金属ばねによってあるべき位置において偏らせられる。しかし、別の実施形態によれば、解除ボタン508は、係合および脱係合戻り止めによって、または他の弾性材料を用いて解除ボタン508を胴体502およびキャリア本体504に対して正しい位置において偏らせることによって、手作業でリセットすることができる。好適な実施形態によれば、解除ボタン508を引き上げて(または解除ボタン508を胴体502の組立部品ポート503から離れて延長して)、キャリア本体504を胴体502内の後退位置まで引き上げ、ここで、キャリア本体504は、入口開口部526および528と係合するトリガー510および512によって、正しい位置にロックされる。この手順によって、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402が、挿入セット400または同等物のハウジングから分離される。この手順は、穿孔部材402および穿孔部材ハブ408を取り外し、利用者が穿孔部材402によって刺される機会を最小限度とする長所を有する。
【0058】
図40a〜図40gは、本発明の実施形態による、挿入装置500を用いる挿入セット400の挿入方法を示す図である。利用者は、最初に、皮膚の挿入部位を清潔にし、滅菌する。次に、利用者は、挿入装置500が、前進位置にあるキャリア本体504を有することを確認し、皮膚に配置する前に、挿入装置500が無意識に作動されることを回避する。図40aに示すように、利用者は、管系(または配線など)をキャリア本体504のスロット536および挿入装置500の胴体502のスロット538と整合して、挿入セット400をキャリア本体の空洞514内に入れる。利用者は、穿孔部材保護部414(または針保護部)を押して、穿孔部材ハブ408(または針のハブ)および挿入セット400を、キャリア本体504の空洞514内に取り付ける。図40bに示すように、利用者は、挿入セット400のリム404上の接着剤406を被覆する接着剤裏打ち416を取り外す。穿孔部材保護部414は、この時点においては取り外さず、穿孔部材402によって無意識に刺されることを回避し、接着剤406との接触を最小限度とし、または回避することが好ましい。図40cに示すように、利用者は、穿孔部材保護部414を押して、キャリア本体504を前進位置から後退位置に移動させ、この点において、トリガーボタン510および512は入口開口部526および528から延びて案内チャネル520および521を越えて延在し、キャリア本体504は後退位置にロックされる。次に、図40dに示すように、利用者は、穿孔部材保護部414を取り除き(通常、ねじりによる)、挿入セット400をキャリア本体504内に保持しながら、穿孔部材402を露出させる。次に、図40eに示すように、利用者は、挿入セット400を有する挿入装置500の胴体502の表面座501を、皮膚の挿入部位に置く。利用者は、2つのトリガーボタン510および512を、入口開口部526および528を通して十分に押し下げ、トリガーボタン510および512は、案内チャネル520および521に沿って滑動して下がり、挿入セット400を皮膚の挿入部位に挿入して装着する。図40fに示すように、利用者は、解除ボタン508を押し下げ、挿入セットをキャリア本体504の空洞514から外す。最後に、図40gに示すように、利用者は、挿入セット400の装着を維持した状態において、挿入装置500を取り外す。別の実施形態によれば、利用者は、解除ボタン508を引き延ばして、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402を引き上げ、挿入セット400の残部を皮膚の挿入部位に保持する。穿孔部材ハブ408および穿孔部材402が装置から引き上げられる場合は、利用者は、挿入装置500からセットの残部を取り外す前に、穿孔部材保護部414を再装着すべきである。
【0059】
図41〜図46は、図1〜図34に示した挿入装置と類似である、第3実施形態による挿入装置600を示す図である。挿入装置600は、装置ハウジング端部601と、角度を付けられた挿入接触面603および604を有するキャリア本体602と、を備える。角度を付けられた挿入接触面603および604によって、利用者が、挿入装置600を適切な角度として、挿入セット700または同等物を、皮膚に対して適切な角度において挿入することが可能となる。挿入セット700は、Van Antwerpらによる米国特許出願第08/871,831号(PCT出願第US98/10832号)、発明の名称“Disposable Sensor Insertion Assembly”に開示されている挿入セット、またはFunderburkらによる米国特許出願第09/034,626号、発明の名称“Medication Infusion Set” に開示されている角度を付けて挿入することができる挿入セットに、類似であり、これらの両特許はそれぞれ、本願に引用して援用する。挿入装置600の好適な実施形態は、挿入セットまたは同等物の角度の付いた挿入を可能とする角度の付けられた接触面603および604を有し、その角度は、皮膚表面に対して89.9度から25度の範囲である。また別の実施形態によれば、角度の付けられた接触面603および604は、皮膚に対して約10度までの浅い角度においても取り扱うことができる。
【0060】
重要なことは、角度のついた挿入接触面603および604は、挿入セット700または同等物の挿入角度を反映することであり、その結果、挿入セット700または同等物の穿孔部材702(または針)は、挿入装置600のキャリア本体602の移動方向と軸方向が整合される。このことによって、主として90度の挿入セットまたは同等物と共に使用するために設計された挿入装置を、角度の付けられた挿入接触面603および604の角度の変更によって、角度の付けられた挿入セット700または同等物と共に作用するように変形することが可能となる。さらに、挿入セット700または同等物の穿孔部材702は、キャリア本体602の中心軸から僅かに中心を外れており、挿入セット700または同等物が挿入された場合、挿入装置600を容易に取り外しできることが好ましい。本発明の好適な実施形態には、キャリア本体602の側面に凹所606および孔608を備える収容構造を有するキャリア本体602が備えられる。凹所606は、軽度の締まりばめによる穿孔部材ハブ704の保持に適し、孔608は、挿入セット700または同等物の挿入管または伝送器ハブ706の保持に適する。挿入セット、たとえば、管系を有する輸液セット(または既にセンサに接続されている配線を有するセンサセット)に関する他の実施形態によれば、孔608は、片側に開口され(図示してない)、輸液管(または配線)の挿入および取り外しを可能とするが、挿入管系(または配線)、または管系または配線を挿入セット700または同等物のハウジングに接続する伝送器ハブ706を確実に保持して把持するために十分な程度に閉められる。
【0061】
図47は、挿入セットまたは同等物の挿入後、皮膚表面に対してほぼ10度以下の角度であるように、挿入セットを挿入することに適する挿入装置800を示す図である。この実施形態は、皮膚をつまむ一対のつまみ802および804を備える。つまみ802および804は、挿入セットまたは同等物を保持するキャリア本体806の前の皮膚をつまみ上げる(またはこぶ状にする)。皮膚がつままれると(またはこぶ状にされると)、利用者が、作動ボタンを押し下げると、挿入セットまたは同等物が皮膚内に挿入される。別の実施形態によれば、利用者は、つまみ802および804を押して互いに接近させ、挿入装置800を作動させる。挿入後、利用者は、つまみ802および804を緩めて挿入装置800を挿入セットまたは同等物から取り外す。この実施形態の効果は、皮膚を隆起させ、その結果、皮膚の隆起された(つままれた)領域の面に対する穿孔部材の実際の挿入角度は10度から90度の範囲であるので、穿孔部材は、前述した実施形態と同様な様式によって挿入されることである。しかし、つままれた皮膚が緩められると、穿孔部材は0度から10度の範囲の浅い角度で皮膚上に残される。つまむ量およびつまみの高さは注意深く制御して、確実に、挿入セットまたは同等物を皮膚組織に適切な深さおよび位置で挿入しなければならない。前述した角度で挿入できる挿入セットの一例は、Funderburkらによる米国特許出願第09/034,626号、発明の名称“Medication Infusion Set”に開示されており、本特許は、本願に引用して援用する。
【0062】
以上、本発明を特定の実施形態について述べたが、本発明の思想を逸脱することなく多数の変形を実施できることを理解されたい。請求の範囲は、このような変形は、本発明の真の範囲および思想内にあるものとして包括するものである。
【0063】
したがって、ここに開示した実施形態は、あらゆる点において説明のためと考えるべきであり、これに限定されるものではなく、本発明の範囲は、前述した記述ではなく、請求の範囲によって示され、それ故、請求の範囲の均等の意味および範囲内において生じるすべての変化は、請求の範囲に含まれるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の新規な特徴を具体化する自動注射器の使用を示す斜視図である。
【図2】図1に示す注射器の拡大正面図である。
【図3】図2の線3−3にほぼ沿った、注射器の前端または先端を示す図である。
【図4】皮下挿入セットを有する注射器の組立部品を示す拡大分解斜視図である。
【図5】図4の線5−5にほぼ沿った拡大縦断面図である。
【図6】図5の線6−6にほぼ沿った横断面図である。
【図7】図2の線7−7にほぼ沿った拡大縦断面図である。
【図8】注射器において使用されるトリガー組立部品を示す拡大分解部分斜視図である。
【図9】図5に類似の縦断面図であり、患者の皮膚を貫通して経皮配置される挿入セットをその中に収容する注射器を示す図である。
【図10】図9の線10−10にほぼ沿った横断面図である。
【図11】図9の線11−11にほぼ沿った縦断面図である。
【図12】図11の線12−12にほぼ沿った後端正面図であり、ロックされた位置にあるトリガーを示す図である。
【図13】図11の一部に類似の拡大部分縦断面図であるが、ばね荷重プランジャを外すためのトリガー組立部品の作動を示す図である。
【図14】図13の線14−14にほぼ沿った、図12と同様な後端正面図であるが、ロックされていない位置にあるトリガー組立部品を示す図である。
【図15】患者の皮膚上に配置される輸液セットを有する、完全に前進位置にあるばね荷重プランジャを示す部分縦断面図である。
【図16】皮下挿入セットのカニューレからの挿入針の取り外しを示す分解側面図である。
【図17】本発明の代替方法の好適な形態を示す斜視図である。
【図18】図17に示す注射器の正面図である。
【図19】図18の線19−19にほぼ沿った、注射器の前端または先端を示す図である。
【図20】図18の線20−20にほぼ沿った、注射器の拡大側面図である。
【図21】図17の線21−21にほぼ沿った、より詳しい拡大縦断面図である。
【図22】図17の注射器に使用されるプランジャおよびトリガー部材の詳細構造を示す拡大分解斜視図である。
【図23】図21に類似の拡大縦断面図であり、セットされた位置にあるトリガー部材を有する注射器を示す図である。
【図24】セットされた位置にあるトリガー部材を有する、図23に示す注射器の上端を示す部分斜視図である。
【図25】トリガー部材の作動を示す拡大部分縦断面図である。
【図26】患者の皮膚上に配置される輸液セットを有する、完全に前進位置にあるプランジャを示す拡大部分縦断面図である。
【図27】図22の線27−27にほぼ沿った拡大部分縦断面図であり、プランジャの一部を示す図である。
【図28】図27の線28−28にほぼ沿った、プランジャの前端または先端の正面図である。
【図29】患者の皮膚上に配置された輸液セットからの注射器の取り外しを示す拡大部分縦断面図である。
【図30】図17にほぼ類似の分解斜視図であるが、本発明のさらに別の好適な形態を示し、例示の注射器をと共に、挿入セットの組立部品を示す図である。
【図31】図30に類似の斜視図であり、注射器と共に、さらにまた別の挿入セットを示す図である。
【図32】図31の線32−32にほぼ沿った、拡大部分縦断面図である。
【図33】挿入セットの経皮配置の場合、図30〜32の注射器の使用を示す斜視図である。
