説明

撥水撥油性組成物及び該組成物を含む紙処理剤

【解決手段】 (A1)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン100質量部
【化1】


[式中、Rは互いに同一又は異なっても良い炭素数1〜20の一価炭化水素基、Xは以下の式で示される基である。
【化2】


(a1、b1、d1、はオルガノポリシロキサンの25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数でる。)](C)セルロース系樹脂50〜1,000質量部(D)カルボン酸あるいは及びその塩10〜400質量部(F)水100〜100,000質量部(G)界面活性剤0.1〜100質量部を含む組成物であることを特徴とする撥水撥油組成物。
【効果】 上記本発明の組成物は、パーフルオロアルキル基を有する化合物と比べて、人体に無害であるばかりか緩やかな生分解生を有し環境に対しても害が無いだけでなく、該化合物に劣らない特性を紙に付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種紙基材に対し撥水性及び撥油性を付与できるシリコーン組成物及び該組成物を含む紙処理剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
食品用の包装紙や包装容器、クッキングペーパなどに用いられる紙材料は、食品の油分や水分が浸透して周囲を汚さないように、また食品が粘着あるいは接着して取り出す際に変形や破損することのないように、撥水性、撥油性及び非粘着性が付与されている。
【0003】
撥水性、撥油性及び非粘着性を付与するために、従来からパーフルオロアルキル基を有する各種の化合物が好適に利用されている。その一つとして、パーフルオロアルキル基を有する重合性単量体の重合体を利用する方法が知られている。多くは水に分散された形態で、抄紙する際にこれらの処理剤を添加する内添法に、または、抄紙した紙を処理液に浸漬させる外添法に、広く用いられてきた。
【0004】
該方法に関し、例えば、特開平10−7738号公報(特許文献1)には溶解性の改良、特開2000−169735号公報(特許文献2)には処理法による撥油性低下の防止、特開2001−98033号公報(特許文献3)には二次加工性の改良、特開2002−220539号公報(特許文献4)は密着性の改良について、提案されている。
【0005】
他の方法として、パーフルオロアルキル基を有するリン酸エステルのアミン塩を用いる方法が知られており、上述の重合体を利用するものと同様に広く用いられてきた。例えば、特開昭64−6196号公報(特許文献5)、特開昭56−138197号公報(特許文献6)には分散安定性の改善、特開2000−87013号公報(特許文献7)や特開2000−144120号公報(特許文献8)には貯蔵安定性の改良の提案がなされている。
【0006】
しかし、フルオロ脂肪族炭化水素は、オゾン層の破壊物質または地球温暖化物質とされ、その使用が規制されている。そのため、フルオロ脂肪族炭化水素と類似の構造を有するフッ素化合物においても、近い将来に環境問題に関連して何らかの規制がなされる可能性は否めない。また、食品用途においては、電子レンジ等による調理の際に僅かではあるがフッ素を含有した有害性物質が生成する可能性が指摘されている。同様の問題は廃棄処分のための焼却に関しても指摘されており、フッ酸などのフッ素を含有する有害性物質を環境に排出する可能性が問題視されている。
【0007】
これらの状況から、パーフルオロアルキル基を有する化合物を利用することなく、紙材料に撥水撥油性や非粘着性を付与する方法が求められている。パーフルオロアルキル基を代替する1つとして、ポリビニルアルコール(以下PVAと略す)系樹脂がある。該樹脂は古くから目止めなどに紙基材処理に利用されており、その高い親水性は、紙に撥油性を与える効果を有する。しかし、その親水性ゆえに紙に撥水性及び非粘着性を与えることが困難である。
【0008】
一方、シリコーンは撥水性及び非粘着性を付与する加工に利用されている。従って、シリコーンとPVA樹脂とを併用することが考えられるが、前者は疎水性の、後者は親水性であり、この両者を単に混合しても均一に混ざり合うことはなく、安定した組成物とすることが困難である。
【0009】
本発明者らは上記事情に鑑み、先にひとつの解決手段として、エマルジョン型シリコーン系剥離剤とPVA系樹脂とから成り、所望により、加水分解性基含有シラン及びその部分加水分解縮合物をさらに配合してなる組成物を提案している(特願2004−15217号)。
【0010】
【特許文献1】特開平10−7738号公報
【特許文献2】特開2000−169735号公報
【特許文献3】特開2001−98033号公報
【特許文献4】特開2002−220539号公報
【特許文献5】特開昭64−6196号公報
【特許文献6】特開昭56−138197号公報
【特許文献7】特開2000−87013号公報
【特許文献8】特開2000−144120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明においては優れた撥水撥油性能を有しながら、より安全で環境負荷の小さい組成物を提供することを目的とする。また、該組成物を含む処理剤を用いて、クラフト紙、上質紙、ダンボールなどの紙基材に撥油性と撥水性を付与することを目的とする。
【0012】
本発明に使用される紙基材としては一般に市販されている、クラフト紙、上質紙、ライナー、ダンボールなどが使用可能で、例えば、マニラ麻、こうぞ、みつまたなどの天然繊維、テトロン、ビニロン、アクリルなどの合成繊維を主原料としたものが利用できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意努力を行った結果、所定の官能基を含有しないオルガノポリシロキサンと、セルロース系樹脂と、カルボン酸とを所定の割合で混合することによって、安定な組成物を得ることができ、該組成物によって紙を処理することによって、紙に撥水性、撥油性及び非粘着性を付与することができることを見出した。
【0014】
すなわち、(A1)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン
100質量部
【0015】
【化1】


