説明

排気浄化システムの異常診断装置及び排気浄化システム

【課題】還元剤の品質等の排気浄化システムの異常を、簡素なハード構成で診断可能にした排気浄化システムの異常診断装置を提供する。
【解決手段】NOxの浄化率を算出する浄化率算出手段S14,S27と、浄化率算出手段により算出された、前記内燃機関の前回停止時の浄化率ηlastに対する、今回始動時の浄化率ηstartの乖離度に基づいて、尿素水(還元剤)の品質を診断する品質診断手段S28,S32(診断手段)と、を備えることを特徴とする。エンジン停止期間中に尿素水の品質が変化していなければ、停止期間の前後においてその浄化率は大きくは変化しないはずであるため、上記の如く停止時浄化率ηlastに対する始動時浄化率ηstartの乖離度に基づけば、尿素水の濃度を検出するセンサを要することなく尿素水の品質(排気浄化システムの異常)を診断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化システムの異常を診断する装置に関するものであり、特に、還元剤として尿素水を用いた場合において、尿素濃度の異常に起因したシステム異常について診断するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気中に含まれるNOx(窒素酸化物)を浄化する手法として、内燃機関の排気中に還元剤を添加し、添加した還元剤を用いて排気中のNOxを触媒で浄化する技術が知られている。還元剤の一例としては尿素が挙げられ、この場合には、尿素を水に溶解させてなる尿素水を排気中に添加する。ちなみに、添加された尿素水からは加水分解によりアンモニア(NH3)が生成され、このアンモニアが触媒上でNOxを還元する。
【0003】
ここで、タンクに貯蔵されている尿素水(還元剤)は、内燃機関の停止中に品質変化することが有りうる。例えば、正規の尿素水以外の液体(例えば水や軽油等)をタンクへ補給してしまうことで、尿素の濃度が著しく低下するといった品質変化が懸念される。また、内燃機関を長期間停止させておくことで尿素水中の水分が蒸発してしまい、尿素の濃度が高くなるといった品質変化が懸念される。そして、このような低濃度の尿素水を添加して用いるとアンモニアの供給不足によるNOx浄化率の低下が生じ、また、高濃度の尿素水を用いるとアンモニアの供給過剰により触媒からアンモニアの過剰分が排出されるといったアンモニアスリップが生じる。
【0004】
このような問題に対し従来では、尿素水の濃度を検出する濃度センサをタンク内に設置し、濃度センサの検出値に基づき尿素水の濃度(品質)を診断し、品質異常と診断された場合にはその旨をユーザに警告している。なお、濃度センサの具体例として、各々離間して配置された発熱体及び温度計測部を備えるセンサが挙げられる(特許文献1参照)。このセンサによれば、発熱体の発熱量及び温度計測部の計測値に基づき尿素水の熱伝達特性を算出でき、算出した熱伝達特性に基づき尿素水の濃度を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−127262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如く濃度センサの検出値に基づき尿素水(還元剤)の品質を診断する装置では、品質診断専用の濃度センサを必要とする。しかも特許文献1記載の濃度センサでは、発熱体及び温度計測部を備えることに起因したセンサ体格の大型化やコスト高、発熱体で電力消費が生じるといった問題を抱えている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、還元剤の品質等の排気浄化システムの異常を、簡素なハード構成で診断可能にした排気浄化システムの異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明では、還元剤添加手段及び触媒を備える排気浄化システムに適用されており、内燃機関の停止時におけるNOxの浄化率及び内燃機関の始動時におけるNOxの浄化率を算出する(浄化率算出手段)。そして、前回停止時の浄化率に対する今回始動時の浄化率の乖離度に基づいて、排気浄化システムの異常有無を診断する(診断手段)ことを特徴とする。
【0010】
内燃機関の停止期間中に還元剤の品質が変化していなければ、停止期間の前後においてその浄化率は大きくは変化しないはずである。換言すれば、停止期間の前後における浄化率を比較すれば、停止期間中に還元剤の品質が変化したか否かを診断できるはずである。この点に着目し、本発明では、前回停止時の浄化率に対する今回始動時の浄化率の乖離度に基づいて、還元剤の品質を診断する。よって、特許文献1等に記載の診断専用の濃度センサを不要にしつつ還元剤の品質を診断できる。
【0011】
また、本発明において前記乖離度に基づけば、還元剤の品質を診断することの他に、排気浄化システムのハード構成に異常が生じているか否かを診断できる。例えば後述する触媒(請求項10参照)の異常有無について診断できる。 なお、本発明にかかる浄化率算出手段により浄化率を算出する具体例としては、触媒に流入したNOx量と触媒から流出したNOx量との差分をNOx浄化量として算出し、NOx流入量に対する浄化量の割合を「浄化率」として算出することが挙げられる。NOx流入量及び流出量の算出には、触媒の上流側に位置するNOxセンサ及び下流側に位置するNOxセンサの検出値に基づき算出してもよいし、内燃機関の運転状態に基づき算出してもよい。
