説明

携帯端末装置、そのアタッチメントユニット及びその動作設定用プログラム

【課題】電車乗車中、会議室、図書館等の周囲への配慮が必要な場所での通話着信、メール受信等の通知に好適なイベント報知機能を備えた携帯端末装置の提供。
【解決手段】携帯電話装置100は、ジャイロスコープ220と、ジャイロスコープ220内部の回転体の回転軸の方向を変更するアクチュエータ210と、アクチュエータ210を作動させて、ジャイロスコープ220の回転軸に、アクチュエータ210の作動方向と直交する方向のトルクを発生させることにより、イベント発生をユーザに通知するイベント発生処理部(通話着信処理部340、メール受信処理部350)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置、そのアタッチメントユニット及びその動作設定用プログラムに関し、特に、着信音出力やバイブレータ動作とは別のイベント通知機能を備えた携帯端末装置、そのアタッチメントユニット及びその動作設定用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車乗車中、会議室、図書館等の着信音が周囲の迷惑になる場所において、通話着信やメール受信を知らせるためのバイブレータを備える携帯電話機が広く普及している。また、携帯電話機では、複数の動作モードを切り替えることにより、イベント毎に、バイブレータで報知するか、着信音で報知するかを細かく設定することが可能となっている。
【0003】
また、特許文献1には、折り畳み型、回転オープン型、スライド型等の携帯電話機等の2つの筐体の相対的な位置関係に変化を発生させ、通話着信やメール受信を知らせることのできる携帯通信端末が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−210516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にも記されているとおり、バイブレータは、机の上等に置かれた状態であったりすると、耳障りな音が出てしまうという問題点がある。また、特許文献1の携帯通信端末では、折り畳み型、回転オープン型、スライド型等の携帯端末等に限られてしまう上、衣服のポケットや鞄の中等の狭い場所では筐体を移動させることができず、その本来の報知動作を行うことができないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、上記着信音、バイブレータ、筐体間の相対位置関係の変化等に代るイベント通知機能を備えた携帯端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の視点によれば、モータと、該モータで回転し、所定の方向に回転軸を傾けることができるよう支持される回転体と、前記回転体の回転軸の方向を変更するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させ、前記回転体の回転軸に、前記アクチュエータの作動方向と直交する方向のトルクを発生させることにより、イベントの発生をユーザに通知するイベント発生処理部と、を備えたこと、を特徴とする携帯端末装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の視点によれば、携帯端末装置に着脱可能な筐体内に、モータと、該モータで回転する回転体と、前記回転体の回転軸の方向を変更するアクチュエータと、を配設し、携帯端末装置からの指示に応じて、前記アクチュエータを作動させ、前記回転体の回転軸に、前記アクチュエータの作動方向と直交する方向のトルクを発生させること、を特徴とする携帯端末装置用アタッチメントユニットが提供される。
【0009】
本発明の第3の視点によれば、上記した携帯端末装置に実行させるプログラムであって、ユーザに通知するイベント毎に、前記アクチュエータの動作パターンを定めた動作設定ファイルを更新する携帯端末の動作設定用プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耳障りでなく、独楽やジャイロスコープの首振り運動で知られる特徴ある動きで、イベントの発生をユーザに通知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る携帯電話装置の構成を表したブロック図である。図1を参照すると、アクチュエータ210、ジャイロスコープ220、デバイスドライバ310、動作設定MMI(Man Machine Interface)320、動作設定ファイル330、通話着信処理部340、メール受信処理部350を含んだ携帯電話装置100の構成が示されている。
【0012】
アクチュエータ210は、デバイスドライバ310からの指示に基づき動作し、ジャイロスコープ220内のフライホイール状の回転体の回転軸方向を変更する。
【0013】
