説明

接着系およびコーティング用プライマー組成物

本発明は、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物;少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物;水;および少なくとも1つの硬化剤を含んでなる水性プライマー組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは実質的にクロム酸塩を含まない接着系用およびコーティング用のプライマー組成物に関係する。特に、本発明のプライマー組成物は、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物;少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物;水;および少なくとも1つの硬化剤の水性分散体を含んでなる。
【背景技術】
【0002】
従来、環境的汚染(例えば、汚れ、酸化、およびその他の残骸物)を除去するため基底構造の表面を、接着する直前に清浄した場合に、接着力は最適化される。しかしながら、多くの製造方法で、しばしば清浄と接着は時間的にかなり隔てられて行われ、その間に表面が再汚染される可能性があり、このため形成される接着力を弱くする。
【0003】
この懸念事項を解消するために、清浄された表面はプライマーにより下塗りされる。従来、しばしばプライマーは、典型的には、噴霧塗布できるように有機溶剤で希釈された1または2成分熱硬化性樹脂から調製されてきた。ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、またはポリ(ブタジエン/スチレン)とともに、分散媒として水またはエポキシエステル自体を含む組成物において、40年以上も前に、液状エポキシエステルがコーティングにおける使用のために提案された。
【0004】
これらの有機溶剤に基づくプライマーの例には、米国特許第4,352,899号(Tada)が含まれ、該特許文献は、金属基板用の液状媒体に分散されたエポキシ樹脂、有機リン化合物、亜鉛粉末およびマグネシウム化合物のコーティング組成物を記載する。一部の亜鉛粉末を固体導電性物質に置き換えてもよい。これらの組成物に有機溶剤を用いてもよく、該組成物はクロム酸顔料を含む種々の顔料を含有し得る。
【0005】
有機溶剤の使用による環境的および規制懸念を解決するための取り組みにおいて、第1成分が、溶剤の量を低減したまたは全く含まず、主にクロム酸塩に基づく種々の腐食防止剤とともに水に分散されたエポキシ樹脂であり、第2成分が還元性アミン触媒溶液である、二成分プライマー系が設計され、開発されている。
【0006】
例えば、米国特許第5,416,090号、米国特許第5,576,061号および米国特許第5,641,818号は、それぞれ、貯蔵安定環境において、報告される物理的特性の損失なしに、かつ耐溶剤性を示す、金属性被着体と他の被着体との接着を促進するための実質的にVOC非含有接着性エポキシプライマーを開示する。これらの特許により開示されるプライマーは、1つ以上の固形エポキシ樹脂および固形硬化剤を、100%のエポキシ樹脂および硬化剤の固形粒子の100%が30μm未満のサイズを有するように水中に分散させることにより調製される。
【0007】
さらに、近年、クロム酸塩の使用、特に腐食防止剤としてのクロム酸塩の使用について、環境的および規制問題が生じてきている。従来、腐食から基板を保護するため、様々なタイプの液状コーティング組成物が金属表面に塗布され、その表面は焼付けされてきた。そのようなコーティングのいくつかは、一般的な金属コイルコーティング方法で用いられ、それらは耐亀裂性、耐粉砕性および耐剥離性のために十分に接着し柔軟でなければならない。種々の金属基板の腐食耐性の改善のために使用し得る1つの方法としては、一般的に2つのコーティングの適用が挙げられる。第1のコーティングは、クロム化合物(例えばクロム三酸化物および亜鉛粉末)を含むコーティングの他の成分に対する担体として、例えばキサンタンガムのような物質を含んでなる。焼付けにおいて、コーティングに含まれるキサンタンガムは不溶性となる。この焼付けされたコーティング上に、ジンクリッチ樹脂を含む第2コーティングを塗布する。米国特許第4,026,710号(Kennedy)は、金属の腐食耐性を改善するための前記のような二工程法を記載している。この場合、樹脂を水に分散させるために特定の界面活性剤が使用される。
【0008】
米国特許第3,713,904号(Bernath)は、アルミニウムおよびアルミニウム合金に腐食耐性および保護被膜を作製するための組成物を記載し、該組成物は、有機樹脂、無機六価クロム化合物、易酸化性成分、リン酸およびクロム酸ストロンチウムに基づいている。混合において、クロム酸ストロンチウムおよび易酸化性成分は、六価クロムを三価クロムにするために反応する。該混合物を基板に塗布し、その後、三価クロムの一部を六価クロムに酸化するために加熱し、強接着性有機樹脂コーティングをもたらす。
【0009】
さらに、米国特許第5,859,095号(Moyle)は、クロム三酸化物、水、リン酸およびポリテトラフルオロエチレン滑剤を含む分酸性または乳化性エポキシ樹脂の水性組成物をクレームする。
【0010】
一連の腐食防止剤におけるクロム酸塩の排除への1つの取り組みは、亜鉛の使用を含む。腐食耐性を改善するために有効なジンクリッチコーティングは、米国特許第4,476,260号(Salensky)に記載されている。これらのコーティングは、一般的に亜鉛顔料、熱可塑性エポキシ樹脂、オルガノシラン、ならびに場合によりアルミニウム三水和物および1つ以上の分散剤の混合物を含む。錫めっきされた軟鋼への適用に適当なウォッシュコート組成物が、米国特許第4,544,686号(Bromley)に記載されており、該組成物は、水性分散媒およびバインダーを含んでいる。該ウォッシュコート組成物は、熱硬化性アクリルポリマー、エポキシ樹脂および酸触媒を含んでいる。
【0011】
さらに、米国特許第6,139,610号(Sinko)は、金属基板へ適用するための腐食防止組成物をクレームする。クレームされた組成物は、腐食防止顔料相をその中に分散させた被膜形成有機ポリマーであり、それ自身は、有機腐食防止化合物で形成される微粒子と微細なレベルで結合される腐食防止無機化合物で形成される複合性有機/無機混合微粒子である。これらの無機および有機化合物はスペクトル分析により明確に特定することが可能であると考えられているが、これらは異なる化学組成を有する分離できない成分相中で物理的に結合する。
【0012】
米国特許5,866,652号(Hager)は、航空機の金属膜上のコーティングに関する。該コーティングは、有機ポリマーまたはゾル−ゲルの連続相、および連続相に分散したクロム酸塩非含有塩の混合物を含む。該クロム酸塩非含有塩の混合物は、希土類金属のカルボン酸塩およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のバナジウム酸塩、ならびにアルカリ土類金属のホウ酸塩を含む。該コーティングは、5重量%塩化ナトリウム溶液の噴霧へ3000時間暴露した後、著しい孔食から金属膜を保護することが報告されている。該コーティングは、航空機油圧液による分解に耐性があることが報告されている。さらに、該コーティングは、ガードナー160ポンド容量の試験機械によってもたらされる50インチポンドの前向きの衝撃に耐え得ることが報告されている。
【0013】
実質的に揮発性有機溶剤を含有しない水性プライマー組成物が、米国特許第5,461,090号(David)に記載されている。該組成物は非クロム腐食防止剤、好ましくはリン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛のような腐食防止剤も含み得る。
【0014】
さらに、米国特許第6,537,678号(Putnam)は、非発ガン性腐食防止添加剤を報告する。これらの添加剤は、陽極腐食防止剤および陰極腐食防止剤を含み、該陽極腐食防止剤は、バナジウム、モリブデン、タングステンの化合物から選択され、陰極腐食防止剤は、セリウム、ネオジムおよびプラセオジムの化合物から選択される。
【0015】
コーティング用の自己分散型硬化性エポキシ樹脂が、米国特許第6,506,821号および国際特許出願WO96/20971号に記載されている。米国特許第6,506,821号(Huver)において、自己分散性硬化性エポキシ樹脂組成物は、1.0当量のエポキシ樹脂と0.01〜1.0当量の多価フェノールと0.005〜0.5当量のアミン−エポキシ付加物の反応により得ることができ、該アミン−エポキシ付加物が芳香族ポリエポキシドとポリアルキレンアミンとの反応生成物である。該芳香族ポリエポキシドおよびポリオキシアルキレンアミンは、1:0.1〜1:0.28の当量比で使用される。
【0016】
米国特許第5,648,409号(Katar)において、自己分散型硬化性エポキシ樹脂組成物は、1.0当量のエポキシ樹脂と0.01〜1.0当量の多価フェノールと0.005〜0.5当量のアミン−エポキシ付加物の反応により調製され、該アミン−エポキシ付加物は1.0当量の芳香族ポリエポキシドと0.3〜0.9当量のポリアルキレンアミンの反応生成物である。
【0017】
国際特許出願WO07/008199号は、接着系用およびコーティング用の、特に腐食防止のための、熱硬化性樹脂組成物、腐食防止剤、水および硬化剤を含有するVOC非含有水性プライマー組成物を開示する。該発明のプライマー組成物は、実質的にクロム酸塩を含まないが、有機塩、顔料または陽極阻害剤および陰極阻害剤のような腐食防止剤を常に含有する。好適なこれらの阻害剤は、表面の腐食を少なくするため、コーティングのプライマー層厚より小さな粒度を有する。このサイズの粒子生成物は、高価であり、特別な器具および熟練者を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,352,899号明細書
【特許文献2】米国特許第5,416,090号明細書
【特許文献3】米国特許第5,576,061号明細書
【特許文献4】米国特許第5,641,818号明細書
【特許文献5】米国特許第4,026,710号明細書
【特許文献6】米国特許第3,713,904号明細書
【特許文献7】米国特許第5,859,095号明細書
【特許文献8】米国特許第4,476,260号明細書
【特許文献9】米国特許第4,544,686号明細書
【特許文献10】米国特許第6,139,610号明細書
【特許文献11】米国特許第5,866,652号明細書
【特許文献12】米国特許第5,461,090号明細書
【特許文献13】米国特許第6,537,678号明細書
【特許文献14】米国特許第6,506,821号明細書
【特許文献15】国際公開第96/20971号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5,648,409号明細書
【特許文献17】国際公開第07/008199号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
最新技術にもかかわらず、エンドユーザーが選択するための先進のプライマーの様々な商業的供給源を有するように、実質的にクロム化合物を含まず調製され;実質的にさらなる腐食防止剤を含まない、または前述の腐食防止剤を少ない量でのみ含み、腐食を防止し;異なる適用プロファイルに容易に適応することができ、硬化時に、有機溶剤および腐食に対して耐性を示す、腐食耐性および保護被膜ならびに接着系を作るための、代替の実質的にVOC非含有プライマーを作り出すことが望まれている。
【0020】
さらに、露出した表面を腐食から保護するために、金属表面に適用するためのコーティング、プライマーおよびシーラント組成物を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂;少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物;水;少なくとも1つの硬化剤を含んでなる水性プライマー組成物に関する。
【0022】
好ましくは、本発明は、実質的にVOCを含まないプライマー組成物を提供する。本発明のプライマー組成物は、金属表面に適用された場合に腐食を防止し、腐食に対して持続性のある耐性を表面に与える。好ましくは、該組成物は、クロム酸塩化合物なしで調製され、実質的にクロム酸塩非含有組成物であり、異なる適用に容易に適応し得る。硬化時に、該プライマー組成物は、有機溶剤および腐食に耐性を示す。また、該プライマー組成物は、プライマーおよび硬化接着剤により結合した2つの基板の組立品を製造するために使用される。
【0023】
広義において、該水性プライマー組成物には、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物;少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物;水;および少なくとも1つの硬化剤の水性分散体からなる。
【0024】
本発明における用語「熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物」は、1つのまたはいくつかの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂を含み得る組成物を表す。
本発明における用語「熱硬化性、非自己乳化型エポキシ樹脂組成物」は、1つまたはいくつかの熱硬化性、非自己乳化型エポキシ樹脂を含み得る組成物を表す。
本発明における「水性プライマー組成物」は、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物、少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型エポキシ樹脂組成物、少なくとも1つの硬化剤および水に加えて、さらなる成分を含み得る。
【0025】
少なくとも熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物は、(a)1.0反応当量のエポキシ樹脂、(b)約0.01〜1.0反応当量(例えば約0.4〜約0.6反応当量または約0.65〜約0.95反応当量)の多価フェノール、および(c)約0.005〜0.5反応当量のアミン−エポキシ付加物を反応させることにより調製されるポリオキシアルキレンアミンに基づき、該アミン−エポキシ付加物は、1.0当量の芳香族ポリエポキシドと約0.3〜0.9反応当量のポリオキシアルキレンアミンを接触させることにより形成される。このような自己乳化型硬化性エポキシ樹脂の調製は、米国特許第6,506,821号の第2欄第46〜55行、第5欄第29〜46行および実施例1〜4に詳細に記載されており、ここにこれを参照として組み込む。
【0026】
本発明における表現「自己乳化型」エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂が、乳化剤のような他のさらなる添加剤なしに、自然発生的に水中で安定なエマルションを形成することを意味する。好ましくは、ここで用いられる用語、安定的なエマルションは、自己乳化型硬化性エポキシ樹脂の総量に基づいて、少なくとも99重量%、好ましくは100重量%の自己乳化型エポキシ樹脂が、大気温度で6ヶ月間または40℃で4週間後に、底に沈まず、固形沈殿物を形成しないエマルションを称する。
【0027】
自己乳化型エポキシ樹脂は、1994年6月14日にJ. Papalos等により出願された米国特許5,565,505号(1993年6月30日に出願された米国08/086,288の一部継続出願)、名称「Self-Dispersing Curable Epoxy Resins, Dispersions Made Therewith, and Coating Compositions Made Therefrom」に詳細に記載されている(参照:例えば、第2欄第66行〜第3欄第12行および実施例1〜4)。
【0028】
自己乳化型エポキシ樹脂による標準的な樹脂の置換は、遊離分子をより少なくし、プライマー層中の水の拡散を低減させることにより、プライマー層の膨張を減少する。さらに、環境への取り組みにおいて、自己乳化型エポキシ樹脂の使用が、硬化の際の架橋結合を改善し、さらなる乳化剤の必要性を減少させる。
【0029】
自己乳化型エポキシ樹脂は、まず固形エポキシ樹脂を準備し、その後この固形エポキシ樹脂の分散体を調製することにより得ることができ、該固形エポキシ樹脂の分散体は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の有機溶剤を含み、最も好ましくは実質的に有機溶剤を含まない。望ましくは、該固形エポキシ樹脂は水に分散される。
【0030】
いくつかの実施態様において、少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂、ベンゾキサジン樹脂、ポリウレタン樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ−アクリル樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルエステル樹脂、熱可塑性樹脂、および/またはそれらの組み合わせあるいはそれらの共重合からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの自己乳化型エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つの非自己乳化型樹脂組成物に対する乳化剤としてはたらき、凝集構造として安定な液滴を形成する。
【0031】
異なる非自己乳化型樹脂を上記の凝集構造内でカプセル化させることができ、系が異なる適用プロファイルに容易に適合し得るようになる。硬化時、非自己乳化型樹脂組成物は、処方の防食特性を改善し、さらなる腐食防止剤の必要性を低減する。様々な適用(例えば内部コーティング)で、さらなる腐食防止剤を含有しない本発明のプライマー組成物を露出した表面に塗布することができ、腐食に対して前記の露出した表面を十分に保護することができる。
【0032】
さらに、柔軟性、UV耐性、接着力および引っかき耐性に関する、硬化処方の機械的特性が、少なくとも1つの非自己乳化型樹脂組成物により促進される。
【0033】
該水性分散体は、バランスをとる水相により、約1〜約60重量%、例えば約10〜約25重量%の分散されたプライマーを含む。
【0034】
好ましくは、水性分散体は、大気温度で、一成分(1K)系に対して3ヶ月までおよび二成分(2K)系に対して2時間まで、金属表面などの結合される表面への塗布性能にいかなる大きな欠損もなく貯蔵され得る。本発明の好ましい実施態様において、本発明の水性プライマー組成物は、約15℃〜約250℃の範囲の温度において、約1秒から14日で硬化する。硬化時、プライマーは、有機溶剤および腐食に対して優れた耐性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
上述したように、本発明の水性プライマー組成物は、広義において、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物;少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物;水;および少なくとも1つの硬化剤の水性分散体からなる。
【0036】
少なくとも1つの熱硬化性自己乳化型エポキシ樹脂は、好ましくは、エポキシ樹脂、多価フェノールおよびアミンエポキシ付加物を反応させることにより調製されるポリオキシアルキレンアミンに基づく自己乳化型硬化性エポキシ樹脂であってよく、該アミン−エポキシ付加物は、芳香族ポリエポキシドとポリオキシアルキレンアミンを接触させて形成される。このような自己乳化型硬化性エポキシ樹脂の調製は、米国特許第6,506,821号の第2欄第46〜55行、第5欄第29〜46行および実施例1〜4に詳細に記載されている。
【0037】
本発明において実施されるエポキシ樹脂は、構造式:
【化1】

