説明

排気浄化装置の温度制御装置

【課題】排気浄化装置の温度制御をエンジン制御とは独立して行うことができる温度制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン100からの排気を浄化する触媒110の温度を制御する温度制御装置であって、エンジン100と触媒110との間の排気経路130上に設けられ、排気熱を回収して、触媒110に流入する排気の温度を低下させるヒートパイプ式の排気熱回収器10と、排気温度を上昇させるための加熱手段20と、触媒温度を検出する触媒温度センサ30と、触媒温度に基づいて排気熱回収器10及び加熱手段20を作動制御する制御ユニット40とを有し、排気熱回収器10は、作動/停止の切替えが排気経路130を切り替えることなく可能であり、制御ユニット40は、触媒温度が閾値温度θ1以下のときには加熱手段20を作動させ、触媒温度が閾値温度θ2以上のときには排気熱回収器10を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置の温度を制御する温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒の温度を制御可能な内燃機関の排気浄化装置が開示されている。この排気浄化装置は、エンジンの下流側で互いに分岐して再び合流する主排気通路及び副排気通路を有している。主排気通路には主排気制御弁が設けられており、副排気通路には副排気制御弁が設けられている。副排気通路には、排気ガスを冷却する空冷式冷却装置が設けられている。主排気通路及び副排気通路の合流部よりも下流側には、触媒が設けられている。
【0003】
エンジン起動直後の暖機運転時には、エンジンの燃焼室内に副燃料が追加噴射され、かつ主排気制御弁がほぼ全閉されるとともに副排気制御弁が全閉されるようになっている。これにより、触媒に流入する排気ガス温をかなり高くできるため、触媒の温度を迅速に上昇させることができる。
【0004】
一方、触媒の過熱時には、主排気制御弁が全閉され、副排気制御弁が全開される。これにより、全排気ガスが副排気通路を流通して冷却装置で冷却される。したがって、触媒に流入する排気ガス温が低下するため、触媒の温度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−20733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の排気浄化装置では、暖機運転時において、副燃料の追加噴射等のエンジン側の制御が必要となる。また、触媒過熱時においても、各制御弁の開閉に伴って排気通路の圧力損失(圧損)が大きく変動するため、エンジン側の制御が必要となる。したがって、触媒の温度制御をエンジン制御から独立して行うことができないため、制御系が複雑化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、排気浄化装置の温度制御をエンジン制御とは独立して行うことができる排気浄化装置の温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明は、エンジン(100)からの排気を浄化する排気浄化装置(110)の装置温度を制御する排気浄化装置の温度制御装置であって、エンジン(100)と排気浄化装置(110)との間の排気経路(130)上に設けられ、排気熱を回収して、排気浄化装置(110)に流入する排気の排気温度を低下させるヒートパイプ式の排気熱回収器(10)と、排気温度を上昇させるための加熱手段(20)と、装置温度又は排気温度を検出する温度検出手段(30)と、装置温度又は排気温度に基づいて排気熱回収器(10)及び加熱手段(20)を作動制御する制御手段(40)とを有し、排気熱回収器(10)は、少なくとも作動/停止の切替えが排気経路(130)を切り替えることなく可能であることを特徴とする排気浄化装置の温度制御装置である。
【0010】
これにより、排気熱回収器(10)及び加熱手段(20)を作動制御することによって排気浄化装置(110)に流入する排気の温度を調節できる。排気熱回収器(10)の作動/停止の切替えは排気経路(130)を切り替えることなく可能であるため、排気熱回収器(10)の作動/停止に伴う排気経路(130)での圧損の変動はほとんど生じない。したがって、排気浄化装置(110)の温度制御をエンジン制御とは独立して行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、排気浄化装置は、触媒作用により排気を浄化する触媒(110)を有しており、制御手段(40)は、装置温度又は排気温度が第1閾値温度(θ1)以下のときには加熱手段(20)を作動させ、装置温度又は排気温度が第2閾値温度(θ2)以上のときには排気熱回収器(10)を作動させることを特徴としている。
【0012】
これにより、装置温度又は排気温度が低温のときには、加熱手段(20)を作動させることによって、触媒(110)に流入する排気の温度上昇を促進することができるため、触媒(110)の温度を迅速に上昇させることができる。
【0013】
一方、装置温度又は排気温度が高温のときには、排気熱回収器(10)を作動させて排気熱を回収することによって、触媒(110)に流入する排気の温度を低下させることができるため、触媒(110)の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、排気浄化装置は、排気に含まれる粒子状物質を捕集するDPF(150)を有しており、制御手段(40)は、DPF(150)の再生が必要と判断し、かつ装置温度又は排気温度が第3閾値温度(θ4)未満である場合には、加熱手段(20)を作動させることを特徴としている。
【0015】
