説明

接合構造物

【課題】棒状部材の強度を向上できる接合構造物を提供すること。
【解決手段】長手方向に沿って外周から内側に向かって複数本形成される棒状部材10の係合溝12に被係合部材21の挿入部21aが挿入される。挿入部21aの両側から突出される突出部21bを内側に臨みつつ、固定部材30に棒状部材10が挿着される。これにより固定部材30を棒状部材10に固定しつつ被係合部材21を接合できる。棒状部材10の端面にネジ穴が穿設されていないので、その分だけ係合溝12を深くできる。2本の棒状部材10に支持された被係合部材21に等分布荷重(面荷重)を加えると仮定すると、係合溝12を深くできる分だけ係合溝12の壁面に作用する垂直応力を小さくできる。即ち、棒状部材10の端面にネジ穴が穿設されないことによって、棒状部材10の強度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造物に関し、特に、棒状部材の強度を向上できる接合構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、棒状部材を介して板材等を接合し、棚や箱、建築物などの接合構造物を組み立てる技術が知られている。例えば、特許文献1には、棒状部材の長手方向に亘って形成される複数本の係合溝に被係合部材(パネル材)を挿入し、その被係合部材の端部を、棒状部材の両端部に係合される締付具で締め付けて固定する組立て式棚(接合構造物)が開示されている。特許文献1に開示される技術では、棒状部材の両端面の中央にネジ穴が穿設され、そのネジ穴に螺合されるスクリューネジが締付具の中央に立設されている。締付具と棒状部材の端部との間にOリングを介装した後、締付具のスクリューネジをネジ穴に螺合することで、被係合部材の端部が締め付けられて棒状部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3106908号公報(図2、図16など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、締付具のスクリューネジが螺合されるネジ穴が棒状部材の両端面の中央に穿設されているので、係合溝の深さは、棒状部材の外径およびネジ穴の内径の両方の制約を受けていた。即ち、ネジ穴が穿設されている分だけ係合溝を浅くしなければならなかった。ここで、2本の棒状部材の各々に設けた浅い係合溝に両端が水平に挿入されて固定された被係合部材(パネル材)と、2本の棒状部材の各々に設けた深い係合溝に両端が水平に挿入されて固定された被係合部材(パネル材)とがあると仮定する。棒状部材は同一の太さである。そして、棒状部材を水平に支持すると共に、この2つの被係合部材に同じ大きさの等分布荷重(面荷重)を加えたとする。これらの被係合部材は一種の両端固定梁であるから、被係合部材の固定された両端面に最大応力が発生する。棒状部材に着目すれば、係合溝の浅い棒状部材は、係合溝の深い棒状部材と比較して、係合溝の壁面(深さ方向の面)に作用する垂直応力が大きい。即ち、端面にネジ穴が穿設されることによって係合溝の深さが制約を受けるため、棒状部材の強度が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、棒状部材の強度を向上できる接合構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載の接合構造物によれば、本体部の長手方向に沿って外周から内側に向かって複数本形成される棒状部材の係合溝に被係合部材の挿入部が挿入される。その挿入部の両側から本体部の長手方向に沿って突出される被係合部材の突出部を内側に臨みつつ、固定部材の固定部に棒状部材の外周面が挿着される。これにより、棒状部材の両端面にネジ穴を穿設しなくても、固定部材を棒状部材に固定しつつ被係合部材を接合できる。棒状部材の両端面にネジ穴が穿設されていないので、棒状部材が同一の太さであれば、ネジ穴の分だけ係合溝を深くすることができる。
【0007】
ここで、2本の棒状部材に支持された被係合部材に等分布荷重(面荷重)を加えると仮定すると、係合溝の深い棒状部材は、係合溝の浅い棒状部材と比較して、係合溝の壁面に作用する垂直応力を小さくできる。即ち、端面にネジ穴が穿設されないことによって、棒状部材の強度を向上できる効果がある。
【0008】
請求項2記載の接合構造物によれば、被係合部材は、突出部と間隔をあけて棒状部材の軸線に沿って突設される張出部を備え、その張出部は固定部材の外周側に位置するので、張出部の張出し長さを調整することにより、固定部材の一部または全部を張出部に埋め込まれる状態にできる。これにより請求項1の効果に加え、接合構造物を美麗にできると共に、接合構造物の自由性を向上できる効果がある。
【0009】