〔式中、Rは、少なくとも1つの6炭素芳香族環を含む、「g」価のC〜C50有機基(例えばgが2の時、Rは−CH−O−X−C(CH−X−O−CH−であり得、またはRはCH−O−X−CH−X−O−CH−であり得る[式中、Xはフェニル基を表す])を表し、「g」は2以上6以下である。〕
により示されるような、2つ以上のエポキシ基を有し、かつ1つ以上の6炭素芳香族環が分子中に存在する多価フェノールのポリグリシジルエーテルを含み得る。
【0038】
このようなエポキシ樹脂を製造する技術は先行技術において既知であり、2つ以上のヒドロキシ基をエピクロロヒドリンと適当な触媒の存在下で反応させる方法が含まれる。適当なエポキシ樹脂は、様々な供給源から市販されている。本発明の使用に適当なエポキシ樹脂は、例えば、EPON825、EPON826、EPON828、EPON1001、EPON1007およびEPON1009の商標名のもと入手可能なフェノール性化合物のポリグリシジル誘導体、あるいは、EPI−REZ3510、EPI−REZ323、EPI−REZ3515、EPI−REZ3520、EPI−REZ3522、EPI−REZ3540またはEPI−REZ3546の商標名のもとResolution Performance Productsより入手可能な水性分散体;DER331、DER332、DER383、DER354、およびDER542の商標名のもとDow Chemical社から入手可能な水性分散体;GY285の商標名のもとVantico社から入手可能な水性分散体である。
【0039】
他の適当なエポキシ樹脂には、ポリオールなどおよびフェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体から調製されるポリエポキシドが含まれ、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体は、Dow Chemical社から商標名DEN431、DEN438およびDEN439、Vanticoから水性分散体ARALDITE PZ 323が入手可能である。
【0040】
クレゾール類似体も、ECN1273、ECN1280、ECN1285およびECN1299または水性分散体ARALDITE ECN1400として、Vantico社から入手し得る。SU−8およびEPI−REZ5003は、Resolution Performance Productsより入手可能なビスフェノールA型エポキシノボラックである。
【0041】
EPONエポキシ樹脂は、Shell社(ヒューストン、テキサス)から、およびDow Chemical社(ミッドランド、ミシガン)からDER−またはDEN−ブランドのエポキシ樹脂を入手可能である。
【0042】
適当なエポキシ樹脂の例は以下の通りである。
【0043】
I)分子中に少なくとも2つのカルボキシ基を有する化合物とエピクロロヒドリンまたはβ−メチルエピクロロヒドリンを、それぞれ反応させることにより得られ得る、ポリグリシジルエステルおよびポリ(β−メチルグリシジル)エステル。該反応は塩基性下で有利に行うことができる。使用し得る芳香族ポリカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、またはテレフタル酸が挙げられる。
【0044】
II)少なくとも2つの遊離フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物とエピクロロヒドリンまたはβ−メチルエピクロロヒドリンを、それぞれ、アルカリ条件下または酸触媒の存在下で反応させ、その後アルカリ処理することにより得られ得る、ポリグリシジルエステルおよびポリ(β−メチルグリシジル)エーテル。
【0045】
このタイプのエポキシ化合物は、単環式フェノール、例えば、レゾルシノールまたはヒドロキノンに由来していてよく;または多環式フェノール、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに基づき、およびアルデヒド(例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クローラルデヒドまたはフルフラルデヒド)とフェノールあるいはハロゲン原子またはC〜C18(好ましくはC〜C)アルキル基により環が置換されたフェノール(例えば4−クロロフェノール、2−メチルフェノールまたは4−tert−ブチルフェノール)のようなフェノール、あるいはビスフェノールとの、上述したような縮合により得られ得るノボラックに由来し得る。
【0046】
2〜10当量/モルのエポキシ含量を有し、芳香族またはアルキル芳香族化合物のグリシジルエーテルまたはグリシジルエステルである、エポキシ樹脂が好ましく使用される。特に好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノール(例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)またはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)など)のポリグリシジルエーテル、またはホルムアルデヒドとフェノールとの反応により形成されるノボラックであり、ビスフェノールAに基づくポリグリシジルエーテルとの反応により形成されるノボラックが特に好ましい。好ましいエポキシ樹脂は、約400g/当量未満、例えば約100g/当量〜約350g/当量、より好ましくは約150g/当量〜約225g/当量のエポキシ当量を有する(例えば、Dow Chemical社製のDER331は、約182g/当量である)。
【0047】
多価フェノール反応物質は、1つ以上の6炭素芳香族環に共有結合した複数のヒドロキシ基をそれぞれ有する1つ以上の化合物を含有する。該多価フェノール反応物質は、アルキル基、アリール基、スルフィド基、スルホニル基、ハロ基などの置換基を含んでいてもよい。該多価フェノールは、構造式:R(OH)〔式中、Rは、少なくとも1つの6炭素芳香族環を含む「h」価のC〜C50フェノール性ヒドロキシ基を表し、「h」は2以上6以下である。〕により示される。
【0048】
適当な多価フェノール化合物を調製するための技術は、先行後術において既知である。適当な多価フェノール化合物は、Dow Chemical社(ミッドランド、ミシガン)およびShell Chemical社(ヒューストン、テキサス)から市販されている。
【0049】
適当な多価フェノールの例示は、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、レゾルシノール、ヒドロキノン、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、テトラブロモビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシ−ベンゾフェノール、ビス−(4−ヒドロキシフェニル−1,1’−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−イソブタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エーテル)などである。最も好ましい二価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)およびビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)である。
【0050】
ポリオキシアルキレンアミン反応物質は、1つ以上のアミノ化合物を含み、該アミノ化合物は、アミン基および実質的に水溶性のポリエーテル鎖を含む。
【0051】
該ポリオキシアルキレンアミン反応物質は水溶性または少なくとも一部は水溶性である。適当なポリオキシアルキレンアミン反応物質を調製する技術は、先行技術において既知であり、これには、ヒドロキシ基含有開始剤とエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを反応させ、得られる末端ヒドロキシ基のアミンへの変換が含まれる。
【0052】
例示されるポリアルキレンアミンは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、あるいはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの混合物のいずれかに基づく、ポリエーテル骨格の末端に結合する1級アミノ基を含むポリエーテルアミンからなる群から選択されるものであり、プロピレンオキシドのエチレンオキシドに対する分子比は9:1、3:19、29:6または10:31であり、該ポリアルキレンアミンの分子量は5000までである。
【0053】
本発明の使用に適する市販のポリオキシアルキレンアミンは、Huntsmanから入手可能なJeffamineブランドのポリオキシアルキレンアミン、例えばJeffamine M−600、M−1000、M−2005、M−2070である。
【0054】
本発明のポリオキシアルキレンアミンは構造式:
−O−R−CHCH(R)−NH
を有する。式中、Rは、C〜C12脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素からなる群から選択される1価の有機基を表し、Rは、構造式:(CH−CH−O)−(CH−CH(R)−O)〔式中、Rは、C〜C脂肪族炭化水素からなる群から選択される1価の有機基であり、aはエトキシ基(CH−CH−O)の数を表し、bは一置換エトキシ基(CH−CH(R)−O)の数を表し、1つの一置換エトキシ基の置換は、ポリオキシアルキレン鎖中の他の一置換エトキシ基のいかなる置換からも独立していて、aとbの合計は10以上200以下であり、ポリオキシアルキレン鎖内のエトキシ基および一置換エトキシ基の配置は完全にランダムであってよく、および/または、エトキシ基および/または一置換エトキシ基のブロックであってよい〕を有するポリオキシアルキレン鎖を表し、Rは、HまたはC〜C脂肪族炭化水素から選択される1価の有機基を表す。
【0055】
いくつかの実施態様において、ポリオキシアルキレンアミンは芳香族ポリエポキシドで付加され、該付加物をエポキシ樹脂と反応させる。これらの実施態様において、好ましいポリオキシアルキレンアミンは、それぞれメチルに相当するR、RおよびRを有し、
(i)aとbの比率が約4:1であり、エトキシ基およびイソプロポキシ基はランダムブロックに配置され、該ポリオキシアルキレンアミンの分子量が約4000未満である、または、(ii)5のエトキシ基のブロックがエトキシ基およびイソプロポキシ基のランダム配列と結合し、ランダム配列におけるaとbの比率が約7:3であり、ポリオキシアルキレンアミンの分子量が約4000未満である、または、(iii)aとbの比率が約95:5であり、実質的に2つのブッロクにおいてエトキシ基およびイソプロポキシ基が配置され、ポリオキシアルキレンアミンの分子量が約6000未満である、または、(iv)aとbの比率が約7:3であり、エトキシ基およびイソプロポキシ基がランダム配置に存在し、ポリオキシアルキレンアミンの分子量が約4000未満である、または、(v)aとbの比率が約4:1であり、エトキシ基およびイソプロポキシ基がランダム配置に存在し、ポリオキシアルキレンアミンの分子量が約4000未満である。
【0056】
最も好ましいポリオキシアルキレンアミンは、Texaco Chemical社(べレア、テキサス)からのJeffanome M−2070である。Texacoによると、このポリオキシアルキレンアミンは、メタノールとエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを反応させ、結果として生じる末端ヒドロキシ基をアミンに転換することにより調製される。最も好ましいポリオキシアルキレンアミンは、約2000の分子量およびプロピレンオキシドのエチレンオキシドに対するモル比10/32を有する。
【0057】
芳香族ポリエポキシド反応物質は、それぞれ複数のエポキシド官能基を有する1つ以上の化合物を含む。該芳香族ポリエポキシド反応物質は、分子中に存在する少なくとも2つのエポキシ基を有し、分子中に存在する4つものエポキシ基を有していてもよい。
【0058】
これらのポリエポキシドは、エピクロロヒドリンと重合性芳香族アルコールまたはアミンの、既知の技術を用いた反応により得ることができる。適当な芳香族アルコールおよびアミンは、エピクロロヒドリンと反応することのできる2より大きい水素当量を有する。
【0059】
適当な芳香族アルコールの例は、ノボラックフェノール樹脂およびポリ(ビニルフェノール)である。適当な多価フェノールの例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、レゾルシノール、ヒドロキノン、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂などである。
【0060】
適当な芳香族アミンの例は、4,4−ジアミノジフェニレンメタン、4,4−ジアミノジフェニレンスルホン、3−アミノベンジルアミン、3−フェニレンジアミンおよび4,4−ジアミノアゾジフェニレンである。本発明による芳香族ポリエポキシドの1つの代表的な分類は、構造式:
【化2】

