説明

搬送警備システム、搬送警備方法および人体通信装置

【課題】バッテリー消費量を低減することのできる搬送警備システムを提供する。
【解決手段】無線機は、当該無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、人体通信装置110による人体通信処理を禁止する場合に第1信号を送信する送信手段を有し、人体通信装置110は、人体デバイス200に第2信号を送信する送信手段と、人体デバイス200から携帯者の人体を経由した後の第2信号および認証情報を受信する第2受信手段と、第2信号に基づいて人体を検知する人体検知手段と、認証情報に基づいて携帯者を認証する認証手段と、人体を検知しない場合および認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒手段と、第1信号を受信しない場合には、人体通信処理を許可し、第1信号を受信した場合に、人体通信処理を禁止する動作制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴重品を搬送する搬送ケースが不正に持ち出されると警戒動作を行う搬送警備システム、搬送警備方法および人体通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣や貴金属などの貴重品は、ジェラルミンケースなどの搬送ケースに入れられて警備関係者などにより搬送される。この搬送ケースを狙った強盗事件を防止するため、搬送ケースに所持者のIDを登録しておき、所持者と所持品が所持により接触または近接した場合に、搬送ケースに登録されているIDと、所持者装備のトランシーバから送信される所持者IDとを比較し、両者が一致しない場合には、認証に失敗したとして警報を発する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、人体が帯電し、微弱な電流を流す性質を持つことに着目して開発された人体通信技術が知られている。この技術を利用した人体通信装置を搬送ケースに取り付けることにより、搬送ケースと人体との通信を行い、搬送ケースが人体と接触または近接したことを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−92065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の技術においては、搬送ケースと人体との接触または近接を検知するためには、検知装手段の電源を常にオンにしておく必要がある。このため、バッテリー消費量が多くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に開示されている技術においては、例えば圧力センサや加速度センサにより所持品が所持されたことを検出し、この場合にユーザ認証を行う。しかしながら、搬送ケースは警備輸送車にて積載されて搬送されることが多く、輸送車の走行中にこれらのセンサが所持品が所持されたと誤って検出し、誤報が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、誤報の発生などの不具合を防ぎつつ、バッテリー消費量を低減することのできる搬送警備システム、搬送警備方法および人体通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、貴重品を搬送する搬送ケースに設けられ、人体通信を行う人体通信装置と、前記搬送ケースを携帯する携帯者に装着されたデバイスであって、前記人体通信装置と通信を行う人体デバイスと、前記人体通信装置に信号を送信する無線機とを備えた搬送警備システムであって、前記無線機は、当該無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、前記人体通信装置による人体通信処理を禁止する場合に第1信号を送信する送信手段を有し、前記人体通信装置は、前記無線機から前記第1信号を受信する第1受信手段と、前記人体デバイスに第2信号を送信する送信手段と、前記人体デバイスから前記携帯者の人体を経由した後の前記第2信号および前記携帯者の認証に利用する認証情報を受信する第2受信手段と、前記第2受信手段が受信した前記第2信号に基づいて人体を検知する人体検知手段と、前記第2受信手段が受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証する認証手段と、前記人体検知手段が前記人体を検知しない場合および前記認証手段が認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒手段と、