説明

接着フィルムおよび配線基板

【課題】配線基板に半導体チップをフリップチップ実装する際に、配線基板の接続パッド又はバンプと半導体チップのバンプとの間から、非導電性のフィラーと樹脂組成物とが十分に排除され、確実な導通を確保できる接着フィルム及びこれを用いた配線基板を提供する。
【解決手段】接着フィルムは、配線基板にバンプを有する半導体チップ200をフリップチップ実装するための接着フィルムであって、加熱接着温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘度が、100Pa・s未満である。また、配線基板100は、半導体チップの外部接続端子にフリップチップ接続するバンプ130が形成された面に、フリップチップ接続に先立ち前記半導体チップを所定位置に配置した状態で加熱する予備加熱温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘度が、100Pa・s未満である接着フィルムが貼合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板にバンプを有する半導体チップをフリップチップ実装するための接
着フィルムおよびこの接着フィルムが貼合された配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板にバンプを有する半導体チップをフリップチップ実装する際、導電性粒子を絶
縁性のバインダー組成物に分散させてなる異方性導電フィルムが広く使用されている。こ
のような導電性粒子としては、配線基板の接続パッドと半導体チップのバンプとの間で潰
れるように、樹脂コアの表面に無電解メッキ層を形成したものが用いられている。
【0003】
近年、実装基板における配線は狭ピッチ化されており、バンプの狭面積化も進むため、
異方性導電接着フィルムに使用する導電性粒子の粒子径も小さくすることが必要となるが
、均一で小さい粒子径の樹脂粒子を製造することが非常に難しいという問題がある。この
ため、配線基板と半導体チップとの間に非導電性接着フィルム(NCF)を挟持させ、配
線基板の接続パッド又はバンプに半導体チップのバンプをそれが潰れるように当接させ、
非導電性接着フィルムを硬化させることにより両者を接続固定すること(NCF接合と称
す)が行われるようになっている。
【0004】
NCF接合の場合、非導電性接着フィルムの接続信頼性を向上させるために、非導電性
の接着フィルムには、その貯蔵弾性率、線膨張係数、溶融粘度等の調整のために、シリカ
微粒子等の非導電性のフィラーを樹脂固形分100体積部に対し1〜50体積部配合する
ことが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
NCF接合を行う際に、高温で一気に接着フィルムを硬化させてしまうと、接着フィル
ム中に含まれる揮発成分が突沸したり、半導体チップに接着フィルムが焼きついたりする
ことにより、ボイドが生じ、リフロークラックの原因になってしまう場合があった。
【0006】
そこで、NCF接合(フリップチップ接続(外部接続端子の溶融接合))に先立ち、配
線基板と半導体チップとを接着フィルムを介して所定位置に配置した状態で、60℃〜1
40℃程度の低温で加熱する予備加熱が行われることがある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−275444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、予備加熱により揮発成分を除去するためには、ある程度の加熱時間を要する
ため、予備加熱によりある程度接着フィルムの硬化が進行する。したがって、予備硬化が
終了した時点で、配線基板の接続パッド又はバンプと半導体チップのバンプとが接触した
状態になっていなければならない。
【0009】
しかしながら、シリカ微粒子等のフィラーを配合した接着フィルムを使用する場合、予
備硬化温度では、配線基板の接続パッド又はバンプと半導体チップのバンプとの間からシ
リカ微粒子と樹脂組成物とが十分に排除されない場合があり、そのような場合、配線基板
と半導体チップとの間で導通が取れないという問題が生ずる。
【0010】
本発明は、配線基板にバンプを有する半導体チップをフリップチップ実装する際に、配
線基板の接続パッド又はバンプと半導体チップのバンプとの間から、非導電性のフィラー
と樹脂組成物とが十分に排除され、確実な導通を確保できるようにすることを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の接着フィルムは、配線基板に半導体チップをフリッ
プチップ実装するための接着フィルムであって、フリップチップ接続に先立ち前記配線基
板と前記半導体チップとを所定位置に配置した状態で加熱する予備加熱温度におけるキャ
ピラリレオメータ法による最低粘度が、100Pa・s未満であることを特徴とする。
【0012】
本発明の接着フィルムは、常温で液状のエポキシ樹脂と予備加熱温度以下の軟化点を有
するエポキシ樹脂と予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂とを含み、前記常温
で液状のエポキシ樹脂と前記予備加熱温度以下の軟化点を有するエポキシ樹脂とを合わせ
て100重量部に対して、前記予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂は150
重量部以下であることが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明の配線基板は、半導体チップの外部接続端子に
フリップチップ接続するバンプが形成された面に、フリップチップ接続に先立ち前記半導
体チップを所定位置に配置した状態で加熱する予備加熱温度におけるキャピラリレオメー
タ法による最低粘度が、100Pa・s未満である接着フィルムが貼合されていることを
特徴とする。
【0014】
本発明の配線基板は、前記接着フィルムが、常温で液状のエポキシ樹脂と予備加熱温度
以下の軟化点を有するエポキシ樹脂と予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂と
を含み、前記常温で液状のエポキシ樹脂と前記予備加熱温度以下の軟化点を有するエポキ
シ樹脂とを合わせて100重量部に対して、前記予備加熱温度以上の軟化点を有するエポ
キシ樹脂が150重量部以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、配線基板にバンプを有する半導体チップをフリップチップ実装する際に、配
線基板の接続パッド又はバンプと半導体チップのバンプとの間から、非導電性のフィラー
と樹脂組成物とが十分に排除され、確実な導通を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る接着フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法を示す断面模式図である。
【図2】本実施形態に係る接着フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法を示す断面模式図である。
【図3】本実施形態に係る接着フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法を示す断面模式図である。
【図4】本実施形態に係る接着フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法を示す断面模式図である。
【図5】本実施形態に係る接着フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法を示す断面模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明による接着フィルムは、フリップチップ接続に先立ち、配線基板と半導体チップ
とを接着フィルムを介して所定位置に配置した状態で、60℃〜140℃程度の低温で加
熱する予備加熱が行われる場合に、好適に使用されるものである。
【0018】
本実施形態に係る接着フィルムは、支持ベースフィルムを有しており、支持ベースフィ
ルムの表面には、接着剤層が積層されている。
【0019】
接着剤層を構成する樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂及び/又は高分子を主成分とし
てなり、加熱により軟化し、かつフィルム形成能のある樹脂組成物であって、さらに熱硬
化により耐熱性、電気特性など層間絶縁材に要求される特性を満足するものであれば特に
限定されるものではない。例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド樹脂系
、ポリアミドイミド樹脂系、ポリシアネート樹脂系、ポリエステル樹脂系、熱硬化型ポリ
フェニレンエーテル樹脂系等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて使用したり、多
層構造を有する接着フィルム層とすることも可能である。中でも、層間絶縁材として信頼
性とコスト的に優れたエポキシ樹脂系においては、後述の本発明のエポキシ樹脂組成物が
好ましい。
【0020】
上記樹脂組成物中には、予備加熱時の温度より軟化点の低い樹脂を少なくとも10重量
%以上含むことが必要である。10重量%未満では、予備硬化温度で、配線基板の接続パ
ッド又はバンプと半導体チップのバンプとの間からシリカ微粒子と樹脂組成物とが十分に
排除されない。好ましくは、常温で液状の樹脂及び/又は予備加熱温度より低い軟化点を
有する常温で固形の樹脂の合計が10〜90重量%の範囲にあるのがよい。
【0021】
さらに該樹脂組成物には上記主成分の他に、公知慣用の添加剤を用いることができる。
例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、無定形シリカ
、タルク、クレー、雲母粉などの無機充填剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の
難燃助剤、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダーの如き有機充填剤、ア
スベスト、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤
及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカッ
プリング剤等の密着性付与剤のような添加剤を使用できる。また、必要に応じてフタロシ
アニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー
、酸化チタン、カーボンブラック等の公知慣用の着色剤を用いることができる。
【0022】
接着剤層は、フリップチップ接続に先立ち前記配線基板と前記半導体チップとを所定位
置に配置した状態で加熱する予備加熱温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘
度が、100Pa・s未満である。100Pa・s以上では、予備硬化温度で、配線基板
の接続パッド又はバンプと半導体チップのバンプとの間からシリカ微粒子と樹脂組成物と
が十分に排除されない。
【0023】
キャピラリレオメータ法による測定では、熱硬化性樹脂の場合、熱を加えると硬化反応
が進行し粘度が徐々に高くなる。そのため、試料を予め接着フィルムの予備加熱温度に設
定したシリンダー内に投入し、すばやくノズルから押し出し、プランジャーのストローク
を連続的に測定する。試料への伝熱により試料が溶融しはじめ粘度は一旦低下し、その後
硬化反応が進行し粘度が徐々に高くなっていく。この変化を測定し、粘度が最も低下した
ときの値を最低粘度とする。
【0024】
キャピラリレオメータのノズル長さ、ノズル径、シリンダー内に樹脂組成物を投入した
後押し出すまでの予熱時間等の測定条件は、接着剤層を構成する樹脂組成物の性質に応じ
て、その樹脂組成物の予備加熱温度における「最低の」溶融粘度が測定できるように適宜
設定する。一般に、粘度の低い樹脂の場合は、ノズル径が細くノズル長が長いものを使用
、粘度が高い場合は、ノズル径が太くノズル長が短いものを使用しなければ正しい最低粘
度が測定できない。また、予熱時間が長すぎると、予熱中に熱硬化が進行し但し最低粘度
が測定できない。
【0025】
次に接着剤層として好適に用いられる樹脂組成物の例について詳細に説明する。樹脂組
成物は、下記成分を含有していることが好ましい。
(A)常温で液状のエポキシ樹脂
(B)予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂
(B’)予備加熱温度以下の軟化点を有するエポキシ樹脂
(C)エポキシ硬化剤、
(D)バインダーポリマー
【0026】
(A)成分「常温で液状のエポキシ樹脂」は、接着フィルムの可とう性及び予備加熱を
する際の熱流動性を付与するための成分である。具体的には、エポキシ当量200程度の
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラ
ック型エポキシ樹脂、あるいはエポキシ変性液状ゴムやゴム分散液状エポキシ樹脂が好ま
しい。また、反応性希釈剤として知られるアリルグリシジルエーテル、グリシジルメタク
リレート、アルキルフェニルグリシジルエーテルや、多価アルコール型グリシジルエーテ
ルの他、脂環式エポキシ樹脂など公知慣用のものを単独あるいは2種以上組み合わせて使
用することができる。これらの常温で液状のエポキシ樹脂は後述の他の常温液状樹脂成分
及び残留する有機溶剤とあわせて、樹脂組成物中10〜55重量%の範囲にあることが必
要である。10重量%未満では、接着フィルムの可とう性、予備加熱をする際の熱流動性
が悪くなる。一方、55重量%を超えると、支持フィルム及び保護フィルムとの剥離性に
問題を生じる。常温液状樹脂成分については低粘度のものは少なめに、高粘度のものは多
めに調整される。
【0027】
(B)、(B’)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹
脂であることがこのましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノ
ールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポ
キシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂
、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフ
ェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジル
イソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂など公知慣用のものを、単独あるいは2種以上組
み合わせて使用することができる。さらには難燃性を付与するために臭素化した上記エポ
キシ樹脂が用いられる。これらの多官能エポキシ樹脂中、予備加熱時の温度以上の軟化点
を有する成分が必要である。これにより、予備加熱時の熱流動性を抑制することができ、
加熱硬化後の表面平滑性も優れたものとなる。
【0028】
なお、(B’)成分としては、常温で液状の多官能エポキシ樹脂が含まれるので、その
場合前述の(A)成分と同じ添加範囲の制限を受ける。
【0029】