【0012】
また、本発明にかかる「浄化率算出手段」は、浄化率そのものを算出することに限定されず、浄化率と相関性が高い物理量を浄化率に置き換えて算出するようにしてもよい。例えば、触媒に吸着された還元剤の吸着量は浄化率と相関性が高い。よって、浄化率算出手段では前記吸着量を浄化率に置き換えて算出してもよい。
【0013】
次に、例えば、還元剤を貯蔵するタンクに水を供給する等により還元剤の濃度が低下していれば、還元剤の添加量が同じであっても触媒に供給される還元剤の供給量は減少することとなり、その結果、浄化率が低下することとなる。
【0014】
この点に着目した請求項2記載の発明では、前回停止時の浄化率に対する今回始動時の浄化率が低下側へ所定量以上乖離している場合に、還元剤の還元剤濃度が低下している低濃度異常と診断することを特徴とする。これによれば、還元剤濃度センサを用いることなく、還元剤の品質異常の内容(低濃度である旨)を診断結果として取得できる。
【0015】
また、例えば、内燃機関を長期間停止させておくことで還元剤の水分が蒸発する等により、還元剤の濃度が上昇していれば、還元剤の添加量が同じであっても触媒に供給される還元剤の供給量は増大することとなり、その結果、供給過剰分の還元剤が触媒から流出するほどに、浄化率が上昇する場合がある。
【0016】
この点に着目した請求項3記載の発明では、前回停止時の浄化率に対する今回始動時の浄化率が上昇側へ所定量以上乖離している場合に、還元剤の還元剤濃度が上昇している高濃度異常と診断することを特徴とする。これによれば、還元剤濃度センサを用いることなく、還元剤の品質異常の内容(高濃度である旨)を診断結果として取得できる。
【0017】
次に、内燃機関の停止時点において触媒に吸着されている還元剤は、内燃機関の停止期間中に触媒から放出されて減少していく。したがって、停止期間中に還元剤の品質が変化していなかったとしても、前記放出の分を加味すると、停止時浄化率に比べて始動時浄化率は低下するはずである。
【0018】
この点を鑑みた請求項4記載の発明では、触媒で吸着されている還元剤が内燃機関の停止期間中に減少した量と相関のある情報を吸着減少量情報として取得する吸着減少量取得手段を備え、前記診断手段は、前記乖離度に加え前記吸着減少量情報に基づき、排気浄化システムの異常(特に還元剤の品質)を診断することを特徴とする。これによれば、停止前後の浄化率の乖離度に基づき還元剤の品質を診断するにあたり、停止期間中に触媒から放出されて減少量を加味して診断するので、診断精度を向上できる。
【0019】
なお、前記吸着減少量情報として用いる好適な具体例として、請求項5記載の如く、内燃機関の停止期間長さ、及び停止期間における外気温度が挙げられる。
【0020】
請求項6記載の発明では、前記浄化率算出手段は、前記触媒の温度が所定温度に達して触媒暖機期間が終了した時点での浄化率を、始動時の浄化率として算出し、前記触媒に吸着されていた還元剤が前記触媒暖機期間中にNOx浄化に使用された量を、暖機時使用量として算出する使用量算出手段を備え、前記診断手段は、前記乖離度に加え前記暖機時使用量に基づき、排気浄化システムの異常(特に還元剤の品質)を診断することを特徴とする。
【0021】
ここで、内燃機関の始動時に触媒に吸着されている還元剤は、触媒暖機期間中におけるNOx浄化に使用されるため減少していく。したがって、停止期間中に還元剤の品質が変化していなかったとしても、前記使用した分を加味すると、停止時浄化率に比べて始動時(触媒暖機終了時)の浄化率は低下するはずである。
【0022】
この点を鑑みた上記請求項6記載の発明によれば、停止前後の浄化率の乖離度に基づき排気浄化システムの異常を診断するにあたり、始動時に吸着されている還元剤のうち触媒暖機期間中にNOx浄化に使用されて減少した分を加味して診断するので、診断精度を向上できる。なお、暖機時使用量を算出する例としては、例えば触媒暖機期間の長さ、触媒暖機期間中のエンジン回転速度及びエンジン負荷等に基づき算出することが挙げられる。
【0023】
次に、前回停止時の浄化率が同じであっても、内燃機関の停止時点において触媒に吸着されている還元剤の量(吸着量)が異なってくる場合がある。そして、前回停止時での吸着量が異なれば、前回停止時の浄化率が同じであり、かつ、停止期間中に還元剤の品質が変化していない場合であっても、始動時の浄化率は変化する。また、前回停止時の吸着量は、前回での内燃機関の運転状態に応じて異なる。例えば、燃焼室からのNOx排出量が多い状態で継続して運転していた場合には、停止時の吸着量は少なくなっている。
【0024】
この点を鑑みた請求項7記載の発明では、前記内燃機関の運転履歴のうち前回停止時点における還元剤吸着量と相関のある履歴情報を、運転履歴情報として取得する吸着量取得手段を備え、前記診断手段は、前記乖離度に加え前記運転履歴情報に基づき、排気浄化システムの異常(特に還元剤溶液の品質)を診断することを特徴とする。これによれば、停止前後の浄化率の乖離度に基づき還元剤の品質を診断するにあたり、停止時の吸着量を加味して診断するので、診断精度を向上できる。
【0025】
なお、前記運転履歴情報として用いる好適な具体例として、請求項8記載の如く、前回停止時までの還元剤の添加量履歴、前回停止時までの前記触媒からのNOx流出量履歴、及び前回停止時点における前記触媒の温度が挙げられる。
【0026】
