説明

携帯電話機および携帯電話機の送受信データ保存再生方法

【課題】テレビ電話中のデータを順次保存するための大容量メモリを必要とせず、ユーザが記録スイッチの操作を忘れたまま重要な通信が行なわれたような場合であっても、現時点から所定時間だけ過去に遡って受信した画像や通信内容を、通信が行なわれたときの時間差に関わりなく、幾つでも保存することのできる携帯電話機を提供すること。
【解決手段】テレビ電話機能の起動を検知した時点で抽出データ書込手段Dの作動を開始させ、一定の記憶容量の範囲内で一時記憶用メモリAに送受信データを循環的に上書きして記憶させることで、所定時間分の送受信データを一時記憶用メモリAに定常的に保持する。データ保存指令の入力によりデータ保存手段Fを作動させ、一時記憶用メモリAに記憶されている送受信データを書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルとして不揮発性メモリBに保存し、必要に応じて記憶データ再生手段Gで再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する携帯電話機の改良、特に、テレビ電話中の画像や音声の保存および再生機能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する電話機あるいは通話内容を保存する機能を備えた電話機としては、例えば、特許文献1に開示される電話機,特許文献2に開示されるテレビ電話機能付き携帯電話機,特許文献3に開示される送受信記録システム,特許文献4に開示される通信端末装置が公知である。
【0003】
特許文献1に開示される発明は、着信や発信と同時に通話内容の記録を開始することによって通話内容の記録漏れを防止するようにしたものであり、単に、通話内容の記録漏れの防止のためには通話の開始時点から録音に関する処理操作を開始することが必要であるといった自明なことを述べているに過ぎない。
【0004】
特許文献2に開示されるテレビ電話機能付き携帯電話機は、テレビ電話機能の作動中に送話側の多重化信号と受話側の多重化信号を記録保存するようにしたもので、受話側の多重化信号のみを記録保存するようにしていた其れ以前のテレビ電話機能付き携帯電話機と比較すると、単に、テレビ電話機能の作動中に記録保存された送話側の多重化信号を再生できるようになっている点で異なるに過ぎない。受話側の多重化信号に加えて送話側の多重化信号を記録/再生することは技術的には極めて容易であろう。
【0005】
特許文献3に開示される送受信記録システムは、基本的に、特許文献2に開示されるテレビ電話機能付き携帯電話機と同等の機能を有する。
【0006】
特許文献4に開示される通信端末装置は、テレビ電話の使用に際し、現時点から遡って所定時間前までの画像や通信内容を確認あるいは再生もしくは保存することを目的としたものであり、例えば、ユーザが通信内容保存用の記録スイッチの操作を忘れたまま重要な通信を行ったような場合であっても、現時点から所定時間前までの画像や通信内容を再確認できるといった利点がある。
しかし、その実態的な構成は、テレビ電話中の画像データを順次保存する親画面表示用メモリに記憶されたデータを現時点から所定時間だけ過去に遡って切り出し、切り出した内容を動画切り出し用メモリに上書きコピーすることによって画像や通信内容を確認あるいは再生もしくは保存するものである。従って、親画面表示用メモリの記憶容量は、実際に必要とされる記憶容量、つまり、所定時間分の通信内容を保存する動画切り出し用メモリの記憶容量よりも冗長性を持たせて大きくする必要があり、親画面表示用メモリの記憶容量が有効に利用されない不都合がある。
また、動画切り出し用メモリは比較的小容量のデータを取り扱うことを目的とし、記憶内容を完全に消去した上で親画面表示用メモリから切り出されたデータを再記憶する構成であるから、親画面表示用メモリから切り出されたデータを2組以上記録することはできず、例えば、1回の通信中に2回以上に亘って記録すべき内容を看過したような場合にあっては、その全てを保存することはできない。無論、親画面表示用メモリの記憶容量が著しく大きければ問題はないとも言えるが、通信の開始時点で記録スイッチの操作を忘れたような場合には、データの切り出しの対象となる親画面表示用メモリ自体にデータが保存されていないという問題がある。
更に、親画面表示用メモリの記憶容量が如何に大きかろうとも、記憶領域の全てにデータが書き込まれてから後は其の先頭アドレスからデータの上書きが再開されるので、受信時間に大きな時間差があるような通信内容に関しては、その内容が如何に重要であっても、2つ以上の内容、つまり、切り出されたデータの2組以上を保存することはできない。親画面表示用メモリの記憶容量が有限であり、また、動画切り出し用メモリには親画面表示用メモリから切り出されたデータを1組しか保存できないからである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−8901号公報(段落0007)
【特許文献2】特開2003−348222号公報(段落0017,0034)
【特許文献3】特開2005−57362号公報
【特許文献4】特開2005−303397号公報(段落0004−0005,0026,段落0022)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、テレビ電話中のデータを順次保存するための大容量メモリを必要とせず、ユーザが記録スイッチの操作を忘れたまま重要な通信が行なわれたような場合であっても、現時点から所定時間だけ過去に遡って受信した画像や通信内容を、通信が行なわれたときの時間差に関わりなく、幾つでも保存することのできる携帯電話機および携帯電話機の送受信データ保存再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の携帯電話機は、画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する携帯電話機において、前記課題を達成するため、特に、
データの高速書き込みが可能な一時記憶用メモリと、
前記一時記憶用メモリよりも大きな記憶容量を有する不揮発性メモリと、
携帯電話機におけるテレビ電話機能の起動を検知する作動検知手段と、
前記作動検知手段がテレビ電話機能の起動を検知すると、前記データのうち少なくとも受信データを逐次抽出し、抽出したデータを予め決められた記憶容量の範囲内で前記一時記憶用メモリに循環的に上書きして記憶させる抽出データ書込手段と、
ユーザからのデータ保存指令を受け付けるための保存指令受付手段と、
前記保存指令受付手段からのデータ保存指令を受けると、その時点で前記一時記憶用メモリに記憶されているデータの全てを書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルにして前記不揮発性メモリに記憶させるデータ保存手段と、
前記不揮発性メモリに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生する記憶データ再生手段とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【0010】
