説明

接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器

【課題】回路基板が備える端子と、これに対応する導体部とを、低温下で電気的に確実に接続することができる接合膜付き回路基板、かかる接合膜付き回路基板を回路基板に接合する接合膜付き回路基板の接合方法、かかる接合膜付き回路基板を備える信頼性に優れた電子デバイス、および、かかる電子デバイスを備える高い信頼性が得られる電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の接合膜付き回路基板1は、基板2と、端子3を備える回路と、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む接合膜4とを有している。このような接合膜4は、エネルギーが付与されると、他の回路基板との接着性を発現し、この接着性により、端子3と他の回路基板が備える端子とが当接した状態で、接合膜付き回路基板1を他の回路基板に接合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器における実装工程において、電子デバイスが備える端子と配線基板の配線パターンが備える端子とを物理的かつ電気的に接続する接続材には、従来、半田が広く用いられている。しかし、接続材として、半田を用いた端子間の接続では、半田を溶融し、再固化する半田リフロー工程において、電子デバイスを高温下(260℃程度)に晒す必要があり、電子デバイスの熱劣化を引き起こすという問題がある。
また、接続材として、半田を用いる方法の他に、硬化性樹脂中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような異方導電性接着剤組成物を用いた端子間の接続では、電子デバイスと配線基板とを、互いが備える端子同士が対向するようにして、かかる異方導電性接着剤組成物を介して互いを圧着する。これにより、電子デバイスと配線基板とがそれぞれ備える端子間で組成物中に含まれる導電性粒子が端子の圧力方向で互いに接触するため、電子デバイスと配線基板との対応する端子同士が電気的に接続される。また、硬化性樹脂成分を硬化させることにより、電子デバイスと配線基板とが接合される。
【0004】
かかる異方導電性接着剤組成物は、はんだに比べて接続に要する処理温度が低いため、接続に際して電子デバイスの熱劣化を抑えることができる。
しかしながら、異方導電性接着剤組成物を用いた接続では、電子デバイスと配線基板とを圧着した際に、一部の端子間に導電性粒子が互いに接触しないことがあり、電子デバイスと配線基板とが、一部の端子間で電気的な接続が十分に得られないことがある。
上記のように、接続材としてそれぞれ、半田および異方導電性接着剤を用いた端子同士の接続では、解決すべき問題を有しており、これらを解決し得る端子間を接続する新たな接合方法が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−268303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、回路基板が備える端子と、これに対応する導体部とを、低温下で電気的に確実に接続することができる接合膜付き回路基板、かかる接合膜付き回路基板を回路基板に接合する接合膜付き回路基板の接合方法、かかる接合膜付き回路基板を備える信頼性に優れた電子デバイス、および、かかる電子デバイスを備える高い信頼性が得られる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合膜付き回路基板は、基板と、
他の回路基板の端子と当接され、前記基板の一方の面側に設けられた当接面を備えた導体部と、
前記一方の面側に設けられ、前記当接面を除く部分の全部または一部に設けられた絶縁性の接合膜とを有し、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを有し、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーが付与されることにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に、前記他の回路基板との接着性が発現し、この接着性により、前記当接面において、前記導体部と前記端子とが当接して電気的に接続するものであることを特徴とする。
これにより、回路基板が備える端子と対応する導体部とを、低温下で電気的に確実に接続することができる。
【0008】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜は、前記他の回路基板の前記端子以外の領域を、前記他の回路基板と接合することが好ましい。
これにより、接合膜を介して回路基板同士がより強固に接合され、回路基板が備える端子と導体部とをより確実に電気的に接続することができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接着性により優れた接合膜が得られ、回路基板に対して、特に強固に接合可能な接合膜付き回路基板となる。
【0009】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接合膜を介して回路基板同士がより強固に接合され、回路基板が備える端子と導体部とを電気的により確実に接続することができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜はプラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、回路基板に対して、接合膜を介して強固に接合することができる接合膜付き回路基板となる。また、プラズマ重合法で形成された接合膜は、エネルギーが付与されて脱離基が脱離した状態(活性化状態)が比較的長時間にわたって維持されるため、得られる接合膜付き回路基板の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0010】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、回路基板の端子と接合膜付き回路基板の導体部とが電気的により確実に接続される。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記導体部は、Ni、CuまたはAuを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、回路基板の端子と接合膜付き回路基板の導体部とが電気的により確実に接続される。
【0011】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、半田リフロー工程のように高温下に晒すことなく、回路基板の端子と導体部とを電気的により確実に接続することができる。
【0012】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、高温下に晒すことなく、回路基板同士がより強固に接合され、回路基板の端子と導体部とを電気的により確実に接続することができる。

本発明の接合膜付き回路基板では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
かかる低温下の処理で、回路基板同士が確実に接合され、回路基板の端子と導体部とを電気的により確実に接続することができる。
【0013】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記基板の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、回路基板同士がより強固に接合され、回路基板の端子と導体部とを電気的により確実に接続することができる。
【0014】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記表面処理は、前記接合膜との親和性を有するシランカップリング剤を付与する処理、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、回路基板同士がより強固に接合され、回路基板の端子と導体部とを電気的により確実に接続することができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記導体部は、前記基板の前記一方の面側の表面から突出するように設けられたものであることが好ましい。
このような構成の接合膜付き回路基板は、回路基板が備える端子と導体部との電気的な接続がより確実なものとなる。
【0015】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法は、本発明の接合膜付き回路基板と、前記端子を備えた前記他の回路基板とを用意し、前記接合膜付き回路基板が備える前記接合膜に前記エネルギーを付与し、前記接合膜に接着性を発現させる工程と、
前記端子と前記導体部の前記当接面とが当接するように、当該接合膜付き回路基板を前記他の回路基板に重ね合わせることにより、前記接合膜に発現した接着性によって、当該接合膜付き基板を前記他の回路基板に接合させて、前記導体部と前記端子とが電気的に接続する工程とを有することを特徴とする。
これにより、回路基板同士が強固に接合され、回路基板が備える端子と導体部とが電気的に確実に接続された信頼性の高い回路基板同士の接合体を得ることができる。
【0016】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法は、本発明の接合膜付き回路基板と、前記端子を備えた前記他の回路基板とを用意し、前記端子と前記導体部の前記当接面とが当接するように、当該接合膜付き回路基板を前記他の回路基板に重ね合わせる工程と、
当該接合膜付き回路基板が備える前記接合膜に前記エネルギーを付与し、前記接合膜に接着性を発現させ、前記接合膜に発現した接着性によって、当該接合膜付き基板を前記他の回路基板に接合させて、前記導体部と前記端子とが電気的に接続する工程とを有することを特徴とする。
これにより、回路基板が備える端子と導体部とを確実に位置合わせして電気的に接続させることができ、信頼性の高い回路基板同士の接合体を得ることができる。また、かかる接合方法によれば、回路基板が備える端子と導体部との接続をより容易に、かつ優れた歩留まりで行うことができる。
【0017】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、前記他の回路基板は、前記接合膜と同様の接合膜を、前記端子が設けられた面側に有していることが好ましい。
これにより、回路基板同士がより強固に接合され、回路基板が備える端子と導体部とが電気的に確実に接続された回路基板同士の接合体を得ることができる。

