説明

搬送治具及び切削装置

【課題】ゴム系材料からなるワークの冷却切削を行う際に、ワークを効率良く冷却する搬送治具を提供する。
【解決手段】
本発明の搬送治具は、ゴム系材料を含んで構成されるワーク10の冷却切削に用いられる搬送治具100であって、第1の面においてワーク10を搭載するように構成され、第1の面とは反対側の第2の面において冷却チャック70に接触するように構成された固定板20と、ネジ25を用いて固定板20に固定された断熱板30と、固定板20に接触することなく、ネジ35を用いて断熱板30に固定されたワーク支持枠体40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの冷却切削を行う際に用いられる搬送治具及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子を備えたワークがある。このようなワークにおいて、柔らかいゴム系材料から構成されるワークが存在する。ゴム系材料から構成されるワークは、柔らかい性質を有するため、ダイサーブレードを用いて常温で切削することが困難である。このため、このようなゴム系材料から構成されるワークに対しては、ワークを冷却しながら切削を行うことが効果的である。
【0003】
特許文献1には、矩形状に形成された枠体の対角線方向に沿って矩形孔が形成されたワーク支持枠体が開示されている。このワーク支持枠体には、矩形孔を囲む枠体に部分的にテープ粘着面が形成されている。また、特許文献1に開示された切断装置は、ワーク支持枠体を回転テーブルに固定した状態で、ワーク支持枠体に粘着支持されたワークを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−186296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなUVテープを用いてワーク支持枠体にワークを固定すると、ワークの冷却切削を行おうとする場合、ワークとワーク支持枠体との間にUVテープが介在していることにより、これらの間の熱伝導率が低下する。この結果、ワークを効果的に冷却することが困難となる。
【0006】
そこで本発明は、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削を行う際に、ワークを効率良く冷却することが可能な搬送治具及び切削装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての搬送治具は、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削に用いられる搬送治具であって、第1の面において前記ワークを搭載するように構成され、該第1の面とは反対側の第2の面において保持部に接触するように構成された第1の金属板と、第1の固定部材を用いて前記第1の金属板に固定された断熱板と、前記第1の金属板に接触することなく、第2の固定部材を用いて前記断熱板に固定された第2の金属板とを有する。
【0008】
本発明の他の側面としての切削装置は、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削を行う切削装置であって、前記ワークを固定して搬送する搬送治具と、前記搬送治具を吸着保持する保持部と、前記保持部に吸着保持された前記搬送治具に固定された前記ワークを切削する切削刃とを有し、前記保持部は、前記搬送治具を第2の面側から真空吸着する吸着部、及び、該搬送治具を冷却する冷却部を備え、前記搬送治具は、第1の面において前記ワークを搭載するように構成され、該第1の面とは反対側の前記第2の面において保持部に接触するように構成された第1の金属板、第1の固定部材を用いて前記第1の金属板に固定された断熱板、及び、前記第1の金属板に接触することなく、第2の固定部材を用いて前記断熱板に固定された第2の金属板を有する。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切断を行う際に、ワークを効率良く冷却する搬送治具及び切削装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例における搬送治具の全体構成図((a)表面側の平面図、(b)側面図)である。
【図2】本実施例における搬送治具の全体構成図(裏面側の平面図)である。
【図3】本実施例における切削装置の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
まず、図1及び図2を参照して、本実施例における搬送治具の構成について説明する。図1は、本実施例における搬送治具100の全体構成図である。図1(a)は搬送治具100の表面側から見た平面図であり、図1(b)は搬送治具100の側面図である。また、図2は、本実施例における搬送治具100の全体構成図であり、裏面側から見た平面図である。搬送治具100は、特に、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削(溝加工切削)に用いられる。
【0014】