(B’)成分は予備加熱温度以下の軟化点を有する1分子中に2個以上のエポキシ基を
有する多官能エポキシ樹脂であり、これを用いて接着フィルムを得る場合には、(A)常
温で液状のエポキシ樹脂及び(C)エポキシ硬化剤に加え、(D)バインダーポリマーを
必須成分とする。(A)成分以外の常温液状樹脂及び/又は有機溶剤を含んでいてもよく
、(A)成分を含む常温液状樹脂及び/又は有機溶剤の合計が10乃至55重量%であり
、かつ(D)成分が樹脂組成物中5乃至50重量%である。
【0030】
本発明における(C)成分としては、潜在性エポキシ硬化剤を用いることが好ましい。
潜在性エポキシ硬化剤は、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤
またはこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したものであって、室温以下での
ポットライフが長く、かつ昇温中、予備加熱時の温度より高い温度で反応を開始するエポ
キシ硬化剤が選択される。これにより、予備加熱時の十分な熱流動性の維持が可能となり
、予備加熱の条件設定が容易となる。反応開始温度は、ビスフェノールAジグリシジルエ
ーテル(エポキシ当量;186〜192)100重量部に硬化剤を5重量部添加して均一
に溶解又は分散し、昇温速度5℃/分で示差走査熱量測定(DSC)した場合の発熱ピー
ク開始温度と規定した。例えばジシアンジアミド(開始温度165〜175℃)、2―フ
ェニル―4―メチル―5―ヒドロキシメチルイミダゾール(開始温度135〜145℃)
、2―フェニル―4、5―ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(開始温度145〜1
55℃)、2、4―ジアミノ―6―(2―メチル―1―イミダゾリルエチル)―1、3、
5―トリアジン・イソシアヌル酸付加物(開始温度125〜135℃)などが挙げられる
。これらの潜在性エポキシ硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂に対して2〜12重量%の範
囲にあるのが好ましい。2重量%より少ないと硬化不足であるし、12重量%を超えると
硬化しすぎて脆くなり好ましくない。また、潜在性と反応開始温度の条件が伴えば、フェ
ノール系硬化剤及び硬化促進剤を使用することもできる。例えば、フェノールノボラック
樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂と硬化促進剤としてイミダゾール系化合物、有
機ホスフィン系化合物、具体的にはテトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレ
ート等が挙げられる。添加量としては、エポキシ樹脂のエポキシ基に対してフェノール性
水酸基が0.6〜1.0当量の範囲に、硬化促進剤は両樹脂総量の0.5〜2重量%なるよ
うに調整される。さらに、上記の各種潜在性エポキシ硬化剤は単独あるいは2種以上組み
合わせて使用したり、公知慣用の硬化促進剤を併用することもできる。
【0031】
接着フィルムの機械的強度、可とう性を向上させ、取り扱いを容易にするのに(D)成
分としてバインダーポリマーが必要となる。バインダーポリマーは、重量平均分子量5,
000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が5,000未満
であると機械的強度、可とう性向上の効果が発揮されないし、100,000を超えると
有機溶剤への溶解性、エポキシ樹脂との相溶性が悪くなる。添加量は5〜50重量%の範
囲にあるのが好ましい。5重量%未満であると機械的強度、可とう性向上の効果が発揮さ
れないし、50重量%を超えると熱流動性が悪くなり好ましくない。本成分を含有すれば
、熱流動性の抑制が可能となるので、予備加熱温度以上の軟化点を有する多官能エポキシ
樹脂は必須でなくなる。また、バインダーポリマーには、フィルム製造時の乾燥工程にお
いて支持フィルムへのハジキ防止の効果もある。具体的には、(臭素化)フェノキシ樹脂
、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリシアネート樹脂、ポ
リエステル樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、これらを2種以上
組み合わせて使用することも可能である。
【0032】
上記成分の他、接着フィルムの取扱い性の向上、熱伝導性の向上、難燃性の付与、表面
硬度の向上などのため、(E)成分として、無機フィラーを配合することが好ましい。無
機フィラーの配合量は、絶縁層用接着フィルムの樹脂成分100体積部に対して、2〜5
0体積部であることが好ましい。2体積部未満であると、熱膨張率が大きいので寸法精度
のばらつきが大きくなり、部品実装の位置ずれによって接続信頼性の低下が起こる。50
体積部を超えると、弾性率が増大し接着性の低下や発生する熱応力が大きくなり、接続信
頼性が低下する。無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭
酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシ
ウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、
窒化ホウ素、結晶性シリカ、非結晶性シリカ等が挙げられる。
【0033】
上記説明において、(A)〜(E)成分について、目安の配合割合を記載したが、予備
加熱温度におけるキャピラリレオメータ法による接着剤層の最低粘度を、100Pa・s
未満とするためには、(A)常温で液状のエポキシ樹脂と(B’)予備加熱温度以下の軟
化点を有するエポキシ樹脂の合計100重量部に対して、(B)予備加熱温度以上の軟化
点を有するエポキシ樹脂は、150重量部以下であることが好ましいが、(B’)予備加
熱温度以下の軟化点を有するエポキシ樹脂が、予備加熱温度での粘度が高いほど少なくす
る必要がある。また、他の成分との関係でも(B)予備加熱温度以上の軟化点を有するエ
ポキシ樹脂の割合は調整する必要がある。例えば、(E)フィラーが多いほど(B)予備
加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂の割合は少なくする必要があり、(D)バイ
ンダーポリマーの重量平均が大きいほど(B)予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキ
シ樹脂の割合は少なくする必要がある。
【0034】
本発明の接着フィルムは、ベースフィルムを支持体として所定の有機溶剤に溶解した樹
脂ワニスを塗布後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させて樹脂組成物とし
、作製することができる。支持ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル
等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート
、さらには離型紙や銅箔、アルミニウム箔の如き金属箔などが挙げられる。支持ベースフ
ィルムの厚みとしては10〜150μmが一般的である。なお、支持フィルムにはマッド
処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。有機溶剤としては、通常溶剤、
例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢
酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロ
ソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン
等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピ
ロリドンなどを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、残留有機溶
剤量は200℃に保持された乾燥機中にて30分乾燥した時の、乾燥前後の重量減少率で
規定した。
【0035】
樹脂組成物の厚みは、予備加熱される配線基板の導体厚以上で、半導体装置の用途によ
り異なる必要絶縁性(厚み)により異なるが、配線基板の絶縁層厚+(−20〜+50)
μmの範囲であるのが一般的である。このようにして得られる樹脂組成物と支持ベースフ
ィルムとからなる本実施の形態の接着フィルムは、そのまま又は樹脂組成物の他の面に保
護フィルムをさらに積層し、ロール状に巻きとって貯蔵される。保護フィルムとしては、
支持ベースフィルムと同じくポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等のポリオ
レフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、さらには離型紙などが挙げら
れる。保護フィルムの厚みとしては10〜100μmが一般的である。なお、保護フィル
ムにはマッド処理、エンボス加工の他、離型処理を施してあってもよい。該樹脂組成物は
後に述べるように予備加熱時に樹脂のシミ出しが生じるので、ロールの両端あるいは片端
に樹脂のない支持ベースフィルム部分を5mm程度以上設けてあれば、予備加熱部の樹脂
付着防止、支持ベースフィルムの剥離が容易になるなどの利点もある。
【0036】
次に、本発明の接着フィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造法について、図1
から図5を用いて説明する。
【0037】
半導体チップ200、は図1(a)に示すように、半導体素子211と、半導体素子2
11に固設されている例えばAlからなる電極パッド212と、電極パッド212に固設
されている例えばAuやCuからなるスタッドバンプ214で構成されている。なお、こ
の電極パッド212とスタッドバンプとにより請求項に記載の外部接続端子が構成されて
いる。このとき、電極パッド212の少なくとも一部を露出するように半導体素子211
の一方の面を被覆する保護層213を有していてもよい。
【0038】
配線基板100は、図1(b)のように、絶縁性の基材120上に導体パターン110
が形成されたテープ状の基板から形成されており、導体パターン110の図2記載の接着