請求項3記載の接合構造物によれば、棒状部材は、本体部の両端から長手方向に突出すると共に太さが本体部の太さよりも細く設定される凸部を備え、その凸部に係合溝が延設されている。凸部に延設された係合溝に突出部が挿入されるので、棒状部材の外周面(凸部の外周面)が固定部材に挿着されると、被係合部材が固定部材に係合され棒状部材に固定される。突出部は凸部の外周面から突出することなく係合溝に挿入されるので、固定部材の固定部の内周の大きさを、凸部の外周の大きさまで小さくすることができ、請求項1又は2の効果に加え、固定部材をコンパクト化できる効果がある。
【0010】
請求項4記載の接合構造物によれば、本体部と固定部材とは同一太さに設定され、本体部の外周面と固定部材の外周面とが面一となるように形成されている。これにより、請求項3の効果に加え、固定部材が本体部の径方向に張り出すことが防止され、美麗にできると共に固定部材による接合をコンパクト化できる効果がある。
【0011】
請求項5記載の接合構造物によれば、棒状部材に複数本形成される係合溝のうち、隣り合う係合溝は、中心角が30°又は60°に設定され、被係合部材は、平面視が矩形状の同一の大きさに形成されているので、被係合部材および棒状部材の組み合わせにより三角柱の側面や六角柱の側面からなる接合構造物をつくることができる。この接合構造物に曲げモーメントが加わると、曲げモーメントの伝達が棒状部材で遮られ、被係合部材には引張力または圧縮力が作用し、それによる荷重や反力は棒状部材に作用する。その結果、請求項1から4のいずれかの効果に加え、接合構造物の強度を向上できる効果がある。
【0012】
請求項6記載の接合構造物によれば、固定部材は無底の筒状に形成されると共に、固定部は固定部材の両側に形成されているので、固定部材の両側に棒状部材を挿着することにより棒状部材を連結できる。これにより請求項1から5のいずれかの効果に加え、固定部材を用いて棒状部材を連結することで、接合構造物の自由性を向上できる効果がある。
【0013】
請求項7記載の接合構造物によれば、本体部または凸部の外周面および固定部の内周面は螺合可能に構成されているので、請求項1から6のいずれかの効果に加え、固定部材を棒状部材に着脱可能にでき、接合構造物の組み立て及び分解を容易に繰り返しできる効果がある。
【0014】
請求項8記載の接合構造物によれば、被係合部材は板状に形成されると共に、厚さ方向に貫通形成される孔部を備えているので、被係合部材で仕切られる空間を孔部で連通させることができる。その結果、請求項1から7のいずれかの効果に加え、接合構造物の自由性を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は第1実施の形態における接合構造物の正面図であり、(b)はその平面図である。
【図2】(a)は被係合部材を棒状部材に装着する前の接合構造物の部分組立図であり、(b)は固定部材を棒状部材に装着する前の接合構造物の部分組立図である。
【図3】(a)は図1のIIIb−IIIb線における接合構造物の組立て前の断面図であり、(b)は図1のIIIb−IIIb線における接合構造物の断面図である。
【図4】第2実施の形態における接合構造物の斜視図である。
【図5】(a)は第3実施の形態における棒状部材の正面図であり、(b)は棒状部材の側面図である。
【図6】(a)は第4実施の形態における被係合部材を棒状部材に装着する前の接合構造物の部分組立図であり、(b)は固定部材を棒状部材に装着する前の接合構造物の部分組立図である。
【図7】(a)は第5実施の形態における被係合部材を棒状部材に装着する前の接合構造物の部分組立図であり、(b)は被係合部材を棒状部材に装着する接合構造物の部分組立図である。
【図8】(a)は第6実施の形態における接合構造物の斜視図であり、(b)は被係合部材を棒状部材に装着する前の接合構造物の部分組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施の形態における接合構造物1を説明する。図1(a)は第1実施の形態における接合構造物1の正面図であり、図1(b)はその平面図である。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に示すように、接合構造物1は、六角柱の側面の複数個の組合せにより構成されており、棒状部材10及び固定部材30で被係合部材20を接合することにより組み立てられている。本実施の形態では、接合構造物1を構成する被係合部材20は、平面視が矩形状の同一の大きさの板状に形成される第1部材21を有する。第1部材21は、接合構造物1の六角柱の側面を構成する部材である。また、被係合部材20は、第1部材21により形成される六角柱の側面の対角に配設される第2部材22を有する。棒状部材10の両端に固定部材30が固着され、被係合部材20が棒状部材10に接合される。
【0018】
次に図2を参照して、棒状部材10及び被係合部材20の接合構造について説明する。図2(a)は被係合部材20を棒状部材10に装着する前の接合構造物1の部分組立図であり、図2(b)は固定部材30を棒状部材10に装着する前の接合構造物1の部分組立図である。なお、棒状部材10及び被係合部材20は両端とも同一の構造であるので、図2では棒状部材10及び被係合部材20の一端を部分的に図示して他端の図示は省略する。
【0019】