図1及び図2において、10は加工対象となるワークである。ワーク10は、例えば、半導体素子を実装したゴム系材料を含んで構成されている。なお本実施例において、ワーク10は略長方形の形状を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。20は固定板(第1の金属板)である。固定板20は、第1の面(表面)においてワーク10を搭載するように構成され、第1の面とは反対側の第2の面(裏面20a)において冷却チャック70(保持部)に接触するように構成されている。固定板20は、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属材料から構成される。このため、ワーク10の熱を、テーブル80の上に設けられた冷却チャック70に向けて効率良く放出することができる。なお本実施例において、固定板20は略長方形の形状を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。固定板20の形状は、搭載するワーク10の形状に応じて適宜変更してもよい。
【0015】
固定板20の上の所定の位置には、複数の位置決めピン23が形成されている。図1(a)に示されるように、本実施例では、ワーク10の上辺を規制する二つの位置決めピンと、右辺を規制する一つの位置決めピンからなる三つの位置決めピン23が設けられている。このような位置決めピン23により、固定板20の上にワーク10を正確かつ容易に位置決めすることが可能となる。位置決めピン23にて位置決めされたワーク10は、第3の固定部材である複数のネジ15(本実施例では二つのネジ15)を用いて固定板20の上に固定される。なお、位置決めピンの配置はこれに限定されるものではない。
【0016】
上述のように、固定板20は、その裏面20aにおいて、冷却チャック70に直接接触するように構成されている。このため、ワーク10の熱は、固定板20を介して冷却チャック70(テーブル80)に向って効率的に放出される。
【0017】
30は断熱板である。断熱板30は、ガラス繊維、プラスチック、又は、セラミックス等の材料から構成される。断熱板30は、第1の固定部材である複数のネジ25(本実施例では六個のネジ25)を用いて固定板20に固定される。このように、固定板20にはその周囲において断熱板30が接触しているため、冷却された固定板20の温度が上昇するのを抑制し、ワーク10の冷却効率を向上させることができる。
【0018】
また断熱板30は、吸水率が低い材料を用いて構成される。ワーク10の切削は、切削により生じる切削屑等を除去するための洗浄液を切削部位に噴出させながら行われる。吸水率の低い材料から構成された断熱板30を用いることにより、洗浄液の吸水による断熱板30の特性劣化を抑制することができる。なお本実施例の断熱板30は円形状を有するが、本発明はこれに限定されるものではなく、矩形状等の他の形状を有するものであってもよい。
【0019】
40はワーク支持枠体(第2の金属板)である。ワーク支持枠体40は、ワーク10を搬送するために用いられる搬送用リングであり、衝撃に強く高精度な加工が可能なステンレス(SUS)等の金属材料から構成されている。ワーク支持枠体40は、第2の固定部材である複数のネジ35(本実施例では六個のネジ35)を用いて断熱板30に固定される。このため、本実施例の搬送治具100は、固定板20、断熱板30、及び、ワーク支持枠体40が複数のネジ25、35により固定され一体化されている。なお、本実施例のワーク支持枠体40はリング形状を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
このように、ワーク10を搭載する固定板20と、ワーク支持枠体40との間には、断熱板30が配置されている。このため、ワーク支持枠体40は固定板20に接触することなく、これらは互いに離れて配置されている。従って、本実施例の搬送治具100によれば、冷却チャック70で冷却された固定板20の温度が上昇するのを抑制し、固定板20の上に搭載されたワーク10を効果的に冷却させることが可能となる。
【0021】
次に、図3を参照して、本実施例における切削装置について説明する。図3は、本実施例における切削装置200の断面構成図である。図3に示されるように、切削装置200は、主に、ダイサーブレード60(切削刃)及びテーブル80上に設けられた冷却チャック70(保持部)を含んで構成される。切削装置200は、特に、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削(溝加工切削)を行うために用いられる。
【0022】
テーブル80は、冷却チャック70を用いて、ワーク10を固定して搬送する搬送治具100を吸着保持する。冷却チャック70は、SUS、プラスチック、セラミック等の伝熱性の高い材料で構成されている。ダイサーブレード60は、冷却チャック70に吸着保持された搬送治具100上のワーク10を切削する。また切削装置200は、ワーク切削時における切削屑を除去するための洗浄液(水又は不凍液)を噴出する噴出部(不図示)を備えることが好ましい。
【0023】
冷却チャック70には、搬送治具100を固定板20の裏面20a側から真空吸着するための複数の吸着孔71(本実施例では四つの吸着孔)が設けられている。これらの吸着孔71は、吸着通路74に接続されており、更に吸着管75を介して真空ポンプ(不図示)に接続されている。このため、吸着孔71及び吸着通路74(吸着部)内の空気は、図3中の矢印の方向(真空ポンプに向かう方向)に排出される。このような真空吸着により、冷却チャック70の上に配置された搬送治具100は、固定板20の裏面20a側を下向きにして、冷却チャック70の上に確実に固定される。
