説明

搬送波トラッキング・ループ・ロック検出器

ATSC(次世代TVシステム委員会)VSB(残留側波帯)受信機(15)は、受信したATSC‐VSB信号を処理する搬送波トラッキング・ループ(CTL)115と、CTLロック検出器(200)を具える。CTLロック検出器は、受信されダウンコンバートされたATSC‐VSB信号を平均化してDCオフセットを発生する平均化フィルタ(135)、DCオフセットを推定する推定器(130)、およびDCオフセットの推定値とDCオフセットとの比較の関数としてロック信号を発生する比較器(140)を具える。ロック信号は、CTLのロックされた状態またはアンロックされた状態の何れかを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、通信システムに関し、特に受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
米国における地上ディジタル・テレビジョン(DTV)放送に関するATSC(Advanced Television Systems Committee:次世代テレビジョン・システム委員会)の標準(米国次世代テレビジョン・システム委員会、「ATSCディジタル・テレビジョン標準」文書A/53、1995年9月16日)において、変調システムは、搬送波抑圧残留側波帯(VSB)変調から成り、抑圧された搬送波の周波数で平均信号出力より11.3dB低い、小さい同相パイロット信号が付加されている。
【0003】
典型的なATSC‐VSB受信機には、搬送波トラッキング・ループ(CTL:Carrier Tracking Loop)を具え、受信したATSC‐VSB信号を処理して送信機の局部発振器(LO)と受信機の局部発振器(LO)との周波数オフセットを除去するとともに、受信したATSC‐VSB信号を中間周波数(IF)からベースバンドに復調する(米国ATSCディジタル・テレビジョン標準使用ガイド文書A/54、1995年10月4日、および米国特許第6,233,295号、名称「HDTV受信機のためのセグメント同期回復ネットワーク」2001年5月15日、ワングに発行、を参照)。一般に、CTLは、ヒルベルト・フィルタおよび対応する遅延、複合乗算器、位相検出器、1次ループ・フィルタ、比例積分パス(path)、数値制御発振器(NCO)、および正弦‐余弦ルックアップ・テーブルを具える。一般に、ATSC受信機は、受信したATSC‐VSB信号にCTLがロック(lock)されているのかアンロック(unlock)されているのかを検出しなければならない。CTLがロックされているのをATSC受信機が検出すると、ATSC受信機は、受信したATSC‐VSB信号が「良好」でありその中に搬送されているデータの再生に使用できる、と判断する。しかしながら、もしCTLがアンロックされていることをATSC受信機が検出すると、ATSC受信機は、受信したATSC信号が「不良」であると判断し、ATSC受信機の一部はリセットされ、受信した不良のATSC‐VSB信号(誤りデータ)に関連する再生データを排出する。更に、CTLがロックされているのをATSC受信機が検出後に、CTLループ・フィルタのパラメータは変更され、ループの帯域幅を減少させ、熱雑音を排除する。
【0004】
典型的に、ATSC受信機は、CTLのループ・フィルタ積分器を使用して、CTLがロックされているかどうか判断する。例えば、閾値が設定され、もしCTLのループ・フィルタ積分器からの信号「ロック信号」が、指定された時間内で閾値以上に変化すると、CTLはATSC受信機によってアンロックされたと考えられる。あいにく、ループ・フィルタ積分器の動作(従って、ロック信号)は、衝撃雑音、熱雑音、およびCTLのループ帯域幅に影響される。その結果、ロックされた状態およびアンロックされた状態の検出に誤りが生じ得る。例えば、もし閾値が雑音出力およびループ帯域幅と比較して小さければ、アンロックされた状態が不正に検出されることもあり、閾値が雑音出力およびループ帯域幅と比較して大きければ、ロックされた状態が不正に検出されることもある。
【発明の開示】
【0005】
(発明の概要)