棒状部材10は、断面円形状に形成される棒状の本体部11と、その本体部11の長手方向に沿って外周から内側に向かって複数本形成される係合溝12とを備えている。さらに棒状部材10は、本体部11の両端から長手方向に突出すると共に太さが本体部11の太さよりも細く設定される断面円形状の凸部13を備えている。凸部13は、本体部11と同一の軸線O上に形成されており、雄ねじが外周面13aに螺刻されている。係合溝12は、本体部11から一様な幅で凸部13に延設されており、隣り合う係合溝12の中心角は60°に設定されている。その結果、本実施の形態では、6本の係合溝12が本体部11及び凸部13に形成されている。
【0020】
被係合部材20としての第1部材21は、棒状部材10に形成される係合溝12に挿入される挿入部21aと、その挿入部21aの両側から棒状部材10の本体部11の長手方向に沿って突出される突出部21bとを備えている。本実施の形態では、挿入部21aの長さは本体部11の長さと同一であり、突出部21bの長さは凸部13の長さと同一に設定されている。
【0021】
また、挿入部21aの幅と突出部21bの幅とは同一であり、突出部21bの高さは凸部13における係合溝12の深さより少し小さめに設定されている。さらに、第1部材21は、突出部21bと間隔をあけて棒状部材10の軸線Oに沿って突設された張出部21cを備えている。突出部21bと張出部21cとの間隔は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さと略同一である。また、張出部21cを加えた被係合部材20の長さ(棒状部材10の軸線Oに沿う長さ)は、挿入部21aと突出部21bとを加えた長さと同一である。
【0022】
なお、第2部材22(被係合部材20)も、第1部材21と同様に、挿入部22a、突出部22b及び張出部22cを備え、板状に形成されている。これら挿入部22a、突出部22b及び張出部22cの関係は、第1部材21の挿入部21a、突出部21b及び張出部21cの関係と同様なので、以下の説明を省略する。
【0023】
図2(b)に示すように、棒状部材10に形成された係合溝12に被係合部材20の挿入部21a,22a及び突出部21b,22bを挿入した後、固定部材30を棒状部材10の端部(凸部13の外周端部)に固着することにより、被係合部材20を棒状部材10に接合することができる。
【0024】
次に図3を参照して、棒状部材10及び被係合部材20と固定部材30との関係について説明する。図3(a)は図1のIIIb−IIIb線における接合構造物1の組立て前の断面図であり、図3(b)は図1のIIIb−IIIb線における接合構造物1の断面図である。
【0025】
図3(a)に示すように、固定部材30は、一端31が閉塞されて袋状に形成されており、他端に凸部13が挿着される固定部32を備えて構成されている。固定部32は、凸部13の外周面13aに螺刻された雄ねじと螺合する雌ねじが内周面32aに螺刻されており、凸部13と螺合可能に構成されている。固定部32の厚さ(図3左右方向)は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さ(本体部11と凸部13との外径差の半分。図3左右方向)と略同一に形成されており、固定部材30の外径が本体部11の外径と同一とされている。
【0026】
上述したように突出部21bの長さ(図3上下方向)は凸部13の長さ(図3上下方向)と同一に設定されており(図3(a)参照)、突出部21bの高さ(図3左右方向)は凸部13における係合溝12の深さ(図3左右方向)より少し小さめに設定されているので、突出部21bは凸部13の外周面13aから突出することなく係合溝12に挿入される。さらに、突出部21bと張出部21cとの間隔(図3左右方向)は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さ(図3左右方向)と略同一であり、固定部32の厚さ(図3左右方向)は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さ(図3左右方向)と略同一に形成されている。その結果、図3(b)に示すように、係合溝12に被係合部材20の挿入部21a及び突出部21bを挿入した後、固定部材30の固定部32と凸部13とを螺合できる。これにより、棒状部材10に被係合部材20をガタつきなく固定できる。
【0027】
また、固定部材30の外径が本体部11の外径と同一とされているので、本体部11と固定部材30とを段差無く接合することができ、本体部11の外周面と固定部材30の外周面とを面一にすることで美麗にできると共に、接合部をコンパクト化できる。さらに、被係合部材20は張出部21cを備えているので、固定部材30の一部(固定部32)が張出部21cに埋め込まれる。その結果、棒状部材10、被係合部材20及び固定部材30を一体化させた印象を与えることができ、美観に優れる。
【0028】
