説明

描画装置及び描画方法

【課題】 高精度に描画を行う。
【解決手段】 保持面を備え、保持面に基板を保持するステージと、保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、保持面に保持された基板と、第1の吐出領域との間の距離、及び、保持面に保持された基板と、第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、ステージは、保持面内の第1の方向に、第1及び第2の吐出領域との間で相対的に移動可能に基板を保持し、第2の吐出領域は、第1の吐出領域の、第1の方向と保持面内で交差する方向と平行な方向側に配置され、第1、第2の吐出領域は、それぞれ保持面と交差する第2、第3の方向と平行な方向に、基板との間で相対的な移動が可能であり、更に、基板の反りに応じて、基板の第1の方向への相対的な移動、及び、第1、第2の吐出領域の第2、第3の方向と平行な方向への相対的な移動を制御する制御装置を含む描画装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出してパターンを描画する描画装置及び描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板やプリント配線板のパターン形成面に、パターン形成用材料を含んだ液状材料(インク)を吐出ヘッド(インクジェットヘッド)から液滴として吐出して、基板上に材料層を成膜(描画)する技術が知られている。
【0003】
基板上に描画される材料層により、たとえばソルダーレジストパターンが形成される。ソルダーレジストは、基材に導体配線が形成されたプリント配線板のはんだ付けのために、必要な導体部分を露出し、はんだ付けが不要な部分にはんだが付かないように配線板上に形成される絶縁膜である。
【0004】
液晶基板には反りがほとんどない。このため、液晶基板に描画を行う際には、インクジェットヘッドと基板との間の距離は一定に保たれ、高精度の描画が可能である。しかしながらプリント配線板には反りがある。
【0005】
図8(A)及び(B)はプリント配線板の反りを示す概略的な断面図である。図8(A)には、プリント配線板10の中央部が盛り上がる態様の反りを示した。また、図8(B)には、プリント配線板10の端部が反り上がる態様の反りを示した。両図における反り量hは、たとえば0.1mm〜0.5mmである。なお、プリント配線板10のサイズは一例として、縦300mm〜500mm、横400mm〜600mm、厚さ0.5mm〜5mmである。
【0006】
このように反りを有するプリント配線板10を、たとえば1次元方向に移動させながら、インクジェットヘッドからインクを吐出して材料層を形成する場合、インクジェットヘッドとプリント配線板10との間の距離が反りに起因して変動し、インクの着弾位置及び着弾サイズが安定せず、描画精度が悪化する。
【0007】
インクの着弾精度が基板の各所において異なる場合であっても、各所でインクジェットヘッドと基板との相対位置を補正して、液滴の着弾精度を向上させる描画装置の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3982502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高精度の描画が可能な描画装置及び描画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によると、保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、前記ステージは、前記保持面内の第1の方向に、前記第1及び第2の吐出領域との間で相対的に移動可能に前記基板を保持し、前記第2の吐出領域は、前記第1の吐出領域の、前記第1の方向と前記保持面内で交差する方向と平行な方向側に配置され、前記第1、第2の吐出領域は、それぞれ前記保持面と交差する第2、第3の方向と平行な方向に、前記基板との間で相対的な移動が可能であり、更に、前記基板の反りに応じて、前記基板の前記第1の方向への相対的な移動、及び、前記第1、第2の吐出領域の前記第2、第3の方向と平行な方向への相対的な移動を制御する制御装置を含む描画装置が提供される。
【0011】
