説明

摩擦材用素材の製造方法

【課題】 樹脂含浸紐に結び目があっても差し支えなく、樹脂含浸紐が毛羽立つことも防止されており、そのうえ摩擦材用素材中の配合ゴムの含有量を任意に設定することが可能な摩擦材用素材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、基材繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紐2に配合ゴムGを付着させて配合ゴム付着樹脂含浸紐からなる摩擦材用素材を製造する方法である。本発明では、一端側から他端側に貫通する貫通孔Tと貫通孔Tの他端側の開口に近接したノズル孔Nとをもつ押出型Dを使用し、貫通孔Tに樹脂含浸紐4を挿通しつつノズル孔Nより配合ゴムGを連続的に押し出してゴム紐3を形成し、ゴム紐3を樹脂含浸紐2に付着させる。貫通孔Tの内径を十分大きくとれるので、樹脂含浸紐2の押出型Dへの挿通がスムースであり、ノズル孔Nの開口径および数の調整によってゴム含有率が大幅に調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の動力伝達および制動等に用いられるクラッチフェーシング、ブレーキライニングおよびディスクパッド等の摩擦材を形成する素材として好適な摩擦材用素材の製造技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】特開昭57−195936号公報には、電線被覆と同様に、基材繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紐を配合ゴムに含浸した状態で押し出し、樹脂含浸紐の周りに押し出された配合ゴムを直接被覆させて摩擦材用素材を製造する方法が開示されている。
【0003】しかしながら、同公報に開示された摩擦材用素材の製造方法では、樹脂含浸紐を狭いニップルの中を通して配合ゴムに含浸させる必要があった。それゆえ、樹脂含浸紐を形成している紐の結び目が、押し出し機の狭いニップルを通ることができず、つかえてしまうことがあるという不都合があった。また、樹脂含浸紐が押し出し機の入口ニップルでこすれて毛羽立ち、その毛羽がやはり狭い出口ニップルに引っかかって樹脂含浸紐の供給が止まってしまうような不都合も起こり得た。かといって入口および出口のニップルの直径を大きく設定すると、押し出しゴムが入口ニップルから逆流してしまうので、両上記不都合を解消し、適正なニップル径および押し出し圧を設定することは容易ではなかった。
【0004】一方、特公平1−22855号公報および特公平3−2377号公報には、基材繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紐に両面から配合ゴムの薄いシートを合わせ、二枚のゴムシートを樹脂含浸紐にロールで圧着させて張り合わせる摩擦材用素材の製造方法が開示されている。しかしながら、上記両公報に開示された摩擦材用素材の製造方法では、薄いゴムシートを予め製作したり、製造工程の途中で形成したりしなくてはならないので、工程が複雑になり、製造コストが上昇する。そればかりではなく、ゴムシートで樹脂含浸紐を完全に覆って互いに隣り合う樹脂含浸紐を束ねるので、摩擦材用素材中のゴムの配合率が60%以上と高くならざるを得ない。それゆえ、このような摩擦材用素材から製造した摩擦材では、引っ張り強度が不足しがちであり、高速回転時のバースト強度が低下する恐れが生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、樹脂含浸紐に結び目があっても差し支えなく、樹脂含浸紐が毛羽立つことも防止されており、そのうえ摩擦材用素材中の配合ゴムの含有量を任意に設定することが可能な摩擦材用素材の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み、本願発明者が研究をしたところ、摩擦材用素材の段階では、必ずしも配合ゴムが樹脂含浸紐を完全に覆っている必要はなく、配合ゴムが部分的に樹脂含浸紐に付着して樹脂含浸紐と配合ゴムとが混在していれば良いことに思い至った。すなわち、摩擦材用素材の段階では樹脂含浸紐と配合ゴムとが混在しているだけであっても、摩擦材を製造する過程で摩擦材用素材を巻回しホットプレスを加えることによって、樹脂含浸紐と混在している配合ゴムが樹脂含浸紐を覆うに至ることを実験的に発見した。本発明は、このような発見に基づいてなされた。
