説明

撥水撥油性フルオロアクリレート

フルオロアクリレートは、(a)式:(式中、n=1〜4であり、R=水素または炭素原子1〜4個のアルキル基であり、m=2〜8であり、Rf=Cn2n+1であり、y=0〜6であり、q=1〜8である)によって表される少なくとも1種類のフルオロケミカルアルコール;(b)少なくとも1種類の非分岐対称ジイソシアネート;および(c)アルキレン部分に炭素原子2〜約30個を有する、少なくとも1種類のヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートまたは2−フルオロアクリレートモノマー;の反応生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油性フルオロアクリレートモノマーおよびポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン結合を含む種々のフッ素化アクリル樹脂は、撥水撥油特性を有することが知られている(例えば、米国特許第4,321,404号明細書(Williamsら)、米国特許第4,778,915号明細書(Linaら)、米国特許第4,920,190号明細書(Linaら)、米国特許第5,144,056号明細書(Antonら)、および米国特許第5,446,118号明細書(Shenら)参照)。これらの樹脂を重合し、例えばテキスタイル、カーペット、壁紙等の基材にコーティングとして塗布して、撥水撥油性を付与することができる。
【0003】
一般に、長鎖は容易に、アクリル主鎖単位に結合する隣接ペンダント基に平行に整列し、そのため撥水撥油性を最大にすることから、これらの樹脂は、長鎖の過フッ素化ペンダント基(例えば、8個以上の炭素原子)を含む。しかしながら、例えばパーフルオロオクチル含有化合物などの長鎖過フッ素化基含有化合物は、生体内に蓄積する(例えば、米国特許第5,688,884号明細書(Bakerら)参照)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述のことに鑑みて、生体内蓄積性が低い重合性撥水撥油性アクリル樹脂が必要とされると考えられる。
【0005】
簡潔には、一態様において、本発明は、それより長鎖の過フッ素化基よりも毒性および生体内蓄積性が低いと考えられる、短鎖過フッ素化基(炭素原子5個以下)を有する撥水撥油性フルオロアクリレートを提供する(例えば、国際公開第01/30873号パンフレット参照)。本発明のフルオロアクリレートは、
(a)次式:
n2n+1−X−OH
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化1】

であり、
R=水素または炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8である)
によって表される少なくとも1種類のフルオロケミカルアルコール;
(b)少なくとも1種類の非分岐対称ジイソシアネート;
(c)アルキレン部分に炭素原子2〜約30個を有する、少なくとも1種類のヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートまたは2−フルオロアクリレートモノマー;
の反応生成物を含む。
【0006】
本明細書で使用される、「(メタ)アクリレートモノマー」という用語は、アクリレートモノマーとメタクリレートモノマーのどちらも意味する。
【0007】
本発明は、以下の一般式:
n2n+1−X−OC(O)NH−A−HNC(O)O−(Cp2p)(O)COC(R’)=CH2
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化2】

であり、
R=Hまたは炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8であり、
A=非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、またはアラルキレン基であり、
p=2〜30であり、
R’=H、CH3、またはFである)
によって表されるフルオロアクリレートも提供する。
【0008】
本発明のフルオロアクリレートは優れた撥水撥油特性を示すことが発見されている。従来技術に鑑みて、撥水撥油性の付与において、短い過フッ素化鎖から誘導されるフルオロアクリレートは、長い過フッ素化鎖から誘導されるフルオロアクリレートほど有効ではないと考えられるだろう(例えば、米国特許第2,803,615号明細書(Ahlbrechtら)および米国特許第3,787,351号明細書(Olson)参照)。しかしながら、驚くべきことに、本発明のフルオロアクリレートは、長い過フッ素化鎖を有するフルオロアクリレートに匹敵する撥水撥油性を示す。
【0009】
したがって、本発明のフルオロアクリレートは、生体内蓄積性が低い重合性撥水撥油性アクリル樹脂に対する当技術分野における要求を満たす。
【0010】
他の態様において、本発明は、本発明のフルオロアクリレートの製造に有用なフッ素化イソシアネートを提供する。フッ素化イソシアネートは、以下の一般式:
n2n+1−X−OC(O)NH−A−NCO
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化3】

であり、
R=Hまたは炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8であり、
A=非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、またはアラルキレン基である)
によって表される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
他の態様において、本発明は、本発明のフルオロアクリレートの反復単位を含むフッ素化アクリルポリマー、そのフッ素化アクリルポリマーを含むコーティング組成物および剥離コーティング組成物、およびそのコーティングまたは剥離コーティング組成物でコーティングされた物品も提供する。
【0012】
本発明のフルオロアクリレートにおいて有用なフルオロケミカルアルコールは、次式:
n2n+1−X−OH
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化4】

であり、
R=Hまたは炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8である)
によって表される。
【0013】
適切なアルコールの代表的な例としては、CF3CH2OH、(CF32CHOH、(CF32CFCH2OH、C25SO2NH(CH22OH、C25SO2NCH3(CH22OH、C25SO2NCH3(CH24OH、C25SO2NC25(CH26OH、C25(CH24OH、C25CONH(CH24OH、C37SO2NCH3(CH23OH、C3F7SO2NH(CH22OH、C37CH2OH、C37CONH(CH28OH、C49(CH22OH、C49SO2NCH3(CH22OH、C49CONH(CH22OH、C49SO2NCH3(CH24OH、C49SO2NH(CH27OH、C49SO2NC37(CH22OH、C49SO2NC49(CH22OH、C511SO2NCH3(CH22OH、C511CONH(CH22OH、およびC511(CH24OHが挙げられる。
【0014】
好ましくは、nは、1〜4であり;さらに好ましくは、nは4である。好ましくは、mは2〜4であり、好ましくは、qは2である。
【0015】
好ましくは、Xは、
【化5】

