説明

撥液性樹脂組成物

【課題】製膜条件によらず、安定して優れた撥液性を示す撥液性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定のエポキシエステル化合物と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを、反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)とを含む撥液性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撥液性、感度、現像性に優れたアルカリ可溶型の撥液性樹脂組成物に関するものである。さらに本発明は、該樹脂組成物を含む、ネガ型またはポジ型の感放射線性樹脂組成物であって、カラーフィルタ、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などにおける保護膜や層間絶縁膜を調製するために有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ等のITO電極形成用のためのレジスト材料や層間絶縁膜、回路保護膜、液晶ディスプレイのカラーフィルタ製造用着色顔料分散レジスト、有機ELディスプレイ用隔壁材等の永久膜形成材料として、感放射線性樹脂組成物が幅広く使用されている。
この中で、近年、液晶ディスプレイはテレビ用途等で需要が高まっており、その製造工程において、感放射線性樹脂組成物が多用されている。液晶カラーフィルタの製造においては、その需要の高まりからコストダウンの要求が強く、低コストで製造が可能なインクジェット法が提案されている。インクジェット法によるカラーフィルタの製造は、あらかじめフォトリソグラフィー法等により、画素を規定する区画(隔壁)を形成後、その画素部分に、赤、緑、青からなるインクをそれぞれインクジェットで塗布することにより画素を形成する方法であり、従来の顔料分散レジストを使用した製造方法に比べ、工程が簡便で、インクの無駄が少ないことが特徴と言われている。
このインクジェット法において、画素部分にインク滴を滴下する時、基板及び隔壁側面は、インクとの密着性が必要であり、親インク性が要求されるが、隔壁を超えて隣の画素にインク滴が溢れる事態を防いだり、隣り合う画素領域間でのインクの混色を防ぐため、隔壁表面に撥液性を持たせる事が要求されている。
【0003】
特許文献1には、撥液性を有する感放射線性樹脂組成物として、ヘキサフルオロプロピレン、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物と、これらの成分と共重合可能な不飽和化合物との含フッ素共重合体、放射線の照射を受けて酸を発生する酸発生化合物、架橋性化合物、上記含フッ素共重合体以外の含フッ素有機化合物、並びに有機溶媒からなる、カラーフィルタ隔壁形成用感放射線性樹脂組成物が開示されており、上記含フッ素有機化合物としてパーフルオロアルキル基と、親水性基又は親油性基含有オリゴマーが例示されている。
【0004】
さらに、特許文献2には、酸性基および分子内に3個以上のエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶の感放射線性樹脂と、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(ただし、上記アルキル基はエーテル酸素を有するものを含む。)を有する重合単位、およびエチレン性二重結合を有する重合単位を有する重合体からなる撥インク剤と、光重合開始剤とを含有することを特徴とするネガ型感放射線性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基を有し、フッ素原子含有率が7〜35質量%である含フッ素樹脂及び波長100〜600nmの光に反応する感放射線性成分を含むレジスト組成物であって、組成物の全固形分に対する含フッ素樹脂の割合が0.1〜30質量%であることを特徴とするレジスト組成物が開示されている。
【0006】
これらの含フッ素化合物を含む樹脂組成物においては、含フッ素化合物が撥液性を付与し、この含フッ素化合物が表面移行性を有しているので、製膜の際に含フッ素化合物が塗膜表面近傍に移行し、塗膜表面に撥液性が付与される。しかし、これらの樹脂組成物においては、撥液剤が塗膜表面に移行するのに時間がかかるため、製膜条件により塗膜表面の撥液性にばらつきが出るという問題がある。そこで、製膜条件によらず、安定的に高水準の撥液性を得ることができる樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−281815号公報(請求項1)
【特許文献2】国際公開第2004/042474号パンフレット(請求項1)
【特許文献3】特開2005−315984号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、製膜条件によらず、安定して優れた撥液性を示す撥液性樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、該撥液性樹脂組成物を含む、感放射線性樹脂組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、このような感放射線性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)として、下記一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物:
【0010】
【化1】

【0011】
(ここでD1〜4は各々独立して、下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【0012】
【化2】

【0013】
ここでD5〜6は各々独立して、一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【0014】
【化3】

【0015】
ここで、上記一般式(1)、(2)のAは、五員環または六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6はそれぞれ独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、上記一般式(1)、(2)、(3)のRは単塩基性カルボン酸に由来する部位を含む基を示し、R8〜15は各々独立して水素原子またはメチル基を示し、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜15、D1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。)と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを、反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)、又は、一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物と、多価アルコールと、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)との組合せにより、含フッ素ポリエーテル化合物(B)が迅速に塗膜表面に移行し、製膜条件によらず、安定して塗膜表面のみに優れた撥液性を付与できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0016】
かくして、本発明の撥液性樹脂組成物(1)は、一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)とを含む。
【0017】
また、本発明の撥液性樹脂組成物(2)は、一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物と、多価アルコールと、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)とを含む。
【0018】
好適な実施態様においては、本発明の撥液性樹脂組成物(1)における縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)は、下記一般式(4)で表される二官能・直線構造を有するエポキシエステル化合物と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−1)である。
【0019】
【化4】

【0020】
ここでA、R1〜4、R、R8〜11、q1〜4、m1〜4、sは上記と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜11は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0021】
また、本発明の撥液性樹脂組成物(2)は、上記一般式(4)で表されるエポキシエステル化合物と、多価アルコールと、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2−1)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)とを含むことが好ましい。
【0022】
また、一般式(1)、(2)、(4)のAが、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であることが好ましい。
【0023】
また、一般式(1)、(2)、(4)のAが、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と2つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基であることが好ましい。
【0024】
また、一般式(1)、(2)、(4)のAが、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と2つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基であることが好ましい。
【0025】
また、一般式(1)、(2)、(4)のAが、式(5)〜(7)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であることが好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
また、一般式(1)、(2)、(4)のAが、式(8)及び(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であることが好ましい。
【0028】
【化6】

【0029】
また、一般式(1)、(2)、(4)のAが、式(17)である縮環構造を含む二価基であることが好ましい。
【0030】
【化7】

【0031】
好適な実施態様においては、上記撥液性樹脂組成物(1)、(2)における含フッ素ポリエーテル化合物(B)は、式(18)〜(20)からなる群から選ばれる構造を含む化合物であることが好ましい。
【0032】
【化8】

【0033】
ここで、式中R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30は各々独立して水素、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、x、y、zは各々独立して0以上の整数であり、(B)に含有されるx+y+zは2以上の整数である。但し、R19及びR20のうち少なくとも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、R21〜R24のうち少なくとも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、R25〜R30のうち少なくも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基である。
【0034】
好適な実施態様においては、上記撥液性樹脂組成物(1)、(2)における含フッ素ポリエーテル化合物(B)の比率は、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部である。
【0035】
好適な実施態様においては、上記撥液性樹脂組成物(1)、(2)における縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)の少なくとも一つが、光、又は熱で重合可能な不飽和基を含有する。
【0036】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、該撥液性樹脂組成物(1)、(2)と光重合開始剤(C)とを含有する。
【0037】
更に、本発明の感放射線性樹脂組成物は、カーボンブラック、チタンブラック、黒色金属酸化物顔料、及び有機顔料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0038】
本発明は、該撥液性樹脂組成物(1)、(2)、該感放射線性樹脂組成物をそれぞれ硬化させてなる硬化物を包含する。
【0039】
以下に、本発明の撥液性樹脂組成物(1)、(2)、該撥液性樹脂組成物を含有する感放射線性樹脂組成物、および該感放射線性樹脂組成物を用いた薄膜の形成について、順次説明する。
(I)撥液性樹脂組成物(1)、(2)
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)
本発明の撥液性樹脂組成物に含まれる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)は、下記一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物(以下、「エポキシエステル化合物(a1)」という場合がある):
【0040】
【化9】

【0041】
(ここでD1〜4は各々独立して、下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【0042】
【化10】

【0043】
ここでD5〜6は各々独立して、一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【0044】
【化11】

【0045】
ここで、上記一般式(1)、(2)のAは、五員環または六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6はそれぞれ独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、上記一般式(1)、(2)、(3)のRは単塩基性カルボン酸に由来する部位を含む基を示し、R8〜15は各々独立して水素原子またはメチル基を示し、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜15、D1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。)と、多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)とを反応させることにより得られる。本明細書において、この縮環構造含有アルカリ可溶性不飽和樹脂を「縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)」「アルカリ可溶性樹脂(A1)」という場合がある。
【0046】
また、本発明の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)は、上記一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物(a1)と多価アルコール(a2)と多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)とを反応させることによっても得られる。本明細書において、この縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂を「縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)」「アルカリ可溶性樹脂(A2)」という場合がある。
【0047】
における五員環または六員環の脂環式化合物と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基としては、例えば、五員環または六員環の脂環式化合物と1〜3個の芳香環との縮環構造を含む二価基が挙げられる。六員環の脂環式化合物及び五員環の脂環式化合物は、環上に炭素以外の原子を含んでいてもよく、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含むものが挙げられる。
としては、例えば、下記式(5)〜(9)及び(17)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基が挙げられる。
【0048】
【化12】