これにより、装置温度又は排気温度が比較的低い場合であっても、加熱手段(20)を作動させることによって、DPF(150)に流入する排気の温度を上昇させることができる。このため、DPF(150)の温度を再生温度以上に上昇させることができ、DPF(150)を再生することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、加熱手段(20)は、燃料の燃焼熱により排気温度を上昇させる燃焼器(21)を有していることを特徴としている。
【0017】
燃焼熱を用いることによって排気温度をより迅速に上昇させることができるため、触媒(110)の温度を迅速に上昇させることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、燃焼器(21)は、排気経路(130)外に設けられており、燃焼器(21)の燃焼ガスを排出する燃焼ガス経路(27)は、触媒(110)よりも上流側で排気経路(130)に合流していることを特徴としている。
【0019】
これにより、エンジン(100)の排気と燃焼ガスとが触媒(110)よりも上流側で混合されるため、触媒(110)に流入する排気の温度を上昇させることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、燃焼ガス経路(27)は、排気熱回収器(10)よりも下流側で排気経路(130)に合流していることを特徴としている。
【0021】
これにより、燃焼器(21)と触媒(110)との間の経路長を短縮できるとともにその間の熱容量を低減できる。したがって、触媒(110)を迅速に加熱することができ、燃費上の損失も低減することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、燃焼ガス経路(27)は、排気熱回収器(10)よりも上流側で排気経路(130)に合流していることを特徴としている。
【0023】
これにより、排気熱回収器(10)を通過する排気の温度を早期に上昇させることができ、排気熱の回収を早期に行うことができる。また、排気熱回収器(10)よりも上流側で排気を加熱することができるため、排気熱回収器(10)での熱回収量を増加させることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、燃焼器(21)は、触媒(110)よりも上流側の排気経路(130)上に設けられていることを特徴としている。
【0025】
これにより、燃焼器(21)の燃焼熱によって排気経路(130)の排気が直接的に加熱され、触媒(110)に流入する排気の温度を上昇させることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、燃焼器(21)は、排気熱回収器(10)よりも下流側に設けられていることを特徴としている。
【0027】
これにより、燃焼器(21)と触媒(110)との間の経路長を短縮できるとともにその間の熱容量を低減できる。したがって、触媒(110)を迅速に加熱することができ、燃費上の損失も低減することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、燃焼器(21)は、排気熱回収器(10)よりも上流側に設けられていることを特徴としている。
【0029】
これにより、排気熱回収器(10)を通過する排気の温度を早期に上昇させることができ、排気熱の回収を早期に行うことができる。また、排気熱回収器(10)よりも上流側で排気を加熱することができるため、排気熱回収器(10)での熱回収量を増加させることができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、燃焼器(21)に燃焼用の空気を供給する吸気経路(22、29)をさらに有していることを特徴としている。
【0031】
これにより、燃焼器(21)に新鮮な空気を供給することができるため、燃焼器(21)での燃焼効率低下や不完全燃焼を防止することができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、加熱手段(20)は、燃焼器(21)と連動して燃焼器(21)側に向かう空気流れを吸気経路(22、29)内に生成する送風手段(24)と、燃焼器(21)と連動して吸気経路(22、29)を開閉する開閉手段(23)とを有していることを特徴としている。
【0033】
これにより、燃焼器(21)の作動中には、送風手段(24)によって燃焼ガス経路(27)内に排気経路(130)に向かう空気流れが生成されるため、排気経路(130)内の排気と燃焼ガスとを確実に混合させることができる。一方、燃焼器(21)の停止中には、開閉手段(23)を閉じることにより、排気経路(130)内の排気が燃焼ガス経路(27)及び吸気経路(22)を逆流することを防止することができる。
【0034】
請求項13に記載の発明のように、吸気経路(22)は、エンジン(100)の吸気経路(120)とは独立して設けられていてもよい。
【0035】
請求項14に記載の発明は、吸気経路(29)は、エンジン(100)の吸気経路(120)から分岐して設けられていることを特徴としている。これにより、構造の簡素化及び軽量化が可能になる。
【0036】
請求項15に記載の発明は、エンジン(100)は、リーン状態での燃焼が可能であり、燃焼器(21)は、エンジン(100)からの排気に含まれる残存酸素を用いて燃料を燃焼させることを特徴としている。
【0037】
これにより、燃焼器(21)の吸気用の吸気経路を省略できるため、構造の簡素化及び軽量化が可能になる。
【0038】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係の一例を示している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】第1実施形態における温度制御装置の制御ブロックを示す図である。
【図3】第1実施形態における温度制御装置の作動状態及び触媒温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【図4】第1実施形態の変形例における温度制御装置の構成の一部を模式的に示す図である。
