説明

接着方法並びにそれを用いて作製したバイオケミカルチップ及び光学部品

【課題】接着剤を用いず、接合面の微細構造や光学特性を損なうことなく2つの部材を強固に接着することが可能な接着方法、並びにそれを用いて作製されたバイオケミカルチップ及び光学部品を提供する。
【解決手段】接着方法は、第1の部材21の第1の接合面11上に、第1の光反応性官能基を有する第1の膜化合物の被膜13を形成する工程Aと、第2の部材22の第2の接合面12上に、第2の光反応性官能基を有する第2の膜化合物の被膜14を形成する工程Bと、光照射により第1及び第2の光反応性官能基との間で共有結合を形成する1又は2以上のカップリング反応基を有するカップリング剤を第1及び第2の光反応性官能基と接触させた状態で、第1の接合面11と第2の接合面12とを圧着させ、光照射により共有結合を形成させる工程Cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着方法並びにそれを用いて作製したバイオケミカルチップ及び光学部品に関する。より詳しくは、反応性の光反応性官能基を有する膜化合物の被膜を形成することにより両接合面の表面に反応性の光反応性官能基を導入し、カップリング剤とそれらの光反応性官能基との間に形成される結合を介して両接合面間を化学的に結合させることにより、接着剤を用いることなく接着を行う方法、並びにそれを用いて作製されたバイオケミカルチップ及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一方又は双方の接合面に接着剤を塗布し、接合面同士を圧着させ、接着剤を硬化させることにより2つの部材を接着する技術は一般によく知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、接着剤は一般に粘性が高く、接合面に塗布すると徐々に硬化が進行するので、圧着後に接合面の合わせ位置を修正することは困難である。また、バイオケミカルチップの部材等のように、接合面の少なくとも一方に微細構造(例えば、ミクロンレベルの穴や溝等)が形成されている場合、流動した接着剤で微細構造を埋めてしまうことなく、かつ隙間なく接着することは非常に困難である。さらに、従来の接着剤を用いた方法では、接着面の接着剤等に厚みムラが生じるため、光学特性を劣化させることなく、レンズ等の光学部材を接着することも非常に困難であった。
【0003】
接着剤を用いない接着方法として、例えば、特許文献2には、有機単分子膜を介して箔状又は膜状の物質同士を接着する方法が開示されている。同文献に記載の方法では、例えば、脂肪族炭化水素基を有する有機単分子膜を表面に結合させたアルミニウム箔同士を、分子間力及び負圧を介して接着している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−221478号公報
【特許文献2】特開2003−246971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機単分子膜に作用する分子間力や、部材同士を圧着する際の負圧を利用して接着を行う特許文献2に記載の方法では、接着力が小さすぎるため、バイオケミカルチップや光学部品等の接着に適用することはできない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、接着剤を用いず、接合面の微細構造や光学特性を損なうことなく2つの部材を強固に接着することが可能な接着方法、並びにそれを用いて作製されたバイオケミカルチップ及び光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る接着方法は、第1の部材の第1の接合面と第2の部材の第2の接合面とを接着する方法であって、前記第1の接合面上に、第1の光反応性官能基及び第1の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第1の膜化合物を接触させ、前記第1の表面結合基と前記第1の接合面の表面官能基との間で共有結合を形成させて、該第1の接合面上に前記第1の膜化合物の被膜を形成する工程Aと、前記第2の接合面上に、第2の光反応性官能基及び第2の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を接触させ、前記第2の表面結合基と前記第2の接合面の表面官能基との間で共有結合を形成させて、該第2の接合面上に、前記第2の膜化合物の被膜を形成する工程Bと、光照射により前記第1の光反応性官能基と共有結合を形成する1又は2以上の第1のカップリング反応基と、光照射により前記第2の光反応性官能基と共有結合を形成する1又は2以上の第2のカップリング反応基とを有するカップリング剤を前記第1及び第2の光反応性官能基と接触させた状態で、前記第1の膜化合物の被膜が形成された第1の接合面と前記第2の膜化合物の被膜が形成された前記第2の接合面とを圧着させ、光照射により前記第1の光反応性官能基と前記第1のカップリング反応基、及び前記第2の光反応性官能基と前記第2のカップリング反応基との間で共有結合を形成させる工程Cとを有する。
【0008】
第1の発明に係る接着方法において、前記工程Cでは、まず、前記カップリング剤を、前記第1の接合面上に形成された前記第1の膜化合物の被膜に接触させて光照射を行い、前記第1の光反応性官能基と前記第1のカップリング反応基との間で共有結合を形成させて、前記第1の膜化合物の被膜の表面に前記カップリング剤の被膜を形成し、次いで、前記カップリング剤の被膜が更に形成された前記第1の接合面と前記第2の膜化合物の被膜が形成された前記第2の接合面とを圧着させて光照射を行い、前記第2の光反応性官能基と前記第2のカップリング反応基との間で共有結合を形成させてもよい。
【0009】
