説明

携帯電話およびマイクロホンユニット

【課題】外形が小さく、かつ、雑音除去が可能な高品質のマイクロホンユニットを備えた携帯電話および当該マクロフォンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニットは、内部空間を有する筐体10と、筐体10内に設けられ、内部空間を第1の空間102と第2の空間104とに分割する仕切り部20と、を含む。筐体10には、第1の空間102と筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、第2の空間104と筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔と、が形成され、仕切り部20は、第1の空間102からの音圧と第2の空間104からの音圧とを受けて振動する振動膜30と、振動膜30に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子70a,70b・・・と、を有し、仕切り部20は、音波を伝搬する媒質の、筐体の内における第1の空間と第2の空間との間の相互移動を遮断するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率良く雑音を除去するマイクロホンユニットを備えた携帯電話および当該マイクロホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電話などによる通話や、音声認識、音声録音などに際しては、目的の音声(ユーザの音声)のみを収音することが好ましい。しかし、音声入力装置の使用環境においては、背景雑音などのように目的の音声以外の音が存在することがある。そのため、雑音が存在する環境で使用される場合においても、ユーザの音声を正確に抽出することを可能にするための、雑音を除去する機能を有する音声入力装置の開発が進んでいる。
【0003】
雑音が存在する使用環境で雑音を除去する技術としては、マイクロホンユニットに鋭い指向性を持たせる方法、あるいは、音波の到来時刻差を利用して音波の到来方向を識別して信号処理により雑音を除去する方法が知られている。特に、近年では、電子機器の小型化が進んでおり、音声入力装置を小型化する技術が重要になっている。
【0004】
たとえば、特開平7−312638号公報(特許文献1)には、複数のマイクロホンが互いに別体で構成され、かつ互いに隔てて配置されるハンズフリー通話装置が開示されている。信号増幅部は、マイクロホン毎に設けられた増幅用オペアンプと、増幅されたマイクロホンの出力信号に対して差分増幅を行う差分増幅回路と、で構成される。差分増幅により同時入力されるノイズが相殺されることによって、当該ノイズが低減される。
【0005】
また、特開平9−331377号公報(特許文献2)には、第1のマイクロホンより音声信号を入力し、一方、第2のマイクロホンより雑音、音声信号を入力するノイズキャンセル回路が開示されている。当該ノイズキャンセル回路では、該第2のマイクロホンからの雑音・音声信号を位相反転して前記第1のマイクロホンからの音声信号と合成し、雑音信号を低減させた信号とし、使用する装置の音声入力へ入力する。同時に雑音、音声信号を位相反転したものを前記装置の音声出力信号と合成しスピーカーより出力することにより周囲の雑音を低減させる。
【0006】
また、特開2001−186241号公報(特許文献3)には、レシーバおよびマイクとは指向方向が逆向きとなるように設けたスピーカからの出力信号から、アンプおよびローパスフィルタによって周囲雑音に応じた雑音信号を抽出する電話端末装置が開示されている。当該電話端末装置においては、この抽出した雑音信号をミキサにて、位相を180度ずらした上でマイクからの出力信号に合成することでマイクからの出力信号に含まれる同様なノイズ成分を低減する。
【0007】
また、国際公開第2002/15636号パンフレット(特許文献4)には、固定の穿孔部材、穿孔部材から間隔を空けて配置された自由に移動可能な振動板、振動板と周囲近辺の穿孔部材との間の適切な間隔を維持する穿孔部材にある支持リング、および、振動板が支持リングの上に自由に留まるが、振動板を穿孔部材から機械的に分離するコンプライアントな懸架バネを含む小型ブロードバンド変換器が開示されている。そして、別の実施形態に従って、シリコンベースデバイスに使用される隆起型微小構造が開示される。隆起型微小構造は、膜を支持するリブ構造の側壁を有する略平坦な膜を含む小型ブロードバンド変換器が開示されている。
【0008】
また、特開平7−307990号公報(特許文献5)には、ハウジング内に1次差分マイクロホンを取り付け、マイクロホン・ダイアフラムの前後に隣接して前部空洞と後部空洞を形成する単一ダイアフラム2次差分マイクロホン組立体が開示されている。当該マイクロホン組立体においては、2個の前部導管が2個のポートから前部空洞へ、同様に、2個の後部導管が2個の後部ポートから後部空洞へ、それぞれ音響エネルギを伝達する。導管はすべて、それぞれのポートからダイアフラムへの等価の音響伝達関数を有する。4個のポートは、一つの直線の軸に沿って、2個の後部ポートが前部ポートの間にはさまれるように並べられる。各前部ポートとそれぞれに隣接する後部ポートとの間の距離は等しくなっている。
【0009】
また、特開2000−350296号公報(特許文献6)には、シリコンウェハーから形成されたダイアフラム部材で、下面側から異方性エッチングを施して、下に向って開口し断面形状が台形をなす凹部を形成して、ダイアフラム部材を形成するマイクロホンが開示されている。このダイアフラム部材は、環状のベースとベースに支持されたシリコンダイアフラムとから構成される。シリコンダイアフラムの上には4つのピエゾ抵抗素子が抵抗ブリッジ回路を構成し、露出面を覆うようにシリコンダイアフラムの上に絶縁性薄膜を形成する。
【0010】
また、特開2001−25095号公報(特許文献7)には、シリコンダイアフラムの上に4つのピエゾ抵抗素子を形成する自励振型マイクロホンが開示されている。ピエゾ抵抗素子の露出面を覆うようにシリコンダイアフラムの上に絶縁性薄膜を形成した後、ピエゾ抵抗素子の上に下側電極、圧電セラミックス層、上側電極を形成する。
【0011】
また、特開平9−37382号公報(特許文献8)には、音によって振動する振動板に感熱抵抗体を設け、振動板が振動したときの感熱抵抗体の抵抗値の変化を電気信号としてとらえるようにしたマイクロホンが開示されている。
【特許文献1】特開平7−312638号公報
【特許文献2】特開平9−331377号公報
【特許文献3】特開2001−186241号公報
【特許文献4】国際公開第2002/15636号パンフレット
【特許文献5】特開平7−307990号公報
【特許文献6】特開2000−350296号公報
【特許文献7】特開2001−25095号公報
【特許文献8】特開平9−37382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、マイクロホンユニットに鋭い指向性を持たせるためには、多数の振動膜を並べる必要があり、小型化が困難である。また、音波の到来時刻差を利用して音波の到来方向を精度よく検出するためには、複数の振動膜を、可聴音波の数波長分の1程度の間隔で設置する必要があり、小型化が困難である。特に、マイクロホンが、複数の収音素子と、当該収音素子から出力された出力信号に基づいて所定の演算処理を行う信号処理部と、を備える場合には、マイクロホンの製造コストも増大してしまう。
