説明

搬送チャンバ及びパーティクル付着防止方法

【課題】被処理基板にダメージを与えずに被処理基板を除電して被処理基板への静電気力によるパーティクル付着を防止することができる搬送チャンバ及びパーティクル付着防止方法を提供する。
【解決手段】基板処理システム1において、基板処理部2と大気系搬送部3との間に設けられる搬送チャンバ4は、被処理基板であるウエハWを収容するチャンバ本体51を備えている。チャンバ本体51は、給気システム52と排気装置53によって減圧環境と大気圧環境とで切り替え可能である。給気システム52は、チャンバ本体51の外側に、イオン化ガスを発生させるイオン化装置60を備えている。イオン化装置60で発生させたイオン化ガスをチャンバ本体51に供給して、チャンバ本体51に収容されたウエハWを除電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を減圧環境において処理する減圧処理部と被処理基板を大気圧環境において保持する大気系保持部との間で被処理基板を搬送する搬送チャンバ、及び、該搬送チャンバ内における被処理基板へのパーティクル付着を防止するためのパーティクル付着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハをドライエッチングするプラズマエッチング装置において、半導体ウエハを実際にエッチング処理する場である処理チャンバの内部は、常に真空環境に保持されている。一方、エッチング処理に供される半導体ウエハは、例えば、大気雰囲気において、フープ(FOUP;Front Opining Unified Pod)に収容された状態で、プラズマエッチング装置へ搬入される。
【0003】
プラズマエッチング装置は、大気雰囲気においてフープを載置する載置部を備えており、フープから半導体ウエハを取り出して処理チャンバに搬入し、逆に、処理チャンバから半導体ウエハを取り出してフープに搬入するために、真空環境と大気圧環境との間で雰囲気調節が可能な搬送チャンバが、載置部と処理チャンバとの間に配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
載置部と搬送チャンバとの間及び搬送チャンバと処理チャンバとの間にはそれぞれ、第1ゲートバルブ及び第2ゲートバルブが設けられる。搬送チャンバ内を大気圧環境にして第2ゲートバルブを閉じたまま第1ゲートバルブを開き、半導体ウエハをフープから搬送チャンバに搬入し、その後、第1ゲートバルブを閉じる。次いで、搬送チャンバを処理チャンバと略同一圧力にまで減圧し、第1ゲートバルブを閉じたまま第2ゲートバルブを開いて、半導体ウエハを搬送チャンバから処理チャンバに搬入する。第2ゲートバルブを閉じ、処理チャンバにおいてエッチング処理を行った後、先に半導体ウエハをフープから処理チャンバに搬送したときの手順と逆の手順で、半導体ウエハの搬送が行われる。
【0005】
こうした一連の処理において、搬送チャンバ内における半導体ウエハへのパーティクル付着が、半導体ウエハから製造される半導体デバイスの微細パターン化の進行に伴って大きな問題となってきている。そこで、特許文献1では、搬送チャンバ(特許文献1では「エアロック室」)の内壁に付着したパーティクルを除去するために、イオン流を発生させる除電器を搬送チャンバ内に配置している。
【0006】
ここで、除電器は、搬送チャンバにイオン流を放出し、搬送チャンバの内壁に静電気力(クーロン力)によって付着しているパーティクルを、イオン流に含まれるイオンによって除電(静電気除去)し、該内壁から離脱させる。そして、搬送チャンバ内の気体を吸引手段によって外部に排出することにより、搬送チャンバからパーティクルを排出、除去している。
【0007】
また、特許文献1では、こうして搬送チャンバの内壁に付着したパーティクルを排出、除去した後に、搬送チャンバに半導体ウエハを搬入し、半導体ウエハの上方に設けられた電極に、半導体ウエハの帯電状態を考慮した電圧を印加し、半導体ウエハに付着した帯電したパーティクルを電極に吸着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−353086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、搬送チャンバ内に配設された除電器での具体的なイオン発生方法について記載されていないが、イオン発生方法として、正イオンと負イオンとをバランスよく発生させる方法として優れているコロナ放電を用いることができると考えられ、また、紫外線(UV)やX線によるイオン発生方法を用いることもできると考えられる。
【0010】
しかしながら、コロナ放電によるイオン発生方法を用いた場合には、放電によってパーティクルが発生し、発生したパーティクルが搬送チャンバ内に残留して、搬送チャンバ内に搬入された半導体ウエハに付着するおそれがある。
【0011】
また、特許文献1では、半導体ウエハに付着したパーティクルを除去するために、別途、半導体ウエハの上空にパーティクルを静電吸着するための電極が設けられている。この場合、電極に高い電圧を印加するための電源が必要となり、装置の構成と制御が複雑になる。
【0012】
ところで、特許文献1に開示された搬送チャンバは、上記構成から明らかなように、半導体ウエハ自体を除電するものではない。例えば、半導体ウエハは、プラズマエッチング等の処理によって帯電するため、帯電した半導体ウエハが減圧環境の搬送チャンバに戻されると、その静電気力によるパーティクル付着が起こりやすい状態となっている。また、大気圧環境にある半導体ウエハを大気圧環境の搬送チャンバに搬入するときにも、半導体ウエハは帯電している可能性がある。
【0013】
ここで、半導体ウエハへのパーティクル付着については、パーティクルの粒径が小さくなるほど、静電気力による付着が支配的となる。そのため、今後のさらなる半導体デバイスの微細パターン化に対応するためには、半導体ウエハを除電し、さらに好ましくはパーティクルを除電して、半導体デバイスの生産上従来は大きな問題となっていなかったサイズの微小パーティクルの半導体ウエハへの付着を防止する必要がある。