【0049】
が、式(5)〜(9)、(17)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、芳香族を含む縮環骨格由来の高耐熱性、高屈折率、電気特性が付与でき、大きな面構造由来の分散安定性が得られる。さらに、Aが式(5)〜(7)、(17)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、より高いレベルでの耐熱性、屈折率、電気特性、分散安定性が得られる。また、Aが式(8)、(9)の縮環構造を含む二価基である場合、このような縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)は溶媒に対しての溶解性が高く、取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。
【0050】
〜Rにおける炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。炭素数1から5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基やナフチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R〜Rとしては、メチル基、フェニル基が好ましい。R〜Rがメチル基、フェニル基であると、原料が入手しやすいので製造上有利であり、得られる樹脂の耐熱性やハンドリング性のバランスが良く、好ましい。q1〜6は、0から2が好ましく、R〜Rがない場合も好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物(a1)は、p1〜4が全て0であることが好ましい。すなわち、本発明の撥液性樹脂組成物は、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)が、下記一般式(4)で表される二官能・直線構造を有するエポキシエステル化合物と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−1)であることが好ましい。
【0052】
【化13】

【0053】
ここでA、R1〜4、R、R8〜11、q1〜4、m1〜4、sは上記と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜11は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0054】
また、本発明の撥液性樹脂組成物は、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)が、上記一般式(4)で表されるエポキシエステル化合物と、多価アルコールと、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2−1)であることが好ましい。
【0055】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)は、好ましくは、Aが式(5)〜(9)及び(17)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Aが式(5)〜(7)及び(17)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜4は各々独立して0から2の整数、m1〜4は各々独立して0から2の整数、そしてsは0から10の整数である。また、式中、Rはアクリル基であることがより好ましい。
【0056】
上記一般式(1)のp1〜4のいずれかが1以上の整数である場合、エポキシエステル化合物は多官能・分岐構造を有し、さらにそこから得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)は、分岐構造となる。さらにp5〜6の何れかが1以上であれば、エポキシエステル化合物は更なる分岐構造を有し、さらにそこから得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)もまた更なる分岐構造を有する。
上記一般式(1)のp1〜4が全て0であるとき、エポキシエステル化合物は二官能・直線構造を有し、さらにそこから得られる縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)は、直線構造を主体とした構造となる。ここで、多官能、二官能とは、エポキシエステル基の数を示す。
【0057】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂の分岐構造の有無にはかかわらず、本発明の撥液性樹脂組成物は優れた撥液特性を発現することが可能であるが、分岐構造を有するエポキシエステル化合物の場合、硬化後に密な架橋構造が容易に形成され得るため、本発明の樹脂組成物の耐熱性などの物性向上が期待できるが、反面、多塩基性カルボン酸またはその無水物との反応の際には高次の架橋構造を生成させないように合成条件を厳密に調整する必要がある。直線構造を有するエポキシエステル化合物の場合、多塩基性カルボン酸またはその無水物との反応において架橋構造は生じにくいことから、感放射線性樹脂組成物の調製の際に大きな影響を与え得る分子量調整、酸価調整など、様々な種類の樹脂設計の自由度が高いという点で、本発明の樹脂組成物における縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂として特に好適に使用される。
【0058】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)、(A2)の調製に用いるエポキシエステル化合物(a1)は、(1):縮環構造含有エポキシ樹脂に単塩基性カルボン酸を作用させる工程を含む製法から得られるか、あるいは、(2):後述の一般式(10)の多官能水酸基含有縮環構造化合物に単塩基性カルボン酸グリシジルを作用させる工程を含む製法から得られる。
【0059】
まず上記(1)の方法について説明する。
エポキシエステル化合物(a1)の調製に用いる縮環構造含有エポキシ樹脂は、下記一般式(10)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物にエピハロヒドリンを作用させる工程を含む製法から得られる。
【0060】
【化14】

