説明

排出装置及び画像形成装置

【課題】 反転搬送されるシートによって先に排出トレイに排出済みの既積載シートが吸い寄せられて装置の内部に引き込まれてしまう。
【解決手段】 シートが排出トレイへ排出されている間、装置内に引き込み防止部材は退避している。シートが反転搬送されている間は、排出ローラの下流側に引き込み防止部材が突出して、排出トレイに先に排出済みのシートの移動を規制する。引き込み防止部材は駆動部によって移動させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを排出する排出装置およびこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの表面への画像形成が完了した後、引き続き自動でシートの裏面に画像を形成する画像形成装置が提供されている。ここで、装置の小型化するためにシートを排出トレイ上に排出する排出ローラを使用して、シートを反転搬送させている。具体的には、表面への画像形成が完了したシートの搬送方向先端側の一部が、排出ローラで装置外に排出され、その後、排出ローラが逆回転することで、シートが反転搬送される。反転搬送されたシートは、裏面への画像形成のために再度、画像形成部へ搬送される。
【0003】
このような排出ローラで反転搬送を行う、画像形成装置に供されるシート排出構成において、シートが反転搬送される際、反転搬送されるシートが、排出トレイに排出済みの既積載シートと接する。そして、反転搬送されるシートが既積載シートを画像形成装置内へ引き込む恐れがある。これはシートが摩擦帯電していて、静電吸着力によりシート同士が吸い寄せられるために発生する。
【0004】
このような引き込み問題を防止するために、反転搬送されるシートに連れられて既積載シートが装置内へ送られてしまうことを防ぐ逆送防止部材を備えたものがある(特許文献1参照)。特許文献1で開示された技術では、逆送防止部材は常時、排出トレイ上に突出している。
【0005】
また、既に排出された既積載シートを押える押え部材を設けたものがある(特許文献2参照)。特許文献2に開示された技術では、排出ローラによって搬送されているシートに押されて押え部材が既積載シートを押さえる位置へ移動する。そして、紙押え部材は、シートが通過してシートからの押圧がなくなった後は排出トレイ上から退避するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01−017747号公報
【特許文献2】特開2004−131203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で示された逆送防止部材は、常時、排出トレイ上に突出している。したがって、排出されたシートの後端が逆送防止部材を完全に通過できずにそのまま逆送防止部材上に載り掛かった状態で保持される場合がある。この状態で次のシートの反転搬送が行われると、逆送防止部材に後端が載り掛かっている先のシートが画像形成装置の内部へ反転搬送される次シートによって引き込まれるという不具合が生じる。
【0008】
また、特許文献2で示された技術では、シート自身が、押さえ部材を押圧して移動させるものである。したがって、シートは通紙中、押さえ部材から負荷を与えられている。そのため、押さえ部材からの負荷によってシート搬送のバランスが悪くなり斜行が発生するなどのシートの搬送精度の悪化を招く。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術での課題に鑑みてなされたものであり、ローラ対で排出及び反転搬送を行う排出装置において、シートが反転搬送される際、シートの搬送精度を悪化させることなく、確実に既積載シートを装置の内部へ引き込みを防止することができる排出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、正回転によって搬送されるシートの一部を装置外へ突出させた後、逆回転して該シートを反転搬送するローラを備え、前記ローラの正回転によって積載部へシートを排出する排出装置であって、前記ローラによってシートが反転搬送されるときの、前記積載部上の既積載シートの移動を規制する規制位置と、前記ローラによって前記積載部へシートが排出されるときの、前記排出装置内へ退避した退避位置との間で移動可能に設けられた規制部材と、前記規制部材を移動させる駆動部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートが反転搬送される際、シートの搬送精度を悪化させることなく、確実に反転搬送されるシートに連れられて既積載シートを装置の内部へ引き込んでしまうことを防止することができる排出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る排出装置の断面図。