【0014】
しかし、特許文献1に開示された技術では、仮に、除電器によって発生させたイオンを半導体ウエハの除電に用いたとしても、コロナ放電によるイオン発生方法を用いた場合には、放電によって発生したパーティクルが半導体ウエハに付着したり、低圧状態において放電制御が困難になったりするという問題があり、また、紫外線(UV)やX線によるイオン発生方法を用いた場合には、半導体ウエハに紫外線等が照射されて半導体ウエハがダメージを受けるおそれがある。
【0015】
本発明の目的は、被処理基板にダメージを与えることなく被処理基板を除電して被処理基板へのパーティクル付着を防止することができる搬送チャンバ及びパーティクル付着防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1記載の搬送チャンバは、減圧環境において被処理基板に所定の処理を施す減圧処理部と被処理基板を大気圧環境において保持する大気系保持部との間に設けられ、前記減圧処理部と前記大気系保持部との間で前記被処理基板を搬送する搬送チャンバであって、前記被処理基板を収容するチャンバ本体と、前記チャンバ本体の内部を前記減圧環境にするために前記チャンバ本体からの排気を行う排気装置と、前記チャンバ本体の内部を前記大気圧環境にするために所定のガスを前記チャンバ本体に供給するガス供給装置と、前記所定のガスをイオン化するイオン化装置を前記チャンバ本体の外部に具備し、前記イオン化装置において発生させたイオン化ガスを前記チャンバ本体に供給するイオン化ガス供給装置と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の搬送チャンバは、請求項1記載の搬送チャンバにおいて、前記イオン化装置は前記ガス供給装置に取り付けられており、前記ガス供給装置によって前記チャンバ本体に供給されるガスが、前記イオン化装置によってイオン化されて前記チャンバ本体に供給されることを特徴とする。
【0018】
また上記目的を達成するために、請求項3記載のパーティクル付着防止方法は、減圧環境において被処理基板に所定の処理を施す減圧処理部と被処理基板を大気圧環境において保持する大気系保持部との間に設けられ、内部が減圧環境と大気圧環境とで切り替え可能なチャンバ本体を備えた、前記減圧処理部と前記大気系保持部との間で被処理基板を搬送するための搬送チャンバを用いて前記減圧処理部と前記大気系保持部との間で前記被処理基板を搬送する際に、前記被処理基板へのパーティクル付着を防止する方法であって、前記チャンバ本体に被処理基板を収容する収容ステップと、前記チャンバ本体の外部で発生させたイオン化ガスを前記チャンバ本体に供給して前記被処理基板を除電するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項4記載のパーティクル付着防止方法は、請求項3記載のパーティクル付着防止方法において、前記収容ステップは、前記被処理基板が前記減圧処理部から前記チャンバ本体へ搬入されることにより行われ、前記除電ステップでは、前記チャンバ本体からの排気を伴う前記チャンバ本体への前記イオン化ガスの供給を行うことによって、前記チャンバ本体を前記減圧環境から前記大気圧環境へと移行させることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載のパーティクル付着防止方法は、請求項3記載のパーティクル付着防止方法において、前記被処理基板が前記大気系保持部から前記チャンバ本体へ搬入されることにより行われ、前記除電ステップでは、前記チャンバ本体に前記イオン化ガスを供給しながら前記チャンバ本体からの排気を行うことによって、前記チャンバ本体の内部を前記大気圧環境から前記減圧環境へと移行させることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載のパーティクル付着防止方法は、請求項5記載のパーティクル付着防止方法において、除電ステップにおいて、減圧と昇圧とを繰り返すことによって前記チャンバ本体の内部を前記大気圧環境から前記減圧環境へと移行させることを特徴とする。
【0022】
請求項7記載のパーティクル付着防止方法は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載のパーティクル付着防止方法において、除電ステップでは、前記イオン化ガスとして、前記チャンバ本体の圧力を調整するために前記チャンバ本体に供給されるパージガスをイオン化させたガスを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の搬送チャンバ及び請求項3記載のパーティクル付着防止方法によれば、被処理基板とチャンバ本体の内部に存在するパーティクルとをイオン化ガスによって除電することができるため、被処理基板への静電気力によるパーティクル付着を防止することができる。
【0024】
請求項2記載の搬送チャンバによれば、ガス供給装置を利用してイオン化ガスを発生させることができるため、装置構成が複雑になることを抑制することができ、また、既存のガス供給装置にイオン化装置を取り付けることによって、簡単にイオン化ガス供給装置を構築することができる。
【0025】
請求項4記載のパーティクル付着防止方法によれば、減圧処理部での処理が終了した被処理基板が除電されることによって、次工程への搬送過程において、被処理基板への静電気力によるパーティクル付着を防止することができる。
【0026】
請求項5記載のパーティクル付着防止方法によれば、減圧処理部に搬入される被処理基板への静電気力によるパーティクル付着が防止されるため、減圧処理部での処理におけるパーティクルの影響を小さく抑えることができる。
【0027】