また、本発明の携帯電話機の送受信データ保存再生方法は、画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する携帯電話機の送受信データ保存再生方法であり、前記と同様の課題を達成するため、特に、
テレビ電話機能が作動する間に検出される送受信データから少なくとも受信データを逐次抽出してデータの高速書き込みが可能な一時記憶用メモリに予め決められた記憶容量の範囲内で循環的に上書きして定常的に記憶させておき、
ユーザがデータ保存指令を入力した時点で前記一時記憶用メモリに記憶されているデータの全てを、書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルにして前記一時記憶用メモリよりも大きな記憶容量を有する不揮発性メモリに記憶させ、
その後、前記不揮発性メモリに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生することを特徴とした構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の携帯電話機および携帯電話機の送受信データ保存再生方法は、携帯電話機におけるテレビ電話機能の起動を検知した時点で予め決められた記憶容量の範囲内で一時記憶用メモリに受信データを循環的に上書きして記憶させ始めると共に、ユーザによるデータ保存指令の入力が検知された時点で一時記憶用メモリに記憶されているデータの全てを書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルとして不揮発性メモリに記憶させるようにしているので、通信内容の記録を開始させる記録スイッチ等の操作による明示的な指令を携帯電話機に与えなくても、予め決められた記憶容量のデータ、つまり、現時点から所定時間前まで過去に遡って受信した画像や通信内容等のデータを定常的に一時記憶用メモリに記憶させることができる。
【0012】
また、ユーザがデータ保存指令を入力することにより、一時記憶用メモリに記憶されているデータ、すなわち、現時点から所定時間前まで過去に遡って受信した画像や通信内容等のデータを不揮発性メモリにファイルとして保存することができ、更に、ファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生することができるので、重要な通信内容を聞き逃したり見逃したりした場合であっても、その内容を後から簡単に再確認することができる。
【0013】
一時記憶用メモリには受信データが循環的に上書きして記憶され、古いデータは自動的に消去されることになるが、一時記憶用メモリのデータを記憶容量の大きな不揮発性メモリにファイルとして保存することができるので、通信が行なわれたときの時間差に関わりなく、重要な通信内容を幾つでも保存することができ、テレビ電話中のデータを順次記憶するための一時記憶用メモリは小容量で済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について具体例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の送受信データ保存再生方法を適用した一実施形態の携帯電話機1の構成の概略について示したブロック図、また、図2は同実施形態の携帯電話機1が備える主要な機能について簡略化して示した機能ブロック図である。
【0016】
この実施形態の携帯電話機1は、画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する携帯電話機であり、テレビ電話機能を実現するための公知の構成要素に加え、更に、図1に示されるように、データの高速書き込みが可能なRAMによって構成される一時記憶用メモリAと、一時記憶用メモリAよりも大きな記憶容量を有する不揮発性メモリBと、携帯電話機1におけるテレビ電話機能の起動を検知する作動検知手段Cと、作動検知手段Cがテレビ電話機能の起動を検知すると、それ以降当該携帯電話機1によって送受信されるデータを逐次抽出し、抽出した受信データと送信データを同期させて予め決められた記憶容量の範囲内で一時記憶用メモリAに循環的に上書きして記憶させる抽出データ書込手段Dと、ユーザからのデータ保存指令を受け付けるための保存指令受付手段Eと、保存指令受付手段Eからのデータ保存指令を受け、その時点で一時記憶用メモリAに記憶されているデータの全てを書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルにして不揮発性メモリBに記憶させるデータ保存手段Fと、不揮発性メモリBに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生する記憶データ再生手段Gとを備える。
抽出データ書込手段Dは、携帯電話機1によって送受信されるデータのうち受信データのみを抽出して一時記憶用メモリAに記憶させるように構成する場合もある。
【0017】
また、この実施形態の携帯電話機1は、更に、一時記憶用メモリAにおけるデータの書き込み状態を監視し、一時記憶用メモリAを一巡してデータが書き込まれる前に上書きの発生を予告する上書発生予告手段Hと、上書発生予告手段Hが上書きの発生を予告した時点でユーザに上書きの発生を警告表示する上書発生警告手段Iと、ユーザからのファイル選択指令を受け付けるための選択指令受付手段Jと、選択指令受付手段Jからのファイル選択指令を受けて選択済みのファイルを再生対象ファイルとして順に一時記憶する再生対象ファイル一時記憶手段Kと、再生対象ファイル一時記憶手段Kに記憶された複数のファイルから記憶時の時系列に従って各ファイルを順に記憶データ再生手段Gに引き渡す連続再生補助手段Lとを備える。
但し、上書発生予告手段H,上書発生警告手段I,選択指令受付手段J,再生対象ファイル一時記憶手段K,連続再生補助手段Lに関しては必ずしも必須ではなく、これらの各手段を省略した場合であっても、所期の目的を達成するために必要とされる最小限度の機能を発揮することが可能である。
【0018】
この実施形態の携帯電話機1は、図1に示されるように、通話用のマイク2およびスピーカ3と送受信部4ならびにディスプレイ5を有し、テレビ電話用の画像を撮影するためのカメラ6を備える。この実施形態においては、スピーカ3は、不揮発性メモリBに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生する記憶データ再生手段Gの一部をなす音声出力部としても機能する。
【0019】
ディスプレイ5は液晶モニタ等によって構成され、電話番号の選択表示や着信履歴等の表示、更には、作成過程にあるメールや受信メールの表示等に利用され、また、テレビ電話機能を利用した通信を行なう際の画像表示手段としても利用される。更に、この実施形態においては、ディスプレイ5が、不揮発性メモリBに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生する記憶データ再生手段Gの一部をなす画像表示部として機能し、また、ユーザに上書きの発生を警告表示する上書発生警告手段Iの一部をなすアラート表示部としても機能する。