【0007】本発明の摩擦材用素材の製造方法は、基材繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紐に配合ゴムを付着させて配合ゴム付着樹脂含浸紐からなる摩擦材用素材を製造する方法であって、一端側から他端側に貫通する貫通孔と該貫通孔の他端側の開口に近接したノズル孔とをもつ配合ゴム押出型を使用し、該貫通孔に該樹脂含浸紐を挿通しつつ該ノズル孔より該配合ゴムを連続的に押し出し該樹脂含浸紐に付着させることを特徴とする。
【0008】樹脂含浸紐は、配合ゴム押出型内に配設されたパイプ等によって形成されている貫通孔を通って貫通孔の一方から他方へと挿通されるので、貫通孔内では配合ゴムと隔離されており、配合ゴムが貫通孔から逆流するような不都合は回避されている。また、貫通孔の内径を十分に大きく取ることが可能になるので、樹脂含浸紐に結び目があっても差し支えなく、樹脂含浸紐が毛羽立つことも防止されている。なお、樹脂含浸紐の毛羽立ちを防止するためには、貫通孔の入口である一端部が、漏斗状ないしラッパ状に滑らかに拡げられて開口していることが望ましい。
【0009】一方、未硬化の配合ゴムは、配合ゴム押出型の貫通孔の他端側の開口に近接したノズル孔から押し出されてゴム紐を形成する。この際、このゴム紐を押し出す速度は、樹脂含浸紐の挿通速度と同等ないし少し遅い程度が適当である。そしてこのゴム紐は、ノズル孔と隣り合う貫通孔から挿通される樹脂含浸紐とともに、ガイド等によって束ね合わせられて部分的に樹脂含浸紐に付着し、所定の太さの摩擦材用素材を形成するに至る。
【0010】このような摩擦材用素材の状態では、配合ゴムが樹脂含浸紐の全体を覆っている訳ではなく、配合ゴムは樹脂含浸紐に部分的に付着しているだけである。しかしながら、摩擦材用素材の段階では樹脂含浸紐と配合ゴムとが混在しているだけであっても、摩擦材を製造する過程で摩擦材用素材を巻回しホットプレスを加えることによって、樹脂含浸紐と混在している配合ゴムが樹脂含浸紐を覆うに至る。それゆえ、本発明の摩擦材用素材を材料として形成された摩擦材は、樹脂含浸紐が互いに配合ゴムによってしっかりと結合されて形成されるので、樹脂含浸紐同士が強固に結合される。
【0011】また、樹脂含浸紐を通す貫通孔の本数と配合ゴムが押し出されるノズル孔の個数との比率や、樹脂含浸紐の太さに対するノズル孔の開口断面積の比率および配合ゴムの押し出し速度等を調整することにより、樹脂含浸紐に対する配合ゴムの比率を任意に設定することが可能になる。それゆえ、本発明の摩擦材用素材の製造方法によれば、摩擦材用素材として最も適正な樹脂含浸紐に対する配合ゴムの比率をもって摩擦材用素材を製造することが可能になるという効果がある。
【0012】
【発明の実施の形態】前述の本発明の摩擦材用素材の製造方法において、樹脂含浸紐を挿通する貫通孔と配合ゴムを押し出すノズル孔とは、それぞれ均等に混在するように配設されていることが望ましい。また、ノズル孔の開口形状は、円形に限定されている必要はなく、楕円形や長円形、あるいは長方形ないしスリット状等でも良いので、配合ゴムから形成されるゴム紐の形状は、円筒状だけに限定されることがなく、テープ状等の形状をも取ることができる。
【0013】ここで、前記配合ゴム押出型は、互いに平行であって間隔を隔てた複数の前記貫通孔と、該貫通孔にそれぞれ近接した少なくとも一個の前記ノズル孔とを有することが望ましい。このような構成の配合ゴム押出型によれば、貫通孔が互いに平行で間隔を隔てているので、貫通孔への樹脂含浸紐の供給が容易である。また、各貫通孔の近傍には、その貫通孔に近接した少なくとも一個のノズル孔が配設されているので、貫通孔から挿通された樹脂含浸紐の近傍に配合ゴムが押し出される。それゆえ、配合ゴムからなるゴム紐が加硫反応により硬化して形成される際に、ゴム紐が樹脂含浸紐に付着しやすくなり、より一体性の高い束状の摩擦材用素材が形成されるという効果がある。