【図5】第2実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図6】第3実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】第3実施形態の変形例における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図8】第4実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図9】第5実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】第6実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図11】第7実施形態における温度制御装置の構成を模式的に示す図である。
【図12】第7実施形態における温度制御装置の作動状態及びDPF温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本実施形態における排気浄化装置の温度制御装置1の構成を模式的に示している。図2は、本実施形態における温度制御装置1の概略の制御ブロックを示している。図1及び図2に示すように、温度制御装置1は、走行用の駆動源としてのエンジン100と、エンジン100に空気を供給する吸気経路120と、エンジン100からの排気を外部に排出する排気経路130と、排気経路130に設けられてエンジン100からの排気を触媒作用により後処理浄化する触媒(排気浄化装置)110とを備えた車両に搭載されている。吸気経路120には、空気を濾過して異物を除去するエアクリーナ140が設けられている。
【0041】
温度制御装置1は、排気熱を回収して熱移動させ、所定の加熱対象(例えば、エンジン冷却水)を加熱するヒートパイプ式の排気熱回収器10を有している。排気熱回収器10の内部には、水、アルコール、フルオロカーボン又はクロロフルオロカーボン(フロン)等の作動流体が封入されている。
【0042】
排気熱回収器10は、蒸発部11と凝縮部12を有している。蒸発部11は、エンジン100と触媒110との間の排気経路130上に配置され、内部の作動流体と排気との熱交換により、作動流体を加熱して蒸発させるとともに排気を冷却するようになっている。凝縮部12は、排気経路130の外部に配置され、蒸発部11で蒸発した作動流体と加熱対象との熱交換により、作動流体を冷却して凝縮させるとともに加熱対象を加熱するようになっている。蒸発部11の上部と凝縮部12の上部との間は、蒸発部11で蒸発した作動流体を凝縮部12に流入させる蒸気管13を介して接続されている。また、凝縮部12の下部と蒸発部11の下部との間は、凝縮部12で凝縮した作動流体を蒸発部11に還流させる還流管14を介して接続されている。すなわち、排気熱回収器10はループ型のヒートパイプ装置であり、ヒートパイプ作用により排気熱を回収して加熱対象に移動させるようになっている。
【0043】
還流管14には、後述する制御ユニット40の制御により作動流体の還流量を調節可能なバルブ15が設けられている。バルブ15が閉状態になると、作動流体の蒸発部11への還流が阻止されるため、排気熱回収器10での排気熱の回収が停止する。バルブ15が開状態になると、作動流体が蒸発部11に還流し、排気熱回収器10での排気熱の回収が開始される。またバルブ15の開度が調節されることによって、排気熱の回収量が制御される。すなわち排気熱回収器10は、排気経路130を切り替えることなく、排気熱の回収(作動)/停止の切替え、及び排気熱の回収量の調節を行うことができる。排気経路130を流通する排気は、排気熱回収器10の蒸発部11を通過すると、熱回収量に応じて冷却されるようになっている。
【0044】
また温度制御装置1は、触媒110に流入する排気の温度を上昇させるための加熱手段20を有している。加熱手段20は、排気経路130外に配置されている。加熱手段20は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器21を備えている。燃焼器21は、例えば、スパークプラグやグロープラグ等の点火装置や、燃料を噴射させるインジェクタを有している。燃焼器21には、燃焼用の空気を供給する吸気経路22と、燃焼ガスを触媒110側に排出する燃焼ガス経路27とが接続されている。吸気経路22は、エンジン100の吸気経路120とは独立に設けられている。吸気経路22には、エンジン用のエアクリーナ140とは独立のエアクリーナ28が設けられている。燃焼ガス経路27の下流端は、排気熱回収器10よりも下流側かつ触媒110よりも上流側で排気経路130に合流している。これにより、燃焼器21で生成された燃焼ガスは、燃焼ガス経路27を通り、排気熱回収器10よりも下流側で排気経路130に流出する。排気経路130では、排気熱回収器10の蒸発部11を通過した排気と燃焼ガスとが混合され、より高温の排気となって触媒110に流入する。すなわち燃焼器21は、触媒110に流入する排気を間接的に加熱するようになっている。
【0045】
また加熱手段20は、エアクリーナ28よりも下流側の吸気経路22に設けられ、吸気経路22を開閉するダンパ(開閉手段)23と、ダンパ23よりも下流側の吸気経路22に設けられ、燃焼器21及び排気経路130側に向かう空気流れを吸気経路22内に生成するブロワ(送風手段)24と、燃料タンク25内の燃料を燃焼器21に供給する燃料ポンプ26とを有している。ダンパ23、ブロワ24及び燃料ポンプ26は、制御ユニット40の制御によって、燃焼器21と連動して作動するようになっている。
【0046】
触媒110には、触媒温度(装置温度)又は触媒直前の排気温度を検出して検出信号を制御ユニット40に出力する触媒温度センサ(温度検出手段)30が設けられている。
【0047】