である。さらに好ましくは、Xは、
【化6】

である。最も好ましくは、Xは、
【化7】

からなる群から選択される。
【0016】
好ましいフルオロケミカルアルコールとしては、例えば、C49SO2NCH3(CH22OH、C49SO2NCH3(CH24OH、およびC49(CH22OHが挙げられる。さらに好ましいフルオロケミカルアルコールは、C49SO2NCH3(CH22OHである。
【0017】
対称ジイソシアネートは、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 1067(1997年)により定義される対称性の3つの要素を満たすジイソシアネートである。第一に、それらは、対称中心を有し、その周りに構成原子が規則配列で位置する。このような中心が分子に1つのみ存在し、それは原子であっても、なくてもよい。第二に、それらは、分子を鏡像セグメントに分ける対称面を有する。第三に、それらは、対称中心を通る線によって表される対称軸を有する。分子が回転する場合には、それは、完全な360度回転で2回以上、空間において同じ位置を有するだろう。
【0018】
本明細書で使用される、「非分岐」という用語は、対称ジイソシアネートが、1つまたは複数の炭素原子の従属的(subordinate)鎖を含有しないことを意味する。
【0019】
非分岐対称ジイソシアネートの代表的な例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート(PDI)、1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)、1,8−オクタンジイソシアネート(ODI)、1,12−ドデカンジイソシアネート、および1,4−キシレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。
【0020】
好ましい非分岐対称ジイソシアネートとしては、例えば、MDI、HDI、およびPDIが挙げられる。さらに好ましい非分岐対称ジイソシアネートはMDIである。その純粋状態では、MDIは、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)(ミシガン州ミッドランド(Midland,MI))からIsonate(登録商標)125として、およびバイエル・ポリマー社(Bayer Polymer)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA))からMondur(登録商標)として市販されている。
【0021】
本発明のフルオロアクリレートにおいて有用なヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートおよび2−フルオロアクリレートモノマーは、そのアルキレン部分に炭素原子2〜約30個(好ましくは、炭素原子2〜約12個)を有する。
【0022】
好ましくは、ヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシ末端アルキルアクリレートである。好ましいヒドロキシ末端アルキルアクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシデシルアクリレート、ヒドロキシドデシルアクリレート、およびその混合物が挙げられる。
【0023】
本発明のフルオロアクリレートは、例えば、最初にフルオロケミカルアルコールと非分岐対称ジイソシアネートを溶媒中で合わせ、次いでヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートを添加することによって製造することができる。有用な溶媒としては、エステル(例えば、酢酸エチル)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、メチル−t−ブチルエーテル)、および芳香族溶媒(例えば、トルエン)が挙げられる。
【0024】
反応混合物は攪拌することが好ましい。反応は一般に、室温〜約120℃(好ましくは、約50℃〜約70℃)の温度で行われる。
【0025】
一般に、反応は、触媒の存在下で行われる。有用な触媒としては、塩基(例えば、第3級アミン、アルコキシド、およびカルボキシレート)、金属塩およびキレート、有機金属化合物、酸およびウレタンが挙げられる。好ましくは、触媒は、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウラート(DBTDL)または第3級アミン(例えば、ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO))、またはその組み合わせである。さらに好ましくは、触媒はDBTDLである。
【0026】
式Cn2n+1SO2NCH3(CH2mOH(式中、n=2〜5であり、m=2〜4である)によって表されるフルオロケミカルアルコールをMDIと反応させる場合、2003年12月31日出願の「Process For Preparing Fluorochemical Monoisocyanates」というタイトルの米国特許出願第10/751142号明細書に記載のプロセスを使用することができる。
【0027】
本発明のフルオロアクリレートは、以下の一般式:
n2n+1−X−OC(O)NH−A−HNC(O)O−(Cp2p)(O)COC(R’)=CH2
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化8】

であり、
R=Hまたは炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8であり、
A=非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、またはアラルキレン基であり、
p=2〜30であり、
R’=H、CH3、またはFである)によって表される。
【0028】
好ましくは、nは1〜4であり;さらに好ましくは、nは4である。好ましくは、qは2である。
【0029】
好ましくは、Xは
【化9】

