説明

接合構造及びその製造方法

【課題】
Pbを含んだはんだに替わり高温環境下で高信頼接合を維持できる接合材料として、接合部が高温環境に耐え、高信頼な接合を維持できる接合構造を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、第1の部材5と第2の部材1の接合構造において、はんだ3とガラス4とによって、第1の部材5と第2の部材1を接合し、ガラス4がはんだ3を封止していることによって、導電性を確保するとともに、高温時にはんだ溶融による流出を抑制して、耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスとはんだを用いた接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接合形態としては、接続部にはんだが用いられている(例えば特許文献1参照)において知られている。特許文献1には、基板間をはんだで接合し、基板上に形成された導体層の保護と、基板の寿命を延ばすことを目的に、導体層および基板表面をガラスで覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−182238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、自動車のエンジンルーム内のように200℃以上の高温環境となる領域の基板と機能素子の導体層の電気的接合に用いる接合材料にはPbを含んだはんだが使われている。高温環境下で使用可能な接合材料として85%以上のPbを含んだSn−Pbはんだの代替技術が今のところないため、Pb等の有害性が懸念される物質を規制しているRoHS指令(Restriction of Hazardous Substances)で、Sn−Pbはんだを使うことが許可されている。しかし、今後は、Sn−Pbはんだも使用禁止になることが予想される。この場合の課題は、Sn−Pbはんだ以外に200℃以上の高温環境下で長期間、高信頼接合を維持できる接合材料が存在しないことである。そこで、Sn−Pbはんだに替わり高温環境下で高信頼接合を維持できる接合技術が求められている。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、接合部が高温環境に耐え、高信頼な接合を維持できる接合形態を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の部材と第2の部材とをはんだとガラスを用いて接合する。このときに、ガラスがはんだを封止するようにすることで、高温で溶融したはんだの流出をガラスで抑止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、はんだ接合部がガラスで被覆されている接合形態であるため、はんだの融点以上の高温環境ではんだが溶融しても、はんだが接合部の周囲へ流出することがないので、高温環境下でガラスで接合部の強度を保つことができ、高温環境下で使われる部材の接合が可能となる。
【0008】
また、本発明によれば、はんだ接合部がガラスで被覆されているため、耐候性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係わる機能素子を基板上に実装する前の状態を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる基本構造である機能素子を基板上に実装した状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる基本構造である機能素子を基板上に実装する前の状態を示す断面図であって、はんだ上に形成されたガラスの一部を除去している状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる基本構造である機能素子を基板上に実装する前の状態を示す断面図であって、機能素子の接合面側に形成された導体層の一部に凹凸形状の導体層が形成されている状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる第2の実施形態について示す図である。
【図6】本発明に係わる第2の実施形態について示す図である。
【図7】本発明に係わる第2の実施形態について示す図である。
【図8】本発明に係わる第2の実施形態について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係わる基板と基板および基板と機能素子を接合し、接合部がガラスで被覆されているような接合形態および、ガラスではんだを被覆することで作製される接合材料の製造方法について図1乃至図8を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明に係わる第1の実施の形態である200℃以上の高温環境下で使われるダイオードなどの機能素子1の接合について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0012】
図2は、本実施例にかかる接合構造の断面図である。基板5上に機能素子1が、はんだ3とガラス4によって接合されている。機能素子1に例えばSiCが主成分のパワー半導体であり、その主面には、導電層2、6が形成されている。基板5は、例えばSiCを主成分とする基板、メタルコア基板等の放熱性に優れる基板であり、その機能素子1側の主面には導体層7が形成されている。本実施例では、基板5と機能素子1とをはんだで接合することにより、基板5上の導体層7と機能素子1上の導体層2とを電気的に接続している。さらに接合部のはんだ3をガラス4で覆うことで、放熱性に優れ、使用環境が200℃以上の高温でも長期間の接合信頼性を維持できる。ガラス4も、基板1と機能素子1とを接合しており、さらにはんだ3を封止している。ガラスは、ガラスフリット、ガラスペーストなど、接合部材・封止部材と知られており、強固で耐熱性の高い接合が実現できることが知られている。しかしガラスは電気伝導性が低いので、導体として用いることはできない。本実施例では、はんだ3によって電気伝導性を担保し、はんだをガラス4により封止して接合することで、耐熱性を高めている。例えば、ガラス4としてはんだ3よりも融点の高いものを使用することにより、はんだ3が溶融しても、ガラスが封止していることで、はんだ3がすぐに流出することはなく、温度が低下すればはんだ3が凝固して元通りになる。従って、はんだ3とガラス4の接合によって、耐久性と耐熱性を高めることができる。