【0020】
携帯電話機1を通常の電話モードで使用する場合にあっては、マイク2から入力された音声が音声処理部12でA/D変換されてマイクロプロセッサ8に転送され、更に、マイクロプロセッサ8で圧縮および符号化の処理を施された後、送受信部4で変調されて内蔵式もしくは伸縮式のアンテナ13を介して外部に送信される。
【0021】
カメラ制御部7はマイクロプロセッサ8からの指令を受けてデジタルカメラ6を駆動する。通常の撮影モードにおいてデジタルカメラ6で撮像された画像は、画像処理部9で圧縮および符号化の処理を施されてからマイクロプロセッサ8に読み込まれ、不揮発性メモリBのユーザ用画像記憶領域に保存される。不揮発性メモリBには撮影モードで撮影された画像データの他にもメールのテキストデータや登録済電話番号および電子メールアドレス等が記憶される。特に、本実施形態においては、この不揮発性メモリBに、一時記憶用メモリAとして機能するRAM14から転送されるデータをファイルとして記憶するためのテレビ電話用保存データ記憶領域が設けられている。また、携帯電話機1のテレビ電話機能が起動されている場合にあっては、圧縮および符号化の処理を終えた画像データは不揮発性メモリBのユーザ用画像記憶領域には保存されず、所定のサンプリング周期でCPU8に読み込まれ、前述の処理で圧縮および符号化の処理を施された音声データと共に多重化されて画像と音声を含む送信データに変換され、前記と同様、送受信部4で変調されて内蔵式もしくは伸縮式のアンテナ13を介して外部に送信されることになる。
【0022】
携帯電話機1を通常の電話モードで使用している状況下でアンテナ13によって受信された通信電波は送受信部4で復調されてマイクロプロセッサ8に転送され、音声データに変換されてから、音声処理部12でD/A変換等の処理操作を受けてスピーカ3から音声として出力される。また、携帯電話機1のテレビ電話機能が起動されている状況下にあっては、アンテナ13によって受信された通信電波、すなわち、多重化された音声符号化信号と画像符号化信号とからなる受信データが、送受信部4で復調されてマイクロプロセッサ8に転送され、音声符号化信号と画像符号化信号とに分離された後、音声符号化信号の部分は前記と同様に音声データに変換されて音声処理部12によるD/A変換等の処理操作を受けてスピーカ3から音声として出力される一方、画像符号化信号の部分は、表示用の画像データに変換されてディスプレイ5に送られ、ディスプレイ5にリアルタイムの画像として表示される。
【0023】
キー操作部10は、電話番号の入力操作等の場合にはテンキーとして使用され、また、電子メールの作成等に際してはテキストデータ入力用のカナキー等として利用される。更に、この実施形態においては、キー操作部10の予め決められた1つのキーが保存指令受付手段Eの一部すなわち入力操作部として機能し、更に、カーソル移動キーや選択実行キーが選択指令受付手段Jの入力操作部として機能することになる。
【0024】
一時記憶用メモリAとして機能するRAM14の記憶領域の一部は再生対象ファイル一時記憶手段Kとして利用され、更に他の一部は、内部処理用のデータの一時記憶等にも利用される。
【0025】
ROM11には、通常の通話やテレビ電話機能を利用した通話および電子メールの送受信さらには画像の撮影ならびに画像の再生等に必要とされる処理を実行するための制御プログラムに加え、本実施形態においては、特に、マイクロプロセッサ8を作動検知手段C,抽出データ書込手段D,保存指令受付手段Eの主要部,データ保存手段F,記憶データ再生手段Gの主要部,上書発生予告手段H,上書発生警告手段Iの主要部,選択指令受付手段Jの主要部,連続再生補助手段Lとして機能させるために必要とされる制御プログラムが格納されている。
【0026】
携帯電話機1のハードウェア上の構成に関しては従来のものと同様であり、また、テレビ電話として機能する携帯電話機についても公知であるので、これらの点については詳細な説明は省略する。
【0027】
図3〜図5は同実施形態の携帯電話機1のマイクロプロセッサ8によって実行される処理の概略について示したフローチャート、また、図6および図7はRAM14の一時記憶用メモリAに記憶される送受信データの例について簡略化して示した概念図である。
【0028】
次に、図3〜図5のフローチャートを参照して、作動検知手段C,抽出データ書込手段D,保存指令受付手段Eの主要部,データ保存手段F,記憶データ再生手段Gの主要部,上書発生予告手段H,上書発生警告手段Iの主要部,選択指令受付手段Jの主要部,連続再生補助手段Lとして機能するマイクロプロセッサ8の処理動作について具体的に説明する。
【0029】
携帯電話機1に電源が投入されると、マイクロプロセッサ8は、まず、携帯電話機1のテレビ電話機能が起動されたか否かを判定し(ステップa1)、テレビ電話モードの起動が検知されなければ、更に、不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶されているファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生する再生処理がユーザによるキー操作部10の操作で選択されたか否かを判定する(ステップa30)。
【0030】
そして、テレビ電話モードの起動も再生処理の選択操作も検知されなければ、マイクロプロセッサ8は、ユーザによるキー操作部10の操作に応じ、従来と同様にして、通常の電話モードでの発呼処理や受信処理さらには電子メールの作成等の処理を所定周期毎に繰り返されるステップa41の処理によって実行する。
【0031】
このようにしてステップa1,ステップa30,ステップa41の処理が繰り返し実行される間に、ユーザがキー操作部10からの操作によってテレビ電話の機能を起動すると、作動検知手段Cとして機能するマイクロプロセッサ8が、ステップa1の判定処理でテレビ電話機能の起動を検知する。
【0032】
次いで、マイクロプロセッサ8は、RAM14の一時記憶用メモリAに一巡して送受信データの書き込みが行われたことを記憶する上書き実行確認フラグFの値を0に初期化し(ステップa2)、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送受信データの書き込み位置を特定するためのデータ書込アドレス特定指標iの値を0に初期化して(ステップa3)、従来と同様に、マイク2から入力された音声の圧縮および符号化とデジタルカメラ6で撮像された画像の圧縮および符号化、ならびに、これらのデータを多重化して画像と音声を含む送信データに変換する処理を実行する(ステップa4)。
【0033】
そして、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8が、前述のステップa4の処理で生成された1サンプリング周期分の送信データを抽出し、データ書込アドレス特定指標iの現在値に基いて当該送信データをRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスの送信データ記憶フィールドに一時記憶させる(ステップa5)。