【図3】第1実施形態に係る排出装置の動作説明図。
【図4】第1実施形態に係る排出装置の動作説明図。
【図5】第1実施形態に係る画像形成装置の外観斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る排出装置の断面図。
【図7】第2実施形態に係る排出装置の動作説明図。
【図8】第2実施形態に係る排出装置の動作説明図。
【図9】本発明の第3実施形態に係る排出装置の断面図。
【図10】第3実施形態に係る排出装置の動作説明図。
【図11】第3実施形態に係る排出装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
本発明に係る画像形成装置の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置本体1の概略断面図である。
2はプロセスカートリッジ、2aは感光ドラム、2bは帯電ローラ、2cは現像スリーブ、2dはトナー容器である。3はレーザー露光装置、4は転写ローラ、5は、シートSを収納するシート収納装置、6は給紙ローラ、7はシート分離手段、8、9は搬送ローラ対である。10は定着装置、11は内排紙ローラ対である。
【0014】
19は、内排紙ローラ対12の下流の設けられた排出装置である。排出装置19は、積載部としての排出トレイ13へのシートの排出と、シートの反転搬送とを行う。排出装置19は、排出ローラ対12や引き込み防止部材16を備えた装置である。排出装置19の構成ならびに動作は後に詳述する。
【0015】
20、21、22は、裏面搬送路に設けられ、排出装置19によって反転搬送されたシートを搬送する再給紙ローラ対である。
601は、画像形成装置の各部の動作を制御する制御部である。
画像形成装置における画像形成及びシート搬送の動作の概略について説明する。感光ドラム2aは矢印A方向に回転し、高圧電源から給電される帯電ローラ2bによって一様に帯電される。後述するタイミングでレーザー光がレーザー露光装置3から発せられ、反射ミラー3aによって感光ドラム2aへ照射され、感光ドラム2a上には静電潜像が形成される。トナー容器2dの中にはトナーが充填されており、現像スリーブ2cの回転に伴い、適量のトナーが適度の帯電を受けた後、感光ドラム2a上に供給される。現像スリーブ2c上のトナーは感光ドラム2aの静電潜像に付着し、潜像が現像されてトナー画像として可視化される。
【0016】
一方、給紙ローラ6はタイミングをとって、シート収納装置5上のシートSを1枚ずつ給紙する。シート分離手段7は給紙ローラ6を押圧し、その表面の摩擦係数、接触角度、形状はシートSを1回の給紙毎に最上層の1枚のみを送るように設定されている。給紙ローラ6より給紙されたシートは搬送ローラ対8、9の搬送ローラニップを通過し、感光ドラム2aと転写ローラ4のニップへ搬送される。そして、可視化された感光ドラム2a上のトナー画像は転写ローラ4によりシートS上に転写される。転写されずに感光ドラム2a上に残った転写残トナーはクリーニングブレード2eにより廃トナー容器2fに収納される。そして、表面をクリーニングされた感光ドラム2aは繰り返し次の画像形成プロセスに入る。
【0017】
トナー画像を載せたシートSは定着装置10によって加熱及び加圧を受け、トナー画像がシート上に永久定着される。そして、画像が定着されたシートは定着装置10下流の内排紙ローラ対11を経由して排出ローラ対12のニップを通過し、排出トレイ13上へ排出される。
【0018】
裏面にも画像を形成する場合には、以下のように動作する。表面への画像形成が完了したシートの搬送方向先端側の一部が、排出ローラ対12によって画像形成装置外に突出されるように搬送され、その後、排出ローラ対12が逆回転することで、シートが反転搬送させられる。反転搬送されたシートは、再給紙ローラ対20、21、22によって再搬送路701を経由して裏面への画像形成のために画像形成部へ搬送される。裏面への画像形成の画像形成動作は表面と同様であるので省略する。
【0019】
次に、規制部材としての引き込み防止部材16を備えた排出装置19について図2を用いて説明する。
