説明

換気装置

【課題】 装置全体を大きくせずしてコストの低減化を可能にする。
【解決手段】 温室Hにおける開口を形成する枠体1と、この枠体1あるいは近傍部に一辺部を枢支させながら開口を開閉する遮蔽体2と、この遮蔽体2の枠体1に対する揺動を実現する駆動機構3とを有し、駆動機構3が枠体1あるいは近傍部に保持される支持体4と、この支持体4に基端ウォームホイール部5aが枢支されながら先端アーム部5bを遮蔽体2に連結させる駆動アーム部材5と、この駆動アーム部材5の基端ウォームホイール部5aに先端ネジ部6aを噛合させながら支持体4に保持される駆動軸6とを有し、この駆動軸6が支持体4の外に突出する基端入力部6bへの外力の入力で回動されて駆動アーム部材5の基端ウォームホイール部5aを回動し、この基端ウォームホイール部5aの回動で駆動アーム部材5が先端アーム部5bを揺動させて遮蔽体2を動かし、遮蔽体2が開口を開閉してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、換気装置に関し、特に、ビニールハウスなどの温室の妻面,屋根面あるいは側面などに設けられて温室内の換気を可能にする換気装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ビニールハウスなどの温室にあっては、妻面,屋根面あるいは側面などに換気装置を設けて、温室内の温度を、たとえば、温室内で育成する植物に対して最適なようにする。
【0003】
そのため、この種の換気装置として、これまでに種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、外周に螺旋リブを有する操作ロッドの回動で遮蔽体たる窓体を動かして枠体たる窓枠が形成する開口を開閉する。
【0004】
すなわち、特許文献1に開示されるところにあって、温室は、妻面あるいは屋根面に適宜のフレーム材からなる窓枠を有し、この窓枠は、たとえば、矩形の開口を形成し、この開口に合致する窓体を有してなる。
【0005】
そして、開口が、たとえば、温室の妻面に形成される場合、窓体は、一辺部たる上辺部が窓枠における上框部に枢支されながら他辺部たる下辺部が下方に垂下されて揺動可能とされる一方で、上記の上框部の近傍部に上端部が保持される操作ロッド、つまり、上記の外周に螺旋リブを有する操作ロッドの回動で揺動されて開口を開閉する。
【0006】
このとき、操作ロッドの上端部は、回動は可能とされるが上下方向および横方向の移動が規制された状態にして窓枠における上框部の近傍部に連結され、操作ロッドの下端部は、下方に垂下される。
【0007】
そして、操作ロッドには、ほぼ筒状に形成されて内周に操作ロッドにおける螺旋リブを噛合させる構成を有するスライダが巻装され、このスライダにリンク部材を介して窓体が連結される。
【0008】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案にあっては、操作ロッドを回動することで、リンク部材の連結で言わば回動が阻止されているスライダが操作ロッドに副って上下動し、したがって、このスライダにリンク部材を介して連結される窓体が下辺部を揺動させて開口を開閉する。
【0009】
したがって、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、操作ロッドを人力で回動操作する場合はもちろんのこと、機械力で回動する場合にも、窓体による開口の開閉を実践し得て、温室内の換気を可能にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005‐245203号公報(特許請求の範囲,図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、操作ロッドの回動で窓体による開口の開閉を通じて温室内の換気を実践し得る点で、基本的に問題がある訳ではないが、その実施化や利用にあって、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0012】
すなわち、上記した特許文献1に開示の提案にあって、操作ロッドは、たとえば、上端部を上方にして下端部を下方にする縦方向に配設される場合に、上端部が上下方向および横方向の移動を阻止された状態で窓枠における上框部の近傍部に回動可能に連結される。