本発明の電子デバイスは、本発明の接合膜付き回路基板を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスを提供することができる。
【0018】
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスと、該電子デバイスを搭載する前記他の回路基板とを有し、前記電子デバイスが備える前記導体部の前記当接面と、前記他の回路基板が備える前記端子とが、前記当接面において当接して電気的に接続された状態で前記電子デバイスと前記他の回路基板とが接合されていることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスを備える高い信頼性が得られる電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<接合膜付き回路基板>
まず、本発明の接合膜付き回路基板について説明する。
図1は、本発明の接合膜付き回路基板の実施形態を説明するための図(縦断面図)、図2は、本発明の接合膜付き回路基板が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図3は、本発明の接合膜付き回路基板が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1ないし3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0020】
本発明の接合膜付き回路基板は、接合すべき他の回路基板に対して、接合膜付き回路基板が備える接合膜に発現した接着性により接合させるものであり、基板と、基板に設けられた回路(導体部)と、この回路の少なくとも一部(当接面)が露出するように設けられた接合膜とを有する。この接合膜は、前記基板の前記回路の一部が設けられた側の面側において、前記回路の一部を除く部分の全部または一部に設けられる。
【0021】
本実施形態では、図1に示すように、接合膜付き回路基板1は、板状をなす絶縁性の基板2と、4つの端子3を備える回路(図示せず)と、各端子3の間に設けられた5つの接合膜4とを有している。
基板2は、絶縁性基板であり、この基板2に前記回路の端子3を除く部分が設けられている。
【0022】
このような基板2の構成材料は、絶縁性を有する材料であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、ガリウムヒ素のような金属系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0023】
また、このような基板2は、その表面に、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
端子3は、前記回路の一部を構成し、本実施形態では、基板2の上面側にほぼ等間隔に4つ設けられている。各端子3は、その上面が、後述する他の回路基板7が備える端子(電極)6に当接する当接面35を構成し、この当接面35において端子3と端子6とが当接(接触)することにより電気的に接続される。
【0024】
このような端子3を構成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)またはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾールまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、酢酸ビニル等のマトリックス樹脂中に、イオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした錫酸化物(FTO)、錫酸化物(SnO)、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
その他、端子3の構成材料として、例えば、ガラス材料、ゴム材料、高分子材料等の導電性を有さない材料中に、金、銀、ニッケル、カーボン等の導電性材料(導電性粒子)を混合して、導電性を付加したような各種複合材料も使用することができる。
上述したような材料の中でも、端子3を構成する材料としては、Ni、CuまたはAuを主材料としているものが好ましい。これにより、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に接合した際に、他の回路基板7が備える端子65と端子3とを電気的により確実に接続することができる。
【0026】
接合膜4は、その表面に発現した接着性により他の回路基板7に対して接合膜付き回路基板1を接合する絶縁性の絶縁膜であり、本実施形態では、端子3の当接面35が露出するように、基板2上に5つ設けられている。すなわち、接合膜4は、平面視で、基板2上の当接面35を除く面の全部に設けられている。
この接合膜4は、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含む絶縁性の材料で構成されるものである。
【0027】
このような接合膜4は、その少なくとも一部の領域、すなわち、平面視における接合膜4の全面または一部の領域に対して、エネルギーが付与されることにより、接合膜4の少なくとも表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離するものである。そして、この接合膜4は、脱離基の脱離によって、その表面のエネルギーを付与した領域に、他の回路基板7との接着性が発現する。この表面に発現した接着性により接合膜4は、基板2と他の回路基板7とを強固に接合することができる。
【0028】
このような接合膜4は、エネルギーを付与する前の状態が、図2に示すように、シロキサン(Si−O)結合402を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格401と、このSi骨格401に結合する脱離基403とを含むものである。
そして、この接合膜4にエネルギーを付与すると、図3に示すように、一部の脱離基403がSi骨格401から脱離し、代わりに活性手404が生じる。これにより、接合膜4の表面45に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜4により、基板2と他の回路基板とが接合されている。
【0029】
このような接合膜4は、シロキサン結合402を含みランダムな原子構造を有するSi骨格401の影響によって、緻密で強固な膜(となり、エネルギーが付与され、接着性が発現した接合膜4は、基板2と他の回路基板とを強固に接合するものとなる。
また、接合膜4は、化学的に安定なSi骨格401の作用により、耐熱性に優れている。このため、接合膜付き回路基板1を他の回路基板に接合して得られる接合体を、比較的高温下の条件で使用する場合でも、接合膜4の変質、劣化を確実に防止することができ、接合膜付き回路基板1と他の回路基板との接合を確実に維持することができる。
【0030】
このような接合膜4としては、特に、接合膜4を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜4は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜4自体がより強固なものとなる。また、かかる接合膜4は、他の回路基板に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
【0031】
また、接合膜4中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜4の安定性が高くなり、接合膜付き回路基板1を他の回路基板により強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜4中のSi骨格401の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格401は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格401の特性が顕在化し、接合膜4の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
【0032】
また、Si骨格401に結合する脱離基403は、前述したように、Si骨格401から脱離することによって、接合膜4に活性手404を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基403には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格401に確実に結合しているものである必要がある。
【0033】
かかる観点から、脱離基403には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格401に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基403は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基403は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜4の接着性をより高度なものとすることができる。
【0034】
なお、上記のような各原子がSi骨格401に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基403は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜4は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0035】
このような特徴を有する接合膜4の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜4は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜4は、基板2と他の回路基板とをより強固に接合することができる。
【0036】
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜4は、接着性に特に優れることから、本発明の接合膜付き回路基板1に対して特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
以上のような接合膜付き回路基板1が、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法を用いて、他の回路基板に接合される。