【0034】
次いで、マイクロプロセッサ8が、ステップa4の処理で生成された1サンプリング周期分の送信データを送受信部4およびアンテナ13を介して外部に送信し(ステップa6)、従来と同様に、アンテナ13によって受信された通信電波、すなわち、多重化された音声符号化信号と画像符号化信号とからなる受信データを検出する(ステップa7)。
【0035】
そして、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8が、ステップa7の処理で受信された1サンプリング周期分の受信データを抽出し、データ書込アドレス特定指標iの現在値に基いて、当該受信データをRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスの受信データ記憶フィールドに一時記憶させる(ステップa8)。
【0036】
次いで、マイクロプロセッサ8は、従来と同様にして、当該1サンプリング周期分の受信データを音声符号化信号と画像符号化信号とに分離し(ステップa9)、音声符号化信号の部分を音声データに変換して音声処理部12およびスピーカ3を介して音声出力する一方、画像符号化信号の部分を表示用の画像データに変換してディスプレイ5にリアルタイムの画像として表示出力する(ステップa10)。
【0037】
このように、同じサンプリング周期で抽出されたデータのうち、送信データはRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスの送信データ記憶フィールドに記憶され、受信データはRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスの受信データ記憶フィールドに記憶されるので、両者は完全に同期した状態でRAM14の一時記憶用メモリAに記憶されることになる(図6参照)。
【0038】
次いで、上書発生予告手段Hとして機能するマイクロプロセッサ8は、データ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達しているか否かを判定する(ステップa11)。
【0039】
警告判定用の設定値jはRAM14の一時記憶用メモリAを一巡してデータが書き込まれる前に上書きの発生を予告するための設定値であり、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに比べて小さな値である(図6参照)。
警告判定用の設定値jの値は、上書きの発生が上書発生警告手段Iによってユーザに警告されてからユーザが保存指令受付手段Eを操作してデータ保存手段Fを作動させても一時記憶用メモリAにおける第0アドレスの送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドにデータが上書きされない程度の時間的な余裕が生じる程度の大きさに設定するものとし、例えば、サンプリング周期×(n−j)が数秒程度となるようにjの値を設定することが望ましい。
【0040】
データ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達しておらずステップa11の判定結果が真となった場合には、上書きの開始までに時間的な余裕があり、現時点で上書発生警告手段Iを作動させる必要はない。
従って、この場合、マイクロプロセッサ8は、RAM14の一時記憶用メモリAにおいて最後に送受信データの書き込みが行われたアドレスを特定するための最終書込位置記憶レジスタRにデータ書込アドレス特定指標iの現在値を一時記憶した後(ステップa12)、データ書込アドレス特定指標iの現在値が、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達しているか否かを判定する(ステップa15)。
【0041】
ステップa15の判定結果が真となり、データ書込アドレス特定指標iの現在値がRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達していないことが明らかとなった場合には、このままRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドに順に送受信データを記憶していけることを意味するので、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8は、データ書込アドレス特定指標iの値を1インクリメントして(ステップa16)、次の送受信データの一時記憶に備える。
【0042】
次いで、保存指令受付手段Eの主要部として機能するマイクロプロセッサ8は、保存指令受付手段Eの一部すなわち入力操作部として機能するキー操作部10に対するユーザの操作によってデータ保存指令が入力されているか否かを判定する(ステップa17)。
【0043】
データ保存指令の入力が確認されなければ、マイクロプロセッサ8は、更に、キー操作部10に対するユーザの操作によって携帯電話機1のテレビ電話機能を非作動とする終了指令が入力されているか否かを判定する(ステップa18)。
【0044】
そして、終了指令が入力されていなければ、マイクロプロセッサ8は、データ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達したことが確認されるか(ステップa11参照)、データ書込アドレス特定指標iの現在値がRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達したことが確認されるか(ステップa15参照)、データ保存指令が入力されたことが確認されるか(ステップa17参照)、もしくは、終了指令が入力されたことが確認されるまでの間(ステップa18参照)、前記と同様にしてステップa4〜ステップa12およびステップa15〜ステップa18の処理を繰り返し実行し、この間、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8が、サンプリング周期毎に更新されるデータ書込アドレス特定指標iの現在値に基いて、図6に示されるように、当該1サンプリング周期分の送信データをRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスの送信データ記憶フィールドに逐次一時記憶させると共に、当該1サンプリング周期分の受信データをRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスの受信データ記憶フィールドに逐次一時記憶させていく。
【0045】
そして、このような処理が繰り返し実行される間に、ステップa11の判定処理でデータ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達したことが確認されると、上書発生予告手段Hとして機能するマイクロプロセッサ8は、この時点で上書き実行確認フラグFの値が0に保持されているか否か、つまり、現時点でRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して送受信データの上書き行為が既に行なわれているか否かを判定する(ステップa13)。