であり、mは2〜4である。
【0030】
好ましくは、Aは、−C612−、
【化10】

からなる群から選択され;さらに好ましくは、Aは
【化11】

である。
【0031】
好ましくは、pは、2〜12であり;さらに好ましくは、pは、2、4、6、10、および12からなる群から選択され;最も好ましくは、pは2である。
【0032】
好ましくは、R’はHである。
【0033】
本発明のフルオロアクリレートを重合して、フッ素化アクリルポリマーを得ることができる。本発明のフルオロアクリレートの反復単位を含むフッ素化アクリルポリマーは、撥水撥油特性を示す。
【0034】
本発明のフルオロアクリレートは、1つまたは複数の非官能性コモノマーおよび/または官能性コモノマーと共重合することもできる。
【0035】
例えばアルキルアクリレートなどの非官能性コモノマーは、耐久性および塗膜形成能を向上させることができる。有用な非官能性コモノマーの代表的な例としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、およびオクタデシルアクリレートが挙げられる。非官能性コモノマーは一般に、およそ1:1までのモル比で本発明のフルオロアクリレートと共重合することができる。
【0036】
官能性コモノマーは、例えば付着性、親水性、反応性、または低ガラス転移温度などの特性を付与することができる。官能性コモノマーにおいて有用な基としては、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、第4級アンモニウム、アセテート、ピロリジン、ポリエチレングリコール、スルホン酸、トリアルコキシシラン、およびシリコーンが挙げられる。これらの基は一般に、約20重量%未満(好ましくは、約5重量%未満)でポリマー中に導入することができる。有用な官能性コモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、N−ビニル2−ピロリジノン、およびヒドロキシプロピルアクリレートが挙げられる。
【0037】
本発明のフルオロアクリレートを、例えば、メタクリロキシプロピルポリジメチルシリコーンなどのメタクリレート官能性ポリジメチルシロキサンと重合して、フッ素化アクリル/シロキサングラフトコポリマーを製造することもできる。
【0038】
本発明のフッ素化アクリルポリマーをコーティング組成物において使用して、多種多様な基材に撥水撥油性を付与することができる。コーティング組成物は、本発明のフッ素化アクリルポリマーと溶媒(例えば、水および/または有機溶媒)を含む。溶媒が水である場合には、コーティング組成物は一般に、界面活性剤をさらに含む。
【0039】
本発明のフッ素化アクリルポリマーを、多種多様な溶媒中に溶解、懸濁、または分散して、基材上にコーティングするのに適したコーティング組成物を形成することができる。コーティング組成物は一般に、コーティング組成物の重量を基準にして、フッ素化アクリルポリマー約0.1〜約10%(好ましくは、約1〜約5%)を含む。
【0040】
コーティング組成物は、例えば繊維基材および硬質基材などの多種多様な基材に適用することができる。繊維基材としては、例えば、織布、メリヤス生地、および不織布、テキスタイル、カーペット、革、および紙が挙げられる。硬質基材としては、例えば、ガラス、セラミック、メーソンリー(masonry)、コンクリート、天然石、人工石、グラウト、金属、木材、プラスチック、および塗面が挙げられる。
【0041】
コーティング組成物は、例えば、吹付け、パディング、浸し塗り、ロール塗布、はけ塗り、または吐出塗布(exhaustion)などの標準法によって基材(または基材を含む物品)に適用することができる。任意に、組成物を乾燥させて、残存する水または溶媒を除去することができる。
【0042】
本発明のポリマーおよびコポリマーは、剥離コーティングに使用することができる。剥離コーティングにおいて有用なコモノマーとしては、例えば、オクタデシルアクリレート、N−ビニル2−ピロリジノン、メタクリロキシプロピルジメチルシロキサン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルおよびメチルアクリレートが挙げられる。剥離コーティング組成物は、基材上にコーティングした後に、硬化段階を必要とする場合もあるし、または必要としない場合もある。
【0043】
剥離コーティングに有用なコーティング組成物は、接着剤からの剥離特性を必要とする表面に適用することができる。剥離コーティングに適している基材としては、例えば、紙、金属シート、フォイル、不織布、およびポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂のフィルムが挙げられる。
【0044】
剥離コーティング組成物は、例えば線巻ロッド、直接グラビア、オフセットグラビア、リバースロール、エアナイフおよびトレーリングブレードコーティングなどの従来のコーティング技術によって適切な基材に適用することができる。得られた剥離コーティング組成物は、例えば、天然ゴムベースの接着剤、シリコーンベースの接着剤、アクリル接着剤、および他の合成塗膜形成エラストマー接着剤などの多様な圧感接着剤に有効な剥離を提供することができる。
【実施例】
【0045】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を過度に限定するものではない。
【0046】
【表1】