請求項9記載の発明では、前記排気浄化システムは、前記触媒から流出したNOxの量を検出するNOxセンサと、前記NOxセンサにより検出されたNOx量に基づき前記還元剤添加手段による還元剤添加量を制御する手段と、を備えており、前記NOxセンサ及び前記還元剤添加手段の少なくとも1つについて異常の有無を判定するハード異常判定手段を備え、前記診断手段は、前記ハード異常判定手段により異常が発生していないと判定されていることを条件として、還元剤が品質異常であるとの診断結果を出力することを特徴とする。
【0027】
NOxセンサや還元剤添加手段に異常が生じていると、浄化率算出手段により算出した浄化率が誤った値となり、正常な還元剤に対して品質異常との診断結果を出力(誤診断)することが懸念される。この懸念に対し上記請求項9記載の発明によれば、NOxセンサや還元剤添加手段に異常が生じていないことを条件として品質異常診断結果を出力するので、上記誤診断を回避できる。
【0028】
次に、触媒が経年劣化して浄化性能が低下してくると、正常な還元剤を添加しても想定(期待)されるNOx浄化性能が発揮されなくなり、診断手段は還元剤の品質悪化を誤診断する場合が生じる。
【0029】
この点を鑑みた請求項10記載の発明では、前記乖離度が所定量以上であるとの診断結果が所定回数以上出力された場合には、前記触媒の浄化性能が低下している異常状態であると判定する触媒異常判定手段を備えることを特徴とするので、触媒の異常状態を検知できる。
【0030】
請求項11記載の発明は、上述した排気浄化システムの異常診断装置と、前記還元剤添加手段、前記触媒、及び前記触媒から流出したNOxの量を検出するNOxセンサの少なくとも1つと、を備えることを特徴とする排気浄化システムである。この排気浄化システムによれば、上述の各種効果を同様に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】排気浄化システムの概要を示す構成図。
【図2】停止時浄化率算出の処理手順を示すフローチャート。
【図3】尿素水品質診断の処理手順を示すフローチャート。
【図4】低濃度異常時における浄化率変化を示す図。
【図5】高濃度異常時における浄化率変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した排気浄化システムの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の排気浄化システムは、選択還元型触媒を用いて排気中のNOxを浄化するものであり、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムとして構築されている。はじめに、図1を参照してこのシステムの構成について詳述する。図1は、本実施形態に係る尿素SCRシステムの概要を示す構成図である。本システムは、自動車に搭載されたディーゼルエンジン(図示略)により排出される排気を浄化対象として、排気を浄化するための各種アクチュエータ及び各種センサ、並びに電子制御ユニット(ECU40)等を有して構築されている。
【0033】
図1のエンジン排気系において、エンジン本体に接続され排気通路を形成する排気管11が設けられており、その排気管11に、排気上流側から順にDPF12(Diesel Particulate Filter)、選択還元型触媒(以下、SCR触媒という)13が配設されている。また、排気管11においてDPF12とSCR触媒13との間には、還元剤としての尿素水を排気管11内に添加供給するための尿素水添加弁15(還元剤添加手段)が設けられている。
【0034】
排気管11においてSCR触媒13の上流側には、上流側NOxセンサ16が設けられている。この上流側NOxセンサ16により、同SCR触媒13の上流側にて、排気中のNOx量(SCR触媒13へ流入するNOx量)が検出される。
【0035】
排気管11においてSCR触媒13の下流側には、下流側NOxセンサ17が設けられている。この下流側NOxセンサ17により、同SCR触媒13の下流側にて、排気中のNOx量(SCR触媒13から流出したNOx量)が検出される。なお、これらのNOxセンサ16,17に排気温度を検出する温度センサを内蔵させてもよい。
【0036】
排気管11においてSCR触媒13の更に下流側には、アンモニア除去装置としての酸化触媒19が設けられている。この酸化触媒19により、SCR触媒13から排出されるアンモニア(NH3)、すなわち余剰のアンモニアが除去される。
【0037】
なお、上述したDPF12、SCR触媒13、尿素水添加弁15、上流側NOxセンサ16、下流側NOxセンサ17、及び酸化触媒19は、「排気浄化システム」を構成する手段に相当する。
【0038】
次に、本システムを構成する上記各部の構成についてそれぞれ説明する。
【0039】
DPF12は、排気中のPM(粒子状物質)を捕集するPM除去用フィルタである。DPF12は白金系の酸化触媒を担持しており、この酸化触媒により、PM成分の1つである可溶性有機成分(SOF)とともにHCやCOが除去される。このDPF12に捕集されたPMは、ディーゼルエンジンにおけるメイン燃料噴射後のポスト噴射等により燃焼除去でき(再生処理に相当)、これによりDPF12の継続使用が可能となっている。
【0040】
SCR触媒13は、NOxの還元反応(排気浄化反応)を促進するものであり、例えば、