第1の発明に係る接着方法において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、カルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであってもよい。
【0010】
第1の発明に係る接着方法において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、ジアセチレン基であってもよい。
【0011】
第1の発明に係る接着方法において、前記第1及び第2の表面結合基がアルコキシシリル基及びクロロシリル基のいずれかであってもよい。
【0012】
第1の発明に係る接着方法において、前記第1及び第2の部材のいずれか一方又は双方は透明であり、前記工程Cでは、前記透明な部材を通して光照射を行うことが好ましい。
【0013】
第2の発明に係るバイオケミカルチップは、第1の部材と第2の部材とを有し、前記第1の部材の第1の接合面の表面には、分子の一端に第1の光反応性官能基を有し、他端で前記第1の接合面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、前記第2の部材の第2の接合面の表面には、分子の一端に第2の光反応性官能基を有し、他端で前記第2の接合面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、前記第1の光反応性官能基と前記第2の光反応性官能基とは、前記第1の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第1のカップリング反応基と、前記第2の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第2のカップリング反応基とを有するカップリング剤と、前記第1及び第2の光反応性官能基との間で形成された結合を介して互いに結合しており、前記形成された結合を介して前記第1の接合面と前記第2の接合面とが接着されている。
なお、本発明において「バイオケミカルチップ」とは、マイクロメートルオーダーの幅を有する流路中で、化合物の混合、合成、抽出、精製、分析、及び測定等の操作を行うための化学デバイスをいい、その具体例としては、化学実験や、バイオ実験、医療診断等に用いるケミカルチップ、バイオチップ、バイオケミカル電気泳動チップ、バイオケミカルリアクター、バイオケミカル流体システム、DNAチップ等が挙げられる。
【0014】
第2の発明に係るバイオケミカルチップにおいて、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、カルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであってもよい。
【0015】
第2の発明に係るバイオケミカルチップにおいて、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、ジアセチレン基であってもよい。
【0016】
第2の発明に係るバイオケミカルチップにおいて、前記第1及び第2の膜化合物の被膜がいずれも単分子膜であることが好ましい。
【0017】
第3の発明に係る光学部品は、第1の部材と第2の部材とを有し、前記第1の部材の第1の接合面の表面には、分子の一端に第1の光反応性官能基を有し、他端で前記第1の接合面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、前記第2の部材の第2の接合面の表面には、分子の一端に第2の光反応性官能基を有し、他端で前記第2の接合面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、前記第1の光反応性官能基と前記第2の光反応性官能基とは、前記第1の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第1のカップリング反応基と、前記第2の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第2のカップリング反応基とを有するカップリング剤と、前記第1及び第2の光反応性官能基との間で形成された結合を介して互いに結合しており、前記形成された結合を介して前記第1の接合面と前記第2の接合面とが接着されている。
なお、本発明において、「光学部品」とは、光学機器に用いられる任意の透光性部材をいい、その具体例としては、レンズやプリズム、光ファイバー、光記録媒体等が挙げられる。
【0018】
第3の発明に係る光学部品において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、カルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであってもよい。
【0019】
第3の発明に係る光学部品において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、ジアセチレン基であってもよい。
【0020】
第3の発明に係る光学部品において、前記第1及び第2の膜化合物の被膜がいずれも単分子膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜6記載の接着方法において、第1及び第2の接合面上をそれぞれ被覆している第1及び第2の膜化合物は、共有結合を介してそれぞれ第1及び第2の接合面の表面に強固に結合され、第1の光反応性官能基と第2の光反応性官能基とは、カップリング剤との間でそれぞれ形成された共有結合を介して強固に結合される。したがって、第1及び第2の接合面を強固に接着することができる。
