説明

携帯通信機器

【課題】 近接非接触通信用アンテナのサイズを小型化することができ、かつ、近接非接触通信距離の向上を図ることができる携帯通信機器を提供する。
【解決手段】 近接非接触通信としてカード機能およびリーダライタ機能の両機能を有するとともに、それぞれの機能用に少なくとも2つ以上近接非接触通信用アンテナを備える携帯通信機器であって、近接非接触通信を行う外部装置(外部非接触通信用リーダライタ及び外部近接非接触通信用カード)に応じて、アンテナ2A、2Bの同調回路3A、3Bを切り替える切替制御部4および近接非接触通信制御部5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の外部装置との間での近接非接触通信を行なうための機能を有する携帯通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、個人情報、例えば電話帳などのデータが記憶された電子データを携帯電話機へ複写したり、病院や薬局などでの電子カルテの読取・書込や住民票・戸籍などの電子化された住民台帳データの閲覧・請求などを行ったり、個人の趣味のデータ(音楽や画像などの各種データ)を自己の携帯電話機などへ転送・複写・記憶させたり、自動販売機などのプリペイド用として金額データを所望の電子機器へ読取って入力したり、或いは遊園地・駅などでの改札通過用のパスなどとして使用することができる、換言すれば、通信相手を接触あるいは密着する程度まで近接させ(具体的には電界或いは磁界の作用する凡そ10cm以下程度の近接領域において)、電界或いは磁界を利用して通信を行う通信システム(以下、これを「近接非接触通信システム」とよぶ)の開発要求が高まってきている。このため、近接非接触通信を行うときの相手側となる外部の近接非接触通信機器(以下、「外部近接非接触通信機器」と略す。)や外部の近接非接触通信カード(以下、「外部近接非接触通信カード」と略す。)などとの間で近接非接触通信を行うことができる近接非接触通信機能を備えた携帯通信機器の開発が各種検討されている。
【0003】
このような近接非接触通信システムに対応した携帯通信機器の1つとして、近接非接触通信機能を付加した携帯電話機の開発が検討されている。例えば、図6は、近接非接触通信機能を付加した携帯電話機における近接非接触通信部100の回路を示すものである。この近接非接触通信部100により、図示外の外部近接非接触通信機器及び外部近接非接触通信カードと携帯電話機との間で近接非接触通信を行う場合、携帯電話機の小型化を考慮し、それぞれの周波数帯域が一致するように1つのアンテナ101で構成すれば、外部近接非接触通信機器用及び外部近接非接触通信カード用の2つの機能を備えることが可能になる。
ここで、外部近接非接触通信機器とこの携帯電話機との間で近接非接触通信を行う場合、携帯電話機に搭載されている近接非接触通信部100はカードとして機能する。一方、外部近接非接触通信カードとこの携帯電話機との間で近接非接触通信を行う場合、携帯電話機に搭載されている近接非接触通信部100はリーダライタとして機能する。
【0004】
また、カード機能時とリーダライタ機能時では、近接非接触通信の制御が大きく異なる。このため、図6に示すように、この動作制御を行なう近接非接触通信制御部(近接非接触通信用IC)110では、カード機能用及びリーダライタ機能用として、それぞれ別々に制御するようになっており、アンテナ101の接続端子も別々となっている。従って、アンテナ101を1つのもので構成しても、それぞれの機能に合わせてアンテナ101の接続を切り替える必要があり、スイッチ102、スイッチ103が必要となる。
ところで、これらのスイッチ102、103は、近接非接触通信のアンテナ101と近接非接触通信制御部(近接非接触通信用IC)110との間に直列になるように配置する必要があるが、直列に挿入したスイッチの影響で近接非接触通信における通信可能な距離が短くなるという課題があった。そこで、アンテナの面積を大きくして通信可能な距離を拡大させるという方法も考えられるが、アンテナの面積を大きくすると携帯通信機器自体のサイズも大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、外部近接非接触通信機器用と外部近接非接触通信カード用とに合わせてそれぞれアンテナを別々に設けるとともに、同一平面に2つのアンテナを形成することでアンテナの小型化を図ることができるものの開発が各種検討されている(例えば、特許文献1参照)。