[式中、Rは互いに同一又は異なっても良い炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一部はSiに直結した水素原子でもよい。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を他の基で置換されていてもよい。Xは以下の式で示される基である。
【0016】
【化2】


(a1、b1、d1、はオルガノポリシロキサン(A1)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b1、d1は0であってもよい。)]
(C)セルロース系樹脂 50〜1,000質量部
(D)カルボン酸あるいは及びその塩 10〜400質量部
(F)水 100〜100,000質量部
(G)界面活性剤 0.1〜100質量部
を含むことを特徴とする撥水撥油組成物である。
【0017】
また、所定の官能基含有オルガノポリシロキサンと、セルロース系樹脂と、カルボン酸とを所定の割合で配合し、必要に応じて架橋剤、触媒をさらに配合して、紙処理工程において反応させることによって、さらに強固な撥水性、撥油性及び非粘着性を付与することができることを見出した。
【0018】
すなわち、(A2)下記平均組成式(2)で示される、1分子中に少なくとも2個の水酸基を持つオルガノポリシロキサン 100質量部
【0019】
【化3】


[式中、Rは互いに同一又は異なっても良い炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一部はSiに直結した水素原子であってよい。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を他の基で置換されていてもよい。Rは水酸基を示し、Xは以下の式で示される基である。
【0020】
【化4】


(a2、b2、c2、d2はオルガノポリシロキサン(A2)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b2、c2、d2は0であってもよい。)]
(B1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン
0〜30質量部
(B2)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン
0〜30質量部
(C)セルロース系樹脂 50〜1,000質量部
(D)カルボン酸あるいは及びその塩 10〜400質量部
(E1)縮合触媒 有効成分として0〜5質量部
(F)水 100〜100,000質量部
(G)界面活性剤 0.1〜100質量部
を含むことを特徴とする撥水撥油組成物。
【0021】
(A3)下記平均組成式(3)で示される、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つオルガノポリシロキサン 100質量部
【0022】
【化5】


[式中、上述の平均組成式(2)のRと同様であり、Rはアルケニル基であり、Xは以下の式で示される基である。
【0023】
【化6】


(a3、b3、c3、d3、e3はオルガノポリシロキサン(A3)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b3、c3、d3、e3は0であってもよく、α及びβは、0〜3の整数である。)]、
(B1)1分子中にSiH基を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部
(C)セルロース系樹脂 50〜1,000質量部
(D)カルボン酸あるいは及びその塩 10〜400質量部
(E2)付加触媒 有効成分として0〜5質量部
(F)水 100〜100,000質量部
(G)界面活性剤 0.1〜100質量部
を含むことを特徴とする撥水撥油組成物。
【発明の効果】
【0024】
上記本発明の組成物は、パーフルオロアルキル基を有する化合物と比べて、人体に無害であるばかりか緩やかな生分解生を有し環境に対しても害が無いだけでなく、該化合物に劣らない特性を紙に付与することができる。また、本発明の組成物は有機溶剤を含有しないため、溶剤使用による環境問題や危険性も無い。さらに本発明の組成物で処理された紙基材は、リサイクルが容易で、環境負荷の小さい製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
(A1)オルガノポリシロキサン
本発明の第1の組成物は、(A1)成分として下記平均組成式(1)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンを含む。
【0026】
【化7】

【0027】
ここで、式中、Rは互いに同一又は異なっても良い炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一部はSiに直結した水素原子であってもよい。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を他の基で置換されていてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子で置換した、3,3,3−トリフロロプロピル基などが例示される。特に好ましくは、オルガノポリシロキサン(A1)に含まれるRの少なくとも80%がメチル基である。また、Rの水素原子の一部がハロゲン原子で置換されている場合には、Rは好ましくは炭素数1〜5である。
【0028】
式(1)において、Xは以下の式で示される基である。
【0029】
【化8】

【0030】
は上述したとおりである。a1、b1、d1はオルガノポリシロキサン(A1)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・s、好ましくは0.1〜8000Pa・s、となるような数であり、b1、d1は0であってもよい。粘度が0.1Pa・s未満では、紙に十分な非粘着性を与え難く、1000Pa・sを超えると組成物中においてセルロース系樹脂(C)成分との分散性が低下する。好ましくは28≦a1+b1×(d1+1)≦5,000を満足する値である。
【0031】
上記本発明の第1の組成物は、硬化反応を必要としないタイプであるので、簡易な工程で、短時間のうちに、紙に撥水性及び撥油製を付与することが所望される場合に好適に使用される。
【0032】
(A2)水酸基含有オルガノポリシロキサン
本発明の第2の組成物は、(A2)成分として、下記平均組成式(2)で示される構造を有し、1分子当たり少なくとも2個の水酸基を持つオルガノポリシロキサンである。
【0033】
【化9】