また、接着剤を用いないため、圧着後の合わせ位置の修正が容易であり、接合面の位置合わせをより高精度で行うことができると共に、接合面に形成された微細構造や光学特性を損なうことなく接着を行うことができるので、例えば、バイオケミカルチップや光学部品の接着に好適に用いることができる。
【0022】
特に、請求項2記載の接着方法においては、まず、カップリング剤を、第1の接合面上に形成された第1の膜化合物の被膜に接触させ、第1の光反応性官能基と第1のカップリング反応基との間で共有結合を形成させて、第1の膜化合物の被膜の表面にカップリング剤の被膜を形成し、次いで、カップリング剤の被膜が更に形成された第1の接合面と第2の膜化合物の被膜が形成された第2の接合面とを圧着させ、第2の光反応性官能基と第2のカップリング反応基との間で共有結合を形成させるので、接着前に余分なカップリング剤を除去することができる。そのため、接着後に余分なカップリング剤が溶出したり、変色を起こして光学特性を劣化させたりするのを抑制することができる。
【0023】
請求項3記載の接着方法においては、第1及び第2の光反応性官能基、並びに第1及び第2のカップリング反応基が、光二量化により共有結合を形成するカルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであるので、光照射により強固な共有結合を形成できる。
【0024】
請求項4記載の接着方法においては、第1及び第2の光反応性官能基、並びに第1及び第2のカップリング反応基が、光重合により共有結合を形成するジアセチレン基であるので、光照射により強固な共有結合を形成できる。
【0025】
請求項5記載の接着方法においては、第1及び第2の表面結合基がアルコキシシリル基及びクロロシリル基のいずれかであるので、表面官能基として、例えば、水酸基等の活性水素基を有する接合面上に、共有結合(シロキサン結合)を介して強固な共有結合を形成できる。
【0026】
請求項6記載の接着方法においては、工程Cにおいて、透明な部材を通して光照射を行い、共有結合を形成するので、特殊な光照射装置が不要であり、面積の大きな接合面の接着にも適用可能である。
【0027】
請求項7〜10記載のバイオケミカルチップにおいては、第1及び第2の接合面上をそれぞれ被覆している第1及び第2の膜化合物が、共有結合を介してそれぞれ第1及び第2の接合面の表面に強固に結合しており、第1の光反応性官能基と第2の光反応性官能基とは、カップリング剤との間でそれぞれ形成された共有結合を介して強固に結合される。したがって、第1及び第2の接合面を強固に接着することができる。また、接着剤を用いることなく接着を行っているため、接合面上に形成された、ミクロンスケールの溝状又は孔状の流体流路を閉塞することなく作製することができる。
【0028】
請求項8記載のバイオケミカルチップにおいては、第1及び第2の光反応性官能基、並びに第1及び第2のカップリング反応基が、光二量化により共有結合を形成するカルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであるので、光照射により強固な共有結合を形成できる。
【0029】
請求項9記載のバイオケミカルチップにおいては、第1及び第2の光反応性官能基、並びに第1及び第2のカップリング反応基が、光重合により共有結合を形成するジアセチレン基であるので、光照射により強固な共有結合を形成できる。
【0030】
請求項10記載のバイオケミカルチップにおいては、第1及び第2の膜化合物の被膜がいずれも単分子膜であるので、接着時の寸法精度を向上できる。
【0031】
請求項11〜14記載の光学部品においては、第1及び第2の接合面上をそれぞれ被覆している第1及び第2の膜化合物が、共有結合を介してそれぞれ第1及び第2の接合面の表面に強固に結合しており、第1の光反応性官能基と第2の光反応性官能基とは、カップリング剤との間でそれぞれ形成された共有結合を介して強固に結合される。したがって、第1及び第2の接合面を強固に接着することができる。また、接着剤を用いることなく接着を行っているため、接合面の光学特性を損なうことなく作製することができる。
【0032】
請求項12記載の光学部品においては、第1及び第2の光反応性官能基、並びに第1及び第2のカップリング反応基が、光二量化により共有結合を形成するカルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであるので、光照射により強固な共有結合を形成できる。
【0033】
請求項13記載の光学部品においては、第1及び第2の光反応性官能基、並びに第1及び第2のカップリング反応基が、光重合により共有結合を形成するジアセチレン基であるので、光照射により強固な共有結合を形成できる。
【0034】
請求項14記載の光学部品においては、第1及び第2の膜化合物の被膜がいずれも単分子膜であるので、接着時の寸法精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。ここで、図1は本発明の一実施の形態に係るバイオケミカルチップの断面の部分構造を模式的に表した説明図であり、図2は同バイオケミカルチップの製造方法において、第1の接合面上に第1の膜化合物の被膜を形成する工程を説明するために、それぞれ、第1の膜化合物の被膜を形成する前及び形成した後の第1の基材の表面付近を分子レベルまで拡大した概念図であり、図3は同バイオケミカルチップの製造方法において、第1の膜化合物の表面にカップリング剤の被膜を形成する工程を説明するために、それぞれ、カップリング剤の被膜を形成する前及び形成した後の第1の基材の表面付近を分子レベルまで拡大した概念図である。
【0036】