【0061】
ここで、Aは上記と同じであり、R17〜18はそれぞれ独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、f1〜2は各々独立して0から4の整数である。R19〜20は各々独立して水素原子またはメチル基、m9〜10は各々独立して0から10の整数、そしてr1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
【0062】
上記エピハロヒドリンの例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられ、取り扱いが簡便であり、安価であることから特にエピクロロヒドリンが好適に用いられる。
【0063】
上記多官能水酸基含有縮環構造化合物は、当該分野で知られている方法により調製され得る。例えば、酸性触媒の存在下、フェノール類とケトン類とを縮合させることにより製造されることが知られている(例えば、特開平7−112949号公報参照)。
【0064】
上記多官能水酸基含有縮環構造化合物とエピクロロヒドリンとの反応は、通常50〜120℃の温度範囲において1〜10時間行われる。好ましくは、70〜110℃の温度範囲において、3〜6時間行われる。
上記多官能水酸基含有縮環構造化合物とエピクロロヒドリンとの割合は、多官能水酸基含有縮環構造化合物の水酸基1モルに対してエピクロロヒドリン1〜20モルが好ましい。多官能水酸基含有縮環構造化合物とエピクロロヒドリンとの反応に用いられる触媒としては、例えばホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類、ホスフィン化合物類、3級アミン化合物類、イミダゾール化合物類等が挙げられる。
【0065】
上記エポキシエステル化合物(a1)の調製に用いられる単塩基性カルボン酸としては、カルボキシル基を1つ有する次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリル酸、シクロプロパンカルボン酸、2,2,3,3−テトラメチル−1−シクロプロパンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、2−シクロペンテニルカルボン酸、2−フランカルボン酸、2−テトラヒドロフランカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−へプチルシクロヘキサンカルボン酸、4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−(1,2−ジヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)プロピオン酸、シキミ酸、3−ヒドロキシ−3,3−ジフェニルプロピオン酸、3−(2−オキソシクロヘキシル)プロピオン酸、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸水素アルキル、シクロヘプタンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸、テトラシクロドデセンカルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸、(4−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ−4−イル)酢酸、p−メチル安息香酸、p−エチル安息香酸、p−オクチル安息香酸、p−デシル安息香酸、p−ドデシル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−エトキシ安息香酸、p−プロポキシ安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−ペンチルオキシ安息香酸、p−ヘキシルオキシ安息香酸、p−フルオロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、p−クロロメチル安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、ペンタクロロ安息香酸、4−アセトキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸、o−ニトロ安息香酸、o−(アセトキシベンゾイルオキシ)安息香酸、テレフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸モノシクロヘキシルエステル、フェノキシ酢酸、クロロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、フェニル酢酸、2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸、o−ブロモフェニル酢酸、o−ヨードフェニル酢酸、メトキシフェニル酢酸、6−フェニルヘキサン酸、ビフェニルカルボン酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、アントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸、アントラキノン−2−カルボン酸、インダンカルボン酸、1,4−ジオキソ−1,4−ジヒドロナフタレン−2−カルボン酸、3,3−ジフェニルプロピオン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、ケイ皮酸、3−メトキシケイ皮酸、4−メトキシケイ皮酸、キノリンカルボン酸などで、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。特に好適な単塩基性カルボン酸としては、該縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)に放射線重合性官能基を導入できる不飽和基を含有するものが良く、例えば、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0066】
上記(2)の方法で用いる一般式(10)の多官能水酸基含有縮環構造化合物としては、上述したものを用いることができる。上記(2)の方法で用いる単塩基性カルボン酸グリシジルとしては、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸グリシジル、酪酸グリシジル、安息香酸グリシジル、p−エチル安息香酸グリシジルなどで、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
【0067】
上記(1)の製法における縮環構造含有エポキシ樹脂と単塩基性カルボン酸との反応、および上記(2)の製法における多官能水酸基含有縮環構造化合物(10)と単塩基性カルボン酸グリシジルとの反応は、いずれも必要に応じて適切な溶媒を用いて、50〜120℃の温度範囲において5〜30時間行なわれる。上記用いられ得る溶媒としては、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレンモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのアルキレンモノアルキルエーテル類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジブチルなどのエステル類などがある。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび3−メトキシブチル−1−アセテートが好適である。さらに、必要に応じて触媒および重合禁止剤を用いることが出来る。用いられる触媒としては、例えばホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類、ホスフィン化合物類、3級アミン化合物類、イミダゾール化合物類等が挙げられ、通常、反応物全体の0.01〜10重量%の範囲で用いられることが好ましい。また、用いられる重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、4−メチルキノリン、フェノチアジン等が挙げられ、通常、反応物全体の5重量%の以下の範囲で添加され得る。
【0068】
上記縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)の調製に用いられる多価アルコール(a2)とは、分子中に水酸基を二つ以上含有する化合物を指し、例えば、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、酒石酸、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、キリシトール、ソルビトール、イノシトール、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリンなど。これらのうち、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3官能以上の化合物を用いると、得られる樹脂を含む組成物から得られる薄膜と基板との密着性が優れ、かつ該膜の透明性が優れるため、好ましい。これらの多価アルコール(a2)は単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
【0069】
上記縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)、(A2)の調製に用いられる多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)は、ジカルボン酸、テトラカルボン酸などの複数のカルボキシル基を有するカルボン酸またはその無水物であり、これらの多塩基性カルボン酸、あるいはその無水物としては、次の化合物が挙げられる:マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸などのジカルボン酸およびそれらの無水物;トリメリット酸またはその無水物、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、4−(1,2−ジカルボキシエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、などのテトラカルボン酸およびそれらの酸二無水物など。
【0070】
なお、「多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)」とは、「特定の多塩基性カルボン酸およびそれに対応する無水物のうちの少なくとも一方」という意味であり、例えば、多塩基性カルボン酸がフタル酸であれば、フタル酸およびフタル酸無水物のうちの少なくとも一方を指していう。
【0071】
多塩基性カルボン酸またはその無水物の種類および数を適宜選択することによって、構造の異なる種々の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)を製造することができる。具体的には、例えば、以下の(i)〜(iii)に示す第1〜第3の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)が調製されるが、これらは例示である。
(i)第1の縮環骨格含有アルカリ可溶性樹脂(A1):
エポキシエステル化合物(a1)と、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)とを混合し、反応させて得られる樹脂;
(ii)第2の縮環骨格含有アルカリ可溶性樹脂(A1):
エポキシエステル化合物(a1)と、2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物(例えば、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物)(a3)とを混合し、反応させて得られる樹脂;および、
(iii)第3の縮環骨格含有アルカリ可溶性樹脂(A1):
エポキシエステル化合物(a1)と、テトラカルボン酸またはその二無水物(a3−1)とを反応させて得られる反応生成物に、さらにジカルボン酸またはその無水物(a3−2)を反応させて得られる樹脂。
【0072】
また、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)は、上記エポキシエステル化合物(a1)、多価アルコール(a2)、並びに、多塩基性カルボン酸若しくはその無水物(a3)を反応させることにより得られる。この反応において、エポキシエステル化合物(a1)、多価アルコール(a2)、並びに、多塩基性カルボン酸若しくはその無水物(a3)の添加順序は特に問わない。例えば、これらの一部または全部を同時に混合して反応させる方法、具体的には、エポキシエステル化合物(a1)と多価アルコール(a2)とを混合し、ついで、多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)を添加、混合して反応させるなどの方法がある。また、これらの反応生成物にさらに多塩基性カルボン酸を添加し、反応させてもよい。多塩基性カルボン酸またはその無水物の種類および数を適宜選択することによって、構造の異なる種々の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)を製造することができる。具体的には、例えば、以下の(iv)〜(vi)に示す第4〜6の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)が調製されるが、これらは例示である。
(iv)第4の縮環骨格含有アルカリ可溶性樹脂(A2):
エポキシエステル化合物(a1)と、多価アルコール(a2)と、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)とを混合し、反応させて得られる樹脂;
(v)第5の縮環骨格含有アルカリ可溶性樹脂(A2):
エポキシエステル化合物(a1)と、多価アルコール(a2)と、2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物(例えば、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物)(a3)とを混合し、反応させて得られる樹脂
;および、
(vi)第6の縮環骨格含有アルカリ可溶性樹脂(A2):
エポキシエステル化合物(a1)と、多価アルコール(a2)と、テトラカルボン酸またはその二無水物(a3−1)とを反応させて得られる反応生成物に、さらにジカルボン酸またはその無水物(a3−2)とを反応させて得られる樹脂。
【0073】
また、「2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物」とは、少なくとも2種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物が同時に存在することをいう。従って、上記(ii)、(v)の方法においては、少なくとも2種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物が反応に関与する。
【0074】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)、(A2)は、上記例示のいずれの方法においても、エポキシエステル化合物(a1)、多価アルコール(a2)、多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)を、上記例示の方法(順序)で、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒中に溶解(懸濁)し、加熱して反応させることにより製造される。
【0075】
上記縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)の製造において、エポキシエステル化合物(a1)と多価アルコール(a2)とは、エポキシエステル化合物(a1)の水酸基と多価アルコール(a2)の水酸基とのモル比が、99/1から50/50となるように調整することが好ましく、95/5から60/40であることがより好ましい。多価アルコール(a2)の水酸基のモル比が50%を超えると、得られる樹脂の分子量が急激に増大し、ゲル化の恐れがある。また、1%未満では、得られる樹脂の分子量が充分に上がらず、耐熱性を向上させにくい傾向がある。
【0076】
多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)は、エポキシエステル化合物(a1)と多価アルコール(a2)の水酸基の合計1当量(モル)に対して、好ましくは酸無水物基換算で0.3〜1当量、より好ましくは0.4〜1当量の割合で反応に供される。多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)が酸無水物基換算で、0.3当量未満では、得られるアルカリ可溶性樹脂の分子量が高くならない場合がある。そのため、このようなアルカリ可溶性樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて露光および現像を行った場合に、得られる被膜の耐熱性が不充分であったり、被膜が基板上に残存する場合がある。上記多塩基性カルボン酸またはその無水物が酸無水物基換算で1当量を超える場合には、未反応の酸あるいは酸無水物が残存し、得られるアルカリ可溶性樹脂の分子量が低くなり、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物の現像性に劣る場合がある。
【0077】
なお、酸無水物基換算とは、使用する多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)に含まれるカルボキシル基および酸無水物基を全て酸無水物に換算したときの量を示す。
【0078】
上記第2、第3、第5、及び第6のアルカリ可溶性樹脂の製造に際しては、2種以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物を用いる。一般的に、ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物とが用いられる。ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物との割合は、モル比で1/99〜90/10であることが好ましく、5/95〜80/20であることがより好ましい。ジカルボン酸無水物の割合が、全酸無水物の1モル%未満では樹脂粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。さらに、得られる樹脂の分子量が大きくなりすぎるため、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に薄膜を形成し、露光を行った場合に、該露光部が現像液に対して溶解しにくくなり、目的のパターンが得られにくくなる傾向にある。ジカルボン酸無水物の割合が全酸無水物の90モル%を超えると、得られる樹脂の分子量が小さくなりすぎるため、該樹脂を含む組成物を用いて基板上に塗膜を形成した際に、プリベーグ後の塗膜にスティッキングが残るなどの問題が生じやすくなる。
【0079】
上記いずれの場合の場合にも、エポキシエステル化合物(a1)と多価アルコール(a2)と多塩基性カルボン酸またはその無水物(a3)の反応時には、反応温度は50〜130℃が好ましく、より好ましくは70〜120℃である。反応温度が130℃を超えるとカルボキシル基と水酸基の縮合が一部起こり、急激に分子量が増大する。一方、50℃未満では反応がスムーズに進行せず、未反応の多塩基性カルボン酸またはその無水物が残存する。
【0080】
本発明の撥液性樹脂組成物に含有されるアルカリ可溶性樹脂(A)は、上記第1、第2、第3、第4、第5および第6のいずれの樹脂であってもよく、これらは単独の樹脂であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。本発明の撥液性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の配合量は、撥液性樹脂組成物全体に対して、20〜95重量%が好ましい。
【0081】
含フッ素ポリエーテル化合物(B)
本発明の含フッ素ポリエーテル化合物(B)とは、エーテル性の酸素原子を2つ以上有するフッ素化合物を言う。このような含フッ素ポリエーテル化合物(B)の例としては、下記一般式(18)〜(20)のいずれかで示される含フッ素アルキレンエーテル構造を有するものが挙げられ、炭素数2〜100のエーテル結合および含フッ素アルキレン基を有する化合物が挙げられる。
本発明の含フッ素ポリエーテル化合物(B)は、エーテル性の酸素原子を2つ以上有するため、塗膜表面の撥液性を高めることができる。
【0082】
【化15】

【0083】
式中R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30は各々独立して水素、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、x、y、zは各々独立して0以上の整数であり、(B)に含有されるx+y+zが2以上の整数である。但し、R19及びR20のうち少なくとも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、R21〜R24のうち少なくとも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、R25〜R30のうち少なくも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基である。
【0084】
炭素数20以下の含フッ素アルキル基(b1)としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
x、y、zについて、含フッ素ポリエーテル化合物(B)が構造単位(18)、(19)及び(20)のいずれか1つしか含まない場合、x、y又はzは単独で5以上であり、構造単位を2種類以上含んでいる場合、x、y、zの合計が5以上であるものが好ましい。
さらに、含フッ素ポリエーテル化合物(B)は分子内に不飽和基を有するものが好ましい。不飽和基を含有することで、含フッ素ポリエーテル化合物(B)が塗膜に固定化され、撥液性の持続性を高めることが出来る。
本明細書において、「撥液性」とは、撥水性、撥油性の両方を示すものである。
【0085】
含フッ素ポリエーテル化合物(B)は、例えば、下記一般式(21)で表すことができる。
【0086】
【化16】