請求項6記載のパーティクル付着防止方法によれば、大気圧環境から減圧環境へと移行する間に一時的な昇圧を行うことで、チャンバ本体の内部全体にイオン化ガスを拡散させて、チャンバ本体の内部に存在するパーティクルの除電を行うことができる。こうして除電されたパーティクルは次の減圧時にチャンバ本体から排出することができるため、チャンバ本体の内部の清浄度が高められる。
【0028】
請求項7記載のパーティクル付着防止方法によれば、パージガスの供給系の他にイオン化ガスの供給系を設ける必要がないため、簡単な構成を有する装置を用いて被処理基板を除電し、被処理基板への静電気力によるパーティクル付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る搬送チャンバを備えた基板処理システムの概略構成を示す垂直断面図である。
【図2】搬送チャンバの第1の圧力調整パターンを模式的に示す図である。
【図3】搬送チャンバの第2の圧力調整パターンを模式的に示す図である。
【図4】搬送チャンバの第3の圧力調整パターンを模式的に示す図である。
【図5】搬送チャンバの第4の圧力調整パターンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送チャンバを備えた基板処理システムの概略構成を示す垂直断面図である。
【0032】
基板処理システム1は、被処理基板としての半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを1枚ずつプラズマエッチング処理(以下「エッチング処理」という)する、所謂、枚葉処理タイプのエッチング処理装置として構成されている。
【0033】
図1に示されるように、この基板処理システム1は、ウエハWにエッチング処理を施す基板処理部2と、所定枚数のウエハWを格納する容器であるフープ40に対してウエハWを搬入出するための大気系搬送部3、基板処理部2と大気系搬送部3との間に配置され、基板処理部2と大気系搬送部3との間でウエハWを搬送する搬送チャンバ4とを備えている。
【0034】
大気系搬送部3は、所定数のフープ40を載置する載置台41と、載置台41に載置されたフープ40に対してウエハWの搬入出を行うためのローダモジュール42とを有している。
【0035】
フープ40は、その開閉扉(図示せず)をローダモジュール42側に向けて載置台41に載置される。ローダモジュール42において載置台41に載置されるフープ40と対面する壁面には、フープ40の開閉扉(図示せず)と係合可能なシャッタ(図示せず)により開閉される窓部(図示せず)が設けられている。フープ40の開閉扉と上記シャッタとを一体的に移動させて上記窓部を開口することにより、フープ40の内部とローダモジュール42の内部とが連通する。
【0036】
フープ40は、一般的に、25枚のウエハWを水平姿勢で等間隔に保持する構造となっている。ローダモジュール42は直方体状の箱状物であり、その内部においてウエハWを搬送するために、ローダモジュール42の内部には、フープ40の内部にアクセス可能なスカラタイプの搬送装置43が設けられている。
【0037】
搬送装置43は、フープ40内でのウエハWの収容状態(正常に収容されているウエハWの位置、ウエハWの段ずれや飛び出し等の異常)及び枚数を確認するマッピングを行うために、屈伸可能に構成された多関節腕状のマッピングアーム46を備えている。マッピングアーム46の先端には、このようなマッピングを行うセンサとして、例えば、半導体レーザ等を用いた非接触式センサ(図示せず)を備えている。
【0038】
マッピングアーム46の基端は、搬送装置43の基部47から立設された支柱48に沿って昇降する昇降台49に連結されており、上記非接触センサをフープ40から所定距離に位置させた状態で、昇降台49を駆動してマッピングアーム46を上昇又は下降させることにより、マッピングを行う。
【0039】
搬送装置43は、基端が昇降台49に連結され、屈伸可能に構成された多関節構造を有する搬送アーム44を備えている。搬送アーム44は、その先端に設けられたピック45でウエハWを保持することができる構造となっており、マッピングの結果に従ってフープ40内の所定の高さにアクセスし、フープ40内のウエハWを搬出したり、保持したウエハWをフープ40に搬入したりする。
【0040】
支柱48は旋回可能であり、これにより、搬送アーム44のピック45は、図1に示されているフープ40側のみでなく、搬送チャンバ4側にもアクセスできるようになっており、これにより、大気系搬送部3と搬送チャンバ4との間でのウエハWを受け渡し可能にしている。
【0041】
搬送チャンバ4の構成については後に詳細に説明することとし、ここで、基板処理部2について簡単に説明する。
【0042】
基板処理部2には、ウエハWをエッチング処理する処理室を構成する処理チャンバ10が配置されている。処理チャンバ10の内部には、ウエハWを載置するステージとして、また、プラズマを発生させる電極として機能するサセプタ11が設けられており、また、サセプタ11に載置されたウエハWに対して処理ガスを放出するシャワーヘッド33が、処理チャンバ10の内部の天井近傍に配置されている。
【0043】
処理チャンバ10の底壁には排気口12が形成されており、この排気口12に取り付けられた真空ポンプ(図示せず)等の減圧手段を用いて、処理チャンバ10を減圧環境に維持することができるようになっている。
【0044】
サセプタ11には、高周波電源18が整合器(図示せず)を介して接続されており、高周波電源18は、所定の高周波電力をサセプタ11に印加する。こうしてサセプタ11は下部電極として機能する。
【0045】
また、サセプタ11の内部上方には、ウエハWを静電吸着力で吸着するための導電膜からなる電極板13が埋設されており、電極板13には直流電源(図示せず)が電気的に接続されている。電極板13に直流電圧が印加されることによって発生するクーロン力又はジョンソン・ラーベック(Johnsen-Rahbek)力によって、ウエハWは、サセプタ11の上面に吸着保持される。
【0046】