【0013】
そして、この操作ロッドにあっては、下端部も、上下方向および横方向の移動を阻止された状態で窓枠の下框部に回動可能に連結される。
【0014】
したがって、この操作ロッドを回動することで、窓体の開閉動作を可能にする上記の提案にあっては、操作ロッドを有すること自体で換気装置を大掛かりにし易くなると共に、操作ロッドの上下端部を上下方向および横方向の動きを規制した状態下に回動可能に保持する機構が必須になり、全体として見るとき、装置全体の重量を大きくして、その設置に手間を要し易くなり、また、装置全体のコストの低減化を困難にして、その汎用性の向上を期待できなくする危惧がある。
【0015】
のみならず、実際に操作することを鑑みると、操作ロッドの回動数を多くしないと窓体を大きく揺動できず、操作ロッドを人力で回動するとなると、作業者に多大な労力を強いることになり、また、駆動モータを利用するなどの機械力を利用する場合には、金属部分の磨耗が著しくなり、耐久性を期待できなくする危惧もある。
【0016】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、開口の開閉で所定の換気を実践し得るのはもちろんだが、装置全体の重量を大きくせずして設置に手間を要せず、また、装置全体のコストの低減化を可能にして、さらには、その操作性を善くして作業性を向上させ、その汎用性の向上を期待するのに最適となる換気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するために、この発明による換気装置の構成を、基本的には、温室の妻面,屋根面あるいは側面における開口を形成する枠体と、この枠体あるいは近傍部に枢支されながら揺動時に上記の開口を開閉する遮蔽体と、この遮蔽体の枠体に対する揺動を実現する駆動機構とを有してなる換気装置において、駆動機構が枠体あるいは近傍部に保持される支持体と、この支持体に基端ウォームホイール部が枢支されながらこの支持体の外に突出する先端アーム部を遮蔽体に連結させる駆動アーム部材と、この駆動アーム部材の基端ウォームホイール部に先端ネジ部を噛合させながら支持体に保持される駆動軸とを有し、この駆動軸が支持体の外に突出する基端入力部への外力の入力で回動されて駆動アーム部材の基端ウォームホイール部を回動し、この基端ウォームホイール部の回動で駆動アーム部材が先端アーム部を揺動させて遮蔽体を動かし、遮蔽体が上記の開口を開閉してなるとする。
【発明の効果】
【0018】
それゆえ、この発明によれば、枠体あるいは近傍部に枢支される遮蔽体を動かして枠体が形成する開口を開閉させる駆動機構が全体的に見て枠体側に保持される構成とされると共に、前記した特許文献1の開示の提案にあるような縦方向に長尺となる操作ロッドを有しないから、装置全体のいたずらな大型化を回避することが可能になる。
【0019】
このとき、遮蔽体を動かす外力は、駆動機構における駆動アーム部材を揺動させる駆動軸に入力されるが、この駆動軸を横方向に延在させるとき、必要最小限度の軸長さを有するように形成することで、駆動機構をいたずらに大型化させない。
【0020】
そして、駆動軸に依存する駆動アーム部材における基端ウォームホイール部の回動は僅かで足りるから、遮蔽体を揺動させるのについて、作業者をして多大な労力を要せず、作業性が向上される。
【0021】
また、駆動軸に依存する駆動アーム部材における基端ウォームホイール部の回動は僅かで足り、したがって、駆動アーム部材における基端ウォームホイール部に形成される歯数が少数で足り、駆動アーム部材の形成が容易になり、駆動アーム部材における部品コストを安価にし得る。
【0022】
そしてまた、駆動アーム部材にあって、基端ウォームホイール部と先端アーム部とを一体に形成する場合には、部品点数の削減を可能にし得ることになり、上記した少数の歯の形成も含めて、部品製作を容易にして部品コストの一層の低減化を可能にする。
【0023】