このような近接非接触通信システムに対応した携帯通信機器の1つとして、例えば、図7乃至図9に示すような近接非接触通信機能を付加した携帯電話機の開発が検討されている。この携帯電話機としては、図7に示すように、メイン筺体201がストレート状(勿論、折り畳み式でも構わない)であって、メイン筺体201内部に設けた図示外の基地局との送受信を行う携帯電話用アンテナ202と、外部近接非接触通信機器300との間で近接非接触通信を行う、メイン筺体201の一面(図7及び図8では上面)近傍に設けた近接非接触通信用アンテナ203(近接非接触通信用アンテナ203A及び203Bで構成する)とを備えたものが提案されている。一方、この携帯電話機200との近接非接触通信相手となる前述の外部近接非接触通信機器300には、近接非接触通信用のアンテナ301を備えている。
【0006】
また、この携帯電話機200には、図8に示すように、外部近接非接触通信カード400との間でも、前述の近接非接触通信用アンテナ401で近接非接触通信を行うものが提案されている。このような携帯電話機200との近接非接触通信を行う外部近接非接触通信カード400には、近接非接触通信用のアンテナ401を備えている。
このように、近接非接触通信機能を有する携帯電話機200では、携帯電話用のアンテナ202を介して基地局と通話若しくはデータ通信などを行う。一方、外部近接非接触通信機器300及び外部近接非接触通信カード400と携帯電話機200との間で近接非接触通信を行う場合、近接非接触通信用アンテナ203A、203Bを、外部近接非接触通信機器300及び外部近接非接触通信カード400に密着させたり近づけてかざしたりすることにより、近接非接触通信用アンテナ203Aと外部近接非接触通信機器300内の近接非接触通信用アンテナ301、又は近接非接触通信用アンテナ203Bと外部近接非接触通信カード400内の近接非接触通信用アンテナ401とで近接非接触通信を行う。
【0007】
また、近接非接触通信用アンテナ203については、同一面にアンテナ203Aおよびアンテナ203Bを形成するものが検討されている。
このうち、外部近接非接触通信機器用アンテナ203Aは、図9に示すように、接続端子204A、205Aを介して、第1のアンテナ同調用のコンデンサ206Aと接続している。また、この外部近接非接触通信機器用アンテナ203Aは、それぞれの接続端子から第2の同調用のコンデンサ207A、208Aと接続しているとともに、近接非接触通信を制御する制御部110とも接続している。
一方、外部近接非接触通信カード用アンテナ203Bは、接続端子204B、205Bを介して、第1のアンテナ同調用のコンデンサ206Bと接続しているとともに、それぞれの接続端子から第2の同調用のコンデンサ207B、208Bと接続しており、同時に近接非接触通信を制御する制御部110とも接続している。
【特許文献1】特開2004−364199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、同一平面内にカード機能用及びリーダライタ機能用の2つのアンテナを設けると、カード機能用およびリーダライタ機能用の2つのアンテナが互いに近接して結合するので、それぞれのアンテナを独立別個に設ける場合に比べて、アンテナの利得が劣化する。その結果、近接非接触通信における通信可能な距離が短くなってしまい、所望の通信特性が得られない、という問題がある。
そこで、アンテナの開口面積を増やすことで近接非接触通信における通信距離を一定値以上に確保し、アンテナの利得を向上することも試みられている。ところが、アンテナの開口面積を増やすと、前述したように、携帯通信機器のサイズが大きくなったり、或いはデザイン性が損なわれる、という問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、外部装置との間での近接非接触通信のため複数のアンテナを設けても、それら複数のアンテナの結合による近接非接触通信時の通信可能な距離が短縮するのを回避できる携帯通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の携帯通信機器は、移動体通信を行う移動体通信部と、複数の外部装置との間で非接触通信を行う非接触通信部とを備えた携帯通信機器であって、前記複数の外部装置に対応して前記非接触通信部の同一面上に複数設けたアンテナ及びアンテナ同調回路と、前記非接触通信部により前記外部装置との間で非接触通信を行う際に前記複数の外部装置に対応して前記アンテナ同調回路を切り替える切替手段と、前記非接触通信部を制御する制御手段とを備えるものである。この構成により、外部との非接触通信を行う場合、外部装置に応じてアンテナ同調回路を切り替えるため相互結合を軽減し、非接触通信距離の短縮化を防止できる。
