説明

携帯無線機

【課題】携帯無線機において、電池部と回路基板との接続位置によらず、高いアンテナ性能を実現する。
【解決手段】携帯無線機は、筐体と、筐体内に収納された回路基板と、筐体内に収納された電池部と、筐体に取り付けられ、回路基板に電気的に接続されたアンテナを有する。電池部の電源端子と回路基板が給電接続部により接続され、電池部のグランドと回路基板のグランドがグランド接続部により接続される。グランド接続部は、給電接続部よりもアンテナに近い位置に配置されている。
【選択図面】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池部を備えた携帯無線機において、電池部と回路基板との接続位置によらず、高いアンテナ性能が得られる携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯無線機は、無線回路及びロジック回路を動作させるための電池部を筐体内に備えている。電池部は、回路基板と平行に近接して配置され、回路基板上の接続端子を介して回路基板のグランドに接続されている。したがって、回路基板のグランドに流れるアンテナ電流と、グランドとの接続を介して電池に流れるアンテナ電流とが干渉し、アンテナ性能が劣化するという課題があった。
【0003】
このような課題に対応した構成として、特許文献1の構成があげられる。特許文献1によれば、アンテナエレメントを電池部に接続してループアンテナを構成することで、電池部のアンテナへの影響を除去し、アンテナ性能を向上することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平05−067910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の例では、電池の配置位置及びアンテナ構成が制限され、携帯無線機の設計の自由度が減少するという課題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池部と回路基板との接続位置によらず、高いアンテナ性能を確保できる携帯無線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯無線機は、筐体と、筐体内に収納された回路基板と、筐体内に収納された電池部と、筐体に取り付けられ、回路基板に電気的に接続されたアンテナとを有する。更に、電池部の電源端子と回路基板を接続し、電池部から回路基板に電流を供給する給電接続部と、電池部のグランドと回路基板のグランドを、少なくとも無線周波数下で高周波接続するグランド接続部とを備え、グランド接続部が給電接続部よりもアンテナに近い位置に配置されている。
【0008】
グランド接続部が、前記電池部に隣接しつつアンテナに対し最も近い位置に配置されるよう構成することが好ましい。
【0009】
また、給電接続部が、前記電池部に隣接しつつアンテナから最も遠い位置に配置されるよう構成することが好ましい。
【0010】
さらに、給電接続部及びグランド接続部が、電池部の平面視略対角線上に配置されるよう構成してもよい。
【0011】
一方、グランド接続部を、電池部の本体と、回路基板のグランドに接続され電池部に対し所定の距離を隔てた状態で筐体内に配置された板金から構成することができる。この場合、通電時に、電池部及び板金が容量結合を形成する。
【0012】
上記構成において、板金と回路基板のグランドをリアクタンス素子を介して接続することができる。また、電池部は、回路基板に対し略平行に配置され得る。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、電池部と回路基板との接続位置によらず、高いアンテナ性能を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る携帯無線機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。無線周波数は900MHzに設定する。
【0015】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明に係る第1実施形態の携帯無線機の基本的構成を示す。
【0016】
本実施形態の携帯無線機は、筐体101、回路基板102、アンテナ103、整合回路104、無線部105、及び電池パック106を有する。筐体101は、樹脂により構成されており、小型端末を想定すると、長さは70mm、幅は50mm程度に設定される。アンテナ103にはヘリカルアンテナを用い、アンテナ103は整合回路104を介して無線部105に接続されている。
【0017】