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O …(式1)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O …(式2)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O …(式3)
といった反応を促進して排気中のNOxを還元する。そして、これらの反応においてNOxの還元剤となるアンモニア(NH3)を添加供給するものが、同SCR触媒13の上流側に設けられた尿素水添加弁15である。
【0041】
尿素水添加弁15は、既存の燃料噴射弁(インジェクタ)とほぼ同様の構成を有するものであり、公知の構成が採用できるためここでは構成を簡単に説明する。尿素水添加弁15は、電磁ソレノイド等からなる駆動部と、尿素水を流通させる尿素水通路や先端噴出口15aを開閉するためのニードルを有する弁体部とを備えた電磁式開閉弁として構成されており、ECU40からの駆動信号に基づき開弁又は閉弁する。すなわち、駆動信号に基づき電磁ソレノイドが通電されると、その通電に伴いニードルが開弁方向に移動し、そのニードル移動に伴い先端噴出口15aから尿素水が添加(噴射)される。
【0042】
尿素水添加弁15に対しては、尿素水タンク21から尿素水が逐次供給される。尿素水タンク21は、給液キャップ付きの密閉容器にて構成されており、その内部に所定の規定濃度CNH(例えば32.5%)の尿素水が貯蔵されている。この尿素水タンク21と尿素水添加弁15とは尿素水供給管22により接続されており、尿素水供給管22内に尿素水通路(還元剤通路)が形成されている。尿素水供給管22の途中には、ECU40からの駆動信号により回転駆動する電動の尿素水ポンプ23が設けられている。
【0043】
尿素水ポンプ23を駆動させると、尿素水タンク21内の尿素水は、フィルタ装置25を通過した後、圧力調整弁26により所定の供給圧力に調整され、尿素水添加弁15へ圧送される。なお、圧力調整弁26により圧力調整した結果、余剰となった尿素水はリターン配管27を通じて尿素水タンク21に戻される。
【0044】
その他、本システムには、エンジン回転速度やエンジン水温、燃料残量、尿素水残量など車両に関する各種情報を表示する表示パネル33が運転席前に設けられており、ECU40により各種の表示制御が行われる。
【0045】
上記システムの中で電子制御ユニットとして主体的に排気浄化に係る制御を行う部分がECU40である。ECU40は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を備え、各種センサの検出値に基づいて所望とされる態様で尿素水添加弁15等の各種アクチュエータを操作することにより、排気浄化に係る各種の制御を実施する。具体的には、例えば上述した上流側NOxセンサ16や下流側NOxセンサ17等の各種センサから検出信号を入力し、その入力信号に基づいて尿素水添加弁15の通電時間や尿素水ポンプ23の駆動量等を制御する。これにより、排気管11内に、適切な時期に適正な量の尿素水を添加供給する。
【0046】
本実施形態に係る上記システムでは、エンジン運転時において、尿素水ポンプ23の駆動により尿素水タンク21内の尿素水が尿素水供給管22を通じて尿素水添加弁15に圧送され、尿素水添加弁15により排気管11内に尿素水が添加供給される。すると、排気管11内において排気と共に尿素水がSCR触媒13に供給され、SCR触媒13においてNOxの還元反応によりその排気が浄化される。NOxの還元に際しては、例えば、
(NH22CO+H2O→2NH3+CO2 …(式4)
といった反応により、排気熱による高温下で尿素水が加水分解される。これにより、アンモニア(NH3)が生成され、そのアンモニアがSCR触媒13に吸着するとともに同SCR触媒13において排気中のNOxがアンモニアにより選択的に還元除去される。すなわち、同SCR触媒13上で、アンモニアに基づく還元反応(上記反応式(式1)〜(式3))が行われることによってNOxが還元、浄化されることとなる。
【0047】
尿素水添加弁15による排気中への尿素添加量は、下流側NOxセンサ17により検出される排気中のNOx量に応じてアンモニアの過不足が生じないよう算出される。例えば、下流側NOxセンサ17により検出されるNOx量がゼロとなるよう、尿素添加量はフィードバック制御されている。
【0048】
ところが、尿素水タンク21内に貯留されている尿素水の濃度が規定濃度CNHからずれていたり、あるいは尿素水タンク21内に尿素水以外の液体が混入されていたりすると、排気中のNOx量に対して適正な量のアンモニアを供給することができず、結果としてNOx浄化率の低下やアンモニアスリップが生じることが考えられる。
【0049】
すなわち、例えばエンジンが停止状態のまま長期間放置された場合、尿素水タンク21内の尿素水のうち水成分が蒸発し、尿素水の濃度が規定濃度CNHよりも高くなることが考えられる。かかる場合、排気中へのアンモニア供給量がNOx排出量に対して過剰になり、結果としてアンモニアスリップが発生することが懸念される。一方、使用者が、尿素水タンク21内に規定濃度CNHの尿素水の代わりに水を補給したり規定濃度CNHよりも低い尿素濃度の尿素水を補給したりした場合、尿素水の濃度が規定濃度CNHよりも低くなることが考えられる。かかる場合、排気中へのアンモニア供給量が不足し、結果として排気中のNOx浄化率が低下してしまうことが懸念される。あるいは、尿素水タンク21内への尿素水補給の際に、使用者が尿素水以外の液体(例えば軽油など)を誤って又は故意に補給した場合、その異物により尿素水の品質低下を招き、その結果、NOx浄化率の低下やシステム故障の発生が懸念される。