【表2】

【0047】
HOHA(6−ヒドロキシヘキシルアクリレート)の製造
1,6−ヘキサンジオール(1mol;シグマ・アルドリッチ社から市販されている)118g、AA(0.5mol;シグマ・アルドリッチ社から市販されている)36g、p−トルエンスルホン酸水和物(シグマ・アルドリッチ社から市販されている)1.0g、フェノチアジン0.016g、ヒドロキノンモノメチルエーテル(シグマ・アルドリッチ社から市販されている)0.055gおよびヘプタン300mlを改良型ディーンスターク(Dean−Stark)トラップを備えた1L三つ口丸底フラスコ中で還流で攪拌した。還流で5時間後、水8.4ml(0.47mol)が回収された。冷却すると、2つの層が形成した。上層は、ヘキサンジオールジアクリレートおよびヘプタンを含有した。TFAA(アルドリッチ社から市販の無水トリフルオロ酢酸)で誘導体化した後、)下層(141.2g)をガス液体クロマトグラフィー(GLC)によって分析し、未反応ジオール13.9%、目的のモノアクリレート11.0%、微量のジアクリレートであった。下層を酢酸エチル100mlに溶解し、水100mlで3回洗浄し、ストリッピングして、ジオール55.7g、15%、モノアクリレート(HOHA)84%およびジアクリレート1%となった。上記のように製造されたHOHA混合物(19g)に、酢酸エチル100mlを添加し、この溶液を水150mlで3回洗浄した。最後の洗浄によってエマルジョンが生成し、それを凍結し、解凍して、2つの相が形成された。有機相から、HOHA(赤色の液体50.1g;純度99%)が得られた。
【0048】
HOHMA(HO(CH26OC(O)C(CH3)=CH2)の製造
等モル量のMAAをAAの代わりに使用したことを除いては、本質的にHOHAについて記載の手順に従ってHOHMAを製造した。
【0049】
HODDA(12−ヒドロキシドデシルアクリレート)の製造
HOHAの製造と同様な方法で、ドデカン−1,12−ジオール203g(1.0mol)、36.0g(0.50mol)、AA1.0g、フェノチアジン0.018g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.034gおよびヘプタン350mlを還流で3.5時間加熱し、次いで冷却し、スラリーが形成された。濾過によって、固体147.0g(GLC分析によってジオール96%)が得られた。濾液をストリッピングし、ジオール2%、モノアクリレート80%、およびジアクリレート18%のオイル120gが得られた。280〜400メッシュシリカゲル(シグマ・アルドリッチ社から市販の)257g上でヘキサン−酢酸エチルから29.5gをフラッシュクロマトグラフィーにかけることによって、純粋なHODDA(17.1g)が得られた。
【0050】
49SO2NH(CH3)の製造
米国特許第6,664,354号明細書(Savuら)の実施例1、パートAに記載の手順に本質的に従って、C49SO2NH(CH3)を製造した。
【0051】
MeFBSE:C49SO2N(CH3)CH2CH2OHの製造
米国特許第No.6,664,354号明細書(Savuら)の実施例2、パートA手順に本質的に従って、MeFBSEを製造した。
【0052】
MeFESE:C25SO2N(CH3)CH2CH2OHの製造
出発原料としてC25SO2F(本質的に米国特許第5,723,630号明細書に記載のように製造された)を使用したことを除いては、米国特許第6,664,354号明細書(Savuら)の実施例2、パートAに記載の手順に本質的に従って、MeFESEを製造した。
【0053】
MeFBSEA:C49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2の製造
米国特許第6,664,354号明細書(Savuら)の実施例2、パートAおよびBに記載の手順に本質的に従って、MeFBSEAを製造した。
【0054】
MeFESEA:C25SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2の製造
25SO2N(CH3)(CH22OH16.0g(0.0623mol)、酢酸エチル33.8g、ジイソプロピルエチルアミン10.47g(0.0810mol)を装入した丸底フラスコを氷浴に入れ、7℃に冷却した。12分間にわたって反応に添加される塩化アクリロイル7.33g(0.0810mol)を含む反応は、窒素下にて均圧化(pressure equalizing)添加漏斗を備えた。200分で、酢酸エチル16.9gをさらに反応に添加し、それを30gの2%塩酸水溶液、5%重炭酸ナトリウム水溶液で逐次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、アスピレーター圧力(aspirator pressure)下にて回転蒸発器で55℃で濃縮し、粗生成物11.93gが得られた。直径7cmのクロマトグラフカラムをシリカゲル(番号SX1043U−3,62グレード,60〜200メッシュ,ドイツ,ダルムシュタットのEMサイエンス社(EM Science,Darmstadt,Germany)から市販)230gで充填し、ヘプタン:酢酸エチル(60:40(体積))でスラリー化し、カラムを使用して、生成物11.93gをクロマトグラフにかけ、濃縮後に目的の生成物7.06gを得た。
【0055】
817SO2NMeC24OC(O)CH=CH2(MeFOSEA)の製造
817SO2F(シグマ・アルドリッチ社から市販されている)をC49SO2Fの代わりに使用したことを除いては、本質的に米国特許第6,664,354号明細書(Savuら)の実施例1Aおよび実施例2Aおよび2Bに記載のように、MeFOSEAを製造した。
【0056】
49(CH22OC(O)CH=CH2の製造
25SO2N(CH3)(CH22OC(O)CH=CH2の製造と同様な方法で、C49(CH22OH(オレゴン州ポートランドのTCIアメリカ社(TCI America,Portland OR)から市販されている)11.02g(0.0417mol)およびジエチルエーテル22.94g中のジイソプロピルエチルアミン7.01g(0.0542mol)を塩化アクリロイル4.91g(0.0542mol)と2時間にわたって反応させ、30gの2%塩酸水溶液、5%重炭酸ナトリウム水溶液で逐次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、アスピレーター圧力で室温の浴中で回転蒸発器で濃縮し、粗生成物を得た。同じ比の出発原料を使用し、C49(CH22OH8.0gで出発して、同様な製法で製造されるC49(CH22OC(O)CH=CH2とこれを合わせ、粗生成物約25gを得た。混合されたこれらの生成物に、p−メトキシフェノール0.005g、フェノチアジン0.0013gを添加し、頭部温度67℃でアスピレーター圧力下にてこの材料を蒸留し、目的の生成物8.88gを得た。
【0057】
EOSH:(CH3(OCH2CH2nOC(O)CH2SH)の製造
500mL三つ口丸底フラスコに、CH3(OCH2CH2nOH(MW=550;47.20mmol;シグマ・アルドリッチ社から市販されている)25.96g、HSCH2CO2H(47.28mmol;シグマ・アルドリッチ社から市販されている)4.35g、CF3SO3H触媒2滴、およびトルエン120mLを装入した。機械攪拌機を使用して、窒素下にて115〜120℃で8時間、混合物を加熱して還流した。共沸蒸留によって水を除去した。フーリエ変換型赤外分光分析法(FTIR)分析から、EOSHの形成が示された。回転蒸発器を使用して溶媒を除去した(27.60g)。
【0058】
49SO2N(CH3)C24OC(O)NHC64CH264NCO(MeFBSE−MDI)の製造