制御ユニット(制御手段)40は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御ユニット40には、触媒温度センサ30を含む各種センサからの検出信号が入力されるようになっている。制御ユニット40は、これらの入力信号に基づいて、排気熱回収器10のバルブ15や、加熱手段20の燃焼器21、ダンパ23、ブロワ24及び燃料ポンプ26等の各種機器を作動制御する。例えば制御ユニット40は、図2に示すように、触媒温度又は触媒直前の排気温度を監視し、排気熱回収器10及び燃焼器21をフィードバック制御するようになっている。
【0048】
次に、本実施形態における温度制御装置1の作動について説明する。図3は、温度制御装置1の作動状態及び触媒温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。図3(a)は燃焼器21の作動状態を示し、図3(b)は排気熱回収器10の作動状態を示し、図3(c)は触媒温度を示している。図3(c)の実線は、本実施形態の温度制御装置1を用いた場合の触媒温度の変化を表し、図3(c)の破線は、比較例として、排気熱回収器10及び加熱手段20を備えない従来構成における触媒温度の変化を表している。温度θ1は、触媒110の活性化下限温度に基づき設定される第1閾値温度であり、温度θ2は、触媒110の耐熱上限温度に基づき設定される第2閾値温度である(θ1<θ2)。初期状態では、排気熱回収器10、燃焼器21、ブロワ24及び燃料ポンプ26は停止しており、ダンパ23は全閉状態にある。また触媒温度は、第1閾値温度θ1よりも低い温度θ0である。
【0049】
図3(a)〜(c)に示すように、時間0にエンジン100が始動すると、制御ユニット40は、燃焼器21を同時に作動させる。燃焼器21の能力が可変の場合には、例えば最大能力に設定される。このとき、燃焼器21と連動して、ブロワ24及び燃料ポンプ26が例えば最大能力で作動し、ダンパ23が全開となる。ここで、制御ユニット40がエンジン100の始動を事前に予測できる場合、エンジン100の始動よりも少し前に燃焼器21を作動開始させるようにしてもよい。
【0050】
ブロワ24によって生成される空気流れにより、燃焼器21には吸気経路22を介して空気が吸入される。燃焼器21は、吸入した空気を燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成する。生成された燃焼ガスは、ブロワ24によって生成される空気流れにより、燃焼ガス経路27を排気経路130側に向かって流れる。燃焼ガス経路27を流通する燃焼ガスは、排気熱回収器10よりも下流側でかつ触媒110よりも上流側で排気経路130に流出し、エンジン100からの排気と混合される。これにより、触媒110に流入する排気の温度上昇が促進され、それに伴い触媒温度の上昇も促進される。従来構成では触媒温度が第1閾値温度θ1に到達するのが時間T2であるのに対し、本実施形態では時間T2よりも早い時間T1に触媒温度が第1閾値温度θ1に到達するため、触媒110の暖機時間を短縮できる。したがって本実施形態では、触媒110を早期に活性化させることができるため、触媒110による排気の浄化を早期に開始することができる。
【0051】
制御ユニット40は、触媒温度が第1閾値温度θ1を超えると、触媒110の暖機が終了したと判断して燃焼器21の作動を停止させる。このとき、燃焼器21と連動して、ブロワ24及び燃料ポンプ26が停止し、ダンパ23が全閉となる。
【0052】
また制御ユニット40は、触媒温度が第1閾値温度θ1を超えた時間T1以降、触媒温度と加熱対象(例えばエンジン冷却水)の温度に基づいて排気熱回収器10の作動制御を行う。すなわち制御ユニット40は、触媒温度が第1閾値温度θ1以上かつ第2閾値温度θ2以下の範囲(図3(c)における触媒温調範囲)において、加熱対象の温度が低いとき(時間T1、T22)には、バルブ15を開弁して排気熱回収器10を作動させる。バルブ15が開弁されると、凝縮部12内の作動流体が還流管14を介して蒸発部11に還流する。蒸発部11では、作動流体が排気熱により加熱されて沸騰蒸発する。蒸発した作動流体は、蒸気管13を介して凝縮部12に流入する。凝縮部12では、作動流体と加熱対象との熱交換が行われ、作動流体が凝縮するとともに加熱対象が加熱される。凝縮した作動流体は、再び還流管14を介して蒸発部11に還流する。このように、ヒートパイプ作用により排気熱が回収されて加熱対象に移動し、加熱対象が加熱される。制御ユニット40は、加熱対象の温度に基づいてバルブ15の開度を制御し、熱回収量を調節する。蒸発部11を通過した排気は、熱回収量に応じて冷却されることになる。
【0053】
加熱対象が十分に加熱されて所定温度を超えたとき(時間T21、T23)には、制御ユニット40はバルブ15を閉弁する。これにより、凝縮部12から蒸発部11への作動流体の還流が停止し、排気熱回収器10の作動が停止される。
【0054】
図3では図示していないが、制御ユニット40は、排気熱の回収によって排気温度が低下し、触媒温度がθ1以下にまで低下したときには、加熱対象の温度に関わらずバルブ15を閉弁し、排気熱回収器10の作動を停止させる。これにより、排気熱の回収が停止するため、触媒110に流入する排気の温度が上昇し、それに伴い触媒温度も上昇する。
【0055】
排気熱回収器10が停止状態であっても、負荷の低下等によって排気温度が低下し、触媒温度がθ1以下にまで低下する場合がある。この場合制御ユニット40は、燃焼器21、ブロワ24及び燃料ポンプ26を作動させ、ダンパ23を開状態にする。例えば制御ユニット40は、燃焼器21、ブロワ24及び燃料ポンプ26の能力を触媒温度に基づいて制御し、触媒温度が低いほど高い能力に設定する。制御ユニット40は、触媒温度が再びθ1を上回ると、燃焼器21、ブロワ24及び燃料ポンプ26を停止させ、ダンパ23を閉状態にする。
【0056】