層150(本実施の形態に係る接着フィルムにより形成)に接合される面には、例えばS
nAg等のSn系合金からなるバンプ130が設けられている。また、導体パターン11
0が形成されている面の反対の面には、基材120を貫通する突起状電極部140が設け
られている。
【0039】
本実施形態の接着フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法では、まず、図2に示
すように、配線基板100のバンプ130側の全面上に、本実施形態の接着フィルムを載
置する。そして、80℃〜130℃、0.1MPa〜0.6MPaで、10秒〜60秒間
、加熱加圧を行うことにより、接着フィルムを配線基板100に貼合する。これにより、
接着フィルムは、導体パターン110の上面、導体パターン110の銅等が除去されて基
材120が露出した部分、および突起状電極部140の内部、のすべてに配され、接着層
150が形成される。また、接着層150の表面は、導体パターン110と略平行となる

【0040】
次に、図3に示すように、接着フィルムを貼合した配線基板100と、スタッドバンプ
214が形成された半導体チップ200とを対向させて、バンプ130とスタッドバンプ
214とが接続される所定位置に位置決めした後、図に示す矢印X方向に半導体チップ2
00を降下させ、配線基板100上に半導体チップ200を載置する。その後、接着フィ
ルムに含まれる揮発成分を除去するため、予備加熱を行う。予備加熱は、60℃〜140
℃、0.1MPa〜0.6MPaで、10分〜40分、加熱加圧することにより行う。こ
れにより、接着フィルムに含まれる揮発成分が除去される。また、バンプ130とスタッ
ドバンプ214との間の接着フィルムは排除され、図4に示すように、バンプ130とス
タッドバンプ214とが接触した状態となるとともに、接着フィルムはある程度硬化が進
行した状態となる。なお、接着層150と半導体チップ200の間に間隙300を形成し
、間隙部分を減圧しておくことによって、接着層150と半導体チップ200の表面の間
で気泡の残留を防止し、かつ信頼性の高い接着を行うことができる。
【0041】
次に、220℃〜260℃で2分〜8分間加熱して、AuとSn系合金の共晶点におけ
る金属の溶融接合により、バンプ130とスタッドバンプ214とを電気的に接続させる
。このとき、図5に示すように、位置決めしたテープ基板100および半導体チップ20
0を、接着層150と半導体チップ200の表面が接触するように、更に押圧する。その
後、150℃〜200℃で40分〜90分間加熱して、接着フィルムを完全に硬化させる

【実施例】
【0042】
(実施例1)
(A)液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165、DIC(株)製EP
ICLON EXA-830LVP)60.0重量部と、(B’1)アルキルフェノールノボラック型エポ
キシ樹脂(120℃における粘度が57Pa・s、DIC株式会社製N−690)40.
0重量部、(B)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量2000、軟化点12
4℃、大日本インキ化学(株)製エピクロン7051)50.0重量部をメチルエチルケ
トン(以下、MEKと記す)に攪拌しながら加熱溶解させ、そこへ(D1)ジアリルフタ
レート樹脂ワニス(ダイセル化学工業株式会社製ダイセルジアリルフタレートモノマーを
重量平均分子量74,522となるように重合反応させた後、攪拌しながらMEKに加熱
溶解させたもの)30.0重量部、(C)2−エチル−4−メチルイミダゾール5.0重
量部、さらに(E)微粉砕シリカ10.0重量部を添加し樹脂組成物ワニスを作製した。
そのワニスを厚さ30μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)フィル
ム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるようにローラーコーターにて塗布、80〜100
℃で10分乾燥させ、接着フィルムを得た。
【0043】
(実施例2〜実施例8、比較例1〜比較例5)
表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例8、比較
例1〜比較例5に係る接着フィルムを得た。(B’2)はアルキルフェノールノボラック
型エポキシ樹脂(120℃における粘度が89Pa・s、DIC株式会社製N−695)
であり、D2はジアリルフタレート樹脂ワニス(ダイセル化学工業株式会社製ダイセルジ
アリルフタレートモノマーを重量平均分子量21,129となるように重合反応させた後
、攪拌しながらMEKに加熱溶解させたもの)である。
【0044】
得られた実施例、比較例に係る接着フィルムの接着剤層部分について、キャピラリレオ
メータとして株式会社島津製作所社製の島津フローテスタCFT500Dを用いて、下記
の条件で120℃(予備加熱温度)における最低溶融粘度を測定した。測定結果を1に示
す。
(条件)
ノズル長:10mm
ノズル径:0.5mm
余熱時間:30sec
試験圧力:0.4903MPa
【0045】
配線基板上に、実施例、比較例に係る接着フィルムを貼合した。配線基板としては、感