【0013】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであって、本発明の主たる目的は、外形が小さく、かつ、雑音除去が可能な高品質のマイクロホンユニットを備えた携帯電話および当該マイクロホンユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明のある局面に従えば、マイクロホンユニットを備えた携帯電話であって、マイクロホンユニットは、内部空間を有する筐体と、筐体内に設けられ、内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含む。筐体には、第1の空間と筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、第2の空間と筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔とが、入力される音声の進行方向に並べて形成される。仕切り部は、第1の空間からの音圧と第2の空間からの音圧とを受けて振動する振動膜と、振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有する。仕切り部は、音波を伝搬する媒質の、筐体の内における第1の空間と第2の空間との間の相互移動を遮断するように構成されている。マイクロホンユニットは、ピエゾ抵抗素子を介して、振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む。
【0015】
この発明の別の局面に従えば、マイクロホンユニットを備えた携帯電話であって、マイクロホンユニットは、内部空間を有する筐体と、筐体内に設けられ、内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含む。筐体には、第1の空間と筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、第2の空間と筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔とが、入力される音声の進行方向に並べて形成される。仕切り部は、筐体内周に配置され、第1の空間と第2の空間とを連通する第3の貫通孔が形成された振動膜保持部材と、外周が振動膜保持部材に密着されて第3の貫通孔を塞ぐとともに、第1の空間からの音圧と第2の空間からの音圧を受けて振動する振動膜と、振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有する。マイクロホンユニットは、ピエゾ抵抗素子を介して、振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む。
【0016】
この発明のさらに別の局面に従うと、マイクロホンユニットは、内部空間を有する筐体と、筐体内に設けられ、内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含む。筐体には、第1の空間と筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、第2の空間と筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔と、が形成される。仕切り部は、第1の空間からの音圧と第2の空間からの音圧を受けて振動する振動膜と、振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有する。仕切り部は、音波を伝搬する媒質の、筐体の内における第1の空間と第2の空間との間の相互移動を遮断するように構成されている。マイクロホンユニットは、ピエゾ抵抗素子を介して、振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む。
【0017】
この発明のさらに別の局面に従うと、マイクロホンユニットは、内部空間を有する筐体と、筐体内に設けられ、内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含む。筐体には、第1の空間と筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、第2の空間と筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔と、が形成される。仕切り部は、筐体内周に配置され、第1の空間と第2の空間とを連通する第3の貫通孔が形成された振動膜保持部材と、全外周が振動膜保持部材に密着されて第3の貫通孔を塞ぐとともに、第1の空間からの音圧と第2の空間からの音圧を受けて振動する振動膜と、振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有する。マイクロホンユニットは、ピエゾ抵抗素子を介して、振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む。
【0018】
好ましくは、振動膜には複数のピエゾ抵抗素子が取り付けられている。
さらに好ましくは、振動膜の両側に、それぞれ少なくとも1つのピエゾ抵抗素子が取り付けられている。
【0019】
さらに好ましくは、電気信号出力回路は、複数のピエゾ抵抗素子から構成されるブリッジ回路を有する。
【0020】
さらに好ましくは、振動膜は、振動膜保持部材に密着される基部と、基部の間に張られる膜部と、を有し、ピエゾ抵抗素子は、振動膜の外周部分に取り付けられている。
【0021】
さらに好ましくは、携帯電話であって、上記のマイクロホンユニットが実装される。
さらに好ましくは、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが外部から入力される音声の進行方向に並べて形成される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によって、外形が小さく、かつ、雑音除去が可能な高品質のマイクロホンユニットを備えた携帯電話および当該マイクロホンユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0024】
<携帯電話100の構成>
まず、本実施の形態に係る携帯電話100の全体構成について説明する。図1は本実施の形態に係る携帯電話100を示す外観斜視図である。図1を参照して、携帯電話100は、第1の筐体116と、第2の筐体117と、スピーカ174と、モニタ150と、カメラ142と、入力部120と、マイク172とを含む。第1の筐体116と第2の筐体117とは、接続部106にて折畳み可能に接続されている。図1には、携帯電話100として、代表的に折畳式の携帯電話を示すが、このような形式に限定されるものではない。
【0025】
次に、本実施の形態に係る携帯電話100のハードウェア構成について説明する。図2は本実施の形態に係る携帯電話100のハードウェア構成を示すブロック図である。図2を参照して、本実施の形態に係る携帯電話100は、アンテナ108と、アンテナ108にて受信された無線信号の入力を受ける無線通信部107と、データを格納するRAM(Random Access Memory)3と、制御プログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)4と、外部から各種指令の入力を受け付ける入力部120と、携帯電話100の各動作を制御するための制御部110と、画像を表示するためのモニタ150と、外部(ユーザ)からの音声が入力されるマイク172と、制御部110から出力された電気信号(音声信号)に基づいて音声を出力するスピーカ174と、を備える。
【0026】
無線通信部107は、制御部110からの制御指令に応じて、制御部110から出力されるデジタルの送話音声データを送話音声信号へと変換し、アンテナ108を介して無線信号(送話音声信号)を発信する。そして、無線通信部107は、制御部110からの制御指令に応じて、アンテナ108を介して外部からの無線信号(受話音声信号)を受信し、受話音声信号をデジタルの受話音声データへと変換して制御部110へ入力する。