【0013】
なお、接続する対象としては、本実施例では基板5と機能素子1としているがこれに限定されるものではなく、二つ以上の部材を接合するものならば他の部材でも適用可能である。機能素子1としては、パワー半導体に限定されるものではなく、さまざまな種類の機能素子が適用可能であるが、パワー半導体など高温になりやすい機能素子の場合には特に高耐熱性の効果が発揮できる。また、パワー半導体としてはSiCに限定されるものではなく、GaNなどにも適用可能である。また、はんだにはPbを含まないはんだを用い、ガラスにはPbを含まないものを用いることで、RoHS指令でSn−Pbはんだ規制後も使用を制限されることはない。機能素子1であるパワー半導体に外部から送電すること、およびパワー半導体から発生する熱を放熱するために第1の導体層2、第2の導体層6および第3の導体層7にはCuまたはCu合金、AlまたはAl合金、NiまたはNi合金の金属、またはAuまたはAu合金で構成される金属で形成される。
【0014】
次に、本実施例に係わる接合構造の形成プロセスの概略について説明する。
【0015】
図1は、機能素子1を基板5上に実装する前の断面図である。図3は、機能素子1を基板5上に実装する前にはんだ3の接合面側に形成されているガラス4を除去した状態の断面図である。図2は機能素子1を基板5上に実装した後の完成した接合構造の断面図である。図4は、機能素子1の接合面側の一部に凹凸形状を有する導体層2が形成された前記機能素子1を基板5上に実装する前の断面図である。
【0016】
まず、基板5の接合面側に電極となる第3の導体層7をフォトリソグラフィー技術を用いた半導体プロセスにより形成する。次に導体層7上にはんだ3を蒸着、スパッタ、めっき、あるいはスクリーン印刷技術を用いて形成する。形成したはんだを完全に覆うようにガラス4をスクリーン印刷技術を用いて印刷する。次に、100℃から150℃程度の温度の環境に前記ガラス4を印刷した基板を放置してガラス4を乾燥させる。その後、機能素子1であるパワー半導体を接合する前に、図3のように機能素子1が接合する側の主面のガラス4を研磨等で除去し、はんだ3を露出させる。こうすることで、パワー半導体を基板5上に接合時に、パワー半導体側に形成された第1の導体層2が、はんだ3の露出した部分に接する。その後、加熱した状態でガラス4でパワー半導体と基板7を接合できる温度に保持し、基板5と機能素子1とを接合し、冷却することで、ガラス4を用いた接合とはんだ3を用いた金属的な接合を同時に実現できる。このとき、加熱によりはんだ3は溶融し、ガラス4は軟化するが完全に溶融するわけではないので、はんだ3とガラス4が少ししか混ざらず、独立した状態で接合できる。ガラスは接続可能温度に比べて耐久温度が高いので、完成した接続構造は耐熱性の高いものとなる。
【0017】
また、機能素子であるパワー半導体を接合する前に、図4のように第1の導体層2を凹凸形状にすることで、ガラスを除去する工程を省略してもよい。凹凸形状は、転写技術やナノインプリント技術や溶液を使ったウェットエッチングを適用することで形成する。凹凸は、はんだ3上のガラス4の厚さよりも大きいことが望ましい。こうすることで、パワー半導体を基板5上に接合の加熱時に、第1の導体層2の凸部により軟化状態のガラス4を突き破り、第1の導体層2とはんだ3が接し、ガラス4でパワー半導体と基板7を接合できる。
【0018】
本発明によれば、はんだ接合部がガラスで被覆されている接合形態であるため、はんだの融点以上の高温環境ではんだが溶融しても、はんだが接合部の周囲へ流出することがないので、高温環境下で使われる部材の接合が可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、はんだ接合部がガラスで被覆されており、該ガラスではんだ接合部周辺が接合されているため、高温環境下ではんだが溶融してもガラスで接合部の強度を保つことができる。そのため、接合部の強度を補強する目的でアンダーフィルを使う必要はなく、アンダーフィルの材料費削減およびアンダーフィルを接合部へ注入する工程を削減できる。
【0020】
また、本発明によれば、はんだ接合部がガラスで被覆されている接合形態であるため、はんだの融点以上の高温環境ではんだが溶融しても、はんだが接合部の周囲へ流出することがないので、高温環境下ではんだが溶融した状態を維持できるため被接合材の熱膨張係数の差により生じる熱応力を低減できる。
【実施例2】
【0021】
次に本発明に係わる第2の実施の形態について図5乃至図8を用いて説明する。第2の実施の形態において、第1の実施形態と相違する点は、はんだ3を用いて接合する代わりに、バンプ形状の接合金属(はんだまたは金属)8を用いて接合することである。
【0022】
図5は機能素子1を基板5上に実装する前の断面図である。図6は機能素子1を基板5上に実装した後の断面図である。図7は、機能素子1を基板5上に実装する前にバンプ形状のはんだまたは金属8の接合面側に形成されているガラス4を除去した状態の断面図である。図8は、機能素子1の接合面側の一部に凹凸形状を有する導体層2が形成された前記機能素子1を基板5上に実装する前の断面図である。
【0023】