ジャイロスコープ220は、アクチュエータ210により、その内部で高速回転するフライホイール状の回転体の回転軸方向の変更を受け、アクチュエータ210より受ける力の向きと直交する方向に発生するトルクを携帯電話装置100の筐体に伝達することにより、携帯電話装置100のイベント報知手段として機能する。
【0014】
デバイスドライバ310は、通話着信処理部340やメール着信処理部350、あるいは、アラーム機能等を実現する他のプログラムからの指示に基づき、アクチュエータ210の動作を制御する。
【0015】
動作設定MMI(Man Machine Interface)320は、通話着信時やメール着信時の携帯電話装置100の動作(ジャイロスコープ220の動作)を設定するためのインタフェースを提供し、動作設定ファイル330に記録された設定内容を表示するとともに、ユーザが設定変更した動作内容を動作設定ファイル330に記録する。動作設定MMI(Man Machine Interface)320は、例えば、携帯電話装置100の動作モードや報知態様を決定する動作設定プログラムの形態で備えられる。
【0016】
動作設定ファイル330には、動作設定MMI(Man Machine Interface)320にて受け付けた携帯電話装置100の通話着信時やメール着信時の携帯電話装置100の動作設定が記録される。
【0017】
通話着信処理部340は、動作設定ファイル330を参照し、その内容に基づき、デバイスドライバ310に対して、通話着信時のアクチュエータ210の動作を指示する。
【0018】
メール受信処理部350は、動作設定ファイル330を参照し、その内容に基づき、デバイスドライバ310に対して、メール受信時のアクチュエータ210の動作を指示する。
【0019】
ここで、ジャイロスコープ220を利用した本実施形態の携帯電話装置のイベント発生報知機構の仕組みについて説明する。図2は、アクチュエータ210の作動によるジャイロスコープ内の回転体の姿勢の変化を説明するための図である。
【0020】
図2の(a)は、ジャイロスコープによる報知機能をオンにした状態を表しており、アクチュエータ210は作動しておらず、ジャイロスコープ内の回転体221は、その初期位置を保ったまま、モータ222によって上方から見て時計回りに回転している。
【0021】
ここで、図2の(b)のように、アクチュエータ210を作動させ、回転体221及びモータ222の回転軸の方向を図右側に傾斜させると、回転体221及びモータ222の回転軸が、上方から見て時計回りに歳差運動(プリセッション)を開始する。この回転体221の軸に発生する所謂「首振り」運動を携帯電話装置100のイベント発生報知動作として利用する。
【0022】
上記回転体221及びアクチュエータ210の配置は携帯端末装置の筐体形状と実現したい動作によって決定される。例えば、携帯端末装置の筐体の長手方向に沿って、回転体の回転軸を配置することにより、携帯端末装置を机の上に立てておいた場合に、机の鉛直方向を軸として首振り運動させる報知動作をさせることが可能となる。
【0023】
続いて、本実施形態に係る携帯電話端末100において、実際に、通話着信やメール受信時に、上記ジャイロスコープ220を利用したイベント発生報知が行われるまでの流れについて説明する。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に係る携帯電話装置100の動作設定処理の流れを表したフローチャートである。図3を参照すると、ユーザが携帯電話装置100の動作設定MMI(Man Machine Interface)320を起動すると、動作設定ファイル330に設定されている内容の読み込みが行われる(ステップS001)。
【0025】
続いて、動作設定MMI(Man Machine Interface)320は、読み出した内容をユーザに提示するするとともに、イベント(必要な処理)毎に報知手段の動作設定を受け付ける(ステップS002)。
【0026】
ここで、ジャイロスコープ220による報知機能をオンにすべく、アクチュエータ設定の変更(ジャイロスコープ220の動作変更)を受け付けると(ステップS003)、動作設定MMI(Man Machine Interface)320は、動作設定ファイル330にその内容の書き込みを行う(ステップS004)。ここでの設定可能項目としては、単なるオンオフだけでなく、アクチュエータ210の作動パターンやモータ222の回転数等を変更できるようにすることが望ましい。
【0027】
アクチュエータ210の作動パターンとしては、(A)同一方向に連続して回転体221の回転軸の方向を変更させるパターン、(B)同一方向であるが間欠的に回転体221の回転軸の方向を変更させるパターン、(C)着信メロディの鳴動に合わせて回転体221の回転軸の方向を変更させるパターンが考えられる。また、(D)イベント(必要な処理)毎に、回転体221の回転軸の方向を変える向きを変えられるようにすれば、携帯電話装置100の回転方向により、イベントの種別をユーザに通知することが可能となる。