その結果、この発明にあっては、装置全体の大型化を回避し得るから、装置全体の重量を大きくせずして設置に手間を要せず、また、駆動機構における部品コストを安価にし得るから、装置全体のコストの低減化を可能にし、さらには、作業性を善くして、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態における換気装置が設置された状態の温室を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における換気装置の温室内から観た設置状態を一部破断して示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における換気装置の駆動機構部分を一分破断して示す拡大斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態における換気装置を部分的に示す拡大側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態における換気装置を部分的に分解して示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、一実施の形態における換気装置は、図1に示すように、ビニールハウスからなる温室Hの妻面H1,屋根面H2あるいは側面H3のいずれか選択された単一の面、あるいは、複数の面に設けられる。
【0026】
ちなみに、換気装置は、温室Hがビニールハウスの場合には、このビニールハウスを形成する縦方向部材としてのアーチ部材(図2中の符号P参照)や横方向部材としての桁部材(図示せず)に一体的に連結され、また、温室Hがガラスハウスの場合には、同じく縦方向部材としての柱部材(図示せず)や横方向部材としての桁部材(図示せず)に一体的に連結されて、安定した状態に配設される。
【0027】
そして、この換気装置は、温室Hの妻面H1,屋根面H2あるいは側面H3における開口部(符示せず)を形成し、この開口部の開口(符示せず)を開閉することで温室H内の換気を可能にする。
【0028】
そのため、この換気装置が設けられる妻面H1,屋根面H2あるいは側面H3にあっては、開口を形成する部位にあって、ビニールシートやガラス板などの展設体の配設が省略されるのはもちろんであるが、この展設体の配設の省略は、いわゆる防虫の点からは不利になるので、図示しないが、多くの場合に、温室H内側からあるいは温室外側から上記の開口に防虫ネットN(図1参照)が着脱可能にあるいは固定的に展設されるとし、その場合には、後述する駆動機構3において、展設される防虫ネットNとの干渉を回避する配慮がなされる。
【0029】
なお、換気装置は、図1に示すように、いわゆる連続する状態に配設されても良く、また、これに代えて、図示しないが、いわゆる独立にする状態に配設されて、相隣する換気装置との間に間隔が設けられても良い。
【0030】
そして、図示する実施形態にあっては、すなわち、図2および図3に示すところでは、この発明の換気装置が温室Hにおける妻面H1に設けられるとする。
【0031】
以下に詳しく説明すると、この発明による本実施の形態における換気装置は、図2に示すように、枠体たる窓枠1と、遮蔽体たる窓体2と、駆動機構3とを有してなり、駆動機構3の作動するところで、窓体2が窓枠1にいわゆる離着座するように動いて、窓枠1が形成する開口を開閉する。
【0032】
すなわち、まず、枠体たる窓枠1は、所定の機械的強度を有するフレーム材からなり、図示するところでは、正面視において、縦長さに比較して横長さが長くなる横長の矩形の開口を形成するが、これに代えて、図示しないが、正面視において、横長さに比較して縦長さが長くなる縦長の矩形の開口を形成するとしても良い。
【0033】
また、この換気装置が機能するところを鑑みると、窓枠1が形成する開口のいわゆる正面形状については、上記した矩形に限定されないのはもちろんで、この換気装置を設ける妻面H1におけるいわゆる正面形状に起因するなどして矩形以外の任意の形状が選択されて良い。
【0034】
ちなみに、窓枠1については、基本的には、単独で所定の大きさの開口を画成するように形成されるのが常態であろうが、この発明が意図するところからすれば、前記した温室Hを形成する柱部材や桁部材の利用あるいは併用で窓枠1が形成されて窓体2で開閉される開口が画成されるとしても良いことはもちろんである。
【0035】
つぎに、遮蔽体たる窓体2は、いわゆる開閉窓などと称されるもので、後述する駆動機構3の作動によるが、その動きで、上記の窓枠1が形成する開口を開閉する。
【0036】