また、本発明の他の観点によると、保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、前記ステージは、前記保持面内の第1の方向に、前記第1及び第2の吐出領域との間で相対的に移動可能に前記基板を保持し、前記第2の吐出領域は、前記第1の吐出領域の、前記第1の方向と前記保持面内で交差する方向と平行な方向側に配置され、更に、前記第1及び第2の吐出領域を基準として前記第1の方向とは反対方向側に配置され、前記ステージ上で、前記基板を前記第1の方向に移動可能に押圧するローラであって、前記第1の方向と前記保持面内で直交する方向と平行な方向に沿う長さが、前記第1及び第2の吐出領域を含む吐出領域の同方向に沿う長さよりも短いローラとを含む描画装置が提供される。
【0012】
更に、本発明の他の観点によると、保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、前記ステージは、貫通孔が形成された基板を前記保持面に保持し、該基板を吸引可能な複数の吸引穴であって、吸引穴ごとに基板を吸引するか否かの制御が可能な複数の吸引穴を備え、更に、前記吸引穴ごとに基板を吸引するか否かの制御を行う制御装置であって、前記基板の貫通孔の下に配置される吸引穴では吸引せず、配置されない吸引穴で吸引するように制御を行う制御装置とを有する描画装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の観点によると、保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置を用いて行う描画方法であって、(a)前記基板の反りを把握する工程と、(b)前記基板の反りに応じ、前記第1及び第2の吐出領域の位置を、前記基板が全体として延在する平面と交差する方向に、前記基板との間でそれぞれ相対的に変化させて、前記第1及び第2の吐出領域から前記基板に向けて液滴を吐出する工程とを有する描画方法が提供される。
【0014】
更に、本発明の他の観点によると、保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置を用いて行う描画方法であって、(a)基板を準備する工程と、(b)前記基板を、前記第1及び第2の吐出領域との間で相対的に第1の方向に移動させながら、前記第1及び第2の吐出領域から前記基板に向けて液滴を吐出する工程とを有し、前記工程(b)において、前記第1及び第2の吐出領域を基準として、前記第1の方向とは反対方向側で、かつ、前記基板が全体として延在する平面内で前記第1の方向と直交する方向に沿う長さが、前記第1及び第2の吐出領域を含む吐出領域の同方向に沿う長さよりも短い範囲で、前記基板を前記第1の方向に移動可能に押圧する描画方法が提供される。
【0015】
また、本発明の他の観点によると、保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置を用いて行う描画方法であって、(a)貫通孔が形成された基板を準備する工程と、(b)前記第1及び第2の吐出領域から前記基板に向けて液滴を吐出する工程とを有し、前記工程(b)において、貫通孔の形成された位置の前記基板を吸引せず、貫通孔の形成されない位置の前記基板を吸引した状態で、前記基板に向けて液滴を吐出する描画方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高精度の描画が可能な描画装置及び描画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施例による描画装置を示す概略図である。
【図2】インクジェットヘッドユニット23a〜23dの近傍を示す、描画装置の概略的な平面図である。
【図3】(A)及び(B)は、インクジェットヘッドユニットの液滴吐出面を示す概略図である。
【図4】第1の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。
【図5】第2の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。
【図6】(A)及び(B)は、第3の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。
【図7】(A)及び(B)は、第4の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。
【図8】(A)及び(B)はプリント配線板の反りを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図4を参照して、第1の実施例による描画装置について説明する。
【0019】
図1は第1の実施例による描画装置を示す概略図である。第1の実施例による描画装置は、水平に(XY平面に平行な面内に)設置された定盤20、定盤20上に配置されたステージ22、定盤20に固定され、Y軸方向に沿って見たとき、ステージ22を門型に囲むように配置されたフレーム21、フレーム21に保持されたインクジェットヘッドユニット23a〜23d、及び、描画装置の動作を制御する制御装置40を含む。