加熱器、窒素入口、還流冷却器および熱電対を備えた1L三つ口丸底フラスコに、MeFBSE(357.0g;1.0モル)およびMEK(600mL)を装入し、加熱して還流し、MEK30mLを蒸留除去した。次いで、混合物を30℃に冷却し、MDI(750g;3.0モル)で処理した。次いで、混合物の温度を約4時間、約40℃に上げ、混合物を濾過し、トルエン(4L)に添加した。得られたオフホワイトの沈殿物を濾過によって回収し、トルエンから再結晶化した(白色の固体;689.4g;収率57%)。液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)およびLC/UV分析を用いて、構造を確認した。
【0059】
49SO2N(CH3)C24OC(O)NHC64CH264NHCOOCH2CH2OC(O)CH=CH2(MeFBSE−MDI−HEA)の製造
酢酸エチル500mLを含む1Lフラスコを加熱して、N2下にて還流し、酢酸エチル100mLを蒸留除去した。残りの溶媒を乾燥空気下で冷却し、MeFBSE−MDI151.9g、2−ヒドロキシエチルアクリレート29.1g、DBTDL2滴、フェノチアジン7mgで処理した。50℃で5時間後、赤外分光法によって、イソシアネートの完全な転化が示された。濁った溶液を珪藻土40gを通して濾過し、熱い酢酸エチルですすぎ、透明な溶液473.5g(固形分29.6%,MeFBSE−MDI−HEAとして生成,77%)を得た。
【0060】
25SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)NHC64CH264NCO(MeFESE−MDI)の製造
50℃でDBTDL2滴がそれに添加された、炭素多孔質フリットに通して50℃で濾過されたヘプタン75g中のMDI37.5g(0.15mol)を含むフラスコに、58分間にわたってC25SO2N(CH3)CH2CH2OH25.7g(0.10mol)を一滴ずつ添加した。3.5時間の時点で、得られた固体を濾過し、ヘプタン120gですすぎ、窒素下にて真空乾燥し、固形分71%の白色粉末69.43gを得た。残りはヘプタンであった(収量49.29g,97.2%)。
【0061】
25SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)NHC64CH264NHCOOCH2CH2OC(O)CH=CH2(MeFESE−MDI−HEA)の製造
オーバーヘッドスターラーを備えた250mL丸底フラスコに、MeFESE−MDI(固形分71%,0.056mol)40g、酢酸エチル100g、ジブチルスズジラウレート2滴を装入し、加熱浴において窒素下にて50℃に加熱した。次いで、ヒドロキシエチルアクリレート6.50g(0.056mol)を一部添加し、続いてp−メトキシフェノール6.3mgを添加した。浴温度を60℃に調節し、反応を14時間行った。反応を2日間にわたって室温に冷却し、2281cm-1でイソシアネートが存在しないことがFTIRによって示された。フェノチアジン(2mg)を反応混合物に添加し、次いでそれをアスピレーター圧力で55℃の浴において濃縮し、白色の固体35.3gを得た。
【0062】
生成物を酢酸エチル10gに溶解し、50:50(体積)のヘプタン:酢酸エチルでスラリー化されたシリカゲル(#SX1043U−3,62グレード,60〜200メッシュ,ドイツ,ダルムシュタットのEMサイエンス社(EM Science,Darmstadt,Germany)から市販されている)230gで充填された直径7cmのクロマトグラフカラム上でクロマトグラフにかけ、生成物20.13gを得た。
【0063】
49(CH22OC(O)NHC64CH264NCO(C49(CH22OH−MDI)の製造
ヘプタン30g中のMDI17.7g(0.071モル)をC49(CH22OH12.5g(0.047モル)と反応させたことを除いては、MeFESE−MDIの製造法と同様な方法でC49(CH22OH−MDIを製造した。
【0064】
49(CH22OC(O)NHC64CH264NHCOOCH2CH2OC(O)CH=CH2(C49(CH22OH−MDI−HEA)の製造
DBTDLと共に酢酸エチル40gに溶解させたヒドロキシエチルアクリレート2.71g(0.023モル)とC49(CH22OH−MDI12.0g(0.023モル)を反応させ、続いてワークアップおよびクロマトグラフィーを行って生成物5.8gを得たことを除いては、MeFESE−MDI−HEAの製造法と同様な方法でC49(CH22OH−MDI−HEAを製造した。
【0065】
CF3CH2OC(O)NHC64CH264NCOOCH2CH2OC(O)CH=CH2(CF3CH2OH−MDI−HEA)の製造
CF3CH2OH(アルドリッチ(Aldrich)社から市販されている)33.0gと、MDI125gと、DBTDL2滴と、ヘプタン400gとの混合物を50℃で20時間攪拌し、まだ熱い間に濾過し、回収した固体をトルエンから再結晶化させて、CF3CH2OH−MDI付加物100gを得た。付加物7.0g、HEA2.32g、DBTDL1滴、無水THF30mLの溶液をN2下にて約60℃で20時間加熱した。得られた白色のスラリーにアセトン(40mL)を添加し、少量の不溶性物質を濾過し、その溶液をストリッピングして、白色の固体7.6gを得た。シリカゲル(280〜400メッシュ,アルドリッチ社)200g上で80/20(v/v)ヘキサン/酢酸エチル(v/v)を使用してフラッシュクロマトグラフィーを行い、純粋なモノマー4.1gを得た。
【0066】
ポリ−MeFBSE−MDI−HEAの製造
125mlボトルに、MeFBSE−MDI−HEA6.0g、「バゾ(VAZO)67」70mg、酢酸エチル24gを装入した。窒素で35秒間パージした後、ボトルを回転水浴中に60℃にて15時間維持した。得られたスラリーをメタノール約50mlで処理し、濾過し、固体を酢酸エチル43g中に分散した。加熱すると、固体は溶解し、冷却すると、いくらかの固体が沈殿した。DMF6.0gを添加することによって、完全な溶液が得られた。
【0067】
表1および2に記載の実施例および比較例の一般手順
各実施例および比較例では、125mlボトルに、表に記載のフルオロアクリレート(本質的に、MeFBSE−MDI−HEAについて上述のように製造される)3.0〜6.0g、「バゾ(VAZO)67」15〜40mg、およびモノマー濃度25〜30重量%を得るのに十分な酢酸エチルを装入した。適切な量のコモノマーを添加し、表2に記載の重量%に達した。窒素で35〜60秒間パージした後、ボトルを回転水浴中に60℃にて24〜48時間維持した。冷却すると、生成物はしばしば沈殿した。一部の場合には、得られたポリマー溶液をメタノール300〜400mL中に注いだ。続いて、沈殿したポリマーを酢酸エチルに分散させ、ポリマーの20〜30重量%溶液を得た。加熱すると、固体は溶解し、冷却すると、通常いくらかの固体が沈殿した。少量のDMFを添加することによって、完全な溶液が得られた。
【0068】
動的接触角の測定
フィルムの浸漬塗布用ストリップによって、ナイロン66フィルム(デュポン社(DuPont)から市販されている)に試験用溶液、エマルジョンまたは懸濁液(一般に、固形分約3%で)を適用した。コーティング前に、フィルムをメチルアルコールで洗浄した。ナイロンフィルムの一方の端を保持するために小さなバインダークリップを使用して、ストリップを処理溶液に浸漬し、次いで、溶液からゆっくり、かつ滑らかに取り除いた。コーティングされたストリップを保護位置において最低で30分間空気乾燥させ、ついで150℃で10分間硬化させた。
【0069】
DCA322モデルのCAHN動的接触角分析器(CAHN Dynamic Contact Angle Analyzer)(ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI)のATI社から市販されている、制御およびデータ処理用コンピューターを備えたウィルヘルミーバランス装置)を使用して、コーティングされたフィルム上の前進接触角および後退接触角を測定した。水およびヘキサデカンをプローブ液として使用した。水およびヘキサデカン両方の値を報告する。接触角の値が大きいほど、撥性が優れていることを示している。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【表5】

