説明

接着性樹脂組成物、接着性樹脂成形体、及び積層体

【課題】接着性の優れる接着性樹脂組成物、接着性樹脂成形体、及び積層体を提供する。
【解決手段】酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とをグラフト重合させて得られる樹脂(C)を、さらに、エポキシ基を1分子中に2つ以上有するエポキシ基含有樹脂(D)とグラフト重合させて得られる、グラフト共重合体(G)を含有することを特徴とする接着性樹脂組成物。前記接着性樹脂組成物から形成される、フィルムまたはシートからなる、接着性樹脂成形体。基材の少なくとも片面に、前記接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層が積層されてなる、積層体。共押出法によって積層された複数の樹脂層のうち、少なくとも片方の表面層が、前記接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層である、積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性の優れる接着性樹脂組成物、接着性樹脂成形体、及び積層体に関し、特に、金属材料に対する接着性に優れるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン樹脂を金属材料と接着させる場合、オレフィン樹脂に無水マレイン酸などをグラフト重合させたポリエチレンや、グリシジルメタクリレートを共重合させたポリエチレンが使用されている。しかし、それら樹脂単体では、金属材料に対して十分な接着力が得られない場合が多いため、さらなる成分を配合することが検討されている。
例えば、特許文献1には、無水マレイン酸変性ポリエチレンと、脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエステル等の多官能脂肪族エポキシ化合物との混合物に関して記載されている。また、特許文献2には、ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン―グリシジルメタクリレート共重合体をブレンドした樹脂に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−269609号公報
【特許文献2】特開2010−241920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ポリエチレン樹脂を主成分としたブレンド樹脂が記載されているが、ポリエチレンが主成分であるため耐熱性が低く、その樹脂組成物を用いたフィルムが金属接着後80℃を超える温度環境下に保管された時、金属から剥離してしまう。また、特許文献2では、プロピレン系重合体30〜65質量%、酸変性ポリプロピレン系重合体5〜20質量%、エポキシ基含有ポリエチレン30〜50質量%であるブレンド樹脂が記載されているが、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂を単にブレンドしているだけであるため、接着強度や、その他の物性でバラつきが発生し、またフィッシュアイの発生による外観不良も発生する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接着性の優れる接着性樹脂組成物、接着性樹脂成形体、及び積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とをグラフト重合させて得られる樹脂(C)を、さらに、エポキシ基を1分子中に2つ以上有するエポキシ基含有樹脂(D)とグラフト重合させて得られる、グラフト共重合体(G)を含有することを特徴とする接着性樹脂組成物を提供する。
本発明の接着性樹脂組成物においては、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)と前記エポキシ基含有樹脂(D)との合計を100質量%とするうち、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が85〜98質量%、前記ポリアミド樹脂(B)が1〜9質量%、前記エポキシ基含有樹脂(D)が1〜14質量%の範囲内で含まれることが好ましい。
また、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
また、前記グラフト重合が、溶融グラフト重合であることが好ましい。
また、本発明は、前記接着性樹脂組成物から形成される、フィルムまたはシートからなることを特徴とする接着性樹脂成形体を提供する。
また、本発明は、基材の少なくとも片面に、前記接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層が積層されてなることを特徴とする積層体を提供する。
また、本発明は、共押出法によって積層された複数の樹脂層のうち、少なくとも片方の表面層が、前記接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層であることを特徴とする積層体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着性樹脂組成物は、接着性や、耐熱性に優れており、電気電子部品、自動車部品など幅広い分野に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
本発明の接着性樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とをグラフト重合させて得られる樹脂(C)を、さらに、エポキシ基を1分子中に2つ以上有するエポキシ基含有樹脂(D)とグラフト重合させて得られる、グラフト共重合体(G)を含有する。
【0009】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂(A)〕
本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂中にカルボキシル基や無水カルボン酸基を有する。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したものである。酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で酸官能基含有モノマーをポリオレフィン樹脂と溶融混練する等のグラフト変性や、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合などが挙げられる。
【0010】