また制御ユニット40は、触媒温度が上昇して第2閾値温度θ2以上になったときには(時間T3)、加熱対象の温度に関わらずバルブ15を開弁し、排気熱回収器10を作動させる。バルブ15の開度は触媒温度に基づいて調節され、触媒温度が高いほど高開度に設定される。これにより、排気熱回収器10によって排気熱が回収されるため、触媒110に流入する排気の温度上昇が抑制され、それに伴い触媒温度の上昇も抑制される。すなわち、従来構成では、高負荷時において触媒温度が温度θ3(θ3>θ2)まで上昇し、触媒110の熱劣化が生じてしまうおそれがあったのに対し、本実施形態では、高負荷時における触媒温度を従来よりも低下させることができ、触媒110の熱劣化を抑制できる。
【0057】
以上説明したように、制御ユニット40は、触媒110に流入する排気の温度を上昇させる燃焼器21と、触媒110に流入する排気の温度を低下させる排気熱回収器10とを、触媒温度に基づいてフィードバック制御するようになっている。制御ユニット40は、触媒温度が第1閾値温度θ1以下の場合には燃焼器21を作動させ、触媒温度が第2閾値温度θ2以上の場合には排気熱回収器10を作動させることによって、触媒110の温度調節を行っている。本実施形態では、加熱対象の温度に基づく排気熱回収器10の作動制御も行われているが、排気熱回収器10の作動に関しては触媒温度に基づく制御が優先されている。すなわち、加熱対象の温度が低温であっても触媒温度が低温(θ1以下)であれば排気熱回収器10が停止し、加熱対象の温度が高温であっても触媒温度が高温(θ2以上)であれば排気熱回収器10が作動する。
【0058】
本実施形態によれば、触媒温度が低温のときには、加熱手段20(燃焼器21)を作動させて燃焼ガスを排気と混合することによって、触媒110に流入する排気の温度を上昇させることができる。したがって、触媒温度を迅速に上昇させることができ、触媒110を早期に活性化させることができるため、外部に排出されるエンジン100の排気を早期に浄化することができる。一方、触媒温度が高温のときには、排気熱回収器10を作動させて排気熱を回収することによって、触媒110に流入する排気の温度を低下させることができる。したがって、触媒110の温度上昇を抑制することができ、触媒110の熱劣化を防止することができる。このように、加熱手段20及び排気熱回収器10を作動制御することにより、触媒110の温度制御を行うことができる。
【0059】
ヒートパイプ式の排気熱回収器10は、バルブ15の開閉によって、排気経路130を切り替えることなく作動/停止の切替え及び熱回収量の調節が可能であるため、排気経路130の圧損の変動は生じない。また燃焼器21も、排気経路130の圧損の変動を生じさせずに作動/停止の切替え及び加熱能力の調節が可能である。したがって、触媒110の温度制御をエンジン制御から独立して行うことができる。
【0060】
また本実施形態では、燃焼器21での燃料の燃焼熱を用いることにより排気温度を迅速に上昇させることができるため、触媒温度を迅速に上昇させることができる。
【0061】
さらに本実施形態では、燃焼ガス経路27が排気熱回収器10よりも下流側で排気経路130に合流しているため、燃焼器21と触媒110との間の経路長を短縮できるとともにその間の熱容量を低減できる。したがって、燃焼器21の作動に対する触媒温度の応答性が向上するため、触媒110を迅速に加熱することができ、燃費上の損失も低減することができる。
【0062】
また本実施形態では、吸気経路22が設けられているため、燃焼器21に新鮮な空気を供給することができる。したがって、排気中の残存酸素等に頼らずに十分な酸素が燃焼器21に供給されるので、燃焼器21での燃焼効率低下や不完全燃焼を防止することができる。
【0063】
さらに本実施形態では、燃焼器21の作動中には、ブロワ24によって吸気経路22及び燃焼ガス経路27内に排気経路130に向かう空気流れが生成されるため、排気経路130内の排気と燃焼ガスとを確実に混合させることができる。一方、燃焼器21の停止中には、ダンパ23により吸気経路22が閉塞されるようになっているため、排気経路130内の排気が燃焼ガス経路27及び吸気経路22を逆流することを防止することができる。
【0064】
また本実施形態では、排気を冷却する手段として排気熱回収器10が用いられているため、排気から回収した熱を利用して加熱対象を加熱することができ、排気熱を暖房等に有効に利用することができる。
【0065】
次に、本実施形態の温度制御装置の変形例について説明する。図4は、本変形例における温度制御装置の構成の一部を模式的に示している。図4に示すように本変形例では、燃焼器21が、排気熱回収器10よりも下流側で触媒110よりも上流側の排気経路130上に設けられている。燃焼器21には、図1に示した構成と同様に、エンジン100の吸気経路とは独立した吸気経路22が設けられている。燃焼器21は、吸気経路22を介して供給された空気を用いて燃焼ガスを生成するようになっている。これにより排気経路130では、排気熱回収器10の蒸発部11を通過した排気と燃焼ガスとが混合され、より高温の排気となって触媒110に流入する。その他の構成は、図1に示した構成と同様であるので説明を省略する。
【0066】
本変形例では、燃焼器21が排気経路130上に設けられているため、温度制御装置全体を小型化できるとともに設置性を向上させることができる。また、燃焼器21において排気熱を利用することができる。さらに、燃焼器21と触媒110との間の経路長をさらに短縮でき、その間の熱容量を低減できるため、燃焼ガスによって触媒110をより早期に加熱することができ、燃費上の損失も低減できる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5を用いて説明する。図5は、本実施形態における温度制御装置2の構成を模式的に示している。図5に示すように、本実施形態の温度制御装置2は、第1実施形態の温度制御装置1と比較して、吸気経路29が、エンジン100の吸気経路120から分岐していることを特徴としている。このため、エアクリーナ140は、エンジン100の吸気用と燃焼器21の吸気用とで共用されている。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、燃焼器21の吸気用のエアクリーナをエンジン100の吸気用のエアクリーナ140と独立して設ける必要がないため、構造の簡素化及び軽量化が可能になる。また、燃焼器21には吸気経路29を介して新鮮な空気が供給されるため、燃焼器21での燃焼効率低下や不完全燃焼を防止することができる。