【0011】
本発明の携帯通信機器は、移動体通信を行う移動体通信部と、外部の近接非接触通信用カード及び外部の近接非接触通信用リーダライタとの間で近接非接触通信を行う近接非接触通信部とを備えた携帯通信機器であって、前記外部の近接非接触通信用カード及び外部の近接非接触通信用リーダライタに対応して前記非接触通信部の同一面上にそれぞれ設けたアンテナ及びアンテナ同調回路と、前記近接非接触通信部により前記外部の近接非接触通信用カード及び前記外部の近接非接触通信用リーダライタとの間で非接触通信を行う際に、前記外部の近接非接触通信用カード及び前記外部の近接非接触通信用リーダライタとの間の通信に応じて、前記近接非接触通信部に設けた前記2つのアンテナ同調回路を切り替える切替手段と、前記近接非接触通信部を制御する制御手段とを備えるものである。この構成により、外部装置、つまり外部の近接非接触通信機器及び外部の近接非接触通信カードと近接非接触通信を行う場合、外部装置に応じてアンテナ同調回路を切り替えるため、外部近接非接触通信機器用のアンテナと外部近接非接触通信カード用アンテナとの近接により発生する相互結合を軽減し、近接非接触通信距離の短縮化を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同一平面上に近接して複数のアンテナを設けても、携帯通信機器の切替手段の制御により、外部装置に対応してアンテナ同調回路を切り替え、かつ、アンテナ同調回路の切り替えをアンテナの利得に影響しない部分で行うことで、携帯通信機器用として小型で、高利得の近接非接触通信用アンテナを形成することができるとともに、近接非接触通信距離をある程度長く確保できる携帯通信機器が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明における実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯通信機器を示すものであり、この携帯通信機器は、携帯電話用アンテナ(図略)により移動体通信を行う、通常の携帯電話機としての携帯電話機能を有する移動体通信部(図略)と、近接非接触通信用アンテナ2により近接非接触通信を行なう、携帯通信機器としての近接非接触通信機能を有する近接非接触通信部1とを設けている。
【0014】
近接非接触通信部1は、図1に示すように、図示外の筺体(ストレート形状でも折り畳み形状でも構わない)内部に、近接非接触通信用アンテナ2と、外部装置である外部非接触通信用リーダライタ300(図7参照)及び外部近接非接触通信用カード400(図8参照)との間で近接非接触通信を行なう際に、この使用する外部非接触通信用リーダライタ300又は外部近接非接触通信用カード400に応じて、アンテナ同調回路3を切り替える切替手段である切替制御部4と、近接非接触通信の際の各種の制御を行う制御手段である近接非接触通信制御部5とを備えている。
【0015】
携帯電話用アンテナは、通常の携帯電話用のアンテナであって、この携帯電話用アンテナにより図示外の基地局との間で通話もしくはデータ通信を行う。
【0016】
一方、近接非接触通信用アンテナ2は、筺体内部において、できるだけ近接非接触通信面寄りに配置されており、近接非接触通信面を介して外部近接非接触通信機器300のアンテナ301および外部近接非接触通信カード400のアンテナ401との間で近接非接触通信を行う。この近接非接触通信用アンテナ2は、図2に示すように、外部近接非接触通信機器用アンテナ(以下、第1アンテナとよぶ)2Aと、外部近接非接触通信カード用アンテナ(以下、第2アンテナとよぶ)2Bとで構成されている。なお、図2は、各アンテナのパターンを上面から見た状態になっており、2層以上の多層で形成されている。本実施形態では、第1アンテナ2Aを3ターン、第2アンテナ2Bも3ターンに巻装しているが、このターン数に限るものではない。
【0017】