以上説明したように第1実施の形態における接合構造物1によれば、従来のように固定部材を固定するためのネジ穴を棒状部材10の両端面に穿設しなくても、固定部材30を棒状部材10に固定しつつ被係合部材20を接合できる。棒状部材10の両端面にネジ穴が穿設されていないので、棒状部材10が同一の太さであれば、ネジ穴の分だけ係合溝12を深くすることができる。2本の棒状部材10に水平に支持された被係合部材20に等分布荷重(面荷重)を加えると仮定すると、係合溝12の深い棒状部材10は、係合溝12の浅い棒状部材10と比較して、係合溝12の壁面に作用する垂直応力を小さくできる。即ち、棒状部材10の端面にネジ穴が穿設されないことによって、棒状部材10の強度を向上できる。
【0029】
また、棒状部材10に複数本形成される係合溝12のうち、隣り合う係合溝12は、中心角が60°に設定され、被係合部材20は平面視が矩形状の同一の大きさに形成される第1部材21を備えている。その結果、第1部材21及び棒状部材10の組み合わせにより六角柱の側面の組合せによる接合構造物1をつくることができる。さらに、第1部材21により形成される六角柱の側面の対角に配設される第2部材22により、補強をすることができる。この接合構造物1に曲げモーメントが加わると、曲げモーメントの伝達が棒状部材10で遮られ、被係合部材20には引張力または圧縮力が作用し、それによる荷重や反力は棒状部材10に作用する。その結果、被係合部材20に作用する曲げモーメントを小さくできるので、接合構造物1の強度を向上できる。
【0030】
また、棒状部材10は本体部11の両端から長手方向に突出すると共に太さが本体部11の太さよりも細く設定される凸部13を備え、その凸部13に係合溝12が延設されている。凸部13に延設された係合溝12に突出部21bが挿入されるので、棒状部材10の外周面(凸部13の外周面13a)が固定部材30に挿着されると、被係合部材20が固定部材30に係合され棒状部材10に固定される。突出部21bは凸部13の外周面13aから突出することなく係合溝12に挿入されるので、固定部材30の固定部32の内周の大きさを、凸部13の外周の大きさまで小さくすることができる。その結果、固定部材30をコンパクト化できる。
【0031】
また、凸部13及び固定部32は螺合可能に構成されているので、固定部材30を棒状部材10に着脱可能にでき、組み立て及び分解を繰り返しできる。これにより、被係合部材20を水平に配置することで、接合構造物1は、展示会等で多用される陳列用の組立て式棚として好適に用いることができる。特に、固定部材30が袋状に構成されているので(図2(b)及び図3参照)、棒状部材10の端部を覆い隠すことができ、美観に優れる。
【0032】
また接合構造物1は、棒状部材10に複数本形成された係合溝12の任意の箇所に被係合部材20を挿入して組み立てることにより任意の形状にでき、自在性に優れる。これにより、組み立て及び分解を繰り返して遊ぶことができる玩具として好適である。
【0033】
また棒状部材10、被係合部材20及び固定部材30を大型化することにより、被係合部材20により床を構成して、建築物とすることも可能である。さらに、被係合部材20を鉛直方向に配置することで、傘立て等の家具とすることも可能である。棒状部材10、被係合部材20及び固定部材30は、接合構造物1の用途や大きさに応じて、金属、合成樹脂、ガラス、木材、鉄筋コンクリート等の種々の材質を適宜選択して製造することができる。
【0034】
次に、図4を参照して、第2実施の形態について説明する。第2実施の形態では、被係合部材23が、厚さ方向に貫通形成される孔部23aを備える場合について説明する。図4は第2実施の形態における接合構造物の斜視図である。なお、第1実施の形態と同一の部分は同一の符号を付して、以下の説明を省略する。
【0035】
図4に示すように、第2実施の形態による接合構造物における被係合部材23は、板状に形成され、棒状部材10により両端が固定されると共に、厚さ方向に貫通形成される孔部23aを備えている。棒状部材10により両端が固定された被係合部材23は両端固定梁と考えられるから、被係合部材23に等分布荷重(面荷重)を加えた場合、被係合部材23の両端面に最大応力が発生する。従って、被係合部材23は曲げに対して強く、被係合部材23に孔部23aが貫通形成されていても強度低下を抑制できる。本実施の形態では、建築物として用いられる被係合部材23にエレベータEが貫設されている。以上のように被係合部材23で仕切られる空間を孔部23aにより連通させることができ、接合構造物の自由性を向上できる。
【0036】
次に、図5を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施および第2実施の形態では、棒状部材10に中心角が60°の係合溝12が形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、棒状部材110に中心角が30°の係合溝112が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5(a)は第3実施の形態における棒状部材110の正面図であり、図5(b)は棒状部材110の側面図である。