前記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとのブロック共重合体などが挙げられる。中でも、ホモポリプロピレン(ホモPP、プロピレン単独重合体)、プロピレン−エチレンのブロック共重合体(ブロックPP)、プロピレン−エチレンのランダム共重合体(ランダムPP)等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。特に、ランダムPPが好ましい。
共重合する場合の前記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、α−オレフィン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
【0011】
酸官能基含有モノマーとしては、エチレン性二重結合と、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基とを、同一分子内に持つ化合物であり、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、またはジカルボン酸の酸無水物からなる。
カルボン酸基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸(エンディック酸)などのα,β−不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸などの不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)において、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
酸官能基含有モノマーのうち、より好ましくは、カルボン酸無水物基含有モノマーであり、より好ましくは、無水マレイン酸である。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、接着力への悪影響を抑制するため、未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として用いることが好ましい。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)におけるプロピレン成分に関しては、該樹脂の耐熱性の観点により、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とは、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。したがって、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、プロピレン単位が過半量である、酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0014】
〔ポリアミド樹脂(B)〕
本発明で用いられるポリアミド樹脂(B)は、主鎖中に、アミド結合(−CONH−)の繰り返し構造を有するポリマーである。
ポリアミド樹脂(B)としては、ω−アミノカルボン酸の重縮合や環状ラクタムの開環重合等で得られ、一般式(NHRCO)で表されるもの;ジアミンとジカルボン酸との重縮合等で得られ、一般式(NHRNHCOR’CO)で表されるもの;ナイロン系エラストマーなどが挙げられる。なお、上記の一般式において、nは、繰り返し単位の個数であり、RおよびR’は、アルキレン基等の2価の有機基を表す。
ポリアミド樹脂(B)として使用できるナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10等が挙げられる。また、ナイロン系エラストマーとしては、例えば宇部興産株式会社製のポリエーテルポリアミドエラストマーUBESTA(登録商標)XPA(商品名)などが挙げられる。
【0015】
本発明において、ポリアミド樹脂(B)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基とグラフト重合可能な官能基(アミノ基)を一方の末端に有し、さらに、エポキシ基含有樹脂(D)のエポキシ基とグラフト重合可能な官能基(カルボキシル基またはアミノ基)を他方の末端に有することにより、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とエポキシ基含有樹脂(D)とが共有結合で連結されたグラフト共重合体(G)を構成することができる。
ポリアミド樹脂(B)は、相溶性や接着性を向上する点で、数平均分子量(Mn)が、5,000〜15,000の範囲内のものが好ましい。
【0016】
〔エポキシ基含有樹脂(D)〕
本発明で用いられるエポキシ基含有樹脂(D)は、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、1つのエポキシ基を、前記ポリアミド樹脂(B)とのグラフト重合に用いても、他のエポキシ基を、接着性の改善に用いることができる。
前記エポキシ基含有樹脂(D)としては、エポキシ基含有ビニルモノマーの共重合体、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるフェノキシ樹脂、各種のエポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、グリシジルメタクリレート(GMA)やグリシジルアクリレート等のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、エポキシブテン等のエポキシアルケン類などが挙げられる。
エポキシ基含有ビニルモノマーの共重合体において、エポキシ基含有ビニルモノマーと共重合される、他のモノマーとしては、エチレンやプロピレン等のオレフィン類、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系モノマー、酢酸ビニル等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニルモノマーの共重合体としては、エチレン―グリシジルメタクリレート(E−GMA)共重合体などが挙げられる。
フェノキシ樹脂としては、両末端にエポキシ基を有するものが用いられ、そのビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFやそれらの共重合型などが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ基含有樹脂(D)は、相溶性や接着性を向上する点で、重量平均分子量(Mw)が、5,000〜100,000の範囲内のものが好ましい。
【0017】
〔グラフト共重合体(G)〕