すなわち、図示するところでは、窓体2は、上記した横長の矩形に形成の開口に相応するように横長の矩形の正面形状を有するように形成され、一辺部たる上辺部2aが窓枠1の上框部 1aに、あるいは、この上框部1aを連結させる左右の縦框部1cに枢支されて他辺部たる下辺部2bが揺動可能とされ、この下辺部2bが窓枠1の下框部1bに隣接するとき開口を閉塞する。
【0037】
ちなみに、この窓体2にあっては、要は、開口を開閉すれば足りるから、上辺部2aが窓枠1の上框部1aや縦框部1cでなく上框部1aの上方部たる近傍部に枢着されても良いこともちろんである。
【0038】
また、この窓体2は、開口を開閉することを主眼とするから、いわゆる枠部分以外の部分が採光を不能にする不可視性の板材やシート類で形成されても良いが、この換気装置も採光に寄与するのであれば、いわゆる枠部分以外の部分が可視性に富むガラス板や合成樹脂板、さらには、樹脂性シート材やフィルム材で形成されるのが良い。
【0039】
一方、この窓体2は、後述する駆動機構3によって下辺部2bが揺動されて開口を開閉するが、駆動機構3の作動で円滑に開閉作動し得るようにする配慮がなされている。
【0040】
すなわち、この窓体2は、温室H内に対向する内側面に縦方向に配設されて上辺部2aと下辺部2bとに架け渡されるように連結される補助フレーム21を有しており、この補助フレーム21にリンク部材22の先端部を枢着させている。
【0041】
そして、このリンク部材22は、基端部が温室H内側に延在されて、後述する駆動機構3に連結されるが、このとき、駆動機構3がいわゆる中央部に設けられることもあって、図示するところでは、窓体2の開閉を左右でバランス良くするためにリンク部材22が左右で一対とされ、したがって、このリンク部材22が連結される補助フレーム21も左右で一対になるように設定されている。
【0042】
それゆえ、この窓体2にあっては、駆動機構3からの作動力がリンク部材22および補助フレーム21を介して円滑に作用することで、下辺部2bが揺動されて、開口を開閉する。
【0043】
なお、上記の補助フレーム21およびリンク部材22は、駆動機構3からの作動力を円滑に窓体2に伝達するために設けられるが、原理的には、すなわち、駆動機構3からの作動力が窓体2に伝達される限りには、この補助フレーム21およびリンク部材22の配設が省略されても良いことはもちろんである。
【0044】
ちなみに、上記の補助フレーム21およびリンク部材22の配設が省略される場合には、窓体2のいわゆる厚さを小さくでき、装置全体の嵩張りを抑制する上で有利となる。
【0045】
ところで、この発明の換気装置は、上記した窓枠1および窓体2の他に駆動機構3を有してなり、この駆動機構3は、図3にも示すように、支持体4と、駆動アーム部材5と、駆動軸6とを有し、駆動軸6が外力の入力で回動されて駆動アーム部材5を回動し、この駆動アーム部材5が窓体2を動かして窓枠1が形成する開口を開閉する。
【0046】
少し説明すると、支持体4は、駆動機構3を構成するのはもちろんであるが、駆動アーム部材5と駆動軸6とを保持するケース体としても機能するもので、その限りにおいて、所定の機械的強度を有するように形成される。
【0047】
そして、この支持体4にあっては、図示するところでは、適宜の肉厚の帯状に形成の基板部41が窓枠1における上框部1aと下框部1bとに架け渡される状態に連結され、この基板部41の温室H内に対向する背面のほぼ中央部部分に保持されるように所定の機械的強度を有する箱状に形成のケース部42が配設される。
【0048】
ところで、上記の基板部41は、窓枠1の内側から窓枠1における上框部1aと下框部1bとに架け渡される状態に連結されるが、このとき、窓枠1の内側には、詳しくは図示しないが、防虫ネットNが温室H内側から窓枠1全体を覆うようにあらかじめ展設される。
【0049】
このことからすると、上記の基板部41は、防虫ネットNにいわゆる裏側から重ねられるように配設されることになり、その結果、この基板部41に形成されて後述する駆動アーム部材5における先端アーム部5bを挿通させるスリット41aには、防虫ネットNの展設が避けられる。
【0050】
そして、このとき、スリット41aを避ける防虫ネットNの端部は、これが基板部41に連結される展設が避けられる。
【0051】