【0037】
図5(a)に示すように、棒状部材110に複数本形成される係合溝112のうち、隣り合う係合溝112は、中心角が30°に設定されている。その結果、2枚の被係合部材120のなす角が90°になるように被係合部材120を接合することができ、棒状部材110及び被係合部材120を組み合わせることにより四角柱の側面からなる接合構造物を作ることができる。また、第1実施の形態と同様に、2枚の被係合部材のなす角が60°になるように被係合部材を接合することも可能である。以上のように、隣り合う係合溝112の中心角を30°に設定することで、被係合部材120の接合の自在性をさらに向上できる。
【0038】
次に、図6を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、棒状部材10,110が本体部11と凸部13とを備える場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、棒状部材210が凸部を備えていない場合について説明する。図6(a)は第4実施の形態における被係合部材220を棒状部材210に装着する前の接合構造物の部分組立図であり、図6(b)は固定部材230を棒状部材210に装着する前の接合構造物の部分組立図である。なお、棒状部材210及び被係合部材220は両端とも同一の構造であるので、図6では棒状部材210及び被係合部材220の一端を部分的に図示して他端の図示は省略する。
【0039】
図6(a)に示すように棒状部材210は、断面円形状に形成される棒状の本体部211と、その本体部211の長手方向に沿って外周から内側に向かって複数本形成される係合溝212とを備えている。係合溝212は一様な幅で本体部211に形成されており、隣り合う係合溝212の中心角は90°に設定されている。その結果、本実施の形態では、4本の係合溝212が本体部211に形成されている。
【0040】
被係合部材220は、棒状部材210に形成される係合溝212に挿入される挿入部220aと、その挿入部220aの両側から棒状部材210の本体部211の長手方向に沿って突出される突出部220bとを備え、板状に形成されている。本実施の形態では、挿入部220aに突出部220bを加えた長さは、本体部211の長さと同一に設定されている。また、挿入部220aの幅と突出部220bの幅とは同一であり、突出部220bの高さは係合溝212の深さと同一である。
【0041】
図6(b)に示す固定部材230は、環状に形成される部材であり、本体部211が挿着される固定部231を備えて構成されている。固定部231の内径は本体部211の太さ(外径)と略同一に形成されており、軸線O方向に沿う固定部231の長さは、軸線O方向に沿う突出部220bの長さと略同一に形成されている。これにより、棒状部材210に形成された係合溝212に被係合部材220の挿入部220a及び突出部220bを挿入した後、固定部材230を棒状部材210の端部(本体部211の外周端部)に固着することにより、被係合部材220を棒状部材210にガタつきなく接合することができる。本体部211の外周端部への固定部材230の固着は、溶接等の種々の手段を用いることができる。
【0042】
以上説明したように第4実施の形態における接合構造物によれば、棒状部材210の本体部211の外周から固定部材230の外周が突出するが、棒状部材211への凸部(図2に示す符号13)の形成を省略できるので、棒状部材211の製造を簡略化できる。
【0043】
次に、図7を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態では、固定部材30の一端31(図3(a)参照)が袋状に形成される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、固定部材330が無底の筒状に形成されると共に、固定部331,332が固定部材330の両側に形成される場合について説明する。
【0044】
図7(a)は第5実施の形態における被係合部材320を棒状部材10に装着する前の接合構造物の部分組立図であり、図7(b)は被係合部材320を棒状部材10に装着する接合構造物の部分組立図である。なお、棒状部材10及び被係合部材320は両端とも同一の構造であるので、図7では棒状部材10及び被係合部材320の一端を部分的に図示して他端の図示は省略する。また、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0045】
図7(a)に示すように被係合部材320は、棒状部材10に形成される係合溝12に挿入される挿入部320aと、その挿入部320aの両側から棒状部材10の本体部11の長手方向に沿って突出される突出部320bとを備え、板状に形成されている。本実施の形態では、挿入部320aの長さは本体部11の長さと同一であり、突出部320bの長さは凸部13の長さと同一に設定されている。また、挿入部320aの幅と突出部320bの幅とは同一であり、突出部320bの高さは凸部13における係合溝12の深さより少し小さめに設定されている。