なお、サセプタ11は、フォーカスリング、冷却機構、ウエハWの裏面へのガス供給機構、サセプタ11に対するウエハWの搬入出のためのウエハ昇降機構等を備えているが、これらについての説明は省略する。
【0047】
シャワーヘッド33は接地(アース)されており、シャワーヘッド33とサセプタ11とで一対の電極が構成され、シャワーヘッド33は接地電極として機能する。シャワーヘッド33にはガス供給管38を通して処理ガスやNガス等のガスが供給され、シャワーヘッド33の下面に形成された多数のガス通気孔(図示せず)からサセプタ11に載置されたウエハWに向けて、上記ガスが放出される。シャワーヘッド33からのガス放出量は、ガス供給管38に設けられたMFC(Mass Flow Controller)39により調節される。
【0048】
シャワーヘッド33から一定量の処理ガスをウエハWに向けて放出しながら、処理チャンバ10を所定の減圧環境に維持し、同時に、サセプタ11に所定の電圧を印加することによって、サセプタ11とシャワーヘッド33との間に処理ガスのプラズマを発生させる。プラズマ中のイオンは、サセプタ11とシャワーヘッド33との間の電界によってウエハWへ誘引され、ウエハWにエッチング処理が施される。
【0049】
次に、搬送チャンバ4の構成について詳細に説明する。
【0050】
搬送チャンバ4は、内部を大気圧環境と減圧環境とで切り替え可能に構成されたチャンバ本体51を有している。なお、「搬送チャンバ4」とは、チャンバ本体51とこれに付随して配設されている各種装置等を含むものとする。
【0051】
チャンバ本体51と処理チャンバ10との間にはゲートバルブ5が、チャンバ本体51とローダモジュール42の間にはゲートバルブ6が、それぞれ設けられている。ゲートバルブ6は、チャンバ本体51が大気圧環境となっている状態で開かれ、このとき、大気系搬送部3と搬送チャンバ4との間(ローダモジュール42とチャンバ本体51との間)でのウエハWの搬送が可能になる。一方、ゲートバルブ6を閉じた状態とすることで、ローダモジュール42を大気圧環境に維持しながら、チャンバ本体51を減圧環境に維持することができる。
【0052】
ゲートバルブ5は、処理チャンバ10が一定の減圧環境に常時維持されているため、チャンバ本体51が減圧環境となっている状態で開かれ、このとき、基板処理部2と搬送チャンバ4との間(処理チャンバ10とチャンバ本体51との間)でのウエハWの搬送が可能になる。ゲートバルブ5は、基板処理部2と搬送チャンバ4との間でのウエハWの搬送時以外は、閉じられた状態に維持される。
【0053】
チャンバ本体51の内部には、屈伸及び旋回自在に構成された移載アーム50(搬送装置)が配設されている。移載アーム50としては、複数の腕部からなるスカラタイプの搬送アームを用いることができ、その先端に取り付けられたピック54がウエハWを載置保持する。ゲートバルブ6を開いた状態で、ピック54がローダモジュール42に進入し、ピック45とピック54との間でウエハWの受け渡しが行われる。また、ゲートバルブ5を開いた状態で、ピック54が処理チャンバ10に進入し、サセプタ11とピック54との間でウエハWの受け渡しが行われる。なお、移載アーム50は、フロッグレッグタイプやダブルアームタイプのものであってもよい。
【0054】
チャンバ本体51の底壁には排気口59が設けられており、チャンバ本体51を減圧環境とするための排気装置53が排気口59に取り付けられている。排気装置53は、排気口59に取り付けられた排気管に設けられた真空ポンプ57と制御バルブ58とを備えている。排気装置53の排気量は、真空ポンプ57の最大排気能力を超えない限りにおいて、制御バルブ58の絞りを制御することによって、連続的かつ任意に変化させることができる。なお、図1には排気口59は1箇所のみ示されているが、排気口59は複数箇所に設けられている。
【0055】
チャンバ本体51には、チャンバ本体51を大気圧環境とするためのガス(パージガス)をチャンバ本体51に供給するガス供給装置として機能し、かつ、以下に説明する通り、パージガスをイオン化してイオン化ガスを生成し、生成したイオン化ガスをチャンバ本体51に供給するイオン化ガス供給装置として機能する、給気システム52が設けられている。
【0056】
給気システム52は、ドライエアやNガス、Arガス、Oガス等のガスから1種又は複数種のガスを選択し、制御バルブ56によって各種ガスの流量を調節してチャンバ本体51に供給するガス供給ライン55と、チャンバ本体51の外側に配置され、ガス供給ライン55を通して供給されるガスをイオン化してイオン化ガスを発生させるイオン化装置60と、イオン化装置60からガス供給ライン55を通して送出されるイオン化ガスをチャンバ本体51の内部で放出するためのブレイクフィルタ61とを備えている。
【0057】
チャンバ本体51へのガス供給量の調節を司る制御バルブ56と、チャンバ本体51からの排気量の調節を司る制御バルブ58とを適切に制御することにより、チャンバ本体51の内部圧力の調節(減圧速度調節、昇圧速度調節、圧力維持調節)が自在に行われる。
【0058】
イオン化装置60は、ガス供給ライン55によって供給されるガスを、コロナ放電やUV照射、X線照射等の各種方法によってイオン化し、イオン化ガスを生成させる。「イオン化ガス」とは、ガスの分子の一部がイオン化された状態でガス全体の中に包含されているガスを指す。イオン化装置60は、複数のイオン化方法の実行手段を備えていてもよく、ガス種に応じてイオン化方法が適宜選択されるように構成されていてもよい。イオン化装置60は、生成させたイオンを効率よくウエハWへの到達させるために、好ましくは、チャンバ本体51の外側においてチャンバ本体51に近接して配置される。
【0059】
ブレイクフィルタ61は、例えば、長さが200mmの網状金属製フィルタであり、ガス放出面積を大きくすることができるので、放出するガスの流れを減速することができる。これにより、広範囲にわたって均一にガスを放出することができ、チャンバ本体51の内部におけるパーティクルの巻き上げを防止することができる。また、ブレイクフィルタ61を用いることで、チャンバ本体51を昇圧する際に、圧力を均一に上昇させることができる。