【0027】
制御部110は、たとえばCPU(Central Processing Unit)やその他の演算処理装置から構成されるものである。制御部110と他の構成要素とは信号線を介して相互に接続されている。制御部110は、無線通信部107などの他の構成要素と連係しながら、携帯電話100が有する通話機能を実現する。また、制御部110は、携帯電話100の各要素を制御するものであって、入力部120から入力される指令に基づいて各種の演算を実施する装置である。
【0028】
入力部120は、機能キー群121やテンキー群122から構成されるものであって、ユーザからの各種命令や各種情報を受け付けて、制御部110へ出力する。モニタ150は、液晶パネルやCRTから構成されるものであって、制御部110が出力したポインタや文字やイラストなどから構成される情報を表示する。そして、マイク172は、ユーザからの送話音声を受け付けるものであって、筐体116に形成されたマイク孔173の内側にはマイクロホンユニット1が格納されている。
【0029】
<マイクロホンユニット1の構成>
次に、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1について説明する。図3は本実施の形態に係るマイクロホンユニット1を示す外観斜視図である。図4(A)は本実施の形態に係るマイクロホンユニット1の概略側面断面図である。図4(B)は図4(A)におけるIVB−IVB正面断面図である。
【0030】
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、図3、図4(A)、図4(B)に示すように、筐体10を含む。筐体10は、マイクロホンユニット1の外形を構成する部材である。筐体10(マイクロホンユニット1)の外形は多面体構造となっていてもよい。たとえば、筐体10の外形は、図3に示すように、六面体(直方体又は立方体)となっていてもよい。ただし、筐体10の外形は六面体以外の多面体構造となっていてもよい。あるいは、筐体10の外形は、球状構造(半球状構造)等の、多面体以外の構造となっていてもよい。
【0031】
筐体10は、図4(A)に示すように、内部空間101(第1および第2の空間102,104)を有する。すなわち、筐体10は所定の空間を区画する構造をなしており、内部空間101とは、筐体10によって区画される空間である。筐体10は、内部空間101と、筐体10の外部の空間(外部空間103)とを電気的・磁気的に遮蔽する遮蔽構造(電磁シールド構造)になっていてもよい。この場合は、後述する振動膜30および電気信号出力回路40が、筐体10の外部(外部空間103)に配置された電子部品の影響を受けにくくなり、精度の高い雑音除去機能を実現することが可能なマイクロホンユニット1を提供することができる。
【0032】
そして、筐体10には、図3および図4(A)に示すように、筐体10の内部空間101と外部空間103とを連通させる貫通孔が形成されている。本実施の形態では、筐体10には、第1の貫通孔12と第2の貫通孔14とが形成されている。第1の貫通孔12は、第1の空間102と外部空間103とを連通する貫通孔である。第2の貫通孔14は、第2の空間104と外部空間103とを連通する貫通孔である。
【0033】
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、マイク孔173から第2の貫通孔14までの距離が、マイク孔173から第1の貫通孔12までの距離よりも長くなるように構成されている。より詳細には、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、マイク孔173から第1の貫通孔12を介して振動膜30へ到達する音波の伝搬距離と、マイク孔173から第2の貫通孔14を介して振動膜30へ到達する音波の伝搬距離とが異なるように構成されている。
【0034】
前記第1および第2の貫通孔12,14の外形は特に限定されるものではないが、たとえば図3に示すように、円形となっていてもよい。ただし、第1および第2の貫通孔12,14の外形は、円形以外の形状であってもよく、たとえば矩形であってもよい。
【0035】
本実施の形態では、図3および図4(A)に示すように、第1および第2の貫通孔12,14は、六面体構造(多面体構造)をなす筐体10の1つの面15(同一面)に形成されている。ただし、変形例として、第1および第2の貫通孔12,14は、それぞれ、多面体の異なる面に形成されていてもよい。たとえば、第1および第2の貫通孔12,14は、六面体の対向する面に形成されていてもよく、六面体の隣り合う面に形成されていてもよい。また、本実施の形態では、筐体10には、1つの第1の貫通孔12と1つの第2の貫通孔14とが形成されている。ただし、本発明はこれに限られず、筐体10には、複数の第1の貫通孔12および複数の第2の貫通孔14が形成されていてもよい。
【0036】
<仕切り部20の構成>
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、図4(A)、図4(B)に示すように、仕切り部20を含む。前述したように、図4(B)は、仕切り部20を正面から観察した図である。仕切り部20は、筐体10内に、内部空間101を分割するように設けられる。本実施の形態では、仕切り部20は、内部空間101を、第1の空間102および第2の空間104に分割するように設けられる。すなわち、第1および第2の空間102,104は、それぞれが、筐体10および仕切り部20で区画された空間である。
【0037】
図5は仕切り部20を示す側面断面図である。図4(A)、図4(B)、図5に示すように、仕切り部20は、振動膜30と、振動膜30を保持する保持部材32とを含む。保持部材32は、前記筐体10内周に配置される。保持部材32は、前記筐体10の内部に密着して取り付けられるものであってもよいし、前記筐体10と一体的に形成されるものであってもよい。そして、保持部材32には、前記第1の空間102と前記第2の空間104とを連通する第3の貫通孔32bが形成されている。
【0038】
振動膜30は、シリコン基部30aと、膜部30bと、処理面30cとから構成されるものである。つまり、振動膜30は、少なくとも一部が膜部30bで構成されており、より詳細には、少なくとも一部が膜薄に形成されている。膜部30bは、音波が入射すると、当該膜部30bの法線方向に振動する部材である。そして、マイクロホンユニット1は、膜部30bの振動に基づいて電気信号を抽出することにより、膜部30bに入射した音声に応じた電気信号を出力する。すなわち、膜部30bは、マイクロホン(音響信号を電気信号に変換する電気音響変換器)を構成する振動膜である。
【0039】
また、振動膜30(膜部30b)は、第1および第2の面35,37を有する。第1の面35は第1の空間102に対向する面であり、第2の面37は第2の空間104に対向する面である。
【0040】
なお、本実施の形態では、膜部30bは、図4(A)に示すように、法線が筐体10の面15に平行に延びるように設けられている。言い換えると、本実施の形態では、振動膜30は、面15と直交するように設けられている。そして、振動膜30は、第2の貫通孔14の下方(近傍)に配置されている。すなわち、振動膜30は、第1の貫通孔12からの距離と、第2の貫通孔14からの距離とが等しくならないように配置されている。しかし、振動膜30が配置される位置は上記の形態に限定されるものではなく、振動膜30は、第1および第2の貫通孔12,14の中間に配置されていてもよいし、その法線が筐体10の面15と平行でなくてもよい。
【0041】