【0069】
本実施形態においても、図4に示した構成と同様に、燃焼器21を排気経路130上に設けてもよい。こうすることにより、温度制御装置2を小型化できるとともに設置性を向上させることができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6及び図7を用いて説明する。図6は、本実施形態における温度制御装置3の構成を模式的に示している。図6に示すように、本実施形態の温度制御装置3は、第1実施形態の温度制御装置1と比較して、燃焼ガス経路27が排気熱回収器10よりも上流側で排気経路130に合流している点に特徴を有している。すなわち、燃焼器21で生成された燃焼ガスは、排気熱回収器10よりも上流側で排気と混合され、高温の排気となって排気熱回収器10の蒸発部11を通過する。
【0071】
本実施形態によれば、燃焼ガス経路27を排気熱回収器10よりも上流側で排気経路130に合流させているため、蒸発部11を通過する排気の温度を早期に上昇させることができ、排気熱の回収を早期に行うことができる。これにより、加熱対象(エンジン冷却水)の温度上昇を促進させることができるため、エンジン100の暖機やエンジン冷却水を用いた暖房の立ち上がりを早めることができる。
【0072】
また本実施形態によれば、排気熱回収器10よりも上流側で排気を加熱できるため、燃焼器21及び排気熱回収器10の双方を作動させることにより、排気熱回収器10での熱回収量を増加させることができる。
【0073】
図7は、本実施形態の変形例における温度制御装置の構成を模式的に示している。図7に示すように、本変形例は、燃焼ガス経路27が第1経路51と第2経路52とに分岐している点に特徴を有している。第1経路51と第2経路52との分岐点には、燃焼ガス経路27を流通した排気が第1経路51及び第2経路52のいずれに流入するかを切り替える切替手段53が設けられている。切替手段53は、制御ユニット40(図7では図示せず)によって作動制御されるようになっている。第1経路51は排気熱回収器10よりも上流側で排気経路130に合流しており、第2経路52は排気熱回収器10よりも下流側かつ触媒110よりも上流側で排気経路130に合流している。
【0074】
例えば、エンジン100始動直後の暖機時には、触媒110の温度上昇促進が優先され、切替手段53は第2経路52側に切り替えられる。これにより、燃焼器21で生成された燃焼ガスは、燃焼ガス経路27及び第2経路52を通り、排気熱回収器10よりも下流側で排気と混合される。燃焼ガスと混合されて加熱された排気は、触媒110に流入して触媒110の昇温に寄与する。このように、燃焼ガス、及び燃焼ガスと混合されて加熱された排気は、排気熱回収器10を通らずに触媒110に流入する。したがって、燃焼ガス経路の熱容量を低減できるため、触媒温度を迅速に上昇させることができる。
【0075】
また例えば、触媒110の暖機が終了した後には、排気熱回収器10での熱回収が優先され、切替手段53は第1経路51側に切り替えられる。これにより、燃焼器21で生成された燃焼ガスは、燃焼ガス経路27及び第1経路51を通り、排気熱回収器10よりも上流側で排気と混合される。燃焼ガスと混合されて加熱された排気は、排気熱回収器10の蒸発部11を通過して熱回収される。このように、排気熱回収器10よりも上流側の排気を燃焼ガスとの混合により加熱できるため、熱回収を早期に行うことができるとともに、熱回収量を増加させることができる。
【0076】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8を用いて説明する。図8は、本実施形態における温度制御装置4の構成を模式的に示している。図8に示すように、本実施形態の温度制御装置4は、第2実施形態の温度制御装置2と比較して、燃焼ガス経路27が排気熱回収器10よりも上流側で排気経路130に合流している点に特徴を有している。すなわち、燃焼器21で生成された燃焼ガスは、排気熱回収器10よりも上流側で排気と混合され、高温の排気となって排気熱回収器10の蒸発部11を通過する。
【0077】
本実施形態によれば、燃焼ガス経路27を排気熱回収器10よりも上流側で排気経路130に合流させているため、蒸発部11を通過する排気の温度を早期に上昇させることができ、排気熱の回収を早期に行うことができる。これにより、加熱対象(エンジン冷却水)の温度上昇が促進されるため、エンジン100の暖機やエンジン冷却水を用いた暖房の立ち上がりを早めることができる。
【0078】
また本実施形態によれば、排気熱回収器10よりも上流側で排気を加熱できるため、排気熱回収器10での熱回収量を増加させることができる。
【0079】
本実施形態においても、図7に示した構成と同様に、燃焼ガス経路27を第1経路51と第2経路52とに分岐させ、燃焼ガスの経路を切替手段53によって切り替えるようにしてもよい。
【0080】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図9を用いて説明する。図9は、本実施形態における温度制御装置5の構成を模式的に示している。図9に示すように、本実施形態の温度制御装置5は、燃焼器21が排気熱回収器10よりも下流側の排気経路130上に設けられているとともに、燃焼器21には外部からの吸気を行っていない点に特徴を有している。温度制御装置5は、例えばリーン状態での燃焼が可能なエンジン100(例えばディーゼルエンジン)を備えた車両に搭載されている。燃焼器21は、リーン燃焼中のエンジン100の排気に含まれる残存酸素を用いて燃料を燃焼させ、燃焼熱によって排気を直接的に加熱するようになっている。
【0081】
