説明

携帯端末

【課題】長期間保管する際、耐タンパ性を維持し、かつ、消費電力を低減可能にした携帯端末を提供する。
【解決手段】タンパ検出回路と、サスペンド機能を実行可能な情報処理部と、情報処理部およびタンパ検出回路に電力を供給するための第1電池と、第1電池および情報処理部を接続する電源供給ラインに設けられ、情報処理部を第1電池に接続するか否かを切り替え可能なスイッチとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末および電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型POS(Point of Sales)およびPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末は、電池の消耗をできるだけ抑えるため、使用していないときは電源スイッチをオフにしておいた方がよいが、必要なときにすぐに使用できることが望ましい。そのため、携帯端末には、サスペンド/レジューム機能(以下では、単に「サスペンド機能」と称する)を有しているものがある。
【0003】
サスペンド機能は、電源スイッチがオフになると、電源スイッチがオフになる直前の端末の状態を保存し、その後、電源スイッチがオンになると、電源スイッチがオフになる直前の端末の状態を再現するものである。この機能により、携帯端末の操作者は、電源スイッチをオンにしたとき、電源スイッチがオフになる直前の状態から作業を続けることができる。これは、電源スイッチがオフの間も、一部のデバイスへの電源供給を継続しているからであるが、サスペンド機能が動作している間は、電源スイッチがオンの状態に比べて小さい消費電力で済み、電池の消耗が抑えられる。以後、電源スイッチがオフになる直前の端末の状態を保存して待機している状態をサスペンド状態と称する。電源スイッチをオフすることなく、電源スイッチがオンの状態で、一定期間キーイン等入力がない場合に、省電力のサスペンド状態に移行する機能もサスペンド機能に含むものとする。この場合は、省電力のサスペンド状態に移行する直前の端末の状態を保存し、その後、キーイン等で省電力のサスペンド状態が解除されると、省電力のサスペンド状態に移行する直前の端末の状態を再現する。
【0004】
一方、カード決済のデータ処理が可能な携帯型POSは、カード番号など、秘匿すべき個人情報を扱うため、メモリに記録された情報の改ざんを防ぐための対策が必要である。そのため、このような携帯型POSには、メモリに記録された情報を防御するための回路であるタンパ検出回路が設けられている。携帯型POSの本体の電源スイッチがオフになっても、タンパ検出回路に電力が供給され、タンパ検出回路は動作を維持している。
【0005】
上述のサスペンド機能およびタンパ検出回路を備えた、関連する携帯端末の構成を説明する。
【0006】
図9および図10は関連する携帯端末の一構成例を示すブロック図である。図9は電源スイッチがオンの通常の使用状態を説明するための図であり、図10はサスペンド状態を説明するための図である。
【0007】
図9に示すように、携帯端末100は、表示部となるLCD(Liquid Crystal Display)11と、所定のデータ処理を実行する情報処理部13と、ROM(Read Only Memory)15と、タンパ検出回路17と、タンパ検出回路17への電源供給ラインを切り替える切替スイッチ19と、各部へ電源を供給する電源制御部153と、第1電池23と、バックアップ用の電池である第2電池25とを有する。情報処理部13は、RAM(Random Access Memory)31と、ロジックIC(Integrated Circuit)33と、CPU(Central Processing Unit)35とを有する。
【0008】
ROM15には、CPU35が実行するためのプログラムおよびデータ処理に必要な情報が予め格納されている。RAM31は、CPU35およびロジックIC33のそれぞれのデータ処理の結果を一時的に保存するためのメモリである。
【0009】
ロジックIC33は、携帯端末100の目的の仕様に対応した専用論理回路である。CPU35は、ROM15から読み出したプログラムにしたがって処理を実行する。LCD11は、情報処理部13によるデータ処理に関する情報およびデータ処理の結果などを表示して、その内容を操作者に通知する。
【0010】
次に、電源スイッチがオンの通常の使用状態の電源供給について、図9を参照して説明する。
【0011】