【図34】図33に類似の分解斜視図であり、装着された挿入セットから医療用針を取り外す注射器の使用を示す図である。
【図35】本発明の第2実施形態による一形式の挿入セットを有する挿入装置を示す斜視図である。
【図36】図35の挿入装置の底面の斜視図である。
【図37】図35に示す挿入装置および挿入セットの側面図である。
【図38】図37の線38−38に沿って示した挿入装置および一形式の挿入セットの分解断面図である。
【図39】図35に示す挿入装置と共に使用される一形式の挿入セットの頂部斜視図である。
【図40a】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40b】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40c】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40d】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40e】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40f】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40g】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図41】本発明の第3実施形態による一形式の挿入セットを有する挿入装置の斜視図である。
【図42】図41に示す挿入装置の分解斜視図である。
【図43】図41に示す挿入装置および一形式の挿入セットの分解側面図である。
【図44】図41に示す挿入装置のキャリア本体中に保持される一形式の挿入セットの拡大側面図である。
【図45】図41に示す挿入装置および一形式の挿入セットの正面斜視図である。
【図46】図45の線46−46に沿って示す、挿入装置および一形式の挿入セットの断面図である。
【図47】本発明の第4実施形態による挿入装置の略平面図である。
【図48a】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【図48b】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【図48c】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【図48d】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、1997年12月31日出願の米国特許出願第09/002,303号および1998年12月18日出願の米国特許出願第09/215,356号の一部継続出願であり、これらの特許出願は本願に引用して援用する。
【0002】
本発明は、広くは、患者の皮膚を通して挿入セットを自動的に配置する挿入装置に関し、特定の実施形態においては、皮下挿入セットまたは同等物の挿入針を、力および速度が制御される条件下において、患者によって患者の皮膚を貫通して
配置する小型で操作の容易な挿入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用針は、患者の介護および治療の過程、より詳しくは、選択された薬物を患者に投与するために広く用いられる。一般的な一形態においては、中空皮下注射針を用いて、選択された薬物が注射器などから経皮投与される。別の一般的な形態においては、挿入針を用いて軟らかい比較的フレキシブルなカニューレを経皮配置し、その後、挿入針を取り出し、その結果、カニューレを通じて医療用流体が患者に輸液される。最近では、挿入針は、他の医療装置、たとえば、特定の患者パラメータ、たとえば、血糖値をモニタリングするため皮下センサを経皮配置するためにも用いられている。
【0004】
ある一定の治療摂生法においては、患者が医療用針を経皮配置することが必要である場合または望ましい場合がある。たとえば、糖尿病患者は、インシュリン注射剤を頻繁に自身で投与、またはカニューレを有する皮下挿入体を定期的に配置した後、米国特許第4,685,903号に開示されている一般型の薬物輸液ポンプによってインシュリンをプログラム化して投与する。このような皮下挿入セットは、たとえば、米国特許第4,755,173号、第5,176,662号、および第5,257,980号に開示されており、これらの特許は本願に引用して援用する。糖尿病患者は、皮下挿入セットを用いて経皮グルコースセンサを定期的に配置する場合もあり、このようなセンサ挿入セットは、たとえば、米国特許第5,390,674号、第5,568,806号、第5,586,553号に開示されており、これらの特許も、本願に引用して援用する。
【0005】
一部の患者は、自身の皮膚を医療用針によって穿孔することを嫌悪または躊躇し、その結果、正しく針を配置して薬物を適切に投与することが困難になる。このような困難は、適切な針配置を実現する手作業の器用さまたは熟練の不足が原因である場合があり、あるいは、針が皮膚を穿孔するときに予測される不快に関連する不安が原因である場合がある。この問題は、不正確な配置によってカニューレのよじれが生じ、その結果、患者への薬物流が阻害される場合があるので、皮下フレキシブル挿入セットによって投与される薬物の場合に特に重要である。カニューレのよじれは、患者の皮膚に対して正しくない角度による挿入セットの配置、および/または不適切な力および速度における挿入による針の配置が原因である場合がある。
【0006】
本発明は、自動注射器、より詳しくは、正しい挿入角度において、患者の不快を最小限度とする挿入の速度および力によって、患者の皮膚を貫通して挿入針を迅速かつ容易に配置するため、皮下挿入セットと共に使用する自動注射器に関する。
【発明の開示】
【0007】
本発明の実施形態は、前述した制限を実際上除去する、改善された挿入装置および挿入セットを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の実施形態によれば、患者の皮膚を貫通する医療用針の迅速かつ容易な経皮配置、より詳しくは、たとえば皮下挿入セットの挿入のための注射器が提供される。注射器は、選択される挿入角度において、挿入の力と速度が制御される条件下において、選択される挿入角度において皮膚を貫通して針を配置し、患者の不快が最小限度であり適切な針配置が保証されるように設計される。注射器は、特に、これらの目的を充足し、同時に、注射器が患者の皮膚に対して間隔をおいた状態で作動された場合、医療用針が望ましくなく自由空間中に突き出すことを防止するように設計される。
【0009】
注射器は、ヘッドを有するばね荷重プランジャを備え、ヘッドは、外側に突出し、患者の皮膚を貫通して経皮配置される挿入体を有する挿入セットを収容し正しい位置に支持する。プランジャは、胴体内において、プランジャヘッドに対して所定のばね力を加える様式で圧縮される駆動ばねによってセットされる位置まで後退されて保持されるように設計される。注射器胴体の前端または先端は、選択される針挿入部位において、正しいまたは所望の挿入角度に配置される針と同方向で、患者の皮膚に対して押し付けられて配置されるように設計される。トリガー部材は、プランジャを外すように作動可能であり、それによって、駆動ばねが、力および速度が制御される条件下において、挿入セットを患者の皮膚の方向に移動させることが可能となり、その結果、患者の不快が最小限度の状態で、挿入針が適切に経皮配置される。
【0010】
プランジャヘッドは、安全ロック機構を備え、挿入セットを注射器胴体から突出しないように保持する。好適な一実施形態によれば、安全ロック機構は、プランジャが完全な前進位置から後退するとき、係合して挿入セットを保持する少なくとも一つ、好ましくは一対の安全ロックアームを備える。各安全ロックアームは、挿入セット上の適切な形状の凹所と係合するカムローブを備え、プランジャヘッドが完全な前進位置に戻らない場合および戻るまで、挿入セットがプランジャヘッドから外されることを防止する。このような完全な前進位置において、カムローブの形状によって、最小限度の分離力による挿入セットから注射器の迅速かつ容易な分離が可能となる。
【0011】
作動中、胴体の先端が患者の皮膚から間隔をおいた状態においてトリガー部材が作動される場合、安全ロックアームは、挿入セットが注射器から突出することをこのようにして防止する。そのような場合、プランジャヘッドは、力および速度が制御される条件下において、完全な前進位置まで進められるが、挿入セットは突出体として注射器から突き出されることはない。その代わり、挿入セットは、プランジャヘッドと共に迅速に完全な前進位置まで移動され、ここにおいて、注射器は、最小限度の分離力によって挿入セットから分離することができる。
【0012】
別の好適な形態によれば、安全ロック機構は、円筒状形状を有し前方が開放された空洞を形成するプランジャヘッドを備え、挿入針と外側に突出するカニューレとを有する挿入セットが空洞内に収容され支持される。この実施形態によれば、プランジャヘッドは、その前端または先端において急速に内側に突出するリムを備え、このリムによって卵形の開口部が形成される。リム開口部のサイズによって、輸液セットをプランジャヘッドと胴体の中心軸に対して一定の角度に向けて、ハブを比較的自由に挿入セットに収容することが可能となる。次に、挿入セットは、方向を再調整して挿入針を胴体とプランジャヘッドの中心軸と同軸に整合され、その結果、リムは挿入セットの凹所に収容され、ばね駆動による挿入針の配置中に輸液セットが注射器から取り外される望ましくない事態を防止するため輸液セットを保持する機能を果たす。挿入針の配置後、注射器を挿入セットに対してある角度に向け、ハブが自由に滑動してその通路から外れ卵形のリム開口部を通過することを可能とすることによって、注射器は、最小限度の分離力によって挿入セットから外される。
【0013】
本発明のまた別の形態によれば、プランジャヘッドは、挿入セットの針のハブの比較的自由なすべりばめ収容に適したサイズである横方向に開口した下をくり抜いたスロットを形成する形状とされる。この形状の場合、挿入セットは、横方向に開口したスロット中にハブを横方向に滑動させることによって、注射器のプランジャヘッドと共に迅速かつ容易に組み立てられ、その結果、医療用針は、注射器胴体とプランジャヘッドの中心軸に対してほぼ同軸に方向付けされる。この位置において、プランジャヘッドは、後退してロックされ、その後、適切なトリガー部材によって外され、医療用挿入針を経皮配置することができる。針が患者に配置された後、注射器は、針のハブに対して横方向に注射器を滑動させることによって、挿入セットから取り外すことができる。あるいは、注射器を患者の皮膚から引き抜きまたは後退させ、患者の皮膚上のあるべき位置に配置される挿入セットから針を滑動自在として分離することができる。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、挿入装置は、挿入セットの少なくとも一つの穿孔部材の少なくとも一部を患者の皮膚を貫通して挿入し、装置ハウジングと、キャリア本体と、駆動体を備える。キャリア本体は、装置ハウジング内に滑動自在に収容され、前進位置と後退位置の間を移動する。キャリア本体は収容構造も備え、収容構造によって、キャリア本体が後退位置から前進位置まで移動すると患者の皮膚に対して所定の角度において患者の皮膚を貫通して挿入されるように方向付けされる少なくとも一つの穿孔部材を有する挿入セットが正しい位置に支持される。駆動体は、装置ハウジングとキャリア本体の間に適切に作用するように結合され、力および速度が制御される条件下において、キャリア本体を後退位置から前進位置まで駆動し、挿入セットの少なくとも一つの穿孔部材の少なくとも一部を、患者の皮膚を貫通して配置し、挿入セットを患者に装着する。キャリア本体の収容構造は、挿入セットを患者に装着した状態において、挿入セットから取り外すことができる。
【0015】