以下、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法を説明する。
【0037】
<接合膜付き回路基板の接合方法>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第1実施形態について説明する。
図4ないし図6は、本実施形態の接合膜付き回路基板の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4ないし図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0038】
本実施形態にかかる接合膜付き回路基板の接合方法は、接合膜付き回路基板と、端子を備える回路を有する他の回路基板とを用意し、接合膜付き回路基板の接合膜に対してエネルギーを付与して、接合膜の表面付近に接着性を発現させる工程と、他の回路基板が備える端子と接合膜付き回路基板が備える端子とが当接するように接合膜付き回路基板を他の回路基板に重ね合わせた後、これらを加圧して、接合膜付き回路基板と他の回路基板とが接合した接合体を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合膜付き回路基板の接合方法の各工程について順次説明する。
【0039】
[1]まず、上述した接合膜付き回路基板1(本発明の接合膜付き回路基板)と他の回路基板7とを用意し、接合膜付き回路基板1の接合膜4に対してエネルギーを付与する。これにより、接合膜4に他の回路基板7との接着性が発現する。
以下、本行程について詳細に説明する。
[1A]まず、上述した接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを用意する。
接合膜付き回路基板1は、例えば、基板2と、端子3を備える回路(図示せず)とを有する回路基板9を用意し(図4(a)参照)、基板2上の端子3を除く表面25上に接合膜4を形成することにより得られる(図4(b)参照)。
【0040】
また、他の回路基板7は、基板5と、端子6を備える回路とを有している。基板5は、前記基板2として挙げたのと同様のものを用いることができる。また、基板5上の端子6は、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に接合させた際に、対応する端子3と当接する位置に設けられている。なお、図4(a)および図4(b)では、他の回路基板7を省略している。
【0041】
なお、上述したような回路基板9には、基板2の接合膜4が形成される表面25に、必要に応じて、形成される接合膜4との密着性を高める表面処理を施す。これにより、表面25を清浄化および活性化され、表面25に対して接合膜4が化学的に作用し易くなる。その結果、表面25上に接合膜4を形成したとき、表面25と接合膜4との接合強度を高めることができる。これにより、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に強固に固定することができる。
【0042】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、接合膜4との親和性を有するシランカップリング剤を付与する処理(シランカップリング処理)、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
【0043】
このような表面処理として、特に、シランカップリング処理またはプラズマ処理を行うことにより、表面25を、より清浄化および活性化することができる。その結果、表面25と接合膜4との接合強度を特に高めることができる。
また、基板2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜4との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基板2の構成材料としては、例えば、前述したような各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0044】
このような材料で構成された基板2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された基板2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを強固に接合することができる。
なお、この場合、基板2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜4を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0045】
また、表面処理に代えて、基板2の少なくとも接合膜4を形成すべき領域には、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜4との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能、接合膜4を成膜する際に接合膜4の膜成長を促進する機能(シード層)、接合膜4を保護する機能(バリア層)等を有するものが好ましい。このような中間層を介して基板2上に接合膜4が形成されることにより、接合体10の信頼性をさらに優れたものとすることができる。
【0046】
かかる中間層の構成材料としては、例えば、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、他の回路基板7には、基板5の接合膜付き回路基板1との接合に供される領域(基板5上の端子6が設けられた領域を除く表面)に、基板5の構成材料に応じて、あらかじめ、基板5と接合膜4との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接合強度をより高めることができる。
【0047】
なお、表面処理としては、基板2に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
また、基板5の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基板5の構成材料には、前述した基板2の構成材料と同様のもの、すなわち、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を用いることができる。
さらに、基板5の接合膜付き回路基板1との接合に供される領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接合強度を十分に高くすることができる。
【0048】
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。このような基または物質を有する表面は、接合膜付き回路基板1の接合膜4に対する接合強度のさらなる向上を実現し得るものとなる。
【0049】
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜付き回路基板1と特に強固に接合可能な他の回路基板7が得られる。
また、表面処理に代えて、基板5の接合膜付き回路基板1との接合に供される領域には、あらかじめ、接合膜4との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、かかる中間層を介して接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを接合することになり、より接合強度の高い接合体10が得られるようになる。
かかる中間層の構成材料には、前述の基板2に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0050】
接合膜付き回路基板1の基板2上に接合膜4を形成する方法としては、各種成膜法を用いて形成することができ、例えば、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等を用いることができるが、中でも、プラズマ重合法により成膜された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜4を効率よく成膜することができる。これにより、プラズマ重合法で成膜された接合膜4は、接合膜付き回路基板1の基板2と、他の回路基板7の基板5とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で成膜され、エネルギーが付与される前の接合膜4は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、後述する接合体10の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
以下、一例として、プラズマ重合法により、接合膜4を成膜する方法について詳述するが、まず、接合膜4の形成方法を説明するのに先立って、基板2の表面25上にプラズマ重合法を行いて接合膜4を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
【0051】
図7は、接合膜4を成膜する際に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図7に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、基板2(回路基板9)を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
【0052】
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図7に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
【0053】
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
【0054】
第1の電極130は、板状をなしており、基板2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図7に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
【0055】
第1の電極130の基板2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図7に示すように、基板2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、基板2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基板2をプラズマ処理に供することができる。