前記第1受信手段が前記第1信号を受信しない場合には、前記送信手段、前記第2受信手段、前記人体検知手段および前記認証手段による処理である前記人体通信処理を許可し、前記第1受信手段が前記第1信号を受信した場合には、前記人体通信処理を禁止する動作制御手段とを有し、前記人体デバイスは、前記第2信号を受信する受信電極と、前記受信電極が前記第1信号を受信した場合に、前記人体を経由した後の前記第2信号および前記認証情報を前記人体通信装置に送信する送信電極とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の形態は、貴重品を搬送する搬送ケースに設けられ、人体通信を行う人体通信装置と、前記搬送ケースを携帯する携帯者に装着されたデバイスであって、前記人体通信装置と通信を行う人体デバイスと、前記人体通信装置に信号を送信する無線機とを備えた搬送警備システムにおける搬送警備方法であって、前記無線機の送信手段が、当該無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、前記人体通信装置による人体通信処理を禁止する場合に第1信号を送信する送信ステップと、前記人体通信装置の第1受信手段が、前記無線機から前記第1信号を受信する第1受信ステップと、前記人体通信装置の送信手段が、前記人体デバイスに第2信号を送信する送信ステップと、前記人体通信装置の第2受信手段が、前記人体デバイスから前記携帯者の人体を経由した後の前記第2信号および前記携帯者の認証に利用する認証情報を受信する第2受信ステップと、前記人体通信装置の人体検知手段が、前記第2受信ステップにおいて受信した前記第2信号に基づいて人体を検知する人体検知ステップと、前記人体通信装置の認証手段が、前記第2受信ステップにおいて受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証する認証ステップと、前記人体通信装置の警戒手段が、前記人体検知ステップにおいて前記人体を検知しない場合および前記認証ステップにおいて認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒ステップと、前記人体通信装置の動作制御手段が、前記第1受信ステップにおいて前記第1信号を受信しない場合には、前記送信ステップ、前記第2受信ステップ、前記人体検知ステップおよび前記認証ステップによる処理である前記人体通信処理を許可し、前記第1受信ステップにおいて前記第1信号を受信した場合には、前記人体通信処理を禁止する動作制御ステップと、前記人体デバイスの受信電極が、前記第2信号を受信する受信ステップと、前記人体デバイスの送信電極が、前記受信電極が前記第1信号を受信した場合に、前記人体を経由した後の前記第2信号および前記認証情報を前記人体通信装置に送信する送信ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の形態は、貴重品を搬送する搬送ケースに設けられ、前記搬送ケースを携帯する携帯者に装着されたデバイスと人体通信を行う人体通信装置であって、無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、前記人体通信装置による人体通信処理を禁止する場合に前記無線機から送信される第1信号を受信する第1受信手段と、前記人体デバイスに第2信号を送信する送信手段と、前記人体デバイスから前記携帯者の人体を経由した後の前記第2信号および前記携帯者の認証に利用する認証情報を受信する第2受信手段と、前記第2受信手段が受信した前記第2信号に基づいて人体を検知する人体検知手段と、前記第2受信手段が受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証する認証手段と、前記人体検知手段が前記人体を検知しない場合および前記認証手段が認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒手段と、前記第1受信手段が前記第1信号を受信しない場合には、前記送信手段、前記第2受信手段、前記人体検知手段および前記認証手段による処理である前記人体通信処理を許可し、前記第1受信手段が前記第1信号を受信した場合には、前記人体通信処理を禁止する動作制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人体通信装置は、無線機から第1信号を受信しない場合には人体通信を行い、搬送ケースに接触または近接している人体を検知および認証する一方で、無線機から第1信号を受信した場合には人体通信を行わないので、人体通信装置の無駄なバッテリー消費を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、搬送警備システム10の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1無線機310の設置位置を示す図である。