ATSC‐VSB受信機の搬送波トラッキング・ループ(CTL)が実際にロックされると、受信されたATSC‐VSB信号内に存在する搬送波パイロットは、CTLの出力信号(ダウンコンバートされた受信信号)内にDCオフセットを生じることを、われわれは観察しており、このDCオフセットを、CTLのロックされた状態の判断に利用できることを実感している。特に、CTL出力信号を平均化することにより、このDCオフセットを再生できる。更に、搬送波パイロットの出力は信号出力より11.3dB低いことが知られているので、DCオフセットの推定値はCTLの信号出力から得られる。CTLがロックされた状態にあるのか、アンロックされた状態にあるのかを、DCオフセットの推定値とDCオフセットの実際値の関数として判定する判定装置を使用できる。実際にこの技術は、送信信号内に搬送波パイロットが含まれ受信機が受信した搬送波パイロットをDCにダウンコンバートすることにより受信信号を復調する、すべての変調システムに適用できる。
【0006】
本発明の原理に従い、受信機は受信した信号をダウンコンバートし、このダウンコンバート(down‐convert)された受信信号を供給するCTLと、CTLがロックされた状態にあるのかまたはアンロックされた状態にあるのかを、前記ダウンコンバートされた受信信号の関数として検出するCTLロック検出器とを具える。
【0007】
本発明の1つの実施例において、CTLロック検出器は、ダウンコンバートされた受信信号を平均化して、平均信号を発生し、ダウンコンバートされた受信信号から平均信号を推定し、CTLがロックされているのかアンロックされているのかを、平均信号と平均信号の推定値の関数(function)として判定する。
【0008】
本発明の別の実施例において、ATSC‐VSB受信機は、受信したATSC‐VSB信号を処理してダウンコンバートされた受信信号を供給する搬送波トラッキング・ループ(CTL)と、CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかを前記受信されダウンコンバートされたATSC‐VSB信号の関数として判定するためCTLロック検出器を具える。CTLロック検出器は、前記ダウンコンバートされたATSC‐VSB受信信号を平均化してDCオフセットを発生する平均化フィルタ、DCオフセットの推定値を発生する推定器、およびDCオフセットの推定値とDCオフセットの比較の関数としてロック信号を発生するための比較器を具える。ここで、ロック信号はCTLのロックされた状態またはアンロックされた状態の何れかを表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明的コンセプト以外、図に示す要素はよく知られているので詳細に記述しない。例えば、発明的コンセプト以外、テレビジョン受信機、その構成部品、例えば、フロント‐エンド、ヒルベルト・フィルタ、搬送波トラッキング・ループ(CTL)、ビデオ・プロセッサ、リモコンなどはよく知られており、本文中では詳細に記述しない。また、発明的コンセプトは従来のプログラミング技術(本文中では記述されない)を使用して実施できる。最後に、図面上で同様な番号は同様な要素を表す。
【0010】
本発明の原理に従うテレビジョン・セット10のブロック図を図2に例示する。TVセット10は、受信機15とディスプレイ20を含んでいる。例えば、受信機15は、ATSCと互換性のある受信機であり、また、NTSC(National Television Systems Committee)と互換性がある、すなわち、TVセット10は、NTSCの動作モードおよびATSCの動作モードを有し、NTSC放送またはATSC放送からビデオ・コンテンツを表示できることが注目される。発明的コンセプトを説明する際に簡略化のため、本文中では、ATSCの動作モードについてのみ記述する。受信機15は、処理するための放送信号をアンテナ(図示せず)で受信し、受信した信号から、例えば、HDTV(高精細度TV)信号を受信し、ディスプレイ20に供給し、そのビデオ・コンテンツを見られるようにする。上述のように、且つ図1に示すように、信号11は典型的に、ATSC‐VSB放送信号を表す。
【0011】
図3に本発明の原理に従う受信機15の関連部分を示す。受信機15は、アナログ‐ディジタル変換器(ADC)105、自動利得制御装置(AGC)110、帯域通過フィルタ(BPF)115、搬送波トラッキング・ループ(CTL)125、ロック検出器200を具える。
【0012】