特定の実施形態によれば、皮膚に対する所定の角度は、約90°、90°から10°の範囲、または挿入後、0°から10°の範囲である。別の実施形態によれば、挿入セットは経皮挿入セット、皮下挿入セット、輸液セット、センサセット、などである。また別の実施形態によれば、挿入セットは、挿入後、主として皮膚の表面上に静止、または挿入セットは、患者の皮膚内に埋め込まれる。好適な実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、針である。別の実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、複数の針であり、また複数の極微針とすることもできる。また一部の実施形態によれば、挿入セットは、一体化装置として結合された輸液セットとセンサセットの両者とすることができる。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、装置ハウジングは、ほぼ平面であり患者の皮膚に対する所定の角度を反映する角度を有する挿入接触表面を形成する前端を有し、その結果、装置ハウジングは患者の皮膚に対して所定の角度になるように患者の皮膚に接して配置される。他の実施形態においては、駆動体を作動させるトリガー機構が備えられる。たとえば、トリガー機構は、指先による押し下げによって駆動体を作動させ、キャリア本体を後退位置から前進位置まで移動させる少なくとも一つのトリガーを備える。さらに、駆動体は、後退位置から前進位置までキャリア本体をばね荷重によって移動させる少なくとも一つのばねを備えることができる。その上、駆動体は、挿入サイクルごとに、後退位置から前進位置まで移動するキャリア本体を制御した力と速度を変更することを可能とする力変更機構を備えることができる。また別の実施形態によれば、装置ハウジングとキャリア本体は、共同して作用するように係合可能な軌道機構を備え、前進位置と後退位置の間のキャリア本体の移動を案内し、同時に、キャリア本体を装置ハウジングに対して回転しないように保持する。
【0017】
挿入装置の別の実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、挿入セットの一部として穿孔部材ハブを備える。さらに、キャリア本体の収容構造は、構造内に形成され、係合して挿入セットの穿孔部材ハブをすべりばめ収容する凹所を備える。その上、収容構造の凹所は、横方向に開口する下をくり抜いた凹所を備えることができる。あるいは、収容構造は、後退位置から前進位置までの移動中、少なくとも一つの穿孔部材を収容構造上に保持する安全保持器構造を備えることができる。この安全保持器構造によって、キャリア本体が前進位置にあるとき、キャリア本体から少なくとも一つの穿孔部材を取り外すことが可能となる。
【0018】
本発明のまた別の実施形態は、挿入装置によって患者の皮膚を貫通して挿入される挿入セットを目的とする。挿入装置は、前進位置と後退位置の間を移動する滑動自在のキャリア本体を有する。挿入装置のキャリア本体は、キャリア本体が後退位置から前進位置まで移動すると患者の皮膚を貫通して挿入されるように正しい位置に挿入セットを支持する収容構造を備える。挿入装置は、キャリア本体に適切に作用するように結合され、キャリア本体を力および速度が制御される条件下において後退位置から前進位置に向かって強制的に移動させて、挿入セットを患者の皮膚を貫通して挿入する駆動体も備える。挿入セットは、少なくとも一つの穿孔部材とセットハウジングを備える。少なくとも一つの穿孔部材は、患者の皮膚を貫通して挿入可能である、少なくとも一つの穿孔部材の部分を含む。このセットハウジングは、少なくとも一つの穿孔部材に結合される。また、セットハウジングは、挿入装置のキャリア本体内にはめ込まれる形状であり、少なくとも一つの穿孔部材の少なくとも一部が患者の皮膚に対して所定の角度において患者の皮膚を貫通して配置されるように少なくとも一つの穿孔部材の方向を定め、挿入セットを患者に装着する。挿入セットのセットハウジングは、挿入セットを患者に装着した状態において、キャリア本体の収容構造から取り外すことができる。
【0019】
挿入セットの特定の実施形態によれば、皮膚に対する所定の角度は、約90°、90°から10°の範囲、または挿入後、0°から10°の範囲である。別の実施形態によれば、挿入セットは、経皮挿入セット、皮下挿入セット、輸液セット、センサセットなどである。また別の実施形態によれば、挿入セットは、挿入後、主として皮膚の表面に静止、または挿入セットは患者の皮膚内に埋め込まれる。好適な実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、針である。別の実施形態によれば、少なくとも一つの穿孔部材は、複数の針であり、また複数の極微針とすることもできる。また、一部の実施形態によれば、挿入セットは、一体化装置として結合された輸液セットとセンサセットの両者とすることができる。
【0020】
本発明の他の特徴および長所は、例示によって本発明の種々の実施形態を説明する添付図と共に、以下の詳細説明によって明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
例示のため図示するように、本発明は、挿入セット、たとえば、輸液セット、医療装置、または同等物の挿入装置として具体化される。さらに、挿入装置の実施形態を用いて、他の挿入セットまたは医療装置、たとえば、生物分解可能体内埋植、カプセル、含浸糸(薬物などによる)を挿入することができる。他の挿入セットは、糸を通した針挿入セット、たとえば、1996年12月17日発行のLivingstonらによる米国特許第5,584,813号、発明の名称“Subcutaneous Injection Set”および1998年7月14日発行のMastrototaroらによる米国特許第5,779,665号、発明の名称“Transdermal Introducer Assembly”に開示されているセットを対象とすることができる。これらの特許は、本願に引用して援用する。さらに、挿入セットは、感染を防止および/または挿入部位の治癒を促進する薬物または他の薬品によって被覆することができる。挿入装置および挿入セットの好適な実施形態は、皮下組織中に挿入セットを経皮配置する場合である。しかし、別の実施形態によれば、挿入セットは他の皮下組織中に挿入することができる。さらに、また別の実施形態を用いて、セットを他の種類の組織、たとえば、筋、リンパ、器官組織などに配置し、また動物組織に配置することができる。本発明の好適な実施形態によれば、挿入装置は、標準手持ちサイズの挿入セットまたは同等物を備え、その状態において、利用者の皮膚に接して配置され、このとき、挿入装置が作動されて挿入セットまたは同等物の一部が、利用者の痛みおよび/または不快を最小限度とする様式によって、迅速に皮下に経皮配置される。しかし、さらに、本発明の実施形態を用いて、挿入セットの一部のみではなく、挿入セット全体または同等物を、皮膚の下に配置することができることは理解される。前述したように、挿入装置の好適な実施形態は、既製の挿入セットまたは同等物に適合するように設計される。しかし、別の実施形態を、特定の方向または外形に適合するように変更された特製の挿入セットまたは同等物と共に用いて、安全性の改善および/または挿入セットまたは同等物の適切な配置の保証をすることができる。さらに、別の実施形態によれば、挿入セットまたは同等物をある角度に向けること、および挿入セットの挿入後、皮膚表面に対して0°から90°の範囲の角度となるように挿入することができる。
【0022】
好適な実施形態によれば、挿入セットは、挿入中に皮膚を穿孔する少なくとも一つの穿孔部材を備える。特定の実施形態によれば、穿孔部材は金属針である。別の実施形態によれば、針は、中空、中実、半針(または他の小部分)などとすることができる。さらに別の実施形態によれば、穿孔部材は、他の材料、たとえば、セラミック、プラスチック、複合材、シリコン極微針、生分解性物質、親水性物質、身体および/または体液などと接触する場合に軟化および/または変化する物質から製作することができる。他の実施形態によれば、挿入セットは、一つ以上の穿孔部材を備える場合がある。たとえば、単独の挿入セットは、輸液部分のための穿孔部材、およびセンサ部分を分離するための別の穿孔部材または同等物を備えることができる。あるいは、挿入セットは、小さいパッチまたは基板上に複数の小さい穿孔部材、たとえば、薬物の輸液のための一連の中空極微針(たとえば、シリコン、プラスチック、金属などからなる)、あるいはセンサ適用のための一連の中実極微針(たとえば、シリコン、プラスチック、金属などからなる)を備えることができ、これらの極微針は皮膚を貫通するために用いられる。
【0023】
図に例示するように、本発明の第1実施形態による注射器(または挿入装置)は、一般に符号10で示され、医療用針、特に、たとえば、図4および図7に記載の皮下挿入セット14に備えられる形式の挿入針12の迅速かつ容易な経皮配置のため提供される。注射器10は、速度および力が制御される条件下において、挿入針12が患者の皮膚16(図1および図9)に対して所望の角度に向けられた状態において、挿入針12を経皮配置するトリガー型アクチュエータ機構を備える。
【0024】
本発明の自動注射器10は、例示の図に示すように、特に、皮下挿入セット14、たとえば、米国特許第4,755,173号、第5,176,662号、第5,257,980号に開示されている一般型の挿入セットの挿入針12を配置するように設計される。これらの特許は、本願に引用して援用する。このような挿入セット14を用いて、医療用流体、たとえば選択された薬物が患者に輸液される。一例を挙げれば、米国特許第4,685,903号に開示されている形式のプログラマブル薬物輸液ポンプ(図示してない)の作用による糖尿病患者に対するインシュリンの投与である。あるいは、注射器10を用いて、他の形式の挿入セット、たとえば米国特許第5,390,671号、第5,560,806号、および第5,586,553号に開示されている一般型の経皮センサ挿入セットに関連する医療用針を経皮配置することができる。これらの特許は、本願に引用して援用する。このような挿入セットは、たとえば、患者の血糖値をモニタリングするために用いられる。
【0025】
医療用流体を患者に輸液するための挿入セットに関して図4に示すように、挿入針12は、その後端または基部端においてハブ18に結合され、挿入セット14のハウジング20を貫通して突出し、ハウジング20によって輸液管22を経由して薬物を収容する内部チャンバ(図示してない)が形成される。通常、弾力性またはフレキシブルな翼の形態である大きな基部24が、ハウジング20に備えられ、患者の皮膚16に安定して固定される。挿入針12は、ハウジング20と翼状基部24を貫通して下側に突出し、軟らかいフレキシブルカニューレ26を通して延在する。挿入針12は、カニューレ26の経皮配置に使用され、挿入後、挿入針12はセット14から引き抜かれ(図16)、カニューレ26を経由して患者に薬物を投与することが可能となる。
【0026】
本発明の注射器10は、患者が用いて、選択された薬物挿入部位において、適切な経皮位置および方向で、皮下挿入セット14を迅速かつ容易に配置することができる簡単な装置の典型である。注射器10は、力および速度が制御される条件下において、患者の皮膚16に向けて挿入セットを突き出し、挿入針12とカニューレ26の適切な配置を保証する様式によって、迅速に皮膚を穿孔し、同時に、患者の不安および/または不快を最小限度とする。このようにして、挿入針12の不適切な配置および/または不完全な配置が、回避される。
【0027】
一般的観点から、好適な一実施形態として図1〜5に示すように、注射器10は、円筒状前向き胴体28(または装置ハウジング)を備え、その中に、プランジャ30(またはキャリア本体)が前方の前進位置(図5)と後方の後退位置(図9)の間の中空孔内を縦方向に滑動して移動するように取り付けられる。プランジャ30は、皮下挿入セット14を以下に詳述する様式によって脱着自在に収容し保持するヘッド32を有する。プランジャ30の後端は、胴体28の後端に取り付けられるトリガー型アクチュエータ組立部品34と共同で作用する。トリガーアクチュエータ組立部品34(または駆動体)は、プランジャ30を、圧縮された駆動ばね36の力に抗して後退位置に保持することに適する。アクチュエータ組立部品34のトリガーボタン38は、指先で押し下げてプランジャ30を外し、ばね荷重によって前進位置に向けて移動させ、対応して挿入針12を患者の皮膚を貫通して経皮配置することに適する。
【0028】