【0020】
ステージ22は、定盤20側から順に配置されるYステージ22y、Xステージ22x、θステージ22θ、及びチャックプレート22aを含む。チャックプレート22aは、プリント配線板(基板)50を吸着保持する。θステージ22θは、保持されたプリント配線板50を、XY平面に平行な面内で、Z軸に平行な回転軸の周囲に回転させる。Xステージ22x、Yステージ22yは、それぞれプリント配線板50を、X軸方向、Y軸方向に移動させることができる。チャックプレート22aによるプリント配線板50の吸着、X、Y、θステージ22x、22y、22θによるプリント配線板50の移動は、制御装置40によって制御される。
【0021】
フレーム21は、2本の支柱21a、21b、及びコラム21cを含む。支柱21a、21bは、定盤20のY軸方向の略中央に立設される。コラム21cは、X軸方向に沿うように、支柱21a、21bに支持される。
【0022】
インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、フレーム21のコラム21cに、Z軸方向に移動可能に保持されている。インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、それぞれ複数のインクジェットヘッドを含む。インクジェットヘッドは、たとえば紫外線硬化性のインク(パターン形成用材料を含んだ液状材料)をステージ22に保持されたプリント配線板50に向けて吐出(滴下)する。吐出されたインクにより、プリント配線板50上に所定パターンの材料層、たとえばソルダーレジストパターンが成膜(描画)される。
【0023】
制御装置40は、たとえばメモリである記憶装置40aを含む。記憶装置40aには、プリント配線板50上においてソルダーレジストを形成すべき領域(インクを塗布すべき領域)等のデータ(ガーバデータ)が記憶されている。制御装置40は、記憶装置40aの記憶内容に基いて、プリント配線板50上の所定領域にインクが塗布されるように、インクジェットヘッドユニット23a〜23dからのインクの吐出、及びステージ22による配線板50の移動を制御する。プリント配線板50は、Y軸正方向に移動され、インクジェットヘッドユニット23a〜23dの鉛直下方(Z軸負方向)においてインクを塗布される。
【0024】
第1の実施例による描画装置は、ステージ22上に移動可能に保持されたプリント配線板50上に、たとえば所定パターンのソルダーレジストを形成する液滴吐出装置(インクジェット装置)である。
【0025】
図2は、インクジェットヘッドユニット23a〜23dの近傍を示す、描画装置の概略的な平面図である。各インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、Y軸方向に沿って配置される複数のノズル列を備える。各ノズル列は、X軸方向に沿って配列された複数の、たとえば192個のインクジェットノズル(インク吐出穴)によって構成される。各ノズル列のX軸方向に沿う長さは、たとえば約30mmである。インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、全体として見たとき、たとえばインクジェットノズルがX軸方向に等間隔に配置されるように設置される。このため、インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、インクジェットノズルからインクを吐出して、Y軸正方向に移動中のプリント配線板50の幅約120mmの範囲(X軸方向に沿う範囲)に、描画を行うことができる。
【0026】
各ユニット23a〜23dには、ノズル列の両側に余白部が設けられているので、インクジェットノズルをX軸方向に等間隔に配置するために、X軸方向に隣り合うユニット(一例としてユニット23aとユニット23b)は、Y軸方向にたとえば20mmの間隔を設けて配置される。この結果、インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、たとえば互い違いに2列に組まれて、全体としてX軸方向に延在するように配置される。なお、相互に異なるインクジェットヘッドユニット23a〜23dは、プリント配線板50の移動方向であるY軸正方向とXY平面内で交差する方向と平行な方向側に配置される。
【0027】