入力信号101は、上述した「ATSCディジタル・テレビジョン標準」に従うVSB変調ディジタル信号を表し、特定のIF(中間周波数)FIFヘルツ(Hz)を中心とする。入力信号101はADC105でサンプリングされ、サンプリングされた信号は、AGC110で利得制御される。AGC110はノンコヒレント(non‐coherent)であり、混合モード(アナログとディジタル)のループであって、第1レベルの利得制御(搬送波追跡に先立つ)、シンボル・タイミング、および信号101内に含まれるVSB信号の同期検波を行う。AGC110は基本的にADC105からのサンプリングされた信号の絶対値と所定の閾値を比較しその誤差を積算してその情報を、信号112を通して、チューナ(図示せず)にフィードバックし、ADC105に先立ち利得制御する。従って、AGC110は、利得制御された信号113をBPF115に供給する。BPF115は、IF周波数(FIF)を中心とし、6MHzの帯域幅を有する。次に、BPF115からの出力信号116はCTL125を通過する。CTL125は位相ロックループ(PLL)であって、信号116を処理して、IF信号をベースバンドにダウンコンバートし、放送されるATSCビデオ搬送波の送信機(図示せず)と受信機チューナの局部発振器(図示せず)との周波数オフセットを変更する。CTL125は2次(second‐order)ループであり、これで理論上は周波数オフセットが位相誤差なしに追跡される。事実、位相誤差は、ループ帯域幅、入力位相雑音、熱雑音、データのビット・サイズ、積分器、利得乗算器のような実施上の制約(constraints)をうける。CTL125は、ダウンコンバートされた受信信号126を供給する。この信号は、その中に搬送されるデータを再生するために受信機15の他の部分に供給され、且つ本発明の原理に従いロック検出器200(以下に述べる)にも供給される。ロック検出器200はロック信号141を、ダウンコンバートされた受信信号126の関数(function)として供給する。
【0013】
ロック検出器200について述べる前に、図4(CTL125の実施例)を参照する。CTL125は、遅延/ヒルベルト(Hilbert)フィルタ要素120、複合乗算器150、位相検出器155、ループ・フィルタ160、合成器(加算器)165、数値制御発振器(NCO)170、正弦/余弦(sin/cos)テーブル175を具える。同じ性能が達成されるなら、他の搬送波トラッキング・ループの設計も可能である。
【0014】
遅延/ヒルベルト・フィルタ要素120はヒルベルト・フィルタと、ヒルベルト・フィルタの遅延処理にマッチする等価遅延ラインとを含んでいる。当技術で知られるように、ヒルベルト・フィルタは全通過フィルタであって、0より大きいすべての入力周波数に−90°の位相偏移を(負の周波数に+90°の位相偏移)をもたらす。ヒルベルト・フィルタによりBPF115の出力信号116の直交成分を再生できる。CTLが位相を補正し且つATSC‐IF搬送波にロックするためにはその信号の同相/直交成分が必要とされる。
【0015】
遅延/ヒルベルト・フィルタ要素120の出力信号121は、同相(I)と直交(Q)成分からなる複合サンプル・ストリームである。図で、複合信号の経路を二重線で示す。複合乗算器150は信号121の複合サンプル・ストリームを受信し、その複合サンプル・ストリームを、計算された位相角だけ逆回転(de‐rotate)させる。信号121の同相成分と直交成分は位相が回転される。後者(直交成分)は信号176によって供給される。信号176は正弦/余弦テーブル(以下に述べる)で与えられる特定の正弦/余弦値を表す。複合乗算器150(CTL125)からの出力信号は、ダウンコンバートされた受信信号126であって、逆回転された複合サンプル・ストリームを表す。図4に示すように、ダウンコンバートされた受信信号126は位相検出器155にも供給される。位相検出器155は、ダウンコンバートされた信号126内にまだ存在する位相オフセットを計算し、それを表示する位相オフセット信号を発生する。この計算は、「I*Q」または「符号(I)*(Q)」関数で実行できる。位相検出器155より発生される位相オフセット信号はループ・フィルタ160に供給される。ループ・フィルタ160は、比例積分利得を有する1次フィルタである。さしあたり、合成器165を無視し、ループ・フィルタ160出力信号はNCO170に供給される。NCOは積分器であり、周波数を入力信号として処理しその入力周波数に関連する位相角を表す出力信号を発生する。獲得速度を増すため、NCOは、FPILOT(VSB信号内に在る搬送波パイロット・トーンの周波数)に対応する周波数オフセットFOFFSETを与えられる。これは合成器165を介しループ・フィルタの出力信号に加えられ、合成信号がNCO170に供給される。NCO170は出力位相角信号171を正弦/余弦テーブル175に供給する。テーブル175は関連する正弦/余弦値を複合乗算器150に供給し、信号121を逆回転(de‐rotate)させ、ダウンコンバードされた受信信号126を発生する。ループ・フィルタ160はロック信号127(図4に点線で示す)の発生にも使用できる。