【0046】
さらに、被係合部材320は、突出部320bと間隔をあけて棒状部材10の軸線Oに沿って突設された張出部320cを備えている。突出部320bと張出部320cとの間隔は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さと略同一である。また、張出部320cの長さ(棒状部材10の軸線Oに沿う長さ)は、固定部材330の長さ(軸線Oに沿う長さ)の半分に設定されている。
【0047】
固定部材330は、両端が開放された無底の筒状に形成されると共に、内周面の両側に固定部331,332が形成されている。固定部331,332は、棒状部材10の凸部13の外周面13aが挿着される部位である。本実施の形態では、固定部331,332は、凸部13の外周面13aに螺刻された雄ねじと螺合する雌ねじが螺刻されており、凸部13と螺合可能に構成されている。また、固定部331,332の一方は逆ねじとされている。
【0048】
なお、固定部331,332の厚さ(固定部材330の肉厚)は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さ(棒状部材10及び凸部13の半径の差)と略同一に形成されており、固定部材330の外径が本体部11の外径と同一とされている。
【0049】
上述したように、固定部331,332は凸部13と螺合可能に構成されると共に、固定部331,332の一方は逆ねじとされているので、図7(a)に示すように、棒状部材10,10の間に固定部材330を介在させ、軸線Oの回りの一方向に固定部材330を回転させることで、固定部331,332と凸部13,13とを螺合できる。これにより固定部材330で棒状部材10,10を連結できる。
【0050】
また、突出部320bの長さ(軸線O方向)は凸部13の長さ(軸線O方向)と同一に設定されており、突出部320bの高さ(軸線Oと直交方向)は凸部13における係合溝12の深さ(軸線Oと直交方向)より少し小さめに設定されているので、突出部320bは凸部13の外周面13aから突出することなく係合溝12に挿入される。さらに、突出部320bと張出部320cとの間隔(軸線Oと直交方向)は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さ(軸線Oと直交方向)と略同一であり、固定部331,332の厚さ(軸線Oと直交方向)は、棒状部材10の本体部11と凸部13との段差の高さ(軸線Oと直交方向)と略同一に形成されている。その結果、固定部材330と棒状部材10とを連結した後、係合溝12の端(棒状部材10の端)から被係合部材320の突出部320b及び挿入部320aを挿入し、図7(b)に示すように被係合部材320をスライドさせることで、棒状部材10に被係合部材320をガタつきなく固定できる。
【0051】
また、張出部320cの長さ(棒状部材10の軸線Oに沿う長さ)は、固定部材330の長さ(軸線Oに沿う長さ)の半分に設定されているので、2本の棒状部材10の係合溝12の位置を長手方向に沿うように合わせておけば、2枚の被係合部材320を固定部材330の方向へスライドさせて、張出部320c同士を突き合わせるようにできる。このように棒状部材10を軸線O方向に連結した場合であっても、張出部320cにより、軸線O方向に並設される被係合部材320の隙間をなくすことが可能である。
【0052】
また、固定部材330の外径が本体部11の外径と同一とされているので、本体部11と固定部材330とを段差無く接合することができ、本体部11の外周面と固定部材330の外周面とを面一にすることで、美麗にできる。
【0053】
次に、図8を参照して、第6実施の形態について説明する。第1実施の形態では、接合構造物1を棚として用いるときに棒状部材10が水平方向に配設される場合について説明した。これに対し第6実施の形態では、棒状部材10,410を鉛直方向に配設する衣服掛けとしての接合構造物401について説明する。なお、第1実施の形態および第5実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8(a)は第6実施の形態における接合構造物401の斜視図である。図8(a)においては棒状部材10の長手方向の図示の一部を省略している。
【0054】
図8(a)に示すように、衣服掛けとしての接合構造物401は、固定部材330により長手方向に連結されると共に鉛直方向に配設される棒状部材10,410と、棒状部材410から棒状部材10,410の軸線Oに対して直交方向に張り出して放射状に配設される脚部としての複数の被係合部材420と、棒状部材410から棒状部材10,410の軸線Oに対して直交方向に張り出して放射状に配設される腕部としての複数の被係合部材421とを備えて構成されている。
【0055】