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係るバイオケミカルチップ10は、第1の基材(第1の部材の一例)21と第2の基材22(第2の部材の一例)22とを有し、第1の基材21の第1の接合面11の表面には、分子の一端にカルコニル基(第1の光反応性官能基の一例)を有し、他端で第1の接合面11に結合した第1の膜化合物の被膜の一例である単分子膜13が形成され、第2の基材22の第2の接合面12の表面には、分子の一端にカルコニル基(第2の光反応性官能基の一例)を有し、他端で第2の接合面12に結合した第2の膜化合物の被膜の一例である単分子膜14が形成され、第1の膜化合物の単分子膜13上のカルコニル基と、第2の膜化合物の単分子膜14上のカルコニル基とは、2以上のカルコニル基(カップリング反応基の一例)を有するカップリング剤と、カルコニル基の光二量化反応により形成された共有結合を介して互いに結合しており、このようにして形成された結合を介して第1の接合面11と第2の接合面12とが接着されている。
【0037】
バイオケミカルチップ10は、第1の基材21の第1の接合面11上に、カルコニル基及びアルコキシシリル基(第1の表面結合基の一例)を分子の両端にそれぞれ有する第1の膜化合物を接触させ、アルコキシシリル基と水酸基(活性水素を含む表面官能基の一例)23との間で形成された結合を介して第1の膜化合物の単分子膜13を形成する工程A(図2参照)と、第2の基材22の第2の接合面12上に、工程Aと同様の方法により、第2の膜化合物の単分子膜14を形成する工程Bと、まずLB法(ラングミュア−ブロジェット法)等を用いて、カップリング剤を単分子膜状にして第1の膜化合物の単分子膜13に接触させ、カルコニル基の光二量化により共有結合を形成させて、第1の膜化合物の単分子膜13の表面に単分子膜状のカップリング剤の被膜15を形成し、次いで、カップリング剤の被膜15が更に形成された第1の接合面11と第2の膜化合物の単分子膜14が形成された第2の接合面12とを圧着させ、カルコニル基の光二量化により共有結合を形成させる工程Cとを有する接着方法を用いて製造される。
【0038】
以下、工程A〜Cについてより詳細に説明する。
工程Aでは、下記の化1に示すような光二量化反応により共有結合を形成するカルコン(chalcone)より誘導されるカルコニル基を有する膜化合物を、ガラス製の第1の基材21の第1の接合面11と接触させ、第1の接合面11の表面にカルコニル基を有する膜化合物の単分子膜13を形成する(図2参照)。
なお、用いることのできる第1の基材21の大きさ及び形状に特に制限はないが、第1の接合面11は、表面粗さが1μm以下、好ましくは100nm以下の鏡面仕上げにしておくことが好ましい。
【0039】
【化1】

【0040】
なお、化1において、Ar及びAr’はベンゼン環を表す。
【0041】
カルコニル基を有する膜化合物としては、第1の基材21の表面に吸着又は結合し、自己組織化により単分子膜を形成することのできる任意の化合物を用いることができるが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にカルコニル基を、他方の末端にアルコキシシリル基(第1の表面結合基の一例)をそれぞれ有し、下記の化2又は化3で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。なお、カルコニル基は2つのベンゼン環を有しているが、アルキレン基は、化2及び化3で表されるように、どちらに結合していてもよい。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
化2及び化3において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるカルコニル基を有する膜化合物の具体例としては、下記(1)〜(8)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0045】
(1) (C)(CHCO(C)O(CHOSi(OCH
(2) (C)(CHCO(C)O(CHOSi(OC
(3) (C)(CHCO(C)O(CHOSi(OCH
(4) (C)(CHCO(C)O(CHOSi(OC
(5) (C)CO(CH(C)O(CHOSi(OCH
(6) (C)CO(CH(C)O(CHOSi(OC
(7) (C)CO(CH(C)O(CHOSi(OCH
(8) (C)CO(CH(C)O(CHOSi(OC
【0046】
なお、上記(1)〜(8)において、(C)CO(CH(C)及び(C)(CHCO(C)は、それぞれ、4−カルコニル基(C−CO−CH=CH−C−)及び4’−カルコニル基(C−CH=CH−CO−C−)を表す。
【0047】
第1の膜化合物の単分子膜13の形成は、カルコニル基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と第1の基材21の表面の水酸基23との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液を第1の基材21の表面に塗布し、室温の空気中で反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の任意の方法により行うことができる。
【0048】
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
【0049】
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
【0050】
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
【0051】
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
【0052】