一方、上記のケース部42内には、駆動軸6の先端ネジ部6aと共に駆動アーム部材5の基端ウォームホイール部5aが収装されるが、この駆動アーム部材5にあっては、基端ウォームホイール部5aに一体に連設されてこのケース部42内から外部、すなわち、窓体2側に先端アーム部5bを突出させるので、上記の基板部41がこの先端アーム部5bの突出を許容する縦スリット41aを有してなる(図3参照)。
【0052】
また、駆動アーム部材5は、基端ウォームホイール部5aが支持体4におけるケース部42内に収装可能なように形成されるとし、図示するところでは、適宜の肉厚のほぼ円板状に形成されて外周部に複数となる歯5cを有すると共に、いわゆる縦置きされながら中心部がケース部42に枢着されて縦方向の回動が許容されてなる。
【0053】
そして、この駆動アーム部材5にあっては、基端ウォームホイール部5aから一体に延設されてケース部42の外に突出する先端アーム部5bを有し、この先端アーム部5bは、基板部41に形成の上記の縦スリット41aを挿通して前記した窓体2側のリンク部材22の基端部に連結される。
【0054】
ちなみに、駆動アーム部材5にあって、基端ウォームホイール部5aから一体に延設される先端アーム部5bは、要は、基端ウォームホイール部5aの回動時に同期して揺動すれば足りるから、基端ウォームホイール部5aからの延設方向は任意とされて良いが、図示するところでは、基端ウォームホイール部5aの外周側部からほぼ接線方向に延設されてなる。
【0055】
それゆえ、この駆動アーム部材5にあっては、基端ウォームホイール部5aの回動に同期して先端アーム部5bが縦方向に揺動するから、リンク部材22および補助フレーム21を介してであるが、窓体2の下辺部2bが窓枠1の下框部1bに遠近するようにして、窓体2による窓枠1が形成する開口の開閉を可能にし得る。
【0056】
なお、以上からすれば、この駆動アーム部材5にあっては、基端ウォームホイール部5aに先端アーム部5bを一体に有する構成とされるから、この駆動アーム部材5を、たとえば、打ち抜き成形で形成し得ることになり、部品コストの低減を図れる。
【0057】
そして、この駆動アーム部材5は、上記の打ち抜き成形による他、たとえば、レーザーを利用する切り出し成形や、ダイカストを含む鋳造、あるいは、鍛造で形成されても良いことはもちろんである。
【0058】
また、この駆動アーム部材5にあっては、基端ウォームホイール部5aの外周部の形成される歯5cの数は、最小限度の歯数とされて良く、図中に仮想線図で示すように歯5cの形成を省略して歯数を最小限度にする場合には、この駆動アーム部材5の軽量化を可能にし得ると共に、この駆動アーム部材5の製作を容易にし、部品コストの低減を可能にする上で有利になる。
【0059】
そして、駆動アーム部材5にあって、基端ウォームホイール部5aに形成される歯5cの数を最小限度の歯数にする場合に、基端ウォームホイール部5aにおける所定の機械的強度が保障される限りにおいて、図示しないが、基端ウォームホイール部5aに欠落部を設けることで、駆動アーム部材5における一層の軽量化を可能にし得ると共に、この駆動アーム部材5の製作を一層容易にし、また、この駆動アーム部材5における部品コストの一層の低減化を可能にし得る。
【0060】
一方、この駆動機構3にあって、駆動軸6は、上記の支持体4を形成するケース部42内に先端ネジ部6aを収装させ、この先端ネジ部6aは、同じくこの上記のケース部42内に収装の上記した駆動アーム部材5の基端ウォームホイール部5aに噛合する。
【0061】
このとき、この駆動軸6は、軸線方向が横方向とされながら窓体2のいわゆる窓面に直交する方向になるとしており、このように設定されることで、開口におけるいわゆる通気面積をいたずらに減殺しないで済む。
【0062】
そして、この駆動軸6は、先端ネジ部6aを上記のケース部42内に収装する一方で、基端入力部6bをケース部42の外、すなわち、温室H内に突出させており、このとき、先端ネジ部6aと基端入力部6bとの境界部分が上記のケース部42に回動可能に嵌着されて、特に、駆動軸6が軸線方向に移動し得ないように定着されている。
【0063】
また、この駆動軸6にあっては、基端入力部6bに二条の溝61a,61bを有するプーリ61を固定状態に有し、このプーリ61の各溝61a,61bには、牽引ロープ62,63がそれぞれ掛け回される。
【0064】
