説明

接着向上剤、樹脂組成物、及びこれらと被着体との積層体の製造方法

【課題】 耐熱性を有し、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示す接着向上剤及び該接着向上剤を含有する樹脂組成物を提供すること、並びに、この接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ピペラジン骨格を有する樹脂を含有する接着向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着向上剤、樹脂組成物、及びこれらと被着体との積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野は軽薄短小化の傾向が強くなるとともにハロゲンフリーやアンチモンフリー、鉛フリー半田化等が推奨され、封止材、積層材、及びマウンティング材は、さらなる特性向上が必要とされている。
【0003】
例えば、半導体用封止樹脂としては、従来、ノボラックエポキシ樹脂をフェノールノボラック樹脂で硬化させるエポキシ樹脂組成物が用いられてきた。しかしながら、半導体の高集積化により、パッケージの小型化、薄型化や、環境問題への対応などから、鉛フリー半田への移行が進められており、更にリードフレームのPPF(プリプレーティッドフレーム)の開発等に伴って、封止樹脂に対する要求は年々厳しいものとなってきている。具体的な要求特性としては、チップやリードフレームとの密着性が良好であることが挙げられ、特に吸湿させた後、半田に浸漬してもクラックや界面剥離等が生じないことが挙げられる。しかし、従来のエポキシ樹脂組成物では信頼性の確保が困難になってきている。
【0004】
また、プリント配線板の絶縁材料としては、ガラス基材エポキシ積層板が最も多く使用されている。積層板用のエポキシ樹脂としては、ジシアンジアミドを硬化剤とする樹脂が一般的に用いられてきたが、鉛フリー半田等による耐熱性の要求から、フェノール樹脂を硬化剤に用いる方法が注目されるようになってきた。しかしながら、フェノール樹脂を硬化剤として使用すると、銅箔との接着、特に多層板における内層銅箔との接着が、ジシアンジアミド系に比べて大幅に劣るという欠点があった。
【0005】
接着性を改善させる手段としては、シランカップリング剤を用いて被着体である基材等の表面処理をする方法、又は、シランカップリング剤を基材を構成する樹脂へ添加する方法がとられるのが一般的である。エポキシ系やアミノ系の市販のシランカップリング剤は接着性改善の効果があり、長年使用されてきていたが、近年の環境問題への対応や軽薄短小化の傾向が強まっている近年においては、要求特性を満足できない場合が増えてきている。
【0006】
そこで、イミダゾール基やジメチルアミノ基を有するシランカップリング剤が開発されている(例えば、特許文献1〜4)。例えば、トリメトキシシリル基を有するタイプは原料の入手もしやすく、市販のシラン剤に比べて、金属や無機物と樹脂との密着性を大幅に向上させることができ、樹脂組成物の添加剤や金属やフィラー等の表面処理剤として様々な分野で使用することができる。
【0007】
しかし、トリメトキシシリル基を有するイミダゾールシランやジメチルアミノシラン等のシランカップリング剤は加水分解が速く、ゲル化しやすいため、インテグラルブレンドの際、取り扱いにくいという不都合があった。また、これらを樹脂組成物にした際には、揮発によってモーターやリレー等の接点に付着し、加水分解によって接点不良を起こす問題があり、特性的には良好ではあるものの、使用方法や使用用途に制限があった。
【0008】
一方、電子材料の分野では、電子部品を固定したり回路接続を行ったりするために各種の接着剤が使用されている。これらの用途では、回路パターンの高密度化、高精細化が進むとともに、接着剤にも高い接着力や信頼性が求められる。
【0009】
特に、半導体や液晶ディスプレイ製品において用いられる材料(ガラスや金属)に対する接着性の高い接着剤が望まれている。このような材料としては、SiO、Al、SiNx、金、銀、銅、SUS、アルミ、錫、白金族の金属、インジウム−錫酸化物、ZnO等がある。例えば、液晶ディスプレイの製造では、ガラスや金属を含む回路部材の接続には、回路接続材料として、接着剤中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。
【0010】
更に、近年、精密電子機器の分野では、回路の高度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなってきている。このため、従来の樹脂等を用いた回路接続材料では、配線の脱落、剥離、位置ずれが生じることがある。また、生産効率向上のためには接続時間の短縮化が望まれる。そこで、低温速硬化性に優れ、かつ、適当な可使時間を有する電気・電子用の回路接続材料が開発されている(例えば、特許文献5及び6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−186479号公報
【特許文献2】特開平09−012683号公報
【特許文献3】特開平09−296135号公報
【特許文献4】特開2001−187836号公報
【特許文献5】国際公開第98/44067号
【特許文献6】国際公開第98/15505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献5及び6に記載の回路接続材料では、電子材料の部材の材質により接着強度が異なるという不都合がある。特に、SiO、Al、SiNx、金、銀、銅、SUS、アルミ、錫、白金族の金属、インジウム−錫酸化物、ZnO等に対して十分な接着力が得られにくく、信頼性に欠ける問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性を有し、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示す接着向上剤及び該接着向上剤を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。更に本発明の接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ピペラジン骨格を有する樹脂を含有する接着向上剤を提供する。かかる本発明の接着向上剤は、単独で接着剤として使用してもよく、通常接着剤として用いられる樹脂等に添加して使用してもよく、また、基材等を構成する樹脂へ添加して使用してもよい。いずれの場合でも、本発明の接着向上剤によれば、ピペラジン骨格を有する樹脂を含有していることから、耐熱性を有し、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を得ることが可能となる。また、ピペラジン骨格を有する樹脂を用いていることから、上述したシランカップリング剤を用いる場合に比べて、優れた信頼性が得られる傾向にある。
【0015】
本発明の接着向上剤は、ピペラジン骨格を有する樹脂の5%重量減少温度が150℃以上であることが好ましい。このような接着向上剤によれば、加熱加工工程でピペラジン骨格を有する樹脂の揮発や分解が起こりにくくなることから、より優れた耐熱性、信頼性が得られる。
【0016】
本発明の接着向上剤は、ピペラジン骨格を有する樹脂が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリアミック酸であると、耐熱性が更に高まることから好ましい。
【0017】
また、ピペラジン骨格を有する樹脂のピペラジン骨格は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【化1】