【0056】
第2の電極140は、基板2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
【0057】
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
【0058】
図9に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
【0059】
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して基板2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0060】
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
【0061】
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による基板2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部160の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、基板2の表面25上に、接合膜4を形成する方法について説明する。
【0062】
[1A−1] まず、上述したような基板2と端子3を備える回路とを有する回路基板9を用意し、端子3の当接面35を覆うマスクを形成する。そして、このような回路基板9をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
[1A−2] 次いで、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
【0063】
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
【0064】
[1A−3] 次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が表面25上に付着・堆積する。これにより、基板2の表面25上に、プラズマ重合膜で構成された接合膜4が形成される。
【0065】
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜4は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
【0066】
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
【0067】
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
【0068】
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜4の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜4の厚さを容易に調整することができる。
また、基板2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲であれば、かかる接合膜付き回路基板1を電子デバイスに適用した際に、電子デバイス中の電子部品が熱劣化、変性するのを防止することができる。
このようにして、表面25上に接合膜4を形成することができ、端子3上のマスクを除去して、接合膜付き回路基板1を得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、基板2上に形成する接合膜4の厚さを、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを接合して最終的に得られる接合体10において、端子3と端子6とが当接することにより規定される両基板間の距離よりも薄く形成する。換言すれば、互いに対向して接触している端子3と端子6とを合わせた高さよりも薄く形成する。このように、接合膜4の厚さを、端子3と端子6とを合わせた高さよりも薄く形成する理由については、後工程[2B]において説明する。
【0070】
[1B]次に、接合膜付き回路基板1の接合膜4の表面45に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜4では、脱離基403がSi骨格401から脱離する。そして、脱離基403が脱離した後には、接合膜4の表面45および内部に活性手が生じる。これにより、接合膜4の表面45に、他の回路基板7との接着性が発現する。
【0071】
このような状態の接合膜付き回路基板1は、接合膜4が他の回路基板7の基板5に化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜4に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、接合膜4を加熱する方法、接合膜4に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
【0072】
また、本実施形態では、接合膜4にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜4にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜4に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
【0073】
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図4(c)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜4中のSi骨格401が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格401と脱離基403との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜4の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜4に接着性を発現させることができる。
【0074】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基403の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜4の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜4との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0075】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜4の表面45付近の脱離基403を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜4の内部の脱離基403を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜4の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
【0076】
また、接合膜4に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0077】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜4に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による基板2の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜4から脱離する脱離基403の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基403の脱離量を調整することにより、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との間の接合強度を容易に制御することができる。
【0078】
すなわち、脱離基403の脱離量を多くすることにより、接合膜4の表面45および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜4に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基403の脱離量を少なくすることにより、接合膜4の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜4に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
【0079】
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜4は、図4に示すように、Si骨格401と脱離基403とを有している。かかる接合膜4にエネルギーが付与されると、脱離基403(本実施形態では、メチル基)がSi骨格401から脱離する。これにより、図5に示すように、接合膜4の表面45に活性手404が生じ、活性化される。その結果、接合膜4の表面に接着性が発現する。
【0080】
ここで、接合膜4を「活性化させる」とは、接合膜4の表面45および内部の脱離基403が脱離して、Si骨格401において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
【0081】
したがって、活性手404とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手404によれば、他の回路基板7に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜4に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
【0082】
[2]次に、他の回路基板7が備える端子6と、接合膜付き回路基板1が備える端子3の当接面35とが当接するように、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に重ね合わせた後、これらを厚さ方向に加圧する。これにより、端子3と、これに対応する端子6とが電気的に確実に接続された接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接合体10を得ることができる。
以下、本行程について詳細に説明する。
【0083】