【0050】
この懸念を解消すべく本発明者は次の点に着目した。すなわち、エンジン停止期間中に尿素水の品質が変化していなければ、停止期間の前後においてその浄化率は大きくは変化しないはずである。換言すれば、停止期間の前後における浄化率に変化が生じていれば、停止期間中に、水や軽油の補給行為や水成分蒸発等に起因した尿素水の品質変化が生じたと診断できるはずである。そこで本実施形態では、エンジン停止時(図4中のt1時点)の浄化率ηlastに対するエンジン始動時(厳密にはエンジン始動の直後t3)の浄化率ηstartの乖離度に基づき、その乖離度が大きければ尿素水の品質異常と診断する。
【0051】
但し、エンジン停止期間中において、SCR触媒13に吸着されているアンモニアの一部は、エンジンの停止期間中にSCR触媒13から放出されていく(図4中のt1〜t2参照)。そのため、停止期間中に尿素水の品質が変化していなかったとしても、前記放出によりNH3吸着量が減少した分、始動時の浄化率ηstartは低下するはずである。よって、このような停止期間中に生じる浄化率の低下分(以下、「吸着減少量」と記載)を加味して尿素水の品質を診断する。
【0052】
また、エンジン始動直後はSCR触媒13の暖機運転が必要であり、その触媒暖機が終了するまでは尿素水添加弁15からの尿素水添加は停止されている。そのため、エンジン始動時(燃焼開始時)にSCR触媒13に吸着されているアンモニアは、触媒暖機期間中におけるNOx浄化に使用されるため減少していく(図4中のt2〜t3参照)。したがって、停止期間中に尿素水の品質が変化していなかったとしても、触媒暖機期間に使用した分、停止時浄化率に比べて始動時(触媒暖機終了時)の浄化率は低下するはずである。よって、このような触媒暖機期間中に生じる浄化率の低下分(以下、「暖機時使用量」と記載)を加味して尿素水の品質を診断する。
【0053】
以下、上述の如く尿素水の品質を診断するための処理について、図2及び図3のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
まず、エンジン停止時の浄化率を算出する処理(停止時浄化率算出処理)について説明する。図2は、停止時浄化率算出処理の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、ECU40が有するマイコンによりエンジン運転中に所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0055】
図2において、まずステップS11(ハード異常判定手段)では、排気浄化システムのハード系が正常であるか否かを判定する。例えば、尿素水添加弁15、上流側NOxセンサ16、下流側NOxセンサ17、尿素水ポンプ23等のシステム構成部品に対して、断線や短絡等の異常判定を実施する。ハード系に異常有りと判定されれば、続くステップS12において、ハード系に異常が有る旨を車両運転者に報知すべく、例えば表示パネル33(図1参照)にて警告表示や警告音発生を行い、図2の処理を終了する。
【0056】
一方、ステップS11にてハード系に異常が無く正常と判定されれば、続くステップS13において、現時点でのエンジン運転状態が触媒暖機が完了した状態であるか否かを判定する。なお、燃焼室での燃焼を開始した後、SCR触媒13の温度が所定温度に達した時点を触媒暖機完了時点とする。
【0057】
触媒暖機完了状態でないと判定されれば(S13:NO)図2の処理を終了し、触媒暖機完了状態であると判定されれば(S13:YES)、続くステップS14(浄化率算出手段)において、上流側NOxセンサ16及び下流側NOxセンサ17の検出値に基づき現時点での浄化率ηlastを算出する。この算出結果は逐次記憶更新されるので、エンジン停止時点(図4中のt1時点)で記憶されている浄化率ηlastがエンジン停止時の浄化率に相当することとなる。
【0058】
ここで言う「浄化率」について説明すると、SCR触媒13に流入したNOxの量(NOx流入量)とSCR触媒13から流出したNOxの量(NOx流出量)との差分をNOx浄化量とした場合において、NOx流入量に対する浄化量の割合を「浄化率」としている。そして、NOx流入量については上流側NOxセンサ16の検出値に基づき算出し、NOx流出量については下流側NOxセンサ17の検出値に基づき算出する。
【0059】
なお、「エンジン停止時」とは、例えば内燃機関が実際に停止した時点又は停止されることが推測された時点とし、具体的には、イグニッションスイッチのオンからオフへの切替時、又はエンジン回転速度がゼロもしくはその近傍になった時点とする。後述する図4の例では、エンジン回転速度がゼロとなった時点t1をエンジン停止時としている。
【0060】
続くステップS15(吸着量取得手段)では、エンジンの運転履歴のうちNH3吸着量と相関のある履歴情報(運転履歴情報)を取得する。取得した情報は逐次記憶更新されるので、エンジン停止時点で記憶されている情報がエンジン停止時の運転履歴情報に相当することとなる。運転履歴情報の具体例としては、尿素水の添加量履歴、SCR触媒13からのNOx流出量履歴、及びSCR触媒13の温度等が挙げられる。
【0061】