【0046】
ここで、上書き実行確認フラグFの値が0に保持されており、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して送受信データの上書き行為が行なわれていないことが明らかとなった場合には、上書発生警告手段Iとして機能するマイクロプロセッサ8が、上書発生警告手段Iの一部をなすアラート表示部として機能するディスプレイ5にアラート信号を送出し、数秒の猶予を残してRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドにデータの上書きが開始される旨のアラートメッセージを表示させ、上書きの発生をユーザに警告する(ステップa14)。
上書き実行確認フラグFに値1が既にセットされている場合には、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して既に送受信データの上書き行為が開始されていることを意味するので、アラートメッセージの表示は行なわない。
【0047】
そして、更に、データ書込アドレス特定指標iの現在値がRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達したことがステップa15の判定処理で確認されると、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8は、データ書込アドレス特定指標iの値を改めて0に初期化し(ステップa19)、上書き実行確認フラグFの値が0に保持されているか否か、つまり、この時点でディスプレイ5に上書きの開始を示すアラートメッセージが表示されているか否かを判定し(ステップa20)、上書き実行確認フラグFの値が0に保持されている場合、つまり、次周期のサンプリング周期で最初の上書き行為が行なわれる場合に限って、ディスプレイ5上のアラートメッセージの表示を解除し(ステップa21)、上書き実行確認フラグFに値1をセットして、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して次のサンプリング周期から送受信データの上書き行為が開始されることを記憶する(ステップa22)。
上書き実行確認フラグFに値1が既にセットされている場合には、既に此れ以前のサンプリング周期でディスプレイ5上のアラートメッセージの表示が解除され、上書き実行確認フラグFの値も1にセットされているので、再度のアラートメッセージの解除処理は行なわない。
つまり、データの上書きが開始される旨のアラートメッセージがディスプレイ5上に表示されるのは、データ書込アドレス特定指標iの値が警告判定用の設定値jに達してからnに到達するまでの間であり、RAM14の一時記憶用メモリAを一巡した2回目以降の上書きに対してはアラートメッセージの表示は行なわれない。
【0048】
次いで、マイクロプロセッサ8は、キー操作部10に対するユーザの操作によってデータ保存指令や終了指令が入力されているか否かを判定し(ステップa17,ステップa18)、何れの指令も入力されていなければ、前記と同様、データ書込アドレス特定指標iの現在値が改めて警告判定用の設定値jに達したことが確認されるか(ステップa11参照)、データ書込アドレス特定指標iの現在値がRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達したことが改めて確認されるか(ステップa15参照)、データ保存指令が入力されたことが確認されるか(ステップa17参照)、もしくは、終了指令が入力されたことが確認されるまでの間(ステップa18参照)、ステップa4〜ステップa12およびステップa15〜ステップa18の処理を繰り返し実行し、この間、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8が、前述のステップa19の処理で一旦初期化されてから改めてサンプリング周期毎に更新されるデータ書込アドレス特定指標iの現在値に基いて、図7に示されるように、当該1サンプリング周期分の送信データと受信データをRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスすなわち第0アドレスから順に循環的に書き込むようなかたちで一時記憶させていく。
【0049】
従って、結果的に、最近のnサンプリング周期分のテレビ電話に関わる送受信データ、すなわち、現時点から〔サンプリング周期×n〕に相当する時間まで過去に遡った分の送受信データがRAM14の一時記憶用メモリAに定常的に保存されることになる。
【0050】
このようにしてステップa4〜ステップa12およびステップa15〜ステップa18の処理が繰り返し実行される間に、例えば、テレビ電話中に通信相手から送られた重要な音声や画像をユーザが聞き逃したり見逃したりしたような場合には、当該時点から過去に遡った画像や通話内容の保存状態を維持するため、ユーザは、保存指令受付手段Eの入力操作部として機能するキー操作部10を操作して、データ保存指令を携帯電話機1に入力する。
【0051】
すると、保存指令受付手段Eの主要部として機能するマイクロプロセッサ8がステップa17の判定処理で此の操作を検知し、ファイル名のネーミングに使用されるファイル名生成指標kの値を1インクリメントする(ステップa23)。
ファイル名生成指標kは、RAM14の一時記憶用メモリAに記憶されているデータを一連のデータ群からなるファイルとして不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶させる際にファイル名を設定するための指標であり、その値は不揮発性メモリBのユーザ用データ記憶領域に書き換え可能な状態で不揮発記憶されるようになっている。
【0052】
次いで、マイクロプロセッサ8は、この時点で上書き実行確認フラグFの値が0に保持されているか否か、つまり、現時点でRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して送受信データの上書き行為が行なわれているか否かを判定する(ステップa24)。
【0053】
そして、上書き実行確認フラグFの値が0に保持されており、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して送受信データの上書き行為が全く行なわれていないことが明らかとなった場合には、データ保存手段Fとして機能するマイクロプロセッサ8が、最終書込位置記憶レジスタRの現在値に基づいてRAM14の一時記憶用メモリAの第0アドレス〜第Rアドレスまでに記憶されている送受信データを1〜Rのアドレス順、つまり、データを書き込んだ時の時系列に従って順に読み込み(図6参照)、一連のデータ群からなる名称kのファイルとして、不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶させる(ステップa25)。