【0087】
ここでRfa、Rfはそれぞれ独立して、水素、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基を示し、iは0〜20の整数であり、iは0〜20の整数であり、nは1〜200の整数である。より望ましくは、iは0〜3の整数であり、iは0〜3の整数であり、nは5〜20の整数である。hは1〜5の整数であり、より望ましくは、1〜3の整数である。また、Rfの少なくとも一つは、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、且つ、Rfの少なくとも一つは、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であることが好ましい。
【0088】
【化17】

【0089】
は、n個の含フッ素アルキレンエーテル構造FE〜FEからなる構造を示す。ここで、含フッ素アルキレンエーテル構造とは、1個の酸素原子にアルキレン基が結合しているもので、且つ、該アルキレン基を構成している炭素原子の少なくとも一つには1個以上のフッ素原子又は炭素数20以下のフルオロアルキル基(例えば、CF等)が結合している構造を有するものを言う。一般式(21)におけるn個の含フッ素アルキレンエーテル構造FE〜FEの少なくとも一つは、一般式(18)〜(20)のいずれかで示される含フッ素アルキレンエーテル構造を含む構造であることが好ましく、含フッ素アルキレンエーテル構造FE〜FEがそれぞれ独立して一般式(18)〜(20)のいずれかで示される含フッ素アルキレンエーテル構造であることがより望ましい。nが2以上である場合、FE〜FEは同じであっても異なっていてもよく、結合の順序は特に問わない。nが1の場合、同一主鎖中にFEが1つ存在するものとする。
Lは単結合、
【0090】
【化18】

【0091】
のいずれかを示し、Kは不飽和基を含有する基であり、下記式(23)〜(33)等に記載した構造を有する基が具体例として挙げられる。
【0092】
また、含フッ素ポリエーテル化合物(B)は、例えば、下記一般式(22)で表されるものも含む。
【0093】
【化19】

【0094】
ここでjは1〜100の整数であり、jは1〜50の整数である。Rfはエーテル性の酸素原子を2つ以上有する含フッ素ポリエーテル基であり、一般式(18)〜(20)のいずれかで示される含フッ素アルキレンエーテル構造を少なくとも一つ含むことが好ましい。jが2以上の場合、複数のRfは同じでも異なっていてもよい。K及びLの意味は上記と同じである。また、L´は、単結合、又は、下記一般式で表される基である。
【0095】
【化20】

【0096】
上記一般式(21)で記載される含フッ素ポリエーテル化合物(B)としては、例えば、
【0097】
【化21】

【0098】
【化22】

【0099】
がある。ここで、Rfはそれぞれ独立して炭素数20以下の含フッ素アルキル基である。y1は0〜30の整数、z1は0〜20の整数であり、y1、z1の少なくとも一方は1以上の整数である。y2は1〜30の整数、z2は1〜20の整数であり、炭素数20以下の含フッ素アルキル基としては、上記(b1)と同じもの等が挙げられる。Kは、
【0100】
【化23】

【0101】
等が具体例として挙げられる。
上記の具体例(FPE2)の製法は、例えば、国際公開第94/27945号パンフレットや国際公開第01/46107号パンフレットなどに記載の方法などがある。
具体例(FPE1)、(FPE3)の製法は、例えば、
【0102】
【化24】

【0103】
【化25】

【0104】
(式中y1、z1、z2は上記と同じ)のようなOH基を有する含フッ素化合物にα―フルオロアクリル酸フルオライドなどの酸ハライドを反応させる方法などがある。
【0105】
さらに、上記一般式(21)で記載される含フッ素ポリエーテル化合物(B)の例としては、
【0106】
【化26】

【0107】
がある。Rf、Rfは、それぞれ独立して、水素、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基を示し、より好ましくは、水素原子、F、CFである。またRfの少なくとも一つは、フッ素原子を含有する基(Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基)であり、且つ、Rfの少なくとも一つは、フッ素原子を含有する基(Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基)であることが望ましい。hは1〜5の整数であり、iは0〜20の整数であり、jは0〜20の整数であり、nは1〜200の整数である。より望ましくは、hは1〜3の整数であり、iは0〜3の整数であり、jは0〜3の整数であり、nは5〜20の整数である。FE〜FEの意味は上記と同じであり、nが2以上である場合は、FE〜FEは同じであっても異なっていてもよく、結合の順序は特に問わない。nが1の場合は、同一主鎖中にFEが1つ存在するものとする。Kは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する基である。Kの具体例としては、
【0108】
【化27】

【0109】
【化28】

【0110】
等があげられる(式中mは0〜10の整数である。*は結合部分を示す)。これらの中でも、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)との親和性の観点から、Kにもウレタン結合を含む構造の物が好ましく、具体的には、式(31)〜(33)で示したようなものが挙げられる。
【0111】
上記一般式(22)で記載される含フッ素ポリエーテル化合物(B)としては、例えば、
【0112】
【化29】

【0113】
がある。ここで、Rfは上記(19)または(20)の少なくとも一方を含むフッ素系ポリエーテル基である。y3は1〜100、y4は1〜50である。
【0114】
また、FPE1及びFPE4において2種類以上の構造単位が存在する場合、その順序は任意である。また、同一の構造単位が同一主鎖内において2箇所以上存在していてもよい。例えば、FPE4において
【0115】
【化30】

【0116】
(以下「y3’」とする)及び
【0117】
【化31】

【0118】
(以下「y4’」とする)の順序は、−y3’−y4’−でも−y4’−y3’−のいずれでも良く、さらに、ランダムに結合(y3’−y4’−y3’等)していても良い。さらに、y3’、y4’で表される構造単位以外の構造単位(例えば式(18)で表される構造単位やそれ以外の含フッ素アルキルエーテル)が含まれていても良く、その構造単位の結合位置は特に限定されるものではなく、−y3’−y4’−や−y4’−y3’−等で表される構造の外側に結合していても良く、y3’とy4’で表される構造単位の間に挟まれていても良い。
【0119】
具体例(FPE4)の製法としては、例えば、国際公開第03/076484号パンフレットなどに記載の方法、すなわち、水酸基ラジカルOH・を生じるラジカル開始剤を用いたテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテル類とのラジカル共重合体に、メタノールとアリルアミンを反応させる方法などがある。
具体例(FPE5)の製法としては、例えば、
【0120】
【化32】