アルコキシシリル基と第1の基材21の表面の水酸基23とが縮合反応を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するカルコニル基を有する膜化合物の単分子膜23を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合は第1の基材21の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本は第1の基材21の表面のケイ素原子と結合している。
【0053】
【化4】

【0054】
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、第1の基材21の表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、第1の基材21をよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
【0055】
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
【0056】
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
【0057】
例えば、縮合触媒として、カルボン酸金属塩キレートであるジブチルスズビスアセチルアセテートの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にして第1の膜化合物の単分子膜13の形成を行うと、エポキシ化第1の基材21の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
【0058】
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にして第1の膜化合物の単分子膜13の形成を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
【0059】
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
【0060】
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
【0061】
反応液の製造には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤又は蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
【0062】
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
【0063】
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
【0064】
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
【0065】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、第1の接合面11の表面に第1の膜化合物の単分子膜13が形成される。このようにして表面に第1の膜化合物の単分子膜13が形成された第1の接合面11の表面付近の模式図を図2に示す。
【0066】
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0067】
反応後、溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、第1の接合面11の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、第1の接合面11の表面に共有結合により必ずしも全てが第1の接合面11上に固定されているわけではないが、カルコニル基を含んでいるため、第1の膜化合物の単分子膜13と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0068】
なお、本実施の形態においては、カルコニル基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にジアセチレン基を、他方の末端にクロロシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるクロロシラン化合物を用いてもよい。
【0069】
【化5】

【0070】
化5において、m及びnは、それぞれ独立して2〜20の整数を、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を、Rは−Si(CH−基又は共有結合をそれぞれ表す。
【0071】
ジアセチレン基は、下記の一般式(化6)に示すような光重合反応により共有結合を形成する。なお、化6において、R及びR’は、それぞれ任意の官能基を表す。
【0072】
【化6】

【0073】
用いることのできるジアセチレン基を有する膜化合物の具体例としては、下記(11)〜(16)に示したクロロシラン化合物が挙げられる。
【0074】
(11) CH≡C−C≡C(CH15SiCl
(12) CH≡C−C≡C(CHSi(CH(CH15SiCl
(13) CH≡C−C≡C(CHSi(CH(CHSiCl
(14) CC≡C−C≡C(CH15SiCl
(15) CC≡C−C≡C(CHSi(CH(CH15SiCl
(16) CC≡C−C≡C(CHSi(CH(CHSiCl
【0075】
クロロシラン化合物を用いる場合には縮合触媒及び助触媒が不要であること、アルコール系溶媒が使用できないこと、アルコキシシラン化合物より加水分解を受けやすいので、乾燥溶媒を用い、乾燥空気中(相対湿度30%以下)で反応を行うことを除き、用いることのできる溶媒の種類、反応条件並びに反応時間についてはアルコキシシラン化合物の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