を有する。式中、Rは、cとdの合計価を有する芳香族有機基を表し、cとdの合計は2以上6以下であり、dは2以上6以下である。用語「芳香族(の)」は、環がC〜Cアルキル基、アミノ基、ニトロ基、ハロ基などの基により置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基、キノリル基、ピリジル基、インドイル基などの基を表し、Rは、構造式:
−O−(CH−CH−O)−(CH−CH(R)−O)
〔式中、Rは、C〜C脂肪族炭化水素から選択される1価の有機基であり、eはエトキシ基(CH−CH−O)の数を表し、fは一置換エトキシ基(CH−CH(R)−O)の数を表し、1つの一置換エトキシ基の置換は、ポリオキシアルキレン鎖中の他の一置換エトキシ基のいかなる置換からも独立していて、eとfの合計は0以上10以下であり、ポリオキシアルキレン鎖内のエトキシ基および一置換エトキシ基の配置は完全にランダムであってよく、および/または、エトキシ基および/または一置換エトキシ基のブロックであってよい。〕を有する2価のポリオキシアルキレン鎖を表す。典型的には、ポリオキシアルキレン鎖の平均分子量は、約2000〜10000である。
【0061】
最も好ましい芳香族ポリエポキシドは、エポキシノボラック樹脂、例えば、Araldite EPN1138および1139、エポキシクレゾール樹脂、例えば、Araldite ECN1235、1237、1280および1299、エポキシフェノールノボラック樹脂、例えばAraldite PV720、エポキシ樹脂0510、Araldite MY720および721、およびAraldite PT810(全てCiba−Geigyから入手可能)である。三菱ガス化学株式会社から入手可能なTetrad CおよびTetrad Xも、本発明の使用に適当である。
【0062】
本発明の自己乳化型硬化性エポキシ樹脂のいくつかの製造は、アミン−エポキシ付加物を介して開始し、その後、該アミン−エポキシ付加物は、エポキシ樹脂および場合により多価フェノールと反応する。アミンエポキシ付加物の構造は、アミン−エポキシ付加物の調製において使用されるポリオキシアルキレンアミンおよび芳香族ポリエポキシドの構造ならびに該反応の反応比に依存する。
【0063】
1.0当量の芳香族ポリエポキシドと約0.3〜0.9反応当量、好ましくは約0.6〜0.8反応当量のポリオキシアルキレンアミンを反応することにより形成される付加物は、構造式:
【化3】