ここで、図6(A)は現在主流となっているコンデンサ型マイクロホン200を示す側面断面図である。図6(B)は図6(A)におけるVIB−VIB端面図である。より詳しくは、図6(B)は振動膜202を取り外した状態のコンデンサ型マイクロホン200を示す概略正面断面図であって、電極204を示すものである。図6(A)に示すように、現在主流となっているコンデンサ型マイクロホン200には、振動膜202の端部と電極204との間や、振動膜202の端部とシリコン基板201との間に微小な隙間(図6(A)における右側の隙間であって、以下、第1の隙間という。)が設けられている。すなわち、従来のコンデンサ型マイクロホンにおいては、振動膜202と電極204との間や、振動膜202とシリコン基板201との間が完全に密閉されていない。
【0042】
振動膜202は、音波を受けて振動する膜(薄膜)であって、導電性を有し、電極の一端を形成している。そして、電極204は、振動膜202と対向して配置されている。これにより、振動膜202と電極204とは容量を有する。コンデンサ型マイクロホン200に音波が入射すると、振動膜202が振動して、振動膜202と電極204との間隔が変化し、振動膜202と電極204との間の静電容量が変化する。
【0043】
この静電容量の変化を、たとえば電圧の変化として取り出すことによって、振動膜202の振動に基づく電気信号を取得することができる。すなわち、コンデンサ型マイクロホン200に入射する音波を、電気信号に変換して出力することができる。なお、コンデンサ型マイクロホン200では、電極204が、音波の影響を受けない構造であることが好ましく、たとえば、電極204はメッシュ構造をなしている。
【0044】
また、図6(A)および図6(B)に示すように、現在主流となっているコンデンサ型マイクロホン200には、電極204から振動膜202方向へと複数の突起205が形成されている。そして、このようなコンデンサ型マイクロホン200においては、当該マイクロホン200の使用時に、すなわち電極間(振動膜202と電極204)に電圧をかけた際に、振動膜202が静電引力によって電極204上に形成された突起205に接触するように構成されている。
【0045】
しかし、前記電極204上に形成された複数の突起205の間には、複数の隙間(以下、第2の隙間という。)が存在する。このため、第1の隙間および第2の隙間を介して振動膜202の周囲を空気が流れる構成となっている。このような前記第1の隙間および第2の隙間を設ける構成や、電極204をメッシュ構造とする構成は、入射される音波によって振動膜202がより顕著(敏感)に振動することを目的としている。
【0046】
図4(A)、図4(B)、図5に戻って、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、後述するように、膜部30bが、第1の空間102を介して振動膜30に伝搬してくる音圧と、第2の空間を介して振動膜30に伝搬してくる音圧とを受ける構成となっている。そして、第1の空間102を介して振動膜30に伝搬してくる音圧と、第2の空間を介して振動膜30に伝搬してくる音圧とから生じる音圧差によって、振動膜30が振動する構成となっている。
【0047】
このため、当該音圧差に応じて膜部30bが正確に振動できるように、仕切り部20は、音圧を伝搬する媒質が、筐体10の内部で、第1の空間102と第2の空間104との間を相互に移動しないように(移動できないように)形成されていることが好ましい。たとえば、仕切り部20は、内部空間101(第1および第2の空間102,104)を筐体10内部で気密に分離する、気密隔壁であることが好ましい。
【0048】
そこで本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、コンデンサ型マイクロホン200ではなく、図5に示すような膜部30bにピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが取り付けられた振動膜30を備えている。より詳細には、前記仕切り部20は、筐体10の内周面に当該内周面に密着されて配置される保持部材32と、保持部材32に形成された第3の貫通孔32bと、前記貫通孔32bに密着して取り付けられる振動膜30と、振動膜30に形成された膜部30bと、前記振動膜30(膜部30b)の表面に取り付けられたピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dと、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dのそれぞれに接続される複数の電極71とを含む。
【0049】
以下、振動膜30およびピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dの形成方法について、説明する。図5に示すように、シリコンウェハー(シリコン基部30a)の背面側から異方性エッチングにより前方へ向かって開口し、側面断面視において台形形状をなすように膜部30bを形成する。次に、シリコン基部30aおよび膜部30bの表面(前面)全体をSiO2、SiN、SiON化する処理を施して、処理面30cを形成する。次に、膜部30b前方の処理面30c上に、単結晶シリコン、他結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン材をエピタキシャル成長させる。そして、エピタキシャル成長させたシリコン内部に不純物を拡散させてピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dを形成する。
【0050】
前述したように、仕切り部20は、図4(A)、図4(B)、図5に示したように、振動膜30を保持するための保持部材32を含んでいる。そして、保持部材32は、筐体10の内壁面に隙間無く密着されている。保持部材32を筐体10の内壁面に隙間無く密着させ、かつ、振動膜30を保持部材32に隙間無く密着させることにより、第1および第2の空間102,104を気密に分離することができる。つまり、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、振動膜30を、コンデンサ型マイクロホンではなく、ピエゾ抵抗素子70aが取り付けられた振動膜30としているため、振動膜30自体に気密性を備えることが容易であり、仕切り部20が第1および第2の空間102,104を気密に分離することができる。その結果、振動膜30が前記音圧差に基づいて正確に振動することが可能になる。
【0051】
言い換えれば、振動膜30上にピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dを取り付ける構成にすることにより、振動膜30によって、より詳しくは、膜部30bやシリコン基部30aによって、前記保持部材32に形成された第3の貫通孔32bを実質的に密閉することができるようになる。本実施の形態に係るマイクロホンユニット1のように、音圧差に基づいて音声信号を得る構成においては、膜部30b上にピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dを取り付ける構成にすることによって、音波を伝搬する媒質が、第1の空間102と第2の空間104との間を往来することを防止することができ、より正確な音圧差に応じた信号を取得することが可能になる。
【0052】
図7(A)は、振動膜30とピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dとを示す正面図である。図7(B)は、図7(A)におけるVIIB−VIIB概略断面図である。振動膜30および膜部30bの外形は特に限定されるものではない。本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、図4(B)および図7(A)に示すように、振動膜30および膜部30bの外形は円形をなしている。また、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、膜部30bと第1および第2の貫通孔12,14とは、径が(ほぼ)同じ円形としている。