式中、Rは前出のRと同じである。Rは水酸基を示し、Xは以下の式で示される基である。
【0034】
【化10】


式中、Rは前出のRと同じである。a2、b2、c2、d2はオルガノポリシロキサン(A2)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・s、好ましくは0.1〜8000Pa・s、となるような数であり、b2、c2、d2は0であってもよい。好ましくは28≦a2+b2×(d2+1)+c2≦5,000を満足する値である。
【0035】
オルガノポリシロキサン(A2)の水酸基は、他の(A2)成分やセルロース系樹脂(C)と縮合反応による架橋結合を形成することが目的であるが、後述する架橋剤(B2)を介して結合させることでより架橋結合の形成を確実なものにすることもできる。オルガノポリシロキサン(A2)は、1分子当たり少なくとも2個の水酸基を有することが必要である。2個未満では本組成物で処理された紙の撥水性が経時で低下する傾向が大きくなるため望ましくない。好ましくは、式(2)において、1分子が持つ水酸基の数b2+c2+2が2〜150の範囲になるように選ばれ、オルガノポリシロキサン100gあたりの水酸基の含有量としては、0.0001モルから0.1モルである。前記下限値未満では、本組成物で処理された紙の撥水性が経時で低下し、前記上限値を越えると、組成物のポットライフが短くなる傾向がある。
【0036】
オルガノポリシロキサン(A2)の水酸基は、本発明の水系組成物中において水酸基と同じな役目を果たせると考えられる基、アルコキシ基やアシルオキシ基などの加水分解性基に置きかえられていてもよいし、Siに直結した水素原子も架橋結合を形成する能力があることから、、に組成物の保存安定性を損なわない範囲で含有されてもよい。
【0037】
オルガノポリシロキサン(A2)と縮合反応する架橋剤成分は必須成分ではないが、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン(B1)、もしくは1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン(B2)が使用できる。架橋成分(B1)もしくは(B2)を配合するのであれば、好ましくは、SiHまたは加水分解性基のモル数が、オルガノポリシロキサン(A2)に含まれる水酸基のモル数の5〜200倍に相当する量で用いられ、典型的には、オルガノポリシロキサン(A2)100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲で使用される。前記上限値を超える量で配合しても相応する効果の増加は見られずコストパフォーマンスが低下するだけでなく、かえって組成物の経時変化をもたらし得る。
【0038】
(A3)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
本発明の第3の組成物では、平均組成式(3)で示される構造を有し、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つオルガノポリシロキサン(A3)が使用される。
【0039】
【化11】


式中、Rは式(1)におけるRと同じであり、その少なくとも80%がメチル基であることが好ましい。Rは炭素原子数2〜20のアルケニル基を示し、具体的にはビニル基、アリル基、ヘキセニル基などが例示される。特に好ましくはビニル基である。Xは以下の式で示される基である。
【0040】
【化12】


式中、Rは式(1)におけるRと同じであり、a3、b3、c3、d3、e3はオルガノポリシロキサン(A3)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・s、好ましくは0.1〜8000Pa・s、となるような数であり、但しb3、c3、d3、e3は0であってもよい。α及びβは、0〜3の整数である。好ましくは、28≦a3+b3×(d3+e3+1)+c3≦5,000を満足する値である。
【0041】
オルガノポリシロキサン(A3)のアルケニル基は、後述する架橋剤(B3)と反応して、硬化する。オルガノポリシロキサン(A3)は1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有することが必要である。2個未満では、本組成物で処理された紙の撥水性が経時で低下する傾向が大きくなるため望ましくない。
【0042】
望ましくは、式(3)において、1分子が持つアルケニル基の数b3×(e3+α)+c3+2×αが2〜150の範囲になるように選ばれ、オルガノポリシロキサン(A3)100gあたり、アルケニル基の含有量が0.001モルから0.1モルとなる。前記下限値未満では本組成物で処理された紙の撥水性が経時で低下し、前記上限値を越えると処理された紙の非粘着性が低下する。
【0043】
(B1)SiH基を有するオルガノポリシロキサン
SiH基を有するオルガノポリシロキサン(B1)は、組成式RSiO(4−f−g)/2(式中、Rは上述の平均組成式(2)のRと同様の意味を示し、fは0≦f≦3の数、gは0<g≦3の数であり、f+gは1≦f+g≦3を満たす。)で示される。SiH基を有するオルガノポリシロキサン(B1)の構造は、1分子中にSiH基を少なくとも3個有することが必要である他は特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のいずれであってもよい。また、その粘度は、数mPa・s〜数万mPa・sの範囲であって良い。
【0044】
SiH基を有するオルガノポリシロキサン(B1)の例として下記のものを挙げることができる。
【0045】
【化13】