【0014】
【実施例】以下、本発明の摩擦材用素材の製造方法の実施例を図面を参照して示し、具体的に説明する。
[実施例1]
(実施例1の構成)本発明の実施例1としての摩擦材用素材の製造方法は、図1に示すように、基材繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紐2に配合ゴムからなるゴム紐3を付着させて配合ゴム付着樹脂含浸紐からなる摩擦材用素材を製造する方法である。すなわち、一端側から他端側に貫通する複数の貫通孔Tと貫通孔Tの他端側の開口に近接したノズル孔Nとをもつ配合ゴム押出型Dが使用され、貫通孔Tに樹脂含浸紐2を挿通しつつノズル孔Nより配合ゴムが連続的に押し出されてゴム紐3が形成され、ゴム紐3は樹脂含浸紐2に付着させられる。ここで、配合ゴム押出型Dは、互いに平行であって間隔を隔てた複数の貫通孔Tと、貫通孔Tにそれぞれ近接した数本ずつのノズル孔Nとを有する。
【0015】本実施例の構成について、以下により詳細に説明する。樹脂含浸紐2を形成している基材繊維束は、直径9μmのガラス繊維を引き揃えた直径3mm程度のガラスロービングであり、熱硬化性樹脂は、樹脂固形分にメラミン60重量部を含有させたメラミン変性フェノール樹脂である。上記ガラスロービング40重量部に対して固形分で8重量部のメラミン変性フェノール樹脂を含浸させることによって樹脂含浸紐2を形成した。
【0016】ここで、含浸の際にメラミン変性フェノール樹脂を溶かしていた溶媒は、水であり、同溶媒100重量部に対してメラミン変性フェノール樹脂は、40重量部の割合で溶かされていた。その後乾燥させて樹脂含浸紐2を形成した後、48重量部の樹脂含浸紐に対して2重量部の黄銅線(直径約120μm)を合わせて一体とした。
【0017】一方、配合ゴムは、SBRゴム15重量部と、充填剤等からなる添加剤32重量部と、加硫剤としての硫黄3重量部とを配合して準備した。このような配合ゴムGは、同じく図1に示すように、押出機Eに付設されたスクリューSによって配合ゴム押出型Dに圧入され、所定の圧力で配合ゴム押出型Dの開口断面が円形のノズル孔Nから丸棒状に押し出されてゴム紐3を形成する。
【0018】この際、配合ゴム押出型Dには、配合ゴム押出型Dの内周空間30に互いに間隔を隔てて平行に配設されたパイプPによって形成される一端側から他端側に貫通する数本の貫通孔Tと、貫通孔Tの他端側の開口に近接したノズル孔Nとが形成されている。ノズル孔Nは、各貫通孔Tを取り巻くように各貫通孔Tに近接して一つの貫通孔Tあたり数カ所に配設されている。
【0019】数本のパイプPの貫通孔Tには、黄銅線4と合わせられた樹脂含浸紐2が挿通されて一方から他方へと送られる一方、他方側のノズル孔Nからは配合ゴムGが連続的に押し出されてゴム紐3が形成される。ノズル孔Nから押し出された配合ゴムGからなるゴム紐3と、貫通孔Tから送られてきた黄銅線4に合わせられた樹脂含浸紐2とは、複数の組のガイド(図略)によって細く纏めれられ、互いに付着させられる。
【0020】なお、パイプPによって形成されている貫通孔Tは、一方の入口側ではラッパ状に滑らかに拡げられて開口しており(図略)、樹脂含浸紐2の毛羽立ちの発生が防止されている。また、パイプPによって形成される貫通孔Tの内径は、樹脂含浸紐2の直径よりもおおきく8mm程度であるから、樹脂含浸紐2に継ぎ目や結び目があっても、樹脂含浸紐2は差し支えなく貫通孔Tを挿通することができる。
【0021】その結果、図2に示すように、黄銅線4に合わせられた数本の樹脂含浸紐2と、樹脂含浸紐2に隣接して部分的に付着している二十本程度のゴム紐とからなる摩擦材用素材が得られる。
(実施例1からの摩擦材の製造)以上のように製造された本実施例の摩擦材用素材を元にして、次のようにして摩擦材としてのクラッチフェーシングを試作した。