【0053】
前述したように、振動膜30は、シリコン基部30aと膜部30bとから構成される。そして、図7(A)および図7(B)に示すように、膜部30bの表面(第1の面35)には、当該膜部30bの外周部に沿って、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが配置されている。本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、膜部30bの外周部に沿って4つのピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが取り付けられている。ここで、図7(B)に示すように、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dは、膜部30bの第1の面35に埋め込まれる構成であってもよい。
【0054】
それぞれのピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dは、正面視において略長方形の形状となるように形成されており、その長軸が同一方向となるように振動膜30に取り付けられている。これによって、膜部30bが振動した際に、膜部30bの半径方向に配置されたピエゾ抵抗素子70a,70cに生じる抵抗値と、膜部30bの周方向に配置されたピエゾ抵抗素子70b,70cに生じる抵抗値とが異なる。その結果、後述するように、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dを組み込んだブリッジ回路75から、振動膜30の振動に対応した電気信号が出力される。つまり、前記音圧差に応じた電気信号が出力される。
【0055】
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、振動膜30(膜部30b)の振動に応じて、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dを介して電気信号を出力する電気信号出力回路40を含む。電気信号出力回路40は、少なくとも一部が、筐体10の内部空間101内に形成されてもよい。電気信号出力回路40は、たとえば、筐体10の内壁面に形成されてもよい。すなわち、本実施の形態では、筐体10を電気回路の回路基板として利用してもよい。
【0056】
図8は本実施の形態に係るマイクロホンユニット1に適用可能な電気信号出力回路40の一例を示す回路図である。電気信号出力回路40は、膜部30bに取り付けられたピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dの抵抗値の変化に基づく電気信号を、信号増幅回路44にて増幅して出力するように横成されている。より詳細には、膜部30bが振動することによって、それぞれのピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dの抵抗値が変化する。当該抵抗値の変化に応じて、ブリッジ回路75内におけるピエゾ抵抗素子70aとピエゾ抵抗素子70bとの間に位置するノードN1と、ピエゾ抵抗素子70cとピエゾ抵抗素子70dとの間に位置するノードN2と、の間に発生する電位の差が変化する。そして、当該電位差の変化に応じた電気信号が、信号増幅回路44によって増幅されて電気信号出力回路40から出力される。
【0057】
また、電気信号出力回路40は、オペアンプ48を含んで構成されている。これにより、ブリッジ回路75の電位差(ノードN1とノードN2との電位差)の変化を精密に取得することが可能になる。
【0058】
また、電気信号出力回路40は、ゲイン調整回路45を含んで構成されている。ゲイン調整回路45は、信号増幅回路44の増幅率(ゲイン)を調整する役割を果たす。
【0059】
前述したように、ブリッジ回路75、信号増幅回路44、オペアンプ48は、筐体10の内壁面に形成されていてもよい。そして、ゲイン調整回路45は、筐体10の内部に設けられていてもよいし、筐体10の外部に設けられていてもよい。また、電気信号出力回路40は、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路や、デジタル信号を圧縮(符号化)する圧縮回路などをさらに含んでいてもよい。
【0060】
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、振動膜30の前方から入力される音圧と、振動膜30の後方から入力される音圧とを受けて、それらの音圧差に基づいて電気信号を出力する構成となっている。そのため、振動膜30、特に膜部30bの構成が前部と後部とで対称的な構成となっていることが好ましい。たとえば、コンデンサ型マイクロホン200の場合には、一方に振動膜202が他方に電極204が配置されているので、振動膜202の前方と後方から同じ音圧の音波が入力されても、後方から入力される音波のみが電極204にて減衰されてしまうという問題点がある。
【0061】
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、1枚の膜部30bにピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが取り付けられている構成となっているため、膜部30bの構成を前部と後部とでほぼ対称的な構成とすることができる。
【0062】
本実施の形態に係るマイクロホンユニット1は、以上のように構成されている。本実施の形態に係るマイクロホンユニット1によると、簡単な横成で、精度の高い雑音除去機能を実現することができる。以下、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1の雑音除去原理について説明する。
【0063】
<マイクロホンユニット1の雑音除去原理>
(1)マイクロホンユニット1の横成と振動膜30の振動原理
はじめに、マイクロホンユニット1の構成から導き出される、振動膜30の振動原理について説明する。
【0064】
前述したように、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1では、振動膜30(膜部30b)は、第1および第2の空間102,104を介して両側(第1および第2の面35,37)から音圧を受ける。そのため、振動膜30の両側に同時に同じ大きさの音圧がかかると、当該2つの音圧は振動膜30にて打ち消しあい、振動膜30は振動しない。逆に言うと、振動膜30は、両側に受ける音圧に差があるときに、その音圧の差によって振動する。
【0065】
また、第1および第2の貫通孔12,14に入射した音波の音圧は、第1および第2の空間102,104の内壁面に均等に伝達される(パスカルの原理)。そのため、振動膜30の第1の空間102を向く面(第1の面35)は、第1の貫通孔12に入射した音圧と等しい音圧を受け、振動膜30の第2の空間104を向く面(第2の面37)は、第2の貫通孔14に入射した普圧と等しい音庄を受ける。
【0066】
すなわち、第1および策2の面35,37が受ける音圧は、それぞれ、第1および第2の貫通孔12,14に入射した音の音圧であり、振動膜30は、第1および第2の面35,37(第1および第2の貫通孔12,14)に入射した音波の音圧の差によって振動する。
【0067】
(2)音波の性質