次に、尿素水の品質を診断する処理(尿素水品質診断処理)について図3を用いて説明する。図3は、尿素水品質診断処理の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、ECU40(品質診断装置)が有するマイコンにより実行され、触媒暖機が完了した直後においてのみ、その実行を開始する。例えば、触媒暖機が完了したことをトリガとして図3の処理を1回だけ実施してもよいし、触媒暖機完了から所定時間が経過するまでの期間を「触媒暖機完了の直後」として図3の処理を繰り返し実行してもよい。 図3において、まずステップS21(ハード異常判定手段)では、排気浄化システムのハード系が正常であるか否かを判定する。例えば、尿素水添加弁15、上流側NOxセンサ16、下流側NOxセンサ17、尿素水ポンプ23等のシステム構成部品に対して、断線や短絡等の異常判定を実施する。ハード系に異常有りと判定されれば、続くステップS22において、ハード系に異常が有る旨を車両運転者に報知すべく、例えば表示パネル33(図1参照)にて警告表示や警告音発生を行い、図3の処理を終了する。
【0062】
一方、ステップS21にてハード系に異常が無く正常と判定されれば、続くステップS23(吸着減少量取得手段)において、エンジンの停止期間中にSCR触媒13から放出されていくアンモニア放出量(NH3吸着の減少量)と相関のある情報(吸着減少量情報)として、前回エンジン停止時から今回エンジン始動時までの停止期間長さ、及びその停止期間における外気温度の履歴を取得する。
【0063】
続くステップS24では、ステップS23で取得した停止期間長さ及び外気温度履歴に基づき、先述した吸着減少量を算出する。ちなみに、停止期間が長く外気温度が高いほど、吸着減少量は多くなるよう算出される。
【0064】
続くステップS25(使用量算出手段)では、触媒暖機期間における上流側NOxセンサ16及び下流側NOxセンサ17の検出履歴に基づき、先述した暖機時使用量を算出する。例えば、触媒暖機期間の長さ、触媒暖機期間中のエンジン回転速度及びエンジン負荷等に基づき暖機時使用量を算出する。
【0065】
続くステップS26では、エンジン停止期間中に尿素水の品質変化がなく正常であると仮定した場合における、エンジン始動時点(厳密にはエンジン始動の直後t3)での浄化率の推定値(推定浄化率ηest)を算出する。この算出では、ステップS14で算出した停止時浄化率ηlast、ステップS24で算出した吸着減少量、ステップS25で算出した暖機時使用量、及びステップS15で取得した運転履歴情報に基づき推定浄化率ηestを算出する。具体的には、先ず、運転履歴情報に基づき停止時浄化率ηlastを補正する。次に、補正された停止時浄化率ηlastから、吸着減少量に相当する浄化率の減少分、及び暖機時使用量に相当する浄化率の減少分を減算し、その減算結果を推定浄化率ηestとする。
【0066】
続くステップS27(浄化率算出手段)では、上流側NOxセンサ16及び下流側NOxセンサ17の検出値に基づき、現時点での浄化率、つまり始動直後のt3時点における始動時浄化率ηstartを算出する。具体的には、ステップS14での停止時浄化率ηlastの算出と同様にして、NOx流入量に対する浄化量の割合を浄化率として算出する。そして、NOx流入量については上流側NOxセンサ16の検出値に基づき算出し、NOx流出量については下流側NOxセンサ17の検出値に基づき算出する。
【0067】
続くステップS28,S32では、ステップS27で算出した始動時浄化率ηstartと、ステップS26で算出した推定浄化率ηestとを比較して、これらの浄化率の乖離度が予め設定した所定値αよりも大きいか否かを判定するとともに、推定浄化率ηestに対する始動時浄化率ηstartの乖離が、浄化率の低下側及び上昇側のいずれであるかを判定する。すなわち、ステップS28(診断手段)では、始動時浄化率ηstartが推定浄化率ηestに対して所定値αを超えて浄化率低下側に乖離しているか否かを判定する。また、ステップS32(診断手段)では、始動時浄化率ηstartが推定浄化率ηestに対して所定値αを超えて浄化率上昇側に乖離しているか否かを判定する。
【0068】
図4は、低下側に乖離していると判定される場合の浄化率変化の一例であり、図5は、上昇側に乖離していると判定される場合の浄化率変化の一例である。図中の実線は実際のNOx浄化率の推移を示す。そして、前回運転の停止時点t1での実線の値が、ステップS14で算出される停止時浄化率ηlastに相当し、今回運転の始動直後の時点t3での実線の値が、ステップ25で算出される始動時浄化率ηstartに相当する。また、図中の点線は、停止期間中に尿素水の品質が変化しなかった場合における浄化率、つまり推定浄化率ηestの推移を示す。
【0069】
低下側に乖離していると判定した場合には(S28:YES)、続くステップS29にて尿素水濃度が異常に低下している低濃度異常と診断し、低濃度異常である旨を車両運転者に警告報知する。また、上昇側に乖離していると判定した場合には(S32:YES)、続くステップS33にて尿素水濃度が異常に上昇している高濃度異常と診断し、高濃度異常である旨を車両運転者に警告報知する。これらの警告報知は、例えば表示パネル33(図1参照)にて警告表示や警告音により行う。また、いずれの側にも乖離していないと判定した場合には(S28:NO,S32:NO)、尿素水の品質は正常であると診断して図3の処理を終了する。
【0070】