本発明の接着性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(G)は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)とをグラフト重合させて得られる樹脂(C)を、さらに、前記エポキシ基含有樹脂(D)とグラフト重合させて得られるものである。中間体の樹脂(C)は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と、前記ポリアミド樹脂(B)のアミノ基とが、グラフト重合したものであることが好ましい。また、グラフト共重合体(G)は、前記ポリアミド樹脂(B)のカルボキシル基またはアミノ基と、前記エポキシ基含有樹脂(D)のエポキシ基とが、グラフト重合したものであることが好ましい。このようなグラフト共重合体(G)によれば、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記ポリアミド樹脂(B)と、前記エポキシ基含有樹脂(D)とが、グラフト重合することにより、相互の分離を防ぎ、官能基の相乗効果により、金属材料に対しても、優れた接着力を有することができる。
また、エポキシ基含有樹脂(D)のエポキシ基と酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基との反応性が高い場合であっても、ポリアミド樹脂(B)を併用して、樹脂(C)を生成させることにより、グラフト重合時にゲルが発生しにくくなり、フィッシュアイの発生を抑制することができる。
【0018】
前記グラフト共重合体(G)は、そのグラフト重合が、溶融グラフト重合に行われることが好ましい。この溶融グラフト重合は、溶融混練により、装置内でグラフト重合するものである。溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダーなどを使用することができる。
溶融混練時の加熱温度は、原料樹脂が充分に溶融する温度で、適宜加熱すればよいが、熱分解を抑制する観点から、300℃以下とすることが好ましい。
【0019】
前記グラフト共重合体(G)は、次のいずれの方法によっても、製造可能である。
(1) 前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)とを溶融混練し、グラフト重合させて得られる樹脂(C)を押出ペレット化した後、前記樹脂(C)と前記エポキシ基含有樹脂(D)とを溶融混練し、グラフト重合させて得られるグラフト共重合体(G)を押出成形する(2工程)。
(2) 前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)とを溶融混練し、グラフト重合させて得られる樹脂(C)が溶融状態のまま、さらに前記エポキシ基含有樹脂(D)を途中から加えて溶融混練し、グラフト重合させて得られるグラフト共重合体(G)を押出成形する(1工程)。
【0020】
2段階のグラフト重合を2工程で行い、途中で樹脂(C)のペレットを得る方法によれば、あらかじめ樹脂(C)のペレットを製造しておき、前記グラフト共重合体(G)を製造する必要が生じたときに、前記樹脂(C)と前記エポキシ基含有樹脂(D)とをグラフト重合するだけで、目的とするグラフト共重合体(G)を得ることができる。
2段階のグラフト重合を1工程で行う場合においては、溶融混練の装置を1つ使用するだけで、目的とするグラフト共重合体(G)を得ることができる。装置として、押出機を用いる場合には、スクリュの根元(後端)側のホッパから、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)とを投入し、これらを前(先端側)に送りながら溶融混練して、樹脂(C)を合成し、さらに、バレルの途中に設置した別のホッパから、前記エポキシ基含有樹脂(D)を投入して、溶融混練する。
【0021】
本発明の接着性樹脂組成物において、原料樹脂の配合比は適宜設定可能であるが、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)と前記エポキシ基含有樹脂(D)との合計を100質量%とするうち、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が85〜98質量%、前記ポリアミド樹脂(B)が1〜9質量%、前記エポキシ基含有樹脂(D)が1〜14質量%の範囲内で含まれることが好ましい。
【0022】
〔接着性樹脂層〕
本発明の接着性樹脂組成物は、本発明の接着性樹脂組成物の溶融混練により得られたグラフト共重合体(G)を、押出成形する方法により、接着性樹脂層を製造することが可能である。
本発明においては、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基や、前記エポキシ基含有樹脂(D)の水酸基及びエポキシ基が存在することにより、優れた接着力が得られる。特に、ベース樹脂である、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の融点(Tm)に近い、比較的低温の温度領域においても、優れた接着力が得られ、低温接着性が向上する。
本発明の接着性樹脂組成物は、その他の添加剤として、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光吸収剤などを適宜添加することができる。
【0023】
〔接着性樹脂成形体〕
本発明の接着性樹脂成形体は、本発明の接着性樹脂組成物から形成され、フィルム、シート等の形状を有する成形体であり、接着性樹脂フィルムや、接着性樹脂シート等として用いることができる。
本発明の接着性樹脂成形体は、本発明の接着性樹脂組成物の溶融混練により得られたグラフト共重合体(G)を、押出成形により、フィルム、シート等の形状に成形する方法で、製造することが可能である。
【0024】
本発明の接着性樹脂成形体は、例えば、下記の(1)〜(4)に挙げるような方法で、被着体と積層し、加熱により、好ましくは、加熱及び加圧により、各種の被着体と接着することが可能である。
(1)被着体の片面に、接着性樹脂成形体を積層して接着する方法。
(2)被着体の両面に、それぞれ別の接着性樹脂成形体を積層して接着する方法。
(3)接着性樹脂成形体の両面に、それぞれ別の被着体を積層して接着する方法。
(4)複数の接着性樹脂成形体と、複数の被着体とを、交互に積層して接着する方法。
【0025】
〔積層体〕
本発明の積層体は、基材の少なくとも片面に、本発明の接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層が積層されてなるものである。前記接着性樹脂層が、基材の片面または両面に設けられることにより、前記接着性樹脂層を用いて、被着体と接着することができる。基材としては、基材自体に接着性を有する必要はなく、前記接着性樹脂層と接着可能なものが好ましい。金属、ガラス、プラスチックなどの各種の基材が挙げられる。