次に音波の性質について説明する。音波は、空気等の媒質中を進行するにつれ減衰し、音圧(音波の強度・振幅)が低下する。音庄は、音源からの距離に反比例するため、音圧Pは、音源からの距離Rとの関係において、
P=k/R・・・(1)
と表すことができる。なお、式(1)中、kは比例定数である。図9は音圧と音源からの距離との関係を示すグラフである。図9からも明らかなように、音圧(音波の振幅)は、音源に近い位置(グラフの左側)では急激に減衰し、音源から離れるほどなだらかに減衰する。
【0068】
後述するように、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1を、携帯電話100に代表される接話型の音声入力装置2に適用する場合、ユーザの音声は、マイクロホンユニット1(第1および第2の貫通孔12,14)の近傍から発生する。そのため、ユーザの音声は、第1および第2の貫通孔12,14の間で大きく減衰し、第1および第2の貫通孔12,14に入射するユーザ音声の音圧、すなわち、第1および第2の面35,37に入射するユーザ音声の音圧には、大きな差が現れる。
【0069】
これに対して雑音成分は、ユーザの音声に比べて、音源が、マイクロホンユニット1(第1および第2の貫通孔12,14)から遠い位置に存在する。そのため、雑音の音圧は、第1および第2の貫通孔12,14の間でほとんど減衰せず、第1および第2の貫通孔12,14に入射する雑音による音圧には、ほとんど差が現れない。
【0070】
(3)雑音除去原理
次に本実施の形態に係るマイクロホンユニットにおける雑音除去原理について説明する。上述したように、振動膜30は、第1および第2の面35,37に同時に入射する音波の音圧の差によって振動する。そして、第1および第2の面35,37に入射する雑音の音圧の差は非常に小さいため、振動膜30で打ち消される。これに対して、第1および第2の面35,37に入射するユーザ音声の音圧の差は大きいため、ユーザ音声は振動膜30で打ち消されず、振動膜30を振動させる。
【0071】
このことから、マイクロホンユニット1によると、振動膜30は、ユーザの音声のみによって振動しているとみなすことができる。そのため、マイクロホンユニット1(電気信号出力回路40)から出力される電気信号は、雑音が除去された、ユーザ音声のみを示す信号とみなすことができる。
【0072】
すなわち、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1によると、簡易な構成で、雑音が除去されたユーザ音声を示す電気信号を取得することが可能な音声入力装置を提供することができる。
【0073】
<作用と効果>
以下、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1が奏する作用と効果についてまとめる。
【0074】
先に説明したように、マイクロホンユニット1によると、振動膜30の振動を示す電気信号(振動膜30の振動に基づく電気信号)を取得するだけで、雑音成分が除去された音声を示す電気信号を取得することができる。すなわち、マイクロホンユニット1では、複雑な解析演算処理を行うことなく雑音除去機能を実現することができる。そのため、簡単な構成で、雑音除去が可能な高品質のマイクロホンユニットを提供することができる。特に、仕切り部20が、音波を伝搬する媒質の、前記筐体の内における前記第1の空間102と第2の空間104との間の相互移動を遮断するように構成されているため、振動膜30を介して正確な音圧差に応じた音声信号を得ることが可能になる。
【0075】
なお、マイクロホンユニット1によると、壁などで反射した後に振動膜30(第1および第2の面35,37)に入射したユーザ音声成分も除去することができる。詳しくは、壁などで反射したユーザ音声は、長距離を伝搬した後にマイクロホンユニット1に入射するため、通常のユーザ音声よりも遠くに存在する音源から発生した音声であるとみなすことができ、かつ、反射により大きくエネルギを消失しているため、雑音成分と同様に、第1および第2の貫通孔12,14の間で音圧が大きく減衰することがない。そのため、このマイクロホンユニット1によると、壁などで反射した後に入射するユーザ音声成分も、雑音と同様に(雑音の一種として)除去される。
【0076】
つまり、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1を利用すれば、雑音を含まない、ユーザ音声を示す信号を取得することができる。その結果、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1を利用することで、精度の高い音声認識や音声認証、コマンド生成処理を実現することができる。
【0077】
<振動膜30の変形例>
図10(A)は、振動膜30♯とピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dの変形例を示す正面図である。図10(B)は、図10(A)におけるXB−XB概略断面図である。
【0078】
前述したように、振動膜30♯は、シリコン基部30aと膜部30bとから構成される。そして、図10(A)および図10(B)に示すように、膜部30bの両面(第1の面35と第2の面37)には、当該膜部30bの外周部にそって、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが配置されている。本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、膜部30bの外周部に沿って8つのピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが埋め込まれている。
【0079】
それぞれのピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dは、正面視において略長方形の形状となるように形成されており、その長軸が同一方向となるように振動膜30♯に取り付けられている。これによって、膜部30bが振動した際に、膜部30bの半径方向に配置されたピエゾ抵抗素子70a,70cと、膜部30bの周方向に配置されたピエゾ抵抗素子70b,70cと、では異なる抵抗が生じる。その結果、前述したように、ピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dを組み込んだブリッジ回路75から、膜部30bの振動に対応した電気信号が出力される。
【0080】
ただし、第1の面35に膜部30bの半径方向に2つのピエゾ抵抗素子70a,70cを配置して、第2の面に膜部30bの周方向に2つのピエゾ抵抗素子70b,70dを配置する構成としてもよい。前述したように、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1においては、振動膜30♯の前方から入力される音圧と、振動膜30♯の後方から入力される音圧とを受けて、それらの音圧差に基づいて電気信号を出力する構成となっている。そのため、振動膜30♯、特に膜部30bの構成が前部と後部とで対称的な構成となっていることが好ましい。本変形例に係るマイクロホンユニット1は、1枚の膜部30bの両側(第1の面35と第2の面37)にピエゾ抵抗素子70a,70b,70c,70dが取り付けられている構成となっているため、膜部30bの構成を前部と後部とで更に対称的な構成とすることができる。これによって、振動膜30♯の振動をより顕著に伝達することが可能になる。
【0081】
<その他の実施の形態>
次に、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1の適用例を説明する。
【0082】
