説明

携帯電話機、及びその制御方法

【課題】 本発明は、着信報知音の突然の大音量がユーザに与える害悪を軽減する携帯電話機とその制御方法を提供する。
【解決手段】 本発明の携帯電話機は、着信報知音量が一定の音量に設定されていても(大、中、小)、携帯電話機が所定の状態にあれば、ユーザが選択した着信報知音にかかわらず、あらかじめ設定されている保安報知方法に応じて、着信報知音を漸増する音量で発音するか、その発音開始を遅延させ、当該遅延期間において振動モータを作動させる。これにより、ユーザは、着信報知音が有害な大音量に達するまでの猶予時間を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機に関し、特に、着信報知音の突然の大音量がユーザに与える害悪を軽減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機において、着信報知音量を時間的に徐々に増大させるRamped Ringerと呼ばれる手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。携帯電話機は、ユーザからの指示に応じてこの手法を実行する。つまり、ユーザがRamped Ringerモードを設定しておけば、携帯電話機は、着信時に、徐々に増大する音量で着信報知音を発音するので、例えば、ユーザがメッセージ録音再生機能(いわゆる留守録機能)を使用して録音メッセージを確認中に、突然耳元で大音量の着信報知音が鳴って不快を感じ、又は耳への障害を蒙る事態を未然に防ぐことができる。
【0003】
一方、ユーザがRamped Ringerモードを解除しておけば、携帯電話機は、所定の一定音量で着信報知音を発音するので、例えば、携帯電話機がユーザから離れて置かれ、又はかばんに入れられていても、ユーザは鳴り出しと同時に着信報知音に気付くことができ、便利である。
【特許文献1】特開平05−83332
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の携帯電話機では、ユーザがRamped Ringerモードを設定し忘れて留守録メッセージを確認中に着信があった場合には、大音量の着信報知音が突然発音することが避けられないという問題がある。
【0005】
当該モードの設定し忘れは、特に、携帯電話機をかばんから取り出した直後等に、頻繁に起こり得るものである。
【0006】
上記の問題に鑑み、本発明は、ユーザが当該モードを設定していない場合においても、着信報知音の突然の大音量がユーザに与える不快感、及び耳への障害といった害悪を軽減する携帯電話機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記問題を解決するため、本発明の携帯電話機は、着信時に着信報知音を発する携帯電話機であって、ユーザが着信報知音を選択する着信報知音選択手段と、端末の特定の機能が提供されているか否かを検出する検出手段と、当該機能を提供中であると検出された場合に、選択された着信報知音にかかわらず着信時の当該着信報知音の発音態様を経時的に変化させる制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明の携帯電話機によれば、携帯電話機が特定の処理を提供中でありさえすれば、ユーザの選択した着信報知音にかかわらず、着信報知音の発音態様を経時的に変化させるので、着信報知音が大音量に達するまでの猶予時間を設けることができる。
【0009】
また、前記機能は、ユーザへの音声提示、又はユーザからの音声取得、若しくはその両方を伴う機能であるとしてもよいし、前記機能には、メッセージ録音再生機能、及び音声コマンド認識機能が含まれるとしてもよい。
【0010】
ユーザへの音声提示、又はユーザからの音声取得、若しくはその両方を伴う機能は、特に、ユーザが当該携帯電話機を耳に当てて使用することが想定されるものであり、具体的に、メッセージ録音再生機能、及び音声コマンド取得機能が含まれる。また、前記制御手段は、前記着信報知音の音量を徐々に増大させてもよい。
【0011】
また、前記携帯電話機は、前記着信報知音の最大音量をユーザから指示されており、前記制御手段は、前記着信報知音の音量を当該最大音量に達するまで徐々に増大させてもよい。また、前記携帯電話機は、さらに、報知用の振動手段を備え、前記制御手段は、前記着信報知音を遅延して発生させると共に、その発生に先立って、当該振動手段を振動させてもよい。
(2)本発明の制御方法は、着信時に着信報知音を発する携帯電話機の制御方法であって、特定の機能を提供中であると検出された場合に、ユーザの選択した着信報知音にかかわらず、着信報知音の発音態様を経時的に変化させる制御ステップを含むので、着信報知音が大音量に達するまでの猶予時間を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る携帯電話機について図面を参照しながら説明する。