【0054】
次いで、マイクロプロセッサ8は、データ書込アドレス特定指標iの値を0に初期化し(ステップa26)、最終書込位置記憶レジスタRの現在値が警告判定用の設定値jを超えているか否か、つまり、この時点でディスプレイ5上にアラートメッセージが表示されているか否かを判定し(ステップa27)、最終書込位置記憶レジスタRの現在値が設定値jを超えている場合、すなわち、アラートメッセージが表示されている場合には、このアラートメッセージの表示をクリアする(ステップa28)。
【0055】
次いで、マイクロプロセッサ8は、キー操作部10に対するユーザの操作によって終了指令が入力されているか否かを判定し(ステップa18)、終了指令が入力されていなければ、データ書込アドレス特定指標iの現在値が再び警告判定用の設定値jに達したことが確認されるか(ステップa11参照)、データ書込アドレス特定指標iの現在値がRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達したことが確認されるか(ステップa15参照)、データ保存指令が入力されたことが確認されるか(ステップa17参照)、もしくは、終了指令が入力されたことが確認されるまでの間(ステップa18参照)、前記と同様にしてステップa4〜ステップa12およびステップa15〜ステップa18の処理を繰り返し実行し、この間、抽出データ書込手段Dとして機能するマイクロプロセッサ8が、前述のステップa26の処理で一旦初期化されてから改めてサンプリング周期毎に更新されるデータ書込アドレス特定指標iの現在値に基いて、図6に示されるように、当該1サンプリング周期分の送信データと受信データをRAM14の一時記憶用メモリAにおける第iアドレスすなわち第0アドレスから順に循環的に書き込むかたちで一時記憶させていく。
【0056】
一方、ステップa24の判定結果が偽となった場合、つまり、上書き実行確認フラグFに値1がセットされており、RAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドや受信データ記憶フィールドに対して送受信データの上書き行為が既に行なわれていることが明らかとなった場合には、データ保存手段Fとして機能するマイクロプロセッサ8が、最終書込位置記憶レジスタRの現在値に基づいてRAM14の一時記憶用メモリAの第R+1アドレス〜第nアドレスまでに記憶されている送受信データとRAM14の一時記憶用メモリAの第0アドレス〜第Rアドレスまでに記憶されている送受信データを、アドレスR+1〜nそしてアドレス1〜Rの順、すなわち、データを書き込んだ時の時系列に従って順に読み込み(図7参照)、一連のデータ群からなる名称kのファイルとして、不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶させる(ステップa29)。
【0057】
従って、例えば、データ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達してディスプレイ5に上書き開始のアラートメッセージが表示された時点でユーザが直ちにデータ保存指令を入力した場合、つまり、j<i<nの間にユーザがデータ保存指令を入力した場合では、上書き実行確認フラグFの値が0に保持され続け、R=i個(但し、j<i<n)の送受信データ群が名称kのファイルとして不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶されてデータ書込アドレス特定指標iと上書き開始のアラートメッセージがリセットされ、その後、再びデータ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達した時点で改めてディスプレイ5に上書き開始のアラートメッセージが表示されることになる。
よって、ディスプレイ5に上書き開始のアラートメッセージが表示される度にユーザがデータ保存指令を入力するようにすれば、R=i個(但し、j<i<n)の送受信データ群からなる名称k=1,2,3,・・・のファイル(図6参照)を連続的に生成することが可能であり、RAM14の一時記憶用メモリAの記憶容量の大小とは関わりなく、不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域の記憶容量が許す限り、テレビ電話の通話開始時点からの音声や画像の送受信データをk=1,2,3,・・・の幾つかのファイルに分割して連続的に保存することが可能である。
【0058】
また、データ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達してディスプレイ5に上書き開始のアラートメッセージが表示されたことをユーザが無視した場合にあっては、その後、最初にデータ書込アドレス特定指標iの現在値がRAM14の一時記憶用メモリAにおける送信データ記憶フィールドおよび受信データ記憶フィールドの総数nに達した時点、つまり、次周期のサンプリング周期で最初の上書き行為が行なわれることが分かった時点でアラートメッセージの表示が解除されて上書き実行確認フラグFがセットされ、その後で再びデータ書込アドレス特定指標iの現在値が警告判定用の設定値jに達しても、改めて上書き開始のアラートメッセージが表示されることはない。
この場合は、ユーザがデータ保存指令を入力する度に、常にR=n個の送受信データ群(図7参照)が名称kのファイルとして不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶されることになる。
よって、ユーザが重要な音声や画像の聞き逃しや見逃しに気付いた時点でデータ保存指令を入力することにより、何時でも、また、幾つでも、通信が行なわれたときの時間差とは関わりなく、データ保存指令を入力した各時点から〔サンプリング周期×n〕だけ過去に遡った時間帯の送受信データを、大容量の不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶させることができる。
【0059】
そして、最終的に、ステップa18の判定処理でキー操作部10に対する終了指令の入力が検知されると、マイクロプロセッサ8は通話中の画像や音声に関わる送受信データの一時記憶に関わる処理を終え、ステップa1,ステップa30,ステップa41の処理を繰り返し実行する初期の待機状態に復帰する。
【0060】
一方、不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に記憶されているファイルを選択してテレビ電話中に聞き逃したり見逃したりした音声や画像を再生する場合には、ユーザは、選択指令受付手段Jの入力操作部として機能するキー操作部10のカーソル移動キーや選択実行キー等を操作し、携帯電話機1にファイル選択指令を入力するようにする。
【0061】
すると、選択指令受付手段Jの主要部として機能するマイクロプロセッサ8がステップa30の判定処理で此の操作を検知し、ユーザがキー操作部10の操作によって再生対象とすべき送受信データのファイルを選択する度に(ステップa31)、RAM14の記憶領域の一部によって構成される再生対象ファイル一時記憶手段Kに選択済みのファイルの名称kを次々と記憶させていく(ステップa32)。