各ユニット23a〜23dのY軸負方向(プリント配線板50の移動方向とは反対方向)側に、それぞれ高さセンサ24a〜24dが配置される。インクジェットヘッドユニット23a〜23dと高さセンサ24a〜24dは、たとえばY軸方向に40mm〜50mm以上離れている。
【0028】
高さセンサ24a〜24dは、たとえばレーザ変位計であり、センサ24a〜24d設置位置の鉛直下方(Z軸負方向)に沿う距離(高さ)を、たとえば10μm程度の誤差範囲で計測することができる。ステージ22にプリント配線板50が保持されているとき、高さセンサ24a〜24dによって、センサ24a〜24dから、その鉛直下方のプリント配線板50上の位置までの距離(高さ)が計測される。計測された高さのデータは、制御装置40に送信される。
【0029】
図3(A)及び(B)は、インクジェットヘッドユニットの液滴吐出面を示す概略図である。図3(A)に示すように、インクジェットヘッドユニット23aは、たとえば同構成のインクジェットヘッド23a〜23aを含んで構成される。インクジェットヘッド23a〜23aは、順に相対位置をX軸負方向にずらされながら、全体としてY軸方向に沿って配置されている。
【0030】
図3(B)にインクジェットヘッドの詳細を示した。インクジェットヘッド23aは2列のノズル列を含み、同一ノズル列のノズルはX軸方向に沿って160μm間隔で配置される。Y軸正方向側のノズル列は、Y軸負方向側のノズル列に対し、ノズルの配置位置がX軸負方向に80μmずれるように形成されている。このためインクジェットヘッド23aは、X軸方向に80μm間隔で千鳥配列される384個のインクジェットノズルを含む。各インクジェットノズルはピエゾ素子を含んで構成され、電圧の印加に応じてインクを吐出する。インクの吐出(電圧の印加)は制御装置40によって制御される。
【0031】
インクジェットヘッド23aはインクジェットヘッド23aに対し、20μmだけX軸負方向側に配置される。同様にインクジェットヘッド23a、aは、それぞれインクジェットヘッド23a、aに対し、20μmだけX軸負方向側に配置される。この結果、インクジェットヘッドユニット23aは、X軸方向に20μm間隔で配置されるノズルを備える。
【0032】
インクジェットヘッドユニット23b〜23dも、インクジェットヘッドユニット23aと等しい構成を有する。したがって第1の実施例による描画装置は、X軸方向に沿う120mmの範囲に、20μmの分解能をもつインクジェットノズル群を備える。
【0033】
図4は、第1の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。ボールネジ25dは、連結部材28aを介してコラム21cに固定されている。インクジェットヘッドユニット23dは、ボールネジ25dに、モータ26dの発生する駆動力によってZ軸方向に移動可能に、保持されている。インクジェットヘッドユニット23dのZ軸方向の移動は制御装置40によって制御される。
【0034】
プリント配線板50は、たとえば300mm/秒でY軸正方向に移動される。インクジェットヘッドユニット23dのY軸負方向側に配置された高さセンサ24dは、プリント配線板50表面までの距離(高さ)を計測し、計測されたデータを制御装置40に送信する。制御装置40は、高さセンサ24dで計測された高さに基づいて、インクジェットヘッドユニット23dの液滴吐出面から、プリント配線板50までの距離が一定、たとえば0.5mmとなるように、ステージ22によるプリント配線板50の移動、及び、インクジェットヘッドユニット23dのZ軸方向の移動を制御する。たとえば位置P、Qがそれぞれ高さセンサ24dのZ軸負方向に配置されたとき、高さセンサ24dによって、プリント配線板50までの高さがp、qと計測された場合、インクジェットヘッドユニット23dは、位置Qにインク51を吐出するときは位置Pに吐出するときより、Z軸正方向にp−qだけ移動される。インクジェットヘッドユニット23dは、その鉛直下方のプリント配線板50の反りに沿って、Z軸方向に上下しながらインク51を吐出する。
【0035】
インクジェットヘッドユニット23dから吐出され、配線板50上に塗布されたインク51は、たとえばインクジェットヘッドユニット23dのY軸正方向側に、連結部材28cを介して配置された光源27から出射される紫外光によって、表面部を硬化(仮硬化)される。光源27による紫外光の出射は、制御装置40により制御される。
【0036】