図2〜5は、注射器胴体28の構造を詳細に示す図である。注射器胴体28の前端または先端は、平坦なほぼ平面状の表面を形成し、患者の皮膚に接して配置され(図1)、胴体28の縦軸は患者の皮膚16に対してほぼ垂直の方向とされる。胴体28は、挿入セット14を実質上係合してすべりばめ収容するサイズおよび形状を有し、挿入針12と関連するカニューレ26は、患者に対して配置される方向に突出している。この点に関して、胴体28の前端は、対向する対の比較的広い開口端切り取り部40を形成し、対向して突出する基部翼24をすべりばめ収容する。比較的狭いスロット42も、胴体前端において、輸液セット14に固定される輸液管22のすべりばめ収容に適する位置に形成される。このようにして、胴体28の前端または先端は、その中に皮下挿入セット14を滑動自在に収容し、切り取り部40とスロット42に沿って、胴体28の実質上最前端に位置する前進位置(図5)と後退位置(図9)の間を移動させることに適合し、基部翼24および輸液管22は実質上切り取り部40および関連するスロット42の中央寄り端部に位置する。
【0029】
プランジャ30は、一般に円筒形であり注射器胴体28内のすべりばめ収容に適するヘッド32を備える。ヘッド32の前端には、挿入セット14のハブ18およびハウジング20を収容する円筒状端ぐり凹所44が備えられ、拡大基部翼24は、胴体先端の切り取り部40内におけるすべりばめ収容に適合するように、一対の外側に突出する戻り防止フランジ46に接して収められる。一対の軌道アーム48(図5)は、プランジャヘッド32から後方に突出し、外側に折り返された指状ラッチ50を備え、ラッチ50は胴体先端から後部に間隔をおいた位置に胴体28内に形成される縦方向に延在する軌道スロット52内に収容されて案内する。このように、これらの軌道アーム48は、胴体軌道スロット52と共同して作用し、プランジャ30を前進位置(図5および図7)と後退位置(図9)の間において案内する。
【0030】
プランジャ30は、胴体内部においてプランジャヘッド32から後方に突出する中心駆動軸54(図5)も備える。駆動軸54の後端は、縦方向に分割され、一対のトリガーアーム56を形成し、トリガーアーム56の後端に外側に折り返された指状トリガー58が備えられる。
【0031】
トリガー型アクチュエータ組立部品34は、注射器胴体28の後端に取り付けられ、通常、プランジャ30を後退したセットされた位置に脱着自在に保持するように機能し、トリガーボタン38が押し下げられると、迅速にばね荷重を作動させ、挿入セット14を患者に配置するように準備されている。より詳しくは、図5〜図9に最もよく示されるように、トリガー組立部品34は、取付スリーブ62を有する主支持キャップ60を備え、取付スリーブ62は、注射器胴体28の後端または後尾端中に突出し、プレスばめおよび好ましくは接着結合様式で固定される。駆動ばね36は、プランジャ30上の駆動軸54の回りに配置されプランジャヘッド32の後面64と支持キャップ60上の肩部66の間において作用するコイルばねを構成する。駆動ばね36は、常態ではプランジャ30を前進位置に向けて偏らせる(図5および図7)。しかし、図9に示すように、プランジャヘッド32内に収容される挿入セット14を、プランジャ30に抗して後方に押し、プランジャを後退位置に移動させることができる。その結果、指状トリガー58は支持キャップ60内に形成される円錐状すなわち先細になった穴68を通過して支持キャップ60の反対側の肩部70と係合する。この点に関して、指状トリガー58は、ラッチ穴68を通過するとき、外側の面を反らせて半径方向において相互に接近し、指状部58の移動に適応する。指状トリガー58が穴68を完全に通過するとき、トリガーアーム56のばね弾力は指状トリガーを広げるのに十分であり、その結果、指状トリガー58は肩部70と係合する。このプランジャー後退位置において、駆動ばね36は、圧縮されセットされた状態で保持され、挿入セット14は、挿入針12と関連するカニューレ26を、胴体28の内部に引き込み、患者の皮膚16に対して間隔をおいて保持される。
【0032】
トリガーアクチュエータ組立部品34は、さらに、支持キャップ60内に形成される非円形孔74(図6および図7)内に取り付けられるアクチュエータピン72を備え、アクチュエータピン72はプランジャ30に対して短いストロークの間を縦方向に滑動して移動する。この点に関して、アクチュエータピン72は、非円形孔74内にすべりばめ収容される一つ以上の非円形平坦隆起部76を備え、孔内におけるアクチュエータピンの回転を防止する。アクチュエータピン72は、段付きロックリング78によって孔74内に保持され、ロックリング78は、その後端に内側に折り返されたリム82を有するプレスばめ外側保持器スリーブ80によって支持キャップ60の後端に接して保持される。重要なことには、図8に示すように、長円形平坦隆起部84が、アクチュエータピン72上に形成され、ロックリング78内に形成される長円形凹所85の中に係合されてすべりばめ収容される。復元ばね86(図7)は、支持キャップ孔74内に担持され、肩部70とアクチュエータピン72の先端の間で作用し、支持キャップ内においてアクチュエータピン72を後方に偏らせる。
【0033】
アクチュエータピン72の最後端は、トリガーボタン38を形成する。図11および図13に示すように、トリガーボタン38を指先で押し下げ、アクチュエータピン72を、プランジャ30の後端にある指状トリガー58の方向に短いストロークの間において、復元ばね86に抗して移動させることができる。図13に最もよく示されるように、アクチュエータピン72は、中空の円筒状前部先端88を有し、この中空の直径は、プランジャ30の後端において、指状トリガー58と係合し締め付けて合体し、これらの指状トリガー58が先細となった円錐状ラッチ孔68を通過して戻ることを可能とするサイズである。このようにして、指状トリガー58が、支持キャップ60の肩部70との係合から外れた瞬間に、駆動ばね36は、力および速度が制御される条件下において、挿入セット14をその上に有するプランジャ30を前進位置に向かって移動させ、その結果、図15に示すように、針12とカニューレ26が経皮配置される。重要なことには、駆動ばね36のばね速度特性およびプランジャストロークの長さは、針12とカニューレ26の経皮配置が実質上最適化され適切であるように選択され、すべては、針配置過程中、患者の不快が最小限度であるように実施される。さらに、図示のように、注射器胴体28の先端を四角に切り取った形状に形成することによって、注射器10は、皮膚16に対して実質上垂直に容易に方向付けされ、挿入セットが適切に配置される。
【0034】
トリガーボタン38によるアクチュエータピン72の押し下げは、ロックリング78の長円形凹所85とアクチュエータピンの長円形平坦隆起部84とが整合される位置に、ロックリング78が回転されて方向付けされることを必要とする。したがって、これらの長円形構造が回転して整合されると(図13〜14)、注射器10は、トリガーボタン押し下げおよびそれに対応する後退したセット位置にあるプランジャの解除に対して準備される。しかし、図9〜12に示すように、ロックリング78を、アクチュエータピン72に対して回転させ、これらの長円形構造を不整合とすることができる。この場合、アクチュエータピン72は、押し下げおよび作動に抗して後方位置にロックされる。ロックリング78上のセットピン90は、保持器スリーブフランジリム82内に形成される精密なノッチ92内に設け収容することができる。これによって、ロックリングを、部分円周変化によって大体90度、往復して回転することが可能となる。適切な標識を保持器スリーブリム82に貼付、たとえば、図12および図14に示すように、「ロック」に対して文字“L”、また「準備完了」に対して文字“A”を貼付し、トリガー組立部品34の設定の可視指標を提供することができる。
【0035】
本発明の一態様によれば、プランジャヘッド32は、さらに、プランジャヘッド32内に形成される狭いスロット96内に枢動するように担持される一対の安全ロックアーム94の形態の安全ロック機構を備える。これらの安全ロックアーム94は、枢動ピン98によってヘッド30に結合される後端を有し、前端はプランジャヘッド凹所44内に突出し輪郭に従って進む指状ロック100を形成する。図7に示すように、安全ロックアーム94およびそれらに関連した指状ロック100は、指状ロック100が、たとえば、挿入セット14のハブ18とハウジング20の間に形成される凹所101にはめ込まれることによって、係合して挿入セット14のハブ18を保持することができるサイズおよび形状を有する。重要なことには、ロックアーム枢動点の位置は、プランジャ30が前進位置(図7)から後退位置(図9)に移動される場合は常に、ロックアーム94が挿入セット14を係合して保持することを保証するように選択される。プランジャ30が完全に前進位置に達すると、それぞれが各枢動ピン98を備える安全ロックアーム94は、広い切り取り部40内に配列されるので、挿入セット14に対して、外側に自由に振れ、実質上最小限度の分離力によって、挿入セットを注射器10から分離することが可能となる。この構成は、事前に注射器10を患者の皮膚16に密着して配置することなくトリガー組立部品34が作動された場合に、挿入セット14が発射物として注射器10から放出されることを防止する安全装置として非常に有効であると認められた。使用時は、皮下挿入セット14を、プランジャヘッド32内に形成される凹所44内に入れ、注射器胴体28の開放先端中に迅速かつ容易に配置することができる。挿入セット14と注射器10とのこのような組立部品は、基部翼24および輸液管22と、胴体28の先端内に形成される適切な切り取り部40およびスロット42との簡単な整合のみしか必要としない。次に、挿入セット14およびプランジャ30は、駆動ばね36に抗して、手作業によって後方に後退位置まで後退され、その結果、図9および図11に示すように、プランジャ30はセットされラッチされる。次に、注射器10を、患者の皮膚16に密着して配置することによって、挿入セット14を、適切な方向で、皮膚16から所定の間隔をおいて支持することができる。トリガーボタン38を押し下げるだけで、セットされたプランジャ30は外され、速度および力の制御される条件下における挿入であるにもかかわらず、ばね荷重によって迅速に移動され、確実に最小限度の不快しか伴わずに挿入針とカニューレを適切に配置する様式によって、患者の皮膚を貫通する。安全ロックアーム94によって、トリガーボタン38が早まって押し下げられた場合に偶発的に挿入セット14が自由空間中に突き出すことが防止される。しかし、挿入セット14が適切に配置されている場合、安全ロックアーム94は、最小限度の力によって挿入セットから外され、注射器10は挿入セット14から容易に分離される。
【0036】
好適な実施形態によれば、挿入装置の速度および力の制御は、適切な速度および力において挿入セットを推進して挿入し、最小限度の不快しか伴わない貫通が保証されるように、ばねのばね定数を選択することによって得られる。代替方法の実施形態によれば、図48a〜48dに示すように、挿入サイクルごとに、速度および力を変更し、挿入セットの差異(たとえば、細い針、センサセット脆性など)および挿入部位条件(たとえば、体重過剰、体重不足、児童など)に適応する必要がある。図48aに示すように、力変更機構1000は、密封区画1004内に封入されるばね1002を有し、設定(または調整可能)オリフィス1006と共に用いられ、挿入装置の挿入ストローク中、内部と環境圧力を平衡させることを可能とする。密封区画1004は、密封区画1004をシールするシール用O−リング1008および1010を備える。O−リング1008は、挿入セットキャリア本体1012をシールし、O−リング1010は、力生成機構1000のアクチュエータハウジング1014(これはオリフィス1006を含む)をシールする。力変更機構1000は、たとえば、ばね1018によって偏らされるトリガー1016によって作動され、押し下げられるまでオリフィス1006を閉塞することができる。オリフィス1006を通過する限定流量は、緩衝力として作用し、ばね1002によるばね力に反対に作用し、その結果、挿入速度と力の制御が可能となる。オリフィスサイズは、多数の手法、たとえば、オリフィス1006を閉塞してベアリング1020に対するばね1022の張力に基づいて空気流に抵抗を与えるベアリング1020とばね1022によって、調節して達成することができる(図48b)。後退期間中は比較的低い抵抗を示すが密封区画1004内に含まれる空気が圧縮されると、ベアリング1020にばね1022に抵抗する力が加えられ、強制的にベアリング1020がオリフィス1006から外されて最大オリフィスサイズが与えられ、ばね1002の圧縮期間中、空気が逃がされる。この構造は、オリフィス1006はばね1002によって制限されているので、密封区画1004内に圧縮するよりもむしろ、密封区画1004内の空気がオリフィス1006を通って自由に迅速に流出することを可能とすることによって、ばね1022を圧縮するために必要とされる力を最小限度とする。別の代替方法によれば、図48cに示すように、ディスク1024は、複数の種々のサイズの孔1026(L)から1026(N)を有する。ディスク1024は、オリフィス1006の上において回転可能であり、種々のサイズの孔1026(L)から1026(N)までによってオリフィス1006を閉塞することによって、オリフィス1006の流路を、連続的に妨害、完全に妨害、または部分的に妨害し、オリフィス1006の有効サイズを変更する。また別の実施形態によれば、図48dに示すように、先細のバルブプラグ1028がオリフィス1006に関係のある位置に差し込まれ、オリフィス1006の有効サイズが変更される。オリフィス1006のサイズの他の変更方法を用いてもよい。さらに、挿入速度および力を制御する他の方法を用いることができ、たとえば、摩擦の制御、ばね張力の変更、水力学、空気力学、などを用いることができる。