【図3】図3は、第2無線機420および第3無線機440の設置位置を示す図である。
【図4】図4は、第1無線機310の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、人体通信装置110の機能構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、人体通信装置110の人体通信部113の設置位置を示す図である。
【図7】図7は、人体デバイス200の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、人体通信装置110による搬送警備処理を示すフローチャートである。
【図9】図9は、他の例にかかる人体通信部113の設置位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる搬送警備システム、搬送警備方法および人体通信装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、実施の形態にかかる搬送警備システム10の全体構成を示すブロック図である。紙幣や貴金属などの貴重品が入ったジェラルミンケースなどの搬送ケース100に設けられた人体通信装置110と、搬送ケース100を携帯する携帯者に装着された人体デバイス200と、搬送ケース100の搬送経路中の所定の区画に設置された無線機とを備えている。
【0015】
人体通信装置110は、人体デバイス200と通信を行う。人体デバイス200は、携帯者が携帯する。また他の例としては、人体デバイス200は、携帯者の制服等に組み込まれていてもよい。人体デバイス200は、静電結合方式を採用しており、人体と直接接触しているか、または近接していればよい。人体デバイス200の携帯者は、例えば搬送ケース100を搬送する警備関係者などの搬送者の他、搬送元および搬送先の会社などの従業員などの取扱者である。搬送ケース100を携帯する人物が複数人いる場合には、それぞれの人物が人体デバイス200を装着する。
【0016】
無線機は、搬送ケース100が収容される警備輸送車300の荷台や、搬送ケース100が搬出、搬入される建物400の内部に設置される。例えば、図2に示すように、警備輸送車300の荷台302は金庫室になっており、この金庫室の内部に第1無線機310が設置されている。警備輸送車300の荷台302には荷台が設けられており、荷台扉304を介して搬送ケース100は荷台としての金庫室へ搬入、搬出される。
【0017】
また、図3に示すように、搬送ケース100が搬出、搬入される建物400内にも無線機が設置されている。建物内部は、例えば受渡区画410と取扱区画430の2つの区画に分けられ、受渡区画410と取扱区画430にそれぞれ第2無線機420と第3無線機440とが設置されている。
【0018】
取扱区画430は、例えば搬送ケース100の搬送元、搬送先の従業員が搬送ケース100を取り扱う区画であり、外部に面していない区画である。受渡区画410は、搬送ケース100の搬出、搬入が行われる場所であり、搬送元、搬送先の従業員と、警備会社の社員など搬送者との間での搬送ケース100の受け渡しを行う区画である。受渡区画410には、外部との境界となる扉412が設けられている。
【0019】
図4は、第1無線機310の機能構成を示すブロック図である。第1無線機310は、扉検知部311と、送信部312とを備えている。扉検知部311は、荷台302の開閉を検知する。送信部312は、扉検知部311が荷台扉304が閉じていることを検知した場合に、信号Aを送信し、荷台扉304が開いたことを検知した場合には、信号Aの送信を停止する。
【0020】
第2無線機420の機能構成は、図4を参照しつつ説明した第1無線機310の機能構成と同様である。すなわち、第2無線機420は、扉検知部と送信部とを備えている。第2無線機420の扉検知部は、扉412の開閉を検知する。第2無線機420の送信部は、扉412が閉じていることを検知した場合に信号Aを送信し、扉412が開いたことを検知した場合には信号Aの送信を停止する。第3無線機440は、送信部のみを備えている。第3無線機440の送信部は、常に信号Aを送信している。
【0021】
図5は、人体通信装置110の機能構成を示すブロック図である。人体通信装置110は、無線通信部112と、人体通信部113と、メッセージ記憶部116と、暗号鍵記憶部117と、人体検知部118と、認証部119と、警戒動作部120と、動作制御部121とを備えている。