図4にはインクジェットヘッドユニット23dを示したが、他のインクジェットヘッドユニット23a〜23cについても同様である。インクジェットヘッドユニット23a〜23cは、ボールネジ25a〜25cに、モータ26a〜26cの発生する駆動力によって、それぞれ独立にZ軸方向に移動可能に、保持されている。ボールネジ25a〜25cは、連結部材28aを介してコラム21cに固定されている。インクジェットヘッドユニット23a〜23cのZ軸方向の移動は制御装置40によって制御される。インクジェットヘッドユニット23a〜23cは、制御装置40の制御により、対応する各高さセンサ24a〜24cで計測された高さに基づいて、それぞれプリント配線板50までの距離が常に0.5mmとなるように、Z軸方向に移動されながらインク51を吐出する。吐出され配線板50上に塗布されたインク51は、光源27から出射される紫外光によって仮硬化される。
【0037】
第1の実施例による描画装置によれば、インクジェットヘッドユニット23a〜23d単位で、液滴吐出面(インクジェットノズル)からプリント配線板50までの距離を一定に保つような制御を行いながら液滴の吐出を行うので、反りがあるプリント配線板50に対しても、高精度に描画を行うことができる。たとえば各ユニット23a〜23dの液滴吐出面から配線板50までの距離は0.5mm±0.1mmの範囲内に維持され、各ユニット23a〜23dから吐出された液滴の着弾位置及びサイズが安定することで、描画が高精度に行われる。
【0038】
図5は、第2の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。第2の実施例は、高さセンサ24a〜24d及び連結部材28bを含まない。また、あらかじめ反り(プリント配線板50上の位置によって異なる、ステージ22表面(載置水平面)からの高さ)が計測されたプリント配線板50がステージ22上に載置される。プリント配線板50の反りのデータは記憶装置40aに記憶されている。
【0039】
制御装置40は、記憶装置40aに記憶された、プリント配線板50の反りのデータに基づいて、インクジェットヘッドユニット23a〜23dの液滴吐出面から、ステージ22によって移動されるプリント配線板50までの距離が一定、たとえば0.5mmとなるように、ステージ22によるプリント配線板50の移動、及び、ユニット23a〜23dのZ軸方向の移動を制御する。それとともに、プリント配線板50上においてソルダーレジストを形成すべき領域のデータに基き、プリント配線板50上の所定領域にインクが塗布されるように、インクジェットヘッドユニット23a〜23dからのインクの吐出を制御する。
【0040】
第2の実施例による描画装置も、第1の実施例と同様に、プリント配線板50の反りに応じて、インクジェットヘッドユニット23a〜23dの移動が制御される。第2の実施例によれば、高さセンサ24a〜24dを用いずに高精度の描画を行うことが可能である。
【0041】
図6(A)及び(B)は、第3の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。図6(A)に示すように、第3の実施例は、ボールネジ25a〜25d、モータ26a〜26d、高さセンサ24a〜24d及び連結部材28bを含まず、ローラ29を備える点で第1の実施例と異なる。インクジェットヘッドユニット23a〜23dは、連結部材28aを介して、コラム21cに固定されている。
【0042】
ローラ29は、インクジェットヘッドユニット23a〜23dによるインク51滴下位置のY軸負方向側に配置され、ステージ22上で、プリント配線板50をY軸方向に移動可能に押圧する。ローラ29でプリント配線板50を押圧することにより、インク51の滴下位置におけるプリント配線板50の反りが矯正され、インクジェットヘッドユニット23a〜23dの液滴吐出面から、プリント配線板50までの距離が一定、たとえば0.5mmに保たれる。第3の実施例によれば、インクジェットヘッドユニット23a〜23dをZ軸方向に移動させることなく、高精度の描画を行うことができる。
【0043】
なお、図6(B)に示すように、ローラ29のX軸方向に沿う長さは、インクジェットヘッドユニット23a〜23d(インクジェットノズル)のX軸方向に沿う長さよりも短い。プリント配線板50に対する描画は、ローラ29で配線板50を押圧し、配線板50をY軸正方向に移動しながら、ユニット23a〜23dからインク51を吐出して、X軸方向120mmの範囲にインク51を塗布し、塗布したインク51を光源27から出射される紫外光で仮硬化した後、ステージ22により配線板50をたとえばX軸正方向、及びY軸負方向に移動する。そしてまた、配線板50をY軸正方向に移動しながら、インク51を仮硬化させた領域に隣接するX軸方向120mmの範囲にインク51を塗布し仮硬化させる。これを繰り返して、プリント配線板50のパターン形成面全面に描画を行う。したがってローラ29のX軸方向に沿う長さが、インクジェットヘッドユニット23a〜23d(インクジェットノズル)のX軸方向に沿う長さよりも長い場合には、ローラ29が、仮硬化されたインク51を押圧し、パターンを損傷するとともに、ローラ29にインク51が付着するという問題を生じる。ローラ29のX軸方向に沿う長さが、インクジェットヘッドユニット23a〜23d(インクジェットノズル)のX軸方向に沿う長さよりも短いのはこの問題を回避するためである。なお、ステージ22によりプリント配線板50をX軸方向に移動するときには、ローラ29はZ軸正方向に移動し、配線板50の押圧が解除される。