(式中、R、Rはそれぞれ独立して二価の有機基を示し、Rは水素原子、炭素数が1〜10である一価の有機基、又は、一方に水素原子もしくは炭素数が1〜10である有機基が結合したエーテル基、エステル基、カルボニル基、スルホニル基もしくはスルホネート基を示す。ただし、Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0018】
ピペラジン骨格が上記一般式(1)で表されるものであると、接着向上剤の接着力が更に向上する。
【0019】
また、本発明は、上記本発明の接着向上剤を含有する樹脂組成物を提供する。このような樹脂組成物は、上記本発明の接着向上剤を含むため、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示すことができる。この樹脂組成物は、ピペラジン骨格を有する樹脂とは異なる樹脂を更に含有し、当該樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、又はポリウレタンであることが好ましい。本発明の接着向上剤をこれらの樹脂と組み合わせることで、熱/光硬化性を付与して接着剤としての適用を容易化したり、所望の物性が得られるように改質したりすることが可能となる。
【0020】
本発明は、上記接着向上剤又は上記樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法であって、所定の支持体上に接着向上剤又は樹脂組成物を塗布して支持体付き樹脂フィルムを得る工程と、この支持体付き樹脂フィルムを前記被着体上に積層する工程とを有する、積層体の製造方法を提供する。また、本発明は、上記接着向上剤又は上記樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法であって、接着向上剤又は樹脂組成物を被着体上に塗布する工程を有する、積層体の製造方法を提供する。これらの製造方法によれば、上記本発明の接着向上剤又はこれを含む樹脂組成物を用いることから、被着体の材質によらず、接着層が被着体に対して十分に良好な接着強度で貼り合わされた積層体を得ることができる。
【0021】
上記被着体は、ガラス、金属、又は樹脂からなる部分を、前記接着層と接する面側に有していることが好ましい。これらの材質は、従来の回路接続材料では十分な接着強度が得られない場合もあったが、本発明によれば、接着層が本発明の接着向上剤又は樹脂組成物から形成されるため、被着体が接着層側にこのような材質の部分を有していても、十分な接着強度が得られる。なかでも、ガラスに対する接着力が良好に発揮される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐熱性を有し、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示す接着向上剤及び該接着向上剤を含有する樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、本発明の接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る接着向上剤の熱重量減少率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら、本発明の接着向上剤、樹脂組成物、及びこれらと被着体との積層体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
本実施形態の接着向上剤は、ピペラジン骨格を有する樹脂を含むことを特徴とするものである。ここで「ピペラジン骨格を有する樹脂」とは、ピペラジン骨格を一つ以上有するポリマー、又は、重合により当該ポリマーを生成し得るポリマー前駆体をいう。ピペラジン骨格を有する樹脂を含むことにより、耐熱性を有し、回路部材の材質によらない十分に良好な接着強度を得ることができる。
【0026】
本実施形態の接着向上剤は、ピペラジン骨格を有する樹脂を含有する限り、その他の成分を含んでいてもよいが、接着性の効果を十分に得る観点からは、ピペラジン骨格を有する樹脂を1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、ピペラジン骨格を有する樹脂のみを含むことが更に好ましい。
【0027】
接着向上剤に含まれるピペラジン骨格を有する樹脂の5%重量減少温度は150℃以上であると好ましく、200℃以上であるとより好ましい。150℃以上である場合、加熱加工工程で揮発や分解しないことから、本実施形態の接着向上剤やこれを含む樹脂組成物が耐熱性等、信頼性により優れたものとなる。ここで「ピペラジン骨格を有する樹脂の5%重量減少温度は150℃以上である」とは、当該樹脂を150℃以上に加熱した場合に5%の重量減少が見られることをいう。
【0028】
耐熱性を高める観点から、ピペラジン骨格を有する樹脂としては、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、又は、ポリアミドイミド及びポリイミドの前駆体であるポリアミック酸が好ましい。
【0029】
上記のピペラジン骨格を有する樹脂において、ピペラジン骨格は、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化2】