【0121】
(式中Rf、Rf、i、j、FE〜FEは上記と同じ)のようなOH基を有する含フッ素ポリエーテル化合物に2−イソシアナトエチルアクリレートや2−イソシアナトエチルメタクリレートなどのイソシアネート類を反応させる方法や、OH基を有する上記含フッ素ポリエーテル化合物と2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(2−HEMA)や4−ヒドロキシブチルアクリレート(4−HBA)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)などのOH基含有(メタ)アクリレート化合物とトリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート及びこれらの多核体などのポリイソシアネート類とを反応させる方法等も好適に用いることが出来る。上記のポリイソシアネート類の具体例としては、ポリメリックMDI、TDIやMDIを多価アルコール類と反応させたポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製コロネートL-55E等)やTDIやHDIをベースとしたイソシアヌレート環を有したポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製コロネート2030やコロネートHX等)があげられる。上述の通り、(FPE5)におけるKは、ウレタン結合を含有していることが好ましく、このような構造を有する(FPE5)を製造するためには、複数のイソシアネート基を有する化合物が必要であり、この観点から、上記ポリイソシアネート類が特に好ましい。本発明の撥液性樹脂組成物は、製膜時には効率よく含フッ素ポリエーテル化合物(B)が膜表面に移行する必要があるが、組成物(塗液)の状態においては、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)が均一且つ安定的に混合している必要がある。本発明における含フッ素ポリエーテル化合物(B)は、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と適度な親和性を有することからこのことを両立可能となるが、中でも、ウレタン結合の適度な極性のために、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)との適度な親和性を有し、配合液の安定性と製膜時の含フッ素ポリエーテル化合物(B)の表面移行性のバランスが極めて優れていることから、ウレタン結合を有する(FPE5)が特に好ましい。また、(メタ)アクリロイル基が共存していると、本発明の撥液性樹脂組成物を硬化させた場合、含フッ素ポリエーテル(B)も硬化反応に関与し、塗膜表面に組み込まれることから、撥液性の持続性を高められる点で好ましい。
【0122】
本発明の撥液性樹脂組成物(1)、(2)に含有される含フッ素ポリエーテル化合物(B)は、上記の化合物に限定されるものではないが、これらは単独の樹脂であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0123】
本発明の撥液性樹脂組成物(1)、(2)において、含フッ素ポリエーテル化合物(B)の比率は、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.01から10重量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.05から5重量部の範囲である。含フッ素ポリエーテル化合物(B)の比率が0.01から10重量部の範囲であると、アルカリ可溶性樹脂(A)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)との相溶性が絶妙に保たれ、含フッ素ポリエーテル化合物(B)が迅速に塗膜表面に移行し、塗膜表面のみに撥液性が付与され、さらに、現像性が良好で、かつフルオロアルキル基による基材密着性の低下を防止することができる。10重量部より多いと、フッ素成分が膜内部に広く分布し、塗膜表面のみに撥液性を付与することが困難となる。
【0124】
本発明の撥液性樹脂組成物(1)、(2)において、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)の少なくとも一つが、光、又は熱で重合可能な不飽和基を含有することが好ましい。より好ましくは、(A)と(B)の両方が上記不飽和基を含有することである。
【0125】
また、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)は主に固体であるため、本発明の撥液性樹脂組成物(1)、(2)は、溶剤を含有させることが好ましい。
このような溶剤としては、例えば、組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に制限はない。例えば、次の化合物が挙げられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなとのジエチレングリコールアルキルエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。
【0126】
これらの中でグリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類およびエステル類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびメチルアミルケトンが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の撥液性樹脂組成物における溶剤の配合量は、組成物全体の5〜70重量%が好ましい。
【0127】
(II)感放射線性樹脂組成物
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記撥液性樹脂組成物(1)又は(2)の少なくとも一方を含有する。本明細書で「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、分子線、γ線、シンクロトロン放射線、およびプロトンビーム線のうちの少なくとも1種をいう。
通常、この感放射線性樹脂組成物には、該撥液性樹脂組成物および放射線反応性の化合物が含有される。この組成物がポジ型の感放射線性樹脂組成物である場合には、該放射線反応性の化合物は、例えばキノンジアジド化合物(以下、キノンジアジド化合物(D)という場合がある)であり、通常、上記撥液性樹脂組成物100重量部に対して0.5から50重量部含有されることが好ましい。ネガ型の感放射線性樹脂組成物である場合には、放射線反応性の化合物は、例えば光重合開始剤(C)である。光重合開始剤(C)は、上記撥液性樹脂組成物100重量部に対して、0.1から30重量部含有することが好ましく、更に好ましくは、0.4から10重量部の範囲である。本発明の感放射線性樹脂組成物は、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
以下にネガ型感放射線性樹脂組成物を例に挙げて、本発明の感放射線性樹脂組成物についての説明を行う。
【0128】
本発明のネガ型感放射線性樹脂組成物は、上記撥液性樹脂組成物と放射線反応性の化合物として光重合開始剤(C)を含有する。上記(C)の光重合開始剤とは、光重合開始作用を有する化合物および/または増感効果を有する化合物をいう。このような化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
【0129】
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、それ自体では、光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
【0130】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、感放射線性のモノマーまたはオリゴマー(E)を含有する。感放射線性のモノマーまたはオリゴマー(E)は、放射線で重合することのできるモノマーやオリゴマーであり、組成物の使用目的に応じた物性にあわせて含有させることができる。これらのモノマーあるいはオリゴマーは、粘度調整剤あるいは光架橋剤として作用し、本発明の撥液性樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)、含フッ素ポリエーテル化合物(B)の少なくとも一方が感放射線反応性を有する場合(分子内に不飽和基を含有する場合)、更に感放射線性のモノマーまたはオリゴマー(E)を含有させることは必須条件ではない。ただし(A)、(B)いずれも感放射線反応性を有さない場合(分子内に不飽和基を含有しない場合)、感放射線性樹脂組成物として機能させるために、更に感放射線性のモノマーまたはオリゴマー(E)を含有させることが必要となる。
通常は、上記モノマーおよびオリゴマーは、その総量で、本発明の撥液性樹脂組成物の固形分100重量部に対して50重量部以下の範囲で組成物中に含有される。このモノマーあるいはオリゴマーの含有量が50重量部を超えると、プリベーク後のスティッキング性に問題が出てくる場合がある。
【0131】
上記(E)の放射線で重合し得るモノマーあるいはオリゴマーとしては、以下のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するモノマー類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類。これらのモノマーあるいはオリゴマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、(a)エポキシ基を有する化合物、(b)添加剤、(c)溶剤などを含有する。
上記(a)のエポキシ基を有する化合物としては、エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーまたはモノマーが用いられる。エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーとしては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂がある。エポキシ基を少なくとも1個有するモノマーとしては、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0133】
これらのエポキシ基を有する化合物は、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、該撥液性樹脂組成物の固形分100重量部当たり、エポキシ基を有する化合物が50重量部以下の割合で含有される。50重量部を超える場合には、該成分を含む組成物を硬化させたときに割れが起こりやすく、密着性も低下しやすくなる。
【0134】
上記(b)の添加剤としては、熱重合禁止剤、密着助剤、エポキシ基硬化促進剤、界面活性剤、消泡剤などがあり、これらは本発明の目的が損なわれない範囲の量で組成物中に含有される。
【0135】
上記熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。
【0136】
上記密着助剤は、得られる組成物の接着性を向上させるために含有させる。密着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が好ましい。この官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0137】
上記エポキシ基硬化促進剤としては、アミン化合物類、イミダゾール化合物類、カルボン酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類またはメチロール基含有化合物類などが挙げられる。エポキシ基硬化促進剤を少量含有させることにより、加熱により得られる硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐メッキ性、密着性、電気特性、硬度などの諸特性が向上する。
【0138】
上記界面活性剤は、例えば、液状の組成物を基板上に塗布することを容易にするために含有させ、これにより得られる膜の平担度も向上する。界面活性剤としては、例えばBM−1000(BMヘミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173およびメガファックF183(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430およびフロラードFC−431(住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141およびサーフロンS−145(旭硝子(株)製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57およびDC−190(東レシリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0139】
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系などの化合物が挙げられる。
【0140】
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有され得る上記(c)の溶剤は、組成物中の各成分を均一に溶解し、例えば基板上への塗工を容易にするために用いられる。このような溶剤としては、組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に制限はない。例えば、次の化合物が挙げられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなとのジエチレングリコール(ジ)アルキルエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。
【0141】
これらの中でグリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類およびエステル類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびメチルアミルケトンが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の感放射線性樹脂組成物における溶剤(c)の配合量は、組成物全体の5〜70重量%が好ましい。
【0142】
本発明のネガ型感放射線性樹脂組成物は、好ましくは波長100〜600nmの光の照射により光重合開始剤(C)からラジカルが発生し、不飽和基が架橋反応する。本発明の撥液性樹脂組成物が、不飽和基を持たない化合物から構成される場合、ネガ型感放射線性樹脂組成物に添加されうる感放射線性モノマーあるいはオリゴマー同士の架橋反応により生じる架橋マトリクスに該撥液性樹脂組成物が固定化される。また、本発明の撥液性樹脂組成物の縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)及び/または含フッ素ポリエーテル化合物(B)が不飽和基を含有する場合、該撥液性樹脂組成物そのものが重合反応に関与し、架橋構造に取り込まれ、固定化される。このことにより、露光部分はアルカリ不溶となり、後のアルカリ現像工程において、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)がアルカリ可溶性を有するため未露光部分が除去され、パターンを形成することが可能となる。
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)からなる樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物は、(A)、(B)そのものが硬化物の架橋構造に取り込まれ固定化すると、塗膜の撥液性の持続性に優れることから、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)は不飽和基を有することが好ましい。
【0143】
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、必要に応じて着色剤を含有させることができる。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が例示される。染料としては、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料などのカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)において染料に分類されている化合物が挙げられる。有機顔料としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物や、中心金属がCu、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn等の異種金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化タンタル、酸化インジウムスズ、酸化コバルト、酸化ハフニウム硫酸バリウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、塩化金、臭化金、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化パラジウム、塩化白金酸、塩化金酸ナトリウム、硝酸銀、白金アセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナートなどの金属塩;金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属類;亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。メタリック顔料としてはアルミニウムフレークや銅ブロンズフレークなどが挙げられる。
本発明の感放射線性樹脂組成物は、着色剤として、カーボンブラック、チタンブラック、黒色金属酸化物顔料、及び有機顔料からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。黒色金属酸化物顔料としては、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(Co)、酸化銅(CuO)、酸化クロム(CrO)、酸化マンガン(Mn)及び酸化アルミニウム(Al)などが挙げられる。
黒色着色剤を混合したネガ型感放射線性樹脂組成物は、遮光用塗膜として使用できる。例えばカラーフィルタ用において、RGBの発光色のコントラストを高めるためブラックマトリクスを形成するために用いることが出来る。黒色着色剤としては、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、及びチタンブラック等が挙げられる。また、黒色着色剤として、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料の混合物を用いることもできる。
着色剤の配合量は、組成物全体の1〜40重量%が好ましい。1重量%より少ないと十分に着色できない場合があり、40重量%より多いと組成物の流動性が悪くなったり、密着性が低下したりする場合がある。
【0144】
着色剤としては、遮光性、画像特性等の面から、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。具体的には、例えば、三菱化学社製 商品名「MA7」、「MA8」、「MA11」、「MA100」、「MA220」、「MA230」、「#52」、「#50」、「#47」、「#45」、「#2700」、「#2650」、「#2200」、「#1000」、「#990」、「#900」等、テグサ社製 商品名「Printex95」、「Printex90」、「Printex85」、「Printex75」、「Printex55」、「Printex45」、「Printex40」、「Printex30」、「Printex3」、「PrintexA」、「PrintexG」、「SpecialBlack550」、「SpecialBlack350」、「SpecialBlack250」、「SpecialBlack100」等、キャボット社製 商品名「Monarch460」、「Monarch430」、「Monarch280」、「Monarch120」、「Monarch800」、「Monarch4630」、「REGAL99」、「REGAL99R」、「REGAL415」、「REGAL415R」、「REGAL250」、「REGAL250R」、「REGAL330」、「BLACK PEARLS480」、「BLACK PEARLS130」等、コロンビアンカーボン社製 商品名「RAVEN11」、「RAVEN15」、「RAVEN30」、「RAVEN35」、「RAVEN40」、「RAVEN410」、「RAVEN420」、「RAVEN450」、「RAVEN500」、「RAVEN780」、「RAVEN850」、「RAVEN890H」、「RAVEN1000」、「RAVENl020」、「RAVEN1040」等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
着色剤は、分散剤(例えば、ポリカプロラクトン系化合物、長鎖アルキルポリアミノアマイド系化合物等)と共に3本ロールミル、ボールミル、サンドミル等の分散機によって分散され、その後、感放射線性樹脂組成物に加えてもよい。粒径は、1μm以下が好ましい。当該範囲であるとネガ型感放射線性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0145】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、アルカリに可溶であり、かつ放射線照射により硬化可能である。本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)を含有する感放射線性樹脂組成物は、所望の形状に成形し、放射線により硬化させて、種々の目的に利用される。特に、該組成物により基板上に薄膜を形成し、放射線照射を行った後、現像することにより所定のパターンを有する薄膜を形成する目的に利用される。
【0146】
例えば、上述のように、基板上に薄膜を形成して、放射線硬化および現像を行う場合には、通常、まず溶剤を含む上記組成物の各成分を混合して液状の組成物を得る。これを例えば、孔径1.0〜0.2μm程度のミリポアフィルターなどでろ過して、均一な液状物とするのがより好適である。次いで、この液状の組成物を、基板上に塗布して塗膜を得る。塗布する方法としては、ディッピング法、スプレー法、ローラーコート法、スリットコート法、バーコート法、スピンコート法などがある。特にスピンコート法が汎用される。これらの方法によって、液状の樹脂組成物を1〜30μm程度の厚さに塗布した後、溶剤を除去すれば薄膜が形成される。通常、溶剤を充分に除去するためプリベーク処理が行われる。
【0147】
この基板の薄膜上に所望のパターンを有するマスクを載置した後、放射線による照射を行う。用いられる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも波長の短い放射線は、化学反応性が高く、理論的には紫外線より優れているが経済性の観点から紫外線が実用的である。
【0148】
上記照射により、露光部分は重合反応により硬化する。未露光部分は現像液で現像される。このことにより、放射線の未照射部分が除去され、所望のパターンを有する薄膜が得られる。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法などが挙げられる。
【0149】
上記現像液としては、アルカリ性水溶液、該アルカリ性水溶液と水溶性有機溶剤および/または界面活性剤との混合液、および本発明の組成物が溶解し得る有機溶剤が挙げられ、好ましくはアルカリ性水溶液と界面活性剤との混合液である。
【0150】
本発明の感放射線性樹脂組成物を現像するのに適したアルカリ性水溶液の調製に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノナンが挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどが用いられる。
【0151】
このアルカリ性水溶液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、エチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、界面活性剤などが適量添加される。
【0152】
本発明の樹脂組成物の現像は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で、市販の現像機や超音波洗浄機を用いて行うことができる。現像時間は、現像方法、現像液、温度、塗膜の膜厚などによって適宜調整できる。
【0153】
アルカリ現像後、耐アルカリ性を向上させるために、加熱して硬化処理を施すことが望ましい(ポストベーク処理)。本発明の樹脂組成物においては、加熱処理を行うことにより、強アルカリ水に対する耐久性が著しく向上するばかりでなく、銅などの金属あるいはガラスに対する密着性、耐熱性、表面硬度などの諸性質も向上する。好ましい加熱温度と加熱時間は、80〜250℃、10〜120分である。このようにして、所望のパターンを有する硬化薄膜を得ることができる。
【0154】
本発明の撥液性組成物を硬化して得られる硬化膜は、膜表面に高い撥インク性を示すため、インクジェット法によるカラーフィルタの製造に求められる隔壁材料(ブラックマトリクス)として好適に使用される。すなわち、本発明の撥液性組成物は、表面部分は撥液性を有し、側面は親油性を有する隔壁を容易に形成することが可能である。これは、撥液性を付与する含フッ素ポリエーテル化合物(B)が表面移行性を有しており、製膜の際に含フッ素ポリエーテル化合物(B)が塗膜表面近傍に移行するためである。
また、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)との相溶性の絶妙なバランスにより、含フッ素ポリエーテル化合物(B)が迅速に塗膜表面に移行し、製膜条件によらず、安定して塗膜表面のみに優れた撥液性を付与できることを見出した。従来技術のように、含フッ素化合物が迅速に塗膜表面に移動しない場合、フッ素成分が塗膜表面に移行するための時間を考慮した製膜条件を設定する必要があり、適切でない条件で製膜を行うと含フッ素化合物が塗膜内部に残存する可能性があり、膜の側面部分にも撥液性が出る結果となる。
本発明の撥液性組成物を使用すると、フッ素成分が迅速に塗膜表面に移行することから、特別な製膜条件を設定することなく、塗膜表面のみに優れた撥液性を有するパターンを安定的に形成することが可能である。
上記の撥液性は、水および有機溶媒(例えば、n−ヘキサン)の接触角で評価可能である。水の接触角は90度以上が好ましく、100度以上がより好ましい。また、有機溶媒の接触角として、例えば、n−ヘキサンの接触角は30度以上が好ましく、40度以上がより好ましい。
【0155】
また、本発明のネガ型感放射線性樹脂組成物は、優れたアルカリ溶解性、現像性を有するので、微細なパターンを形成することが可能である。具体的には100μm以下のパターン形成に好ましく用いられ、50μm以下のパターン形成により好ましく用いられる。
【0156】
さらに、本発明の撥液性樹脂組成物又は感放射線性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、耐熱性、透明性、基材との密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐溶剤性、表面硬度などに優れる。そのため、本発明の撥液性組成物は、例えば液晶ディスプレイのカラーフィルタの形成材料、有機ELのバンク材用の感放射線性樹脂組成物などとして好適に利用される。
【発明の効果】
【0157】
本発明の撥液性樹脂組成物を使用することにより、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)の相溶性の絶妙なバランスにより含フッ素ポリエーテル化合物(B)が迅速に塗膜表面に移行し、塗膜表面のみに撥液性が付与される。製膜後、含フッ素ポリエーテル化合物(B)が迅速に塗膜表面に移行することにより、製膜条件の違いによる影響を受けることなく、既存の製膜技術を流用するだけで安定的にインクジェット用隔壁に好適な性能を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、実施例において塗膜の形成に必要な5つの工程を説明する図である。
【図2】図2は、実施例における通常の露光方法を模式的に説明した図である。
【図3】図3は、実施例における裏面露光を模式的に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0159】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0160】
(合成例1)縮環構造含有エポキシ樹脂の合成
式(11)で示されるビスフェノールキサンテン230gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液165gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、メタノールを加えることで、式(12)で示されるビスフェノールキサンテン型エポキシ樹脂230gを得た。この樹脂のエポキシ当量は270g/eqであった。
【0161】
【化33】