【0037】
配置された挿入セット14から注射器10を取り外した後、挿入針12は、図16に示すように、迅速かつ容易にカニューレから引き抜くことができる。その後、挿入セット14を用いて、通常の方法によって、選択される薬物を輸液管22とカニューレ26を経由して患者に投与することができる。
【0038】
本発明の代替方法の好適な実施形態を、図17〜図29に示す。これらの実施形態において、図1〜図16に関して前述した構成要素に対応する構造および機能を有する構成要素は、共通の符号に100ずつ加えた数字で示す。図17〜図29の実施形態は、部品の数を減らした構造を有し、挿入セット14の先端が患者の皮膚16に接して配置されることなく注射器が作動される場合、挿入セット14が望ましくなく自由空間中に突き出すことを防止するための代替方法の安全ロック機構を備える変形注射器110を示す。しかし、代替の安全ロック機構によっても、最小限度の分離力による、挿入セット14から注射器110の迅速かつ容易な分離が可能となる。繰り返すが、薬物流体を患者に輸液する挿入セットを図示し説明するが、前述したように、この注射器110は、それ以外の挿入セット、たとえば、経皮センサ挿入セットなどに使用できることは理解される。
【0039】
一般に、変形注射器110は、プランジャ130と、ほぼ円筒状中空胴体128と共に組み立てられるトリガー型アクチュエータ134と、を備える。プランジャ130は、端ぐり凹所144を形成するほぼ円筒状のプランジャヘッド132を有し、端ぐり凹所144に輸液セット14のハブ18が収容され保持される。図27〜図29に最もよく示されるように、半径方向に内側に突出するリム202は、通常、凹所144の先頭または先端において、プランジャヘッド132上に形成され、このリム202は、非円形および好ましくは卵形または長円形(図28)を有し、ハブ18がプランジャ130および胴体128の中心縦軸に対して角度を有する方向である場合、ハブ18の凹所144内への収容に適応する。これらの構成要素の同様な角度方向によって、これらの構成要素の迅速かつ容易な分離が可能となる。しかし、挿入セット14が胴体中心軸と同軸に整合される医療用針12と同じ方向である場合、リム202の一部は挿入セット凹所101中に突出し挿入セット14が注射器110から取り外されることを防止する。
【0040】
より詳しくは、図17〜図20を参照して、胴体128は、患者の皮膚に密着配置するための平坦でほぼ平面状の表面を形成する前端または先端を有する。胴体128の先端は、その中に形成される一対の比較的広いほぼ対向する切り取り部140を有し、切り取り部140は挿入セット14の基部翼24をすべりばめ収容し、同時に、狭いスロット142は輸液管22をすべりばめ収容する。このスロット142は、胴体先端の片側に形成または両側に形成される場合がある。
【0041】
プランジャ130は、図17,18,20および21に示す前進位置と、図23に示す後退位置の間を移動するように、胴体128内に滑動してはめ込まれる。プランジャ130は、ほぼ円筒形の変形プランジャヘッド132を備え、好ましくは、その片側に浅いノッチまたは溝133を備え挿入セット14に輸液管22をすべりばめ収容するように形成される。この点に関して、プランジャヘッド溝133は、胴体の先端の狭いスロット142と整合される位置に形成される。
【0042】
プランジャヘッド132は、胴体内側内で後方に突出する駆動軸154と一体化して形成される。図22に最もよく示されるように、駆動軸154は、一対の後方に突出する軌道アーム148の側面に立ち、それと一体化して形成され、軌道アーム148はその後端に形成される指状ラッチ150を有する。図21および図23に示すように、これらの指状ラッチ150は、胴体128内に形成され縦方向に延在する軌道スロット152内に滑動自在に収容され、前進位置と後退位置の間においてプランジャ130を案内するように機能する。緩衝材(図示してない)を、軌道スロット152の先端に備え、以下に述べるように、プランジャ130の運動を進めるばね駆動体に対する複合停止部を形成することができる。
【0043】
プランジャ130は、さらに、駆動軸154の後端から通常後方に突出し、その後端に外側に折り返された指状トリガー158を有する一対のトリガーアーム156を備える(図22)。プランジャ130が前進位置(図21)から後退位置(図23)まで変位される場合、指状トリガー158がシリンダ基体内で移動するとき、これらの指状トリガー158は、互いに相手に接近する部分的な半径方向の圧迫に適合するサイズである。後退位置に達すると、指状トリガー158は、トリガーアーム156の弾力によってばね荷重され、外側に動き、胴体128内に形成される比較的短いトリガースロット159内に部分的に収容される。この位置において、図23に示すように、指状トリガー158は、プランジャ130を後退位置に保持する。
【0044】
駆動ばね136は、胴体128内に取り付けられ、図1〜図16に関して前述した同じ様式で、トリガー型アクチュエータ134とプランジャ130の間で作用する。この点に関して、トリガー型アクチュエータ134は、胴体128の後端または上端において、胴体128内に滑動自在に取り付けられるほぼ円筒状のアクチュエータスリーブ188を備える。このアクチュエータスリーブ188は、先細または傾斜先端面188′(図22、23および25)を有し、傾斜先端面188′は、指状トリガー158の係合に適する形状の傾斜外側面と係合し、トリガーアーム156を半径方向に圧迫し、プランジャ130を外してばね荷重によって後退位置から前進位置まで移動させる。トリガーボタン138は、アクチュエータスリーブ188と一体化して形成され、胴体128の後部または頂部において指先で押し下げられ、アクチュエータスリーブ188を移動させ、その結果、指状トリガー158との係合が外される。
【0045】
図22および図24〜図26に最もよく示されるように、トリガーボタン138は、胴体128の後部に形成される開口部を貫通し、通常、胴体128と一体化して形成されるロックスリーブ178内に延在する。ロックスリーブ178は、対向して形成される一対の案内スロット192を形成し、案内スロット192内に、トリガーボタン138上に形成され中心から外側に延びる一対のロックタブ184が整合して収容される。タブ184が回転して案内スロット192と整合されると、前述したように、トリガーボタン138を押し下げて、ばね荷重プランジャを作動させることができる。しかし、ロックタブ184は十分な長さを有し、アクチュエータ134の指先による回転によって、案内スロット192に隣接して形成される浅いロック溝193内にタブ184の位置を変えることが可能となる。タブ184がロック溝193内に収容される場合、ロックスリーブ178によってトリガーボタン138の押し下げが阻止され、その結果、注射器110は作動しないように固定される。注射器を作動可能とする前に、アクチュエータ134を回転して戻し、タブ184を案内スロット192と再整合することが必要とされる。
【0046】
本発明の一態様によれば、プランジャヘッド132は、プランジャヘッドの凹所144の先端に非円形リム202の形態として安全ロック機構を備える。図27および図28に示すように、リム202は、ほぼ長円形であり、その長軸は挿入セット14のハブ18の直径より大きく、短軸はハブ直径より小さい。この幾何形状によって、またプランジャヘッド凹所144が十分な軸方向深さを有することによって、ハブ18は、構成要素を角度付けた方向とすることによってプランジャヘッド中にはめ込むことができ、ハブ18をリム202の主軸部を通してすべりばめすることが可能となる。その後、構成要素は再方向付けして、通常、プランジャヘッド132と同軸である医療用針12と整合され、リム202の短軸部分が挿入セット凹所101中に突出することが可能となり、その結果、構成要素が一体化して固定される。その後、挿入セット14が患者に配置されるとき(図29)、構成要素は、同じ角度で注射器110を挿入セット14から持ち上げ、ハブ18がリム202の主軸中心を通って自由に押し進むことを可能とすることによって容易に分離される。重要なことには、構成要素のこのような係合と脱係合は、本質上、分離に対する抵抗力なしに行われる。輸液セット14は、プランジャが前進位置にあるときのみ、プランジャ130に対して角度を付けて方向付けすることが可能であり、プランジャ130が限定された位置から後方に移動すると、隣接する胴体128によって、このような角度のある方向は防止される。
【0047】
別の様式の操作においては、注射器110が作動して挿入セット14を患者の皮膚に配置後、注射器110は、患者の皮膚16から簡単に引き抜きまたは後退させることができる。この場合、プランジャヘッド132の先端のリム202は、針のハブ18と係合し、その結果、医療用針12は挿入セット14から穏やかに引き抜かれる。この様式によれば、針12は、所望の経皮挿入部位に残留するカニューレ26から引き抜かれる。
【0048】
本発明のさらに別の好適な形態を、図30〜図34に示す。これらの実施形態において、さらに変形された注射器210は、ほぼ図17〜図29について図示し前述したように、構成され作動されるが、プランジャヘッド232に対しては別の構造が与えられる。図30〜図32は、胴体128の前端または先端内の前進位置にあるプランジャヘッド232を有する注射器210を示し、胴体128は、基部翼24をすべりばめ収容する広い切り取り部140と輸液管22をすべりばめ収容する狭いスロット142を備える。図示のように、変形プランジャヘッド232は、ヘッド内に形成される横方向に開口する凹所244を有し、凹所244は、下をくり抜いた幾何形状であり、プランジャが前進位置にあるとき、切り取り部140を通して横方向に露出される。挿入セット14は、ハブ18を凹所244の広い上部領域にはめ込むことによって、プランジャヘッド232とすべりばめ組立することが可能であり、その結果、プランジャヘッドの先端の内側に折り返されたリム302は挿入セット凹所101にはめ込まれる。横方向に開口する、リム302のギャップ303(図34)によって、ハブ18を凹所244にすべりばめ収容することが可能となり、短いキャリアポスト304(図32)を凹所244の基部に構成し、ハブの頂部の浅い移動止め内に収めることができる。
【0049】
図32に示すように、挿入セット14をプランジャヘッド232と一体として組み立てることによって、プランジャは、図17〜図29について図示し前述したように、後退位置としセットすることができる。切り取り部140とスロット142は、このような後退中に挿入セット14をプランジャ232と共に滑動移動させることに適応する。その後、注射器210の前端または先端は、患者の皮膚16に密着して配置し(図33)、トリガーボタン138を押し下げてプランジャを外すことが可能であり、その結果、医療用針12は力および速度が制御される条件下において経皮配置される。プランジャの前方への駆動移動中、プランジャヘッド232の前部リム302によって、挿入セットの突出体解除が阻止される。挿入セットを患者に配置後、注射器210は、挿入セットに対して横方向に変位させ迅速かつ容易に挿入セットから分離することができる。あるいは、図34に示すように、注射器210は、挿入セット14から引き抜きまたは後退させ、挿入セットを患者のあるべき位置に残した状態において、医療針12を滑動させて引き抜くことができる。