【0016】
ATSC‐VSB受信機のCTLがロックされると、受信されたATSC‐VSB信号内に在る搬送波パイロットは、CTL出力信号(ダウンコンバードされた受信信号)内にDCオフセットを生じることを我々は観察し、そのDCオフセットを使用してCTLのロックされた状態を判断できることを実感する。特に、CTL出力信号を平均化し、DCオフセットを再生できる。搬送波パイロットの出力は信号出力より11.3dB低いことが知られており、DCオフセットの推定値はCTLの信号出力から得られので、CTLがロックされた状態またはアンロックされた状態にあるのかをDCオフセットの推定値とDCオフセットの実際値の関数として判定する判定装置を使用できる。実際、この技術は、送信信号内に搬送波パイロットを含み且つ受信した搬送波パイロットをDCにダウンコンバートすることにより受信機が受信信号を復調する、すべての変調システムに応用できる。
【0017】
上述したことを考慮し且つ本発明の原理に従い、図3のロック検出器200は、ダウンコンバードされた受信信号126の関数としてロック信号141を発生する。ここで、ロック信号141は、CTL125のロックされた状態またはアンロックされた状態の何れかを表す。ロック検出器200は、ダウンコンバートされた受信信号126内に存在する搬送波パイロットのDCオフセットを利用する。図5は、ロック検出器200の実施例を示す。ロック検出器200は、平均化(Avg.)フィルタ135、DCオフセット推定器130、比較器140からなる。ダウンコンバートされた受信信号126は平均化フィルタ135とDCオフセット推定器130に供給される。フィルタ135は比較的低帯域幅(約1KHz以下)のフィルタであって、ダウンコンバートされた受信信号126を平均化し、DCオフセット信号136を発生する。DCオフセット信号136は搬送波パイロットが存在するかどうかを表す。搬送波パイロットの出力は信号出力より11.3dB低いので、DCオフセット推定器130はダウンコンバートされた受信信号からDCオフセット値を推定する。この推定値は、ダウンコンバートされた受信信号の出力レベルから得られる。最初に、ダウンコンバートされた受信信号の出力レベルを以下の方程式から決定することにより、DCオフセット推定器130はDCオフセットを推定する。
【数1】


ここで、rは時刻iにおけるダウンコンバートされた受信信号のサンプル、Nは推定に使用されるサンプルの数である。PVSBの値が決定すると、PVSBの個々の値をそれぞれの推定されるDCオフセット値にマップする所定のルックアップ・テーブル(図示せず)にアドレスすることにより、推定器130は、PVSBの平方根に比例する推定されたDCオフセット(推定されたDCオフセット信号131で表される)を決定する。
【0018】
図5から観察されるように、DCオフセット信号136および推定されたDCオフセット信号131は、比較器140のような判定装置に供給される。比較器140を使用してCTL125がロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかをDCオフセットの推定値とDCオフセットの実際値の関数として決定する。例えば、比較器140は、所定の閾値に基づいて比較を行う簡単な関数を実行する。例えば、比較器140は最初、DCオフセットとDCオフセットの推定値との差の絶対値(s)を計算する、すなわち:
【数2】

【0019】
sの値が指定された閾値内にあれば、CTL125はロックされる。そうでなければ、CTLはアンロックされる。例えば、CTL125が、所定期間、実際にロックされていれば、DCオフセットの推定値は実際のDCオフセットに近似し、sの値はゼロに近い。しかしながら、CTL125がドリフトし始めると、実際のDCオフセット値は下り始めsの値は増加する。これを図6のテーブル1に示す。図6は、DCオフセット信号136と推定されたDCオフセット131との比較の相関としてロック信号141の値を示す。sが所定の閾値に等しいかそれ以下であれば、ロック信号141はロックされた状態、例えば、論理レベル‘1’を表すように設定され、そうでなければ、ロック信号141はアンロックされた状態、例えば、論理レベル‘0’を表すように設定される。閾値は、推定されるDCオフセット値の小部分(例えば、DCオフセット推定値の1/8)である。
【0020】