そして、各牽引ロープ62,63がそうであるが、たとえば、図示するところによれば、一方の牽引ロープ62の端部が一方の溝61aにピン62aの利用で連結され、したがって、他方の牽引ロープ63も同様とされることで、基端入力部6bが、たとえば、人力による牽引ロープ62の移動で確実に回動される。
【0065】
以上のように、上記のプーリ61に巻装される牽引ロープ62,63がピン62aの利用などで各溝61a,61bに固定状態に連結される場合には、図示しないが、この牽引ロープ62に代えて、チェーンが巻装される場合と同様に、駆動軸6の回動を確実に実現できる点で有利となる。
【0066】
なお、図示するところに代えて、プーリ61の二条の溝61a,61bにそれぞれ各牽引ロープ62,63がエンドレス状態に掛けまわされる場合には、二本となる各牽引ロープ62,63がいわゆる往復回動のいずれか一方用に設定されることで、各牽引ロープ62の耐久性を向上できると共に、仮に、いずれか一方の牽引ロープ62が破断などしても、他方の牽引ロープ62を利用でき、窓体2の開閉動作を保障できる。
【0067】
ここで、この発明の駆動機構3における操作性と、前記した特許文献1に開示の駆動機構における操作性とを比較すると、この発明の駆動機構3における操作性の方が遥かに優れることが解る。
【0068】
つまり、特許文献1に開示の駆動機構にあっては、公報中の図6に開示されているように、螺旋リブを有する操作ロッドたるねじ桿(14)を回動してこのねじ桿(14)に巻装されるスライダ(15)を昇降させ、このスライダ(15)に枢着されるリンク(10)を介して窓体の下端側を揺動させて開口を開閉する。
【0069】
それゆえ、この特許文献1に開示の駆動機構にあっては、ねじ桿(14)を多数回に亘って回動させて、スライダ(15)を大きいストロークで昇降させないと、スライダ(15)に連結されるリンク(10)の角度が大きく変わらず、したがって、窓体を速やかに揺動させて開口を開閉するのが容易でない。
【0070】
それに対して、この発明の駆動機構3にあっては、駆動軸6を一回転させていわゆる1ピッチ分駆動アーム部材5における基端ウォームホイール部5aを回動させると、その回動分先端アーム部5bが揺動し、リンク部材22を介して窓体2を直ちに揺動され、開口の開閉が速やかに実現される。
【0071】
その結果、この発明にあっては、前記した特許文献1に開示の技術に比較して、開口を開閉する窓体2の揺動を容易にして速やかに実現し得る点で有利となる。
【0072】
以上からすると、この駆動軸6は、人力で回動操作されるのが、製品コスト的にも、また、使用経済的にも有利となるが、この発明の換気装置が、たとえば、温室Hの屋根面H1に設けられる場合には、人力で牽引ロープ62を移動させて駆動軸6を回動させるのは容易でなく、このことを鑑みると、図示しないが、上記の基端入力部6bに電動モータの駆動源が連結されるとしても良く、この場合には、いわゆる遠隔操作を可能にし得る点で有利となろう。
【0073】
ちなみに、前記した特許文献1に開示の提案にあっては、駆動機構(4)の構成が複雑になるので、金属部分が多く、したがって、駆動モータなどの機械力の利用が金属磨耗を招き易くなる点で好ましくなかったが、この発明における駆動機構3は、駆動アーム部材5と駆動軸6とを有する簡素な構造となるので、駆動モータなどの機械力を利用するとしても、金属磨耗が発現され難くなる。
【0074】
以上のように形成されたこの発明による本実施の形態における換気装置にあっては、窓枠1および窓体2の構成については、この種の換気装置において汎用されているもの、たとえば、特許文献1に開示の換気装置におけるものが流用されて良く、その意味では、特許文献1に開示の換気装置における駆動機構(4)をこの発明における駆動機構3に置き換えるだけで、この発明を具現化できる利点がある。
【0075】
そして、この発明にあっては、特許文献1に開示の換気装置と比較からして、縦方向に配設される螺旋リブ付きの操作ロッドを有しなくて済むから、装置全体の嵩張りを抑制できると共に、重量の削減を可能にするから、その取り扱いを容易にし、前記した製品コストの低減化にも起因して、その汎用性の向上を期待できる。
【0076】
前記したところでは、駆動アーム部材5はともかくとして、駆動軸6が軸線方向を横方向としながら窓体2のいわゆる窓面に直交する方向になるとしたが、これに代えて、図示しないが、駆動軸6における軸線方向が横方向とされながら上記窓面に沿う方向とされも良い。