図2は、引き込み防止部材16を備えた排出装置19の断面図である。引き込み防止部材16は、回転軸16bに回転移動可能に支持されている。12aは排出駆動ローラ、12bは不図示の付勢部材によって排出駆動ローラ12aを押圧している排出従動ローラである。排出駆動ローラ12aと、排出従動ローラ12bによって排出ローラ対12が構成されている。15は、揺動ガイドとしての搬送路切り換え部材であって、揺動中心15bを中心として揺動自在に支持され、反転搬送されるシートを案内する。
【0020】
17は引き込み防止部材16に係合しているソレノイドである。18は引っ張りバネであり、駆動部としてのソレノイド17のON、OFFによって、鉄芯17aが左右に直線運動することで、引き込み防止部材16が回転軸16を中心に回転移動することを可能にしている。
【0021】
図2は、ソレノイド17がOFFの状態を示しており、ソレノイド17の鉄芯17aに係合している引き込み防止部材16は、引っ張りバネ18から回転モーメントを受けている。この回転モーメントにより、引き込み防止部材16は、回転軸16bを中心に反時計回りに回転移動して、その結果、引き込み防止部材16の先端部16aが、排出ローラ対12の排出装置19の内部に退避している。本実施形態では図2に示した引き込み防止部材16の位置が装置内部へ退避した退避位置である。
【0022】
一方、ソレノイドがON状態になると、ソレノイド17の鉄心17aが、引っ張りバネ18に抗しながら、図2の左方向に直線移動して、引き込防止部材16に回転軸16bを中心とした回転モーメントを与える。この回転モーメントにより、引き込み防止部材16は、回転軸16bを中心に時計回りに回転移動する。その結果、引き込み防止部材16の先端部16aが、排出装置19の内部から、排出ローラ対12の下流であって排出トレイ13の上方へ突出する。引き込み防止部材16の先端部16aが、排出ローラ対12と排出トレイ13との間を隔離する位置に位置することで、先端部16aが排出トレイ13上の既積載シートが排出ローラ対12へ進入してしまうことを防ぐ。
【0023】
制御部601(図1参照)は、排出装置19の動作も制御する。制御部601は、ソレノイド17、排出駆動ローラ12aを回転駆動する駆動部や、搬送路切り換え部材15を移動させる不図示のソレノイドの動作を制御する。制御部601には、内排紙センサ14からの信号が入力される。なお、排出装置19の各部を制御する制御部が画像形成装置の制御部と同じである形態をここでは例示している。しかし、例えば画像形成装置本体にオプションで排出装置を着脱させるような構成の場合には、画像形成装置本体とは別の、排出装置の各部を制御する制御部を、排出装置内に設けてもよい。
【0024】
次に、シート搬送と引き込み防止部材16の動きについて説明する。図3(a)は、表面の画像形成が完了したシートS1の先端部Fが排出ローラ対12のニップを通過した状態を示している。排出駆動ローラ12aが矢印D方向に回転(正回転)させられ、シートS1を矢印B方向に排出している。この時、排出装置19の内部に有るソレノイド17はOFF状態であり、ソレノイド19に係合している引き込み防止部材16は、引っ張りバネ18により、回転軸16bを中心に回転移動することで排出装置19の内部に退避している。
【0025】
図3(b)は、図3(a)の状態からさらにシートS1の排出が進んだ状態であり、シートS1の後端G部が搬送路切り換え部15の先端部15aと排出ローラ対12の間に位置している。この直前に、シートS1の後端部Gの位置が内排紙センサ14により、あらかじめ検知されていて、シートS1の後端部Gが内排紙センサ14を通過した位置から所定の時間後、以下で説明する反転搬送が開始される。
【0026】
内排紙センサ14によってタイミングを取り、シートS1の後端部Gが搬送路切り換え部15の先端部15aと排出ローラ対12の間にある時に、不図示の駆動部(ソレノイド)により搬送路切り換え部15が回転軸15bを中心に回転移動して、再搬送路の入口Hを開放している位置に移動される。
【0027】
また、この搬送路切り換え部材15の動作に同期して、ソレノイド17がON状態になり、これに係合している引き込み防止部材16が回転軸16bを中心に回転移動することで、引き込み防止部材16の先端部16aが排出装置19の内部から排出ローラ対12の下流側に突出する。その後、排出駆動ローラ12aが不図示の回転切り換え手段により、矢印E方向に逆回転することでシートS1の矢印C方向へ逆転搬送を開始する。図4(a)は、排出駆動ローラ12aがそれまでとは逆方向に回転駆動されることで、シートS1が反転搬送され、シートS1の後端部Gが裏面搬送路の入り口部Hを通過している状態を示す図である。図4(a)に示した引き込み防止部材16の位置が、排出トレイ13と排紙ローラ対12との間で既積載シートの移動を規制する規制位置である。規制位置に位置した引き込み防止部材16は、反転搬送されるシートに連れられて既積載シートが排出ローラ対12を介して装置内へ引き込まれることを既積載シートの移動を規制することで防いでいる。