【0060】
図1に示されるように、ブレイクフィルタ61をウエハWの上空(チャンバ本体51の内部天井近傍)に設け、チャンバ本体51の底壁に排気口59を設けることにより、後述するように、ブレイクフィルタ61からガスを放出させながら排気口59からの排気を行った際に、ブレイクフィルタ61から放出されたイオン化ガスが、ウエハWに触れた後に排気口59へ流れるように、イオン化ガスの流れを形成することができる。これにより、イオン化ガスを効率的にウエハWに供給して、ウエハWの除電を促進することができる。
【0061】
なお、チャンバ本体51の内部におけるガス放出には、ブレイクフィルタ61を必ず用いなければならないわけではなく、基板処理部2で用いられているシャワーヘッド33のように、ウエハWの上面に向けてガスを放出する構造のものを用いてもよい。ブレイクフィルタ61のようにチャンバ本体51の内部においてイオン化ガスを放出するために用いられる部材は、イオン化ガスに含まれるイオンの中性分子への変化が起こりにくい材質からなり、また、イオン寿命が長く維持される構造を有するものが好適である。
【0062】
上記の通りに構成された基板処理システム1は、制御部(図示せず)よってコンピュータ制御されており、ウエハWに対して所定のレシピに従う処理を施すためのプログラム(ソフトウェア)が実行されることにより、基板処理システム1を構成する各種の可動部が稼動して、ウエハWが処理される。
【0063】
次に、搬送チャンバ4におけるウエハWの搬送過程において、ウエハWを除電し、ウエハWへのパーティクル付着を防止する方法について説明する。
【0064】
最初に、ウエハWを大気系搬送部3から基板処理部2へ搬送する際のウエハWへのパーティクル付着防止方法について説明する。
【0065】
図2は、搬送チャンバの第1の圧力調整パターンを示す模式図である。図2には、チャンバ本体51の圧力変化と、給気システム52と排気装置53の各制御バルブ56,58のオン(ON)/オフ(OFF)のタイミングとが示されている。
【0066】
制御バルブ56は、ガス流量を連続的かつ任意に変化させることができるが、本実施の形態では、一定流量でガスを流す「オン状態」と、ガスを流さない「オフ状態」との間での切り替えのみを行うこととする。これと同様に、制御バルブ58が「オン状態」のときに排気が行われ、「オフ状態」では排気が行われないものとする。また、以下に説明する全ての圧力調整パターン(図2〜図5)について、イオン化装置60は、制御バルブ56がオフ状態のときには動作せず(オフ状態)、制御バルブ56がオン状態のときに動作してイオン化ガスを発生させる(オン状態)ものとする。
【0067】
最初に、給気システム52によって、例えば、Nガスがパージガスとしてチャンバ本体51に供給されており、これによって、チャンバ本体51は大気圧環境に維持されているものとする。この状態でゲートバルブ6が開かれて、ウエハWがピック45からピック54へ移載され、その後、ゲートバルブ6が閉じられる。ゲートバルブ6が閉じられる時間tまでの間、排気装置53の真空ポンプ57は動作しているが、制御バルブ58はオフ状態となっており、そのため、チャンバ本体51が減圧されることはない。
【0068】
イオン化装置60は、時間tまでの間、オン状態となっている。この場合において、チャンバ本体51の内部圧力がローダモジュール42の内部圧力よりも、若干、陽圧となるようにしておくと、ローダモジュール42からチャンバ本体51への空気の流入に起因するパーティクルの進入を防ぐことができる。また、イオン化ガスがゲートバルブ6を通してチャンバ本体51からローダモジュール42へと流入し、さらにフープ40内に流入することによって、ピック45に保持されたウエハWやフープ40内のウエハWが除電される効果が期待できる。但し、この効果はイオン化ガスにおけるイオンの寿命(イオンから中性の分子になるまでの時間)に依存する。
【0069】
ピック54に保持されたウエハWは帯電している可能性がある。そこで、チャンバ本体51の内部においてウエハWを除電し、静電気力によるウエハWへのパーティクル付着を防止するために、以下の処理を行う。
【0070】
ゲートバルブ6が閉じられると、速やかに、移載アーム50は、大気系搬送部3側から基板処理部2側へのウエハWの搬送(ローダモジュール42から処理チャンバ10へのウエハWの搬送)を開始する。ウエハWの搬送速度は、チャンバ本体51の圧力がゲートバルブ5を開くことができる目標圧力Pまで下がる時間tに合わせて設定される。ウエハWの搬送は、一定速度で連続的に行われてもよいし、チャンバ本体51の中央部等で一時停止する状態を設けることにより行われてもよい。
【0071】
また、ゲートバルブ6が閉じられると、制御バルブ58が速やかにオン状態となって排気が始まり、チャンバ本体51の減圧が始まる。制御バルブ56はオン状態に維持されており、チャンバ本体51へのイオン化ガスの供給は引き続き行われている。当然に、排気装置53による排気量は、給気システム52による給気量よりも大きい。
【0072】
チャンバ本体51の減圧中は、チャンバ本体51の内部において、イオン化ガスが、ブレイクフィルタ61が配設されている天井側から、排気口59が設けられている底壁に向かって流れやすくなる。そのため、イオン化ガスを効率的にウエハWに触れさせることができ、ウエハWの表面電荷とイオンの電荷との結合によって、ウエハWの除電が進行する。こうして、ウエハWへの静電気力によるパーティクル付着を防止することができる。
【0073】
また、チャンバ本体51の内部に存在する帯電したパーティクルが、イオン化ガスに含まれるイオンによって除電される。こうして除電されたパーティクルは、ウエハWやチャンバ本体51の内部部材に対して付着し難くなり、また、排気されやすくなる。こうして、ウエハWへのパーティクル付着を防止することができる。
【0074】