[2A]他の回路基板7が備える4つの端子6の当接面65と、接合膜付き回路基板1が備える4つの端子3の当接面35とが当接するように、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを重ね合わせる(図4(d)参照)。
これにより、各回路基板が備えるそれぞれの端子同士が当接された仮接合体11が得られる(図5(e)参照)。
【0084】
[2B]上記のようにして得られた仮接合体11を、図5(f)に示すように、厚さ方向に加圧する。これにより、接合膜4が基板5の端子6を除く表面55に密着し、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合した接合体10が得られる(図5(g)参照)。
ここで、本実施形態では、基板2上の接合膜4の厚さが、接合体10(仮接合体11)において、互いに対向して接触している端子3と端子6とを合せた高さよりも薄く形成されている。そのため、仮接合体11を厚さ方向に加圧することにより、互いに対向して接触している端子3と端子6とを合わせた高さよりも低い(薄い)接合膜4が、基板5の表面55に密着して、接合膜4が表面55に接合される。しかしながら、このような接合膜4の表面55との接合は、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、アンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいた接合であるため、圧力を除去した後も、接合膜4と表面55とが剥離することがない。これにより、基板2と基板5とが接合膜4を介して強固に接合された接合体10となる。
【0085】
このようにして得られた接合体10では、接合膜4を介して基板2と基板5とが強固に接合されることにより、接合膜4の厚さ方向に、互いの基板(基板2および基板5)が引き合う力が働く。これにより、基板間で当接している端子3と端子6とが、互いに密着する力が働くので、端子3と端子6とが接触した状態が保持される結果、端子3と対応する端子6とが、電気的により確実に接続される。
【0086】
このようにして得られた接合体10では、端子3と対応する端子6とが、従来のように、導電性の材料(半田、異方導電性接着剤組成物の導電性粒子等)を介して間接的に接続されるのではなく、直接接触することによって、電気的に接続される。このように、端子間の電気的な接続が、端子同士の直接接触によるものであるため、端子間の導電性は特に優れたものとなる。また、端子3と対応する端子6とは、常に厚さ方向に加圧されているため、一部の端子間で接触しなくなり、部分的に電気的な接続が得られないといった不具合の発生を確実に防止することができる。
また、半田リフロー工程のように高温下(260℃程度)に晒すことなく、他の回路基板7が備える端子6と端子3とを電気的に接続することができるため、かかる接合膜付き回路基板1を電子デバイスに適用した際に、電子デバイス中の電子部品が熱劣化、変質するのを確実に防止することができる。
【0087】
また、接合膜付き回路基板1が備える接合膜4は、流動性を有しない固体状のものである。このため、接合体10の対向する各端子間に絶縁性の接合膜4が介在するのが確実に防止され、端子3と対応する端子6とが電気的に確実に接続される。仮に、接合膜4の代わりに、流動性を有する液状または粘液状のエポキシ系接着剤やウレタン系接着剤等の接着剤を用いて、回路基板同士を接合(接着)しようとすると、直接接触すべき端子間に接着剤が流れ込み、これらの電気的な接続を確実に確保することができなくなる可能性がある。
【0088】
また、本実施形態では、接合に供される回路基板のうち接合膜付き回路基板1のみに接合膜4が設けられている。基板2上に接合膜4を形成する際に、接合膜4の形成方法によっては、基板2が比較的長時間にわたってプラズマに曝されることになるが、本実施形態では、他の回路基板7は、プラズマに曝されることはない。したがって、例えば、他の回路基板7のプラズマに対する耐久性が著しく低い場合であっても、本実施形態にかかる方法によれば、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを強固に接合することができる。
また、仮接合体11を厚さ方向に加圧する際の圧力は、仮接合体11が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して接合膜4を基板5の表面55に強固に接合することができる。
【0089】
なお、この圧力は、回路基板9および他の回路基板7の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、回路基板9および他の回路基板7の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.1〜10MPa程度であるのが好ましく、0.2〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜4を基板5の表面55により強固に接合することができる。結果として、最終的に得られる接合体10では、端子3と対応する端子6とが、電気的により確実に接続したものとなる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基板2および他の回路基板7の各構成材料によっては、回路基板9および他の回路基板7に損傷等が生じるおそれがある。
【0090】
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、仮接合体11を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に強固に接合することができる。
ここで、本工程において、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合されるメカニズムについて説明する。
【0091】
例えば、他の回路基板7の接合膜付き回路基板1との接合に供される領域(基板5の表面55)に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜付き回路基板1の接合膜4と基板55とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜付き回路基板1の接合膜4の表面45に存在する水酸基と、他の回路基板7の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とがより強固に接合されると推察される。
【0092】
なお、前記工程[1B]で活性化された接合膜4の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[1B]の終了後、できるだけ早く本工程[2]([2A]および[2B])を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[1B]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜4の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを重ね合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0093】
換言すれば、活性化させる前の接合膜4は、Si骨格401を有する接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜4は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜4を備えた基板2を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[1B]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、接合体10の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図5(g)に示す接合体10を得ることができる。
【0094】
このようにして得られた接合体10は、基板2と基板5との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体10は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。
なお、接合体10を得た後、この接合体10に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([3A]および[3B])のうちの少なくとも一方の工程(接合体10の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体10の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0095】
[3A]得られた接合体10を加熱する。
これにより、接合体10における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体10を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体10の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体10が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0096】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、本行程[3A]を行う場合、前工程[3B]において仮接合体11を加圧した条件と同様の条件で加圧しながら行うのが好ましい。すなわち、図6(h)に示すように、接合体10を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体10の接合強度を特に高めることができる。
【0097】
[3B]図6(i)に示すように、得られた接合体10に紫外線を照射する。
これにより、接合膜4と基板2の表面25および基板5の表面55との間に形成される化学結合を増加させ、基板2および基板5と接合膜4との間の接合強度をそれぞれ高めることができる。その結果、接合体10の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[1B]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
【0098】