【0024】
また冷却チャック70には、ペルチェ素子72(冷却部)が設けられている。ペルチェ素子72は、冷却チャック70を冷却し、結果として、ゴム系材料を含んで構成されるワーク10を冷却してゴム系材料を硬化させる。ペルチェ素子72には配線73を介して電流制御装置(不図示)が接続されている。電流制御装置によるオン/オフ制御によりペルチェ素子72に電流を流すと、ペルチェ素子72を構成する一方の金属から他方の金属へ熱が移動し(ペルチェ効果)、ペルチェ素子72の一方の面(上面)が吸熱し、反対面(下面)が発熱する。
【0025】
このため、冷却チャック70には、ペルチェ素子72の下部において、更に冷媒としての水を循環させるための水循環通路76(冷媒循環部)が設けられている。水循環通路76は水循環管77に接続されており、ペルチェ素子72が発した熱を外部へ逃がすため、ペルチェ素子72の下部には常に新しい水が供給される。
【0026】
本実施例の切削装置200は、ワーク10の切削時に発生する切削屑を効果的に除去するため、噴出部(不図示)から洗浄液を切削部位に噴出しながら、ダイサーブレード60によるワーク10の切削を行う。しかしながら、冷却チャック70が所定の温度より低い温度になると、噴出部から噴出した洗浄液が搬送治具100及び冷却チャック70の上で凍結する可能性がある。洗浄液が凍結すると、搬送治具100を冷却チャック71から取り外す際に、凍結した洗浄液を解凍しなければならない。このため、本実施例の切削装置200においては、冷却チャック70に温度センサ(不図示)を設け、温度センサによる検出温度に基づいて冷却チャック70の温度をフィードバック制御するように構成することが好ましい。
【0027】
なお、本実施例では、ワーク10を冷却するための冷却手段としてペルチェ素子を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。冷却手段として、例えば、外部からの冷却ガスを冷却チャックに直接循環させるように構成することもできる。この場合、ペルチェ素子の代わりに、冷却ガスを循環させるための冷却ガス循環通路が設けられる。
【0028】
上述のとおり、本実施例によれば、ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削を行う際に、ワークを効率良く冷却する搬送治具及び切削装置を提供することができる。
【0029】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 ワーク
15、25、35 ネジ
20 固定板
23 位置決めピン
30 断熱板
40 ワーク支持枠体
60 ダイサーブレード
70 冷却チャック
72 ペルチェ素子
74 吸着通路
76 水循環通路
80 テーブル
100 搬送治具
200 切削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削に用いられる搬送治具であって、
第1の面において前記ワークを搭載するように構成され、該第1の面とは反対側の第2の面において保持部に接触するように構成された第1の金属板と、
第1の固定部材を用いて前記第1の金属板に固定された断熱板と、
前記第1の金属板に接触することなく、第2の固定部材を用いて前記断熱板に固定された第2の金属板と、を有することを特徴とする搬送治具。
【請求項2】
前記第1の金属板には前記ワークの位置決めを行うための複数の位置決めピンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送治具。
【請求項3】
前記ワークを前記第1の金属板に固定するための第3の固定部材を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送治具。
【請求項4】
ゴム系材料を含んで構成されるワークの冷却切削を行う切削装置であって、
前記ワークを固定して搬送する搬送治具と、
前記搬送治具を吸着保持する保持部と、
前記保持部に吸着保持された前記搬送治具に固定された前記ワークを切削する切削刃と、を有し、
前記保持部は、前記搬送治具を第2の面側から真空吸着する吸着部、及び、該搬送治具を冷却する冷却部を備え、
前記搬送治具は、第1の面において前記ワークを搭載するように構成され、該第1の面とは反対側の前記第2の面において前記保持部に接触するように構成された第1の金属板、第1の固定部材を用いて前記第1の金属板に固定された断熱板、及び、前記第1の金属板に接触することなく、第2の固定部材を用いて前記断熱板に固定された第2の金属板を有することを特徴とする切削装置。
【請求項5】
前記冷却部は、ペルチェ素子と、該ペルチェ素子が発した熱を逃がすための冷媒循環部とを有することを特徴とする請求項4に記載の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−124279(P2011−124279A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278697(P2009−278697)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】