【0028】
反転搬送されているシートS1は、先に排出トレイ13に排出済みの積載シートS0を静電吸着力で吸い寄せようとするが、引き込み防止部材16の先端部16aが積載シートS0の移動を規制するので、積載シートS0が画像形成装置の内部に引き込まれることを回避できる(図4(a)のJ部参照)。
【0029】
その後、シートS1は、G部を裏面印字の際の先端として、裏面搬送路にある再給紙ローラ対20、21、22(図1参照)を通過し、画像形成部へ搬送される。一方、シートS1の裏面印字の後端部(図3(a)でのFに相当する)が、再搬送路の入口Hを通過した後、搬送路切り換え部15が再搬送路の入口Hを閉じる位置へ移動される。また、これに同期して、ソレノイド18がOFF状態となり、引き込み防止部材16が引っ張りバネ18の力で回転軸16bを中心に回転移動することで、引き込み防止部材16の先端部16aが排出ローラ対12の下流側から排出装置19の内部へ退避する。引き込み防止部材16の先端部16aが退避させるように引き込み防止部材16を退避位置に戻すのは、裏面印字後のシート排出に備えるためである。
【0030】
図4(b)は、シートS1が裏面印字を終え、シートS1の後端が排出ローラ対12を通過した直後の状態である。この時、引き込み防止部材16は排出装置19の内部の退避位置に移動しているので、シートS1の後端は引き込み防止部材16の先端部16aに引っ掛かることなく排出トレイ13に落下することが可能である(図4(b)のK部参照)。ここで、引き込み防止部材16の退避位置とは、排出ローラ対12によって排出トレイ13へ排出されたシートの後端部が引き込み防止部材16の上に載ることなく、シートが落下して排出トレイ13に積載されるような位置である。規制位置のある引き込み防止部材16の先端部16aよりも退避位置のある引き込み防止部材16の先端部16aの方が装置の内部側である。
【0031】
図5は、本実施形態の引き込み防止部材16が、搬送ローラ対12下流側に突出した状態の外観斜視図である。便宜的に積載シートを省略している。本実施形態では、引き込み防止部材16を紙幅方向に2個設けている。
【0032】
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏する。
通常の排出時には引き込み防止部材16が排出装置内部に退避しているので、排出したシートの後端が引き込み防止部材上に載り掛かることが無いため、シート引き込みジャムを防止することができる。
【0033】
裏面印字のための逆転搬送時には、排出ローラ下流に引き込み防止部材16が突出する。したがって、静電吸着力で吸い寄せられる排出トレイ13上の既積載シートをせきとめることが可能となり、引き込みジャムを防止することができる。
【0034】
引き込み防止部材16の動作に、シート自身の力を使用しておらず駆動部(本実施形態ではソレノイド17による駆動力)を用いている。したがって、搬送されるシートによって積載されたシートを上から押さえる位置へ移動させる形態と比較してシートの搬送のバランスが改善され斜行の発生が少ない。
【0035】
また、本実施形態では、引き込み防止部材16を駆動させるために、専用のソレノイドを備えている。よって、本第1実施形態の引き込み防止部材16の退避―突出のタイミングは、搬送路切り換え部材15の切り換えタイミングや排出駆動ローラ12bの正逆切り換えタイミングと、独立して行うことが可能であり、引き込みジャムに対して、より効果的な設定を行う自由度がある。
【0036】
(第2実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では専用のソレノイドによって引き込み部材を移動させていたのに対して、本第2実施形態では、引き込み防止部材を搬送路切り換え部材を用いて移動させている点が主に異なる。以下では、第1実施形態と異なる事項について詳述し、第1実施形態と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0037】