また、電池パック106は樹脂でできたケースの内部にグランドで囲まれた電池部107を有する。電池パックの寸法は縦幅35mm x 横幅35mm x 厚さ5mmである。回路基板102と電池パック106との間には厚さ2mmの樹脂カバー108が配置され、電池パックが直接回路基板に接触しないようになっている。図3に示すように、電池パック106は表面にグランド端子301と電源端子302とを備え、電池端子303により回路基板102の電源ライン及びグランドに各々接続される。電源端子端子302と電池端子303により給電接続部が構成される。電池端子303の設置位置は無線回路及びロジック回路の実装面積及びレイアウトにより決定され、ここでは電池端子303はアンテナと反対側の回路基板102の端部に設置されている。
【0018】
給電接続部は電池部107から回路基板102ひいては無線部105への電流供給のために必須である。本実施形態では、電源端子302は、電池部107の中で、アンテナ103から実質的に最も遠い位置に設けられている。そして、これに対応するように、回路基板102上に電池端子303が設けられる。言い換えると、給電接続部が、電池部107に隣接した状態で、アンテナ103の給電部から最も遠くなるよう、電池端子303と電源端子302の位置が設定されている。
【0019】
図4に示すように、グランドピン401は電池部のグランドとの接続を目的とし、アンテナ103に最も近い位置で回路基板102上に設置される。電池パック106には電源端子302とは別に、グランドピン401との接続のために、グランド端子402が設けられている。グランドピン401とグランド端子402との接続によりグランド接続部が構成され、電池部のグランドはアンテナ103に最も近い位置で回路基板102に接地される。すなわち、グランド端子402は、電池部107の中でアンテナ103に最も近い位置に設けられている。そして、これに対応するように、回路基板102上にグランドピン401が設けられる。言い換えると、グランド接続部が、電池部107に隣接した状態で、アンテナ103の給電部に対し最も近くなるよう、グランドピン401とグランド端子402の位置が設定されている。
【0020】
後述するように、グランド接続部は電池部107のグランドと、回路基板102を高周波接続し、電池部107側にアンテナ電流を発生させるためのものである。
【0021】
本実施形態では、給電接続部とグランド接続部は、電池部107の平面視における略対角線上に配置されている。また、電池部107は、回路基板102と長手方向に平行に配置されている。ただし、厳密に平行に配置される必要はなく、略平行に配置されてもよい。
【0022】
上記のように構成した携帯無線機において、アンテナ動作の説明を行う。
【0023】
図5はグランドピン401を備えた本実施形態におけるアンテナ電流分布を表し、図6はグランドピン401の無い従来の構成のアンテナ電流分布を表している。501,601は筐体に流れるアンテナ電流の強度を示している。一方、504,604は電池部107に流れるアンテナ電流の強度を示している。アンテナ103は無線周波数の1/4波長で共振するヘリカルアンテナ構成をしている。また、回路基板102の長さは65mmであり、無線周波数の1/4波長以下である。したがって、電池パックが無い場合、アンテナの給電部に相当するアンテナ給電点(図5、図6における筐体101とアンテナ103の接続点P)で電流の最大点を持ち、アンテナと反対側の回路基板の端部で、電流は最小となる。
【0024】
しかしながら、従来の構成のように、電池パックがアンテナ103と反対側の回路基板102の端部で、必須の給電接続部のみを介して回路基板のグランドに接続されている場合、図6に示すように、アンテナ電流は基板端で最小にならずに、電池端子303を介して電池部にも流れる。回路基板の長さが1/4波長以下であるため、アンテナと電池との間に電流の節(最小点)は持たず、電池端子303と反対側の電池部の端で電流は最小となる。また、回路基板が長い場合に比べて、電流が集中するため、電池部に流れる電流は大きくなる。このとき、回路基板に流れるアンテナ電流602と電池部に流れるアンテナ電流603とが逆相になり、互いに打ち消し合い、放射効率の劣化が生じる。特に、回路基板長が1/4波長以下である場合には、電池部に流れる電流が大きいため、放射効率の劣化も大きくなる。従来の構成の無線周波数900MHzでの放射効率は―3.0dBであり、X―Z面の垂直成分の指向性は図10の1002のようになる。
【0025】
一方、本実施形態では、給電接続部のみならず、グランド接続部においても、電池部107がアンテナに近い位置で回路基板102のグランドと接続されている。具体的には、少なくとも携帯無線機の無線周波数下で、電池部107のグランドと回路基板102のグランドを高周波接続する。そして、グランド接続部が給電接続部よりもアンテナ、またはアンテナ給電部に近い位置に配置されている。そのため、図5に示すように、アンテナ電流は電池部107からグランドピン401に流れる。電池部107に流れるアンテナ電流503 は電池端子303を介して、回路基板102の端部で最小となる。また、回路基板102を流れるアンテナ電流502も同様に回路基板の端部で最小となり、電池部に流れる電流と回路基板に流れる電流とは同相となり、電流の打ち消し合いは起きない。