【0022】
無線通信部112は、第1無線機310、第2無線機420および第3無線機440からそれぞれ信号Aを受信する。人体通信部113は、送信電極114と受信電極115とを有し、人体デバイス200と各種情報を送受信する。メッセージ記憶部116は、人体デバイス200の認証に利用するメッセージMを記憶している。暗号鍵記憶部117は、人体デバイス200の認証に利用する暗号鍵Kを記憶している。
【0023】
人体検知部118は、人体通信部113を介して人体デバイス200と信号の送受信を行い、受信した信号に基づいて人体を検知する。具体的には、送信電極114から信号Bを送信する。信号Bは、人体デバイス200により受信され、人体を経由した後再び人体デバイス200により人体通信装置110に送信される。人体検知部118は、受信電極115が人体デバイス200から人体を経由した後の信号Bを受信すると、受信電極115が人体デバイス200から受信した信号Bの位相と送信電極114から人体デバイス200に送信した信号Bの位相の位相差に基づいて、人体を検知する。具体的には、人体デバイス200から受信した信号Bの位相が、人体デバイス200に送信した信号Bの位相に比べて進んでいる場合に、搬送ケース100の取っ手部102を携帯者が握っている、すなわち人体を検知したと判断する。このように、人体検知部118は、人体の容量性と抵抗性により人体経由前後の信号に位相差が生じることを利用して人体を検知する。
【0024】
認証部119は、人体通信部113を介して受信した情報に基づいて、人体デバイス200を装着した携帯者の認証を行う。具体的には、人体通信部113の送信電極114が人体デバイス200に信号Bを送信する際に、信号Bとともに、質問としてメッセージMを送信する。人体デバイス200においては、質問の回答としてメッセージMを自身が有する暗号鍵Kと連結させた後、連結した値のハッシュ値を作成し、ハッシュ値を回答として人体通信装置110に送信する。受信電極115がこの回答を受信すると、認証部119は、暗号鍵記憶部117に記憶されているメッセージMと暗号鍵記憶部117に記憶されている暗号鍵Kとを連結させ、連結値のハッシュ値を作成する。そして、作成したハッシュ値と受信電極115が人体デバイス200から受信した回答としてのハッシュ値とを比較する。両者のハッシュ値が一致した場合、すなわち回答が正しい場合には、認証に成功したと判断する。両者のハッシュ値が一致しない場合、すなわち回答が誤っている場合には、認証に失敗したと判断する。
【0025】
警戒動作部120は、認証部119が認証に失敗した場合に、警戒動作を行う。警戒動作としては、例えば、警報を警備センタに送信する。また、他の例としては、搬送ケース100にインクを吹き付けることにより、紙幣を使用不可能な状態にする。また、他の例としては、大音量のブザーを鳴動させる。なお、警備動作は、警戒状態であることを何らかの手段で周囲または警備センタに通知するものではればよく、実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
動作制御部121は、無線通信部112から信号Aの受信の有無を監視し、信号Aを受信したか否かに基づいて、人体通信部113、人体検知部118、認証部119および警戒動作部120による動作である人体通信動作を制御する。
【0027】
人体通信装置110の人体通信部113は、図6に示すように、搬送ケース100の取っ手部102に設けられている。これにより、携帯者が搬送ケース100の取っ手部102を握った場合に、人体通信により携帯者の人体デバイス200との人体通信を行うことができる。
【0028】
図7は、人体デバイス200の機能構成を示すブロック図である。人体デバイス200は、受信電極201と、送信電極202と、暗号鍵記憶部203と、回答生成部204とを備えている。受信電極201および送信電極202は、人体通信装置110と各種情報を送受信する。暗号鍵記憶部203は、当該人体デバイス200の認証に利用する暗号鍵Kを記憶している。なお、暗号鍵記憶部203に記憶されている暗号鍵と、人体通信装置110の暗号鍵記憶部117に記憶されている暗号鍵は同一の値である。回答生成部204は、受信電極201を介して受信したメッセージMと暗号鍵記憶部203が記憶している暗号鍵Kとに基づいて、回答を生成する。具体的には、前述の通り、メッセージMと暗号鍵記憶部203が記憶している暗号鍵Kを連結させた後、連結値のハッシュ値を作成する。そして、ハッシュ値を回答として送信電極202を介して人体通信装置110に送信する。