【0046】
【化14】


但し、上記構造式及び組成式において、YとZは以下の構造式で示される基であり、かつ、hからwは次に示される範囲の数である。h、l、nは3〜500、m、p、sは1〜500、i、j、k、o、q、r、t、u、v、及びwは0〜500である。
【0047】
【化15】

【0048】
架橋剤(B1)に含有されるSiH基のモル数が、上記したオルガノポリシロキサン(A3)に含まれるアルケニル基のモル数の1〜5倍に相当するような量で用いられ、一般的には、オルガノポリシロキサン(A3)100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部の範囲である。SiH基の量が前記下限値未満では、アルケニル基とSiH基の付加反応による橋架け結合が十分ではなく、本組成物で処理された紙の撥水性及び非粘着性が不足する一方、前記上限値を超えて配合しても効果の相応の増加は見られずコストパフォーマンスが低下するだけでなく、かえって組成物の経時変化が起こり得る。
【0049】
(B2)加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン
加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン(B2)は、組成式RSiO(4−f−g)/2(式中、Rは上述の平均組成式(2)のRと同様であり、Wは加水分解性基を示し、fは0≦f≦3の数、gは0<g≦3の数であり、f+gは1≦f+g≦3を満たす。)で示される。オルガノポリシロキサン(B2)の構造は、1分子中に加水分解性基を少なくとも3個有することが必要である他は特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のいずれであってもよい。粘度も数mPa・s〜数万mPa・sの範囲であって良い。
【0050】
加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、イソプロペノキシ基などのアルコキシ基、アセトキシ基などのアシルオキシ基、エチルアミノ基などのアミノ基、アミド基、エチルメチルブタノキシム基などのオキシム基が挙げられる。
【0051】
ポリオルガノシロキサン(B2)の例として下記のものを挙げることができる。
【0052】
【化16】