〔式中、iは繰り返し単位の数を表し、該iは0以上約50以下である。〕を有する反応化合物である。
付加物が、1.0当量の芳香族ポリエポキシドと約1.0当量より大きい(好ましくは約1.01〜約2.5)反応当量のポリオキシアルキレンアミンを反応することにより形成される場合、該付加物は構造式:
【化4】

〔式中、iは繰り返し単位の数を表し、該iは0以上約50以下であり、一般的には約10〜約20である。〕を有する。
【0064】
好ましくは、本発明の少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂は、場合によりフェノール−ホルムアルデヒドエポキシ樹脂により修飾された自己乳化型ビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒドエポキシ樹脂により修飾されたビスフェノールFである。該フェノール−ホルムアルデヒドは、好ましくはエポキシノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂などである。
【0065】
熱硬化性自己乳化型エポキシ樹脂は、はじめに固形エポキシ樹脂を供給し、次いでこの固形エポキシ樹脂の分散体を準備することで得ることができる。該固形エポキシ樹脂の分散体は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の有機溶剤を含有し、最も好ましくは実質的に有機溶剤を含有しない。望ましくは、固形エポキシ樹脂は水に分散される。
【0066】
少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂、ベンゾキサジン樹脂、ポリウレタン樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、エポキシアクリル樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル−エステル樹脂、熱可塑性樹脂、および/またはそれらの組み合わせあるいはそれらの共重合からなる群から選択される。
【0067】
本発明の好ましい実施態様において、凝集構造、例えばミセル凝集構造は、少なくとも1つの本発明の熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物および少なくとも1つの本発明の熱硬化性、非自己乳化型樹脂により形成される。前記の凝集構造の粒度は、約5nm〜約1μmの範囲であり、好ましくは約50nm〜500nm、最も好ましくは約150nm〜約200nmの範囲である。粒度は、Mastersizer2000(商品名、Malvern instruments Ltd製、Mieにより計算)を使用して、レーザー回折により測定できる。
【0068】
本発明に使用される用語「粒度」は、d0.5粒子径を称する。d0.5は、粒子の50%がこれよりも大きく、他の50%がこれよりも小さいことに定義される粒子径を表す。
【0069】
本発明の熱硬化性、非自己乳化型樹脂は、上記凝集構造の範囲内でカプセル化されていてよく、エンドユーザーが選択するための幅広い種類の先進プライマーを有するように、系を異なる適用プロファイルに対して容易に適応させることができる。硬化時、少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物は、処方の防食特性を改善し、さらなる腐食防止剤の添加の必要性を低減する。様々な適用(例えば内部コーティング)において、さらなる腐食防止剤を含有しない本発明のプライマー組成物を露出した表面に塗布することができ、腐食に対して前記の露出した表面を十分に保護することができる。さらに、柔軟性、UV耐性、接着力および引っかき耐性に関する、本発明の水性組成物の硬化生成物の機械的特性が、該非自己乳化型樹脂組成物により促進される。
【0070】
最も好ましい少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂は、通常、エポキシ系であってよい。
【0071】
エポキシ樹脂は、単官能性エポキシ化合物、例えばC〜C28アルキルグリシジルエーテル;C〜C28アルキルおよびアルケニルグリシジルエステル;およびC〜C28アルキルモノフェノールグリシジルエーテル等を含み得る。また、エポキシ樹脂は、多官能性エポキシ樹脂、例えばC〜C28アルキルポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF、例えば日本化薬(日本)製のRE−303−SまたはRE−404−Sなど)、4−4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;遷移金属錯体のポリグリシジルエーテル;上記ジフェノールの塩化物および臭化物;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族炭化水素とジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルとの塩のエステル化により得られるジフェノールのエーテルをエステル化することにより得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと、少なくとも2つのハロゲン元素を有する長鎖ハロゲンパラフィンとの縮合により得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組合わせも含み得る。
【0072】
本発明の使用に適当な市販されているエポキシ樹脂は、フェノール性化合物のポリグリシジル誘導体であり、例えば、商標名EPON825、EPON826、EPON828、EPON1001、EPON1007およびEPON1009であり、または水性分散体、Resolution Performance Products製の商標名EPI−REZ3510、EPI−REZ323、EPI−REZ3515、EPI−REZ3520、EPI−REZ3522、EPI−REZ3540またはEPI−REZ3546;Dow Chemical社製のDER331、DER332、DER383、DER354、およびDER542;Vantico社製のGY285;日本化薬製のBREN−Sなどである。他の適当なエポキシ樹脂には、ポリオールなどから調製されるポリエポキシドおよびフェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が含まれ、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体は、Dow Chemical社製のDEN431、DEN438、およびDEN439およびVantico製の水性分散体ARALDITE PZ323の商標名のもと入手可能である。
【0073】
クレゾール類似体も、ECN1273、ECN1280、ECN1285およびECN1299または水性分散体ARALDITE ECN1400として、Vantico社から入手し得る。SU−8およびEPI−REZ5003は、Resolution Performance Productsより入手可能なビスフェノールA型エポキシノボラックである。接着性、柔軟性および強度を改善するためのエポキシまたはフェノキシ官能性変性剤(例えばHELOXYブランドエポキシ変性剤67、71、84および505)、EPI−REZブランド水性分散体(例えばResolution Performance Products製EPI−REZ3519)あるいは、PAPHENブランド水性フェノキシ樹脂(例えばPhenoxy Specialties製のPKHW−34およびPKHW−35)を、性能を改善するために使用し得る。使用時、エポキシまたはフェノキシ官能性変性剤は、熱硬化性樹脂に対して、約1:1〜約5:1の量で使用し得る。
【0074】
本発明の使用に適当な、他の市販されているエポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂(例えばDow Chemical社製のUVR6110)またはホスホン酸を含有するキレート変性エポキシ樹脂(例えばAdeka製のEP 49 10N、EP−49−20およびEP−49−55Cなど)である。
【0075】
当然、異なるエポキシ樹脂の組合わせも、本発明の使用に好ましい。
【0076】
しばしば、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA系のエポキシ樹脂である。該エポキシ樹脂には、好ましくは、上述したようなビスフェノールAエピクロロヒドリン系エポキシ樹脂が含まれる。該エポキシ樹脂は、固形エポキシ樹脂の混合物であってもよく、その一方は約5.5以下のエポキシ官能基を有し、もう一方は6以上のエポキシ官能基を有する。該エポキシ樹脂は、2〜4のエポキシ官能基を有する液状エポキシ樹脂の混合物であってもよい。
【0077】
好ましくは、水性分散体内でエポキシ樹脂は、エポキシ組成物の総重量に基づいて合計100重量%となるように、1.8〜4のエポキシ官能基および100〜200のエポキシ当量(EEW)を有する固形エポキシ樹脂を30〜60重量%;1.8〜4のエポキシ官能基および約200〜約800のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を40〜約70重量%;1.8以上のエポキシ官能基および約1000〜約8000のエポキシ当量を有する固形エポキシ樹脂を5〜約20重量%含有すべきである。DEN431、DEN438、DEN439、EPON828、EPON1002およびEPON1007が、熱硬化性、非自己乳化型樹脂としての使用に、特に好ましい選択である。
【0078】
水性プライマー組成物は、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型樹脂組成物を約5〜約90重量%、例えば約20重量%〜約70重量%、および少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物を約0.5重量%〜約60重量%、例えば約1〜約20重量%含む。
【0079】
少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型樹脂組成物と少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物の好ましい重量比は、99.9:0.1〜60:40、好ましくは99:1〜80:20、特に好ましくは95:5〜85:15の範囲である。
【0080】
硬化性プライマー組成物に対する少なくとも1つの硬化剤は、好ましくは窒素含有化合物の多くの分類から選択される。このような窒素含有化合物の1つの分類には、反応に利用し得る少なくとも2つのアミン官能基を有するものが含まれる。
【0081】
例えば、少なくとも2つの1級および/または2級アミンを有する窒素含有化合物は、下記の構造で示される:
【化5】