【0028】
なお、ユーザが設定変更を望むイベント(必要な処理)が複数ある場合には、上記ステップS002〜S004の処理が繰り返される。一方、ユーザがステップS002で終了を選択すると処理終了となる(ステップS002の「処理終了」)。
【0029】
また、図3は、ユーザがイベント(必要な処理)毎に通知手段の動作設定を行う形式の動作設定処理の例を示しているが、携帯電話装置100の動作モードとして、上記ジャイロスコープ220による報知を行う動作モード(例:「マナーモード/ジャイロ」)を設けておき、該動作モードの選択により、一連の動作設定を一括して設定できるようにすることも可能である。
【0030】
図4は、本実施形態に係る携帯電話装置100の通話着信処理部340の動作を表したフローチャートである。まず、電源投入や上記動作設定の更新が行われたタイミングで、通話着信処理部340は、動作設定ファイル330の読み込み処理を実行する(ステップS101)。以下、通話着信時に、ジャイロスコープ220による報知を行うよう動作設定されているものとして説明する。
【0031】
その後、通話着信待ちをしている待ち受け状態において(ステップS102)、非同期に通話着信を受けると、通話着信処理部340は、ユーザに通話着信を通知するために動作設定ファイル330の内容に基いてデバイスドライバ310に対して動作開始を指示する(ステップS103)。
【0032】
前記動作開始指示を受けたデバイスドライバ310は、アクチュエータ210に対し動作開始を指示する。アクチュエータ210が動作することにより、歳差運動(プリセッション)が発生して携帯電話装置100のユーザに通話着信が通知される。
【0033】
その後、通話キーが選択され通話が確立すると(ステップS104)、通話着信処理部340は、デバイスドライバ310に対し動作停止を指示する(ステップS105)。
【0034】
前記動作停止指示を受けたデバイスドライバ310が、アクチュエータ210に対し動作停止を指示すると、歳差運動(プリセッション)が終了し、その後通話状態に遷移する(ステップS106)。
【0035】
図5は、本実施形態に係る携帯電話装置100のメール受信処理部350の動作を表したフローチャートである。上記通話着信時と同様、まず、電源投入や上記動作設定の更新が行われたタイミングで、メール受信処理部350は、動作設定ファイル330の読み込み処理を実行する(ステップS201)。以下、メール受信検出後、一定期間一定パターンで、ジャイロスコープ220による報知を行うよう動作設定されているものとして説明する。
【0036】
その後、メール着信待ちをしている待ち受け状態において(ステップS202)、非同期にメール着信を受けると(ステップS203)、メール受信処理部350は、ユーザにメール着信を通知するために動作設定ファイル330の内容に基いてデバイスドライバ310に対して動作開始を指示する(ステップS204)。
【0037】
前記動作開始指示を受けたデバイスドライバ310は、アクチュエータ210に対し動作開始を指示する。アクチュエータ210が動作することにより、歳差運動(プリセッション)が発生して携帯電話装置100のユーザにメール着信が通知される。
【0038】
その後、一定期間一定パターンでアクチュエータ210を動作させた後、メール受信処理部350は、デバイスドライバ310に対し動作停止を指示する(ステップS205)。
【0039】
以上のように、周囲の迷惑にならない態様で通話着信やメール受信等の非同期イベントの発生をユーザに通知することが可能となる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、アクチュエータを作動させて、歳差運動の原理を利用するイベント報知機構を備えるという本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を行うことが可能である。例えば、上記した実施形態では、通話着信とメール受信時に動作を行う例を挙げて説明したが、一定の着信相手やメール送信元である場合にのみ、動作するようにしてもよい。
【0041】
また、上記した実施形態では、回転型のジャイロスコープを用いて歳差運動を発生させるものとして説明したが、フライホイールないし独楽状の回転体の回転軸の向きを変更した場合に発生する回転体の変化を報知手段として利用することが可能な構成であればよく、ジャイロスコープと同等の構成を持つその他均等の機械要素を採用することが可能である。
【0042】
また例えば、上記した実施形態では、歳差運動を携帯端末装置の筐体に伝達させるものとして説明したが、回転体の動きや回転体に投光した反射光等を携帯端末装置の外部から観察できるようにし、視覚にて回転体の運動の変化を伝達し、イベントの発生を通知する構成も採用可能である。
【0043】