【0026】
本実施形態の無線周波数900MHzでの放射効率は―2.0dBであり、X―Z面の垂直成分の指向性は図10の1001のようになる。したがって、本実施形態の構成を用いることにより、電池パックを備えた携帯無線機において、電池部と回路基板との接続位置によらず、高いアンテナ性能が得られている。特に本実施形態では、電池部107は、回路基板102と長手方向に平行に配置されているため、二つのアンテナ電流が逆相であると互いに打ち消し合い、放射効率の劣化が生じやすいため、本発明の効果は大きい。
【0027】
電流503はグランドピン401を介して電池部に流れる為、グランドピンの接点は1点よりも複数設定することで、言い換えると、複数のグランド接続部を設けることで、より高い効果を得られる。
【0028】
本実施形態では、電池部と回路基板の間の接続部を給電接続部のみならず、よりアンテナに近い箇所に、電池部と回路基板を高周波接続するグランド接続部を設ける構成とした。この構成下においては、電池部にアンテナ側へ向かうアンテナ電流を発生させることができる。この結果、給電接続部のみを設けた場合に比べ、回路基板に流れるアンテナ電流と電池部に流れるアンテナ電流の打ち消し合いを緩和し、高いアンテナ性能を確保することが可能となった。
【0029】
尚、給電接続部及びグランド接続部の相対位置関係は、グランド接続部が給電接続部よりもアンテナに近い位置に設けられればよく、この関係を維持する限り、本願の効果は達成される。好ましくは、グランド接続部がアンテナの給電部になるべく近い位置に設けられ、給電接続部がアンテナの給電部からなるべく遠い位置に設けられる。
【0030】
(第2実施形態)
図7及び図8は本発明に係る第2実施形態の携帯無線機の基本的構成を示す。
【0031】
図7及び図8において、図1及び図2に示す符号と同一の符号を付すものは同一の構成要素を示しており、その詳細な説明を省略する。
【0032】
701は、金属製の板金を示している。板金701の寸法は電池パック106とほぼ同じ大きさをしており、縦幅40mm x 横幅37mmである。また、板金701は樹脂カバー108の電池側に貼付され、電池パック106と0.1mm以下の間隔で密接している。図9に示すように、板金701は、接続ピン703を介して、アンテナに近い位置で回路基板102上に設けられたリアクタンス素子702と接続される。リアクタンス素子702は回路基板102のグランドに接続されているため、板金701はリアクタンス素子702を介して回路基板102のグランドに接地されることになる。リアクタンス素子702は具体的にはチップインダクタ、チップコンデンサまたは0Ωのチップ抵抗が用いられる。ここでは、リアクタンス素子702に0Ωのチップ抵抗を用い、板金701と回路基板102のグランドとは短絡とする。
【0033】
上記のように構成した携帯無線機において、アンテナ動作の説明を行う。
【0034】
板金701と電池パック106とは0.1mmの間隔で近接しているため、電池部107本体そのものがグランドとして機能した状態で、板金701と容量結合を形成する。従って、無線周波数においては、電池部107と板金701はほぼ短絡状態にある。そのため、電池部107は板金701を介して、アンテナに近い位置で回路基板102のグランドに接地されることになる。すなわち、電池部107の本体及び板金701が第1実施形態におけるグランド接続部として機能する。このときのアンテナ電流分布は図5と等価となり、回路基板102に流れるアンテナ電流と電池部107に流れるアンテナ電流とは同相になる。したがって、電池パックの影響による放射効率の劣化はなく、第1実施形態と同等の放射効率が得られる。
【0035】
また、電池パックに新たにグランド端子を設ける必要がないため、既成の電池パックを用いることができるという利点がある。
【0036】
なお、本実施形態ではリアクタンス素子702として0Ωのチップ抵抗を用いたが、無線周波数、筐体構造、電池パックの形状及び板金と電池パックとの位置関係により、最適なリアクタンス定数が異なる場合はリアクタンス定数を調整することで、より高いアンテナ性能を得ることができる。さらに、本実施形態では、板金701と回路基板102のグランドとの接続には単一のリアクタンス素子を用いているが、複数のリアクタンス素子を設け、周波数に応じて最適なリアクタンス素子を切り換える切換回路を用いて接続してもよい。
【0037】
なお、本実施形態では樹脂カバー108に板金701を隣接配置させたが、樹脂カバー108を金属製に変更し、リアクタンス素子702と接続してもよい。この場合、金属カバー108と電池部107の間で通電時に容量結合がなされる。また、電池部との容量結合及び回路基板のグランドとの接続が安定する構成であれば、導電性クッションまたは導電性シート等を、樹脂または金属カバーの代わりに用いてもよく、その構成、材料などは特に限定されない。
【0038】