図7に本発明の原理に従うフローチャートを例示する。ステップ305で、受信機15は、受信した信号からダウンコンバートされた信号を発生し、ステップ310で、ダウンコンバートされた信号を平均化し、平均信号(例えば、上述のDCオフセット信号)を発生する。ステップ315で、受信機15はダウンコンバートされた信号から平均信号の推定値(上述の、推定されるDCオフセット信号)を発生する。ステップ320で、受信機15はパラメータs、方程式(2)、の値を決定する。ステップ325で、受信機15はsの値と所定の閾値を比較する。ステップ335で、sの値が所定の閾値より大きければ受信機15はCTLがアンロックされていると判断し、sの値が所定の閾値に等しいかそれ以下であれば、ステップ330で、受信機15はCTLがロックされていると判断する。
【0021】
ロック検出器200は搬送波トラッキング・ループの外部に配置されるので、ロック検出器200は搬送波トラッキング・ループのパラメータおよび帯域幅にあまり左右されない。有利なことに、平均化フィルタおよびDCオフセット推定器の帯域幅は、搬送波トラッキング・ループの追跡能力に影響を与えずに、ロック検出器に及ぼされる雑音の影響を事実上排除するように設定することができ、ロック検出器220をより一層信頼できるものにする。
【0022】
本発明の原理による別の実施例を図8に示す。図8の実施例は図3に示すものと同様であるが、追加的ロック検出器250を具える。前述のように、CTL125は、ループ・フィルタ160からロック信号127を供給する。また、ロック検出器200はロック信号141を供給する。本発明の特徴により、ロック検出器250は、ロック信号127とロック信号141を組み合せ、CTL125がロックされているのかアンロックされているのかを表示する別のロック信号251を発生する。例えば、ロック検出器250はその2つの信号を共に単純に論理的‘OR’にする。ロック検出器250は別個の要素として図示されているが、ロック検出器250はロック検出器200の一部にもなり、その場合、ロック検出器200は、ロック信号127をCTL125からも受信するように変更される。図8の実施例で、ロック信号127はCTLの短期間の動作(高帯域幅)を反映し、ロック信号141はCTLの長期間の動作(低帯域幅)を反映する。従って、ロック信号127とロック信号141を共に使用し、受信されたデータ内における衝撃雑音、熱雑音または位相雑音の存在を表示できる。
【0023】
ATSC‐VSBテレビジョン受信機に関連する発明的コンセプトにつき上述したが発明的コンセプトはこれに限定されることなく、パイロット搬送波を含む受信信号をダウンコンバートするすべての受信機に応用される。図9に、本発明の原理に従う別の実施例を示す。例えば、図2の受信機の一部40は搬送波トラッキング・ループ(CTL)50とロック検出器55を具える。パイロット搬送信号を含む受信信号49はCTL50に供給され、CTL50はダウンコンバートされた出力信号51をロック検出器55に供給する。図7から分かるように、ダウンコンバートされた出力信号51は、その中に搬送されるデータを再生するために受信機の他の部分(図示せず)で処理することもできる。本発明の原理により、ロック検出器55は、CTL50がロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかをダウンコンバートされた出力信号51の関数として判定する。ロック検出器55は、CTLのロックされた状態またはアンロックされた状態を表すロック信号56を発生する。例えば、CTL50およびロック検出器55は、図3〜図5に示し且つ上述したものと同様な要素を含むが、これに限定されない。
【0024】
図10は本発明の原理による別の実施例を示す。図10の実施例は、最終ロック検出器60を除いて、図9の実施例と類似する。特にこの実施例において、ロック状態は信号61の値で表される。信号61は最終ロック検出器60で発生され、最終ロック検出器60は、実際のロック状態が存在するか否かを、ロック信号56(ロック検出器55より発生される)とロック信号52(図4のループ・フィルタ160によってCTL50から供給される)の両信号の関数として判定する。最終ロック検出器55は、ロック信号56とロック信号52の両方がロック状態を表している場合に限り、ロック状態を表示する。
【0025】
本文中で記述し図示した特定要素の構成部品のグループは例示的なものにすぎない。例えば、図4は搬送波トラッキング・ループ内にヒルベルト・フィルタを示すが、これは必要でなく、ヒルベルト・フィルタは図3に示すこともでき、且つ搬送波トラッキング・ループの外部のものとして記述することもできる。
【0026】