【0029】
図8は、人体通信装置110による搬送警備処理を示すフローチャートである。第1無線機310、第2無線機420および第3無線機440のいずれからも信号Aを受信しない場合には(ステップS100,No)、動作制御部121は、人体通信装置110における人体通信動作を許可し(ステップS102)、ステップS106に進み、人体通信処理を行う。
【0030】
一方、第1無線機310、第2無線機420および第3無線機440のいずれかの無線機から信号Aを受信した場合には(ステップS100,Yes)、動作制御部121は、人体通信動作を禁止する(ステップS104)。この場合、再びステップS100に戻り、動作制御部121は、信号Aを受信したか否かの監視を続ける。
【0031】
人体通信動作が許可された場合には(ステップS102)、人体通信部113の送信電極114は、信号Bと、メッセージ記憶部116に記憶されているメッセージMとを人体デバイス200に送信する(ステップS106)。次に、人体検知部118は、人体デバイス200から受信した信号Bと送信電極114が送信した信号Bの位相差に基づいて、人体を検知する。人体検知部118により人体が検知されると(ステップS108,Yes)、次に、認証部119は携帯者の認証を行う。すなわち、受信電極115が質問としてのメッセージMを送信してから予め定めた所定時間以内に送信電極114が回答を受信すると(ステップS110,Yes)、認証部119は、受信電極115が受信した回答と、メッセージ記憶部116に記憶されているメッセージMと暗号鍵記憶部117に記憶されている暗号鍵Kとに基づいて作成したハッシュ値とを比較する。
【0032】
受信電極115が受信した回答としてのハッシュ値と、認証部119が作成したハッシュ値とが一致する場合、すなわち携帯者の認証に成功した場合には(ステップS112,Yes)、警戒動作は行わず、ステップS100に戻る。
【0033】
一方、ステップS108において、人体を検知しない場合(ステップS108,No)、ステップS110において、所定時間以内に人体デバイス200から回答を受信しない場合(ステップS110,No)、ステップS112において、認証に失敗した場合(ステップS112,No)には、警戒動作部120は警戒動作を行う(ステップS114)。
【0034】
搬送ケース100の搬送経路としては、以下のような経路が想定される。すなわち、まず搬送元の取扱区画430において、取扱者により搬送ケース100内に貴重品が収容される。次に、搬送ケース100は、受渡区画410に運ばれ、ここで取扱者から搬送者に引き渡される。搬送者に携帯された搬送ケース100は、受渡区画410の扉412を抜け、建物400の外に運ばれる。そして、警備輸送車300の荷台扉304を通って荷台302に積載される。
【0035】
搬送ケース100は、警備輸送車300により輸送され、搬送者に携帯されて搬送先の建物400内の受渡区画410まで運ばれる。受渡区画410において搬送者から取扱者に引き渡される。その後、取扱者により取扱区画430に運ばれる。
【0036】
以上の搬送経路を搬送される間、搬送ケース100に設置された人体通信装置110は、図8を参照しつつ説明した搬送警備処理を行う。
【0037】
取扱区画430は、外部と直接通じておらず安全な区画である。そこで、取扱区画430に設置された第3無線機440から常に信号Aを送信させる。これにより、取扱区画430では、搬送ケース100は、搬送警備処理において、常に信号Aを受信し、人体通信動作を禁止する(ステップS100,Yes、ステップS104)。このように、安全な区画である取扱区画430においては人体通信動作を禁止することにより、人体通信装置110のバッテリー消費を低減することができる。さらに、取扱区画430で人体通信動作を禁止することにより、取扱区画430においては、搬送ケース100を携帯する取扱者であっても人体デバイス200の装着が不要となり、人体通信装置110の利便性を向上させることができる。
【0038】
受渡区画410には、外部に繋がる扉412が設けられており、扉412が開いている場合には、外部からの不正な侵入者が侵入する可能性がある。そこで、扉412が閉じている場合のみ、受渡区画410に設置された第2無線機420に信号Aを送信させることとした。これにより、受渡区画410において扉412が閉じている場合には、搬送ケース100は搬送警備処理において、信号Aを受信して、人体通信動作を禁止する(ステップS100,Yes、ステップS104)。このように、扉412が閉じて搬送ケース100の安全性が確保されている場合には人体通信動作を禁止することにより、人体通信装置110のバッテリー消費を低減することができる。さらに、扉412が閉じている場合には、受渡区画410において、人体デバイス200を装着しない取扱者による搬送ケース100の携帯が可能となり、人体通信装置110の利便性を向上させることができる。