【0026】
基材が、熱可塑性樹脂からなる場合は、接着性樹脂組成物の押出成形を、共押出法により行うことが可能である。また、接着性樹脂組成物の押出成形を、押出ラミネート法によって行うことも、可能である。
共押出法によって積層体を製造する場合は、積層された複数の樹脂層のうち、少なくとも片方の表面層が、本発明の接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層となるようにする。
【0027】
本発明の接着性樹脂積層体が、片方の表面層のみ(基材の片面のみ)に前記接着性樹脂層を有する場合は、例えば、上記の(1)または(2)に挙げるような方法で、被着体と接着することが可能である。
また、本発明の接着性樹脂積層体が、両方の表面層(基材の両面)に前記接着性樹脂層を有する場合は、例えば、上記の(1)〜(4)に挙げるような方法で、被着体と接着することが可能である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
(接着性樹脂フィルムの製造)
表1に示す組成により、各実施例および比較例のフィルムを製造した。フィルムの製造は、まず、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とを溶融混練し、得られた樹脂(C)のペレットを作製し、続けてそのペレットとエポキシ基含有樹脂(D)を溶融混練後、押出成形により150μmの厚さのフィルム状に成形する方法により実施した。
【0029】
【表1】

【0030】
なお、表1において用いた略語の意味は、次のとおりである。
<酸変性ポリオレフィン樹脂(A)>
「MAH−PP」・・・無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ρ=0.896g/cm、Tm=140℃、MFR=7.0)
<ポリアミド樹脂(B)>
「PA(1)」・・・ナイロン6(Tm=220℃、Mn=11,000)
「PA(2)」・・・ナイロン12(Tm=180℃、Mn=12,000)
<エポキシ基含有樹脂(D)>
「E(1)」・・・フェノキシ樹脂の「YP−55U」(ビスフェノールA型、重量平均分子量40,000−45,000、新日鐡化学株式会社製、商品名、1分子中に2個のエポキシ基を有する)
「E(2)」・・・エチレン―グリシジルメタクリレート共重合体(Tm=87℃、MFR=380、GMA含有量=19質量%、1分子中に多数のエポキシ基を有する)
「E(3)」・・・エチレン―グリシジルメタクリレート共重合体(Tm=103℃、MFR=3、GMA含有量=12質量%、1分子中に多数のエポキシ基を有する)
【0031】
(接着強度の評価方法)
JIS Z 1526に準じて、作製した接着性樹脂フィルムと、厚さが40μmのアルミ箔とをヒートシールし、得られたヒートシール部の接着強度を、引張速度300mm/分、幅15mmにて測定した。ヒートシール条件は、140℃、160℃、180℃、200℃のうちのいずれかの温度において、圧力0.2MPaで3秒間加熱および加圧するものである。
【0032】
(フィルム外観の評価方法)
押出成形で作製した接着性樹脂フィルムをロールに巻き取り回収し、このロールからフィルムを再び繰り出したときのフィルムの外観を確認し、フィッシュアイ(未溶融ゲル)が発生していないものを「○」、フィッシュアイが発生するものを「×」と評価した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示すように、本発明(実施例1〜6)によれば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAH−PP)をベース樹脂(主成分)とする接着性フィルムにおいて、エポキシ基含有樹脂と共にポリアミド樹脂を使用したことにより、無水マレイン酸変性ポリプロピレンのみの場合(比較例1)よりも高い接着強度が得られた。また、本発明(実施例1〜6)によれば、フィルムにフィッシュアイがなく、良好な外観が得られた。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンにエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体のみをブレンドした場合(比較例2)、押出機内でゲルが発生したためか、フィルムにフィッシュアイが多発し、フィルムの外観が非常に悪くなった。また、接着強度は向上せず逆に低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とをグラフト重合させて得られる樹脂(C)を、さらに、エポキシ基を1分子中に2つ以上有するエポキシ基含有樹脂(D)とグラフト重合させて得られる、グラフト共重合体(G)を含有することを特徴とする接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)と前記エポキシ基含有樹脂(D)との合計を100質量%とするうち、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が85〜98質量%、前記ポリアミド樹脂(B)が1〜9質量%、前記エポキシ基含有樹脂(D)が1〜14質量%の範囲内で含まれることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸変性ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記グラフト重合が、溶融グラフト重合であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の接着性樹脂組成物から形成される、フィルムまたはシートからなることを特徴とする接着性樹脂成形体。
【請求項6】
基材の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれかに記載の接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層が積層されてなることを特徴とする積層体。
【請求項7】
共押出法によって積層された複数の樹脂層のうち、少なくとも片方の表面層が、請求項1〜4のいずれかに記載の接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層であることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2013−71972(P2013−71972A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210745(P2011−210745)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】