上述したものは単に本発明の原理を例示するにすぎず、従って、本文中で明確に記述されていないが、本発明の原理を具体化し且つその精神と範囲内に在る多数の代替構成を当業者は創案できる。例えば、別個の機能的要素と関連して例示したが、これらの機能的要素は1個以上の集積回路(IC)でも実施できる。同じく、別個の要素として図示したが、これらすべての要素は、記憶プログラム制御プロセッサ、例えば、図7に示す各ステップに対応する関連ソフトウェアを実行するディジタル信号プロセッサで実施される。更に、TVセット10内に束ねられた要素として図示しているが、それらの要素は、任意に組み合せて別個のユニットとして配分することもできる。例えば、図2の受信機15は装置の一部であり、装置から物理的に離れているボックスであり、またはディスプレイ20を組み入れるボックス、などである。また、受信されダウンコンバートされた信号は例示的に平均化されたが、図7のステップ315に対するそれぞれの変更と共に、他の統計的関数も使用できる。従って、多数の変更がこれらの実施例になされ、且つ特許請求の範囲で規定する本発明の精神および範囲から離脱することなく、他の構成も創案できることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ATSC‐VSB信号のスペクトルを例示する。
【図2】本発明の原理を具体化するTVセットのブロック図を例示する。
【図3】本発明の原理を具体化する受信機の一部を示す。
【図4】図3の受信機内で使用する搬送波トラッキング・ループ(CTL)を例示する。
【図5】本発明の原理に従うロック検出器の実施例を示す。
【図6】図5の比較器140内で使用するテーブル(表)を例示する。
【図7】本発明の原理による方法を例示する。
【図8】本発明の原理による他の実施例を示す。
【図9】本発明の原理による他の実施例を示す。
【図10】本発明の原理による他の実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機において使用する装置であって、
受信した信号をダウンコンバートし、ダウンコンバートされた受信信号を発生するための搬送波トラッキング・ループ(125)と、
CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかを、前記ダウンコンバートされた受信信号の関数として検出するCTLロック検出器(200)と、からなる、前記装置。
【請求項2】
前記CTLロック検出器が、ロックされた状態またはアンロックされた状態を表すロック信号を発生する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
CTLがロックされた状態を、前記ロック信号および別の信号(CTLから生じ、やはりCTLのロックされた状態を表す)の関数として判定する別のロック検出器(250)を更に具える、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記CTLロック検出器が、
ダウンコンバートされた受信信号を平均化して、平均信号を発生するための平均化フィルタ(135)と、
ダウンコンバートされた受信信号に応答し、前記平均信号の推定値を表す推定された信号を発生する信号推定器(130)と、
前記推定された信号と平均信号の関数としてロック信号を発生する判定装置(140)と、からなる、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記判定装置が比較器であって、前記推定された信号と平均信号とを比較して、CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかを判断する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記受信信号がATSC(Advanced Television Systems Committee)のVSB(残留側波帯)変調信号である、請求項1記載の装置。
【請求項7】
ATSC‐VSB(Vestigial Sideband)受信機において使用する装置であって、
受信したATSC‐VSB信号に応答し、ダウンコンバートされたATSC信号を発生するための搬送波トラッキング・ループ(125)と、
CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかをダウンコンバートされたATSC信号の関数として判定する搬送波トラッキング・ループ・ロック検出器(200)と、からなり、前記搬送波トラッキング・ループ・ロック検出器(200)が、