【0039】
一方、扉412が開いている場合には、搬送ケース100は搬送警備処理において、信号Aを受信せず、人体通信動作を許可する(ステップS100,No、ステップS102)。したがって、外部からの侵入者が現れた場合には警戒動作を行うことができ、搬送ケース100の安全性を確保することができる。
【0040】
このように、同じ区画においても、扉の開閉などにより安全状態が変化する場合には、状態に応じて人体通信動作を行うか否かを設定することにより、必要な場合にのみ人体通信動作を行うことができるので、搬送ケース100の安全性を確保しつつ、人体通信装置110のバッテリー消費を効果的に低減することができる。
【0041】
搬送ケース100が搬送者により建物400から警備輸送車300までの経路では、人体通信装置110はいずれの無線機からも信号Aを受信しない。したがって、人体通信装置110は、人体通信動作を許可する(ステップS100,No、ステップS102)。これにより、搬送ケース100の安全性を確保することができる。
【0042】
警備輸送車300の荷台302は基本的には安全な領域である、しかし、外部に繋がる荷台扉304が設けられており、荷台扉304が開いている場合には、荷台302内部に侵入者が侵入する可能性がある。そこで、荷台扉304が閉じている場合にのみ、第1無線機310に信号Aを送信させる。これにより、荷台302において荷台扉304が閉じている場合には、搬送ケース100は搬送警備処理において信号Aを受信し、人体通信動作を禁止する(ステップS100,Yes、ステップS104)。このように、荷台扉304が閉じており安全性が確保されている場合には、人体通信動作を禁止することにより、人体通信装置110のバッテリー消費を低減することができる。
【0043】
さらに、例えば加速度センサなどにより搬送ケースの持ち運びを検出し、人体を検出した場合に、搬送ケース100の携帯者の認証を行うような構成とした場合には、警備輸送車300が移動している間は人体通信動作は停止しているので、誤報の発生を防ぐことができる。
【0044】
一方、荷台扉304が開いている場合には、搬送ケース100は搬送警備処理において、信号Aを受信せず、人体通信動作を許可する(ステップS100,No、ステップS102)。したがって、侵入者が現れた場合には警戒動作を行うことができ、搬送ケース100の安全性を確保することができる。
【0045】
このように、警備輸送車300においても、荷台扉304の開閉に応じて人体通信動作を行うか否かを設定することにより、必要な場合にのみ人体通信動作を行うことができるので、搬送ケース100の安全性を確保しつつ、人体通信装置110のバッテリー消費を効果的に低減することができる。
【0046】
なお、無線機の設置位置および信号の発生タイミングは、本実施の形態に限定されるものではなく、搬送ケース100の搬送経路、取り扱い場所に応じて適宜設置し、適宜タイミングを制御すればよい。具体的には、搬送ケース100が携帯者に携帯されないが、強盗などの可能性がない、またはきわめて低い安全な場所に無線機を設置する。さらに、例えば扉が閉じている場合のみ安全であるなど、所定の条件に合致する場合にのみ安全である場合には、安全なタイミングでのみ信号Aを送信するように無線機の信号送信を制御すればよい。
【0047】
また、第1の変更例としては、図9に示すように、人体通信装置110の人体通信部113を搬送ケース100の側面104に設けてもよい。さらに、人体通信部113は、複数の送信電極114a〜114cおよび複数の受信電極115a,115bを有してもよい。この場合には、複数の送信電極114a〜114cおよび複数の受信電極115a,115bは、搬送ケース100の側面104に交互に配置される。
【符号の説明】
【0048】
10 搬送警備システム
100 搬送ケース
102 取っ手部
104 側面
110 人体通信装置
112 無線通信部
113 人体通信部
114 送信電極
115 受信電極
116 メッセージ記憶部
117 暗号鍵記憶部
118 人体検知部
119 認証部
120 警戒動作部
121 動作制御部
200 人体デバイス
201 受信電極
202 送信電極
203 暗号鍵記憶部
204 回答生成部
300 警備輸送車
302 荷台
304 荷台扉
310,420,440 無線機
311 扉検知部
312 送信部
400 建物
410 受渡区画
412 扉