〔式中、R、R、R、およびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素、C1−12アルキル、C1−12アルケニル、C5−12シクロアルキルまたはビシクロアルキル、C6−18アリールおよびそれらの誘導体から選択されてよく、○はC6−18アリーレン、その誘導体およびその酸化型である。〕。好ましくは、少なくとも1つのR、R、R、およびRは、水素である。
【0082】
構造の範囲内で本発明に使用し得る様々な物質は、例えば、構造IIで示される芳香族ジアミンである:
【化6】

〔式中、Xは、CH、CR、NH、NR、O、SまたはSOであり、R、R、R、およびRは前述したとおりである。〕。
【0083】
構造II内に構造IIIの化合物はある:
【化7】

〔式中、Rは前述したとおりである。〕。さらに、構造IIIの酸化型(下記構造IIIa参照)も本発明の範囲内にある。
【化8】

【0084】
下記構造IIIb(N−2−フェニル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)は構造IIIの範囲内にあり、使用し得る:
【化9】

このフェニレンジアミンは、Uniroyal Chemical社からFLEXZONE 7Lの商標名のもと市販されていると考えられる。
【0085】
構造IIIの他の適当な例には、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’−(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミン;ジアリール−p−フェニレンジアミンの混合物;N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン;N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン;N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン;N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルフェニル)−p−フェニレンジアミン;N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’−p−トルエンスルホニル−p−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’−アルキル−p−フェニレンジアミン;ジアルキル−p−フェニレンジアミン;N,N’−ビス(1−シクロヘキシル−1−エチル)−p−フェニレンジアミン;N,N’−ジ(sec−ヘキシル)−p−フェニレンジアミン;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン;N−(sec−ヘキシル)−N’−(sec−アルキル)−p−フェニレンジアミン;N,N’−ジ(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン;2,4,6−トリス(N−アルキル−p−フェニレンジアミノ)−1,3,5−トリアジン;6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン;およびそれらの組合わせが含まれる(参照:米国特許第5,252,737号(Stern)、米国特許第4,297,269号(Merten)、米国特許5,126,385号(Wheeler)および米国特許第5,068,271号(Wheeler))。
【0086】
構造Iのさらに特定の物質は、構造IVの物質を含む:
【化10】

〔式中、RおよびRは、水素、1つまたは2つのC1−4基により置換されていてもよいC5−12-アルキル、C5−8シクロアルキル、C7−15フェニルアルキル、またはC6−10アリールである。〕。
【0087】
他の窒素含有化合物には、以下の化合物が含まれる。
【化11】

【0088】
構造V(UNILINK 7100)は、N,N’−ビス−4−(5−メチル−2−ブチル)−p−フェニレンジアミンであり、構造VI(UNILINK 4100)は、N,N’−ビス−4−(2−ブチル)−p−フェニレンジアミンであり、構造VII(UNILINK 4102)は、N,N’−ビス−4−(2−メチルプロピル)−o−フェニレンジアミンである。
【0089】
他の市販されているフェニレンジアミン硬化促進剤には、FlexsysからSANTOFLEX、例えばSANTOFLEX77PDおよびSANTOFLEX715PDのような商標名のもと入手可能なものが含まれ、SANTOFLEX715PDは、
【化12】

N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(CAS No.793−24−8)(供給者により、SANTOFLEX6PPDまたはFLEXZONE7とも称される)、
【化13】

N−フェニル−N’−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(CAS No.3081−01−4)、および
【化14】

N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(CAS.No.3081−14−9)(供給者により、FLEXZONE4またはSANTOFLEX77PDとも称される)の混合物である。市販されるフェニレンジアミンは、以下の1つ以上の商標名のもと入手し得る:住友からのSUMILIZER、例えばBPA、BPA−M1、4A、および4M、ならびにCromptonからのUOP、例えばUOP12、UOP5、UOP788、UOP288、UOP88、UOP26、UOP388、UOP588、UOP36およびUOP688。
【0090】
窒素含有化合物には、アザ化合物(例えば、ジアザ化合物やトリアザ化合物など)も含まれ、それらには、例えば、
【化15】