(R、Rはそれぞれ独立して二価の有機基を示し、Rは水素原子、炭素数が1〜10である一価の有機基、又は、一方に水素原子もしくは炭素数が1〜10である有機基が結合したエーテル基、エステル基、カルボニル基、スルホニル基もしくはスルホネート基を示す。ただし、Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0030】
上記式(1)中のR又はRで表される二価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニル基等が挙げられ、なかでもプロピレン基が好ましい。また、Rで表される基としては、例えば、水素原子、炭素数が1〜10である一価の有機基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルフォニウム基、又はスルホ基が挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましい。
【0031】
このようなピペラジン骨格を有する樹脂としては、ピペラジン骨格を有するポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミック酸等が挙げられ、なかでも、ピペラジン骨格を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリアミック酸が好ましい。
【0032】
例えば、ピペラジン骨格を有するポリイミドとしては、下記一般式(3)の繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化3】


式中、Xは酸無水物モノマーからなる構造単位を示し、R、R及びRは上記と同義である。Xの構造単位を形成する酸無水物モノマーとしては、後述するテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0033】
また、ピペラジン骨格を有するポリアミドイミドとしては、下記一般式(4)〜(6)のいずれかの繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化4】


【化5】


【化6】


式中、Yはジアミンモノマーからなる構造単位を示し、R、R及びRは上記と同義である。Yを構成するジアミンモノマーとしては、後述する“ピペラジン骨格を有するジアミン以外のジアミン”等が挙げられる。
【0034】
また、ピペラジン骨格を有するポリアミドとしては、下記一般式(7)、(8)のいずれかの繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化7】


【化8】


式中、Yはジアミンモノマーからなる構造単位を示し、Zはジカルボン酸モノマーを示し、R、R及びRは上記と同義である。Yを構成するジアミンモノマーとしては、後述する“ピペラジン骨格を有するジアミン以外のジアミン”等が挙げられ、Zを構成するジカルボン酸モノマーとしては、後述するジカルボン酸等が挙げられる。
【0035】
また、ピペラジン骨格を有するポリベンゾオキサゾールとしては、下記一般式(9)の繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化9】


式中、Wは芳香環を含む四価の置換基を示し、R、R及びRは上記と同義である。Wで示される芳香環を含む四価の置換基としては、ジフェニル基、ジフェニル−2,2’−プロパン基、ジフェニルスルホン基、ジフェニル−2,2’−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)基等が例示できる。
【0036】
また、ピペラジン骨格を有するエポキシ樹脂としては、下記一般式(10)のモノマーから形成される繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化10】