<全体構造>
図1は、実施の形態に係る携帯電話機の構造を模式的に示す断面図である。
【0013】
同図に示すように、本実施の形態に係る携帯電話機10は折畳型であって、第1筐体11と第2筐体12とが折畳可能に接続されてなる。
【0014】
携帯電話機10は、本発明に関する主要な構成部品として、第1筐体11内に、レシーバ13、リンガ14、及び表示部15を備え、第2筐体12内に、状態検出スイッチ16、振動モータ17、操作部18、及びマイク19を備える。
【0015】
レシーバ13は、通話音声の出力や、録音メッセージの再生に使用される。リンガ14は、着信報知音を含む報知用の音声を発生する。表示部15は、カラー液晶パネル、DMD(デジタル・ミラー・デバイス)、有機ELパネル、又はPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)などで実現され、現在時刻、バッテリ残量、電波強度等を示す状態情報、発信者電話番号、メール内容、各種設定内容等を表示する。
【0016】
状態検出スイッチ16は、携帯電話機10が折畳状態にあるか展開状態にあるかを検出する。振動モータ17は、報知用の振動を発生させる。操作部18は、テンキー、カーソルキー等を含み、電話番号や文字、及び各種設定の入力に使用される。マイク19は、通話音声や音声コマンドの入力に使用される。
【0017】
ユーザは携帯電話機10を、通話操作、メッセージ録音再生操作、音声コマンド入力操作、及び電子メール操作の際に展開状態にする一方、着信待ち受けの際に折畳状態にする。特に、通話操作、メッセージ録音再生操作、音声コマンド入力操作では、ユーザは展開状態の携帯電話機を耳に当てて使用することが想定される。
<機能構成>
図2は、携帯電話機10の機能構成を示すブロック図である。
【0018】
携帯電話機10は、レシーバ13、リンガ14、表示部15、状態検出スイッチ16、振動モータ17、操作部18、マイク19、アンテナ20、送受信部21、変復調部22、音声処理部23、制御部30から構成される。
【0019】
図1に示した各構成部品に対応する機能ブロックについては、図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
通話に関して各機能ブロックは次のように作用する。
【0021】
アンテナ20に受信された受信電波は送受信部21で増幅され、変復調部22で音声信号に復調される。当該音声信号は音声処理部23で所定の処理を施された後、レシーバ13で電気−音響変換され音声として出力される。
【0022】
一方、マイク19で音響−電気変換されたユーザの音声は、音声処理部23で所定の処理を施された後、変復調部22で変調信号に変換される。当該変調信号は送受信部21を経てアンテナ20から送信される。
【0023】
また、携帯電話機10は、内部に留守録機能を有している。
【0024】
留守録機能に関して各機能ブロックは次のように作用する。
【0025】
ユーザが着信に応答しない場合、設定に応じて携帯電話機10が当該着信に応答する。この場合、変復調部22が復調した音声信号を、制御部30がRAM33に記録する。RAM33に記録された音声信号は、後刻ユーザ操作に応じて、音声処理部23に読み出され、レシーバ13で電気−音響変換され音声として出力される。
【0026】
この留守録機能は内部で賄われるので、携帯電話機10は、録音メッセージの再生中に着信を受け付けることができる。
【0027】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33等からなり、ROM32に格納されているプログラムをCPU31が実行することにより、携帯電話機10の全体動作を制御する。RAM33は、当該プログラムの実行において作業用データを保持する。また、バッテリバックアップされることによって、各種設定情報、及び留守録メッセージを、ユーザから変更、消去操作を受けるまで永続的に保持する。
<着信報知音量選択>
携帯電話機10は、ユーザが選択した音量で着信報知音を発生する機能を有している。
【0028】
図3(A)は、ユーザが当該音量を選択する際に表示部15に表示される画面例である。この画面でユーザが行った選択の内容は、RAM33に記録される。
【0029】
「1大」「2中」「3小」は、それぞれに対応する、時間的に一定の音量を選択する。
【0030】
「4ランプアップ」は、小音量から大音量まで所定の時間内に徐々に増大する音量を選択する。
<報知保安方法選択>
携帯電話機10は、前記「4ランプアップ」以外の音量が選択されている場合であっても、リンガ14が突然の大音量を発しないための報知保安機能を有している。この報知保安機能は、次の2種類のうちユーザが選択した報知保安方法に従って、着信報知音の発音態様を経時的に変化させる。
【0031】