【0162】
(合成例2)ビスフェノールキサンテン型エポキシエステル化合物の合成
300ml四つ口フラスコ中に、合成例1で得られたビスフェノールキサンテン型エポキシ樹脂210g(エポキシ当量270g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド600mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール56mg、およびアクリル酸71gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。下記式で示される、淡黄色透明で固体状のビスフェノールキサンテン型エポキシエステル化合物(1・a)を得た(一般式(1)において、Aが上記式(5)である二価基であり、R=エテニル基(CH=CH)、p1〜2=0、q1〜2=0、m=0、m=0、s=0)。
【0163】
【化34】

【0164】
(合成例3)縮環構造含有エポキシ樹脂の合成
以下の式(13)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物(上記一般式(10)において、Aが式(5)である二価基であり、R17、R18=CH、f1〜2=2、r1〜2=1、m9〜10=0)250gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液165gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、メタノールを加え、式(14)で示される縮環構造含有エポキシ樹脂250gを得た。この樹脂のエポキシ当量は270g/eqであった。
【0165】
【化35】

【0166】
【化36】

【0167】
(合成例4)ビスキシレノールキサンテン型エポキシエステル化合物の合成
300ml四つ口フラスコ中に、合成例3で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂230g(エポキシ当量270g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド600mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール56mg、およびアクリル酸71gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。淡黄色透明で固体状のビスキシレノールキサンテン型エポキシエステル化合物(1.b)を得た(一般式(1)において、Aが上記式(5)である二価基であり、R1〜2=CH、R=エテニル基(CH=CH)、p1〜2=0、q1〜2=2、m=0、m=0、s=0)。
【0168】
【化37】