ここで、ステップS29で低濃度異常と診断した場合には、その異常診断した回数をカウントアップしている。図3の処理はエンジン始動直後においてのみ実行される処理であるため、異常診断した回数は、1トリップ毎に1回ずつカウントアップされ得る。そして、続くステップS30では、低濃度異常との診断回数が所定回数N以上であるか否かを判定する。所定回数N以上であると判定された場合には(S30:YES)、続くステップS31にてSCR触媒13の浄化性能が劣化等により低下している異常状態であると判定し、触媒性能低下異常である旨を車両運転者に警告報知する。なお、触媒性能低下異常と判定された場合には、尿素水品質診断処理の実行フラグをオフに設定することで、尿素水品質の誤診断回避を図ることが望ましい。
【0071】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0072】
(1)尿素水の品質がエンジン停止期間中に変化したか否かを診断するにあたり、停止時浄化率ηlastに対する始動時浄化率ηstartの乖離度に基づいて、尿素水の品質を診断する。そして、この診断に用いる浄化率ηlast,ηstartは、尿素水添加量の制御に用いられているNOxセンサ16,17の検出値を利用して算出できるので、特許文献1等に記載の診断専用の濃度センサを不要にしつつ尿素水の品質を診断できる。
【0073】
(2)エンジン停止前後の浄化率の乖離度を算出するにあたり、停止時浄化率ηlastの値を乖離度算出にそのまま用いるのではなく、停止時浄化率ηlastから吸着減少量に相当する浄化率の減少分、及び暖機時使用量に相当する浄化率の減少分を減算し、その減算により得られた値(推定浄化率ηest)を乖離度算出に用いる。そのため、エンジン停止期間中にNH3吸着量が減少した分と、NH3吸着量のうち触媒暖機期間中にNOx浄化に使用された分とを加味して尿素水の品質が診断されるので、その診断精度を向上できる。
【0074】
(3)エンジン停止時におけるNH3吸着量に影響を及ぼす運転履歴情報、つまり尿素水の添加量履歴、SCR触媒13からのNOx流出量履歴、及びSCR触媒13の温度に応じて、前記乖離度算出に用いる停止時浄化率ηlastの値を補正するので、尿素水の品質診断の精度を向上できる。
【0075】
(4)尿素水添加弁15、上流側NOxセンサ16、下流側NOxセンサ17、尿素水ポンプ23等の排気浄化システムのハード系に異常が無いことを条件として、尿素水品質診断処理を実行するので、例えば異常状態の下流側NOxセンサ17の検出値に基づき浄化率を算出することを回避でき、ひいては尿素水の品質を誤って診断することを回避できる。
【0076】
(5)低濃度異常との診断回数が所定回数N以上になると、その場合にはSCR触媒13の浄化性能が低下している異常状態であると判定する。よって、尿素水品質の診断結果を利用して、SCR触媒13の異常状態を検知することができる。
【0077】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
・上述したステップS14,S27では、NOxセンサ16,17の検出値に基づき浄化率を算出しているが、NOxセンサ16,17の検出値及び尿素水の添加量に基づきNH3吸着量を算出し、エンジン停止前後のNH3吸着量を比較することで尿素水の品質を診断するようにしてもよい。
【0079】
・上述したステップS14,S27では、浄化率の算出に用いるNOx流入量を、上流側NOxセンサ16の検出値に基づき算出しているが、エンジン回転速度、エンジン負荷、燃料噴射量、EGR率、加給圧等のエンジン運転状態に基づき算出してもよい。この場合には、上流側NOxセンサ16を不要にできる。
【0080】
・上記実施形態では、SCR触媒13の温度が所定温度に達した触媒暖機完了時点を「始動時」として、その時点での浄化率をステップS26,S27にて推定、算出しているが、触媒暖機完了時点での浄化率を推定、算出することに替え、触媒暖機が完了してから所定時間が経過した時点での浄化率を推定、算出するようにしてもよいし、尿素水の添加を開始した時点での浄化率を推定、算出するようにしてもよい。
【0081】
・上述したステップS28,S32では、停止時浄化率ηlast(正確には停止時浄化率ηlastを用いて算出した推定浄化率ηest)からの始動時浄化率ηstartの乖離度を、推定浄化率ηestから始動時浄化率ηstartを差し引いた値としているが、停止時浄化率ηlast又は停止時浄化率ηlastを用いて算出した推定浄化率ηestに対する、始動時浄化率ηstartの比率としてもよい。
【0082】
・車載ディーゼルエンジン用の尿素SCRシステムとして実用化する以外に、例えばガソリンエンジン、特にリーンバーンエンジン用の尿素SCRシステムとして実用化することも可能である。また、尿素水以外の還元剤を用いる排気浄化システムにおいても本発明を同様に適用することが可能である。例えば、還元剤として、アンモニア含有の水溶液を用いることが考えられる。
【0083】
・上記実施形態では、前記乖離度に基づいて、尿素水の濃度異常を診断することに加えSCR触媒13の異常を診断しているが、尿素水の濃度異常診断及びSCR触媒13の異常診断のいずれかのみを診断するようにしてもよい。
【0084】
・排気浄化システムの異常のうち、尿素水の品質、SCR触媒13の劣化、及びステップS11,S21で判定されるハード異常の他の異常についても、前記乖離度に基づけば簡素なハード構成で診断できる。例えば、尿素水の濃度を検出する濃度センサを設け、その濃度センサにより還元剤の濃度(品質)が正常である旨が検出されているにも拘わらず、前記乖離度が所定量異常であれば、排気浄化システムのハード構成に異常があると診断できる。