図6は、本発明に係る排出装置の第2実施形態を示した断面図である。引き込み防止部材216が排出装置219に対して、矢印P及び矢印Q方向にスライド移動を可能に支持されている。218は圧縮バネであり、引き込み防止部材216を矢印Q方向に付勢する力を引き込み防止部材216に与えている。その結果、引き込み防止部材216の先端部216aが、排出装置219の内部に退避している。
【0038】
搬送路切り換え部材215が回転軸215bを中心に時計回りに回転移動すると、搬送路切り換え部材215の先端部215aが引き込み防止部材216に当接する。搬送路切り換え部材215の先端部215aは、圧縮バネ218の反力に抗しながら、引き込み防止部材216を矢印P方向へ移動させる。その結果、引き込み防止部材216の先端部216aが、排出装置219の内部から、排出ローラ対12の下流であって、排出トレイ13の上方へ突出する。
【0039】
制御部601(図1参照)は、排出駆動ローラ12aを回転駆動する駆動部や、搬送路切り換え部材215を移動させる不図示のソレノイドの動作を制御する。
【0040】
次にシート搬送と引き込み防止部材216の動きについて説明する。図7(a)は、表面の画像形成が完了したシートS1の先端部Fが排出ローラ対12のニップを通過した状態を示している。不図示の駆動源によって、排出駆動ローラ12aが矢印D方向に回転させられ、シートS1を矢印B方向に排出している。この時、排出装置219の内部に有る圧縮バネ218の働きにより、引き込み防止部材216の先端部216aは、排出装置219の内部に退避している。
【0041】
図7(b)は、図7(a)の状態からさらにシートS1の排出が進んだ状態であり、シートS1の後端G部が搬送路切り換え部材215の先端部215aと排出ローラ対12の間に位置している。この直前に、シートS1の後端部Gの位置が内排紙センサ14により、あらかじめ検知されていて、シートS1の後端部Gが内排紙センサ14を通過した位置から所定の時間後、以下で説明する反転搬送が開始される。
【0042】
内排紙センサ14によってタイミングを取り、シートS1の後端部Gが搬送路切り換え部材215の先端部15aと排出ローラ対12の間にある時に、不図示の駆動源により搬送路切り換え部材215が回転軸215bを中心に回転移動して、再搬送路の入口Hを開放している。また、これと同時に搬送路切り換え部材215の先端部215aが引き込み防止部材216に当接することで、引き込み防止部材216の先端部216aが、排出装置219の内部から排出ローラ対12の下流側に突出する。その後、排出駆動ローラ12aがそれまでは逆方向である矢印E方向に回転することでシートS1の矢印C方向へ反転搬送を開始する。図8(a)は、シートS1が反転搬送され、シートS1の後端部Gが裏面搬送路の入り口部Hを通過している状態を示した図である。反転搬送されているシートS1は、先に排出トレイ13に排出済みの積載シートS0を静電吸着力で吸い寄せようとするが、引き込み防止部材216の先端部216aが積載シートS0の移動を規制するので、積載シートS0が画像形成装置の内部に引き込まれることを回避できる(図8(a)でのJ部参照)。
【0043】
その後、シートS1はG部を裏面印字の先端として、裏面搬送路にある再給紙ローラ対20、21、22(図2参照)を通過し、画像形成部へ搬送される。一方、シートS1の裏面印字の後端(図7(a)でのFに相当する)が、再搬送路の入口Hを通過した後、搬送路切り換え部材215が再搬送路の入口Hを閉じる位置へ移動される。また、これと同時に搬送路切り換え部材215の先端部215aが引き込み防止部材216から離間する。これによって圧縮バネ18の働きにより、引き込み防止部材216の先端部216aが排出ローラ対12の下流側から排出装置19の内部へ退避する。引き込み防止部材216の先端部216aを退避させるように引き込み防止部材216を退避位置に戻しておくのは、裏面印字後のシートの排出に備えるためである。
【0044】
図8(d)は、シートS1が裏面印字を終え、シートS1の後端が排出ローラ対12を通過した直後の状態である。この時、引き込み防止部材216は排出装置219の内部に退避しているので、シートS1の後端は引き込み防止部材216の先端部216aに引っ掛かることなく排出トレイ13に落下することが可能である(図8(b)でのK部参照)。
【0045】
本第2実施形態では以下の効果を奏する。
通常の排出トレイ13への排出に先だって、引き込み防止部材216を排出装置内部に退避させているので、排出したシートの後端が引き込み防止部材216上に載り掛かることが無いため、シート引き込みジャムを防止することができる。
【0046】