続いて、チャンバ本体51が、予め定められた圧力Pに達した時間tで、制御バルブ58をオフ状態にする。一方、制御バルブ56はON状態に維持され、チャンバ本体51へのイオン化ガスの供給は続けられている。そのため、チャンバ本体51の圧力が上昇し始める。
【0075】
このとき、イオン化ガスがチャンバ本体51の内部おいて均一に拡散し、チャンバ本体51の内部において浮遊しているパーティクルやチャンバ本体51の内壁に静電気力によって付着しているパーティクルを除電することができる。こうして除電されたパーティクルは、次にチャンバ本体51を減圧する際に、排気口59から排出されやすくなる。また、イオン化ガスによってウエハWやチャンバ本体51の内部部材を除電することができ、これらへのパーティクル付着を防止することができる。
【0076】
チャンバ本体51が予め定められた圧力Pに達した時間tで、制御バルブ58が再びオン状態とされ、チャンバ本体51の減圧が再開される。圧力Pを低く設定するとスループットの低下が抑制され、高く設定するとチャンバ本体51に供給されるイオン化ガス量が多くなって、上記したパーティクルの除電効果等が大きくなる。圧力Pは、ウエハWの帯電状態を考慮して、適宜、適切な値に設定される。
【0077】
時間t以降は、チャンバ本体51の減圧と昇圧とを図2に示す通りに交互に設けてウエハWの除電を進め、最終的な目標圧力Pに到達した時間tで、制御バルブ56,58及びイオン化装置60をオフ状態とし、チャンバ本体51の圧力を維持する。時間tにおいて、ウエハWはゲートバルブ5に近接した位置にまで搬送されており、ゲートバルブ5を開けば、移載アーム50はピック54が保持したウエハWを処理チャンバ10に速やかに搬入できる状態となっていることが好ましい。これにより、搬送チャンバ4における搬送処理のスループットを高めることができる。
【0078】
時間t後、速やかにゲートバルブ5が開かれ、移載アーム50が処理チャンバ10の内部にアクセスして、ピック54に保持されたウエハWはサセプタ11に載置され、ゲートバルブ5が閉じられた後に、処理チャンバ10でのウエハWのエッチング処理が開始される。
【0079】
次に、搬送チャンバ4の第2の圧力調整パターンについて、図3に示した模式図を参照して説明する。この第2の圧力調整パターンも、大気系搬送部3から基板処理部2へウエハWを搬送する際に用いられるものである。図3には、チャンバ本体51の圧力変化と、給気システム52と排気装置53の各制御バルブ56,58のオン/オフのタイミングとが示されている。
【0080】
図2と図3とを対比すると明らかなように、図2に示される第1の圧力調整パターンと図3に示される第2の圧力調整パターンとでは、給気システム52での制御バルブ56のオン状態/オフ状態の切り替えに相違点がある。すなわち、第1の圧力調整パターンでは、常時、チャンバ本体51にイオン化ガスが供給されるが、第2の圧力調整パターンでは、チャンバ本体51の減圧時にチャンバ本体51へのイオン化ガスの供給が停止される。
【0081】
これにより、第2の圧力調整パターンにおける減圧時の減圧速度は、第1の圧力調整パターンにおける減圧時の減圧速度よりも速くなる。図2,3から明らかなように、第2の圧力調整パターンでは、減圧を一時停止する圧力(例えば、圧力P)と、昇圧を中止する圧力(例えば、圧力P)を、第1の圧力調整パターンの場合と同じとしている。そのため、第2の圧力調整パターンでの目標圧力Pへの到達時間t13は、第1の圧力調整パターンの場合の到達時間tよりも早くなっており、スループットが向上している。
【0082】
この第2の圧力調整パターンでも、大気圧から目標圧力Pへの減圧過程に昇圧期間(例えば、時間t11〜t12間)を設けているため、チャンバ本体51の内部でイオン化ガスを拡散させて、ウエハWの除電を行うことができる。なお、この第2の圧力調整パターンでは、減圧速度が速くなることによって生じる時間の短縮分を、イオン化ガスの供給量を増やすための時間に充ててもよい。
【0083】
続いて、ウエハWを基板処理部2から大気系搬送部3へ搬送する際のウエハWへのパーティクル付着防止方法について説明する。
【0084】
図4は、搬送チャンバの第3の圧力調整パターンを示す模式図である。図4には、チャンバ本体51の圧力変化と、給気システム52と排気装置53の各制御バルブ56,58のオン(ON)/オフ(OFF)のタイミングとが示されている。
【0085】
最初に、チャンバ本体51は、ゲートバルブ5を開くことができる圧力Pの減圧環境に維持されているものとする。ゲートバルブ5が開かれて、移載アーム50がサセプタ11にアクセスしてサセプタ11からウエハWを受け取り、ウエハWがチャンバ本体51に搬入されると、ゲートバルブ5が閉じられる。
【0086】
ゲートバルブ5が閉じられる時間Tまでの間、制御バルブ56,58は共にオフ状態となっている。但し、制御バルブ58は、チャンバ本体51が一定の減圧状態に維持されるように、例えば間欠的にオン状態とされていてもよい。
【0087】
移載アーム50のピック54が保持したウエハWは、基板処理部2でのエッチング処理によって帯電している可能性が高い。そこで、チャンバ本体51の内部においてウエハWを除電し、ウエハWへの静電気力によるパーティクル付着を防止するために、以下の処理を行う。
【0088】
ゲートバルブ5が閉じられると、移載アーム50は、速やかに基板処理部2側から大気系搬送部3側へのウエハWの搬送を開始する。ここでのウエハWの搬送方法は、先に説明した、大気系搬送部3側から基板処理部2側へのウエハWの搬送方法と同様とすることができる。
【0089】
時間Tにおいて、制御バルブ56(及びイオン化装置60)がオン状態となって、チャンバ本体51へのイオン化ガスの供給が開始される。また、時間T以降は、制御バルブ58はオフ状態に維持される。これにより、チャンバ本体51の圧力が上昇する。チャンバ本体51の内部を拡散したイオン化ガスに含まれるイオンの電荷とウエハWの表面電荷とが結合することでウエハWは除電され、ウエハWへの静電気力によるパーティクル付着が防止されるようになる。