アンテナ同調回路3は、外部近接非接触通信機器用のアンテナ同調回路(以下、通信機器用同調回路とよぶ)3Aと外部近接非接触通信カード用のアンテナ同調回路(以下、カード用同調回路)3Bとで構成している。なお、通信機器用同調回路3Aと制御部5とを接続する端子には端子51、52を用いている。一方、カード用同調回路3Bと制御部5とを接続する端子には、端子53、54を用いている。
【0018】
切替制御部4は、近接非接触通信部1により外部装置(外部非接触通信用リーダライタ300及び外部近接非接触通信用カード400)との間で非接触通信を行う際に、外部非接触通信用リーダライタ300及び外部近接非接触通信用カード400に応じて、非接触通信部に含まれるアンテナ回路を切り替えるものであり、その詳細については後述する。制御部5は、近接非接触通信の際の各種の制御を行うものであり、その詳細については後述する。
【0019】
なお、[背景技術]の欄で説明したように、外部近接非接触通信機器300は、携帯通信機器200との間で近接非接触通信を行うものであり、内部には、携帯通信機器200との対向面(図7では下面に相当する部分)寄りに近接非接触通信用アンテナ301を設置している。
【0020】
一方、外部近接非接触通信カード400は、図8において、携帯通信機器200との間で近接非接触通信を行うものであり、内部には、携帯通信機器200に対向面(図8では下面に相当する部分)寄りに近接非接触通信用アンテナ401を設置している。
なお、ここで、「近接非接触通信」とは、「背景技術」の欄でも述べたように、電界或いは磁界を利用して通信するものである。周知のように、磁力及び電気力は、クーロンの法則に従う力の一種であって、距離の2乗に反比例する(逆2乗則に従う)といった特徴を有するので、ショートレンジで急激にその力が減少する。このため、本発明での「近接非接触通信」とは、電界或いは磁界の作用する専ら10cm以下程度の近接領域において成立する通信のことを指すものとする。
【0021】
次に、近接非接触通信用アンテナ2及びこのアンテナの同調回路3などについて、詳細に説明する。
本実施形態の近接非接触通信用アンテナ2は、前述したように、第1アンテナ2Aと、第2アンテナ2Bとで構成しているが、第1アンテナ2Aは、図1において、接続端子51、52を介して通信機器用同調回路3Aに設けた第1同調用の第1コンデンサ31と接続しているとともに、接続端子51、52を介して通信器用同調回路3Aに設けた第2同調用のコンデンサ32、33とも接続している。さらに、第1アンテナ2Aは、それぞれの接続端子51、52を介して、近接非接触通信を制御する近接非接触通信制御部5とも接続されている。
また、第2同調用のコンデンサ33において、アンテナ接続端子51と回路的に接続されている端子とは反対の端子は、GNDと接続又は非接続を行なうスイッチS1と接続されている。このスイッチS1は、切替制御部4によって制御される。なお、スイッチS1を第2同調用のコンデンサ33に接続しているが、もう一方の第2同調用のコンデンサ32に接続しても良い。
【0022】
特に近接非接触通信を行う場合、規定の周波数に共振するようにアンテナおよびアンテナ同調回路を設計する必要があるが、外部近接非接触通信機器用アンテナである第2アンテナ2Aは、インダクタンス成分として働き、第1同調用のコンデンサ31と第2同調用のコンデンサ32、33で規定の周波数に共振するように設計される。従って、アンテナ同調回路3の一部を動作しないようにすると、共振周波数を規定の周波数からずらすことができる。つまり、同一面に配置されている第2アンテナ2Bの共振周波数とは異なる周波数に変えることができ、第1アンテナ2Aと第2アンテナ2Bの結合を減らすことができる。
また、第1同調用のコンデンサ31は高いQを必要とするため、スイッチS1を第1同調用のコンデンサ31に設けると、第1アンテナ2Aを使用する外部近接非接触通信機器との通信時に、アンテナ同調回路のQが劣化する。これにより、アンテナの利得が劣化してしまい、近接非接触通信時の通信距離が短縮してしまうため、本発明はアンテナの利得に対して影響を与えない第2同調用のコンデンサ33にスイッチS1を入れる構成にしている。
【0023】