本実施形態によれば、燃焼器21の吸気用の吸気経路及びエアクリーナ等を省略できるため、構造の簡素化及び軽量化が可能になる。また、燃焼器21が排気熱回収器10よりも下流側に設けられているため、燃焼ガス経路の熱容量を低減でき、触媒温度を迅速に上昇させることができる。
【0082】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における温度制御装置6の構成を模式的に示している。図10に示すように、本実施形態の温度制御装置6は、第5実施形態の温度制御装置5と比較して、燃焼器21が排気熱回収器10よりも上流側の排気経路130上に設けられている点に特徴を有している。
【0083】
本実施形態によれば、排気熱回収器10よりも上流側で排気を加熱できるため、蒸発部11を通過する排気の温度を早期に上昇させることができ、排気熱の回収を早期に行うことができる。また本実施形態によれば、排気熱回収器10よりも上流側で排気を加熱できるため、排気熱回収器10での熱回収量を増加させることができる。
【0084】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図11及び図12を用いて説明する。図11は、本実施形態における温度制御装置7の構成を模式的に示している。本実施形態の温度制御装置7は、ディーゼルエンジンを備えた車両に搭載されている。図11に示すように、本実施形態の温度制御装置7は、第1実施形態の温度制御装置1と比較すると、後処理により排気を浄化する排気浄化装置として、排気に含まれる粒子状物質を捕集するディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)150が設けられている点に特徴を有している。DPF150には、DPF温度(装置温度)又はDPF直前の排気温度を検出して検出信号を制御ユニット40に出力するDPF温度センサ(温度検出手段)31が設けられている。
【0085】
DPF150は、捕集した粒子状物質が内部に堆積すると機能低下が生じる。このため、DPF150は、定期的に所定の再生温度以上の温度に加熱する必要がある。DPF150を再生温度以上の温度に加熱すると、内部に堆積した粒子状物質が燃焼して除去され、DPF150が再生される。高負荷時にはDPF温度が自然に再生温度以上になる場合もあるが、DPF温度が再生温度まで上昇しない低負荷時等には、加熱手段等を用いた補助加熱が必要になる。DPF150の再生タイミングは、例えば、DPF150の圧損値や、前回再生されてからの経過時間などに基づいて、制御ユニット40により判断される。
【0086】
図12は、温度制御装置7の作動状態及びDPF温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。図12(a)は燃焼器21の作動状態を示し、図12(b)はDPF温度センサ31で検出されるDPF温度を示している。排気熱回収器10の作動状態については図示を省略している。温度θ4は、DPF150が燃焼再生される再生温度に基づき設定される第3閾値温度である(例えばθ1<θ4<θ2)。第3閾値温度θ4は、例えばDPF150の再生温度にほぼ等しく設定される。
【0087】
例えば時間T24において、制御ユニット40は、DPF150の圧損値等に基づいてDPF150の再生が必要と判断した場合、DPF温度と第3閾値温度θ4とを比較する。図12(b)に示すようにDPF温度が第3閾値温度θ4未満である場合には、制御ユニット40は燃焼器21を作動させ、DPF150に流入する排気の温度を上昇させる。これにより、DPF温度が再生温度以上に上昇し、DPF150が再生される。
【0088】
制御ユニット40は、例えば、DPF温度が第3閾値温度θ4以上に上昇してから所定時間経過したら(時間T25)、DPF150の再生が完了したと判断し、燃焼器21を停止させる。
【0089】
DPF150の再生が必要と判断された時間T24において、仮に、DPF温度が第3閾値温度θ4以上である場合には、制御ユニット40は燃焼器21を作動させる必要はない。これは、DPF温度が第3閾値温度θ4以上であれば、燃焼器21を特に作動させるまでもなくDPF150の燃焼再生が自然に行われるためである。
【0090】
本実施形態によれば、DPF温度が比較的低い場合であっても、燃焼器21を作動させることによって、DPF150に流入する排気温度を上昇させることができる。このため、DPF150の温度を再生温度以上に上昇させることができ、DPF150を確実に再生することができる。
【0091】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、触媒温度やDPF温度に基づいて排気熱回収器10及び加熱手段20を制御しているが、これらの温度に代えて、触媒110直前の排気温度等のように触媒温度と相関のある温度や、DPF150直前の排気温度等のようにDPF温度と相関のある温度を用いてもよい。
【0092】
また上記実施形態では、バルブ15の開度を制御することにより熱回収量を調節しているが、バルブ15の開閉のデューティ比を制御することにより熱回収量を調節してもよい。
【0093】
さらに上記実施形態では、排気浄化装置として触媒又はDPFを備えた車両を例に挙げたが、本発明の温度制御装置は、触媒及びDPFの両方を備えた車両にも適用できる。この場合、触媒の加熱及び冷却の制御と、DPFの加熱再生制御とを複合的に行うシステムとしてもよい。
【0094】
また上記実施形態では、排気熱回収器10で排気熱を熱移動させる加熱対象としてエンジン冷却水を例に挙げたが、エンジンオイルやATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)等を加熱対象としてもよい。
【0095】
さらに上記実施形態では、水冷式のエンジン100を備えた車両に搭載された温度制御装置を例に挙げたが、本発明の温度制御装置は、空冷式のエンジンを備えた車両や、あるいは車両以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1〜7 温度制御装置
10 排気熱回収器