また、本発明の接続部も、その形状、材料、構成、数は実施形態のものに限られず、種々の変更が可能である。アンテナ性能の確保がなされる限り、種々のものを採用することができる。また、アンテナと回路基板の接続方法、回路基板上での無線部の配置、筐体及び基板の構造、無線部の種類等も特に限定されない。
【0039】
また、電池部は種々のセルを用いたものを利用することができ、その種類は限定されない。また、セルの個数も単一であってもよいし複数であってもよい。また、電池パックを製造するため電池部に付属される部品としては、保護回路、密封樹脂カバー等があるが、特に限定はされない。
【0040】
上述した実施形態では、ヒンジを備えない携帯無線機を用いているが、ヒンジを備えた折畳式携帯無線機であってもよい。また、本実施形態ではアンテナとしてヘリカルアンテナを用いているが、基板をアンテナの接地導体として用いるアンテナであれば、逆Lアンテナや逆Fアンテナ等、他のアンテナでも同等の効果が得られ、その種類は限定されない。本発明の携帯無線機は、携帯電話やPHS、その他種々の携帯端末に用いることが可能である。
【0041】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、特許請求の範囲及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
電池部を備えた携帯無線機において、電池部と回路基板との接続位置によらず、高いアンテナ性能を得ることに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態の携帯無線機の側面図である。
【図2】第1実施形態の携帯無線機の正面図である。
【図3】第1実施形態において電池端子側から見た電池部の拡大図である。
【図4】第1実施形態においてアンテナ側から見た電池部の拡大図である。
【図5】第1実施形態の携帯無線機のアンテナ電流を説明した図である。
【図6】従来例のアンテナ電流を説明した図である。
【図7】第2実施形態の携帯無線機の側面図である。
【図8】第2実施形態の携帯無線機の正面図である。
【図9】第2実施形態における板金の近傍の拡大図である。
【図10】第1実施形態と従来例の指向性の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
101 筐体
102 回路基板
103 アンテナ
104 整合回路
105 無線部
106 電池パック
107 電池部
108 樹脂カバー
301 グランド端子
302 電源端子
303 電池端子
401 グランドピン
402 グランド端子
501,502,503,504,604,601,602,603 電流
701 板金
702 インダクタンス素子
703 接続ピン
1001,1002 垂直成分の指向性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に収納された回路基板と、
前記筐体内に収納された電池部と、
前記筐体に取り付けられ、前記回路基板に電気的に接続されたアンテナと、
前記電池部の電源端子と前記回路基板を接続し、前記電池部から前記回路基板に電流を供給する給電接続部と、
前記電池部のグランドと前記回路基板のグランドを、少なくとも無線周波数下で高周波接続するグランド接続部とを備え、
前記グランド接続部が前記給電接続部よりも前記アンテナに近い位置に配置された、携帯無線機。
【請求項2】
前記グランド接続部が、前記電池部に隣接しつつ前記アンテナに対し最も近い位置に配置された、請求項1に記載の携帯無線機。
【請求項3】
前記給電接続部が、前記電池部に隣接しつつ前記アンテナから最も遠い位置に配置された、請求項2に記載の携帯無線機。
【請求項4】
前記給電接続部及び前記グランド接続部が、前記電池部の平面視略対角線上に配置された、請求項3に記載の携帯無線機。
【請求項5】
前記グランド接続部が、
前記電池部の本体と、
前記回路基板のグランドに接続され、前記電池部に対し所定の距離を隔てた状態で前記筐体内に配置された板金とからなり、
通電時に、前記電池部及び前記板金が容量結合を形成する、請求項1に記載の携帯無線機。
【請求項6】
前記板金と前記回路基板のグランドがリアクタンス素子を介して接続された、請求項5に記載の携帯無線機。
【請求項7】
前記電池部が、前記回路基板に対し略平行に配置されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の携帯無線機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−19842(P2006−19842A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193310(P2004−193310)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】