携帯端末100の電源スイッチがオンの通常の使用状態では、電源制御部153から、LCD11、情報処理部13およびROM15のそれぞれに電源供給ライン43を介して第1電池23から電力を供給する。電源供給ライン43とLCD11、および電源供給ライン43とROM15の間には、情報処理部13がオンとオフをコントロールする、図示しないスイッチがあり、スイッチがオンの状態で、LCD11とROM15には電源が供給されている。電源制御部153は、信号線41を介して切替スイッチ19に制御信号を送信することで、タンパ検出回路17を電源供給ライン43と電源供給ライン45のいずれに接続するか、切替スイッチ19を制御する。ここでは、第1電池23の電池電圧が所定の電圧より上であるので、電源制御部153の制御により、切替スイッチ19は、タンパ検出回路17を第1電池23から伸びる電源供給ライン43に接続している。図9に示す、電源スイッチのオンの状態が、携帯端末100の通常の使用状態に相当する。
【0012】
次に、サスペンド状態の電源供給について、図10を参照して説明する。サスペンド状態になると、情報処理部13には電力が供給され続けるが、LCD11およびROM15への電力供給は、情報処理部13が図示しないスイッチをオフすることによって供給されなくなる。また、情報処理部13に供給される電力は、サスペンド状態を維持する電力のみとなり、通常の使用状態よりも少なくなる。従って、通常の使用時よりも少ない電力で済むことになり、電力消費が抑制される。
【0013】
なお、図9および図10では、電源制御部153が切替スイッチ19に制御信号を送信するための信号線41を除いて、各部間でデータまたは制御信号を送受信するための信号線を図に示すことを省略し、第1電池23または第2電池25からの電力供給の様子を模式的に示している。
【0014】
次に、第1電池23の電池容量が少なくなった場合、即ち、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になった場合の電源制御部153の動作を説明する。
【0015】
電源制御部153は、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になると、情報処理部13への電力供給を停止する。また、電源制御部153は、信号線41を介して切替スイッチ19に制御信号を送信し、タンパ検出回路17を第2電池25から伸びる電源供給ライン45に接続するように切替スイッチ19を制御する。この制御は、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になったときに限らず、第1電池23が携帯端末100から取り外されたときにも行われる。第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になったり、または、第1電池23が取り外されたりしても、携帯端末100はバックアップ用の第2電池25からタンパ検出回路17に電力を供給することで、耐タンパ性を保っていた。
【0016】
特許文献1には、主電源部がオフの場合に、予備電源部がタンパ検出部や不揮発性メモリなどに電源を供給する電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−123322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、第1電池の消耗を抑制するために、携帯端末を使用していないときは電源スイッチをオフにしていることが望ましいが、携帯型POSなどの業務用携帯端末を店舗で使用している場合、カード決済を行うとき、商品の購入者を待たせないためにも、サスペンド機能を有効にしておくことは重要である。
【0019】
一方、業務用携帯端末を使用する企業や店舗では、端末の故障時や業務の繁忙期などにも臨機応変に対応できるように、携帯端末の予備機を予め準備しておくことがあるが、予備機を使わずに済むこともある。この場合、予備機は全く使用されずに長期間保管されることになる。保管時においても、サスペンド機能とタンパ検出回路の動作により電力が消費されるため、業務で使用されていないのに第1電池の電池容量が短期間で少なくなり、端末の管理者の想像以上に早い段階でタンパ検出回路への電力供給が第1電池から第2電池に切り替わってしまう。そのため、第2電池の交換頻度が多くなるという問題がある。
【0020】
ここで、携帯端末を長期保管する場合であっても、バックアップ用の第2電池の交換頻度を少なくする対策として、第2電池の寿命を延ばすことが考えられる。第2電池の寿命は、次に示す式(1)で算出される。
第2電池の寿命(h)=第2電池の容量(mAh)/タンパ検出回路の消費電流(mA)
・・・式(1)
式(1)から、第2電池の寿命を延ばすには、第2電池の容量を増やす方法、または、タンパ検出回路の消費電力を抑える方法が有効なことがわかる。
【0021】