ファイル名のディスプレイ表示やディスプレイ上のファイル名を利用したファイルの選択処理等については周知である。
【0062】
そして、最終的に、再生すべきファイルを全て選択したユーザがキー操作部10を操作して選択操作の終了を宣言すると、マイクロプロセッサ8がステップa33の判定処理で此の操作を検知する。
【0063】
次いで、連続再生補助手段Lとして機能するマイクロプロセッサ8が、再生対象ファイル一時記憶手段Kに記憶されたファイル名kに基づいて不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域から昇べき順でファイルを1つ選択し、RAM14のユーザ用データ記憶領域に展開する(ステップa34)。
【0064】
そして、記憶データ再生手段Gとして機能するマイクロプロセッサ8が、RAM14のユーザ用データ記憶領域に展開されたファイルの先頭から送信データと受信データの組を1ブロック抽出し(ステップa35)、送信データと受信データの各々について1ブロックすなわち1サンプリング周期分のデータを音声符号化信号と画像符号化信号とに分離して音声データと画像データに変換し(ステップa36)、記憶データ再生手段Gの一部をなす画像表示部を構成するディスプレイ5の表示領域を左右または上下に2分割して、その一方に受信データの画像をすると共に他方に送信データの画像を表示し(ステップa37)、送信データの音声と受信データの音声をスピーカ3から音声出力する(ステップa38)。
【0065】
次いで、記憶データ再生手段Gとして機能するマイクロプロセッサ8は、RAM14のユーザ用データ記憶領域に展開されたファイルに未再生の送受信データが残っているか否かを判定し(ステップa39)、未再生の送受信データがあれば、前記と同様にしてステップa35〜ステップa38の処理を繰り返し実行し、次々と1ブロック分の送受信データを順に読み込んで、データ保存時と同じサンプリング周期で音声と画像の再生処理を実行する。
【0066】
そして、RAM14のユーザ用データ記憶領域に展開されている1つのファイルの最後の送受信データの再生処理が完了したことがステップa39の判定処理で検知されると、連続再生補助手段Lとして機能するマイクロプロセッサ8は、ステップa32の処理で再生対象ファイル一時記憶手段Kに記憶された選択ファイルの中に未再生のファイル名が残っているか否かを判定し(ステップa40)、未再生のファイル名があれば、不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域からファイル名kの昇べき順で次のファイルを新たに1つ読み出し、RAM14のユーザ用データ記憶領域に展開する(ステップa34)。そして、記憶データ再生手段Gとして機能するマイクロプロセッサ8が、ステップa35〜ステップa38の処理を前記と同様にして繰り返し実行し、当該1ファイルに記憶された送受信データの音声と画像をスピーカ3とディスプレイ5に出力する。
【0067】
最終的に、ステップa40の判定結果が偽となり、再生対象ファイル一時記憶手段Kに記憶された選択ファイルの全てについて送受信データの再生処理が完了したことが確認された時点で、連続再生補助手段Lおよび記憶データ再生手段Gによるファイルの再生処理が全て完了し、マイクロプロセッサ8は、送受信データの再生に関わる処理を終え、ステップa1,ステップa30,ステップa41の処理を繰り返し実行する初期の待機状態に復帰する。
【0068】
従って、再生対象とすべき送受信データのファイルを2つ以上選択した場合にあっては、ファイル名kの昇べき順、つまり、ファイル名kのファイルが例えばk=1,2,3,・・・の時系列順で自動的に読み出されて各ファイル内の送受信データが次々と連続的に再生されることになるので、既に述べたように、テレビ電話の通信に際してディスプレイ5に上書き開始のアラートメッセージが表示される度にユーザがキー操作部10を操作してデータ保存指令を入力することによって名称k=1,2,3,・・・のファイルを連続的に生成した場合においては、RAM14の一時記憶用メモリAの記憶容量の大小とは関わりなく、テレビ電話の通話開始時点からの音声や画像の送受信データを分割して記憶したk=1,2,3,・・・の一連のファイルからデータ記憶時の時系列に従って連続的に送受信データを読み出して通信時の音声や画像を間断なく再生することが可能である。
【0069】
また、再生対象とすべき送受信データのファイルを1つのみ選択した場合にあっては、この1つのファイルの送受信データの再生が完了した時点で再生対象ファイル一時記憶手段Kに他のファイル名のファイルが記憶されているということはないので、1ファイル分の送受信データの再生が終った時点で、ステップa40の判定結果が偽となってファイルの再生処理が全て完了し、マイクロプロセッサ8は、ステップa1,ステップa30,ステップa41の処理を繰り返し実行する初期の待機状態に復帰する。
【0070】
不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域ではテレビ電話の実行中に保存された一連の送受信データのファイルがファイルの生成順つまりファイル名kによって管理されているので、RAM14の一時記憶用メモリAから新たに転送される一連の送受信データが不用意に他のファイルに上書きして保存されることはない。
従って、通信が行なわれたときの時間差に関わりなく、例えば、1週間前の通信内容や1日前の通信内容あるいは数時間前の通信内容といったものを不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域の記憶容量の範囲内で幾つでも保存することがきできる。
【0071】
この実施形態では、新たなファイルの保存時にインクリメントされるファイル名生成指標kの値に基いて複数のファイルを時系列で管理しているが、ファイル名生成指標kに代えて年,月,日,時,分,秒のデータを使用してもよいし、ファイル名kや年,月,日,時,分,秒といった時系列のデータに加え、更に、ラベリングのための題目等をファイルに対応させて設定するようにしてもよい。
【0072】
前述の実施形態では、テレビ電話機能使用時の通信内容を的確に把握するため、送信データと受信データを同期させて記憶したファイルkを生成して不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域に保存するようにしているが、ユーザが必要とするのは、専ら通信相手から送信された画像や音声データであるから、前述したように、受信データのみを記憶するファイルkを生成するようにしても、所期の目的、つまり、ユーザが通信内容保存用の記録スイッチの操作を忘れたまま重要な通信を行ったような場合であっても、相手側に音声や画像の再送信を求めずに、聞き逃したり見逃したりした音声や画像を再確認することを可能とするといった目的を達成することができる。また、テレビ電話会議等の重要データの保存にも利用できる。