【0044】
図7(A)及び(B)は、第4の実施例による描画装置の一部を示す概略図である。第4の実施例はローラ29を含まず、またステージ22のチャックプレート22aに特徴を有する点で第3の実施例と異なる。また、制御装置40の制御内容においても相違する。
【0045】
図7(A)に示すように、チャックプレート22aは、プリント配線板50を吸引保持する吸引穴22a、22a等を備える。吸引穴22a、22a等は、たとえば直径3mmの円形状を有し、X軸方向、Y軸方向にそれぞれ20mm間隔で配置されている。
【0046】
図7(B)に示すように、第4の実施例による描画装置のチャックプレート22aにおいては、各吸引穴22a、22aが、弁22A、22Aを備える。吸引穴22a、22aは、それぞれ弁22A、22Aが開状態のときプリント配線板50を吸引し、閉状態のとき吸引しない。弁22A、22Aを開閉し、各吸引穴22a、22aによってプリント配線板50を吸引するか否かの制御は、制御装置40によって行われる。
【0047】
プリント配線板50には、貫通孔が形成されている。制御装置40は、貫通孔が吸引穴上に配置されない場合には、弁を開け、その吸引穴で吸引するように、また、貫通孔が吸引穴上に配置される場合には、弁を閉じ、その吸引穴では吸引しないように制御を行う。図7(B)には、吸引穴22a上にプリント配線板50の貫通孔が配置される場合を示した。この場合には、制御装置40は、弁22Aを閉状態、弁22Aを開状態として、吸引穴22aによってプリント配線板50を吸引する。
【0048】
チャックプレート22aによって、貫通孔の形成された位置のプリント配線板50を吸引せず、貫通孔の形成されない位置のプリント配線板50を吸引しながら、ステージ22は配線板50をY軸正方向に移動する。移動される配線板50に向けて、インクジェットヘッドユニット23a〜23dからインク51が吐出され、プリント配線板50に対する描画が行われる。
【0049】
第4の実施例による描画装置によれば、チャックプレート22aの吸引力を高め、プリント配線板50を、反りを矯正して保持することができるので、描画を高精度に行うことが可能となる。
【0050】
なお、プリント配線板50を、貫通孔が吸引穴上に配置されないようにチャックプレート22a上に載置することによっても、吸引の確実性を高め、プリント配線板50の反りを矯正して高精度の描画を行うことができる。
【0051】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0052】
たとえば、第1及び第2の実施例においては、インクジェットヘッドユニットの液滴吐出面から、プリント配線板までの距離が一定となるように、インクジェットヘッドユニットのZ軸方向の移動を制御したが、両者の距離が所定範囲内となるように制御を行ってもよい。
【0053】
また、第1及び第2の実施例においては、インクジェットヘッドユニットをZ軸方向に移動させたが、たとえばプリント配線板をZ軸方向に移動可能に保持する機構をステージに付属させ、プリント配線板を移動させることもできる。インクジェットヘッドユニットとプリント配線板とは、たとえば両者間の距離が一定となるように、相対的に移動させればよい。
【0054】
更に、第1及び第2の実施例においては、インクジェットヘッドユニットをZ軸方向に移動可能な構成としたが、ステージの基板保持面(たとえばXY平面に平行な平面、プリント配線板が全体として延在する平面と平行な平面)と交差する方向に移動可能であればよい。なおこの場合、インクジェットヘッドユニットごとに、移動可能方向が異なっていてもかまわない。
【0055】