しかし、携帯端末では装置のサイズに限度があるため、第2電池の体積を増やして電池容量を増やすことは困難である。また、タンパ検出回路に要する電力消費を抑えるには、タンパ検出回路の設計変更などを行うにしても限度がある。そのため、どちらの方法も、第2電池の寿命を延ばすことは困難であり、大幅な改善を見込めない。
【0022】
本発明は上述したような技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、長期間保管する際、耐タンパ性を維持し、かつ、消費電力を低減可能にした携帯端末および電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するための本発明の携帯端末は、
タンパ検出回路と、
サスペンド機能を実行可能な情報処理部と、
前記情報処理部および前記タンパ検出回路に電力を供給するための第1電池と、
前記第1電池および前記情報処理部を接続する電源供給ラインに設けられ、該情報処理部を該第1電池に接続するか否かを切り替え可能なスイッチと、
を有する構成である。
【0024】
また、本発明の電力制御方法は、タンパ検出回路と、サスペンド機能を実行可能な情報処理部と、該情報処理部および該タンパ検出回路に電力を供給するための第1電池と、バックアップ用電池である第2電池と、前記情報処理部および前記第1電池を接続する電源供給ラインに設けられ、該情報処理部を該第1電池に接続するか否かを切り替え可能なスイッチとを有する携帯端末による電力制御方法であって、
前記第1電池の電池電圧が所定の電圧以下であるか否かを判定し、
判定の結果、前記第1電池の電池電圧が所定の電圧より上である場合、前記スイッチを介して前記情報処理部と前記第1電池とが接続されていると、前記第1電池から前記情報処理部および前記タンパ検出回路に電力を供給し、前記情報処理部と前記第1電池とが接続されていないと、前記第1電池から前記タンパ検出回路に電力を供給し、前記第1電池の電池電圧が所定の電圧以下である場合、前記タンパ検出回路への電力供給源を前記第1電池から前記第2電池に切り替えるとともに、該第1電池と前記情報処理部とが前記スイッチを介して接続されていると、該第1電池から該情報処理部への電力供給を停止するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、携帯端末を長期保管する際、耐タンパ性を保ちながら、消費電力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の携帯端末の一構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した携帯端末において、電源スイッチがオンの通常の使用状態を示す図である。
【図3】図1に示した携帯端末において、サスペンド状態を示す図である。
【図4】図1に示した携帯端末を保管する場合の状態を示す図である。
【図5】図1に示した携帯端末において、第2電池でタンパ検出回路を動作させる場合を示す図である。
【図6】タンパ検出回路と情報処理部への給電方法を説明するための図である。
【図7】本実施形態の携帯端末の消費電流の変化と第1電池の電池容量の変化を示すグラフである。
【図8】本実施形態の携帯端末の他の構成例を示すブロック図である。
【図9】関連する携帯端末において、電源スイッチがオンの通常の使用状態の一構成例を示すブロック図である。
【図10】関連する携帯端末において、サスペンド状態の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態の携帯端末の構成を説明する。
【0028】
図1は本実施形態の携帯端末の一構成例を示すブロック図である。図9に示した構成と同様な構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の携帯端末10は、LCD11と、情報処理部13と、ROM15と、タンパ検出回路17と、切替スイッチ19と、各部へ電源を供給する電源制御部21と、第1電池23と、第2電池25と、情報処理部13および電源制御部21の間に設けられたディップスイッチ27とを有する。
【0030】
本実施形態では、第1電池23は、充電することで再利用可能な「2次電池」とする。第2電池25は、充電できない、放電のみ可能な「1次電池」とする。なお、第1電池23および第2電池25の両方が1次電池であってもよく、第1電池23および第2電池25の両方が2次電池であってもよく、第1電池23を1次電池、第2電池25を2次電池としてもよい。
【0031】
図1においては、電源制御部21が切替スイッチ19に制御信号を送信するための信号線41を除いて、各部間でデータまたは制御信号を送受信するための信号線を図に示すことを省略し、第1電池23または第2電池25からの電力供給ラインを模式的に示している。
【0032】