【符号の説明】
【0085】
13…SCR触媒、15…尿素水添加弁(還元剤添加手段)、17…下流側NOxセンサ、40…ECU(品質診断装置)、S11,S21…ハード異常判定手段、S14,S27…浄化率算出手段、S15…吸着量取得手段、S23…吸着減少量取得手段、S25…使用量算出手段、S28,S32…診断手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられて還元剤を添加する還元剤添加手段と、添加された還元剤を用いて排気中のNOxを浄化する触媒と、を備える排気浄化システムに適用され、
NOxの浄化率を算出する浄化率算出手段と、
前記浄化率算出手段により算出された、前記内燃機関の前回停止時の浄化率に対する、前記内燃機関の今回始動時の浄化率の乖離度に基づいて、前記排気浄化システムの異常有無を診断する診断手段と、
を備えることを特徴とする排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項2】
前記診断手段は、前回停止時の浄化率に対する今回始動時の浄化率が低下側へ所定量以上乖離している場合に、還元剤の還元剤濃度が低下している低濃度異常と診断することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項3】
前記診断手段は、前回停止時の浄化率に対する今回始動時の浄化率が上昇側へ所定量以上乖離している場合に、還元剤の還元剤濃度が上昇している高濃度異常と診断することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項4】
前記触媒で吸着されている還元剤が前記内燃機関の停止期間中に減少した量と相関のある情報を吸着減少量情報として取得する吸着減少量取得手段を備え、
前記診断手段は、前記乖離度に加え前記吸着減少量情報に基づき、排気浄化システムの異常を診断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項5】
前記吸着減少量情報には、前記内燃機関の停止期間長さ、及び前記停止期間における外気温度の少なくとも1つが含まれていることを特徴とする請求項4に記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項6】
前記浄化率算出手段は、前記触媒の温度が所定温度に達して触媒暖機期間が終了した時点での浄化率を、始動時の浄化率として算出し、
前記触媒に吸着されていた還元剤が前記触媒暖機期間中にNOx浄化に使用された量を、暖機時使用量として算出する使用量算出手段を備え、
前記診断手段は、前記乖離度に加え前記暖機時使用量に基づき、排気浄化システムの異常を診断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項7】
前記内燃機関の運転履歴のうち前回停止時点における還元剤吸着量と相関のある履歴情報を、運転履歴情報として取得する吸着量取得手段を備え、
前記診断手段は、前記乖離度に加え前記運転履歴情報に基づき、排気浄化システムの異常を診断することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項8】
前記運転履歴情報には、前回停止時までの還元剤の添加量履歴、前回停止時までの前記触媒からのNOx流出量履歴、及び前回停止時点における前記触媒の温度の少なくとも1つが含まれていることを特徴とする請求項7に記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項9】
前記排気浄化システムは、前記触媒から流出したNOxの量を検出するNOxセンサと、前記NOxセンサにより検出されたNOx量に基づき前記還元剤添加手段による還元剤添加量を制御する手段と、を備えており、
前記NOxセンサ及び前記還元剤添加手段の少なくとも1つについて異常の有無を判定するハード異常判定手段を備え、
前記診断手段は、前記ハード異常判定手段により異常が発生していないと判定されていることを条件として、還元剤が品質異常であるとの診断結果を出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項10】
前記乖離度が所定量以上であるとの診断結果が所定回数以上出力された場合には、前記触媒の浄化性能が低下している異常状態であると判定する触媒異常判定手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の排気浄化システムの異常診断装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の排気浄化システムの異常診断装置と、
前記還元剤添加手段、前記触媒、及び前記触媒から流出したNOxの量を検出するNOxセンサの少なくとも1つと、
を備えることを特徴とする排気浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−209771(P2010−209771A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55860(P2009−55860)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】