光性カバーレイ(日立化成工業:FR−5550(商品名))を所定パターンでマスクし
て露光、現像、UVキュア、加熱キュアさせた絶縁性の基材上に、Cuめっきにより導体
パターンが形成され、導体パターンの所定位置にSnAgからなる半田バンプが設けられ
ているとともに、導体パターンが形成されている面の反対の面には、突起状電極部が設け
られた配線基板を使用した。貼合は、120℃、0.1MPaで、30秒間、加熱加圧を
行うことにより行った。
【0046】
接着フィルムを貼合した配線基板に半導体チップを載置し、120℃、0.1MPaで
、20分、加熱加圧して予備加熱を行った。半導体チップとしては、10mm×10mm
の面積を有し、厚さ0.2mmの半導体素子の一方の表面を被覆する保護層を有し、Al
からなる電極パッドに、Auからなるスタッドバンプが設けられているものを用いた。そ
の後、230℃で180秒程度加熱して半田バンプとスタッドバンプとを接続させた後、
180℃で60分程度加熱し接着フィルムを本完全に硬化させた。
【0047】
このようにして得られた実施例、比較例それぞれ100個の半導体パッケージについて
、厚み方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、半田バンプと
スタッドバンプとの間に接着フィルムが存在するかどうかを確認し、半田バンプとスタッ
ドバンプとの間に接着フィルムが存在しないものを良品、存在するものを不良品として、
半導体チップと配線基板との接続歩留まり(良品数/全体数)を求めた。その結果を表1
に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、実施例1〜実施例8では、接着フィルムの予備加熱温度におけるキ
ャピラリレオメータ法による最低溶融粘度が100Pa・s未満であるため、半田バンプ
とスタッドバンプとの間の接着フィルムが排除されており、半導体チップと配線基板との
接続歩留まりが100%であった。これに対し、比較例1〜比較例5では、接着フィルム
の予備加熱温度におけるキャピラリレオメータ法による最低溶融粘度が100Pa・s以
上であるため半田バンプとスタッドバンプとの間の接着フィルムが存在し、半導体チップ
と配線基板との接続歩留まりが93〜94%であった。
【符号の説明】
【0050】
100 配線基板
110 導体パターン
120 基材
130 バンプ
140 突起状電極部
150 接着層
200 半導体チップ
211 半導体素子
212 電極パッド
213 保護層
214 スタッドバンプ
300 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に半導体チップをフリップチップ実装するための接着フィルムであって、フリ
ップチップ接続に先立ち前記配線基板と前記半導体チップとを所定位置に配置した状態で
加熱する予備加熱温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘度が、100Pa・
s未満であることを特徴とする接着フィルム。
【請求項2】
常温で液状のエポキシ樹脂と予備加熱温度以下の軟化点を有するエポキシ樹脂と予備加
熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂とを含み、前記常温で液状のエポキシ樹脂と前
記予備加熱温度以下の軟化点を有するエポキシ樹脂とを合わせて100重量部に対して、
前記予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂が150重量部以下であることを特
徴とする請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
半導体チップの外部接続端子にフリップチップ接続するバンプが形成された面に、フリ
ップチップ接続に先立ち前記半導体チップを所定位置に配置した状態で加熱する予備加熱
温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘度が、100Pa・s未満である接着
フィルムが貼合されていることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
前記接着フィルムは、常温で液状のエポキシ樹脂と予備加熱温度以下の軟化点を有する
エポキシ樹脂と予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂とを含み、前記常温で液
状のエポキシ樹脂と前記予備加熱温度以下の軟化点を有するエポキシ樹脂とを合わせて1
00重量部に対して、前記予備加熱温度以上の軟化点を有するエポキシ樹脂が150重量
部以下であることを特徴とする請求項3に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116958(P2012−116958A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268086(P2010−268086)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】