図1に示すように、電源供給ライン43は、第1電池23から電源制御部21を経由した後、タンパ検出回路17への経路と情報処理部13への経路との2経路に分岐している。情報処理部13への経路を電源供給経路431と称し、切替スイッチ19を介してタンパ検出回路17への経路を電源供給経路432と称する。なお、後述するが、電源スイッチがオンの通常の使用状態では、LCD11およびROM15にも電源供給経路431を介して第1電池23から電力が供給される。ディップスイッチ27とLCD11、およびディップスイッチ27とROM15の間には、情報処理部13がオンとオフをコントロールする、図示しないスイッチがあり、スイッチがオンの状態で、LCD11とROM15には電源が供給されている。
【0033】
図1に示すように、ディップスイッチ27は、電源供給経路431のうち、電源制御部21と情報処理部13の間に設けられている。操作者がディップスイッチ27をオンにすると、電源供給経路431が電源制御部21を介して第1電池23と接続され、ディップスイッチ27をオフにすると、電源供給経路431と電源制御部21との接続が遮断される。
【0034】
電源制御部21は、ゲートアレイのような、電源制御専用の論理回路であってもよく、プログラムを格納したメモリおよびプログラムにしたがって処理を実行するCPUを含む構成であってもよい。いずれの構成においても、第1電池23が所定の電圧以下になると、タンパ検出回路17への電源供給元を第1電池23から第2電池25に切り替えるように構成されている。
【0035】
電池の切り替えは、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になったときに限らず、第1電池23が携帯端末100から取り外されたときにも行われる。第1電池23が取り外されると、電源制御部21は、第1電池23の電池電圧がゼロとなるからである。
【0036】
次に、本実施形態の携帯端末10において、電源スイッチがオンの通常の使用状態における電源供給方法を説明する。図2は、図1に示した携帯端末において、電源スイッチがオンの通常の使用状態を示す図である。ディップスイッチ27はオンに設定されている。
【0037】
携帯端末10の電源スイッチがオンの通常の使用状態では、電源制御部21から、LCD11、情報処理部13およびROM15のそれぞれに電源供給ライン43および電源供給経路431を介して第1電池23から電力が供給されている。ディップスイッチ27とLCD11、およびディップスイッチ27とROM15の間には、情報処理部13がオンとオフをコントロールする、図示しないスイッチがあり、スイッチがオンの状態で、LCD11とROM15には電源が供給されている。電源制御部21は、信号線41を介して切替スイッチ19に制御信号を送信することで、タンパ検出回路17を電源供給経路432と電源供給ライン45のいずれに接続するか、切替スイッチ19を制御する。ここでは、第1電池23の電池電圧が所定の電圧より上であるので、電源制御部21の制御により、切替スイッチ19は、タンパ検出回路17を第1電池23から伸びる電源供給経路432に接続している。
【0038】
このようにして、電源スイッチがオンの状態では、LCD11、ROM15、RAM31、ロジックIC33、CPU35およびタンパ検出回路17のそれぞれに、第1電池23から電力が供給される。
【0039】
次に、本実施形態の携帯端末10において、サスペンド状態における電源供給方法を説明する。図3は、図1に示した携帯端末において、サスペンド状態を示す図である。ディップスイッチ27はオンに設定されている。
【0040】
携帯端末100の電源スイッチがオフされ、サスペンド状態になると、情報処理部13が、図示しないスイッチをオフすることによって、LCD11およびROM15への電力供給が停止されるが、情報処理部13にはサスペンド機能を実行させるために、RAM31、ロジックIC33およびCPU35に第1電池23からの電力供給が維持されている。また、第1電池23からタンパ検出回路17への電力供給も維持されている。
【0041】
このようにして、サスペンド状態では、RAM31、ロジックIC33およびCPU35を含む情報処理部13に第1電池23からの電力供給が継続されることで、情報処理部13がサスペンド機能を実行し、いつでも作業を再開できるように状態を維持するとともに、電源スイッチがオンの通常の使用状態よりも電力消費が抑制される。また、タンパ検出回路17への電力供給が維持されるため、耐タンパ性が保たれる。
【0042】
次に、本実施形態の携帯端末10を保管する場合の電源供給方法を説明する。図4は、図1に示した携帯端末を保管する場合の状態を示す図である。
【0043】
携帯端末10を保管する際、操作者は、携帯端末10の電源スイッチをオフにし、さらに、サスペンド機能は不要になるため、図4に示すように、ディップスイッチ27をオフにする。ディップスイッチ27がオフに設定されているため、第1電池23からの電力は、情報処理部13に供給されない。