【0072】
実施例38:MeFBSE−MDI−HEA/ODA/AA;70/26/4の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、酢酸エチル中の37%MeFBSE−MDI−HEA溶液9.46g(固体3.50g;4.84mmol)、ODA(4.005mmol)1.30g、AA(2.78mmol)0.2g、酢酸エチル28.55g、および「バゾ(VAZO)−67」0.050gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを70℃の油浴に入れ、24時間攪拌した。
【0073】
実施例39:比70/26/4のMeFBSE−MDI−HEA/ODA/A−174の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、酢酸エチル中の37%MeFBSE−MDI−HEA溶液9.46g(固体3.50g;4.84mmol)、ODA(4.005mmol)1.30g、A−174(0.805mmol)0.2g、酢酸エチル26.84g、および「バゾ(VAZO)−67」0.050gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを70℃の油浴に入れ、24時間攪拌した。
【0074】
【表6】

【0075】
実施例40:MeFBSE−MDI−HEA/EOSH;3.0/1.0の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、MeFBSE−MDI−HEA5.00g(6.920mmol)、EOSH0.52g(2.308mmol)、酢酸エチル26.92g、および「バゾ(VAZO)−67」0.064gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを電磁攪拌しながら70℃の油浴に24時間入れておいた。得られた溶液は室温で沈殿を示した。DMF5.0gを添加することによって透明な溶液が得られた。
【0076】
実施例41:MeFBSE−MDI−HEA/EOSH;6.0/1.0の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、MeFBSE−MDI−HEA5.01g(6.934mmol)、EOSH0.72g(1.154mmol)、酢酸エチル26.96g、および「バゾ(VAZO)−67」0.055gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを電磁攪拌しながら70℃の油浴に24時間入れておいた。得られた溶液は室温で沈殿を示した。DMF5.0gを添加することによって透明な溶液が得られた。
【0077】
実施例42:MeFBSE−MDI−HEA/EOSH;8.3/1の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、MeFBSE−MDI−HEA5.01g(6.925mmol)、EOSH0.52g(0.833mmol)、酢酸エチル26.60g、および「バゾ(VAZO)−67」0.054gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを電磁攪拌しながら70℃の油浴に24時間入れておいた。得られた溶液は室温で沈殿を示した。DMF5.0gを添加することによって透明な溶液が得られた。
【0078】
実施例43:H(MeFBSE−MDI−HEA)4−SC1225の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、MeFBSE−MDI−HEA4.99g(6.9078mmol)、DDSH0.35g(1.729mmol)、酢酸エチル11.94g、および「バゾ(VAZO)−67」0.055gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを電磁攪拌しながら70℃の油浴に24時間入れ、重合させた。得られた溶液は沈殿した白色の固体を有した。DMF5gを添加することによって透明な溶液が得られた。
【0079】
実施例44:H(MeFBSE−MDI−HEA)8−SC1225の製造
電磁スターラーを有する125mLボトルに、MeFBSE−MDI−HEA5.02g(6.940mmol)、DDSH0.17g(0.840mmol)、酢酸エチル12.0g、および「バゾ(VAZO)−67」0.050gを装入した。溶液を窒素で2分間泡立たせた。密閉ボトルを電磁攪拌しながら70℃の油浴に24時間入れ、重合させた。得られた溶液は沈殿した白色の固体を有した。DMF5gを添加することによって溶液は透明に変化した(固形分22.2%)。
【0080】
【表7】

【0081】
実施例45:MeFBSE−MDI−HEA/メタクリロキシプロピルポリジメチルシリコーン、80/20グラフトコポリマーの製造
MeFBSE−MDI−HEA2.0g、メタクリロキシプロピルポリジメチルシリコーン(東京の信越化学工業株式会社(Shin Etsu Chemical Co,Tokyo)から市販されている)0.5g、酢酸エチル14.4g、および「バゾ(VAZO)67」26mgを125mLボトルに装入した。得られた混合物を窒素で2分間パージし、ボトルを密閉し、回転水浴中に70℃で24時間維持した。その結果得られた濁った溶液にDMF5.0gを添加した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析から、転化率90.4%が示され、Mn=13,200;Mw=28,800およびMw/Mn=2.2であった。
【0082】
実施例46:MeFBSE−MDI−HEA/メタクリロキシプロピルポリジメチルシリコーン、60/40グラフトコポリマーの製造
MeFBSE−MDI−HEA1.51g、メタクリロキシプロピルポリジメチルシリコーン(東京の信越化学工業株式会社から市販されている)1.01g、酢酸エチル14.4g、および「バゾ(VAZO)67」22mgを125mLボトルに装入した。得られた混合物を窒素で2分間パージし、ボトルを密閉し、回転水浴中に70℃で24時間維持した。その結果得られた濁った溶液にDMF5.0gを添加した。SEC分析から、転化率85.4%が示され、Mn=14,400;Mw=36,300およびMw/Mn=2.5であった。
【0083】
【表8】