完成した接合構造は、図6に示すように、基板5と機能素子1がガラス4とガラス4に封止されたバンプ状の接合部材8によって接合され、実施例1と同様に高い耐久性と耐熱性とを有する。さらに、複数の接合金属8によって接合されるので、微細な配線パターンにも適用可能である。
【0024】
本実施例での接合構造の製造方法では、実施例1と同様に基板5上に接合金属8を形成し、その上にガラス4を形成し、図7のようにガラス4の一部を除去し、加熱により接合金属8とガラス4を溶融させ機能素子1を接合する。ここで、図8に示すように、機能素子1側に形成する接合金属8を、先端が尖ったバンプ形状の金属とすることにより、バンプ形状がガラスを突き破って接合させることができ、ガラス4の一部を除去する工程を省略することができる。
【0025】
上記のような第2の実施の形態とすることで、微細な配線パターンの実装にも対応可能となる。
【実施例3】
【0026】
次に本発明に係わる第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第1および2の実施の形態で説明したはんだ3の表面に、さらにAg膜あるいはAu膜が形成されており、Ag膜を形成する場合は、さらにAg膜の表面にAu膜が形成され、はんだ表面の酸化を防止している。Ag膜は0・1μm程度の厚さで、酸化防止能力を発揮し、特にノンフラックスの接続プロセスに有効な技術である。ただし、Ag膜あるいはAu膜の形成は必須ではない。例えば、フラックスが使える場合や、はんだ表面の酸化防止をしなくても良好な接続ができる場合など、Ag膜あるいはAu膜の形成が必要ないこともある。
【0027】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、はんだの濡れ性を向上させるはたらきのあるフラックスをはんだに塗布することもフラックスを洗浄することも必要ないため、フラックス残渣によって配線部を腐食させて電子部品が故障することも防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・機能素子、2・・・第1の導体層(機能素子の接合面側)、3・・・はんだ、4・・・ガラス、5・・・基板、6・・・第2の導体層(機能素子の接合面と反対側)、7・・・第3の導体層(基板1の接合面側)、8・・・バンプ形状のはんだまたは金属、9・・・バンプ状の導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材はんだとを接合した接合構造において、
前記第1の部材と前記第2の部材とは、はんだにより接続されており、前記はんだは、ガラスによって封止されているはんだはんだことを特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の部材と前記第2の部材とは、前記はんだ及び前記ガラスによって接合ざれていることを特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記はんだの全体が、前記第1及び第2の基板と前記ガラスとにより覆われていることを特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1の基板及び前記第2の基板は、前記はんだと接合される部分に導体層を備えていることを特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の部材及び第2の部材の導体層の材料がCuもしくはCu合金、AlもしくはAl合金、NiもしくはNi合金の金属、またはAuもしくはAu合金のいずれかであることを特徴とするの接合構造。
【請求項6】
請求項1において、
前記接合形態において用いられるはんだの表面に、Ag、Au若しくはAgとAuを積層して構成される膜が形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記はんだの表面に、前記Ag、Au若しくはAgとAuを積層して構成される膜が蒸着、スパッタまたはめっきにより形成されることを特徴とする請求項3に記載の接合構造。
【請求項8】
請求項1において、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に、前記はんだとそれを封止するガラスとが複数形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項9】
請求項1において、
前記第1の部材は基板であり、
前記第2の部材は、機能素子であることを特徴とする接合構造。
【請求項10】
第1の部材と第2の部材とを接合した接合構造の製造方法において、
はんだ、第1の基板、表面にはんだはんだパターンを形成する工程と、
前記はんだパターンの上に、はんだパターンを覆うようにガラスを形成する工程と、
はんだはんだ前記ガラスが前記はんだパターンを封止するように、前記はんだパターン及び前記ガラスに前記第2の部材を接合する工程とを含む接合構造の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2の基板の接合前に、前記ガラスの一部を除去して前記はんだパターンを露出させる工程を含むことを特徴とする接合構造の製造方法。
【請求項12】
請求項10において、
前記第2の部材上に、前記はんだパターンに接合させる導体層を有し、
前記導体層は、凹凸形状を有することを特徴とする接合構造の製造方法。
【請求項13】
請求項10において、
前記第2の部材上に、前記はんだパターンに接合させる導体層を有し、
前記導体層は、バンプ形状を有することを特徴とする接合構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−124398(P2011−124398A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281118(P2009−281118)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】