裏面印字のための逆転搬送時には、排出ローラ対12の下流に引き込み防止部材216が突出する。したがって、静電吸着力で吸い寄せられる排出トレイ12上のシートをせきとめることが可能となり、引き込みジャムを防止することができる。
【0047】
引き込み防止部材216の動作に、シート自身の力を使用しておらず駆動部(本第2実施形態では搬送路切り換え部材15を移動させるためのソレノイド)を用いている。したがって、搬送されるシートによって積載されたシートを上から押さえる位置へ移動させる形態と比較してシートの搬送のバランスが改善され斜行の発生が少ない。
【0048】
また、引き込み防止部材216は、搬送切り換え部材215に連動する構成であって、引き込み防止部材216と搬送切り換え部材215とを共通の駆動部で駆動している。よって、引き込み防止部材216を駆動させる専用のアクチュエータが不要となり、排出装置の構成をシンプルで低価格にする可能となる。
【0049】
(第3実施形態)
次に本発明に係る第3の実施形態について説明する。上記の第2実施形態では引き込み防止部材216を一つの部材によって構成していたのに対して、本第3実施形態では、引き込み防止部材を2部材で構成した点が主に異なる。以下では、第2実施形態と異なる事項について詳述し、第2実施形態と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0050】
図9は、第3実施形態の排出装置319の断面図である。本第3実施形態の排出装置319に設けられた引き込み防止部材は2部材で構成されている。即ち、引き込み防止部材は、排出装置319の本体に移動自在に取り付けられたベース部材23と、ベース部材23に回動自在に取り付けられた引き込み防止レバー24から構成されている。可動レバーとしての引き込み防止レバー24は、既積載シートの最上位シートと接触可能であり、最上位シートの高さに応じて移動する。
【0051】
引き込み防止レバー24は、ベース部材23に対して、回転軸24bを中心に回転可能に支持されている。25はねじりコイルバネであり、引き込み防止レバー24に対して矢印D方向に回転モーメントを与えている。ねじりコイルバネ25によって、回転モーメントを与えられた引き込み防止レバー24は、ベース部材23上に形成されている不図示のストッパ壁により、所定の位置で留まることで、図9で示した姿勢を保持している。
【0052】
318は圧縮バネであり、ベース部材23に作用することで、上記実施形態2と同様、引き込み防止レバー24の先端部24aが排出装置19の内部に退避している。
【0053】
26は発光部と受光部を有し、発光部からの光を物体で遮るのを受光部で検出するフォトインタラプタである。引き込み防止レバー24がフォトインタラプタ26の発光部からの光が遮ることができるようにフォトインタラプタ26が配置されている。
【0054】
制御部601(図1参照)は、排出駆動ローラ12aを回転駆動する駆動部や、搬送路切り換え部材315を移動させるソレノイドの動作を制御する。なお制御部601は、フォトインタラプタ26からの信号を受信して、その信号に基づいて画像形成装置の画像形成に係る搬送動作も制御する。
【0055】
また、図9は通常のシート排出時の状態図を示していて、搬送路切り換え部材315が駆動されていないので、引き込み防止レバー24の先端部24aが排出装置319の内部に退避している。
【0056】
図10(a)は、シートS1が反転搬送され、シートS1の後端部Gが裏面搬送路の入り口部Hを通過している状態を示した図である。なお、搬送路切り換え部材315を移動させるタイミングなどは第2実施形態と同様である。搬送路切り換え部材315の先端部315aがベース部材23に当接することで、引き込み防止レバー24の先端部24aが、排出装置319の内部から排出ローラ対12の下流であって、排出トレイ13の上方に突出する。
【0057】
反転搬送されるシートS1は、先に排出トレイ13に排出済みの積載シートS0を静電吸着力で吸い寄せようとするが、引き込み防止レバー24の先端部24aが積載シートS0の移動を規制するので、積載シートS0が画像形成装置の内部に引き込まれることを回避できる(図10でのJ部参照)。
【0058】
この時、ねじりコイルバネ25が引き込み防止レバー24に付与している回転モーメントは、図10でのJ部で示す積載シートS0の後端部が排出ローラ対12のニップ部へ達しないように設定している。
【0059】