【0044】
このようにして、携帯端末10を保管する際、ディップスイッチ27をオフにすることにより、サスペンド機能を無効化することが可能となる。その結果、第1電池23の電池容量が電力消費量の少ないタンパ検出回路17のみに使用されるため、第1電池23による電力をタンパ検出回路17に長期間使用することができ、第1電池23の電力を有効的に利用することができる。
【0045】
次に、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になった場合の電源制御部21の動作を説明する。図5は、図1に示した携帯端末において、第2電池でタンパ検出回路を動作させる場合を示す図である。この場合、ディップスイッチ27の設定はオンでも、オフでもよい。図5では、ディップスイッチ27がオンの場合を実線で示し、オフの場合を破線で示している。
【0046】
電源制御部21は、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になると、情報処理部13への電力供給を停止する。また、電源制御部21は、信号線41を介して切替スイッチ19に制御信号を送信し、タンパ検出回路17を第2電池25から伸びる電源供給ライン45に接続するように切替スイッチ19を制御する。この制御は、第1電池23が携帯端末100から取り外されたときにも行われる。
【0047】
このようにして、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になったり、または、第1電池23が取り外されたりしても、バックアップ用の第2電池25からタンパ検出回路17に電力が供給され、耐タンパ性が保たれる。
【0048】
バックアップ用の第2電池25が使用されるのは、携帯端末10に第1電池23を実装していない場合、または、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下になった場合であるが、本実施形態では、携帯端末10の保管時にサスペンド機能を無効化すれば、第1電池23の電力を有効的に利用することができ、保管開始からバックアップ用の第2電池の使用を開始するまでの期間を長期化することができる。
【0049】
ここで、本実施形態の携帯端末10では、保管開始からバックアップ用の第2電池の使用を開始するまでの期間をどのくらい長期化できるかを、具体例を挙げて説明する。
【0050】
仮に、第1電池23の電池容量を2000mAhとし、サスペンド機能実行時に必要となる、情報処理部13の消費電流を5mAとし、タンパ検出回路17の消費電流を50μAとする。
【0051】
この仮定の下、背景技術で説明した携帯端末100を長期間保管する場合、電源スイッチをオフにしても、サスペンド機能が有効になっているため、携帯端末100では、(5mA+50μA)の電流が消費される。
【0052】
携帯端末100の場合、満充電された第1電池23を装着しても、第1電池23による給電開始からバックアップ用の第2電池25に切り替わるまでの時間は、式(1)を参考にすると、
2000[mAh]/5.05[mA]≒396[h](≒16.5日)
と算出され、約16日となる。
【0053】
これに対して、本実施形態の携帯端末10を長期間保管する場合、サスペンド機能が無効になっているため、第1電池23からの給電先がタンパ検出回路17のみとなり、携帯端末10の消費電流は50μAとなる。
【0054】
携帯端末10の場合、満充電された第1電池23を装着すると、第1電池23による給電開始からバックアップ用の第2電池25に切り替わるまでの時間は、式(1)を参考にすると、
2000[mAh]/0.05[mA]=40000[h](≒1667日)
と算出され、約1667日となる。
【0055】
計算結果を比較すると、本実施形態の携帯端末10では、第1電池23による給電開始からバックアップ用の第2電池25に切り替わるまでの時間が、携帯端末100に比べて100倍以上長くなることがわかる。
【0056】
次に、携帯端末10の電源スイッチがオフされ、サスペンド状態に移行した状態における、タンパ検出回路17とサスペンド機能を実行する情報処理部13への給電方法を説明する。図6は電源スイッチがオフされ、サスペンド状態に移行した状態における、タンパ検出回路と情報処理部への給電方法を説明するための図である。破線矢印は給電先を示す。
【0057】