【化16】

【化17】

およびビシクロモノ−およびジ−アザ化合物:
【化18】

【化19】

が含まれる。
【0091】
さらに、窒素含有化合物には、脂肪族ポリアミン:ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチルアミノプロピルアミン;芳香族ポリアミン:ベンジルジメチルアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルアミンおよびキノキサリン;ならびに脂環式ポリアミン:イソホロンジアミンおよびメンテンジアミンが含まれる。
【0092】
さらに、他の窒素含有化合物の例は、イミダゾール、例えば、イソイミダゾール、イミダゾール、アルキル置換イミダゾール類、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、ブチルイミダゾール、2−ヘプタデセニル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデセニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−グアナミノエチル−2−メチルイミダゾールおよびイミダゾールとメチルイミダゾールの付加生成物およびイミダゾールとトリメリト酸の付加生成物、2−n−ヘプタデシル−4−メチルイミダゾールなどであり、一般にそれぞれのアルキル置換基は炭素原子17個まで、好ましくは炭素原子6個までを含む、およびアリール置換イミダゾール、例えば、フェニルイミダゾール、ベンジルイミダゾール、2−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,3,5−トリフェニルイミダゾール、2−スチリルイミダゾール、1−(ドデシルベンジル)−2−メチルイミダゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−t−ブチルフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−(2−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−(3−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、ジ(4,5−ジフェニル−2−イミダゾール)−ベンゼン−1,4,2−ナフチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−p−メトキシスチリルイミダゾールなどで、一般にそれぞれのアリール置換基は炭素原子10個まで、好ましくは炭素原子8個までを含む。市販品の例としては、EPI−CURE P−101、EPI−CURE P−104およびEPI−CURE P−301(全てResolution Performance Productsから入手可能)、またはAJICURE PN−23およびAJICURE MY−24(それぞれ、味の素ファインケミカル(東京、日本))から入手可能であり、これらを当然使用し得る。
【0093】
ビス(パラ−アミノ−シクロヘキシル)メタン[(PACM)CAS No.1761−71−3、Air Productsから入手可能]は、特に、本発明の使用に好ましい窒素含有化合物であり、またOMICURE 33DDS、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(CAS No.599−61−1)がCVC Specialty Chemicalから入手可能である。
【0094】
本発明の使用に好ましい他の窒素含有化合物は、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミン、および4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびSolutia(セントルイス、ミズーリ)から市販されているRESIMENE745、RESIMENE747およびRESIMENE AQ 7550を含むメラミン−ホルムアルデヒドポリマーである。
【0095】
本発明の使用に好ましい他の窒素含有化合物は、芳香族ジアミン、好ましくはキシレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応により得られ、Waterpoxy 801の商標名のもとCognisから、またはGaskamine−328の商標名のもと三菱から市販されている。
【0096】
当然、これらの種々の窒素含有化合物の組合わせは、本発明の組成物における使用に好ましい。
【0097】
硬化性プライマー組成物用の他の硬化剤は、好ましくは、Cognis(独国)からの市販品Waterpoxy 603、Waterpoxy 751を含むポリアミンからなる群から選択され得る。
【0098】
エポキシ樹脂用の少なくとも1つの硬化剤は、一般的には、エポキシ当量に対して約25〜約100%アミン当量となる量で使用され、エポキシ当量に対して約65〜約100%アミン当量となる量が特に好ましい。
【0099】
好ましい実施態様において、水性プライマー組成物は、触媒、増粘剤、乳化剤、強化剤、接着促進剤、湿潤剤、顔料、染料および/またはそれらの組合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含有する。
【0100】
触媒、例えば尿素系触媒が、エポキシ樹脂の硬化を促進するために含まれ得る。触媒が、尿素系の触媒の場合、該触媒は、2,4−トルエンビス(ジメチルウレア)(CAS No.17526−94−2)、CVC Specialty ChemicalからOMICURE U−24の商標名のもと入手可能;脂環式ビスウレア、CVC Specialty ChemicalからOMICURE U−35の商標名のもと入手可能;4,4−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)(CAS No.10097−09−3)、CVC Specialty ChemicalからOMICURE U−52の商標名のもと入手可能;およびそれらの組合わせからなる群から選択し得る。他の使用し得る触媒には、アミンブロックトルエンスルホン酸、例えば、King Industriesから商標名NACURE 2500、NACURE 2547およびNACURE XC−2211として入手可能なアミンブロックp−トルエンスルホン酸が含まれる。
【0101】
さらに本発明の好ましい実施態様において、水性プライマー組成物は、好ましくは、
i.1つ以上の、メルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩;および/または
ii.陽極腐食阻害剤および陰極腐食防止剤の組合わせ(ただし、陽極腐食防止剤はクロム酸塩ではない)、および/または
iii.1つ以上の活性成分
を含む少なくとも1つの腐食防止剤をさらに含む。
【0102】
水性プライマー組成物の好ましい実施態様において、少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物、少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物、少なくとも1つの硬化剤および少なくとも1つの腐食防止剤は、約1〜約80重量%、好ましくは10〜約55重量%の量で水に分散される。
【0103】
上述した活性成分は、好ましくは、水溶性腐食防止剤、銅錯化剤、防食性顔料または鉛、リン酸塩、タングステン酸塩、ジルコン酸塩または鉄含有顔料、およびそれらの混合物からなる防食化合物の群から選択される。
【0104】
最も好ましい活性成分は、飽和または不飽和アリール、ヘテロアリール(例えば4−アミノ−サリチル酸、5−アミノ−サリチル酸)、ホスホン酸およびホスホン酸誘導体(例えばヒドロキシエタン−1,1ジホスホン酸四ナトリウム(CNa)、ヒドロキシエタン−1,1ジホスホン酸(C)、ヒドロキシエタン−1,1ジホスホン酸二ナトリウム(CNa)(Solutia’s DequestまたはCognisより商標名Turpinal(登録商標)4NL、SL、2NZ、4NPとして市販されている))、没食子酸のエステル(例えばグルコースと結合したタンニン酸、C765246(Sigma−Aldrichから市販されている))、炭化水素またはケロシンにおける5−ノニルサリチルアルドキシムと2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムの混合物(例えば、Cognisから市販されているLix973N−C)、イミダゾール誘導体(例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール)、トリアゾール誘導体(例えばメチル−1H−ベンゾトリアゾールあるいはグルコース、フルクトースまたはK[Fe(CN)]からの誘導体)、鉛含有顔料(例えばCaPbO、PbSiO3PbO/SiO、2PbOPbHPO0.5HO)、リン酸塩含有顔料(例えばリン酸亜鉛Zn(POxHO、ポリリン酸塩(例えばAl(HPO)、リン酸クロミウム(例えばCrPO3HO))、タングステン酸塩またはジルコニウムまたは鉄含有顔料(例えば2CaOFe、CaOFe、Zn(Mg)OFe)、あるいは他の顔料(例えば、Zn(Ca,Al)−ポリリン酸塩/Ba(Zn,Mg,Al)−メタホウ酸塩またはCa/Zn/リン酸塩/亜リン酸塩/ホウ酸塩の混合物)ならびにそれらの混合物から選択される(限定はされない)。
【0105】
少なくとも1つの腐食防止剤は、1つ以上のメルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩に基づくことが好ましい。
【0106】
他の好ましい実施態様において、少なくとも1つの腐食防止剤は、陽極腐食阻害剤および陰極腐食防止剤の組合わせ(ただし、陽極腐食防止剤はクロム酸塩ではない)ならびに、1つ以上のメルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩を含んでなり、市販されている商標名WAYNCOR(登録商標)204はその例である。
【0107】
上述したように、有機亜鉛塩が好ましく使用されるが、マグネシウム、カルシウムなどの他の塩もその代りとして使用し得る。
【0108】
好ましくは、固形および/または液状粒子として供給される場合、少なくとも1つの腐食防止剤は、コーティングのプライマー層厚より小さな粒度を有し、軽減された腐食表面を提供する。そのような腐食防止剤は、好ましくは防食性顔料である。
【0109】
この種類の腐食顔料は、好ましくは防食性顔料または鉛含有顔料(例えば、CaPbO、PbSiO3PbO/SiO、2PbOPbHPO0.5HO)、リン酸塩含有顔料(例えば、リン酸亜鉛Zn(POxHO、ポリリン酸塩(例えばAl(HPO)、リン酸クロミウム(例えばCrPO3HO))、タングステン酸塩またはジルコニウムまたは鉄含有顔料(例えば2CaOFe、CaOFe、Zn(Mg)OFe)、あるいは他の顔料(例えば、Zn(Ca,Al)−ポリリン酸塩/Ba(Zn,Mg,Al)−メタホウ酸塩またはCa/Zn/リン酸塩/亜リン酸塩/ホウ酸塩の混合物、モリブデン酸セリウム、タングステン酸ストロンチウムまたはWayncor(登録商標)204など)である。さらに、粉末顔料(grined pigment)は任意の顔料であってよく、例えばDominion Colour社から市販されているDCC1202 Diarylide Yellowのような黄色顔料であってよい。
【0110】
陽極腐食防止剤は負電荷を有し、電気化学セル内に入れられた場合、陽極へと移動する。本発明における陽極腐食防止剤は、好ましくは、バナジウム、モリブデン、タングステンおよびジルコニウムの酸化物から選択される。もちろん、これらの酸化物の組合わせも、陽極腐食防止剤として使用し得る。
【0111】
陰極腐食防止剤は正電荷を有し、電気化学セル内に入れられた場合、陰極へと移動する。該陰極腐食防止剤は、好ましくは希土類元素の陽イオンであり、その例としては、ネオジム、セリウムおよびランタンの化合物、例えばリン酸セリウムが挙げられる。もちろんこれらの希土類元素の組合わせも、陰極腐食防止剤として使用し得る。
【0112】
陽極腐食防止剤は、通常、プライマー組成物の固形分の総重量に基づいて、約1〜約15重量%の量で用いられる。
【0113】
陰極腐食防止剤は、通常、プライマー組成物の固形分の総重量に基づいて、約1〜約10重量%の量で用いられる。
【0114】
陽極腐食防止剤と陰極腐食防止剤を組み合わせる場合、しばしば、陽極腐食防止剤のバナジウム、モリブデン、ジルコニウムおよびタングステンと陰極腐食防止剤の希土類元素は、それぞれ対イオンから解離し互いに結合してよい。したがって、個々のイオン化合物(例えばモリブデン酸セリウムなど)としての陽極腐食防止剤と陰極腐食防止剤の組合わせは、意図される本発明の範囲内である。
【0115】
好ましい腐食防止剤は、さらに、1つ以上のメルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩を含んでなり、市販されている商標名WAYNCOR 204はその例である。WAYNCOR 204(米国特許第6,139,610(Sinko)に例示された製品)は、被膜形成有機プライマー成分と、物理的分離手段により分離することができず、統一相の挙動を示す、微結晶レベルで結合した有機および無機固形相成分を含有する安定的な単一混合物の分散した顔料相とを含む、金属基板に対して適用するための腐食防止組成物である。無機固形相は、Zn、Al、Mg、Ca、Sr、Ti、Zr、CeおよびFeから選択される陽イオンと、リン酸塩、ポリリン酸塩、亜リン酸塩、モリブデン酸塩、ケイ酸塩およびシアナミドから選択される陰イオンを含む。有機相は、メルカプトおよびチオ化合物またはそれらのアルキル置換誘導体の亜鉛またはアルキルアンモニウム塩、例えばメルカプトベンゾチアゾール、メルカプトチアゾリン、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チオジアゾール、5,5−ジチオ−ビス(1,3,4−チアジアゾール−2(3H)−チオン、メルカプトベンズオキサゾール、メルカプトチアゾール、メルカプトチアゾール、メルカプトピリミジン、メルカプトピリジン、メルカプトキノリン、アルキル−およびシクロアルキルメルカプタン、N−アルキル−またはN−シクロアルキル−ジチオカルバメート、O−アルキルまたはO−シクロアルキル−ジチオカルボネート、O,O−ジアルキル−またはO,O−ジシクロアルキル−ジチオホスフェートを含む。ここに参照として、米国特許第6,139,610号を明確に組み込む。
【0116】
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1つの腐食防止剤は、1つ以上の亜鉛シアナミド、リン酸亜鉛、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール亜鉛、モリブデン酸亜鉛およびリン酸セリウムを含み、とりわけ、モリブデン酸セリウム、亜鉛シアナミド、リン酸亜鉛および2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール亜鉛の組合わせ、またはモリブデン酸亜鉛、亜鉛シアナミド、リン酸セリウムおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール亜鉛の組合わせを含む。本発明は、記載されるような腐食防止剤も包含する。
【0117】