図10(b)は、排出トレイ13に積載シートS0が満載された状態であって、シートS1が反転搬送され、シートS1の後端部Gが裏面搬送路の入り口部Hを通過している状態である。この時、積載シートS0の後端部は引き込み防止レバー24の先端部24aをねじりコイルバネ25の付勢力に抗して、回転軸24bを中心に回転移動させている(L部参照)。一方、引き込み防止レバー24の遮蔽部24cは、回転軸24bを中心にフォトインタラプタ26へ向かって回転移動して、フォトインタラプタ26の受光部を遮蔽している。
【0060】
本実施形態では、引き込み防止レバー24の遮蔽部24cが受光部を遮蔽すると、排出トレイ13に過度にシートが積載されていると画像形成装置が判断する。そして、プリントジョブが終了した時点、つまり、シートS1の裏面印字が終了して、排出トレイ13に排出された時点で、次のプリントジョブを一次停止する制御を行っている。
【0061】
なお、その後、ユーザーに対して、画像形成装置の表示部またはパソコン画面上で、排出トレイ13に過度に積載されたシートを除去する指示をすることで、排出シートの後端が排出ローラ12のニップを塞ぐことを防止でき、排出シートの整列性の向上が可能となっている。
【0062】
なお、以下のように動作させてもよい。表面のみに画像を形成するジョブを実行に際しても1つのプリントジョブが終了する毎に、搬送路切り換え部材315を駆動して、引き込み防止部材レバー324を作動させる。そして、排出直後のシートS1が過度な積載状態に至ってないかどうか確認する(図11のM部参照)。裏面印字の時と同様、過度な積載状態を検知した際は、次のプリントジョブを一次停止する。そして、ユーザーに対して、画像形成装置の表示部またはパソコン画面上で、排出トレイ13に過度に積載されたシートを除去する指示をすることで、排出シートの後端が排出ローラ12のニップを塞ぐことを防止でき、排出シートの整列性の向上が可能となっている。
【0063】
本第3実施形態では、上記第2実施形態で奏する効果に加えて以下の効果を奏する。
引き込み防止部材(引き込み防止レバー24)を用いて、排出トレイ13上の過度な積載状態を検出することができ、それ以上排出トレイ13にシートを排出させないため、排出されたシートが排出ローラ対12の出口を塞ぐに至らず、排出紙の整列性を良好な状態で維持できる。
【0064】
また、引き込み防止部材は、満載検出機能を兼用しているため、満載を検出する専用の部品を新たに配置する必要がなく、シンプルな排出装置の構成が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
12 排出ローラ対
13 排出トレイ
14 内排紙センサ
15 搬送路切り換え部
16 引き込み防止部材
17 ソレノイド
18 引っ張りバネ
19 排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正回転によって搬送されるシートの一部を装置外へ突出させた後、逆回転して該シートを反転搬送するローラを備え、前記ローラの正回転によって積載部へシートを排出する排出装置であって、
前記ローラによってシートが反転搬送されるときの、前記積載部上の既積載シートの移動を規制する規制位置と、前記ローラによって前記積載部へシートが排出されるときの、前記排出装置内へ退避した退避位置との間で移動可能に設けられた規制部材と、
前記規制部材を移動させる駆動部と、を有することを特徴とする排出装置。
【請求項2】
前記ローラによって反転搬送されたシートを案内する揺動ガイドを備え、
前記規制部材を移動させる前記駆動部と前記揺動ガイドを揺動させるための駆動部とが共通であることを特徴とする請求項1記載の排出装置。
【請求項3】
前記揺動ガイドが反転搬送されるシートを案内するための位置へ前記駆動部によって移動する際に、前記揺動ガイドが前記規制部材と当接して前記規制部材を前記退避位置から前記規制位置へ移動させることを特徴とする請求項2記載の排出装置。
【請求項4】
前記規制部材が、前記積載部上の既積載シートの最上位シートの高さに応じて移動する可動レバーを備え、前記可動レバーに位置に応じて既積載シートが満載であると判断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の排出装置と、前記排出装置によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−140200(P2012−140200A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293017(P2010−293017)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】