【0022】すなわち、本実施例の摩擦材用素材をリング状に巻き取り、金型内に配置して14.7MPa(150kg/cm2 )の圧力および165℃の温度の高温高圧下で加熱加圧処理成形した。しかる後、200℃の雰囲気に5時間暴露するという熱処理を施してから、所定の厚さに研摩してクラッチフェーシングを得た。
(実施例1の変形態様1)本実施例の変形態様1として、図3に示すように、樹脂含浸紐2の中に黄銅線4を撚り合わせ、黄銅線4を含む樹脂含浸紐2とテープ状のゴム紐3とを合わせて形成された摩擦材用素材を製造する方法の実施が可能である。
【0023】本変形態様では、配合ゴム押出型(図1参照)は、樹脂含浸紐2を挿通する互いに平行で間隔を隔てた数本の貫通孔Tと、各貫通孔Tを挟むように近接して配置されたそれぞれ一対のノズル孔Nとを有する。なお、ノズル孔Nの開口断面形状は長細い長方形をしており、配合ゴムからなるゴム紐3は断面矩形の薄いテープ状に形成されている。また、各ゴム紐3は、隣接する樹脂含浸紐2に中央部付近で部分的に接合している。
【0024】本変形態様によっても、前述の実施例1で製造された摩擦材用素材と同様にしてクラッチフェーシングを製造することができる摩擦材用素材を製造することができ、以下に示すような実施例1とほぼ同様の作用効果が発揮される。
[評価検討]
(比較例1)本発明の実施例1に対する比較例1として、実施例1と同一の組成の樹脂含浸紐2および黄銅線4と配合ゴムGとを材料として、樹脂含浸紐2および黄銅線4に配合ゴムGを合わせる工程のみを実施例1と異なる製造方法で行なった。
【0025】すなわち、本比較例では、特開昭57−195936号公報に開示されているように、樹脂含浸紐2および黄銅線4に配合ゴムGを合わせる工程では、配合ゴムGが圧入される押出型内に樹脂含浸紐2等を通し、樹脂含浸紐2を全周に渡って配合ゴムGで覆う製造方法を取った。その結果、電線に絶縁被覆が形成されるように、断面がおおむね円形の樹脂含浸紐2の周囲にゴム被覆が形成されている摩擦材用素材が試作された。
【0026】そこで、実施例1の摩擦材の製造方法と同様にしてクラッチフェーシングを製造した。
(比較例2)本発明の実施例1に対する比較例2として、従来の技術の項で参照した特公平1−22855号公報および特公平3−2377号公報に開示されている製造法によって摩擦材用素材を製造した。すなわち、前述の実施例1となるべく同様の組成で、配合ゴムを薄いゴムシートにして数本が平行に並べられた樹脂含浸繊維基材を両側から挟み、一対のロールを通してゴムシートを樹脂含浸繊維基材に付着させ、摩擦材用素材を試作した。
【0027】しかる後、実施例1の摩擦材の製造方法と同様にしてクラッチフェーシングを製造した。
(評価試験方法)以上の実施例1と比較例1,2とを比較する目的で、それぞれの摩擦材用素材から製造された摩擦材であるクラッチフェーシングに対して、摩擦摩耗試験およびバースト強度試験を実施した。
【0028】摩擦摩耗試験は、各クラッチフェーシングをフルサイズダイナモ試験器に装着し、回転数1800rpm、慣性モーメント2.7kgm2 、係合回数4000回および雰囲気温度200℃の条件下で行われた。摩擦摩耗試験では、安定時の摩擦係数と最小摩擦係数と摩耗率とが測定された。一方、バースト強度試験では、雰囲気温度200℃でクラッチフェーシングを回転させ、徐々に回転数を上げていって遠心力でクラッチフェーシングが破壊した時の回転数をバースト強度として測定した。
【0029】(測定結果)前述の実施例1および比較例1,2の組成と試作時の評価と上記両試験の結果得られた各種性能とについて、次の表1にまとめて示す。
【0030】
【表1】


【0031】上記表1に示すように、本発明の実施例1により試作された摩擦材用素材を試作する際には、樹脂含浸紐2を形成しているガラスロービングの結び目が引っかかるなどの問題は一切発生せず、試作はスムースに行われた。一方、比較例1の摩擦材用素材を試作する際には、樹脂含浸紐を形成しているガラスロービングの結び目が押出型のニップルに引っかかって通過できず、製造ラインが停止するという不具合が発生した。そればかりではなく、樹脂含浸紐を形成しているガラスロービングが毛羽立って押出型のニップルを通過できず、やはり製造ラインが停止するという不具合も発生した。