一方、外部近接非接触通信カード用アンテナである第2アンテナ2Bは、図1において、接続端子53、54を介して第1同調用のコンデンサ34と接続しているとともに、接続端子53、54を介して第2同調用のコンデンサ35、36と接続している。さらに、この第2アンテナ2Bは、接続端子53、54を介して近接非接触通信を制御する近接非接触通信制御部5とも接続している。また、第2同調用のコンデンサ36において、アンテナとの接続端子53と回路的に接続されている端子とは反対の端子は、GNDと接続又は非接続できるスイッチS2と接続されている。このスイッチS2は、切替制御部4によって制御される。なお、スイッチS2は、第2同調用のコンデンサ36に接続しているが、第2同調用のコンデンサ35に接続しても良い。
【0024】
特に近接非接触通信を行う場合、規定の周波数に共振するようにアンテナおよびアンテナ同調回路を設計する必要があるが、外部近接非接触通信カード用アンテナである第2アンテナ2Bはインダクタンス成分として働き、第1同調用のコンデンサ34と第2同調用のコンデンサ35、36で規定の周波数に共振するように設計される。従って、第1アンテナ1Aと同様に、アンテナ同調回路3の一部を動作しないようにすると、共振周波数を規定の周波数からずらすことができる。つまり、同一面に配置されている第1アンテナ2Aの共振周波数とは異なる周波数に変えることができ、第1アンテナ2Aと第2アンテナ2Bの結合を減らすことができる。
また第1同調用のコンデンサ34は、第1アンテナ1Aと同様に、高いQを必要するため、スイッチS2を第1同調用のコンデンサ34に設けると、第2アンテナ2Bを使用する外部近接非接触通信カードとの通信時に、アンテナ同調回路のQが劣化する。これにより、アンテナの利得が劣化してしまい、近接非接触通信時の通信距離が短縮してしまうため、本発明はアンテナの利得に対して影響を与えない第2同調用のコンデンサがある方のアンテナ同調回路にスイッチS2を設けている。
【0025】
従って、本実施形態によれば、携帯通信機器1が外部近接非接触通信機器300と近接非接触通信を行う場合、スイッチS1がGNDと接続され、また、スイッチS2がGNDと非接続になるように、切替制御部4より制御される。また、携帯通信機器1が外部近接非接触通信カード400と近接非接触通信を行う場合、スイッチS2がGNDと接続され、かつ、スイッチS1がGNDと非接続になるように、切替制御部S2により制御される。図1に示すスイッチS1としては、図3に示すように抵抗RとダイオードDで構成でき、スイッチS2を図3に示すような回路で形成したもので良い。勿論、スイッチS1及びスイッチS2を図3とは異なった回路で形成しても良い。また、図1に示すスイッチS1及びスイッチS2は、図4に示すように、近接非接触通信制御部5に搭載しても良い。
【0026】
以上説明してきたように、外部近接非接触通信装置に応じた切替制御部4の制御により、2つのアンテナ同調回路3A、3Bのうち未使用側の同調回路を動作させないことで、アンテナの共振周波数をずらし、使用するアンテナへの結合を軽減している。また、同調回路3A、3Bを動作させないようにするためのスイッチS1,S2を、アンテナの利得への影響を最低限に抑えることができる部分に搭載することで、所望の近接非接触通信の距離を確保することもできる。さらに、アンテナを小型化することもできる。
【0027】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図5を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0028】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、第2同調用のコンデンサ32について、アンテナ接続端子52と回路的に接続されている端子とは反対の端子は、GNDとの接続又は非接続を行なうスイッチS3に接続されており、このスイッチS3によるGNDとの接続又は非接続の動作が切替制御部4によって制御される。
【0029】
ここで、第1の実施形態と同様、特に近接非接触通信を行う場合、規定の周波数に共振するようにアンテナおよびアンテナ同調回路を設計する必要があり、外部近接非接触通信機器用アンテナである第1アンテナ2Aはインダクタンス成分として働き、第1同調用のコンデンサ31と第2同調用のコンデンサ32、33で規定の周波数に共振するように設計される。従って、アンテナ同調回路3の一部を動作しないように構成すると、共振周波数を規定の周波数からずらすことができる。つまり、同一面に配置される第2アンテナ2Bの共振周波数とは異なる周波数に変えることができ、第1アンテナ2Aと第2アンテナ2Bとの結合を減らすことができる。
【0030】