ここでWはCHCOO−、CH(C)C=NO−、(CN−、
CHCO(C)N−、CH=C(CH)−O−などの加水分解性基を示し、x、y、zは0〜500の範囲の整数である。
【0053】
(C)セルロース系樹脂
本発明で使用されるセルロース系樹脂(C)としては、市販のセルロース系樹脂を利用することができるが、好ましくは、以下に述べるセルロース系樹脂が使用される。
【0054】
天然のセルロースから工業的に多種のセルロース系樹脂が製造販売されているが、本発明に用いられる代表的なものは、セルロースの水酸基を化学修飾したものである。一般的にはセルロースの水酸基をエーテル化剤と反応させることにより置換したセルロースエーテル類やエステル化したセルロースエステル類が良く知られている。セルロースエーテルの製造方法の例としては、セルロースを苛性ソーダでアルカリセルロース化した後、エーテル化剤を反応させて精製乾燥工程を経るものなどがあり、エーテル化剤としては塩化メチル、エチルクロライド、酸化プロピレン、酸化エチレン、モノクロル酢酸などが用いられている。こうして得られたセルロースエーテルが好ましく使用されるが、これらのセルロースエーテル類は食品添加物、医薬品、化粧品原料として認可されているものが多く、人体に対して無害であるばかりか、緩やかな生分解性を有しており環境にも極めて優しい材料として知られている。
【0055】
これらセルロースエーテルの特性は、主として重合度と置換度で規定される。好ましい重合度は、2%水溶液の20℃での粘度として3〜100mPa・s、より好ましくは4〜50mPa・sとなるような値である。用いるセルロースエーテルは、一種類又は複数種類からなる混合樹脂であってよい。2%水溶液の20℃での粘度が前記下限値未満では造膜性が不足してしまい、前記上限値を超えると組成物の塗工性が悪くなってしまう。
【0056】
セルロースエーテルの置換度とは、セルロースのグルコース環単位当り、エーテル化剤により置換された水酸基の個数である。この置換度は0.5〜2.5の範囲のものを用いるが前記下限値未満では、水に対する溶解性が低く組成物を製造する作業性が悪くなり、前記上限値を超えると十分な撥油性を付与できない場合がある。
【0057】
本発明で使用するのに特に好適なセルロースエーテルの置換度は0.6〜2.3である。置換度がこの範囲内にある方が、紙基材の品質や処理条件による撥油性へ悪影響を得け難くなる。
【0058】
また、セルロースエーテルは、5モル%以下の水酸基が、炭素数1〜20の炭化水素基、例えばアルキル基、アリール基、及びそれらの水素原子がケイ素含有基で置換されたものであってよい。
【0059】
かかるセルロースエーテルとしては、一般に市販されているものを使用することができる。具体的には、METHOCEL、ETHOCEL(Dow Chemical社製商品名)、NATROSOL(Hercules社製商品名)、HECダイセル、CMCダイセル(ダイセル化学工業社製商品名)、フジケミHEC(住友精化製商品名)、セロゲン(第一工業製薬社製商品名)、メトローズ(信越化学工業社製商品名)などが挙げられる。
【0060】
該セルロースエーテルには、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を加えてもよい。例えば、シランカップリング剤をセルロースエーテルに対して0.5〜10質量%添加することによって、紙基材との密着性の向上が期待できる。適当なシランカップリング剤としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
(C)成分の配合量は(A)成分のオルガノポリシロキサンの100質量部に対し50〜1,000質量部、好ましくは60〜900質量部である。前記下限値未満では、本発明の組成物で処理された紙の撥油性が低下し、前記上限値を超えると、該紙の撥水性が不足する場合がある。
【0062】
(D)カルボン酸あるいは及びその塩
(D)成分のカルボン酸あるいは及びその塩は、発明の組成物で処理された紙の撥油性を向上させる目的で使用される。(D)成分のない組成物でも撥油性を得ることは可能だが、(D)成分を配合された組成物で処理された紙では、油分が処理面から裏面にまで通り抜け難くなり、より長時間の油分との接触に対しても高い撥油性を示す。
【0063】
カルボン酸あるいは及びその塩は(C)成分のセルロース系樹脂とともに、形成された撥水撥油皮膜に撥油性を付与するように働いているが、その親水性を更に高めることで撥油性を向上させるものと考えられる。この観点から、水溶性のカルボン酸やその塩を用いることで効果が得られ易く、更には室温で結晶性の固体である方が接触する油分へ分散や溶解してしまう傾向が小さく、高い撥油性を維持できることから好ましく利用される。
【0064】
かかる(D)成分の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシルカルボン酸、アセト酢酸などのケト酸、及びこれらのナトリウムやカリウムの塩などが挙げられる。また、酸無水物、エステルなどの誘導体としても利用できる。この中でもシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシルカルボン酸が分散性の点で好ましい。
【0065】
(D)成分の配合量は(A)成分のオルガノポリシロキサンの100質量部に対し10〜400質量部、好ましくは30〜300質量部である。前記下限値未満では、本発明の組成物で処理された紙の撥油性が低下し、前記上限値を超えると、該紙の撥水性が不足する場合がある。
【0066】
(E1)縮合触媒
(A2)と架橋剤成分(B1)及び又は(B2)とは、無触媒でも反応させることができるが、加熱温度が制限される等、硬化反応条件が厳しい場合には触媒成分を使用する。好ましい触媒成分としては、縮合触媒(E1)として、塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、マレイン酸、トリフロロ酢酸などの酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムエトキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ類、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、炭酸ナトリウムなどの塩類、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、セリウム、チタン等の金属の有機酸塩、アルコキシド、キレート化合物などの有機金属化合物が挙げられる。例えば、亜鉛ジオクテート、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0067】
上記触媒は有効量、即ち(A2)と(B1)及び又は(B2)とを反応させることができる最小量以上の量、使用すればよい。該有効量は、(A2)と(B1)及び又は(B2)との反応条件及び所望の硬化速度等に応じて適宜変わり得るが、典型的には(A2)成分と(B1)及び又は(B2)成分の合計質量に対して、触媒の活性成分として0.1〜5質量%である。
【0068】
(E2)付加触媒
(A3)と(B1)との反応に使用される付加触媒(E2)としては、例えば、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸−オレフィンコンプレックス、塩化白金酸−アルコール配位化合物、ロジウム、ロジウム−オレフィンコンプレックス等が挙げられる。該触媒(E2)の量は、有効量であってよい。典型的には(A3)成分と(B1)成分の合計質量部に対し、白金の量又はロジウムの量として0〜5質量部、好ましくは5〜1000ppm(質量比)である。
【0069】
(F)水
本発明の組成物において、(F)水は、(C)セルロース系樹脂の溶媒として、及びオルガノポリシロキサン(A)など疎水性成分の分散媒として使用される。(F)水は、水道水程度の不純物は含んでいてもよいが、強酸、強アルカリ、多量のアルコール、塩類などは、疎水性成分の分散性を低下させるため好ましくない。
【0070】