被係合部材421は、衣服Cを掛止する掛止部422が先端に固着されている。被係合部材420,421は、固定部材30,330により棒状部材410に接合されている。被係合部材420が棒状部材10,410の軸線Oに対して直交方向に張り出して放射状に配設されるので、被係合部材420に支えられて接合構造物401が立設される。
【0056】
次に図8(b)を参照して、固定部材30,330による被係合部材420と棒状部材410との接合構造について説明する。図8(b)は被係合部材420を棒状部材410に装着する前の接合構造物401の部分組立図である。図8(b)においては、接合部材330の長手方向の図示の一部を省略している。なお、固定部材30,330による被係合部材421と棒状部材410との接合構造は、被係合部材420と棒状部材410との接合構造と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
棒状部材410は、本体部411が棒状部材10の本体部11より短い長さに形成される部材である。棒状部材410の長さを適宜設定することにより、被係合部材420の長さ(軸線O方向の長さ)を適宜設定することができる。これにより接合構造物401の自由性を高めることができる。
【0058】
被係合部材420は、棒状部材410に形成される係合溝12に挿入される挿入部420aと、その挿入部420aの両側から棒状部材410の本体部411の長手方向に沿って突出される突出部420bとを備え、板状に形成されている。本実施の形態では、挿入部420aの長さは本体部411の長さと同一であり、突出部420bの長さは凸部13の長さと同一に設定されている。また、挿入部420aの幅と突出部420bの幅とは同一であり、突出部420bの高さは凸部13における係合溝12の深さより少し小さめに設定されている。
【0059】
さらに被係合部材420は、突出部420bと間隔をあけて棒状部材10の軸線Oに沿って突設された張出部420c,420dを備えている。突出部420bと張出部420c,420dとの間隔は、棒状部材410の本体部411と凸部13との段差の高さと略同一である。また、張出部420cの長さ(棒状部材410の軸線Oに沿う長さ)は、固定部材30の長さ(軸線Oに沿う長さ)と同一もしくは少し長めに設定されている。
【0060】
以上のように構成される棒状部材410及び被係合部材420は、棒状部材410の溝部12に被係合部材420の挿入部420a及び突出部420bを挿入すると共に、固定部材30,330を棒状部材410の両端に螺合することで接合される。張出部420cの長さは固定部材30の長さと同一もしくは少し長めに設定されているので、張出部420cから固定部材30が突出することが防止される。被係合部材420は接合構造物401の脚部として機能し、その脚部の中心に固定部材30は位置するので、張出部420cからの固定部材30の突出を防止できることにより、接合構造物1を安定して立設できる。
【0061】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0062】
上記第1実施の形態では、固定部材30が凸部13に螺合可能に構成され、固定部材30が棒状部材10に螺着される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、溶接、嵌合等の種々の手段により固定部材30を棒状部材10に固着することが可能である。
【0063】
同様に上記第4実施の形態(図6参照)では、固定部材230が本体部211に溶接等により固着される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、本体部211の外周面に雄ねじを螺刻すると共に固定部231に雌ねじを螺刻し、本体部211と固定部材230とを螺合可能に構成することも可能である。この場合は、固定部材230を本体部211に着脱可能にでき、組み立て及び分解を繰り返しできる。
【0064】
上記第4実施の形態(図6参照)では、張出部が形成されていない被係合部材220について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、固定部材230の外周側に位置する張出部を被係合部材220に設けることも可能である。張出部を設けることにより、固定部材230の一部または全部を張出部に埋め込まれる状態にできる。これにより、接合構造物を美麗にできると共に、接合構造物の自由性を向上できる。また、第6実施の形態のように、被係合部材220を脚部として棒状部材210を立設させる場合には、張出部を設けることにより安定性を向上できる。
【0065】
上記第4実施の形態(図6参照)では、固定部材230を棒状部材210の端部に固定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸線O方向における長さを長めに形成した固定部材230を用いることで、2本の棒状部材210を軸線O方向に連結することも可能である。
【0066】