【0077】
また、前記したところでは、窓体2は、温室Hの側面H2や妻面H3を形成するビニールシートなどの展設体と縁が切れているとしたが、これに代えて、図示しないが、上記の側面H2や妻面H3を形成するビニールシートなどの展設体で温室Hの外側から覆われてなるとしても良い。
【0078】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。当該実施の形態は、図4に示すように、上記プーリ61と上記ケース部42との間に回転阻害手段7を介装した点においてのみ一実施の形態と異なり、他の構成及び効果については一実施の形態と同様であるため、同一符合を付してその詳細な説明を省略する。
【0079】
上記回転阻害手段7は、図5に示すように、駆動軸6の基端入力部6b外周に装着されてなり、ケース部42側に圧縮されながら取り付けられるコイルばね70と、このコイルばね70とプーリ61との間に介装されるワッシャ71とを備えてなり、コイルばね70でケース部42とプーリ61とを離間する方向に付勢して駆動軸6の回転を阻害する。
【0080】
上記コイルばね70は、ケース部42側からプーリ61側にかけて拡径して略円錐状に形成される円錐ばねであり、コイルばね本体70aと、このコイルばね本体70aのケース部42側端部に形成されるフック部70bとからなり、ケース部42を基板部41に固定するナット8にフック部70bを引掛けて回り止めされる。
【0081】
したがって、本実施の形態においては、風等の影響で窓体2が煽られて基端ウォームホイール部5aから先端ネジ部6aに繰り返し外力が加わることにより、駆動軸6が回転を始めることを上記回転阻害手段7で阻止することが可能となり、駆動軸6が回転を始めて窓体2の自重で開口が閉じることを防止することが可能となる。
【0082】
つまり、基端ウォームホイール部5aと先端ネジ部6aの減速比を大きくすることなく窓体2側からの力の入力により開口が閉じることを防止することが可能となる。
【0083】
また、回転阻害手段7をケース部42とプーリ61との間に介装することにより、駆動軸6の回転を容易に阻害することが可能となる。
【0084】
また、上記ワッシャ71を備えることにより、プーリ61を回転したとき、コイルばね70でプーリ61を傷つけることがない。
【0085】
また、コイルばね70を円錐ばねとすることにより、図4に示すようにコイルばね70を圧縮させたとき、コイルばね70の軸方向長さを短くすることが可能となり、小さいスペースに回転阻害手段7を収容することが可能となる。
【0086】
尚、上記回転阻害手段7の構成は、上記の限りではなく、窓体2側からの外力の入力により駆動軸6が回転を始めることを阻止し得る限りにおいて、適宜構成を選択することが可能である。
【0087】
例えば、図示しないが、回転阻害手段7を先端ネジ部6aとケース部42との間に介装しても良く、コイルばね70に替えてケース部42とプーリ61との間に摩擦を生じさせる摩擦体を介装し回転阻害手段を構成するとしても良い。
【0088】
また、コイルばね70の形状を円柱状に形成するとしても良いことは勿論であり、必ずしもワッシャ71を備える必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
ビニールハウスなどからなる温室にあって、妻面,屋根面あるいは側面などに設けられて、温室内の換気を可能にし、温室内の温度を、たとえば、育成する植物に対して最適なようにするのに向く。
【符号の説明】
【0090】
1 枠体たる窓枠
1a 上框部
1b 下框部
1c 縦框部
2 遮蔽体たる窓体
2a 一辺部たる上辺部
2b 他辺部たる下辺部
3 駆動機構
4 支持体
5 駆動アーム部材
5a 基端ウォームホイール部
5b 先端アーム部
6 駆動軸
7 回転阻害手段
6a 先端ネジ部
6b 基端入力部
21 補助フレーム
22 リンク部材
41 基板部
41a 縦スリット
42 ケース部
61 プーリ
62 牽引ロープ
70 コイルばね
71 ワッシャ
H 温室
H1 妻面
H2 側面
H3 屋根面
N 防虫ネット