また、すべての実施例において、インクジェットヘッドユニット等に対するプリント配線板のXY平面内方向の移動をステージによって行ったが、たとえば固定ステージを用い、フレーム21をY軸方向に移動可能とし、インクジェットヘッドユニット23a〜23d、高さセンサ24a〜24d、ボールネジ25a〜25d、モータ26a〜26d、光源27、及び連結部材28a〜28cを、フレーム21にX軸方向に移動可能に取り付ける構成を採用してもよい。この場合、第3の実施例においては、ローラ29を、インクジェットヘッドユニット23a〜23d等のY軸方向の移動と同期させて、たとえばインクジェットヘッドユニット23a〜23dのY軸方向に沿う位置と、ローラ29のそれとの間の距離が一定となるように、プリント配線板50を押圧させながらY軸方向に移動させる。また、プリント配線板50の押圧を解除し、Z軸正方向に移動されたローラ29は、X軸方向に移動可能な構成とする。このようにZ軸方向に限らず、X軸方向、Y軸方向についても、インクジェットヘッドユニット等と、プリント配線板とは、相対的に移動させればよい。なお、上述のような装置構成とした場合も、各部の動作制御は制御装置40により行われる。
【0056】
すべての実施例による描画装置によって、たとえばステージ22に保持されたプリント配線板50と、インクジェットヘッドユニット23a〜23d(のノズル(列))との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持してプリント配線板50に対する描画を行うことができる。この場合、各所定範囲を等しい範囲、より好ましくは一定値とすることで、描画の精度を高めることができる。
【0057】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0058】
液滴を吐出して行うパターン描画に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 プリント配線板
20 定盤
21 フレーム
21a、21b 支柱
21c コラム
22 ステージ
22a チャックプレート
22a、22a 吸引穴
22A、22A
22θ θステージ
22x Xステージ
22y Yステージ
23a〜23d インクジェットヘッドユニット
23a〜23a インクジェットヘッド
24a〜24d 高さセンサ
25a〜25d ボールネジ
26a〜26d モータ
27 光源
28a〜28c 連結部材
29 ローラ
40 制御装置
40a 記憶装置
50 プリント配線板
51 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、
前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域と
を有し、
前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、
前記ステージは、前記保持面内の第1の方向に、前記第1及び第2の吐出領域との間で相対的に移動可能に前記基板を保持し、
前記第2の吐出領域は、前記第1の吐出領域の、前記第1の方向と前記保持面内で交差する方向と平行な方向側に配置され、
前記第1、第2の吐出領域は、それぞれ前記保持面と交差する第2、第3の方向と平行な方向に、前記基板との間で相対的な移動が可能であり、
更に、前記基板の反りに応じて、前記基板の前記第1の方向への相対的な移動、及び、前記第1、第2の吐出領域の前記第2、第3の方向と平行な方向への相対的な移動を制御する制御装置を含む描画装置。
【請求項2】
更に、前記第1の吐出領域を基準として前記第1の方向とは反対方向側に配置され、前記保持面に保持された基板までの距離を計測する第1の計測器と、
前記第2の吐出領域を基準として前記第1の方向とは反対方向側に配置され、前記保持面に保持された基板までの距離を計測する第2の計測器と
を備え、
前記制御装置は、前記第1の計測器で計測された距離に基づいて、前記第1の方向に相対的に移動される基板と前記第1の吐出領域との間の距離が一定となるように、かつ、前記第2の計測器で計測された距離に基づいて、前記第1の方向に相対的に移動される基板と前記第2の吐出領域との間の距離が一定となるように、前記基板の前記第1の方向への相対的な移動、及び、前記第1、第2の吐出領域の前記第2、第3の方向と平行な方向への相対的な移動を制御する請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記第2の方向と前記第3の方向とが平行な方向である請求項1または2に記載の描画装置。
【請求項4】
更に、前記基板の反りのデータが記憶された記憶装置を備え、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて、前記第1の方向に相対的に移動される基板と前記第1、第2の吐出領域との間の距離がそれぞれ一定となるように、前記基板の前記第1の方向への相対的な移動、及び、前記第1、第2の吐出領域の前記第2、第3の方向と平行な方向への相対的な移動を制御する請求項1に記載の描画装置。