上記第1実施の形態では、固定部材30は一端が閉塞され袋状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、固定部材30の一端にすりわりや十字穴等の溝や穴を形成することが可能である。また、固定部材30に蝶ナットのような摘みやローレット等の滑り止めを形成することも可能である。これにより、固定部材30の着脱を容易にすることができる。
【0067】
上記各実施の形態では、棒状部材10,110,210が断面円形状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、円形状以外の他の断面形状とすることが可能である。他の断面形状としては、例えば、方形状や六角形状等の多角形状を挙げることができる。この場合、棒状部材の外周面が角張るため、固定部材を螺合することは困難であるが、嵌合や溶接等により棒状部材に固定部材を固着できる。或いは断面円形状の凸部を設け、その凸部に固定部材を螺合し固着することが可能である。
【0068】
上記第5実施の形態(図7参照)では、固定部331,332の一方が逆ねじに形成された場合について説明したが、必ずしもこれに限るものではない。固定部331,332を2つに分けて一方を逆ねじにすることなく、同一方向の一連のねじにすることも当然可能である。この場合は、固定部材330に対して、両側から棒状部材10をそれぞれ螺合することで棒状部材10,10を連結できる。棒状部材10には長手方向に亘って係合溝12が形成されているので、被係合部材320の突出部320b及び挿入部320aを係合溝12の端から挿入し、スライドさせることで棒状部材10に被係合部材320を装着できる。
【符号の説明】
【0069】
1,401 接合構造物
10,110,210,410 棒状部材
11,211,411 本体部
12,122,212 係合溝
13 凸部
13a 外周面
20,23,120,220,320,420,421 被係合部材
21a,22a,220a,320a,420a 挿入部
21b,22b,220b,320b,420b 突出部
21c,320c,420c,420d 張出部
23a 孔部
30,230,330 固定部材
32,231,331,332 固定部
32a 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の本体部と、前記本体部の長手方向に沿って外周から内側に向かって複数本形成される係合溝と、を有する棒状部材と、
その棒状部材に形成される係合溝に挿入される挿入部と、その挿入部の両側から前記本体部の長手方向に沿って突出される突出部と、を有する被係合部材と、
その被係合部材の突出部を内側に臨みつつ前記棒状部材の外周面が挿着される固定部を有する固定部材と、を備えていることを特徴とする接合構造物。
【請求項2】
前記被係合部材は、前記突出部と間隔をあけて前記棒状部材の軸線に沿って突設される張出部を備え、
その張出部は、前記固定部材の外周側に位置することを特徴とする請求項1記載の接合構造物。
【請求項3】
前記棒状部材は、前記本体部の両端から長手方向に突出すると共に太さが前記本体部の太さよりも細く設定される凸部を備え、
前記係合溝は前記凸部に延設されており、その凸部に延設された係合溝に前記突出部が前記凸部の外周面から突出することなく挿入されることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合構造物。
【請求項4】
前記本体部と前記固定部材とは同一太さに設定され、前記本体部の外周面と前記固定部材の外周面とが面一となるように形成されていることを特徴とする請求項3記載の接合構造物。
【請求項5】
前記棒状部材に複数本形成される係合溝のうち、隣り合う係合溝は、中心角が30°又は60°に設定され、
前記被係合部材は、平面視が矩形状の同一の大きさに形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の接合構造物。
【請求項6】
前記固定部材は、無底の筒状に形成されると共に、前記固定部は、前記固定部材の両側に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の接合構造物。
【請求項7】
前記本体部または前記凸部の外周面および前記固定部の内周面は、螺合可能に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の接合構造物。
【請求項8】
前記被係合部材は、板状に形成されると共に、厚さ方向に貫通形成される孔部を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の接合構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40219(P2012−40219A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184730(P2010−184730)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(599011609)株式会社 メガネ流通センター (4)
【Fターム(参考)】