【0169】
(合成例5)縮環構造含有エポキシ樹脂の合成
式(15)で示されるビスフェノールアントロン240gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液165gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、メタノールを加えることで、式(16)で示される、ビスフェノールアントロン型エポキシ樹脂240gを得た。この樹脂のエポキシ当量は270g/eqであった。
【0170】
【化38】

【0171】
(合成例6)ビスフェノールアントロン型エポキシエステル化合物の合成
300ml四つ口フラスコ中に、合成例5で得られたビスフェノールアントロン型エポキシ樹脂220g(エポキシ当量270g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド600mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール56mg、およびアクリル酸71gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。淡黄色透明で固体状のビスフェノールアントロン型エポキシエステル化合物(1・c)を得た(上記一般式(1)において、Aが上記式(6)である二価基であり、R=エテニル基(CH=CH)、p1〜2=0、q1〜2=0、m=0、m=0、s=0)。
【0172】
【化39】

【0173】
(合成例7)縮環構造含有エポキシ樹脂の合成
式(34)で示されるビスクレゾールフルオレン350gをエピクロロヒドリン257gに溶解し、80℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液243gを10時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続した。その後、反応液にトルエン1500gと水300gを添加し、生成した塩を水に溶解させ、分液後、下層の水層を除去した。さらに上層のトルエン層水洗した後、溶媒を減圧下留去し、式(35)で示されるビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂420gを得た。この樹脂のエポキシ当量は320g/eqであり、下記式(35)におけるpについて、p=0が50%、p=1が30%、p=2が15%、p=3が3%、p=4が2%の混合物であった。
【0174】
【化40】

【0175】
(合成例8)ビスクレゾールフルオレン型エポキシエステル化合物の合成
300ml四つ口フラスコ中に、合成例7で得られたビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂200g(エポキシ当量320g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド600mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール56mg、およびアクリル酸45gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで20時間を要した。下記式で示される、淡黄色透明で固体状のビスクレゾールフルオレン型型エポキシエステル化合物(1・d)を得た(一般式(1)において、Aが上記式(17)である二価基であり、R1〜4=CH、R=エテニル基(CH=CH)、p1〜4=0、q1〜4=1、m1〜4=0であり、sについては、s=0が50%、s=1が30%、s=2が15%、s=3が3%、s=4が2%の混合物であった)。
【0176】
【化41】

【0177】
(合成例9)縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−a)の合成
2Lのセパラブルフラスコに、合成例2で得られたビスフェノールキサンテン型エポキシエステル化合物(1・a)の3−メトキシブチルアセテート溶液(固形分56.2%)1230.8gに、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)170.8gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)87.2gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂の3−メトキシブチルアセテート溶液を得た(A1−a)。
【0178】
(合成例10)縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−b)の合成
300mLのセパラブルフラスコに、合成例4で得られたビスキシレノールキサンテン型エポキシエステル化合物(1・b)の3−メトキシブチルアセテート溶液(固形分56.2%)103.6gに、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)24.4gおよび臭化テトラエチルアンモニウム1.7gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)13.6gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶性樹脂の3−メトキシブチルアセテート溶液を得た(A1−b)。
【0179】
(合成例11)縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−c)の合成
2Lのセパラブルフラスコに、合成例6で得られたビスフェノールアントロン型エポキシエステル化合物(1・c)の3−メトキシブチルアセテート溶液(固形分55.4%)1240.7gに、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)174.0gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)89.9gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂の3−メトキシブチルアセテート溶液を得た(A1−c)。
【0180】
(合成例12)縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2−a)の合成
300mLのセパラブルフラスコに、合成例4で得られたビスキシレノールキサンテン型エポキシエステル化合物(1・b)の3−メトキシブチルアセテート溶液(固形分58.3%)70gに、ジトリメチロールプロパン8.0g、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)14.1gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)7.5gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の3−メトキシブチルアセテート溶液を得た(A2−a)。
【0181】
(合成例13)縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−d)の合成
2Lのセパラブルフラスコに、合成例8で得られたビスクレゾールフルオレン型エポキシエステル化合物(1・d)の3−メトキシブチルアセテート溶液(固形分50.0%)500gに、無水ピロメリット酸(PMDA)43.3gとヘキサハイドロ無水フタル酸(HHPA)33.4gとを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂の3−メトキシブチルアセテート溶液を得た(A1−d)。
【0182】
(合成例14)縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2−b)の合成
2Lのセパラブルフラスコに、合成例8で得られたビスクレゾールフルオレン型エポキシエステル化合物(1・d)の3−メトキシブチルアセテート溶液(固形分50.0%)500gに、トリメチロールエタン5.0g、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)71.8gとを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂の3−メトキシブチルアセテート溶液を得た(A2−b)。
【0183】
(合成例15)含フッ素ポリエーテル化合物(B1)の合成
窒素雰囲気下、500ml四ツ口フラスコに、式(b−1)で表されるパーフルオロポリエーテルアルコール:
【0184】
【化42】

【0185】
を20.2g、ピリジンを1.1g、パーフルオロメチルシクロヘキサン50ml、メチルエチルケトン(MEK)10mlを仕込み、5℃以下に氷冷し、系内を窒素置換した。次に、滴下漏斗に入れたアクリル酸クロライド(CH=CHCOCl)1.2gをMEK10mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2時間撹拌を継続した。反応終了後、反応溶液を分液漏斗に入れ、水、塩酸、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに有機相を減圧留去後、減圧下70℃で終夜乾燥し、無色透明の飴状液体(B1)19.3gを得た。
【0186】
【化43】

【0187】
(合成例16)含フッ素ポリエーテル化合物(B2)の合成
窒素雰囲気下、500ml四ツ口フラスコに、式(b−2)で表されるパーフルオロポリエーテルアルコール:
【0188】
【化44】

【0189】
を20.2g、パーフルオロメチルシクロヘキサン50ml、メチルエチルケトン(MEK)10ml、ジブチルスズジラウレート0.01gを仕込み、2−イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工株式会社製 カレンズ(R)AOI)1.5gをMEK10mlに溶解したものを50〜60℃で、約10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2時間撹拌を継続した。反応終了後、赤外分光光度計にて、2300cm−1付近に観察されるイソシアネート結合に由来する吸収が消失している事を確認し、固形分が25%の無色透明の飴状溶液(B2)80gを得た。
【0190】
【化45】

【0191】
(合成例17)含フッ素ポリエーテル化合物(B3)の合成
窒素雰囲気下、500ml四ツ口フラスコに、式(b−3)で表されるパーフルオロポリエーテルアルコール:
【0192】
【化46】

【0193】
を21.1g、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート4.9g、パーフルオロメチルシクロヘキサン50ml、メチルエチルケトン(MEK)10ml、ジブチルスズジラウレート0.01gを仕込み、ポリメリックMDI(三井化学ポリウレタン株式会社製コスモネートM−200)10.1gをMEK10mlに溶解したものを50〜60℃で、約10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2時間撹拌を継続した。反応終了後、赤外分光光度計にて、2300cm−1付近に観察されるイソシアネート結合に由来する吸収が消失している事を確認し、固形分が35%の淡褐色透明の飴状溶液(B3)80gを得た。
【0194】
【化47】

【0195】
上記構造式(36)は含フッ素ポリエーテル化合物(B3)の代表構造であり、フッ素ポリエーテル含有基、メタアクロイルオキシ基含有基とベンゼン環の結合位置や数が異なる、複数の構造を有する化合物の混合物である。
【0196】
(比較合成例)ビスフェノールA型アルカリ可溶性樹脂の合成(RF1)
2Lのセパラブルフラスコに、EB3700(ダイセル・ユーシービー株式会社製ビスフェノールAタイプ基本エポキシアクリレート)の3−メトキシブチルアセテート溶液1100.9g、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)145.6gを仕込み、これを徐々に昇温して110〜115℃で12時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)79.6gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。このようにして、アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の溶液(RF1)を得た。
【0197】
[撥液性樹脂組成物及び該樹脂組成物を含有する感放射線性樹脂組成物の調製1]
表1に示した比率に従って配合し、撥液性樹脂組成物を調製した。
【0198】
【表1】