好ましい実施態様において、メルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩、および/または、陽極および陰極腐食防止剤、および/または活性成分の少なくとも1つの腐食防止剤は、約5nm〜約100μmの範囲の粒度を提供する。粒度は、Honeywell製のマイクロトラックUPA150超微粒子分析機を用いた動的光散乱により測定し得る。用語「粒度」は前記のように規定される。
【0118】
さらなる好ましい実施態様において、メルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩、および/または、陽極および陰極腐食防止剤、および/または活性成分の少なくとも1つの腐食防止剤は、コーティングのプライマー層厚より小さい粒度を有する。適用プロファイルに応じた粒度分布観点から、好ましくは顔料の95%が、50μm未満の粒度、より好ましくは30μm未満の粒度を有し、最も好ましくは粒子の99%が、25μm未満の粒度を有し、あるいは他の適用に対しては、好ましくは顔料の95%が6μm未満の粒度、より好ましくは5μm未満の粒度を有し、最も好ましくは粒子の99%が4μm未満の粒度を有する。粒度は、Honeywell製のマイクロトラックUPA150超微粒子分析機を用いた動的光散乱により測定し得る。用語「粒度」は前記のように規定される。この種類の腐食阻害剤は、好ましくは顔料であり、例えばWayncor(登録商標)204またはモリブデン酸セリウムである。このサイズの腐食顔料は、微粉砕を介して利用できる。
【0119】
上述したように、微粉砕された粒子は、プライマー中の粒子の分散性を促進し、これにより粒子の堆積が軽減される。微粉砕されたWayncor(登録商標)204またはセリウムを含む分散体は、微粉砕していないWayncor(登録商標)204またはモリブデン酸セリウムの分散体に比べて、ゆっくりとした堆積性能を有する。分散体を攪拌し、その後堆積を観察した場合に、微粉砕粒子分散体は、好ましくは15時間以上、より好ましくは24時間以上の堆積性能を提供する。一方、微粉砕していない粒子により分散体は、10分以内の堆積を示す。
【0120】
少なくとも1つの腐食防止剤は、プライマー組成物全体に基づいて、約0.001〜約20重量%、例えば約0.5〜15重量%、好ましくは約1〜約10重量%、好ましくは約1〜約8重量%の量で使用し得る。
【0121】
さらに、限定されるものでなく、例えば、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、粉砕剤および消泡剤のような様々な他の添加剤を含んでいてよい。
【0122】
界面活性剤の例としては、商標名SURFYNOL 2205、420、440、465、485、FS−80、FS−85、DF−37、TGおよびGA(Air Products製);商標名BYK、例えばBYK−019、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−044、BYK−151、BYK−156、BYK−345、BYK−346、BYK−348、BYK−380、BYK−381(BYK−Chemie製)、または商標名DISPERBYK、例えばDISPERBYK−181、DISPERBYK−183、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191およびDISPERBYK−192(BYK−Chemie製);商標名TRITON、例えばTRITON X−100、X−114、X−305、X−405およびN−101(Dow Chemicalの子会社Union Carbide製)のような市販品が挙げられる。
【0123】
添加剤は、レオロジー変性剤、例えば、Rheoxから入手可能な、商標名BENTONE、例えばEW、LT、SD−1およびSD−2;商標名THIXCINE、例えばTHIXCINE GR、THIXCINE R、およびTHIXCINE NR−22;または商標名RHEOLATE、例えば210、255、300、310、350、2000、2001および5000なども含み得る。
【0124】
本発明のプライマー組成物に好ましくは含まれ得る他の添加剤には、アクリルフロー剤、例えばCOROC A−2678−M(Cook Composities and Polymers Company製)およびMODAFLOW AQ−3025(Solutia製)が含まれる。
【0125】
さらに、添加剤は、抑泡剤、例えばFOAMASTER EXP−63、FOAMASTER G、FOAMASTER HおよびFOAMASTER NS−1(Henkel社製);およびSURFYNOL DF、DF−62、DF−70、DF−75、DF−110DおよびDF−110L(Air Products製)も含み得る。
【0126】
さらに、添加剤は、フィラー、例えば様々な形態のシリカおよびアルミナ;酸化チタンや酸化鉄のような他の金属酸化物;強化剤;プライマーに所望の色を付与するための染料や顔料のような着色剤(例えばDCC1202 Diarylide Yellow)も含み得る。
【0127】
好ましい実施態様において、本発明の水性プライマー組成物は、大気温度で一成分(1K)系に対して3ヶ月まで、および二成分(2K)系に対して2時間まで、表面、好ましくは金属表面への塗布性能の欠損なく自己安定的である。本発明の水性プライマー組成物は、好ましくは、約15℃〜約250℃の範囲の温度において、約1秒から約14日で硬化し、硬化時に、有機溶剤に対する耐性を示す。
【0128】
本発明の課題は、本発明の水性プライマー組成物の硬化生成物をも含む。
【0129】
本発明の水性プライマー組成物および/または水性プライマー組成物の硬化生成物は、金属表面の腐食防止のために使用することができ、金属表面に腐食に対する持続性のある耐性を与える。
【0130】
また、本発明は、金属表面上での接着系用のプライマーとして、および/または金属表面のコーティング用のプライマーとしての、本発明の水性プライマー組成物の使用にも関する。
【0131】
様々な適用(例えば、内部コーティング)に対して、本発明の水性プライマー組成物の硬化生成物は、好ましくは、さらなるトップコートによる被覆を必要としない。前記硬化生成物の防食特性は、露出した金属表面を腐食から保護するのに十分である。該プライマーは、それ自身トップコートとしてコーティング用途に使用し得る。
【0132】
本発明により恩恵を受ける金属表面には、アルミニウム、アルミニウム合金、例えば2024T3非被覆アルミニウムおよび被覆アルミニウム、およびClad6061および7075または任意の軽金属が含まれる。恩恵を受ける他の表面には、鋼鉄、亜鉛メッキ鋼、鉄、亜鉛メッキ鉄、銅、亜鉛、亜鉛合金鋼板、冷延鋼板、Zn/Mg鋼板、マグネシウム、それらのチタン合金、ステンレス鋼の合金、例えばAMS3SS、および航空宇宙用途のために近年開発されている高力合金などが含まれる。
【0133】
本発明の水性プライマー組成物は、これらの表面に対して、噴霧コーティング(従来のまたは静電気的な)、注入コーティング(pour coating)、浸漬コーティング、ハケ塗りなどの任意の様々なコーティング技術により塗布される。表面に塗布した後、本発明の水性プライマー組成物を空気乾燥させることができ、その後下塗りされた基板をオーブンを経て気流に置く。
【0134】
したがって、本発明は、少なくとも本発明の水性プライマー組成物の硬化生成物および基板、好ましくは、鋼鉄、亜鉛メッキ鋼、鉄、亜鉛メッキ鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、亜鉛合金鋼板、冷延鋼板、Zn/Mg鋼板、チタン、カドミウム、マグネシウムおよびそれらの合金からなる群から選択される基板とを含む下塗り基板に関する。
【0135】
好ましい実施態様において、水性プライマー組成物の硬化生成物は、前記の基板上に被膜を形成し、該被膜の層厚は、約10μm〜約50μmの範囲、好ましくは約15μm〜約25μmの範囲である。該層厚は、ISO2808にしたがって測定される。
【0136】
下塗り基板は、塗布用のエポキシ樹脂とともに使用されてよい。該エポキシ樹脂はフィルム形状である。
【0137】
このようなエポキシ接着フィルムは、通常、120℃の温度で硬化し、80〜120℃の性能領域において使用性能を示し、または、175℃の温度で硬化し、175℃で約1,000時間まで175℃での使用性能を示すフィルムである。このような接着フィルムには、前者の場合、Loctite Aerospace(ベイポイント、カルフォルニア)からのEA9696および3M(ミネアポリス、ミネソタ)からのAF163−2が含まれ、後者に使用される被膜の例には、Loctite Aerospace(ベイポイント、カルフォルニア)からのEA9657およびCytec Industries(スタンフォード、CT)からのFM377が含まれる。さらに、様々な構造のペースト状接着剤を、本発明のプライマー組成物と使用し得る。
【0138】
本発明の他の態様において、離れた関係の空間に配置された2つの基板を含んでなる結合組立品であって、各基板が内部接面および外部接面を有しており、2つの基板のそれぞれの内部接面間に、本発明の水性プライマー組成物および硬化接着剤、例えば上述したエポキシ接着剤により形成された接着が存在する結合組立品を提供する。この態様において、基板は金属または複合物で構成され得る。
【0139】
また、本発明は、少なくとも水性プライマー組成物、基板およびトップコートを含む被覆された組立品に関する。
【0140】
上述した基板は金属、好ましくは、鋼鉄、亜鉛メッキ鋼、鉄、亜鉛メッキ鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、亜鉛合金鋼板、冷延鋼板、Zn/Mg鋼板、チタン、カドミウム、マグネシウムおよびそれらの合金からなる群から選択される金属、または複合体で構成され得る。
【0141】
本発明の他の態様は、少なくとも1つの本発明の硬化剤を、少なくとも1つの本発明の熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物、少なくとも1つの本発明の熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物、および少なくとも1つの本発明の腐食防止剤に加える、本発明の水性プライマー組成物の製造方法である。
【0142】
本発明は、実施例により、より十分に理解される。
【実施例】
【0143】
プライマー組成物を、表1に記載する量の成分から調製した。各成分の相対量は、重量%で示される。
【0144】
熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂の合成は、米国特許第6,506,821号に記載されている。
【0145】
自己乳化型エポキシ樹脂の合成には、第1に固形樹脂の調製、第2に該固形樹脂の分散体の調製が含まれる:
工程1:
592.52g(3.4当量)のDEN431および154.02g(0.07当量)のJeffamine M2070および172.98(1.5当量)のビスフェノールAおよび0.69gのトリフェニルホスフィンを合わせて混合し、155℃〜165℃で約2時間加熱した。その後、混合物を約130℃未満に冷却し、125.48gのエトキシプロパノールを加え、混合物を均質化した。
【0146】
工程2:
工程1により得られた樹脂1045gを、65℃まで加熱し、146.14gの温蒸留水(65℃)を加えた。混合物を15分間攪拌した。その後、混合物を35℃まで冷却し、W/OからO/Wエマルションへの転相を、エマルションの少量サンプルを取り、サンプルを余水に溶解することにより確認した。その後、457.30gの室温蒸留水を、混合物の粘度が低下するまでゆっくりと加えた。同時に水を急激に加えた。その後、他のいかなる冷却もなしに混合物を15分間攪拌し、EM186と名付けた生成物をふるい(1000ミクロン)を通して濾過した。反応混合物に加える水の量に依存して、EM186の固形量は、約40〜50重量%である。
【0147】
表1に示す水性プライマー組成物は、以下のように脱イオン化して調製し得る。
【0148】
少なくとも1つの自己乳化型エポキシ樹脂組成物を含む脱イオン水を、ミキサーを備えた容器内に投入し、高剪断で混合した。少なくとも1つの非自己乳化型エポキシ樹脂組成物を容器内に投入し、混合物を1〜10分間攪拌した。必要に応じて、少なくとも1つの腐食防止剤および/または、消泡剤、触媒、増粘剤、乳化剤、強化剤、接着促進剤、湿潤剤、顔料、染料および/またはそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を加えた。1〜60分間攪拌した後、硬化剤を加え、混合物を必要に応じてさらに1〜60分間攪拌した。
【0149】
表1は、種々のプライマー処方を示す。
【0150】
熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物EM186を、前記のとおり調製した。DEN431およびDEN438は、Dow Chemical社から市販されているフェノール−ホルムアルデヒドノボラックの誘導体であり、2006年8月に販売され、それを用いた。Adeka EP49 10Nは、Asahi Denka Europe GmbHから市販される変性エポキシ樹脂であり、2006年8月に販売され、それを用いた。硬化剤は、Waterpoxy751、Waterpoxy760およびWaterpoxy801およびそれらの混合物からなる群から選択する。Waterpoxy751は、Cognis Deutschland GmbHから市販されているエポキシアミン付加物であり、2006年8月に販売され、それを用いた。Waterpoxy760は、Cognis Deutschland GmbHから市販されているアミン系硬化剤の水溶液であり、2006年8月に販売され、それを用いた。Waterpoxy801は、Cognis Deutschland GmbHから市販されている芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンとの反応により得られ、2006年8月に販売され、それを用いた。Molywhite101は、Molywhite Pigments Groupから市販されている塩基性モリブデン酸亜鉛化合物であり、2006年8月に販売され、それを用いた。Molywhite501は、Molywhite Pigments Groupから市販されているモリブデン酸カルシウム顔料であり、2006年8月に販売され、それを用いた。Molywhite MZAPは、塩基性カルシウム亜鉛蛍光モリブデン酸塩を含み、Molywhite Pigments Groupから市販されており、2006年8月に販売され、それを用いた。Shieldexは、W.R.Grace & Coから市販されているカルシウムイオン交換非晶質シリカゲルに基づく防食性顔料であり、2006年8月に販売され、それを用いた。Wayncor204は、すでに述べたとおりである。
【0151】
本発明の水性プライマー組成物を金属表面に塗布し、80℃、40分間で硬化させた。
【0152】
プライマー組成物を調製した後、特定の基板上の腐食抑制における各プライマー組成物の性能を、ISO7253の塩スプレー試験およびMEK試験により評価した。結果を表1に示す。
【0153】
ISO7253塩スプレー試験は、下塗りした2024T3非被覆アルミニウムおよび被覆アルミニウム、冷延鋼板(CRS)およびZE(電子的亜鉛メッキ鋼)上で実施した。
【0154】
MEK試験は、下塗りした2024T3非被覆アルミニウムおよび被覆アルミニウム、CRSおよびZE上で実施した。ここで、綿棒をメチル−エチル−ケトン(MEK)に浸し、硬化した下塗り表面の全面に機械的圧力により塗り込んだ。MEK試験に必要な要件を満たすため、表面は浸した綿棒により100往復擦った後、擦り落とされてはならない。
【0155】
【表1−1】