(F)水の量は、本発明の組成物が、実際に使用する塗工装置に適した粘度と、目標とする紙材料への塗工量を満たすように調整されるもので、特に限定されるものではない。一般的には、固形分濃度1〜20%となるように調整され、(A)成分の100質量部に対する量としては、100〜100,000質量部、好ましくは200から90,000質量部である。前記下限値未満では、疎水性成分、即ち、(A)オルガノポリシロキサン、(B)架橋剤の分散が難しくなり、前記上限値を超えると分散状態の経時変化が起り得る。
【0071】
(G)界面活性剤
本発明の組成物では、上記(C)成分のセルロース系樹脂は、界面活性剤の働きもするが、組成物の安定性をより高めるために、(G)成分として界面活性剤が使用される。該界面活性剤としては、ノニオン系、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のアルキルエーテル型のもの、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型のものが挙げられる。
また、アニオン型界面活性剤やカチオン型界面活性剤としては、具体的にはラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどアルキルベンゼンスルホン酸塩、セチルトリメチルアンモニウムクロライドなどアルキルアンモニウム塩が挙げられる。これらの中でも、ノニオン系やアニオン系の界面活性剤が好ましく、具体的には、アルキルエーテル型のもの、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などが好ましい。
【0072】
これらの界面活性剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ノニオン系界面活性剤の単独あるいは組合わせで安定な組成物を得るには、HLBが10〜15であることが望ましい。疎水性成分の分散性の点からは、アニオン系やカチオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用することも効果的である。
【0073】
(G)界面活性剤の配合量は、良好な分散状態とその持続性が十分得られる最少の量となることが望ましい。典型的には、(G)界面活性剤の使用量は、(A1)〜(A3)成分のオルガノシロキサンの100質量部に対し0.1〜100質量部、好ましくは0.2〜10質量部である。前記下限値未満では乳化を促進する効果が得られず、前記上限値を超えると、(A3)成分と(B1)成分の付加反応を阻害する場合がある。
【0074】
その他の添加剤
本発明の組成物は、上記各成分に加えて、公知の成分を、本発明の目的を損なわない量、成分の種類にもよるが組成物の5質量%以下で、配合することができる。例えば白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン誘導体、オキシム化合物、有機ハロゲン化物などの触媒活性抑制剤、非粘着性を制御する目的でシリコーンレジン、シリカ、又はケイ素原子に結合した水素原子やアルケニル基を有さないオルガノポリシロキサン、レベリング剤、水溶性高分子、例えばポリビニルアルコール、デンプン誘導体、などの増粘剤、造膜性を高める目的でスチレン・無水マレイン酸共重合体等などの公知の改良剤を必要に応じて添加することができる。
【0075】
また、上記オルガノポリシロキサン(A2)及び(A3)は、上記オルガノポリシロキサン(A1)と併用することができる。また、上記オルガノポリシロキサン(A2)及び(A3)は、それぞれ、有機系樹脂、例えば、セルロース系樹脂、PVA樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂など極性基や親水性の構造を有する樹脂で変性されていてもよい。斯かる変性によりセルロース系樹脂(C)との相互作用がより強くなって、組成物中でのオルガノポリシロキサンの分散性が向上する。またオルガノポリシロキサンが、セルロース系樹脂(C)により形成される皮膜内により強固に保持されて、本組成物で処理された紙の撥水性や非粘着性の経時低下を防止する。変性に用いる上記樹脂の量は、樹脂の種類や構造により適宜調整されるものであるが、一般的には、オルガノポリシロキサン(A2)または(A3)の質量に対して5質量%以下である。
【0076】
エマルジョン組成物の調整方法
本発明の組成物の調製は、(F)水に、(E)触媒を除く各成分を所定量加えて、公知の方法を用いて均一に分散して調整することができる。(E)触媒は、組成物を紙に塗工する直前に有効量を配合して、組成物中に均一に分散させる。より好ましくは、(E)触媒は添加に先立ち水分散可能なものとするのが好ましく、例えば、(G)界面活性剤と予め混合しておく方法や、下記のエマルジョンにしておく方法などが有効である。
【0077】
(A)オルガノポリシロキサンと(B)架橋剤は、予め水性シリコーン系エマルジョンにしてから、他の成分と混合してもよい。該エマルジョンの製造は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば(A)オルガノポリシロキサン、(F)水成分の一部、(B)架橋剤をプラネタリーミキサー、コンビミキサーなどの高剪断可能な撹拌装置を用いて混合し、転相法によりエマルジョン化した後、(F)水成分の残分を加えて希釈調整する方法が挙げられる。
【0078】
エマルジョン化する際の水(F)成分の量は、(A)成分の100質量部に対して100〜400質量部が好ましい。100質量部未満では、(A)成分の分散が難しくなり、400質量部を超えると分散状態の経時変化が大きくなる。
【0079】
得られたシリコーン系エマルジョンを、(C)セルロース系樹脂の100質量部に対し、20〜300質量部、好ましくはエマルジョン中のシリコーン成分として5〜100質量部の範囲になるように配合し、後述する塗工方法や塗工量に合わせて粘度及び濃度を調整するため(F)水を適宜加えて、公知の方法を用いて均一に分散して処理剤組成物とする。
【0080】
本発明の組成物を紙基材上に塗工する方法は、塗工液の粘度、塗工速度等を考慮した通常行われている塗工方法、カレンダー塗工、グラビアコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ワイヤーバーなどの各種コーターを用いた塗工、スプレー塗工等を利用することができる。該組成物の塗工量は固形分として0.1g/m以上、好ましくは0.5〜5g/mの範囲である。前記下限値未満では良好な撥油性を維持することが難しく、前記上限値を越えても性能向上は小さくコスト上不利である。
【0081】
塗工後、乾燥機を通過させて加熱乾燥させ、撥水撥油紙を得る。加熱乾燥の条件は、例えば140℃以上の温度で10秒以上の条件が一般的である。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び参考例により本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0083】
A.予備調製
調製例1
2%水溶液の20℃での粘度20mPa・s、メトキシル基による置換度2のセルロースエーテル(c1、「メトローズSM−25」信越化学工業(株)社製商品名)100質量部と、水900質量部を混合し、均一な溶液になるまで撹拌して10%水溶液を調整した。
【0084】
調製例2
2%水溶液の20℃での粘度4mPa・s、メトキシル基による置換度2のセルロースエーテル(c2、「メトローズSM−4」信越化学工業(株)社製商品名)100質量部と、水900質量部を混合し、均一な溶液になるまで撹拌して10%水溶液を調整した。
【0085】
調製例3
2%水溶液の20℃での粘度80mPa・s、メトキシル基による置換度2のセルロースエーテル(c3、「メトローズSM−100」信越化学工業(株)社製商品名)100質量部と、水900質量部を混合し、均一な溶液になるまで撹拌して10%水溶液を調整した。
【0086】
調製例4
容器内全体を撹拌できる錨型撹拌装置と、周縁に小さな歯型突起が上下に交互に設けられている回転可能な円板とを有する5リットルの複合乳化装置に、以下の式で示されるポリオルガノシロキサン(a1)(25℃での粘度が100Pa・s)100質量部
【0087】
【化17】