はじめに、本実施の形態に係るマイクロホンユニット1が実装された音声入力装置2の構成について説明する。図11および図12は、音声入力装置2の構成について説明するための図である。なお、以下に説明する音声入力装置2は、前述した携帯電話100のマイク172のような接話型の音声入力装置であって、携帯電話100以外にも、たとえば、トランシーバー等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機や、音声入力方式のリモートコントローラなど)、あるいは、録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに適用することができる。
【0083】
図11は、音声入力装置2の構造を示す概略側面断面図である。図11に示すように、音声入力装置2は、筐体50(携帯電話100の場合には、筐体117)を有する。筐体50は、音声入力装置2の外形を構成する部材である。筐体50には基本姿勢が設定されており、これにより、ユーザ音声の進行径路を規制することができる。筐体50には、ユーザの音声を受け付けるための開口部52が形成されている。
【0084】
音声入力装置2では、マイクロホンユニット1は、筐体50内部に設置される。マイクロホンユニット1は、第1および第2の貫通孔12,14が開口部52に連通(重複)するように、筐体50に設置されている。マイクロホンユニット1は、弾性体54を介して、筐体50に設置されている。これにより、筐体50の振動がマイクロホンユニット1(筐体10)に伝わりにくくなるため、マイクロホンユニット1を精度よく動作させることができる。
【0085】
マイクロホンユニット1は、第1および第2の貫通孔12,14がユーザ音声の進行方向に沿ってずれて配置されるように、筐体50に設置されることが好ましい。すなわち、携帯電話100においては、第1および第2の貫通孔12,14が携帯電話100の厚み方向に配置されることが好ましい。
【0086】
そして、ユーザ音声の進行径路の上流側に配置される貫通孔を第1の貫通孔12とし、下流側に配置される貫通孔を第2の貫通孔14としてもよい。振動膜30が第2の貫通孔14の側方に配置されたマイクロホンユニット1を、上記のように配置すると、ユーザ音声を、振動膜30の両面(第1および第2の面35,37)に同時に入射させることができる。詳しくは、マイクロホンユニット1では、第1の貫通孔12の中心から第1の面35までの距離が、第1の貫通孔12から第2の貫通孔14までの距離とほぼ等しくなるため、第1の貫通孔12を通過したユーザ音声が第1の面35に入射するまでに必要な時間は、第1の貫通孔12上を通過したユーザ音波が第2の貫通孔14を介して第2の面37に入射するまでに必要な時間と、ほぼ等しくなる。
【0087】
すなわち、ユーザが発声した音声が、第1の面35に入射するまでにかかる時間と、第2の面37に入射するまでにかかる時間とが等しくなる。そのため、ユーザ音声を、第1および第2の面35,37に同時に入射させることができ、位相ずれによるノイズが発生しないように、振動膜30を振動させることができる。そのため、人の音声としては高周波帯域である7kHz程度のユーザ音声が入力された場合でも、第1の面35に入射する音圧と第2の面37に入射する音圧との位相ひずみの影響を無視することができ、ユーザ音声を正確に示す電気信号を取得することが可能になる。
【0088】
次に、図12を参照して、音声入力装置2の機能について説明する。なお、図12は、音声入力装置2の機能構成を示すブロック図である。
【0089】
音声入力装置2は、上記の実施の形態に係るマイクロホンユニット1を有する。マイクロホンユニット1は、振動膜30の振動に基づいて生成された電気信号を出力する。なお、マイクロホンユニット1から出力される電気信号は、雑音成分が除去された、ユーザ音声を示す電気信号である。
【0090】
音声入力装置2は、演算処理部60を有していてもよい。演算処理部60は、マイクロホンユニット1(電気信号出力回路40)から出力された電気信号に基づいて各種の演算処理を行う。演算処理部60は、電気信号に対する解析処理を行ってもよい。演算処理部60は、マイクロホンユニット1からの出力信号を解析することにより、ユーザ音声を発した人物を特定する処理(いわゆる音声認証処理)を行ってもよい。あるいは、演算処理部60は、マイクロホンユニット1の出力信号を解析処理することにより、ユーザ音声の内容を特定する処理(いわゆる音声認識処理)を行ってもよい。
【0091】
演算処理部60は、マイクロホンユニット1からの出力信号に基づいて、各種のコマンドを作成する処理を行ってもよい。演算処理部60は、マイクロホンユニット1からの出力信号を増幅する処理を行ってもよい。また、演算処理部60は、後述する通信処理部65の動作を制御してもよい。なお、演算処理部60は、上記各機能を、CPUやメモリによる信号処理によって実現してもよい。あるいは、演算処理部60は、上記各機能を、専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0092】
音声入力装置2は、通信処理部65をさらに含んでもよい。通信処理部65は、演算処理部60からの制御指令に応じて、演算処理部60から出力されるデジタルの送話音声データをアナログの送話音声信号へと変換し、アンテナなどを介して無線信号を発信する。すなわち、通信処理部65は、音声入力装置2と、他の端末(携帯電話や、ホストコンピュータなど)との通信を制御する。
【0093】
通信処理部65は、ネットワークを介して、他の端末に信号(マイクロホンユニット1からの出力信号)を送信する機能を有していてもよい。また、通信処理部65は、ネットワークを介して他の端末から信号を受信する機能を有していてもよい。そして、たとえば、ホストコンピュータで、通信処理部65を介して取得した出力信号を解析処理して、音声認識装置や音声認証装置、コマンド生成処理や、データ蓄積処理など、種々の情報処理を行ってもよい。すなわち、音声入力装置2は、他の端末と協働して、情報処理システムを構成していてもよい。言い換えると、音声入力装置2は、情報処理システムを構築する情報入力端末であるとみなしてもよい。ただし、音声入力装置2は、通信処理部65を有しない構成となっていてもよい。
【0094】
なお、上述した演算処理部60及び通信処理部65は、パッケージングされた半導体装置(集積回路装置)として、筐体50内に配置されていてもよい。ただし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、演算処理部60は、筐体50の外部に配置されていてもよい。演算処理部60が筐体50の外部に配置されている場合、演算処理部60は、通信処理部65を介して、差分信号を取得してもよい。
【0095】
なお、音声入力装置2は、表示パネルなどの表示装置や、スピーカ等の音声出力装置をさらに含んでいてもよい。また、音声入力装置2は、操作情報を入力するための操作キーをさらに含んでいてもよい。
【0096】
以上のような構成を有する音声入力装置2は、雑音を含まない、入力音声を示す信号を取得することができ、精度の高い音声認識や音声認証、コマンド生成処理を実現することができる。また、音声入力装置2をマイクシステムに適用すれば、スピーカから出力されるユーザの声も、雑音として除去される。そのため、ハウリングが起こりにくいマイクシステムを提供することができる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施の形態に係る携帯電話を示す外観斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る携帯電話のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るマイクロホンユニットを示す外観斜視図である。
【図4】本実施の形態に係るマイクロホンユニットを示す概略図である。