また、本工程[3B]を行う場合、基板2および基板5のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基板側から、紫外線を照射することにより、接合膜4に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体10における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0099】
また、接合膜付き回路基板1が有する接合膜4の厚さは、接合体10において、互いに対向して接触している端子3と端子6とを合わせた高さよりも低いものに限られず、かかる端子3と端子6と合わせた高さと同じであってもよい。これにより、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを重ね合わせた際に、接合膜4と基板5の表面55とが、圧力を加えることなく、互いに接触して接合されるので、加圧する工程を省略することができる。
【0100】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第2実施形態について説明する。
図8は、本実施形態の接合膜付き回路基板の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第2実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0101】
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とを重ね合わせた後に、接合膜4にエネルギーを付与するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合膜付き回路基板の接合方法は、前述した接合膜付き回路基板1と、端子6を備える回路を有する他の回路基板7とを用意し、他の回路基板7が備える端子6と接合膜付き回路基板1が備える端子3とが当接するように接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に重ね合わせる工程と、接合膜付き回路基板1の接合膜4に対してエネルギーを付与して、接合膜4の表面付近に接着性を発現させた後、これらを加圧して、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合した接合体10を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合膜付き回路基板の接合方法の各工程について順次説明する。
【0102】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして接合膜付き回路基板1(本発明の接合膜付き回路基板)と他の回路基板7とを用意し(図8(a)参照)、他の回路基板7が備える端子6と、接合膜付き回路基板1が備える端子3の当接面35とが当接するように、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に重ね合わせる(図8(b)参照)。なお、図8(a)において、他の回路基板7は省略している。
このようにして、各回路基板が備えるそれぞれの端子同士が当接された仮接合体11が得られる(図8(c)参照)。なお、この仮接合体11の状態では、接合膜付き回路基板1が備える接合膜4には他の回路基板7との接着性が発現していないので、不本意に、接合膜4が他の回路基板7が備える端子6と接触し、これらが接合してしまうといった不具合の発生を確実に防止することができる。その結果、最終的に得られる接合体10は、端子3と対応する端子6とが確実に当接したものとなり、信頼性の高いものとなる。
【0103】
[2]次に、図9(d)に示すように、仮接合体11中の接合膜4に対してエネルギーを付与して、接合膜4に接着性を発現させた後、図9(e)に示すように、仮接合体11を厚さ方向に加圧して接合体10を得る(図9(f)参照)。これにより、端子3と、これに対応する端子6とが電気的により確実に接続された接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接合体10を得ることができる。
以下、本行程について詳細に説明する。
【0104】
[2A]仮接合体11中の接合膜4に対してエネルギーを付与する(図9(d)参照)。
ここで、接合膜4に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。すなわち、接合膜4にエネルギー線を照射する方法、接合膜4を加熱する方法、接合膜4に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。
【0105】
このうち、基板2または基板5のうちいずれかが光透過性を有するものであれば、前記第1実施形態と同様に、仮接合体11の上面側または下面側からエネルギー線を照射する方法で接合膜4にエネルギーを付与するのが好ましい。かかる方法は、接合膜4に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0106】
一方、接合膜4を加熱することにより、接合膜4に対してエネルギーを付与する場合には、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、仮接合体11を構成する各部材が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜4を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜4の脱離基403を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
【0107】
[2B]接合膜4にエネルギー付与後の仮接合体11を、図9(e)に示すように、その厚さ方向に加圧する。これにより、接合膜4が基板5の表面55に密着し、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合した接合体10を得る(図9(f)参照)。
本実施形態では、端子3と対応する端子6とが確実に当接された状態で、接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に強固に接合することができる。このようにして得られる接合体10は、端子3と対応する端子6とがより確実に電気的に接合し、信頼性に特に優れたものとなる。
【0108】
仮接合体11の厚さ方向に圧力を加える方法は、例えば、前記第1実施形態で仮接合体11に加える方法と同様の方法を用いて加えることができる。
以上のようにして接合体10を得ることができる。
なお、接合体10を得た後、この接合体10に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]および[4B]のうちの少なくともいずれかの工程を行うようにしてもよい。
【0109】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第3実施形態について説明する。
図10は、本実施形態の接合膜付き回路基板の接合方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態および前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き回路基板1と接合される他の回路基板7として、接合膜付き回路基板1が備える接合膜と同様の接合膜が設けられたものを用いた以外は前記第1実施形態と同様である。
【0110】
すなわち、本実施形態にかかる接合膜付き回路基板の接合方法は、前述した接合膜付き回路基板1と、接合膜付き回路基板1が有する接合膜41と同様の接合膜42を、基板5の端子6側に有する他の回路基板7とを用意し、接合膜41、42に対してそれぞれエネルギーを付与して、各接合膜41、42を活性化させる工程と、他の回路基板7が備える端子6と接合膜付き回路基板1が備える端子3とが当接するように接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に重ね合わせた後、これらを加圧して、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合した接合体10を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
【0111】
[1]まず、前記第1実施形態と同様の接合膜付き回路基板1と、接合膜付き回路基板1が備える接合膜41と同様の接合膜42を有する他の回路基板7とを用意し(図10(a)参照)、図10(b)に示すように、各接合膜41、42に対して、それぞれエネルギーを付与する。
以下、本工程について詳細に説明する。
【0112】
[1A]前記第1実施形態と同様の接合膜付き回路基板1と、接合膜付き回路基板1が備える接合膜41と同様の接合膜42を有する他の回路基板7とを用意する(図10(a)参照)。
このような他の回路基板7には、端子6が接合膜付き回路基板1の端子3と当接する当接面65が露出するように、基板5上に5つの接合膜42が設けられている。すなわち、接合膜42は、平面視で、基板5上の当接面65を除く面の全部に設けられている。
【0113】
[1B]次に、図10(b)に示すように、接合膜付き回路基板1、他の回路基板7の各接合膜41、42に対して、それぞれエネルギーを付与する。各接合膜41、42にエネルギーが付与されると、各接合膜41、42では、図2に示す脱離基403がSi骨格401から脱離する。そして、脱離基403が脱離した後には、図3に示すように、各接合膜41、42の各表面415、425および内部に活性手404が生じ、各接合膜41、42が活性化される。これにより、各接合膜41、42にそれぞれ接着性が発現する。
【0114】
このような状態の接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とは、それぞれ互いに接着可能なものとなる。
なお、エネルギー付与方法としては、前記第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
ここで、接合膜4を「活性化させる」とは、前述したように、各接合膜41、42の表面415、425および内部の脱離基403が脱離して、Si骨格401に終端化されていない結合手(未結合手)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手404とは、未結合手または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。
【0115】
[2]次に、図10(c)に示すように、他の回路基板7が備える端子6と接合膜付き回路基板1が備える端子3とが当接するように接合膜付き回路基板1を他の回路基板7に重ね合わせた後、図10(d)に示すように、これらを加圧して、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが接合した接合体10を得る(図10(e)参照)。