なお、本実施の形態では、第1の基材の材料としてガラスを用いたが、アルミニウム等の金属、セラミックス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂を用いることもできる。
基材材料の表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、ガラスの場合と同様に、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な基材の具体例としては、アルミニウム等の金属、セラミックス等が挙げられる。
基材材料として合成樹脂を用いる場合には、プラズマ処理等により活性水素基を有する化合物をグラフトする等の処理を行うことにより、アルコキシシラン化合物を用いることができる場合がある。
【0077】
図1では、第1の基材の全面にカルコニル基を有する膜化合物の単分子膜が形成されている場合の模式図を示したが、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等を用いて第1の接合面上にのみ選択的に反応液を塗布することもできる。この場合、溶液の流路の部分には単分子膜が形成されないので、単分子膜の有する光反応性官能基やカップリング反応基と反応する化合物を用いる場合にも、本発明に係るバイオケミカルチップを好適に使用することができる。
(以上工程A)
【0078】
工程Bでは、カルコニル基を有する膜化合物を、ガラス製の第2の基材22の第2の接合面12と接触させ、第2の接合面12の表面にカルコニル基を有する膜化合物の単分子膜14を形成する(図2参照)。用いることができる膜化合物、反応条件等については工程Aと同様であるので、詳しい説明を省略する。
(以上工程B)
【0079】
工程Cでは、まずLB法等を用いて、カップリング剤を単分子膜状にして第1の膜化合物の単分子膜13に接触させ、カルコニル基の光二量化により共有結合を形成させて、第1の膜化合物の単分子膜13の表面にカップリング剤の被膜15を形成し(図3参照)、次いで、カップリング剤の被膜15が更に形成された第1の接合面11と第2の膜化合物の単分子膜14が形成された第2の接合面12とを圧着させ、カルコニル基の光二量化により共有結合を形成させる(図3参照)。
【0080】
なお、ここで、カップリング剤の単分子膜15の形成の代わりに、カップリング剤と溶媒とを混合した反応液を第1の接合面11に形成された第1の膜化合物の単分子膜13に塗布し、光照射して反応させてもよい。この場合、カップリング剤の被膜は単分子膜にはならないが、ミクロンスケールの溝状又は孔状の流体流路を閉塞しないようにするためには、スクリーン印刷法等の選択的塗布方法を用いて塗布を行う。
反応液の製造には、カップリング剤が可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、及び毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
カップリング剤の添加量、塗布する溶液の濃度、反応温度及び反応時間は、用いる基材の材質、膜化合物の種類等に応じて適宜調節される。
【0081】
このようにして得られた、カップリング剤の被膜15が更に形成された第1の接合面11と第2の膜化合物の単分子膜14が形成された第2の接合面12とを圧着し光照射すると、第2の接合面12上に形成された第2の膜化合物の単分子膜14上のカルコニル基と、第1の接合面11を覆うカルコニル基との間で形成された結合を介して、第1の接合面11と第2の接合面12とが接着され、バイオケミカルチップ10が得られる(図1参照)。なお、第1の基材21及び第2の基材22は、共に透光性を有するガラス製なので、第1の基材21及び第2の基材22のいずれか一方又は双方を通して第1の接合面11及び第2の接合面12への光照射を行うことができる。
光源としては、フォトリソグラフィー、光重合等に用いられる任意の紫外光源を用いることができ、一例としては、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられる。
【0082】
なお、本実施の形態に用いることができるカップリング剤としては、下記の一般式
CnOCO−(CH−COOCn
(mは1〜20の整数を表し、Cnは、4−カルコニル基及び4’−カルコニル基のいずれかを表す)で表される脂肪族ジカルボン酸α,ω−ジカルコニルエステル、下記化7で表される側鎖にカルコニル基を有するポリマー等が挙げられる。
【0083】
【化7】

【0084】
なお、nは2以上の任意の整数、好ましくは2〜500の整数を表し、Cnは、4−カルコニル基及び4’−カルコニル基のいずれかを表す。
【0085】
化7で表されるカルコニル基を有するポリマーの具体例としては、ポリアクリル酸(Z=−CHCH−COO−)、ポリメタクリル酸(Z=−CHC(CH)−COO−)等が挙げられる。
【0086】
なお、本実施の形態においては光反応性官能基としてカルコニル基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、光反応性官能基としてジアセチレン基を有する膜化合物を用いる場合には、カップリング反応基として2もしくは3以上のジアセチレン基を有するカップリング剤を用いる。
【0087】
なお、本実施の形態においては、透明なガラス製の第1及び第2の基材を用いたが、不透明な材料を第1及び第2の基材として用いる場合には、接合した第1及び第2の基材の側面から、圧着した第1及び第2の接合面に対して直交方向に光照射を行う。この際、光ファイバー等を用いて接合面近傍に照射光を集光させることが好ましい。
(以上工程C)
【0088】