【請求項5】
保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、
前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域と
を有し、
前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、
前記ステージは、前記保持面内の第1の方向に、前記第1及び第2の吐出領域との間で相対的に移動可能に前記基板を保持し、
前記第2の吐出領域は、前記第1の吐出領域の、前記第1の方向と前記保持面内で交差する方向と平行な方向側に配置され、
更に、前記第1及び第2の吐出領域を基準として前記第1の方向とは反対方向側に配置され、前記ステージ上で、前記基板を前記第1の方向に移動可能に押圧するローラであって、前記第1の方向と前記保持面内で直交する方向と平行な方向に沿う長さが、前記第1及び第2の吐出領域を含む吐出領域の同方向に沿う長さよりも短いローラと
を含む描画装置。
【請求項6】
保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、
前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域と
を有し、
前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置であって、
前記ステージは、貫通孔が形成された基板を前記保持面に保持し、該基板を吸引可能な複数の吸引穴であって、吸引穴ごとに基板を吸引するか否かの制御が可能な複数の吸引穴を備え、
更に、前記吸引穴ごとに基板を吸引するか否かの制御を行う制御装置であって、前記基板の貫通孔の下に配置される吸引穴では吸引せず、配置されない吸引穴で吸引するように制御を行う制御装置と
を有する描画装置。
【請求項7】
保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置を用いて行う描画方法であって、
(a)前記基板の反りを把握する工程と、
(b)前記基板の反りに応じ、前記第1及び第2の吐出領域の位置を、前記基板が全体として延在する平面と交差する方向に、前記基板との間でそれぞれ相対的に変化させて、前記第1及び第2の吐出領域から前記基板に向けて液滴を吐出する工程と
を有する描画方法。
【請求項8】
前記工程(b)において、前記基板と前記第1及び第2の吐出領域との間の距離がそれぞれ一定となるように、前記第1及び第2の吐出領域の位置を前記基板との間でそれぞれ相対的に変化させる請求項7に記載の描画方法。
【請求項9】
保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置を用いて行う描画方法であって、
(a)基板を準備する工程と、
(b)前記基板を、前記第1及び第2の吐出領域との間で相対的に第1の方向に移動させながら、前記第1及び第2の吐出領域から前記基板に向けて液滴を吐出する工程と
を有し、
前記工程(b)において、前記第1及び第2の吐出領域を基準として、前記第1の方向とは反対方向側で、かつ、前記基板が全体として延在する平面内で前記第1の方向と直交する方向に沿う長さが、前記第1及び第2の吐出領域を含む吐出領域の同方向に沿う長さよりも短い範囲で、前記基板を前記第1の方向に移動可能に押圧する描画方法。
【請求項10】
保持面を備え、該保持面に基板を保持するステージと、前記保持面に保持された基板に向けて液滴を吐出する第1及び第2の吐出領域とを有し、前記保持面に保持された基板と、前記第1の吐出領域との間の距離、及び、前記保持面に保持された基板と、前記第2の吐出領域との間の距離を、それぞれ所定範囲内に維持する描画装置を用いて行う描画方法であって、
(a)貫通孔が形成された基板を準備する工程と、
(b)前記第1及び第2の吐出領域から前記基板に向けて液滴を吐出する工程と
を有し、
前記工程(b)において、貫通孔の形成された位置の前記基板を吸引せず、貫通孔の形成されない位置の前記基板を吸引した状態で、前記基板に向けて液滴を吐出する描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86194(P2012−86194A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236989(P2010−236989)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】