第1電池23が装着されていると(ステップ101)、電源制御部21によって、第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下であるか否かが判断され(ステップ102)、第1電池23の電池電圧が所定の電圧より上であり、ディップスイッチ27がオンになっている場合(ステップ103)、電源制御部21から、タンパ検出回路17とサスペンド機能を実行する情報処理部13の双方に第1電池23から電力が供給される(ステップ104)。一方、ディップスイッチ27がオフになっている場合(ステップ103)、第1電池23による電力はタンパ検出回路17には供給されるが、情報処理部13には供給されない(ステップ105)。
【0058】
第1電池23が装着されていない場合(ステップ101)、または、ステップ102において第1電池23の電池電圧が所定の電圧以下である場合、切替スイッチ19が第2電池25側に切り替えられることにより、第2電池25による電力がタンパ検出回路17に供給される(ステップ106)。
【0059】
次に、携帯端末10において、通常使用時、サスペンド状態時、および保管時のそれぞれの状態における、消費電流の変化と第1電池23の電池容量の変化を説明する。
【0060】
図7(a)は本実施形態の携帯端末の消費電流の変化を示すグラフであり、図7(b)は第1電池の電池容量の変化を示すグラフである。図7(a)のグラフの縦軸は消費電流を示し、横軸は時間を示す。図7(b)のグラフの縦軸は電池容量を示し、横軸は時間を示す。
【0061】
図7において、操作者が携帯端末10の電源スイッチをオフにした時刻をt1とし、情報処理部13がサスペンド状態に移行した時刻をt2とし、ディップスイッチ27がオフに設定された時刻をt3としている。
【0062】
図7(a)に示すように、電源スイッチがオンの状態で、操作者が携帯端末10を使用している間、情報処理部13、LCD11、ROM15およびタンパ検出回路17に電力が供給され、消費電流はA1の値である。時刻t1に操作者が電源スイッチをオフにすると、CPU35は、電源スイッチのオフの直前の状態を示す情報をRAM31に保存し、時刻t2にサスペンド状態に移行する。これにより、時刻t2とt3の間では、タンパ検出回路17と情報処理部13に電力が供給され、図7(a)に示すように、消費電流がA1から大きく減少し、A2の値になる。また、図7(b)の電池容量の変化を示す傾きを見ると、電源スイッチがオンの状態の電池容量の変化を示す直線211に比べて、サスペンド機能を実行している状態の電池容量の変化を示す直線213の傾きが小さくなっている。
【0063】
続いて、携帯端末を保管するために、時刻t3に操作者がディップスイッチ27をオフにすると、時刻t3以降ではタンパ検出回路17にのみ電力が供給され、図7(a)に示すように、消費電流がA2よりもさらに小さいA3の値になる。図7(b)に示すように、保管時の電池容量の変化を示す直線215の傾きは、直線213よりもさらに小さくなっている。
【0064】
図7(b)には、携帯端末の保管時もサスペンド機能を有効にした場合における、第1電池23の電池容量の変化の直線213を破線で示している。直線213の破線と直線215とを比較すると、直線213の破線の方が直線215よりも早い時刻で電池容量がゼロになり、図7(b)からも、ディップスイッチ27をオフにした方が、第1電池23の電池容量が長持ちすることがわかる。
【0065】
本実施形態の携帯端末では、第1電池と情報処理部とを接続する電源供給ラインに設けられたディップスイッチをオンの状態にすることで、電源スイッチをオフにしても、サスペンド機能を有効として、電源スイッチをオフにした後、次に電源スイッチをオンにしたときに電源スイッチをオフにする直前の状態から動作可能となる。また、携帯端末を長期間保管する場合には、サスペンド機能は不要となるためディップスイッチをオフの状態にすることで、サスペンド機能を無効化する。この場合、第1電池の電源供給先が電力消費の少ないタンパ検出回路のみとなるため、長期間第1電池の電源をタンパ検出回路に使用することができる。その結果、耐タンパ性を維持しながら、携帯端末の保管開始からバックアップ用の第2電池を使用するまでの期間を長期化することができ、第1電池および第2電池を1つの電池と考えたときに電池の寿命を伸ばすことできる。
【0066】
ディップスイッチのオン/オフで携帯端末の通常使用時/保管時を切り替えることで、通常使用時は電源スイッチをオフにしても、サスペンド機能が有効になるため、今までどおりの使用方法が可能となる。
【0067】
上述の実施形態では、電源スイッチをオフしてサスペンド状態に移行する場合について述べたが、電源スイッチをオフすることなく、電源スイッチがオンの状態で、一定期間キーイン等入力がない場合に、省電力のサスペンド状態に移行する場合についても、同様である。
【0068】
上述の実施形態では、本発明をよりわかりやすく説明するために携帯端末の構成を詳細に説明したが、本発明の特徴となる制御を実行するための携帯端末は、図8に示すように、少なくともタンパ検出回路17と、情報処理部13と、第1電池23と、ディップスイッチ27とを有していればよい。図8に示す矢印は電源供給ラインである。