【0090】
チャンバ本体51が大気圧となる時間Tにおいて、ウエハWはゲートバルブ6に近接した位置にまで搬送されており、ゲートバルブ6を開けば、移載アーム50はピック54が保持したウエハWをローダモジュール42に速やかに搬入できる状態となっていることが好ましい。これにより、搬送チャンバ4における搬送処理のスループットを高めることができる。
【0091】
時間T後、速やかにゲートバルブ6が開かれ、移載アーム50がローダモジュール42の内部にアクセスする。ピック54に保持されたウエハWは、搬送アーム44のピック45に受け渡された後、フープ40内の所定位置に収容される。
【0092】
次に、搬送チャンバ4の第4の圧力調整パターンについて、図5に示した模式図を参照して説明する。この第4の圧力調整パターンも、基板処理部2から大気系搬送部3へウエハWを搬送する際に用いられるものである。図5には、チャンバ本体51の圧力変化と、給気システム52と排気装置53の各制御バルブ56,58のオン/オフのタイミングとが示されている。
【0093】
移載アーム50によってウエハWが処理チャンバ10から取り出され、ゲートバルブ5が閉じられると、移載アーム50によるウエハWの搬送が開始される。ゲートバルブ5が閉じられた時間Tにおいて、制御バルブ56(及びイオン化装置60)がオン状態となり、チャンバ本体51へのイオン化ガスの供給が開始される。こうしてチャンバ本体51の内部を拡散するイオン化ガスによって、ウエハWの除電が開始される。
【0094】
図5に示されるように、チャンバ本体51が予め定められた圧力P11に達した時間T11において、制御バルブ58をオン状態とすることで(真空ポンプ57は常時稼動中である)、チャンバ本体51の圧力変化を昇圧から減圧へと転じさせる。これにより、イオン化ガスはチャンバ本体51の内部において天井側から底壁側へと向かって流れ、イオン化ガスに含まれるイオンがウエハWに触れやすくなる。こうして、ウエハWの除電を効果的に進めることができる。
【0095】
続いて、チャンバ本体51が予め定められた圧力P12にまで下がった時間T12において、制御バルブ58をオフ状態とすることで、チャンバ本体51の昇圧を再開させる。圧力P12を高く(但し、P11>P12)設定するとスループットが向上し、圧力P12を低く設定するとイオン化ガスによる除電効果が大きくなる。圧力P12は、ウエハWの帯電状態を考慮して、適宜、適切な値に設定される。
【0096】
時間T12以降、チャンバ本体51の昇圧と減圧とを図5に示す通りに交互に設けて、最終的に大気圧とする。大気圧に到達した時間T13以降、制御バルブ58はオフ状態で、制御バルブ56とイオン化装置60はオン状態で、それぞれ維持される。
【0097】
時間T13後にゲートバルブ6が開かれて、移載アーム50のピック54が保持したウエハWは、ローダモジュール42に搬入されて搬送アーム44のピック45に受け渡された後、フープ40内の所定位置に収容される。
【0098】
上述の通り、本発明によれば、ウエハWとチャンバ本体51の内部に存在するパーティクルとをイオン化ガスによって除電することができるため、ウエハWへの静電気力によるパーティクル付着を防止することができる。給気システム52を、チャンバ本体51に供給するパージガスを利用してイオン化ガスを発生させる構成とすることで、装置構成が簡単になる。また、既存の基板処理システムにおけるパージガスの供給装置にイオン化装置を取り付けることによって、容易に給気システム52を構築することができる。さらに、チャンバ本体51の圧力変動を利用して、除電されたパーティクルをチャンバ本体51から排出することにより、チャンバ本体51の内部の清浄度が高められ、ウエハWへの静電気力によるパーティクル付着をより効果的に防止することができるようになる。
【0099】
本発明を基板処理部2での処理が終了したウエハWの除電に用いることによって、フープ40に収容されて次工程へ搬送された後のウエハWに対して、静電気力によるパーティクル付着が起こり難くなる。一方、基板処理部2に搬入されるウエハWを除電してウエハWへの静電気力によるパーティクル付着を防止することによって、処理チャンバでの処理におけるパーティクルの影響を小さく抑えることができる。
【0100】
さらに、チャンバ本体51を大気圧環境から減圧環境へと移行させる間に一時的な昇圧を行うと、チャンバ本体51の内部全体にイオン化ガスが拡散し、これによってチャンバ本体51の内部に存在するパーティクルの除電を行うことができる。こうして除電されたパーティクルは次の減圧時にチャンバ本体51から排出することができるため、チャンバ本体51の内部の清浄度を高めることができる。この効果は、減圧環境から大気圧環境へと移行する際に、一時的な減圧を行うことによっても得ることができる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、チャンバ本体51にパージガスを供給する給気システム52に、除電システムとしての機能を付与させて基板処理システム1を構成したが、パージガスの供給系とイオン化ガスの供給系とが、完全に分かれている構成としてもよい。
【0102】
また、上記説明では、チャンバ本体51を大気圧環境から減圧環境へ移行するための圧力調整パターンとして、減圧と昇圧とを交互に行うパターンを取り上げたが、イオン化ガスをチャンバ本体51に供給しながら、昇圧を行わずに連続的に減圧するパターンでも、ウエハWを適切に除電してウエハWへの静電気力によるパーティクル付着を防止することができ、また、スループットを高めることができる。
【0103】
一方、チャンバ本体51を減圧環境から大気圧環境へ移行するための圧力調整パターンとして、イオン化ガスを連続して供給しながら昇圧と減圧とを交互に組み合わせたパターンを取り上げたが、減圧時にはイオン化ガスのチャンバ本体51への供給を停止するようにしてもよい。
【0104】