ダウンコンバートされたATSC信号を平均化し、該ダウンコンバートされたATSC信号の平均値を発生する平均化フィルタ(135)と、
前記ダウンコンバートされたATSC信号に応答し、前記平均値の推定値を発生する推定器(130)と、
CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかを前記平均値と推定値とを比較して判断する比較器(140)と、からなる、前記装置。
【請求項8】
搬送波トラッキング・ループ・ロック検出器が、ロックされた状態またはアンロックされた状態を表すロック信号を発生する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記ロック信号および別の信号(CTLから生じ、やはりCTLのロックされた状態を表す)の関数としてCTLのロックされた状態を判定する別のロック検出器(250)を更に具える、請求項8記載の装置。
【請求項10】
搬送波トラッキング・ループ(CTL)を使用し、受信した信号をダウンコンバートして、ダウンコンバートされた受信信号を発生するステップと、
CTLがロックされた状態またはアンロックされた状態にあるのかをダウンコンバートされた受信信号の関数として検出するステップと、からなる、受信機で使用される方法。
【請求項11】
ロックされた状態またはアンロックされた状態を表すロック信号を発生するステップを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ロック信号および別の信号(CTLから生じ、やはりCTLのロックされた状態を表す)の関数としてCTLのロック状態を判定するステップを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記検出するステップが更に、
ダウンコンバートされた受信信号を平均化し、平均信号を発生するステップと、
前記ダウンコンバートされた受信信号から平均信号を推定し、推定された信号を発生するステップと、
前記推定された信号および平均信号の関数としてロック信号を発生するステップと、を更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記推定信号と平均信号の関数として前記ロック信号を発生するステップに、CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのか判定するために、前記推定信号と平均信号を比較するステップを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
受信された信号がATSC‐VSB変調信号である、請求項10記載の方法。
【請求項16】
ATSC‐VSB受信機において使用される方法であって、
搬送波トラッキング・ループを使用し、受信されたATSC‐VSB信号を処理して、ダウンコンバートされたATSC信号を発生するステップと、
CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかをダウンコンバートされたATSC信号の関数として判定するステップと、からなり、
前記判定するステップが、
ダウンコンバートされたATSC信号を平均化し、該ダウンコンバートされたATSC信号の平均値を発生するステップと、
前記ダウンコンバートされたATSC信号から平均値を推定するステップと、
CTLがロックされた状態にあるのかアンロックされた状態にあるのかを前記平均値と推定値を比較して判定するステップと、を含む、前記方法。
【請求項17】
ロックされた状態またはアンロックされた状態を表すロック信号を発生するステップを更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ロック信号および別の信号(CTLから生じ、やはりCTLのロックされた状態を表す)の関数として前記CTLのロック状態を判定するステップを更に含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−507761(P2006−507761A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555417(P2004−555417)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/035941
【国際公開番号】WO2004/049706
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【Fターム(参考)】