430 取扱区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴重品を搬送する搬送ケースに設けられ、人体通信を行う人体通信装置と、前記搬送ケースを携帯する携帯者に装着されたデバイスであって、前記人体通信装置と通信を行う人体デバイスと、前記人体通信装置に信号を送信する無線機とを備えた搬送警備システムであって、
前記無線機は、当該無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、前記人体通信装置による人体通信処理を禁止する場合に第1信号を送信する送信手段を有し、
前記人体通信装置は、
前記無線機から前記第1信号を受信する第1受信手段と、
前記人体デバイスに第2信号を送信する送信手段と、
前記人体デバイスから前記携帯者の人体を経由した後の前記第2信号および前記携帯者の認証に利用する認証情報を受信する第2受信手段と、
前記第2受信手段が受信した前記第2信号に基づいて人体を検知する人体検知手段と、
前記第2受信手段が受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証する認証手段と、
前記人体検知手段が前記人体を検知しない場合および前記認証手段が認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒手段と、
前記第1受信手段が前記第1信号を受信しない場合には、前記送信手段、前記第2受信手段、前記人体検知手段および前記認証手段による処理である前記人体通信処理を許可し、前記第1受信手段が前記第1信号を受信した場合には、前記人体通信処理を禁止する動作制御手段と
を有し、
前記人体デバイスは、
前記第2信号を受信する受信電極と、
前記受信電極が前記第1信号を受信した場合に、前記人体を経由した後の前記第2信号および前記認証情報を前記人体通信装置に送信する送信電極と
を有することを特徴とする搬送警備システム。
【請求項2】
前記無線機は、前記搬送ケースが収容される搬送車の荷台内部に設置され、
前記無線機は、前記搬送車の荷台扉の開閉を検知する扉検知手段をさらに有し、
前記無線機の前記送信手段は、前記扉検知手段が前記荷台扉が閉じていることを検知した場合に前記第1信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項3】
前記無線機は、前記搬送ケースの受け渡しが行われる建物内部の受渡区画に設置され、
前記無線機は、前記受渡区画と外部との間に設けられた扉の開閉を検知する扉検知手段をさらに有し、
前記無線機の前記送信手段は、前記扉検知手段が前記扉が閉じていることを検知した場合に前記第1信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項4】
前記無線機は、前記搬送ケースが取り扱われる建物内部の取扱区画に設置され、
前記無線機の前記送信手段は、前記取扱区画においては常時定期的に前記第1信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項5】
前記人体通信装置は、暗号鍵およびメッセージを記憶する記憶手段をさらに有し、
前記送信手段は、前記第2信号とともに、前記メッセージを前記人体デバイスに送信し、
前記人体デバイスの前記受信電極は、前記第2信号とともに前記メッセージを受信し、
前記人体デバイスは、前記暗号鍵を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している前記暗号鍵と前記受信電極が受信した前記メッセージとに基づいて前記認証情報を生成する生成手段をさらに有し、
前記人体デバイスの前記送信電極は、前記第1信号とともに前記生成手段により生成された前記認証情報を前記人体通信装置に送信し、
前記人体通信装置の前記第2受信手段は、前記人体デバイスから前記第1信号とともに前記認証情報を受信し、
前記人体通信装置の前記認証手段は、前記人体通信装置の前記記憶手段に記憶されている前記暗号鍵および前記メッセージ並びに前記第2受信手段が受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証することを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項6】
前記人体通信装置の前記人体検知手段は、前記送信手段が送信した前記第2信号と、前記第2受信手段が受信した前記第2信号の位相差に基づいて前記人体を検知することを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項7】