図3(B)は、ユーザが当該報知保安方法を選択する際に表示部15に表示される画面例である。この画面でユーザが行った選択の内容は、RAM33に記録される。
【0032】
「1ランプアップ」は、小音量から前記選択された着信報知音量まで所定の時間内に徐々に増大する音量で着信報知音を発音することを選択する。
【0033】
「2バイブ+遅延」は、着信報知音の発音を所定時間遅延して開始させると共に、当該遅延した期間において振動モータを作動させることを選択する。
<着信報知制御処理>
前述した着信報知音量、及び報知保安方法の選択内容に応じて、制御部30が行う着信報知制御処理について説明する。この処理は、着信報知音の発音が禁止されていない限り(つまり、振動モータ又は発光のみによる報知が指定されていない限り)、着信時に実行される。
【0034】
図4は、当該着信報知制御処理を示すフローチャートである。
【0035】
制御部30は、RAM33を参照して着信報知音量の選択内容を識別する。選択内容が「4ランプアップ」であれば(ステップS10:ランプアップ)、小音量から大音量まで所定の時間内に徐々に増大する音量で、リンガ14から着信報知音を発音させる(ステップS11)。
【0036】
選択内容が「1大」「2中」「3小」の何れかであれば(ステップS10:大、中、小)、状態検出スイッチ16の検出結果を参照する。そして、携帯電話機が展開状態になければ(ステップS20:NO)、当該選択内容に応じた音量で、リンガ14から着信報知音を発音させる(ステップS21)。
【0037】
携帯電話機が展開状態にあれば(ステップS:YES)、RAM33を参照して報知保安方法の選択内容を識別する。選択内容が「1ランプアップ」であれば(ステップS30:ランプアップ)、小音量から前記選択された着信報知音量まで所定の時間内に徐々に増大する音量で、リンガ14から着信報知音を発音させる(ステップS31)。
【0038】
選択内容が「2バイブ+遅延」であれば(ステップS30:バイブ+遅延)、振動モータを起動し(ステップS41)、所定時間待ち(ステップS42)、そして前記選択された着信報知音量でリンガ14から着信報知音を発音させる(ステップS43)。
<まとめ>
以上説明したように、携帯電話機10は、着信報知音量に大、中、又は小の一定音量が選択されている場合であっても、展開状態にあれば、着信報知音の経時的な発音態様を、選択された報知保安方法に従って変化させる。
【0039】
報知保安方法として「ランプアップ」が選択されている場合は、小音量で鳴り始めるので、携帯電話機を展開状態で耳に当てて使用しているユーザは、着信報知音が大音量に達するまでに、その携帯電話機を耳から遠ざけることができる。
【0040】
また、「バイブ+遅延」が選択されている場合は、振動によって着信報知音が間もなく鳴り始めることが分かるので、携帯電話機を展開状態で耳に当てて使用しているユーザは、着信報知音が鳴り始めるまでに、その携帯電話機を耳から遠ざけることができる。
<その他の変形例>
なお、本発明を上記の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
(1)本発明は、実施の形態で説明したステップを含む方法を、コンピュータシステムを用いて実現するためのコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記プログラムを表すデジタル信号であるとしてもよい。
【0041】
また、本発明は、前記プログラム又は前記デジタル信号を記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD、MO、DVD、半導体メモリ等であるとしてもよい。
【0042】
また、本発明は、電気通信回線、無線又は有線通信回線、若しくはインターネットに代表されるネットワーク等を経由して伝送される前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0043】
また、前記プログラム又は前記デジタル信号は、前記記録媒体に記録されて移送され、若しくは、前記ネットワーク等を経由して移送され、独立した他のコンピュータシステムにおいて実施されるとしてもよい。
(2)実施の形態では、折畳型携帯電話機を例示し、当該携帯電話機が展開状態にあると検出された場合に、報知保安機能が働くことを説明した。
【0044】
別法として、ユーザが当該携帯電話機を耳に当てて使用することが想定される機能を携帯電話機が提供中に、報知保安機能が働くとしてもよい。
【0045】
ユーザへの音声提示、又はユーザからの音声取得、若しくはその両方を伴う機能がそのような機能に該当し、具体例として、留守録機能(メッセージ録音再生機能)、及び音声コマンド認識機能等が考えられる。
【0046】