【0050】
図35〜図40gは、本発明の第2実施形態による挿入装置500を示す図である。挿入装置500は、表面座501および組立部品ポート503を有する胴体502(またはハウジング)と、組立部品リム505および取付フランジ506を有するキャリア本体504(またはプランジャなど)と、駆動ばね507(または駆動体)と、解除ボタン508と、二元的ばねトリガー510および512と、を備える。図35に示すように、胴体502は、ハウジングとしての機能を果たし、キャリア本体504を保持する。キャリア本体504は、キャリア本体が胴体502の表面座501の開口部を通して挿入され、次いで、キャリア本体504の組立部品リム505が胴体502の組立部品ポート503を通過することによって、胴体502と結合される。キャリア本体504の組立部品リム505を有する部分は、組立部品ポート503を通過するとき、圧迫スロット509が存在するため、僅かに圧迫され、次に、そのもとの形状に本質上復元され、キャリア本体の組立部品リム505は胴体502の組立部品ポート503と係合するので、キャリア本体504が滑動して胴体502から外れることが防止される。
【0051】
キャリア本体504は、駆動ばね507によって、前進位置から後退位置まで駆動され、トリガーボタン510および512によって後退位置に保持される(または外され前進位置に移動する)。この実施形態の挿入装置500は、主として、挿入セット400または同等物(輸液セットとして図39に例示するような)の挿入に適し、挿入セットは、挿入後、穿孔部材402(または針)と共に皮膚表面に対して90度(または垂直)となるように挿入される。好適な実施形態によれば、キャリア本体504は、胴体502に恒久的に結合され、新たな挿入の都度、新しい挿入セット400がキャリア本体504に取り付けられる。しかし、別の実施形態によれば、たとえば、キャリア本体504を事前に装着される挿入セット400と共に出荷し、次に、挿入装置500の胴体502中に詰め込む場合のように、キャリア本体504は、使い捨て、すなわち各挿入の都度、交換することができる。
【0052】
挿入装置500は、背の低い小型の外観を特徴とし、この特徴によって、挿入セット400の挿入中、手の動きの影響が最小限度になる傾向がある。この実施形態によれば、前述した図31〜図34に示すように、横方向のスロットを用いて挿入セット14と係合または脱係合するのではなく、解除ボタン508を押し下げ、挿入セット400または同等物を挿入装置500のキャリア本体504から外す。解除ボタン508は、挿入セット400または同等物の挿入前または後に用いることができる。挿入セット400または同等物の挿入を容易にするため、挿入装置500には、安全性の特別の余裕を与え、皮膚表面と接触するとき、挿入装置500が偶発的に作動することを実質上防止する二元的トリガーボタン510および512が用いられる。これによって、図1〜図34に示した初期の挿入装置の作動ボタン(またはトリガー)のロックおよび非ロック位置が必要なくなる。挿入装置500は、取付フランジ506を形成し挿入セット400または同等物のリム404(または翼)を保持し、挿入セット400を皮膚の表面に接着する接着剤406を担持する他のリムもキャリア本体504に備える。挿入装置500を作動させキャリア本体を進行位置に移動するとき、取付フランジ506は、挿入セット400の接着剤406とリム404とを圧迫し、皮膚に密着させ、挿入セット400を皮膚に明確に取り付け固定することができる。これによって、挿入セット400の挿入前または後に、接着パッチを追加して配置し、挿入セット400を挿入部位にしっかりと固定する必要がなくなる。挿入装置500は、さらに、穿孔部材(または針)ハブ408と穿孔部材402(または針)を、挿入セット400または同等物の挿入完了後、挿入セット400または同等物から自動的に外す装置も備える。これによって、挿入装置500を皮膚表面から取り外すことのみによって、穿孔部材ハブ408と穿孔部材402(または針)を残留することなく、挿入セット400を皮膚表面に残留させることが可能となる。この自動取り外し特性によって、患者が挿入セット400または同等物の穿孔部材402(または針)と接触する可能性も最小限度となる。
【0053】
好適な実施形態によれば、挿入セット400または同等物は、キャリア本体504の空洞514(または収容構造)内に適応し、ぴったりとはめ込まれる。キャリア本体504の空洞514には、挿入セットを特定の方向に方向付けする案内516と、キャリア本体504の空洞514の内部の中心部の底部にあり挿入セット400または同等物の穿孔部材ハブ408(または針のハブ)と係合する拡大部材518とを備える。挿入セット400または同等物の穿孔部材ハブ408(または針)は、拡大部材518と軽度の締まりばめによって係合する中心部410を備える。締まりばめによって、穿孔部材ハブ408の中心部410は僅かに拡大され、穿孔部材ハブ408をキャリア本体504の空洞514の側に拡大、圧迫し、挿入セット400または同等物を、キャリア本体504の空洞514内にしっかりと固定する。キャリア本体504内における挿入セット400または同等物の締まりばめによって、皮膚上において挿入装置500を作動し挿入セット400または同等物の挿入をよりよくする場合、挿入セットまたは同等物が無理に移動されることが実質上防止される。しかし、締まりばめによって、挿入装置400が皮膚表面に圧着されていない場合、挿入装置500が不注意に作動されるとき、挿入セット400または同等物が射出されることも防止される。好適な実施形態によれば、挿入装置500は、案内516と拡大部材518を有し、既存の挿入セット400または同等物と共に作用するように構成される。しかし、別の実施形態によれば、挿入セット400または同等物は、穿孔部材基部と、スロット(図示してない)を備えるハウジングまたは同等物とを有し、挿入装置500の案内と拡大部材とを収容し、挿入装置500と挿入セット400または同等物との結合を改善するように変形することができる。さらに別の実施形態によれば、案内と拡大部材は、挿入セット400または同等物に形成することが可能であり、対応する案内と拡大部は挿入装置500に形成することができる。
【0054】
図示の実施形態においては、二元的トリガー作動構造が用いられ、挿入装置500が無意識に作動される事例の可能性が最小限度とされる。図示のように、挿入装置500の胴体502は、2本の外側に延在する案内チャネル520および521を胴体502の側面に備える。案内チャネル520および521は、胴体502の基部524から胴体502の側面の入口開口部526および528まで延在する。二元的トリガーボタン510および512は、キャリア本体504の端部において取付フランジ506の対向する両側に担持される。各トリガーボタン510および512は、トリガーボタン510および512の端部と取付フランジ506の側面の間においてトリガーばね530および532によって、取付フランジ506の側面から外側に偏らせられる。挿入装置500のキャリア本体504が発射位置(または後退位置)にロックされている場合、トリガーボタン510および512は、トリガーばね530および532によって押し出され入口開口部526および528から外に延在する。この位置において、トリガーボタン510および512は、案内チャネル520および521を越えて延在し、その結果、トリガーボタン510および512が案内チャネル520および521を下に移動することが防止される。挿入装置500を作動するため、利用者は、両方のトリガーボタン510および512を押し下げる必要があり、その結果、トリガーボタン510および512は、次に、案内チャネル520および522の底部に沿って滑動することが可能となり、次に、挿入装置400または同等物が挿入されるまで、キャリア本体504が、胴体502に沿って下方に移動することが可能になる。好適な実施形態によれば、入口開口部526および528ならびに入口開口部526および528において終わる案内チャネル520および521の端部は、トリガーボタン510および512の形状に一致するように丸くされる。このことによって、トリガーボタン510および512の押し下げ中にトリガーボタン510および512に作用する抵抗圧力が最小限度となる傾向がある。しかし、別の実施形態によれば、他の入口開口部および案内チャネル端部形状、たとえば、三角形、四角形、多角形、などを用いることができる。
【0055】
組立部品リム505を有するキャリア本体504の端部は、キャリア本体504に対して押し下げられまたは僅かに延在する解除ボタン508と結合される。解除ボタン508は、キャリアスロット554およびキャリアロック556(図36および図38参照)と係合して解除ボタン508をキャリア本体504にロックする係合タブ550およびロック歯552(図35および図36参照)を備える。ロック歯552は、キャリアロック556と係合し(図36および図38参照)、キャリアロック556に沿ったロック歯552の移動の量によって、解除ボタン508が押し下げられ挿入セットをキャリア本体504から外すことができるようになる。また、解除ボタン508は、挿入セット400がキャリア本体504の内部空洞514内に配置され挿入セット400の取付が可能となる場合、キャリア本体504から外側に僅かに延在する。解除ボタン508とキャリア本体の係合によって、圧迫スロット509および組立部品リム505が圧迫されキャリア本体504の挿入装置500の胴体502からの解除が阻害されることが防止される。
【0056】
解除ボタン508が押し下げられると、挿入セット400または同等物が挿入装置500のキャリア本体504から外れる。解除ボタン508によって、挿入セット400または同等物は、挿入セット400または同等物が空洞514内の案内516および拡大部材518から外れるために十分な程度に、キャリア本体504の空洞514から押し出され、挿入セット400または同等物が皮膚上に配置される。あるいは、挿入セット400または同等物が挿入装置500によって挿入される前に、解除ボタン508を作動させ、挿入セット400または同等物を、キャリア本体504から外すことができる。解除ボタン508は、傾斜部分534(または他のトリガー機構)も備え、傾斜部分534は、挿入セット400または同等物の穿孔部材ハブ408(または針のハブ)を曲げまたは調整することに適合し、挿入セット400または同等物が挿入され挿入装置500が皮膚上に配置されたとき、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402(または針)が挿入セット400または同等物から外され分離されることを可能とする。これは、挿入セット400または同等物の要素を分離することによって達成され、その結果、挿入セットまたは同等物、ハウジング、および管系(または配線など)のみが皮膚に接触した状態で残される。穿孔部材ハブ408および穿孔部材402を取り外しできることは、挿入セット400または同等物の接着剤406によって容易にされることが好ましく、接着剤は、皮膚に接着し、挿入セット400または同等物を無理に移動させることなく、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402が挿入セット400または同等物の残部から分離することを可能とするのに十分な張力を与える。好適な実施形態によれば、挿入装置500は、挿入セット400または同等物上において既存の穿孔部材ハブ408と共に作用することに適する。しかし、別の実施形態によれば、穿孔部材ハブ408と、穿孔部材ハブ408と挿入セットハウジングまたは同等物の間の結合とは、挿入装置500の解除機構と共に作用するように変形される。
【0057】