【0088】
界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルのHLBが13.6のもの1質量部を仕込み、均一に撹拌混合した。この混合物に水60質量部を加えてエマルジョン化させ、引続き30分間撹拌した。追加の水839質量部を加えて希釈して撹拌し、固形分10%のO/W型エマルジョンを得た。
【0089】
調製例5
調製例4で使用したのと同様の複合乳化装置に、以下の式で示されるポリオルガノシロキサン(a2)(25℃での粘度が10Pa・s、シラノール基含有量=0.005モル/100g)を100質量部、
【0090】
【化18】

【0091】
以下の式で示されるメチルハイドロジエンポリシロキサン(b2)(粘度が25mPa・s、H含有量=1.5モル/100g)を2質量部、
【0092】
【化19】

【0093】
界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルのHLBが13.6のもの1質量部を仕込み、均一に撹拌混合した。この混合物に水60質量部を添加してエマルジョン化させ、引続き30分間撹拌した。追加の水837質量部を加えて希釈して撹拌し、固形分10%のO/W型エマルジョンを得た。
【0094】
調製例6
調製例4で使用したのと同様の複合乳化装置に、以下の式で示されるポリオルガノシロキサン(a3)(25℃での粘度が0.4Pa・s、ビニル基含有量は0.03モル/100g)100質量部
【0095】
【化20】

【0096】
以下の式で示されるメチルハイドロジエンポリシロキサン(b3)を6質量部(粘度が25mPa・s、H含有量=1.5モル/100g)
【0097】
【化21】

【0098】
界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルのHLBが13.6のもの1質量部、触媒活性抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール0.4質量部を仕込み、均一に撹拌混合した。この混合物に水60質量部を添加しエマルジョン化させ、引続き30分間撹拌した。追加の水833質量部を加えて希釈して撹拌し、固形分10%のO/W型エマルジョンを得た。
【0099】
調製例7
調製例4で使用したのと同様の複合乳化装置に、以下の式で示されるポリオルガノシロキサン(a4)(25℃での粘度が100Pa・s)100質量部
【0100】
【化22】