また、第1実施形態と同様、第1アンテナ同調回路において、第1同調用のコンデンサ31を設けてある方のアンテナ同調回路は高いQが必要とされるため、例えばスイッチS1を第1同調用のコンデンサ31に設けると、第1アンテナ2Aを使用する外部近接非接触通信機器との通信時に、第1アンテナ同調回路2AのQが劣化する。その結果、アンテナの利得が劣化してしまい、近接非接触通信時の通信距離が低下してしまう。このため、本発明では、アンテナの利得に対して影響を与えない第2同調用のコンデンサ32、33がある方の回路にスイッチS1、S3を設ける構成にしている。
【0031】
また、本実施形態では、通信機器用同調回路3Aに設けた第1アンテナの2つの第2同調用コンデンサ32、33を動作させないようにするため、第1アンテナ2Aの共振周波数は第1の実施形態と比べ、大きくずらすことができ、同一面に配置される第2アンテナ2Bへの結合を大きく軽減することができる。
【0032】
また、本実施形態では、第1に実施形態と異なり、第2同調用のコンデンサ35において、アンテナ接続端子54と回路的に接続されている端子とは反対の端子が、GNDとの接続又は非接続を行なうスイッチS4と接続されており、このスイッチS4によるGNDと接続又は非接続の動作が切替制御部4によって制御される。
【0033】
ここで、第1実施形態と同様、特に近接非接触通信を行う場合、規定の周波数に共振するようにアンテナおよびアンテナ同調回路を設計する必要があるが、外部近接非接触通信カード用アンテナである第2アンテナ2Bはインダクタンス成分として働き、第1同調用のコンデンサ34と第2同調用のコンデンサ35、36で規定の周波数に共振するように設計される。従って、アンテナ同調回路3の一部を動作しないようにすると、共振周波数を規定の周波数からずらすことができる。つまり、同一面に配置されている第1アンテナ2Aの共振周波数とは異なる周波数に変えることができ、第1アンテナ2Aと第2アンテナ2Bの結合を減らすことができる。
また、第1の実施形態と同様、カード用同調回路3Bにおいて、第1同調用のコンデンサ34は高いQが必要とされるため、スイッチS2を第1同調用のコンデンサ34のある方の回路に形成すると、第2アンテナ2Bを使用する外部近接非接触通信カードとの通信時に、アンテナ同調回路のQが劣化する。この結果、アンテナの利得が劣化してしまい、近接非接触通信時の通信距離が短縮してしまうため、本発明はアンテナの利得に対して影響を与えない第2同調用のコンデンサ35、36がある方の回路にスイッチS2,S4を設ける構成にしている。
また、第1アンテナ2A動作の際に、第2アンテナの2つの第2同調用コンデンサ35、36を動作させないようにするため、第2アンテナ2Bの共振周波数は、第1の実施形態と比べ、大きくずらすことができ、同一面に配置される第1アンテナ2Aへの結合を大きく軽減できる。
【0034】
従って、本実施形態によれば、携帯通信機器1が外部近接非接触通信機器300と近接非接触通信を行う場合、スイッチS1およびスイッチS3がGNDと接続され、かつ、スイッチS2およびスイッチS4がGNDと非接続状態となるように、これらの4つのスイッチが切替制御部4により制御される。
また、本実施形態の携帯通信機器1が外部近接非接触通信カード400と近接非接触通信を行う場合、スイッチS2およびスイッチS4がGNDと接続され、かつ、スイッチS1およびスイッチS3がGNDと非接続になるように、切替制御部4により制御される。
【0035】
なお、図5に示すスイッチS1としては、第1の実施形態と同様、図3に示すように抵抗RとダイオードDで構成できるが、スイッチS2〜スイッチS4も図3に示すような回路で形成したもので良い。勿論、スイッチS1〜スイッチS4は、図3の構成とは異なった回路で形成しても構わない。また、図5ではスイッチをスイッチS1〜スイッチS4の都合4つ設けているが、いずれか3つのみの構成でも構わない。また、図5に示すスイッチS1、スイッチS3およびスイッチS2、スイッチS4は、第1の実施形態と同様に、図4に示すような近接非接触通信制御部5に搭載しても良い。
【0036】