制御部30は、該当機能に関する動作を開始する際に、当該機能を識別する情報をRAM33に記録する。着信時にこの情報を参照することにより、該当機能を提供中であるか否かを検出し、該当機能を提供中であれば報知保安機能を働かせる。この場合の着信報知制御処理は、図4に示した処理と比較して、ステップS20が変更される。
【0047】
図5は、当該変更された着信報知制御処理を示すフローチャートである。ステップS20に代えて設けられるステップS50において、制御部30は、RAM33に記録されている前記情報を参照して、その時点でメッセージ録音再生機能、又は音声コマンド認識機能を提供中であるか否かを検出する。それらを提供中であると検出されれば、ステップS30以降を実行することにより、実施の形態で説明した報知保安機能を働かせる。
【0048】
この構成は、報知保安機能の作動要否を検出するために携帯電話機が折畳型であることを必要としないので、実施の形態の例示と比較して、より広汎に適用できる。
(3)本発明は、携帯電話機の通話方式について限定しない。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)、PHS(Personal Handyphone System)、又はPDC(Personal Digital Cellular telecommunication system)の何れの方式を用いる携帯電話機に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態に係る携帯電話機の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】当該携帯電話機の機能構成を示すブロック図である。
【図3】(A)着信報知音量選択画面の一例である。(B)報知保安方法選択画面の一例である。
【図4】着信報知制御処理を示すフローチャートである。
【図5】変更された着信報知制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 携帯電話機
11 第1筐体
12 第2筐体
13 レシーバ
14 リンガ
15 表示部
16 状態検出スイッチ
17 振動モータ
18 操作部
19 マイク
20 アンテナ
21 送受信部
22 変復調部
23 音声処理部
30 制御部
31 CPU
32 ROM
33 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着信時に着信報知音を発する携帯電話機であって、
ユーザが着信報知音を選択する着信報知音選択手段と、
端末の特定の機能が提供されているか否かを検出する検出手段と、
当該機能を提供中であると検出された場合に、選択された着信報知音にかかわらず着信時の当該着信報知音の発音態様を経時的に変化させる制御手段と
を備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
前記機能は、ユーザへの音声提示、又はユーザからの音声取得、若しくはその両方を伴う機能である
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記機能には、メッセージ録音再生機能、及び音声コマンド認識機能が含まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の携帯電話機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記着信報知音の音量を徐々に増大させる
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項5】
前記携帯電話機は、さらに、
報知用の振動手段を備え、
前記制御手段は、前記着信報知音を遅延して発生させると共に、その発生に先立って、当該振動手段を振動させる
ことを特徴とする請求項6に記載の携帯電話機。
【請求項6】
着信時に着信報知音を発する携帯電話機の制御方法であって、
ユーザが着信報知音を選択する着信報知音選択ステップと、
端末の特定の機能が提供されているか否かを検出する検出ステップと、
当該機能を提供中であると検出された場合に、選択された着信報知音にかかわらず着信時の当該着信報知音の発音態様を経時的に変化させる制御ステップと
を含むことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−151192(P2007−151192A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58422(P2007−58422)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【分割の表示】特願2002−307153(P2002−307153)の分割
【原出願日】平成14年10月22日(2002.10.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】