好適な実施形態によれば、解除ボタン508は、プラスチックばねまたは金属ばねによってあるべき位置において偏らせられる。しかし、別の実施形態によれば、解除ボタン508は、係合および脱係合戻り止めによって、または他の弾性材料を用いて解除ボタン508を胴体502およびキャリア本体504に対して正しい位置において偏らせることによって、手作業でリセットすることができる。好適な実施形態によれば、解除ボタン508を引き上げて(または解除ボタン508を胴体502の組立部品ポート503から離れて延長して)、キャリア本体504を胴体502内の後退位置まで引き上げ、ここで、キャリア本体504は、入口開口部526および528と係合するトリガー510および512によって、正しい位置にロックされる。この手順によって、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402が、挿入セット400または同等物のハウジングから分離される。この手順は、穿孔部材402および穿孔部材ハブ408を取り外し、利用者が穿孔部材402によって刺される機会を最小限度とする長所を有する。
【0058】
図40a〜図40gは、本発明の実施形態による、挿入装置500を用いる挿入セット400の挿入方法を示す図である。利用者は、最初に、皮膚の挿入部位を清潔にし、滅菌する。次に、利用者は、挿入装置500が、前進位置にあるキャリア本体504を有することを確認し、皮膚に配置する前に、挿入装置500が無意識に作動されることを回避する。図40aに示すように、利用者は、管系(または配線など)をキャリア本体504のスロット536および挿入装置500の胴体502のスロット538と整合して、挿入セット400をキャリア本体の空洞514内に入れる。利用者は、穿孔部材保護部414(または針保護部)を押して、穿孔部材ハブ408(または針のハブ)および挿入セット400を、キャリア本体504の空洞514内に取り付ける。図40bに示すように、利用者は、挿入セット400のリム404上の接着剤406を被覆する接着剤裏打ち416を取り外す。穿孔部材保護部414は、この時点においては取り外さず、穿孔部材402によって無意識に刺されることを回避し、接着剤406との接触を最小限度とし、または回避することが好ましい。図40cに示すように、利用者は、穿孔部材保護部414を押して、キャリア本体504を前進位置から後退位置に移動させ、この点において、トリガーボタン510および512は入口開口部526および528から延びて案内チャネル520および521を越えて延在し、キャリア本体504は後退位置にロックされる。次に、図40dに示すように、利用者は、穿孔部材保護部414を取り除き(通常、ねじりによる)、挿入セット400をキャリア本体504内に保持しながら、穿孔部材402を露出させる。次に、図40eに示すように、利用者は、挿入セット400を有する挿入装置500の胴体502の表面座501を、皮膚の挿入部位に置く。利用者は、2つのトリガーボタン510および512を、入口開口部526および528を通して十分に押し下げ、トリガーボタン510および512は、案内チャネル520および521に沿って滑動して下がり、挿入セット400を皮膚の挿入部位に挿入して装着する。図40fに示すように、利用者は、解除ボタン508を押し下げ、挿入セットをキャリア本体504の空洞514から外す。最後に、図40gに示すように、利用者は、挿入セット400の装着を維持した状態において、挿入装置500を取り外す。別の実施形態によれば、利用者は、解除ボタン508を引き延ばして、穿孔部材ハブ408および穿孔部材402を引き上げ、挿入セット400の残部を皮膚の挿入部位に保持する。穿孔部材ハブ408および穿孔部材402が装置から引き上げられる場合は、利用者は、挿入装置500からセットの残部を取り外す前に、穿孔部材保護部414を再装着すべきである。
【0059】
図41〜図46は、図1〜図34に示した挿入装置と類似である、第3実施形態による挿入装置600を示す図である。挿入装置600は、装置ハウジング端部601と、角度を付けられた挿入接触面603および604を有するキャリア本体602と、を備える。角度を付けられた挿入接触面603および604によって、利用者が、挿入装置600を適切な角度として、挿入セット700または同等物を、皮膚に対して適切な角度において挿入することが可能となる。挿入セット700は、Van Antwerpらによる米国特許出願第08/871,831号(PCT出願第US98/10832号)、発明の名称“Disposable Sensor Insertion Assembly”に開示されている挿入セット、またはFunderburkらによる米国特許出願第09/034,626号、発明の名称“Medication Infusion Set” に開示されている角度を付けて挿入することができる挿入セットに、類似であり、これらの両特許はそれぞれ、本願に引用して援用する。挿入装置600の好適な実施形態は、挿入セットまたは同等物の角度の付いた挿入を可能とする角度の付けられた接触面603および604を有し、その角度は、皮膚表面に対して89.9度から25度の範囲である。また別の実施形態によれば、角度の付けられた接触面603および604は、皮膚に対して約10度までの浅い角度においても取り扱うことができる。
【0060】
重要なことは、角度のついた挿入接触面603および604は、挿入セット700または同等物の挿入角度を反映することであり、その結果、挿入セット700または同等物の穿孔部材702(または針)は、挿入装置600のキャリア本体602の移動方向と軸方向が整合される。このことによって、主として90度の挿入セットまたは同等物と共に使用するために設計された挿入装置を、角度の付けられた挿入接触面603および604の角度の変更によって、角度の付けられた挿入セット700または同等物と共に作用するように変形することが可能となる。さらに、挿入セット700または同等物の穿孔部材702は、キャリア本体602の中心軸から僅かに中心を外れており、挿入セット700または同等物が挿入された場合、挿入装置600を容易に取り外しできることが好ましい。本発明の好適な実施形態には、キャリア本体602の側面に凹所606および孔608を備える収容構造を有するキャリア本体602が備えられる。凹所606は、軽度の締まりばめによる穿孔部材ハブ704の保持に適し、孔608は、挿入セット700または同等物の挿入管または伝送器ハブ706の保持に適する。挿入セット、たとえば、管系を有する輸液セット(または既にセンサに接続されている配線を有するセンサセット)に関する他の実施形態によれば、孔608は、片側に開口され(図示してない)、輸液管(または配線)の挿入および取り外しを可能とするが、挿入管系(または配線)、または管系または配線を挿入セット700または同等物のハウジングに接続する伝送器ハブ706を確実に保持して把持するために十分な程度に閉められる。
【0061】
図47は、挿入セットまたは同等物の挿入後、皮膚表面に対してほぼ10度以下の角度であるように、挿入セットを挿入することに適する挿入装置800を示す図である。この実施形態は、皮膚をつまむ一対のつまみ802および804を備える。つまみ802および804は、挿入セットまたは同等物を保持するキャリア本体806の前の皮膚をつまみ上げる(またはこぶ状にする)。皮膚がつままれると(またはこぶ状にされると)、利用者が、作動ボタンを押し下げると、挿入セットまたは同等物が皮膚内に挿入される。別の実施形態によれば、利用者は、つまみ802および804を押して互いに接近させ、挿入装置800を作動させる。挿入後、利用者は、つまみ802および804を緩めて挿入装置800を挿入セットまたは同等物から取り外す。この実施形態の効果は、皮膚を隆起させ、その結果、皮膚の隆起された(つままれた)領域の面に対する穿孔部材の実際の挿入角度は10度から90度の範囲であるので、穿孔部材は、前述した実施形態と同様な様式によって挿入されることである。しかし、つままれた皮膚が緩められると、穿孔部材は0度から10度の範囲の浅い角度で皮膚上に残される。つまむ量およびつまみの高さは注意深く制御して、確実に、挿入セットまたは同等物を皮膚組織に適切な深さおよび位置で挿入しなければならない。前述した角度で挿入できる挿入セットの一例は、Funderburkらによる米国特許出願第09/034,626号、発明の名称“Medication Infusion Set”に開示されており、本特許は、本願に引用して援用する。
【0062】
以上、本発明を特定の実施形態について述べたが、本発明の思想を逸脱することなく多数の変形を実施できることを理解されたい。請求の範囲は、このような変形は、本発明の真の範囲および思想内にあるものとして包括するものである。
【0063】
したがって、ここに開示した実施形態は、あらゆる点において説明のためと考えるべきであり、これに限定されるものではなく、本発明の範囲は、前述した記述ではなく、請求の範囲によって示され、それ故、請求の範囲の均等の意味および範囲内において生じるすべての変化は、請求の範囲に含まれるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の新規な特徴を具体化する自動注射器の使用を示す斜視図である。
【図2】図1に示す注射器の拡大正面図である。
【図3】図2の線3−3にほぼ沿った、注射器の前端または先端を示す図である。
【図4】皮下挿入セットを有する注射器の組立部品を示す拡大分解斜視図である。
【図5】図4の線5−5にほぼ沿った拡大縦断面図である。
【図6】図5の線6−6にほぼ沿った横断面図である。
【図7】図2の線7−7にほぼ沿った拡大縦断面図である。
【図8】注射器において使用されるトリガー組立部品を示す拡大分解部分斜視図である。
【図9】図5に類似の縦断面図であり、患者の皮膚を貫通して経皮配置される挿入セットをその中に収容する注射器を示す図である。
【図10】図9の線10−10にほぼ沿った横断面図である。
【図11】図9の線11−11にほぼ沿った縦断面図である。
【図12】図11の線12−12にほぼ沿った後端正面図であり、ロックされた位置にあるトリガーを示す図である。
【図13】図11の一部に類似の拡大部分縦断面図であるが、ばね荷重プランジャを外すためのトリガー組立部品の作動を示す図である。
【図14】図13の線14−14にほぼ沿った、図12と同様な後端正面図であるが、ロックされていない位置にあるトリガー組立部品を示す図である。
【図15】患者の皮膚上に配置される輸液セットを有する、完全に前進位置にあるばね荷重プランジャを示す部分縦断面図である。
【図16】皮下挿入セットのカニューレからの挿入針の取り外しを示す分解側面図である。
【図17】本発明の代替方法の好適な形態を示す斜視図である。
【図18】図17に示す注射器の正面図である。
【図19】図18の線19−19にほぼ沿った、注射器の前端または先端を示す図である。
【図20】図18の線20−20にほぼ沿った、注射器の拡大側面図である。
【図21】図17の線21−21にほぼ沿った、より詳しい拡大縦断面図である。
【図22】図17の注射器に使用されるプランジャおよびトリガー部材の詳細構造を示す拡大分解斜視図である。
【図23】図21に類似の拡大縦断面図であり、セットされた位置にあるトリガー部材を有する注射器を示す図である。
【図24】セットされた位置にあるトリガー部材を有する、図23に示す注射器の上端を示す部分斜視図である。
【図25】トリガー部材の作動を示す拡大部分縦断面図である。
【図26】患者の皮膚上に配置される輸液セットを有する、完全に前進位置にあるプランジャを示す拡大部分縦断面図である。
【図27】図22の線27−27にほぼ沿った拡大部分縦断面図であり、プランジャの一部を示す図である。
【図28】図27の線28−28にほぼ沿った、プランジャの前端または先端の正面図である。
【図29】患者の皮膚上に配置された輸液セットからの注射器の取り外しを示す拡大部分縦断面図である。
【図30】図17にほぼ類似の分解斜視図であるが、本発明のさらに別の好適な形態を示し、例示の注射器をと共に、挿入セットの組立部品を示す図である。
【図31】図30に類似の斜視図であり、注射器と共に、さらにまた別の挿入セットを示す図である。
【図32】図31の線32−32にほぼ沿った、拡大部分縦断面図である。
【図33】挿入セットの経皮配置の場合、図30〜32の注射器の使用を示す斜視図である。
【図34】図33に類似の分解斜視図であり、装着された挿入セットから医療用針を取り外す注射器の使用を示す図である。
【図35】本発明の第2実施形態による一形式の挿入セットを有する挿入装置を示す斜視図である。
【図36】図35の挿入装置の底面の斜視図である。
【図37】図35に示す挿入装置および挿入セットの側面図である。
【図38】図37の線38−38に沿って示した挿入装置および一形式の挿入セットの分解断面図である。
【図39】図35に示す挿入装置と共に使用される一形式の挿入セットの頂部斜視図である。