【0156】
【表1−2】

【0157】
【表1−3】

【0158】
【表1−4】

【0159】
表1は、特定の表面上の腐食抑制における種々のプライマー組成物の性能を示す。少なくとも1つの非自己乳化型エポキシ樹脂組成物を含む本発明の水性プライマー組成物は、低濃度の場合でさえも、腐食抑制において驚くほど十分な改善を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物;
b.少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物;
c.水;および
d.少なくとも1つの硬化剤
を含んでなる、水性プライマー組成物。
【請求項2】
前記の少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂が、(a)エポキシ樹脂、(b)多価フェノール、および(c)アミン−エポキシ付加物の反応により得られ得、該アミン−エポキシ付加物が芳香族ポリエポキシドとポリオキシアルキレンアミンとの反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの非自己乳化型樹脂組成物が、エポキシ樹脂、ベンゾキサジン樹脂、ポリウレタン樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ−アクリル樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルエステル樹脂、熱可塑性樹脂、および/またはそれらの組み合わせあるいはそれらの共重合からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂が、C−C28アルキルグリシジルエーテル;C−C28アルキル−およびアルケニル−グリシジルエステル;C−C28アルキル−モノフェノールグリシジルエーテルおよびC−C28アルキル−ポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;遷移金属錯体のポリグリシジルエーテル;前記ジフェノールの塩素化および臭素化生成物;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸とジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルの塩のエステル化により得られるジフェノールのエーテルをエステル化することにより得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2つのハロゲン原子を含む長鎖ハロゲンパラフィンとの縮合により得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;N,N’−ジグリシジルアニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N’−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレンビス−4−アミノベンゾアート;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;および/またはそれらの組み合わせから選択される構成を含んでなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの硬化剤が、窒素含有化合物または種々の窒素含有化合物の混合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
実質的にクロム酸塩を含有しない、および/または、実質的に揮発性有機溶剤を含有しない、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物および少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物が凝集構造を形成し、該凝集構造の粒度が、約5nm〜約1μmの範囲、好ましくは約50nm〜500nmの範囲、最も好ましくは約150nm〜約200nmの範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
さらに、
i.メルカプトおよび/またはチオ化合物あるいはそれらのアルキル置換誘導体の、1つ以上の有機亜鉛塩、アルキルアンモニウム塩またはシクロアルキルアンモニウム塩;および/または
ii.陽極腐食防止剤および陰極腐食防止剤の組合わせ(ただし、陽極腐食防止剤はクロム酸塩ではない)、および/または
iii.水溶性腐食防止剤、銅錯化剤、防食性顔料または鉛、リン酸塩、タングステン酸塩、ジルコン酸塩または鉄含有顔料、およびそれらの混合物からなる防食化合物の群から選択される1つ以上の活性成分
を含む少なくとも1つの腐食防止剤を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの腐食防止剤の粒度がコーティングのプライマー層より小さい、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の水性プライマー組成物の硬化生成物。
【請求項11】
少なくとも請求項10に記載の硬化生成物と基板、好ましくは、鋼鉄、亜鉛メッキ鋼、鉄、亜鉛メッキ鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、亜鉛合金鋼板、冷延鋼板、Zn/Mg鋼板、チタン、カドミウム、マグネシウムおよびそれらの合金からなる群から選択される基板とを含む下塗り基板。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化生成物が前記基板上に被膜を形成し、該被膜の層厚が、約10μm〜約50μmの範囲、好ましくは約15μm〜約25μmの範囲にある、請求項11に記載の下塗り基板。
【請求項13】
少なくとも基板、請求項10に記載の硬化生成物およびトップコートを含む被覆組立品。
【請求項14】
離れた関係の空間に配置された2つの基板を含んでなる結合組立品であって、各基板が内部接面および外部接面を有しており、2つの基板の内部接面間に、請求項1〜9のいずれかに記載のプライマー組成物および硬化接着剤により形成された接着が存在する結合組立品。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の水性プライマー組成物の製造方法であって、
a.少なくとも1つの熱硬化性、自己乳化型エポキシ樹脂組成物、
b.少なくとも1つの熱硬化性、非自己乳化型樹脂組成物、および
c.場合により、少なくとも1つの腐食防止剤
を含んでなる水性分散体に硬化剤を加える方法。
【請求項16】
金属表面における接着系用プライマーとしての、および/または、金属表面におけるコーティング用プライマーとしての請求項1〜9のいずれかに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2010−539314(P2010−539314A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525356(P2010−525356)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062470
【国際公開番号】WO2009/037323
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】