【0084】
実施例47:剥離コーティング
実施例27のコポリマーをトルエンで固形分5%に希釈した。次いで、No.6線巻(マイヤー(Mayer))ロッドを使用して、1.6ミルの下塗されたポリエステルテレフタレートフィルム上にその溶液をコーティングした。コーティングされたフィルムをファイバーボードフレームに取り付け、65℃で15分間乾燥させた。
【0085】
剥離コーティングを評価するために使用された試験方法は、圧感接着剤被覆材料を評価するのに使用される業界標準引きはがし粘着力試験の改良法である。その標準試験は、米国材料試験協会(ASTM)、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,Pa.)およびPressure Sensitive Tape Council(PSTC)、イリノイ州グレンビュー(Glenview,Ill)において詳細に記述されている。改良標準法は、以下に詳細に記述される。標準試験法の参照元は、ASTM D3330−78 PSTC−1(11/75)である。
【0086】
2.04kgゴムローラーを使用して、スコッチ(登録商標)パフォーマンスマスキングテープ(Scotch Performance Masking Tape)233+(ミネソタ州セントポールの3M社から市販されている(3M Company,St.Paul,MN))の2.54cm×15.24cmストリップを、コーティングされたポリエステルフィルム上に圧延した。次いで、積層された試料を22℃および相対湿度50%で1週間または65℃で16時間エージングさせた。試験前に、熱エージングした試料を24時間、22℃および相対湿度50%に平衡化した。
【0087】
二重コートテープを使用して、マスキングテープ/コートフィルムラミネートをInstrumentors社のスリップ剥離試験機(Slip/peel tester)(3M90モデル)の台に載せることによって、剥離試験を行った。次いで、180度および228.6cm/分でマスキングテープを除去するのに必要な力を測定した。新たに剥がされたマスキングテープを清潔なガラスプレートに接着し、上記と同じInstrumentorsスリップ剥離試験機を使用して通常の方法で引きはがし粘着力を測定し、228.6cm/分および剥離角180度で再び剥離することによって、テープの再接着性もまた測定した。これらの剥離試験の結果を表6に示す。
【0088】
比較例13(C13):MeFOSEA/MMA/St/AA(60/16/15/9)を含む剥離コーティング
マントルヒーター、凝縮器、N2入口および撹拌器を備えた2L反応フラスコに、MeFOSEA(C817SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2)120gを装入した。フラスコを70℃に加熱して、MeFOSEAを溶融した。次いで、メチルメタクリレート32g、スチレン30g、アクリル酸18g、Rhodacal DS−10界面活性剤6.0g、ゾニル(Zonyl)(登録商標)FSP(デュポン社)界面活性剤5.71g、および脱イオン水600gのプレミックスをフラスコに装入した。得られた乳白色溶液をN2で1リットル/分にて5分間パージし、50℃に加熱し、続いて、開始剤、水10gに溶解されたK228(過硫酸カリウム)0.3gを添加した。反応混合物を50℃で1時間加熱した。温度を75℃に上げ、反応をさらに5時間行った。得られたエマルジョンを室温に冷却した。固形分%は26%であると測定され、転化率99.5%が得られた。剥離コーティングは、実施例45に記載のように製造し、試験した。その結果を以下の表6に示す。
【0089】
【表9】

【0090】
実施例48
スコッチマジックテープ(登録商標)(SCOTCH MAGIC TAPE)810(3M社から市販されている)をスコッチパフォーマンスマスキングテープ(Scotch Performance MaskingTape)233+の代わりに使用したことを除いては、実施例47に記載の方法に従って、実施例45のコポリマーをコーティングし、試験した。その結果を以下の表7に示す。
【0091】
【表10】

【0092】
実施例49
米国特許第6,569,521号明細書(実施例31参照)に記載のように製造され、コーティングされたシリコーンポリ尿素圧感接着剤を使用して、上述の方法に従って、実施例47の剥離コーティングを製造し、試験した。剥離コーティングからの剥離力およびその後のガラスに対する再接着力を測定した。22℃(相対湿度50%)で7日間、50℃で7日間、70℃で3日間の3通りのエージング条件を評価した。この結果を以下の表8に示す。
【0093】
【表11】

【0094】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、種々の修正および変更を本発明に加えることができることは、当業者には明らかであるだろう。本発明は、本明細書に記載の例証となる実施形態および実施例によって過度に限定されるものではなく、かかる実施例および実施形態は、本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される本発明の範囲でのみ、一例として挙げられていることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次式:
n2n+1−X−OH
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化1】

であり、
R=水素または炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8である)
によって表される少なくとも1種類のフルオロケミカルアルコール;
(b)少なくとも1種類の非分岐対称ジイソシアネート;
(c)アルキレン部分に炭素原子2〜約30個を有する、少なくとも1種類のヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートまたは2−フルオロアクリレートモノマー;
の反応生成物を含む、フルオロアクリレート。
【請求項2】
前記Xは、
【化2】