式中、R、R及びRは上記と同義である。
【0037】
また、ピペラジン骨格を有するポリエステルとしては、下記一般式(11)〜(13)のいずれかの繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化11】


【化12】


【化13】


式中、Y’はジオールモノマーからなる構造単位を示し、Zは後述するジカルボン酸モノマーからなる構造単位を示し、R、R及びRは上記と同義である。Y’を形成するジオールモノマーとしては、例えば、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシフェニルメタン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジヒドロキシジフェニルケトン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスフェノール、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスフェノール、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスフェノール、2,2−ビス(4−(3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)スルホン、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジヒドロキシジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミン、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、又は、下記一般式(14)で表されるジヒドロキシポリシロキサン等が挙げられる。またZを構成するジカルボン酸モノマーとしては、後述するジカルボン酸等が挙げられる。
【化14】

【0038】
また、ピペラジン骨格を有するアクリル樹脂としては、下記一般式(15)、(16)のモノマーから形成される繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化15】


【化16】


式中、R、R及びRは上記と同義である。Rは水素原子、炭素数が1〜10である一価の有機基、又は、一方に水素原子もしくは炭素数が1〜10である有機基が結合したエーテル基、エステル基、カルボニル基、スルホニル基もしくはスルホネート基を示す。R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数が1〜10である一価の有機基を示す。
【0039】
また、ピペラジン骨格を有するポリウレタンとしては、下記一般式(17)の繰返し単位を一つ以上有するものが挙げられる。
【化17】


式中、R、R及びRは上記と同義である。
【0040】
更に、ピペラジン骨格を有するポリアミック酸は、上述したポリイミド、又はポリアミドイミドの前駆体であり(例えば下記一般式(18)、(19)の繰返し単位を有するもの)、これらを製造する際に中間体として生じるポリアミック酸を、本実施形態の接着向上剤の成分として使用することができる。
【化18】


【化19】

【0041】
上述したようなピペラジン骨格を有する樹脂は、例えばポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリアミック酸である場合、次のようにして製造することができる。
【0042】
ポリイミドの場合は、例えば、ピペラジン骨格を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させ、脱水閉環することによって製造することができる。
【0043】
ポリアミドイミドの場合は、例えば、ピペラジン骨格を有するジアミンと無水トリメリット酸から得られるイミドジカルボン酸をジイソシアネートと反応させる方法や、ピペラジン骨格を有するジアミンと無水トリメリット酸クロリドを反応させる方法で製造することができる。
【0044】
ポリアミドの場合は、例えば、ピペラジン骨格を有するジアミンとジカルボン酸ジハロゲン化物を反応させる方法や、ピペラジン骨格を有するジアミンとジカルボン酸をN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤の存在下に反応させる方法で製造することができる。
【0045】
また、ポリアミック酸の場合は、ピペラジン骨格を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて製造することができる。
【0046】
上記ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリアミック酸の製造で使用するピペラジン骨格を有するジアミンは、入手が容易であることから1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、1,4−ビスアミノプロピル−2,5−ジメチルピペラジンを用いることが好ましい。
【0047】
また、ピペラジン骨格を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリアミック酸の製造では、上記のピペラジン骨格を有するジアミン以外のジアミンを併用することも可能である。このようにピペラジン骨格を有するジアミンと、それ以外のジアミンとを併用することで、望ましいTgや弾性率等の物性を制御できるという効果が得られる。
【0048】
ピペラジン骨格を有するジアミン以外のジアミン化合物としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、又は、下記一般式(2)で表されるジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
【化20】