【図40a】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40b】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40c】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40d】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40e】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40f】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図40g】図35の挿入セットを有する、図39の一形式の挿入セットを装着する段階を示す図である。
【図41】本発明の第3実施形態による一形式の挿入セットを有する挿入装置の斜視図である。
【図42】図41に示す挿入装置の分解斜視図である。
【図43】図41に示す挿入装置および一形式の挿入セットの分解側面図である。
【図44】図41に示す挿入装置のキャリア本体中に保持される一形式の挿入セットの拡大側面図である。
【図45】図41に示す挿入装置および一形式の挿入セットの正面斜視図である。
【図46】図45の線46−46に沿って示す、挿入装置および一形式の挿入セットの断面図である。
【図47】本発明の第4実施形態による挿入装置の略平面図である。
【図48a】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【図48b】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【図48c】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【図48d】本発明の実施形態と共に使用される力変更機構の断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進位置と後退位置の間を移動する滑動自在なキャリア本体を有する挿入装置によって、患者の皮膚を貫通して挿入される挿入セットであって、前記挿入装置の前記キャリア本体は、前記キャリア本体が前記後退位置から前記前進位置まで移動すると、患者の皮膚を貫通して挿入される正しい位置に前記挿入セットを支持する収容構造を備え、前記挿入装置は、前記キャリア本体と適切に作用するように結合され前記キャリア本体を力および速度が制御される条件下において前記後退位置から前記前進位置まで強制的に移動させ前記挿入セットを前記患者の皮膚を貫通して挿入する駆動体を備え、前記挿入セットは、
少なくともその一部は前記患者の皮膚を貫通して挿入することができる少なくとも1つの穿孔部材と、
前記少なくとも1つの穿孔部材に結合されるセットハウジングであって、前記挿入装置の前記キャリア本体内にはめ込まれる形状であり、前記少なくとも1つの穿孔部材の少なくとも一部を患者の皮膚に対して所定の角度において前記患者の皮膚を貫通して配置し、前記挿入セットを前記患者に装着するように前記少なくとも1つの穿孔部材を方向付けするセットハウジングと、を備え、
前記挿入セットの前記セットハウジングは、前記患者に対する挿入セットの装着を持続した状態において、前記キャリア本体の収容構造から取り外すことができることを特徴とする挿入セット。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記皮膚に対する前記所定の角度は約90度であることを特徴とする挿入セット。
【請求項3】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記皮膚に対する前記所定の角度は90度から10度の範囲であることを特徴とする挿入セット。
【請求項4】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記皮膚に対する前記所定の角度は、挿入後、0度から10度の範囲であることを特徴とする挿入セット。
【請求項5】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは経皮挿入セットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項6】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは皮下挿入セットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項7】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは、挿入後、主として前記皮膚の表面上に静止することを特徴とする挿入セット。
【請求項8】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは前記患者の皮膚内に完全に埋め込まれることを特徴とする挿入セット。
【請求項9】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記少なくとも1つの穿孔部材は針であることを特徴とする挿入セット。
【請求項10】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記少なくとも1つの穿孔部材は複数の針であることを特徴とする挿入セット。
【請求項11】
請求項10に記載の挿入セットにおいて、前記複数の針は極微針であることを特徴とする挿入セット。
【請求項12】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは輸液セットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項13】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットはセンサセットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項14】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは、一体化装置として結合された輸液セットおよびセンサセットの両者であることを特徴とする挿入セット。
【請求項1】
前進位置と後退位置の間を移動する滑動自在なキャリア本体を有する挿入装置によって、患者の皮膚を貫通して挿入される挿入セットであって、前記挿入装置の前記キャリア本体は、前記キャリア本体が前記後退位置から前記前進位置まで移動すると、患者の皮膚を貫通して挿入される正しい位置に前記挿入セットを支持する収容構造を備え、前記挿入装置は、前記キャリア本体と適切に作用するように結合され前記キャリア本体を力および速度が制御される条件下において前記後退位置から前記前進位置まで強制的に移動させ前記挿入セットを前記患者の皮膚を貫通して挿入する駆動体を備え、前記挿入セットは、
少なくともその一部は前記患者の皮膚を貫通して挿入することができる少なくとも1つの穿孔部材と、
前記少なくとも1つの穿孔部材に結合されるセットハウジングであって、前記挿入装置の前記キャリア本体内にはめ込まれる形状であり、前記少なくとも1つの穿孔部材の少なくとも一部を患者の皮膚に対して所定の角度において前記患者の皮膚を貫通して配置し、前記挿入セットを前記患者に装着するように前記少なくとも1つの穿孔部材を方向付けするセットハウジングと、を備え、
前記挿入セットの前記セットハウジングは、前記患者に対する挿入セットの装着を持続した状態において、前記キャリア本体の収容構造から取り外すことができることを特徴とする挿入セット。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記皮膚に対する前記所定の角度は約90度であることを特徴とする挿入セット。
【請求項3】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記皮膚に対する前記所定の角度は90度から10度の範囲であることを特徴とする挿入セット。
【請求項4】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記皮膚に対する前記所定の角度は、挿入後、0度から10度の範囲であることを特徴とする挿入セット。
【請求項5】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは経皮挿入セットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項6】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは皮下挿入セットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項7】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは、挿入後、主として前記皮膚の表面上に静止することを特徴とする挿入セット。
【請求項8】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは前記患者の皮膚内に完全に埋め込まれることを特徴とする挿入セット。
【請求項9】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記少なくとも1つの穿孔部材は針であることを特徴とする挿入セット。
【請求項10】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記少なくとも1つの穿孔部材は複数の針であることを特徴とする挿入セット。
【請求項11】
請求項10に記載の挿入セットにおいて、前記複数の針は極微針であることを特徴とする挿入セット。
【請求項12】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは輸液セットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項13】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットはセンサセットであることを特徴とする挿入セット。
【請求項14】
請求項1に記載の挿入セットにおいて、前記挿入セットは、一体化装置として結合された輸液セットおよびセンサセットの両者であることを特徴とする挿入セット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40a】
【図40b】
【図40c】
【図40d】
【図40e】
【図40f】
【図40g】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48a】
【図48b】
【図48c】
【図48d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40a】
【図40b】
【図40c】
【図40d】
【図40e】
【図40f】
【図40g】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48a】
【図48b】
【図48c】
【図48d】
【公開番号】特開2008−237921(P2008−237921A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125840(P2008−125840)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【分割の表示】特願2000−556587(P2000−556587)の分割
【原出願日】平成10年12月18日(1998.12.18)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【分割の表示】特願2000−556587(P2000−556587)の分割
【原出願日】平成10年12月18日(1998.12.18)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】
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