前記人体通信装置の前記受信電極および前記送信電極は、前記搬送ケースの取っ手部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項8】
前記人体通信装置の前記受信電極および前記送信電極は、前記搬送ケースの側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送警備システム。
【請求項9】
前記人体通信装置は、前記受信電極および前記送信電極をそれぞれ複数有し、
複数の前記受信電極および複数の前記送信電極は、前記搬送ケースの側面に交互に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の搬送警備システム。
【請求項10】
貴重品を搬送する搬送ケースに設けられ、人体通信を行う人体通信装置と、前記搬送ケースを携帯する携帯者に装着されたデバイスであって、前記人体通信装置と通信を行う人体デバイスと、前記人体通信装置に信号を送信する無線機とを備えた搬送警備システムにおける搬送警備方法であって、
前記無線機の送信手段が、当該無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、前記人体通信装置による人体通信処理を禁止する場合に第1信号を送信する送信ステップと、
前記人体通信装置の第1受信手段が、前記無線機から前記第1信号を受信する第1受信ステップと、
前記人体通信装置の送信手段が、前記人体デバイスに第2信号を送信する送信ステップと、
前記人体通信装置の第2受信手段が、前記人体デバイスから前記携帯者の人体を経由した後の前記第2信号および前記携帯者の認証に利用する認証情報を受信する第2受信ステップと、
前記人体通信装置の人体検知手段が、前記第2受信ステップにおいて受信した前記第2信号に基づいて人体を検知する人体検知ステップと、
前記人体通信装置の認証手段が、前記第2受信ステップにおいて受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証する認証ステップと、
前記人体通信装置の警戒手段が、前記人体検知ステップにおいて前記人体を検知しない場合および前記認証ステップにおいて認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒ステップと、
前記人体通信装置の動作制御手段が、前記第1受信ステップにおいて前記第1信号を受信しない場合には、前記送信ステップ、前記第2受信ステップ、前記人体検知ステップおよび前記認証ステップによる処理である前記人体通信処理を許可し、前記第1受信ステップにおいて前記第1信号を受信した場合には、前記人体通信処理を禁止する動作制御ステップと、
前記人体デバイスの受信電極が、前記第2信号を受信する受信ステップと、
前記人体デバイスの送信電極が、前記受信電極が前記第1信号を受信した場合に、前記人体を経由した後の前記第2信号および前記認証情報を前記人体通信装置に送信する送信ステップと
を有することを特徴とする搬送警備方法。
【請求項11】
貴重品を搬送する搬送ケースに設けられ、前記搬送ケースを携帯する携帯者に装着されたデバイスと人体通信を行う人体通信装置であって、
無線機が設置された場所に応じて予め設定された条件にしたがい、前記人体通信装置による人体通信処理を禁止する場合に前記無線機から送信される第1信号を受信する第1受信手段と、
前記人体デバイスに第2信号を送信する送信手段と、
前記人体デバイスから前記携帯者の人体を経由した後の前記第2信号および前記携帯者の認証に利用する認証情報を受信する第2受信手段と、
前記第2受信手段が受信した前記第2信号に基づいて人体を検知する人体検知手段と、
前記第2受信手段が受信した前記認証情報に基づいて前記携帯者を認証する認証手段と、
前記人体検知手段が前記人体を検知しない場合および前記認証手段が認証に失敗した場合に警戒動作を行う警戒手段と、
前記第1受信手段が前記第1信号を受信しない場合には、前記送信手段、前記第2受信手段、前記人体検知手段および前記認証手段による処理である前記人体通信処理を許可し、前記第1受信手段が前記第1信号を受信した場合には、前記人体通信処理を禁止する動作制御手段と
を備えたことを特徴とする人体通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−182203(P2010−182203A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26669(P2009−26669)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】