このような接合体10では、お互いに活性化された接合膜41と接合膜42とが接合され、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7との接合強度を特に優れたものとすることができる。その結果、端子3と端子6とが当接した状態が長期間にわたって維持され、接合体10の信頼性を特に優れたものとすることができる。
ここで、本工程において、接合膜41、接合膜42をそれぞれ有する接合膜付き回路基板同士を接合するが、この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の双方または一方に基づくものであると推察される。
【0116】
(i)例えば、各接合膜41、42の表面415、425に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、各接合膜41、42同士が密着するように、かかる接合膜付き回路基板同士を貼り合わせたとき、接合膜41、42の表面415、425に存在する水酸基同士が、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜付き回路基板同士が接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、2枚の接合膜付き回路基板同士の間では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、2枚の接合膜付き回路基板同士がより強固に接合されると推察される。
【0117】
(ii)2枚の接合膜付き回路基板同士を貼り合わせると、各接合膜41、42の表面415、425や内部に生じた終端化されていない結合手(未結合手)同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、各接合膜41、42を構成するそれぞれの母材(Si骨格401)同士が直接接合して、各接合膜41、42同士が一体化する。
以上のような(i)または(ii)のメカニズムにより、接合膜付き回路基板1と他の回路基板7とが強固に接合した接合体10を得ることができる。
なお、接合体10を得た後、この接合体10に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]および[4B]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
【0118】
<電子デバイス>
次に、本発明の電子デバイスについて説明する。
以上のような本発明の接合膜付き回路基板は、各種電子デバイスが備える回路基板として好適に適用することができる。
本発明の接合膜付き回路基板が適用される本発明の電子デバイスとしては、例えば、発光ダイオード、半導体レーザーのような発光素子、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子、太陽電池のような光電変換素子、コンデンサー、ダイオード、チップコイルのような電子部品、または、これらの各素子および部品が実装される回路基板等に適用でき、これらを本発明の接合膜付き回路基板の接合方法を用いて、他の回路基板が備える端子と電気的に接続することができる。
【0119】
<電子機器>
次に、上述した本発明の電子デバイスを備える本発明の電子機器について説明する。
ここでは、代表的に、本発明の電子デバイスを、透過型液晶表示装置に適用した場合の実施形態について説明する。
図11は、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法を適用して得られた透過型液晶装置表示装置を示す上面図、図12は、図11に示す透過型液晶表示装置が備える液晶パネルの分解斜視図、図13は、図11中A−A線断面図、図14は、図11中B−B線断面図である。なお、各図では、図が煩雑になるのを避けるため、一部の部材を省略している。また、以下の説明では、図11中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言い、図12〜図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0120】
各図に示す透過型液晶表示装置(以下、単に「液晶表示装置」と言う)501は、液晶パネル(表示パネル)502と、液晶パネル502を駆動するための複数のドライバICパッケージ503と、2つの入力用配線基板505と、バックライト(光源手段)506とを有している。この液晶表示装置501は、バックライト506からの光を液晶パネル502に透過させることにより画像(情報)を表示し得るものである。
【0121】
液晶パネル502は、互いに対向して配置された第1の基材507と第2の基材508とを有し、これらの第1の基材507と第2の基材508との間には、表示領域を囲むようにしてシール材509(図13参照)が設けられている。
そして、これらの第1の基材507、第2の基材508およびシール材509により画成される空間には、電気光学物質である液晶が収納され、図12および図13に示すように、液晶層(中間層)510が形成されている。
【0122】
第1の基材507および第2の基材508は、それぞれ、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料等で構成されている。
第1の基材507は、その上面(液晶層510側の面)に、マトリックス状(行列状)に配置された複数の画素電極511と、X方向に延在する信号電極512とが設けられ、1列分の画素電極511の各々が1本の信号電極512に、それぞれ、TFD素子やTFT素子のようなスイッチング素子513を介して接続されている。
【0123】
また、第1の基材507の下面には、偏光板514が設けられている。
一方、第2の基材508の下面(液晶層510側の面)には、複数の帯状をなす走査電極515が設けられている。これらの走査電極515は、信号電極512とほぼ直交するY方向に沿って、互いに所定の間隔をおいてほぼ平行に配置され、かつ、画素電極511の対向電極となるように配列されている。
【0124】
画素電極511と走査電極515とが重なる部分(この近傍の部分も含む)が1画素を構成し、これらの電極間において、各画素毎に液晶層510の液晶が駆動、すなわち、液晶の配向状態が変化する。
ここで、第1の基板507は、図11に示すように、平面視で第2の基板508の外縁より外側(図11中、左側および上側)へ張り出した張出領域(額縁)507Aを有している。
【0125】
この張出領域507Aの上面には、信号電極512および走査電極515に連続する配線パターン522が形成されている。
各走査電極515の下面には、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)の有色層(カラーフィルター)516が設けられ、これらの各有色層516がブラックマトリックス517によって仕切られている。
【0126】
また、第2の基板508の上面には、前記偏光板514と偏光軸が異なる偏光板518が設けられている。
このような構成の液晶パネル502では、バックライト506から発せられた光は、偏光板514で偏光された後、第1の基板507および各画素電極511を介して、液晶層510に入射する。液晶層510に入射した光は、各画素毎に配向状態が制御された液晶により強度変調される。強度変調された各光は、有色層516、走査電極515および第2の基板508を通過した後、偏光板518で偏光され、外部に出射する。これにより、液晶表示装置501では、第2の基板508の液晶層510と反対側から、例えば、文字、数字、図形等のカラー画像動画および静止画の双方を含む)を視認することができる。
【0127】
図11および図13に示すように、各ドライバICパッケージ503は、それぞれ、駆動用配線パターン519が設けられた可撓性基板520と、該可撓性基板520内に収納され、駆動用配線パターン519と電気的に接続されたドライバIC521とを有している。
ドライバIC521は、信号電極512および走査電極515に供給すべき駆動信号を生成する機能を有するものであり、半導体チップで構成されている。
【0128】
また、図14に示すように、駆動用配線パターン519は、配線パターン522に対応するようにストライプ状に設けられ、駆動用配線パターン519の各配線519aの一端部が、それぞれ、配線パターン522の各配線522aと接続されている。
各入力用配線基板505は、それぞれ、入力用配線パターン523を有するプリント配線基板であり、電源用ICや制御用ICが実装された回路基板(図示せず)からの信号(画像信号等)を、その入力用配線パターン523を介して、各ドライバIC521に伝達する。
各入力用配線パターン523は、各駆動用配線パターン519に対応するように設けられ、入力用配線パターン523の各配線の一端部は、それぞれ、駆動用配線パターン519の各配線519aと接続されている。また、入力用配線パターン523の各配線の他端部は、それぞれ、回路基板が有する各配線と接続されている。
【0129】
このように構成された液晶表示装置501の駆動系では、回路基板からの信号が、各入力用配線パターン523および各駆動用配線パターン519を介して各ドライバIC521に入力され、これら各ドライバIC521によって信号電極512および走査電極515に供給すべき駆動信号が生成される。信号電極側のドライバIC521(図11中Y方向に沿って並列するドライバIC521)によって生成された駆動信号は、駆動用配線パターン519および信号電極512を介してスイッチング素子に供給される。スイッチング素子は、供給された駆動信号に応じて画素電極511に電流を供給する。また、走査電極515側のドライバIC521(図11中X方向に沿って並列するドライバIC521)によって生成された駆動信号は、駆動用配線パターン519を介して走査電極515に供給される。これにより、画素電極511と走査電極515との間で、各画素毎に、液晶層510の液晶が駆動、すなわち、液晶の配向状態が変化する。
以上のような液晶表示装置において、図14に示すように、配線パターン522が設けられた張出領域507A、駆動用配線パターン519が設けられたドライバICパッケージ503のうちの一方、また、入力用配線基板505、ドライバICパッケージ503のうちの一方に本発明の電子デバイスを適用することができる。
【0130】
そして、張出領域507AとドライバICパッケージ503、入力用配線基板505とドライバICパッケージ503が、それぞれ前述した各実施形態の接合膜付き回路基板の接合方法によって接合されている。