P 縦方向部材たるアーチ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室の妻面,屋根面あるいは側面における開口を形成する枠体と、この枠体あるいは近傍部に枢支されながら揺動時に上記の開口を開閉する遮蔽体と、この遮蔽体の枠体に対する揺動を実現する駆動機構とを有してなる換気装置において、駆動機構が枠体あるいは近傍部に保持される支持体と、この支持体に基端ウォームホイール部が枢支されながらこの支持体の外に突出する先端アーム部を遮蔽体に連結させる駆動アーム部材と、この駆動アーム部材の基端ウォームホイール部に先端ネジ部を噛合させながら支持体に保持される駆動軸とを有し、この駆動軸が支持体の外に突出する基端入力部への外力の入力で回動されて駆動アーム部材の基端ウォームホイール部を回動し、この基端ウォームホイール部の回動で駆動アーム部材が先端アーム部を揺動させて遮蔽体を動かし、遮蔽体が上記の開口を開閉してなることを特徴とする換気装置。
【請求項2】
上記の支持体が枠体における上框部と下框部とに架け渡される状態に連結される帯状に形成の基板部と、この基板部の温室内に対向する背面のほぼ中央部部分に保持される箱状に形成のケース部とを有し、このケース部内に駆動アーム部材の基端ウォームホイール部を収装しながらこの基端ウォームホイール部を回動可能に枢支すると共にこの駆動ウォーム部に噛合する駆動軸の先端ネジ部を回動可能に収装する一方で、上記の基板部が駆動アーム部材にあって基端ウォームホイール部に連設されてケース部内から遮蔽体側に向けて突出する先端アーム部の挿通を許容すると共に、上記のケース部が駆動軸にあって先端ネジ部に連設される基端入力部の温室内側への突出を許容してなる請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
上記の駆動アーム部材が適宜の肉厚の板材からなり、ほぼ円板状に形成されて外周部に駆動軸の先端ネジ部を噛合させる複数となる歯を有する基端ウォームホイール部と、この基端ウォームホイール部に一体に連設される先端アーム部とを有してなる請求項1または請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
上記の遮蔽体が温室内に対向する内側面に縦方向に配設される補助フレームと、この補助フレームに先端部が連結されて基端部が温室内側に向けられるリンク部材とを有し、このリンク部材の基端部に駆動アーム部材の先端アーム部における先端部が枢着されてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の換気装置。
【請求項5】
上記駆動軸の回転を阻害する回転阻害手段を備えることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の換気装置。
【請求項6】
上記駆動軸が上記基端入力部にプーリを有し、上記回転阻害手段が上記ケース部と上記プーリとの間に介装されることを特徴とする請求項5に記載の換気装置。
【請求項7】
上記回転阻害手段が圧縮されながら取り付けられるコイルばねを備え、このコイルばねで上記ケース部と上記プーリとを離間する方向に付勢することを特徴とする請求項6に記載の換気装置。
【請求項8】
上記コイルばねがケース側端部に形成されるフック部を有し、上記ケース部を上記基板部に固定するナットに上記フック部を引掛けて回り止めされることを特徴とする請求項7に記載の換気装置。
【請求項9】
上記回転阻害手段が上記コイルばねと上記プーリとの間に介装されるワッシャを備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の換気装置。
【請求項10】
上記コイルばねが円錐ばねであることを特徴とする請求項7,請求項8または請求項9に記載の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−172560(P2011−172560A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3816(P2011−3816)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000221568)東都興業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】