【0073】
何れの構成を適用した場合も、通信が行なわれたときの時間差に関わりなく、複数の通信内容を不揮発性メモリBのテレビ電話用保存データ記憶領域にファイルとして幾つでも保存することがきでき、テレビ電話用保存データ記憶領域それ自体には循環的なデータの書き込み作業は行なわれないので、一旦テレビ電話用保存データ記憶領域に保存された画像や音声の通信内容を長期間に亘り幾つでも失われることなく安全に保持することができる。
また、送受信データ用のバッファとして利用されるRAM14の一時記憶用メモリAには長時間の通信に亘る送受信データを記憶するための記憶容量は不要であって、データ記憶用のバッファとして機能する格別のメモリを新たに実装する必要がなく、データ記憶用のRAM14の記憶領域の一部、すなわち、予め決められた範囲内の記憶容量を、バッファに代わる一時記憶用メモリAとして流用することができるので、携帯電話1の生産コストの軽減化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を適用した一実施形態の携帯電話機の構成の概略について示したブロック図である。
【図2】同実施形態の携帯電話機が備える主要な機能について簡略化して示した機能ブロック図である。
【図3】同実施形態の携帯電話機のマイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートである。
【図4】同マイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートの続きである。
【図5】同マイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートの続きである。
【図6】同実施形態の携帯電話機の一時記憶用メモリにおける送受信データの記憶状態の一例について簡略化して示した概念図である。
【図7】同実施形態の携帯電話機の一時記憶用メモリにおける送受信データの記憶状態の一例について図6とは異なるタイミングで示した概念図である。
【符号の説明】
【0075】
1 携帯電話機
2 マイク
3 スピーカ
4 送受信部
5 ディスプレイ
6 カメラ
7 カメラ制御部
8 マイクロプロセッサ
9 画像処理部
10 キー操作部(保存指令受付手段および選択指令受付手段の一部)
11 ROM
12 音声処理部
13 アンテナ
14 RAM(一時記憶用メモリ,再生対象ファイル一時記憶手段)
A 一時記憶用メモリ
B 不揮発性メモリ
C 作動検知手段
D 抽出データ書込手段
E 保存指令受付手段
F データ保存手段
G 記憶データ再生手段
H 上書発生予告手段
I 上書発生警告手段
J 選択指令受付手段
K 再生対象ファイル一時記憶手段
L 連続再生補助手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する携帯電話機において、
データの高速書き込みが可能な一時記憶用メモリと、
前記一時記憶用メモリよりも大きな記憶容量を有する不揮発性メモリと、
携帯電話機におけるテレビ電話機能の起動を検知する作動検知手段と、
前記作動検知手段がテレビ電話機能の起動を検知すると、前記データのうち少なくとも受信データを逐次抽出し、抽出したデータを予め決められた記憶容量の範囲内で前記一時記憶用メモリに循環的に上書きして記憶させる抽出データ書込手段と、
ユーザからのデータ保存指令を受け付けるための保存指令受付手段と、
前記保存指令受付手段からのデータ保存指令を受けると、その時点で前記一時記憶用メモリに記憶されているデータの全てを書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルにして前記不揮発性メモリに記憶させるデータ保存手段と、
前記不揮発性メモリに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生する記憶データ再生手段とを備えたことを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
前記抽出データ書込手段が、前記データから前記受信データに加えて送信データを逐次抽出し、抽出したデータを予め決められた記憶容量の範囲内で前記一時記憶用メモリに受信データと送信データを同期させて循環的に上書きして記憶させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記一時記憶用メモリにおけるデータの書き込み状態を監視し、前記一時記憶用メモリを一巡してデータが書き込まれる前に上書きの発生を予告する上書発生予告手段と、
前記上書発生予告手段が上書きの発生を予告した時点でユーザに上書きの発生を警告表示する上書発生警告手段とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のうち何れか一項に記載の携帯電話機。
【請求項4】
ユーザからのファイル選択指令を受け付けるための選択指令受付手段と、
前記選択指令受付手段からのファイル選択指令を受けて選択済みのファイルを再生対象ファイルとして順に一時記憶する再生対象ファイル一時記憶手段と、
前記再生対象ファイル一時記憶手段に記憶された複数のファイルから記憶時の時系列に従って各ファイルを順に前記記憶データ再生手段に引き渡す連続再生補助手段とを備えたことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3のうち何れか一項に記載の携帯電話機。
【請求項5】
画像データと音声データを多重化したデータを送受信するテレビ電話機能を有する携帯電話機の送受信データ保存再生方法であって、
テレビ電話機能が作動する間に検出される送受信データから少なくとも受信データを逐次抽出してデータの高速書き込みが可能な一時記憶用メモリに予め決められた記憶容量の範囲内で循環的に上書きして定常的に記憶させておき、
ユーザがデータ保存指令を入力した時点で前記一時記憶用メモリに記憶されているデータの全てを、書き込み時の時系列に従った一連のデータ群からなるファイルにして前記一時記憶用メモリよりも大きな記憶容量を有する不揮発性メモリに記憶させ、
その後、前記不揮発性メモリに記憶されたファイルから一連のデータを順に読み出して画像と音声を再生することを特徴とした携帯電話機の送受信データ保存再生方法。
【請求項6】
前記受信データに加え、前記送受信データから送信データを逐次抽出し、抽出したデータを予め決められた記憶容量の範囲内で前記一時記憶用メモリに受信データと送信データを同期させて循環的に上書きして記憶させるようにしたことを特徴とする請求項5記載の携帯電話機の送受信データ保存再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−124243(P2010−124243A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296067(P2008−296067)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】