*1 HEMA:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
*2 3−MBA:3−メトキシブチルアセテート
*3 イルガキュア907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
*4 BR:2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート(含フッ素ポリエーテルではないフッ素化合物)
【0199】
[撥液性樹脂組成物及び該樹脂組成物を含有する感放射線性樹脂組成物の調製2]
アルカリ可溶性樹脂溶液(A1−a)200重量部、含フッ素ポリエーテル化合物(B2)10重量部、イルガキュアOXE−02(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アセテート)5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート30重量部、3−メトキシブチルアセテート385重量部を混合した樹脂溶液を得た。次に、カーボンブラックMA100(三菱化学社製)125重量部、顔料分散剤アジスパーPB711(味の素ファインテクノ株式会社製)85重量部、メチルイソブチルケトン260重量部、p−キシレン50重量部をペイントシェーカーを使用して混合し、カーボンブラック分散体溶液を得た。さらに、上記樹脂溶液とカーボンブラック分散体溶液とを混合し、メディアとして0.5mmジルコニアビーズ(充填率70%)を使用し、ビーズミルにて約1時間分散させ、カーボンブラック分散型の感放射線性樹脂組成物(配合番号19)を得た。
【0200】
上記、配合番号19の調製において、アルカリ可溶性樹脂溶液(A1−a)200重量部を(A1−d)225重量部、含フッ素ポリエーテル化合物(B2)10重量部を(B3)8重量部、3−メトキシブチルアセテート385重量部を410重量部とした以外は配合番号19の調製方法と同じ方法にてカーボンブラック分散型の感放射線性樹脂組成物(配合番号20)を得た。
【0201】
[製膜]
製膜は、表1に示した各組成物を用い、(i)スピンナーを用いてガラス基板上に塗布する塗布工程、(ii)塗膜から溶剤を除去するプリベーク工程、(iii)塗膜を硬化させる露光工程、(iv)未硬化の塗膜を除去する現像工程、(v)現像後の基板を乾燥する乾燥工程の5つの工程を通して行い(図1)、膜厚が約1μmの塗膜を有する基板を作成し、撥液性の評価に供した。
各工程の条件による影響を把握するため、表2に示す条件に従い、スピナーで塗布してから、プリベークを行うまでの時間(WT1)、プリベークの時間(PBTi)、プリベークの温度(PBTm)、プリベークしてから、露光までの待ち時間(WT2)の条件を変えて製膜を行い、得られた塗膜について評価を行った。
【0202】
【表2】

【0203】
[撥液性の評価]
本発明の撥液性樹脂組成物を使用して硬化した塗膜について、膜表面のみが撥液性を有することを確認するため、上記製膜プロセスにおいて、露光時の紫外線の照射量を少なくし、さらに基板の後ろ側より行うこと(裏面露光)により、塗膜内部のみを硬化させ、塗膜表面を現像処理により除去した基板を作成し、同様に接触角の測定を行った。
このような裏面露光の条件で製膜を行うと、塗膜表面は硬化しないため、撥液成分が塗膜表面だけに存在する場合、撥液性が失われる。撥液成分が塗膜内部に残存している場合は、塗膜表面が失われても撥液性が保持される。
尚、図2は通常の露光方法、図3は裏面露光を模式的に説明した図である。
【0204】
また、(iii)の露光工程では、250Wの高圧水銀ランプを使用して、通常の露光方法では現像工程後の残膜率が100%となる様に、また、裏面露光では、現像工程後の残膜率が約90%となるように紫外線を照射した。
また、(iv)の現像工程においては、0.4重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて23℃で60秒間の現像処理を行い、超純水でリンス処理を行った。更に、(v)の乾燥工程においては、得られた薄膜を有する基板を130℃、2分間の条件にて乾燥させた。
【0205】
本発明の撥液性樹脂組成物の撥液性の指標として、水及び有機溶媒に対する接触角を測定した。有機溶媒は、ヘキサンを用いた。接触角の測定は、協和界面化学社製接触角計CA−D型を使用して測定を行った。
【0206】
【表3】

【0207】
【表4】

【0208】
実施例1〜60(いずれの組成物も表面から露光した場合)において、塗膜の接触角は、水では100〜109°であり、有機溶媒(ヘキサン)では41〜51°と、製膜条件によらず、いずれも高レベルの撥液特性を示した。また、裏面から露光した場合、有機溶媒(ヘキサン)では接触角は7〜14°であり、水では38〜48°であり、いずれに対しても表面露光の場合に比べて接触角が大幅に低下した。表面から露光した実験では、膜全体を硬化させているため、塗膜表面に存在している含フッ素ポリエーテル化合物(B)により撥液性を示す。一方裏面から露光した場合、塗膜は基板側から硬化するので膜表面は未硬化のままであり、表面に存在していた含フッ素ポリエーテル化合物(B)は現像時に除去され、撥液性を示さなくなるものと考えられる。
これらの結果より、本発明の樹脂組成物は、塗膜表面のみを撥液化出来ることがわかる。
一方、比較合成例の樹脂や含フッ素ポリエーテル化合物ではないフッ素化合物を含む比較例1〜15においては、同じ組成物を使用しているにもかかわらず、プロセスの違いにより接触角値は大きく変わり、撥油性は製膜条件に大きく影響することがわかった。また、表面露光と裏面露光での接触角の差が小さいものもあり、このことは、撥液性を付与するフッ素成分が膜内部にも存在していることを示している。
このように、本発明の撥液性樹脂組成物を使用することにより、膜表面のみを安定的に撥液化した塗膜を得ることが出来ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明によれば、製膜プロセス条件の影響を受けず、常に安定して高いレベルの撥液性を有する塗膜を得ることが可能であり、撥液性が要求される、インクジェット方式の液晶用カラーフィルタ又は有機ELディスプレイ等の隔壁、半導体装置又は電気回路における配線パターンの製造等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0210】
1 ガラス基板
2 樹脂層(未硬化)
3 フッ素成分の含有量が多い樹脂層(未硬化)
4 樹脂層(硬化)
5 フッ素成分の含有量が多い樹脂層(硬化)
6 露光機光源



【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)として、下記一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物:
【化1】

(ここでD1〜4は各々独立して、下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【化2】

ここでD5〜6は各々独立して、一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【化3】

ここで、前記一般式(1)、(2)のAは、五員環または六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6はそれぞれ独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、前記一般式(1)、(2)、(3)のRは単塩基性カルボン酸に由来する部位を含む基を示し、R8〜15は各々独立して水素原子またはメチル基を示し、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜15、D1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。)と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを、反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)とを含む撥液性樹脂組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)、(2)のAは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基である請求項1に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)、(2)のAは、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と2つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基である請求項1に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)、(2)のAは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と2つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基である請求項1又は2に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項5】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)として、下記一般式(1)で表されるエポキシエステル化合物:
【化4】

(ここでD1〜4は各々独立して、下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【化5】

ここでD5〜6は各々独立して、一般式(2)若しくは下記一般式(3)から選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【化6】

ここで、前記一般式(1)、(2)のAは、五員環または六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6はそれぞれ独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、前記一般式(1)、(2)、(3)のRは単塩基性カルボン酸に由来する部位を含む基を示し、R8〜15は各々独立して水素原子またはメチル基、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜15、D1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。)、多価アルコール、並びに、多塩基性カルボン酸若しくはその無水物を反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)と、含フッ素ポリエーテル化合物(B)とを含む撥液性樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)、(2)のAは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基である請求項5に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)、(2)のAは、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と2つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基である請求項5に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(1)、(2)のAは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と2つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基である請求項5又は6に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項9】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1)が、下記一般式(4)で表されるエポキシエステル化合物と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A1−1)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【化7】

ここでA、R1〜4、R、R8〜11、q1〜4、m1〜4、sは前記と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜11は同一でも良いし、異なっていても良い。
【請求項10】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2)が、下記一般式(4)で表されるエポキシエステル化合物、多価アルコール、並びに、多塩基性カルボン酸若しくはその無水物を反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A2−1)であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【化8】

ここでA、R1〜4、R、R8〜11、q1〜4、m1〜4、sは前記と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜11は同一でも良いし、異なっていても良い。
【請求項11】
一般式(1)、(2)のAが、式(5)〜(7)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である請求項1、2、4、5、6及び8のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【化9】

【請求項12】
一般式(4)のAが、式(5)〜(7)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である請求項9又は10に記載の撥液性樹脂組成物。
【化10】

【請求項13】
一般式(1)、(2)のAが、式(8)及び(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である請求項1、2、5及び6のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【化11】

【請求項14】
一般式(4)のAが、式(8)及び(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である請求項9または10に記載の撥液性樹脂組成物。
【化12】

【請求項15】
一般式(1)、(2)のAが、式(17)で表される縮環構造を含む二価基である請求項1、3、5及び7のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【化13】

【請求項16】
一般式(4)のAが、式(17)で表される縮環構造を含む二価基である請求項9又は10に記載の撥液性樹脂組成物。
【化14】

【請求項17】
含フッ素ポリエーテル化合物(B)が下記一般式(18)〜(20)からなる群から選ばれる構造を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【化15】

式中R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29およびR30は各々独立して水素、Fまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、x、y、zは各々独立して0以上の整数であり、(B)に含有されるx+y+zが2以上の整数である。但し、R19及びR20のうち少なくとも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、R21〜R24のうち少なくとも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基であり、R25〜R30のうち少なくも一つはFまたは炭素数20以下の含フッ素アルキル基である。
【請求項18】
縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)と含フッ素ポリエーテル化合物(B)の少なくとも一つが、光、又は熱で重合可能な不飽和基を含有する請求項1〜17のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項19】
含フッ素ポリエーテル化合物(B)の含有量が、縮環構造含有アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部である請求項1〜18のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1〜19に記載のいずれか1項に記載の撥液性樹脂組成物と光重合開始剤(C)とを含有する感放射線性樹脂組成物。
【請求項21】
更に、カーボンブラック、チタンブラック、黒色金属酸化物顔料、及び有機顔料からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項20に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−242783(P2009−242783A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42986(P2009−42986)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】