【0049】
更に、ジアミン化合物としては、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、三井化学ファイン株式会社製のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン[商品名:ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2001,EDR−148等]、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。なお、ピペラジン骨格を有するジアミンとそれ以外のジアミンとを併用する場合、ピペラジン骨格を有するジアミンの含有量は特に制限されないが、多くなるほど接着力が高くなる傾向にある。
【0050】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、ピロメリット酸二無水物、3,4:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3:2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2:3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4:3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3:2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3:3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2:5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8:4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3:6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2:4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3:6,7−テトラクロロナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,10:8,9−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3:5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3:5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3:2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1:3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2:3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2:5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2:3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3:4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2:3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクタ−7−エン−2,3:5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3:4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(別名「4,4’−ヘキサフルオロプロピリデン酸二無水物」)、2,2,−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物等を例示することができる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、メチレンジサリチル酸、パモ酸、5,5’−チオジサリチル酸等を例示することができる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。更にジカルボン酸ジハロゲン化物は、一般的な方法、すなわち前記ジカルボン酸を塩化チオニル等のハロゲン化剤を用いて製造することができる。
【0052】
本実施形態の接着向上剤は、上述したようなピペラジン骨格を有する樹脂を含むものである。この接着向上剤は、単独で接着剤として使用することもできるが、例えば他の樹脂等と混合して樹脂組成物として使用したり、又は、所定の基材を構成する樹脂へ添加して使用したりすることもできる。
【0053】
上記の樹脂組成物とする場合、例えば、本実施形態の接着向上剤に、ピペラジン骨格を有する樹脂とは異なる樹脂を1種又は複数併用する。ピペラジン骨格を有する樹脂とは異なる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン及びこれらの前駆体等を例示することができる。このような樹脂組成物とすることにより、熱/光硬化性を付与することができるほか、接着向上剤をフィルム状に成型する際、得られるフィルムの物性の制御を容易に行えるようになるという利点がある。なかでも、本実施形態の接着向上剤とポリイミドとを含む樹脂組成物は、優れた接着性、特にガラスに対する優れた接着性を発揮し得る傾向にある。
【0054】
また、本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物は、ピペラジン骨格を有する樹脂のほかに、更に粒子や硬化剤、硬化促進剤、増感剤、難燃剤、ゴム系エラストマ、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤を混合することもできる。これらを混合することにより、接着向上剤や樹脂組成物の電気特性や硬化性、線熱膨張係数、燃焼性等を制御できるという利点が得られる。
【0055】
また、本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物には、希釈剤を添加してもよい。希釈剤を添加することで、樹脂等の成分を溶解又は分散させることが可能となり、接着向上剤又は樹脂組成物の取扱い性が向上するようになる。希釈剤としては、接着向上剤の樹脂や樹脂組成物を良好に溶解又は分散させるものが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等を使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物は、所定の被着体の表面に層状に形成されて接着層を構成することができる。かかる接着層を用いて所定の部材を接着することによって、上記被着体とその他の部材とを接着することが可能となる。このような被着体の一例として、回路基板が挙げられる。この回路基板に対し、接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層を介して、例えば他の回路基板を更に積層したり、チップ部品を接着したりすることで、積層基板や半導体回路基板を得ることが可能となる。
【0057】
図1は、本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層1が被着体3上に積層された積層体100の断面構成を模式的に示す図である。なお、本例では、被着体として単なる板状の部材を用いているが、被着体は必ずしもこのようなものに限定されず、例えば上述した回路基板のようなものであってもよい。このような積層体100の製造方法としては、まず、所定の支持体(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI))(図示せず)上に接着向上剤又は樹脂組成物を塗布して支持体付き樹脂フィルムを得た後、この支持体付き樹脂フィルムを、接着向上剤又は樹脂組成物の層側が接するように被着体上に重ね合わせた後に、圧着、例えばラミネートやプレス等で積層する方法が挙げられる。
【0058】