【図5】仕切り部を示す側面断面図である。
【図6】現在主流となっているコンデンサ型マイクロホンを示す概略図である。
【図7】振動膜とピエゾ抵抗素子とを示す概略図である。
【図8】本実施の形態に係るマイクロホンユニットに適用可能な電気信号出力回路の一例を示す回路図である。
【図9】音圧と音源からの距離との関係を示すグラフである。
【図10】振動膜とピエゾ抵抗素子との変形例を示す概略図である。
【図11】音声入力装置の構造を示す概略側面断面図である。
【図12】音声入力装置の機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0099】
1 マイクロホンユニット、2 音声入力装置、10 筐体、12,14 貫通孔、30,30♯ 振動膜、30a シリコン基部、30b 膜部、30c 処理面、32 保持部材、32b 貫通孔、40 電気信号出力回路、42 コンデンサ、44 信号増幅回路、45 ゲイン調整回路、48 オペアンプ、50 筐体、52 開口部、54 弾性体、60 演算処理部、65 通信処理部、70a,70b,70c,70d ピエゾ抵抗素子、71 電極、75 ブリッジ回路、100 携帯電話、101 内部空間、102 第1の空間、104 空間、110 制御部、172 マイク、173 マイク孔、174 スピーカ、200 コンデンサ型マイクロホン、202 振動膜、204 電極、205 突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンユニットを備えた携帯電話であって、
前記マイクロホンユニットは、
内部空間を有する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含み、
前記筐体には、
前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、
前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔とが、入力される音声の進行方向に並べて形成され、
前記仕切り部は、
前記第1の空間からの音圧と前記第2の空間からの音圧とを受けて振動する振動膜と、
前記振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有し、
前記仕切り部は、音波を伝搬する媒質の、前記筐体の内における前記第1の空間と第2の空間との間の相互移動を遮断するように構成されており、
前記ピエゾ抵抗素子を介して、前記振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む、携帯電話。
【請求項2】
マイクロホンユニットを備えた携帯電話であって、
前記マイクロホンユニットは、
内部空間を有する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含み、
前記筐体には、
前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、
前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔とが、入力される音声の進行方向に並べて形成され、
前記仕切り部は、
前記筐体内周に配置され、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する第3の貫通孔が形成された振動膜保持部材と、
外周が前記振動膜保持部材に密着されて前記第3の貫通孔を塞ぐとともに、前記第1の空間からの音圧と前記第2の空間からの音圧を受けて振動する振動膜と、
前記振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有し、
前記ピエゾ抵抗素子を介して、前記振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む、携帯電話。
【請求項3】
内部空間を有する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含み、
前記筐体には、
前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、
前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔と、が形成され、
前記仕切り部は、
前記第1の空間からの音圧と前記第2の空間からの音圧を受けて振動する振動膜と、
前記振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有し、
前記仕切り部は、音波を伝搬する媒質の、前記筐体の内における前記第1の空間と第2の空間との間の相互移動を遮断するように構成されており、
前記ピエゾ抵抗素子を介して、前記振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む、マイクロホンユニット。
【請求項4】
内部空間を有する筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記内部空間を第1の空間と第2の空間とに分割する仕切り部と、を含み、
前記筐体には、
前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の貫通孔と、
前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の貫通孔と、が形成され、
前記仕切り部は、
前記筐体内周に配置され、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する第3の貫通孔が形成された振動膜保持部材と、
外周が前記振動膜保持部材に密着されて前記第3の貫通孔を塞ぐとともに、前記第1の空間からの音圧と前記第2の空間からの音圧を受けて振動する振動膜と、
前記振動膜に取り付けられた複数のピエゾ抵抗素子と、を有し、
前記ピエゾ抵抗素子を介して、前記振動膜の振動に基づき電気信号を出力する電気信号出力回路をさらに含む、マイクロホンユニット。
【請求項5】
前記振動膜には複数の前記ピエゾ抵抗素子が取り付けられている、請求項3または4に記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記振動膜の両側に、それぞれ少なくとも1つの前記ピエゾ抵抗素子が取り付けられている、請求項3〜5に記載のマイクロホンユニット。
【請求項7】
電気信号出力回路は、前記複数のピエゾ抵抗素子から構成されるブリッジ回路を有する、請求項3〜6に記載のマイクロホンユニット。
【請求項8】
前記振動膜は、
前記振動膜保持部材に密着される基部と、
前記基部の間に張られる膜部と、を有し、
前記ピエゾ抵抗素子は、前記振動膜の外周部分に取り付けられている、請求項3から7に記載のマイクロホンユニット。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか1項に記載のマイクロホンユニットが実装される、携帯電話。
【請求項10】
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが外部から入力される音声の進行方向に並べて形成される、請求項9に記載の携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−100177(P2009−100177A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268956(P2007−268956)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【Fターム(参考)】