である、請求項1に記載のフルオロアクリレート。
【請求項3】
前記Rがメチル基である、請求項2に記載のフルオロアクリレート。
【請求項4】
前記mが2〜4である、請求項3に記載のフルオロアクリレート。
【請求項5】
前記nが1〜4である、請求項1に記載のフルオロアクリレート。
【請求項6】
nが4である、請求項5に記載のフルオロアクリレート。
【請求項7】
前記フルオロケミカルアルコールが、C49SO2NCH3(CH22OH、C49SO2NCH3(CH24OH、およびC49(CH22OHからなる群から選択される、請求項6に記載のフルオロアクリレート。
【請求項8】
前記フルオロケミカルアルコールがC49SO2NCH3(CH22OHである、請求項7に記載のフルオロアクリレート。
【請求項9】
前記非分岐対称ジイソシアネートが、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および1,4−フェニレンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載のフルオロアクリレート。
【請求項10】
前記非分岐対称ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項9に記載のフルオロアクリレート。
【請求項11】
前記ヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートまたは2−フルオロアクリレートモノマーが、そのアルキレン部分に炭素原子約2〜約12個を有する、請求項1に記載のフルオロアクリレート。
【請求項12】
前記ヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレートまたは2−フルオロアクリレートモノマーが、ヒドロキシ末端アクリレートモノマーである、請求項1に記載のフルオロアクリレート。
【請求項13】
前記ヒドロキシ末端アルキルアクリレートモノマーが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシデシルアクリレート、およびヒドロキシドデシルアクリレートからなる群から選択される、請求項12に記載のフルオロアクリレート。
【請求項14】
(a)C49SO2NCH3(CH22OHと、
(b)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと、
(c)ヒドロキシブチルアクリレートまたはヒドロキシエチルアクリレートと、の反応生成物を含むフルオロアクリレート。
【請求項15】
以下の一般式:
n2n+1−X−OC(O)NH−A−HNC(O)O−(Cp2p)(O)COC(R’)=CH2
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化3】

であり、
R=Hまたは炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8であり、
A=非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、またはアラルキレン基であり、
p=2〜30であり、
R’=H、CH3、またはFである)
によって表されるフルオロアクリレート。
【請求項16】
前記nが1〜4である、請求項15に記載のフルオロアクリレート。
【請求項17】
nが4である、請求項16に記載のフルオロアクリレート。
【請求項18】
前記Xが、
【化4】

である、請求項15に記載のフルオロアクリレート。
【請求項19】
前記RがCH3である、請求項18に記載のフルオロアクリレート。
【請求項20】
前記mが2〜4である、請求項19に記載のフルオロアクリレート。
【請求項21】
前記Aが、
−C612−、
【化5】

からなる群から選択される、請求項15に記載のフルオロアクリレート。
【請求項22】
前記Aが、
【化6】

である、請求項21に記載のフルオロアクリレート。
【請求項23】
前記pが2〜12である、請求項15に記載のフルオロアクリレート。
【請求項24】
前記pが、2、4、6、10、および12からなる群から選択される、請求項23に記載のフルオロアクリレート。
【請求項25】
前記pが2である、請求項24に記載のフルオロアクリレート。
【請求項26】
前記R’がHである、請求項15に記載のフルオロアクリレート。
【請求項27】
以下の一般式:
n2n+1−X−OC(O)NH−A−NCO
(式中、
n=1〜5であり、
X=
【化7】

であり、
R=Hまたは炭素原子1〜4個のアルキル基であり、
m=2〜8であり、
f=Cn2n+1であり、
y=0〜6であり、
q=1〜8であり、
A=非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、またはアラルキレン基である)
によって表される、フッ素化イソシアネート。
【請求項28】
請求項1に記載のフルオロアクリレートの反復単位を含む、フッ素化アクリルポリマー。
【請求項29】
1種または複数種の非官能性コモノマーから誘導される反復単位をさらに含む、請求項28に記載のフッ素化アクリルポリマー。
【請求項30】
1種または複数種の官能性コモノマーから誘導される反復単位をさらに含む、請求項28に記載のフッ素化アクリルポリマー。
【請求項31】
溶媒と、請求項28に記載のフッ素化アクリルポリマーと、を含むコーティング組成物。
【請求項32】
請求項15に記載のフルオロアクリレートの反復単位を含む、フッ素化アクリルポリマー。
【請求項33】
1種または複数種の非官能性コモノマーから誘導される反復単位をさらに含む、請求項32に記載のフッ素化アクリルポリマー。
【請求項34】
1種または複数種の官能性コモノマーから誘導される反復単位をさらに含む、請求項32に記載のフッ素化アクリルポリマー。
【請求項35】
溶媒と、請求項32に記載のフッ素化アクリルポリマーと、を含むコーティング組成物。
【請求項36】
請求項31に記載のコーティング組成物でコーティングされた1つまたは複数の表面を有する基材を含む物品。
【請求項37】
前記基材が、硬質基材または繊維基材である、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
請求項35に記載のコーティング組成物でコーティングされた1つまたは複数の表面を有する基材を含む物品。
【請求項39】
前記基材が、硬質基材または繊維基材である、請求項38に記載の物品。
【請求項40】
溶媒と、請求項28に記載のフッ素化アクリルポリマーと、を含む剥離コーティング組成物。
【請求項41】
溶媒と、請求項32に記載のフッ素化アクリルポリマーと、を含む剥離コーティング組成物。
【請求項42】
請求項40に記載の剥離コーティング組成物でコーティングされた1つまたは複数の表面を有する基材を含む物品。
【請求項43】
請求項41に記載の剥離コーティング組成物でコーティングされた1つまたは複数の表面を有する基材を含む物品。

【公表番号】特表2007−523971(P2007−523971A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547542(P2006−547542)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/043844
【国際公開番号】WO2005/066224
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】