また、本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物をそのまま用いるか、又は上述した希釈剤又は有機溶剤に溶解させた溶液の状態とし、これをスピンコーターや塗工機等で被着体上に直接塗布した後、塗布後の層から加熱や熱風吹き付け等により希釈剤や有機溶剤を留去して接着層を形成する方法も挙げられる。更に、必要な場合は、被着体に積層させるべき第2の被着体(上述した他の回路基板やチップ部品等)を用い、これを接着層と同時に、又は順次、積層させることも可能である。
【0059】
本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層を積層させる被着体としては、ガラス、金属、樹脂等からなる板やフィルム、具体的にはガラス板、金属板、金属箔、金属めっき膜や樹脂フィルム等が挙げられる。ガラスとしては、SiO、Al、SiNx、ソーダ石灰ガラス等を例示することができる。金属としては、金、銀、銅、SUS、アルミ、錫、白金族の金属、インジウム−錫酸化物、ZnO等を例示することができる。樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、フッ素樹脂等を例示できる。
【0060】
本実施形態の接着向上剤又は樹脂組成物からなる接着層は、ピペラジン骨格を有する樹脂を含有していることから、上述したなかでも特にガラスに対する接着強度が良好に得られる。なお、被着体は、上記材料の2種以上を含む複合材であってもよい。例えば、被着体は、上記の材料のみから構成されるものであっても、上記材料からなる層を接着層側にのみ有するものであっても、これらの材料からなる部分が接着層側の面の一部にのみ形成されたのであってもよい。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
<樹脂の合成>
1.ピペラジン骨格を有する樹脂の合成例
(1)ポリイミド樹脂(PI−1)の調製
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物としてポリオキシプロピレンジアミン15.0mmol及び1,4−ビスアミノプロピルピペラジン105.0mmol、並びに溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)287gを加え、室温(25℃)で30分間撹拌した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物120.0mmolを加え、50℃まで昇温して、その温度で1時間攪拌した。その後、更に180℃まで昇温し、ディーンスターク還流冷却器により水とNMPの混合物を除去しながら3時間還流させ、ポリイミド樹脂(以下「PI−1」と呼ぶ。)のNMP溶液を得た。
【0064】
上記PI−1のNMP溶液をメタノール中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕、乾燥してPI−1を得た。得られたPI−1の重量平均分子量はGPCによる測定の結果、108000であった。上記PI−1をMEK(メチルエチルケトン)に40質量%となるように溶解した。
【0065】
(2)アクリル硬化系樹脂組成物(A−1)の調製
PI−1のMEK溶液(Nv27.3%)8.8g、重量平均分子量800のポリカプロラクトンジオールのMEK溶液(Nv50%)9.6g、2−ヒドロキシプロピルアクリレート4.8g、硬化剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンのMEK溶液(Nv50%)0.192g、及び希釈剤としてMEK3.9gを混合して、上記PI−1を含むアクリル硬化系の樹脂組成物のMEK溶液(以下「A−1」と呼ぶ。)を得た。
【0066】
(3)ポリアミド樹脂組成物(PA−1)の調製
冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物としてポリオキシプロピレンジアミン15.0mmol及び1,4−ビスアミノプロピルピペラジン105.0mmol、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)218g、並びに副生する塩酸のトラップ剤としてトリエチルアミン264mmolを加え、室温(25℃)で30分間撹拌した。次いで、ジカルボン酸として二塩化イソフタロイル120.0mmolを加え、氷水浴で冷却して、その温度で1時間攪拌した。その後、更に室温まで昇温し、1時間攪拌させ、ポリアミド樹脂(以下「PA−1」と呼ぶ。)のNMP溶液を得た。
【0067】
上記PA−1のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を乾燥してPA−1を得た。得られたPA−1の重量平均分子量はGPCによる測定の結果、92000であった。上記PA−1をMEK(メチルエチルケトン)に40質量%となるように溶解した。
【0068】
2.ピペラジン骨格を有しない樹脂の合成例
(1)ポリイミド樹脂(PI−2)の調製
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物としてポリオキシプロピレンジアミン15.0mmol及び2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン105.0mmol、並びに溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)287gを加え、窒素気流下に室温(25℃)で30分間撹拌した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として4、4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物120.0mmolを加え、50℃まで昇温して、その温度で1時間攪拌した。その後、更に180℃まで昇温し、ディーンスターク還流冷却器により水とNMPの混合物を除去しながら3時間還流させ、ポリイミド樹脂(以下「PI−2」と呼ぶ。)のNMP溶液を得た。
【0069】
上記PI−2のNMP溶液をメタノール中に投入し、析出物を回収した後、粉砕、乾燥してPI−2を得た。得られたPI−2の重量平均分子量はGPCによる測定の結果、112000であった。上記PI−2をMEKに40質量%となるように溶解した。
【0070】
(2)アクリル硬化系の樹脂組成物(A−2)の調製
重量平均分子量800のポリカプロラクトンジオールのMEK溶液(Nv50%)9.6g、2−ヒドロキシプロピルアクリレート4.8g、硬化剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンのMEK溶液(Nv50%)0.192g、及び希釈剤としてMEK3.9gを混合してアクリル硬化系の樹脂組成物のMEK溶液(以下「A−2」と呼ぶ。)を得た。
【0071】
3.ピペラジン骨格を有しない樹脂にピペラジン骨格を有する化合物を添加した樹脂組成物の調製
(1)ポリイミド系の樹脂組成物(PI−3)の調製
7.67gの上記PI−2、と、2.33gの1,4−ビスアミノプロピルピペラジンを混合して、上記PI−2とピペラジン骨格を有する化合物とを含むポリイミド系の樹脂組成物(以下「PI−3」と呼ぶ。)を得た。
【0072】
<積層体の作成>
調製したPI−1、PI−2のMEK溶液、アクリル硬化系の樹脂組成物のMEK溶液(A−1、A−2)、及びPA−1のMEK溶液をそれぞれバーコーターによって、各種の被着体(ソーダ石灰ガラス、シリコンウェハ、SiNx)上に厚さ15μmとなるように均一に塗布し、150℃で30分乾燥して塗布物から接着層を形成することにより、被着体上に接着層が形成された構造を有する実施例1〜7及び比較例1〜5の積層体を作製した。塗布物と被着体との組み合わせを表1に示す。
【0073】
<接着強度の測定と評価>
各積層体について、被着体から接着層を剥離するのに必要な力(剥離力)をJIS−Z0237に準じて90℃剥離法(剥離速度50mm/min、25℃)で測定した。測定装置にはテンシロンUTM−4(東洋ボールドウィン社製)を使用した。測定結果を表1に示す。なお、表1中「引き剥がせない」と示した結果は、接着力が強すぎて、使用した測定装置では塗布物を被着体から引き剥がすことができなかったことを意味する。
【0074】
【表1】