なお、ここではバイオケミカルチップ及びその製造方法について説明したが、光学部品についても同様の方法を用いて製造することができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。本実施例においては、代表例としてガラス製基材を用いたバイオケミカルチップ及びレンズの製造について説明する。
【0090】
(実施例1:バイオケミカルチップの製造)
(1)バイオケミカルチップ基板の接合面上へのカルコニル基を有する膜化合物の単分子膜の形成
1対のガラス製のバイオケミカルチップ基板(一方の基板上には、フォトリソグラフィー及びウェットエッチングにより、チャネル幅10〜100μm、深さ50μm程度の流路が形成されている)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
1−トリメトキシシリルオキシ−6−(4−カルコニルオキシ)ヘキサン(化8)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサンに溶解し、反応液を調製した。
【0091】
【化8】

【0092】
このようにして得られた反応液を双方の基板の接合面に塗布し、乾燥空気中(相対湿度30%以下)で2時間程度反応させた。その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去すると、接合面の全面に亘り、カルコニル基を有する膜化合物の単分子膜(厚さ約1ナノメートル)が形成された。
【0093】
(2)カルコニル基を有するカップリング剤の単分子膜の形成
(1)で単分子膜を形成したエポキシ化バイオケミカルチップ基板の一方に、分子の両端にアジピン酸1,4−ビス(4−カルコニル)CnOCO−(CH−COOCn(Cnは、4−カルコニル基を表す)のエタノール溶液をミクロンスケールの溝状又は孔状の流体流路を閉塞しないようにスクリーン印刷法を用いて塗布し、高圧水銀灯を用いて1次光照射(完全にはカップリング反応を形成させない)した後、エタノールで洗浄すると、膜化合物の単分子膜の表面に、更にカルコニル基を有するカップリング剤の被膜が形成された。
【0094】
(3)バイオケミカルチップ基板との接着
(1)でカルコニル基を有する膜化合物の単分子膜を形成したバイオケミカルチップ基板と、(2)でカルコニル基を有するカップリング剤の単分子膜を形成したバイオケミカルチップ基板とを接合面側で合わせて圧着後、高圧水銀灯を用いて2次光照射し、完全に硬化させると、バイオケミカルチップが得られた。
【0095】
(実施例2:接合レンズの製造)
接合レンズ用の2枚のレンズを用いて、実施例1と同様の方法によって接合レンズの接着を行った。得られた接合レンズについて、変色、視野の歪み、収差、干渉縞等は観測されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバイオケミカルチップの断面の部分構造を模式的に表した説明図である。
【図2】同バイオケミカルチップの製造方法において、第1の接合面上に第1の膜化合物の被膜を形成する工程を説明するために、それぞれ、第1の膜化合物の被膜を形成する前及び形成した後の第1の基材の表面付近を分子レベルまで拡大した概念図である。
【図3】同バイオケミカルチップの製造方法において、第1の膜化合物の表面にカップリング剤の被膜を形成する工程を説明するために、それぞれ、カップリング剤の被膜を形成する前及び形成した後の第1の基材の表面付近を分子レベルまで拡大した概念図である。
【符号の説明】
【0097】
10:バイオケミカルチップ、11:第1の接合面、12:第2の接合面、13:第1の膜化合物の単分子膜、14:第2の膜化合物の単分子膜、15:カップリング剤の被膜、21:第1の基材、22:第2の基材、23:水酸基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の第1の接合面と第2の部材の第2の接合面とを接着する方法であって、
前記第1の接合面上に、第1の光反応性官能基及び第1の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第1の膜化合物を接触させ、前記第1の表面結合基と前記第1の接合面の表面官能基との間で共有結合を形成させて、該第1の接合面上に前記第1の膜化合物の被膜を形成する工程Aと、
前記第2の接合面上に、第2の光反応性官能基及び第2の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を接触させ、前記第2の表面結合基と前記第2の接合面の表面官能基との間で共有結合を形成させて、該第2の接合面上に、前記第2の膜化合物の被膜を形成する工程Bと、
光照射により前記第1の光反応性官能基と共有結合を形成する1又は2以上の第1のカップリング反応基と、光照射により前記第2の光反応性官能基と共有結合を形成する1又は2以上の第2のカップリング反応基とを有するカップリング剤を前記第1及び第2の光反応性官能基と接触させた状態で、前記第1の膜化合物の被膜が形成された第1の接合面と前記第2の膜化合物の被膜が形成された前記第2の接合面とを圧着させ、光照射により前記第1の光反応性官能基と前記第1のカップリング反応基、及び前記第2の光反応性官能基と前記第2のカップリング反応基との間で共有結合を形成させる工程Cとを有することを特徴とする接着方法。
【請求項2】