以上説明してきたように、外部近接非接触通信装置に応じた切替制御部4の制御により、2つのアンテナの同調回路3A、3Bのうち未使用側の同調回路を動作させないことで、アンテナの共振周波数をずらし、使用するアンテナへの結合を軽減している。また、同調回路3A、3Bを動作させないようにするためのスイッチSを、アンテナの利得への影響を最低限に抑えることができる部分に搭載することで、所望の近接非接触通信の距離を確保することもできる。さらに、アンテナを小型化することもできる。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の携帯通信機器は、複数の外部装置に対応して複数のアンテナを設けても、その複数のアンテナの結合による近接非接触通信時の通信距離の劣化を回避できる効果を有し、電界或いは磁界を利用して通信を行う通信システム等で用いるカード機能およびリーダライタ機能を有する携帯通信機器などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る携帯通信機器の近接非接触通信部の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る近接非接触用アンテナの構成を示すパターン図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る携帯通信機器の要部構成を示すブロック図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る携帯通信機器の近接非接触通信部の変形例の要部構成を示すブロック図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る携帯通信機器の近接非接触通信部の構成を示すブロック図
【図6】従来におけるブロック図
【図7】外部近接非接触通信機器との間で近接非接触通信を行うときの従来の携帯電話機の状態を示す説明図
【図8】外部近接非接触通信カードとの間で近接非接触通信を行うときの従来の携帯電話機の状態を示す説明図
【図9】従来の近接非接触通信機能を有する携帯電話機の要部構成を示す回路図
【符号の説明】
【0040】
1 近接非接触通信部
2 近接非接触通信用アンテナ
2A 第1近接非接触通信用アンテナ(第1アンテナ)
2B 第2近接非接触通信用アンテナ(第2アンテナ)
3 アンテナ同調回路
3A 外部近接非接触通信機器用のアンテナ同調回路(通信機器用同調回路)
3B 外部近接非接触通信カード用のアンテナ同調回路(カード用同調回路)
31 第1同調用の第1コンデンサ
32、33 第2同調用のコンデンサ
34 第1同調用のコンデンサ
35、36 第2同調用のコンデンサ
4 切替制御部(切替手段)
5 近接非接触通信制御部
51、52、53、54 端子
S1〜S4 スイッチ
300 外部非接触通信用リーダライタ(外部装置)
400 外部近接非接触通信用カード(外部装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信を行う移動体通信部と、複数の外部装置との間で非接触通信を行う非接触通信部とを備えた携帯通信機器であって、
前記複数の外部装置に対応して前記非接触通信部の同一面上に複数設けたアンテナ及びアンテナ同調回路と、
前記非接触通信部により前記外部装置との間で非接触通信を行う際に前記複数の外部装置に対応して前記アンテナ同調回路を切り替える切替手段と、
前記非接触通信部を制御する制御手段と
を備える携帯通信機器。
【請求項2】
移動体通信を行う移動体通信部と、外部の近接非接触通信用カード及び外部の近接非接触通信用リーダライタとの間で近接非接触通信を行う近接非接触通信部とを備えた携帯通信機器であって、
前記外部の近接非接触通信用カード及び外部の近接非接触通信用リーダライタに対応して前記非接触通信部の同一面上にそれぞれ設けたアンテナ及びアンテナ同調回路と、
前記近接非接触通信部により前記外部の近接非接触通信用カード及び前記外部の近接非接触通信用リーダライタとの間で非接触通信を行う際に、前記外部の近接非接触通信用カード及び前記外部の近接非接触通信用リーダライタとの間の通信に応じて、前記近接非接触通信部に設けた前記2つのアンテナ同調回路を切り替える切替手段と、
前記近接非接触通信部を制御する制御手段と
を備える携帯通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−295469(P2006−295469A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112248(P2005−112248)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】