【0075】
表1より、ピペラジン骨格を有する樹脂を含有するPI−1、A−1又はPA−1を塗布した積層体では、被着体の材質によらず、接着層と被着体との接着強度が高かった。一方、ピペラジン骨格を有しないPI−2又はA−2を塗布した積層体では、どの被着体であっても接着層と被着体との接着強度が低かった。
【0076】
<耐熱性の評価>
PI−1、PI−2及びPI−3について、熱重量変化をTG−DTA−4000(マックサイエンス社製)を用いて測定した。測定結果を図2に示した。ピペラジン骨格を有する樹脂(PI−1)は、300℃を超えてもほとんど重量減少が起こらなかった。これに対し、ピペラジン骨格を有しない樹脂にピペラジン骨格を有する化合物を添加した樹脂組成物(PI−3)は、60℃付近からピペラジン骨格を有する化合物の揮発により重量減少を示した。これにより、ピペラジン骨格は、高分子鎖の構成要素として存在することが、本発明の接着向上剤の耐熱性の発揮に必要であることが確認された。
【符号の説明】
【0077】
1…接着層、3…被着体、100…積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペラジン骨格を有する樹脂を含有する接着向上剤。
【請求項2】
前記ピペラジン骨格を有する樹脂の5%重量減少温度が150℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の接着向上剤。
【請求項3】
前記ピペラジン骨格を有する樹脂が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリアミック酸であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の接着向上剤。
【請求項4】
前記ピペラジン骨格を有する樹脂のピペラジン骨格が、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着向上剤。
【化1】


(式中、R、Rはそれぞれ独立して二価の有機基を示し、Rは水素原子、炭素数が1〜10である一価の有機基、又は、一方に水素原子もしくは炭素数が1〜10である有機基が結合したエーテル基、エステル基、カルボニル基、スルホニル基もしくはスルホネート基を示す。ただし、Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着向上剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記ピペラジン骨格を有する樹脂とは異なる樹脂を更に含有し、当該樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、又はポリウレタンであることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着向上剤又は請求項5又は6に記載の樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法であって、所定の支持体上に前記接着向上剤又は前記樹脂組成物を塗布して支持体付き樹脂フィルムを得る工程と、前記支持体付き樹脂フィルムを前記被着体上に積層する工程とを有する、積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着向上剤又は請求項5又は6に記載の樹脂組成物からなる接着層が被着体上に積層された積層体の製造方法であって、前記接着向上剤又は前記樹脂組成物を前記被着体上に塗布する工程を有する、積層体の製造方法。
【請求項9】
前記被着体は、ガラス、金属、又は樹脂からなる部分を、前記接着層と接する面側に有していることを特徴とする、請求項7又は8に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202852(P2010−202852A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222977(P2009−222977)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】