20 加熱手段
21 燃焼器
22、29 吸気経路
23 ダンパ(開閉手段)
24 ブロワ(送風手段)
27 燃焼ガス経路
30 触媒温度センサ(温度検出手段)
31 DPF温度センサ(温度検出手段)
40 制御ユニット(制御手段)
100 エンジン
110 触媒(排気浄化装置)
120 吸気経路
130 排気経路
150 DPF(排気浄化装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(100)からの排気を浄化する排気浄化装置(110)の装置温度を制御する排気浄化装置の温度制御装置であって、
前記エンジン(100)と前記排気浄化装置(110)との間の排気経路(130)上に設けられ、排気熱を回収して、前記排気浄化装置(110)に流入する排気の排気温度を低下させるヒートパイプ式の排気熱回収器(10)と、
前記排気温度を上昇させるための加熱手段(20)と、
前記装置温度又は前記排気温度を検出する温度検出手段(30)と、
前記装置温度又は前記排気温度に基づいて前記排気熱回収器(10)及び前記加熱手段(20)を作動制御する制御手段(40)とを有し、
前記排気熱回収器(10)は、少なくとも作動/停止の切替えが前記排気経路(130)を切り替えることなく可能であることを特徴とする排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項2】
前記排気浄化装置は、触媒作用により排気を浄化する触媒(110)を有しており、
前記制御手段(40)は、前記装置温度又は前記排気温度が第1閾値温度(θ1)以下のときには前記加熱手段(20)を作動させ、前記装置温度又は前記排気温度が第2閾値温度(θ2)以上のときには前記排気熱回収器(10)を作動させることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項3】
前記排気浄化装置は、排気に含まれる粒子状物質を捕集するDPF(150)を有しており、
前記制御手段(40)は、前記DPF(150)の再生が必要と判断し、かつ前記装置温度又は前記排気温度が第3閾値温度(θ4)未満である場合には、前記加熱手段(20)を作動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項4】
前記加熱手段(20)は、燃料の燃焼熱により前記排気温度を上昇させる燃焼器(21)を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項5】
前記燃焼器(21)は、前記排気経路(130)外に設けられており、
前記燃焼器(21)の燃焼ガスを排出する燃焼ガス経路(27)は、前記触媒(110)よりも上流側で前記排気経路(130)に合流していることを特徴とする請求項4に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項6】
前記燃焼ガス経路(27)は、前記排気熱回収器(10)よりも下流側で前記排気経路(130)に合流していることを特徴とする請求項5に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項7】
前記燃焼ガス経路(27)は、前記排気熱回収器(10)よりも上流側で前記排気経路(130)に合流していることを特徴とする請求項5に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項8】
前記燃焼器(21)は、前記触媒(110)よりも上流側の前記排気経路(130)上に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項9】
前記燃焼器(21)は、前記排気熱回収器(10)よりも下流側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項10】
前記燃焼器(21)は、前記排気熱回収器(10)よりも上流側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項11】
前記燃焼器(21)に燃焼用の空気を供給する吸気経路(22、29)をさらに有していることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項12】
前記加熱手段(20)は、
前記燃焼器(21)と連動して前記燃焼器(21)側に向かう空気流れを前記吸気経路(22、29)内に生成する送風手段(24)と、
前記燃焼器(21)と連動して前記吸気経路(22、29)を開閉する開閉手段(23)とを有していることを特徴とする請求項11に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項13】
前記吸気経路(22)は、前記エンジン(100)の吸気経路(120)とは独立して設けられていることを特徴とする請求項11又は12に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項14】
前記吸気経路(29)は、前記エンジン(100)の吸気経路(120)から分岐して設けられていることを特徴とする請求項11又は12に記載の排気浄化装置の温度制御装置。
【請求項15】
前記エンジン(100)は、リーン状態での燃焼が可能であり、
前記燃焼器(21)は、前記エンジン(100)からの排気に含まれる残存酸素を用いて前記燃料を燃焼させることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の排気浄化装置の温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−180757(P2010−180757A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24242(P2009−24242)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】