【0101】
界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルのHLBが13.6のもの1質量部を仕込み、均一に撹拌混合した。この混合物に水60質量部を加えてエマルジョン化させ、引続き30分間撹拌した。追加の水839質量部を加えて希釈して撹拌し、固形分10%のO/W型エマルジョンを得た。
【0102】
B.組成物の調製
実施例1
ミキサー内で、調製例4のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液200質量部、クエン酸5質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0103】
実施例2
調製例4のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液1000質量部、クエン酸20質量部、コハク酸20質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0104】
実施例3
調製例4のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液200質量部、クエン酸5質量部、コハク酸5質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0105】
実施例4
調製例4のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液50質量部、クエン酸0.5質量部、コハク酸0.5質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0106】
実施例5
調製例6のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例2のセルロースエーテル水溶液200質量部、コハク酸10質量部、CAT−PM−10A1質量部(シリコーン分に対する白金質量100ppm)を良く混合して組成物を調製した。
【0107】
実施例6
調製例6のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例3のセルロースエーテル水溶液200質量部、コハク酸10質量部、CAT−PM−10A1質量部(シリコーン分に対する白金質量100ppm)良く混合して組成物を調製した。
【0108】
実施例7
調製例7のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液200質量部、酒石酸10質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0109】
実施例8
調製例5のシリコーンエマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液200質量部、シュウ酸5質量部、シュウ酸ナトリウム5質量部(CNa)を良く混合して組成物を調製した。
【0110】
比較例1
調製例4のシリコーンエマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液200質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0111】
比較例2
調製例4のシリコーンエマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液200質量部、コハク酸60質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0112】
比較例3
調製例4のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液1200質量部、クエン酸20質量部、コハク酸20質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0113】
比較例4
調製例4のシリコーン系エマルジョン100質量部、調製例1のセルロースエーテル水溶液30質量部、クエン酸0.5質量部、コハク酸0.5質量部を良く混合して組成物を調製した。
【0114】
C.撥水撥油紙の作成
調製例で調製した処理剤組成物を坪量50g/mの市販クラフト紙に、固形分としての塗工量が2g/mになるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥機で140℃×30秒の条件で加熱して撥水撥油紙を作成した。
【0115】
D.評価方法
分散状態
室温で1週間放置した後の外観を目視で観察し、分離が見られず良好なものを○、僅かに分離傾向が見られるものを△、分離しているものを×とした。
【0116】
撥油性A
3Mキットテスト(TAPPI−RC−338)により測定した。3Mキットテスト法は、ヒマシ油、トルエン、ヘプタンが配合された試験油を紙の表面におき、60秒後に試験油が浸透するか否かを測定する試験である。浸透しなかった最大の試験油のキット番号が大きいほど撥油性に優れることを示す。該最大のキット番号が13以上を◎、12以上を○、キット番号が8〜11を△、キット番号が7以下を×として示した。
【0117】
撥油性B
3Mキットテスト(TAPPI−RC−338)を応用して測定した。上述の3Mキットテスト法のキット番号9試験油を紙の表面におき、試験油が浸透して裏面に染み出すまでの時間を測定。時間が長いほど撥油性の持続力に優れることを示す。12時間以上を○、1時間以上を△、1時間未満を×として示した。
【0118】
撥水性
紙表面の水に対する接触角で測定した。接触角が大きいほど撥水性が良好であることを示す。接触角が100°を超えるものを○、100°未満90°以上のものを△、90°未満のものを×として示した。
【0119】
E.評価結果
以下の表1に結果をまとめた。
【0120】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン 100質量部
【化1】


[式中、Rは互いに同一又は異なっても良い炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一部はSiに直結した水素原子でもよい。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を他の基で置換されていてもよい。Xは以下の式で示される基である。
【化2】


(a1、b1、d1、はオルガノポリシロキサン(A1)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b1、d1は0であってもよい。)]
(C)セルロース系樹脂 50〜1,000質量部
(D)カルボン酸あるいは及びその塩 10〜400質量部
(F)水 100〜100,000質量部
(G)界面活性剤 0.1〜100質量部
を含むことを特徴とする撥水撥油組成物。
【請求項2】
(A2)下記平均組成式(2)で示される、1分子中に少なくとも2個の水酸基を持つオルガノポリシロキサン 100質量部
【化3】


[式中、Rは互いに同一又は異なっても良い炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一部はSiに直結した水素原子であってよい。炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を他の基で置換されていてもよい。Rは水酸基を示し、Xは以下の式で示される基である。
【化4】


(a2、b2、c2、d2はオルガノポリシロキサン(A2)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b2、c2、d2は0であってもよい。)]
(B1)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン
0〜30質量部
(B2)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン
0〜30質量部
(C)セルロース系樹脂 50〜1,000質量部
(D)カルボン酸あるいは及びその塩 10〜400質量部
(E1)縮合触媒 有効成分として0〜5質量部
(F)水 100〜100,000質量部
(G)界面活性剤 0.1〜100質量部
を含むことを特徴とする撥水撥油組成物。
【請求項3】
(A3)下記平均組成式(3)で示される、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つオルガノポリシロキサン 100質量部
【化5】


[式中、Rは上述の平均組成式(2)のRと同様であり、Rはアルケニル基であり、Xは以下の式で示される基である。
【化6】


(a3、b3、c3、d3、e3はオルガノポリシロキサン(A3)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b3、c3、d3、e3は0であってもよく、α及びβは、0〜3の整数である。)]
(B1)1分子中にSiH基を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部
(C)セルロース系樹脂 50〜1,000質量部
(D)カルボン酸あるいは及びその塩 10〜400質量部
(E2)付加触媒 有効成分として0〜5質量部
(F)水 100〜100,000質量部
(G)界面活性剤 0.1〜100質量部
を含むことを特徴とする撥水撥油組成物。
【請求項4】
オルガノポリシロキサンとして、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン(A1)をさらに含むことを特徴とする請求項2乃至3のいずれか1項に記載の撥水撥油組成物。
【化7】


[式中、Rは上述の平均組成式(2)のRと同様であり、Xは以下の式で示される基である。
【化8】


(a1、b1、d1、はオルガノポリシロキサン(A1)の25℃での粘度が0.05〜10000Pa・sとなるような数であり、b1、d1は0であってもよい。)]
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の撥水撥油組成物により処理された撥水性及び撥油性の紙又はシート。

【公開番号】特開2006−257159(P2006−257159A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73346(P2005−73346)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】