請求項1記載の接着方法において、前記工程Cでは、まず、前記カップリング剤を、前記第1の接合面上に形成された前記第1の膜化合物の被膜に接触させて光照射を行い、前記第1の光反応性官能基と前記第1のカップリング反応基との間で共有結合を形成させて、前記第1の膜化合物の被膜の表面に前記カップリング剤の被膜を形成し、次いで、前記カップリング剤の被膜が更に形成された前記第1の接合面と前記第2の膜化合物の被膜が形成された前記第2の接合面とを圧着させて光照射を行い、前記第2の光反応性官能基と前記第2のカップリング反応基との間で共有結合を形成させることを特徴とする接着方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の接着方法において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、カルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであることを特徴とする接着方法。
【請求項4】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の接着方法において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、ジアセチレン基であることを特徴とする接着方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着方法において、前記第1及び第2の表面結合基がアルコキシシリル基及びクロロシリル基のいずれかであることを特徴とする接着方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着方法において、前記第1及び第2の部材のいずれか一方又は双方は透明であり、前記工程Cでは、前記透明な部材を通して光照射を行うことを特徴とする接着方法。
【請求項7】
第1の部材と第2の部材とを有し、
前記第1の部材の第1の接合面の表面には、分子の一端に第1の光反応性官能基を有し、他端で前記第1の接合面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、
前記第2の部材の第2の接合面の表面には、分子の一端に第2の光反応性官能基を有し、他端で前記第2の接合面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、
前記第1の光反応性官能基と前記第2の光反応性官能基とは、前記第1の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第1のカップリング反応基と、前記第2の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第2のカップリング反応基とを有するカップリング剤と、前記第1及び第2の光反応性官能基との間で形成された結合を介して互いに結合しており、前記形成された結合を介して前記第1の接合面と前記第2の接合面とが接着されていることを特徴とするバイオケミカルチップ。
【請求項8】
請求項7記載のバイオケミカルチップにおいて、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、カルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであることを特徴とするバイオケミカルチップ。
【請求項9】
請求項7記載のバイオケミカルチップにおいて、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、ジアセチレン基であることを特徴とするバイオケミカルチップ。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載のバイオケミカルチップにおいて、前記第1及び第2の膜化合物の被膜がいずれも単分子膜であることを特徴とするバイオケミカルチップ。
【請求項11】
第1の部材と第2の部材とを有し、
前記第1の部材の第1の接合面の表面には、分子の一端に第1の光反応性官能基を有し、他端で前記第1の接合面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、
前記第2の部材の第2の接合面の表面には、分子の一端に第2の光反応性官能基を有し、他端で前記第2の接合面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、
前記第1の光反応性官能基と前記第2の光反応性官能基とは、前記第1の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第1のカップリング反応基と、前記第2の光反応性官能基とカップリング反応して共有結合を形成する少なくとも1の第2のカップリング反応基とを有するカップリング剤と、前記第1及び第2の光反応性官能基との間で形成された結合を介して互いに結合しており、前記形成された結合を介して前記第1の接合面と前記第2の接合面とが接着されていることを特徴とする光学部品。
【請求項12】
請求項11記載の光学部品において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、カルコニル基及びシンナモイル基のいずれかであることを特徴とする光学部品。
【請求項13】
請求項11記載の光学部品において、前記第1及び第2の光反応性官能基、並びに前記第1及び第2のカップリング反応基が、ジアセチレン基であることを特徴とする光学部品。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の光学部品において、前記第1及び第2の膜化合物の被膜がいずれも単分子膜であることを特徴とする光学部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−297411(P2008−297411A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144046(P2007−144046)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】