なお、本実施形態では、図14に示すように、張出領域507Aに設けられた配線パターン522とドライバICパッケージ503に設けられた駆動用配線パターン519との間と、この駆動用配線パターン519と入力用配線基板505に設けられた入力用配線パターン523との間が、電気的に接続されている。
【0131】
このような液晶表示装置501は、配線パターン522、駆動用配線パターン519、入力用配線パターン523の各ピッチが比較的狭く設定されていても、配線パターン522と駆動用配線パターン519、および、駆動用配線パターン519と入力用配線パターン523とが、隣接する配線間の絶縁性を確実に保持しつつ、導電性よく接続されている。その結果、液晶表示装置501は、小型化を図りつつ、高い信頼性を得ることができる。
【0132】
以上、本発明の接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイス、および電子機器について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合膜付き回路基板の回路が備える端子は、4つに限られず、1つ、2つ、3つ、または5つ以上有するものであってもよい。
【0133】
また、本発明の接合膜付き回路基板が有する接合膜は、平面視で、基板上の端子の当接面を除く面の全部に設けられていなくてもよい。例えば、基板上の当接面を除く一部の面に設けられたものであってもよい。
また、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の接合膜付き回路基板の実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図2】本発明の接合膜付き回路基板が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図3】本発明の接合膜付き回路基板が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図4】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。
【図8】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図9】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図10】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図11】本発明の接合膜付き回路基板の接合方法を適用して得られた透過型液晶装置表示装置を示す上面図である。
【図12】図11に示す液晶表示装置が備える液晶パネルの分解斜視図である。
【図13】図11中A−A線断面図である。
【図14】図11中B−B線断面図である。
【符号の説明】
【0135】
1……接合膜付き回路基板 2……基板 25……表面 3……端子 35……当接面 4、41、42……接合膜 45、415、425……表面 5……基板 55……表面 6……端子 65……当接面 7……他の回路基板 9……回路基板 10……接合体 11……仮接合体 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130、140……電極 139……静電チャック(吸着機構) 160……ガス供給部 170……排気ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス(整合器) 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 401……Si骨格 402……シロキサン(Si−O)結合 403……脱離基 404……活性手 500、501……液晶表示装置 502……液晶パネル 503……ドライバICパッケージ 505……入力用配線基板 506……バックライト 507……第1の基材 507A……張出領域 508……第2の基材 509……シール材 510……液晶層 511……画素電極 512……信号電極 513……スイッチング素子 514……偏光板 515……走査電極 516……有色層 517……ブラックマトリックス 518……偏光板 519……駆動用配線パターン 520……可撓性基板 521……ドライバIC 522……配線パターン 523……入力用配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
他の回路基板の端子と当接され、前記基板の一方の面側に設けられた当接面を備えた導体部と、
前記一方の面側に設けられ、前記当接面を除く部分の全部または一部に設けられた絶縁性の接合膜とを有し、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを有し、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーが付与されることにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に、前記他の回路基板との接着性が発現し、この接着性により、前記当接面において、前記導体部と前記端子とが当接して電気的に接続するものであることを特徴とする接合膜付き回路基板。
【請求項2】
前記接合膜は、前記他の回路基板の前記端子以外の領域を、前記他の回路基板と接合する請求項1に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項3】
前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1または2に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項3に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項5】
前記接合膜はプラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項6】
前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし5のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項7】
前記導体部は、Ni、CuまたはAuを主材料として構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項8】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし7のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項9】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項8に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項10】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項8または9に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項11】
前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項8ないし10のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項12】
前記基板の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし11のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項13】
前記表面処理は、前記接合膜との親和性を有するシランカップリング剤を付与する処理、プラズマ処理である請求項1ないし12のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項14】
前記導体部は、前記基板の前記一方の面側の表面から突出するように設けられたものである請求項1ないし13のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の接合膜付き回路基板と、前記端子を備えた前記他の回路基板とを用意し、前記接合膜付き回路基板が備える前記接合膜に前記エネルギーを付与し、前記接合膜に接着性を発現させる工程と、
前記端子と前記導体部の前記当接面とが当接するように、当該接合膜付き回路基板を前記他の回路基板に重ね合わせることにより、前記接合膜に発現した接着性によって、当該接合膜付き基板を前記他の回路基板に接合させて、前記導体部と前記端子とが電気的に接続する工程とを有することを特徴とする接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれかに記載の接合膜付き回路基板と、前記端子を備えた前記他の回路基板とを用意し、前記端子と前記導体部の前記当接面とが当接するように、当該接合膜付き回路基板を前記他の回路基板に重ね合わせる工程と、
当該接合膜付き回路基板が備える前記接合膜に前記エネルギーを付与し、前記接合膜に接着性を発現させ、前記接合膜に発現した接着性によって、当該接合膜付き基板を前記他の回路基板に接合させて、前記導体部と前記端子とが電気的に接続する工程とを有することを特徴とする接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項17】
前記他の回路基板は、前記接合膜と同様の接合膜を、前記端子が設けられた面側に有している請求項15または16に記載の接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項18】
請求項1ないし14のいずれかに記載の接合膜付き回路基板を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の電子デバイスと、該電子デバイスを搭載する前記他の回路基板とを有し、前記電子デバイスが備える前記導体部の前記当接面と、前記他の回路基板が備える前記端子とが、前記当接面において当接して電気的に接続された状態で前記電子デバイスと前記他の回路基板とが接合されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−16015(P2010−16015A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171853(P2008−171853)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】