さらに、上記説明では、基板処理部2はウエハWにエッチング処理を施すとしたが、基板処理部はウエハWに成膜処理や拡散処理を行うものであってもよい。さらに、上記説明では、被処理基板(除電対象物)として半導体ウエハを取り上げたが、被処理基板はこれに限定されるものではなく、LCD(Liquid Crystal Display)等のFPD(Flat Panel Display)用基板やフォトマスク、CD基板、プリント基板等の各種基板であってもよい。
【0105】
また、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、コンピュータ(例えば、制御部)に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0106】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した各実施の形態の機能を実現することになり、プログラムコード及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0107】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムコードを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムコードは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0108】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0109】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0110】
上記プログラムコードの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 基板処理システム
2 基板処理部(減圧処理部)
3 大気系搬送部(大気系保持部)
4 搬送チャンバ
5,6 ゲートバルブ
10 処理チャンバ
11 サセプタ
40 フープ
42 ローダモジュール
50 移載アーム
51 チャンバ本体
52 給気システム
53 排気装置
56 制御バルブ
57 真空ポンプ
58 制御バルブ
59 排気口
60 イオン化装置
61 ブレイクフィルタ
W (半導体)ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧環境において被処理基板に所定の処理を施す減圧処理部と被処理基板を大気圧環境において保持する大気系保持部との間に設けられ、前記減圧処理部と前記大気系保持部との間で前記被処理基板を搬送する搬送チャンバであって、
前記被処理基板を収容するチャンバ本体と、
前記チャンバ本体の内部を前記減圧環境にするために前記チャンバ本体からの排気を行う排気装置と、
前記チャンバ本体の内部を前記大気圧環境にするために所定のガスを前記チャンバ本体に供給するガス供給装置と、
前記所定のガスをイオン化するイオン化装置を前記チャンバ本体の外部に具備し、前記イオン化装置において発生させたイオン化ガスを前記チャンバ本体に供給するイオン化ガス供給装置と、
を備えることを特徴とする搬送チャンバ。
【請求項2】
前記イオン化装置は前記ガス供給装置に取り付けられており、
前記ガス供給装置によって前記チャンバ本体に供給されるガスが、前記イオン化装置によってイオン化されて前記チャンバ本体に供給されることを特徴とする請求項1記載の搬送チャンバ。
【請求項3】
減圧環境において被処理基板に所定の処理を施す減圧処理部と被処理基板を大気圧環境において保持する大気系保持部との間に設けられ、内部が減圧環境と大気圧環境とで切り替え可能なチャンバ本体を備えた、前記減圧処理部と前記大気系保持部との間で被処理基板を搬送するための搬送チャンバを用いて前記減圧処理部と前記大気系保持部との間で前記被処理基板を搬送する際に、前記被処理基板へのパーティクル付着を防止する方法であって、
前記チャンバ本体に被処理基板を収容する収容ステップと、
前記チャンバ本体の外部で発生させたイオン化ガスを前記チャンバ本体に供給して前記被処理基板を除電するステップと、
を有することを特徴とするパーティクル付着防止方法。
【請求項4】
前記収容ステップは、前記被処理基板が前記減圧処理部から前記チャンバ本体へ搬入されることにより行われ、
前記除電ステップでは、前記チャンバ本体からの排気を伴う前記チャンバ本体への前記イオン化ガスの供給を行うことによって、前記チャンバ本体を前記減圧環境から前記大気圧環境へと移行させることを特徴とする請求項3記載のパーティクル付着防止方法。
【請求項5】
前記収容ステップは、前記被処理基板が前記大気系保持部から前記チャンバ本体へ搬入されることにより行われ、
前記除電ステップでは、前記チャンバ本体に前記イオン化ガスを供給しながら前記チャンバ本体からの排気を行うことによって、前記チャンバ本体の内部を前記大気圧環境から前記減圧環境へと移行させることを特徴とする請求項3記載のパーティクル付着防止方法。
【請求項6】
前記除電ステップにおいて、減圧と昇圧とを繰り返すことによって前記チャンバ本体の内部を前記大気圧環境から前記減圧環境へと移行させることを特徴とする請求項5記載のパーティクル付着防止方法。
【請求項7】
前記除電ステップでは、前記イオン化ガスとして、前記チャンバ本体の圧力を調整するために前記チャンバ本体に供給されるパージガスをイオン化させたガスを用いることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載のパーティクル付着防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−183005(P2010−183005A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27369(P2009−27369)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】