【0069】
なお、ディップスイッチは、スライド式であってもよく、ロック式であってもよい。また、本実施形態では、ディップスイッチを用いる場合を説明したが、操作者が手動でオン/オフを切り替え可能な機械スイッチであれば、他のスイッチであってもよい。
【0070】
ここで、電源スイッチがオフの状態でサスペンド機能を有効にするか否かの設定を機械スイッチで切り替え可能にすることによる利点を説明する。
【0071】
はじめに、ソフトウェアでサスペンド機能の設定を行う場合について説明する。サスペンド機能の設定をCPU35が実行するアプリケーションソフトウェアプログラムで行う場合、操作者は、携帯端末の電源スイッチをオンにして、携帯端末を操作してサスペンド機能の設定画面をLCD11に表示させ、サスペンド機能を有効にするか否かの入力をしなければならない。また、サスペンド機能がどのように設定されているかを確認する場合も、携帯端末の電源スイッチがオンの状態で、操作者は、携帯端末を操作して、上記設定画面をLCD11に表示させて確認しなければならず、手間がかかってしまう。
【0072】
これに対して、本実施形態のように、サスペンド機能を有効にするか否かの設定を機械スイッチで行うことが可能な構成では、操作者は、機械スイッチを目視すれば、サスペンド機能の設定状態を確認できる。携帯端末の電源スイッチがオフの状態でも、サスペンド機能が有効であるか否かの設定状態を確認できるだけでなく、サスペンド機能が有効である場合の設定状態を変更することも可能である。そのため、サスペンド機能が有効である場合の設定を変更する際、およびサスペンド機能の設定状態を確認する際のいずれにおいても、操作者は、携帯端末の電源スイッチをオンにする必要がなく、また、設定画面をLCD11に表示させるための操作を行う必要がなく、手間が軽減される。
【0073】
本発明を、タンパ検出機能が必要な小型携帯端末全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 携帯端末
11 LCD
13 情報処理部
15 ROM
17 タンパ検出回路
19 切替スイッチ
21 電源制御部
23 第1電池
25 第2電池
27 ディップスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパ検出回路と、
サスペンド機能を実行可能な情報処理部と、
前記情報処理部および前記タンパ検出回路に電力を供給するための第1電池と、
前記第1電池および前記情報処理部を接続する電源供給ラインに設けられ、該情報処理部を該第1電池に接続するか否かを切り替え可能なスイッチと、
を有する携帯端末。
【請求項2】
請求項1記載の携帯端末において、
バックアップ用電池である第2電池と、
前記第1電池の電池電圧が所定の電圧以下になると、前記タンパ検出回路への電力供給源を該第1電池から前記第2電池に切り替えるとともに、該第1電池と前記情報処理部とが前記スイッチを介して接続されている場合には、該第1電池から該情報処理部への電力供給を停止する電源制御部と、
をさらに有する携帯端末。
【請求項3】
タンパ検出回路と、サスペンド機能を実行可能な情報処理部と、該情報処理部および該タンパ検出回路に電力を供給するための第1電池と、バックアップ用電池である第2電池と、前記情報処理部および前記第1電池を接続する電源供給ラインに設けられ、該情報処理部を該第1電池に接続するか否かを切り替え可能なスイッチとを有する携帯端末による電力制御方法であって、
前記第1電池の電池電圧が所定の電圧以下であるか否かを判定し、
判定の結果、前記第1電池の電池電圧が所定の電圧より上である場合、前記スイッチを介して前記情報処理部と前記第1電池とが接続されていると、前記第1電池から前記情報処理部および前記タンパ検出回路に電力を供給し、前記情報処理部と前記第1電池とが接続されていないと、前記第1電池から前記タンパ検出回路に電力を供給し、前記第1電池の電池電圧が所定の電圧以下である場合、前記タンパ検出回路への電力供給源を前記第1電池から前記第2電池に切り替えるとともに、該第1電池と前記情報処理部とが前記スイッチを介して接続されていると、該第1電池から該情報処理部への電力供給を停止する、電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−210055(P2011−210055A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77800(P2010−77800)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】