【0032】また、比較例2の摩擦材用素材を試作する際には、ロール成形されるゴムシートを薄くするとゴムシートの破断が頻発してしまい、実施例1および比較例1と全く同じ組成では摩擦材用素材を試作することができなかった。それゆえ、実施例1等よりも樹脂含浸紐および黄銅線の含有率を減らして配合ゴムの含有率を高めざるを得ず、ゴムシートを厚くしてようやく試作することができた。それでもなお、ゴムシートの破断は発生し、試作時の問題点になった。
【0033】その結果、摩擦摩耗試験では、実施例1の試験成績は、安定時の摩擦係数では各比較例と同等であり、最小摩擦係数では比較例1と同等で比較例2よりもやや優れており、摩耗率では各比較例よりも優れていた。また、バースト強度試験では、実施例1の試験成績は、いずれの比較例よりも一割から一割半ほど優れており、バースト強度が向上していることが明らかにされた。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の摩擦材用素材の製造方法では、樹脂含浸紐に結び目があっても差し支えなく、樹脂含浸紐が毛羽立つことも防止されている。それゆえ、本発明の摩擦材用素材の製造方法によれば、製造時に不具合が生じて製造ラインが停止することが防止されており、生産ラインの稼働率が上がってコストダウンになるという効果がある。
【0035】また、本発明の摩擦材用素材の製造方法によって製造された摩擦材用素材からなるクラッチフェーシング等の摩擦材は、従来の技術によるものよりも、摩擦摩耗性能およびバースト強度が向上しているという効果がある。そればかりではなく、樹脂含浸紐2にゴム紐3が部分的に接合しているだけで十分であるので、摩擦材用素材中の配合ゴムの含有量を任意に設定することができ、最適な配合ゴムの含有率を設定することが可能になるという効果もある。その結果、摩擦材用素材の組成をかなり自由に設定することが可能になるので、試作試験を重ねることにより、さらに優れた性能の摩擦材用素材を提供することができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の摩擦材用素材の製造方法に使用する押出機の縦断面図
【図2】 実施例1の摩擦材用素材の構成を示す断面図
【図3】 実施例1の変形態様1の摩擦材用素材の構成を示す断面図
【符号の説明】
1,1’:摩擦材用素材
2:樹脂含浸紐(ガラスロービングにメラミン変性フェノール樹脂を含浸)
3,3’:ゴム紐(配合ゴムからなる) 4:黄銅線
E:押し出し機
G:未硬化の配合ゴム
D:配合ゴム押出型 N:ノズル孔 S:スクリュー
T:貫通孔 P:パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紐に配合ゴムを付着させて配合ゴム付着樹脂含浸紐からなる摩擦材用素材を製造する方法であって、一端側から他端側に貫通する貫通孔と該貫通孔の他端側の開口に近接したノズル孔とをもつ配合ゴム押出型を使用し、該貫通孔に該樹脂含浸紐を挿通しつつ該ノズル孔より該配合ゴムを連続的に押し出し該樹脂含浸紐に付着させることを特徴とする摩擦材用素材の製造方法。
【請求項2】 前記配合ゴム押出型は、互いに平行であって間隔を隔てた複数の前記貫通孔と、該貫通孔にそれぞれ近接した少なくとも一個の前記ノズル孔とを有する請求項1記載の摩擦材用素材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−38458(P2000−38458A)
【公開日】平成12年2月8日(2000.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−206390
【出願日】平成10年7月22日(1998.7.22)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】