また、上記した実施形態では、携帯電話装置に上記アクチュエータ及びジャイロスコープを内蔵するものとして説明したが、携帯端末装置からの指示にて動作するアクチュエータ及びジャイロスコープを収容したアタッチメントを携帯端末装置に装着して使用する構成も採用可能である。本構成の利点は、報知動作を大きくすることができる点と、携帯端末装置の可搬性や省電力性への影響が少ない点である。
【0044】
更には、上記アクチュエータとジャイロスコープを複数組み実装することで、複数の動きの組み合わせを発生させ、イベントの種別や着信相手の組み合わせ等に応じそれぞれ定めた動作を行わせることも可能である。
【0045】
また、上記した実施形態では、本発明を携帯電話装置100に適用した例を挙げて説明したが、本発明は、携帯電話装置100に限らず、その他PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance,Personal Digital Assistants;個人向け携帯型情報通信機器)等の携帯端末装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯電話装置の構成を表したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る携帯電話装置におけるアクチュエータの作動によるジャイロスコープ内の回転体の姿勢の変化を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る携帯電話装置の動作設定処理の流れを表したフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る携帯電話装置の通話着信処理部の動作を表したフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る携帯電話装置のメール受信処理部の動作を表したフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
100 携帯電話装置
210 アクチュエータ
220 ジャイロスコープ
221 回転体
222 モータ
310 デバイスドライバ
320 動作設定MMI(Man Machine Interface)
330 動作設定ファイル
340 通話着信処理部
350 メール受信処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータで回転し、所定の方向に回転軸を傾けることができるよう支持される回転体と、
前記回転体の回転軸の方向を変更するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させ、前記回転体の回転軸に、前記アクチュエータの作動方向と直交する方向のトルクを発生させることにより、イベントの発生をユーザに通知するイベント発生処理部と、を備えたこと、
を特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記イベント発生処理部は、ユーザに通知するイベントに応じて、前記アクチュエータの作動量又は向きを変更すること、
を特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記回転体の回転軸が、携帯端末装置の筐体長手方向に沿って、所定間隔の2点で支持されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記モータと回転体とアクチュエータとを複数組搭載したこと、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記モータと回転体とアクチュエータとが、前記携帯端末装置に着脱自在のアタッチメントユニットに収容されていること、
を特徴とする請求項1乃至4いずれか一に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
携帯端末装置に着脱可能な筐体内に、
モータと、
該モータで回転する回転体と、
前記回転体の回転軸の方向を変更するアクチュエータと、を配設し、
携帯端末装置からの指示に応じて、前記アクチュエータを作動させ、前記回転体の回転軸に、前記アクチュエータの作動方向と直交する方向のトルクを発生させること、
を特徴とする携帯端末装置用アタッチメントユニット。
【請求項7】
請求項1乃至5いずれか一に記載の携帯端末装置に実行させるプログラムであって、ユーザに通知するイベント毎に、アクチュエータの動作パターンを定めた動作設定ファイルを更新する携帯端末の動作設定用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−219374(P2008−219374A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52922(P2007−52922)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】