説明

撮像システムおよび撮像システムの駆動方法

【課題】 S/N比の向上ならびにダイナミックレンジを拡大することのできる撮像システムを提供することを目的とする。さらに、これに適した撮像システムの駆動方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 行列状に配列された複数の画素と、複数の画素の各列に設けられた列増幅部と、列増幅部で増幅されたことに基づく画像信号を出力する出力部と、を有する固体撮像素子と、画像信号を受ける信号処理部と、を備える撮像システムにおいて、列増幅部は、画素から出力される一の信号を1よりも大きいq倍のゲインで増幅し、信号処理部はq倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号に対して、1を下回る倍率をかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムおよび撮像システムの駆動方法に関する。特に、ダイナミックレンジの拡大とS/N比の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置においては、S/N比の向上や、ダイナミックレンジの拡大が求められる。このような要求に対し、特許文献1では画素信号のレベルを検出する検出回路と増幅回路とを行列状に配列された画素の列毎に設け、画素信号に対するゲインを画素毎に制御している。これにより、S/N比を保ちながらダイナミックレンジを拡大するとしている。
【0003】
また、特許文献2では、撮像素子からの出力信号を増幅する増幅器を設けている。相対的に明るい領域の信号は撮像素子からの出力信号をAD変換したデータを、そして相対的に暗い領域の信号はより高い増幅率で増幅された信号をAD変換したデータを用いてはめ込み合成を行っている。これにより撮像素子のダイナミックレンジを有効に利用することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−015701号公報
【特許文献2】特開平06−070222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、画素からの画素信号を検出するための検出回路を画素の各列に設けているので、固体撮像装置の占める面積が増大する。さらに、画素毎に検出を行うために消費電力の増大は免れない。
一方、特許文献2に開示される技術では、撮像素子から出力された信号のS/N比は変化することがない。また、撮像素子自体のダイナミックレンジも拡大されることはない。
上述の問題点に鑑みて、本発明はS/N比の向上ならびにダイナミックレンジを拡大することのできる撮像システムを提供することを目的とする。さらに、これに適した撮像システムの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面である撮像システムは、行列状に配列された複数の画素と、前記複数の画素の各列に設けられた列増幅部と、前記列増幅部で増幅されたことに基づく画像信号を出力する出力部と、を有する固体撮像素子と、前記画像信号を受ける信号処理部と、を備える撮像システムであって、前記列増幅部は、前記画素から出力される一の信号に対して1よりも大きいq倍のゲインで増幅し、前記信号処理部は前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号に対して、1を下回る倍率をかけることを特徴とする。
【0007】
本発明の別の一側面である撮像システムの駆動方法は、行列状に配列された複数の画素と、前記複数の画素の各列に設けられた列増幅部と、前記列増幅部で増幅されたことに基づく画像信号を出力する出力部と、を有する固体撮像素子と、前記画像信号を受ける信号処理部と、を備える撮像システムの駆動方法であって、前記画素から出力される一の信号を前記列増幅部によってq倍のゲインで増幅する工程と、前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号に対して、前記信号処理部によって1を下回る倍率をかける工程と、を含むこと特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体撮像素子から出力される信号のS/N比を向上し、固体撮像素子のダイナミックレンジを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る撮像装置の概略構成を表す図
【図2】本発明の原理を説明するための図
【図3】第1の実施形態に係る固体撮像素子の概略構成を示す図
【図4】第1の実施形態に係る等価回路図
【図5】第1の実施形態に係る固体撮像素子のタイミング図
【図6】第1の実施形態に係る撮像システムの概略を表すブロック図
【図7】第1の実施形態に係るビット変換部の構成例を示す図
【図8】第1の実施形態に係るγ処理の概念を表す図
【図9】第2の実施形態に係る固体撮像素子の概略構成を示す図
【図10】第2の実施形態に係る固体撮像素子のタイミング図
【図11】第3の実施形態に係る固体撮像素子の概略構成を示す図
【図12】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の概略構成を示す図
【図13】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の原理を説明する。
【0011】
図1は、固体撮像素子の概略構成を表した図である。固体撮像素子1は、画素101が行列状に配列された画素部10と、列増幅部102、出力部103とを備える。画素101は、光電変換素子を含み、光電変換素子で発生した電荷を電圧信号に変換して出力する画素出力部や、画素101を選択するための画素選択部などをさらに備えていても良い。なお、図の簡略化のために画素101は4個しか示していないが、実際にはm行×n列の画素101があるものとする。列増幅部102は、画素101の各列に対応して設けられた列増幅部102を含む。各列増幅部102は、ゲインを可変に設定できる。出力部103は、例えば出力アンプを含むもので、出力アンプ1031を介して固体撮像素子1の外部へと信号が出力される。同じ列に設けられた画素101は同一の垂直信号線VLを介して列増幅部102に接続されている。垂直走査回路104により画素101が選択されると、画素101から垂直信号線VLに信号が出力され、列増幅部102で増幅される。当該増幅部102の出力ノードと水平信号線HLとを接続するスイッチが水平走査回路105により導通されると、列増幅部102で増幅された信号は出力アンプ1031を介して固体撮像素子1の外部へと出力される。タイミング生成部106は、垂直走査回路104や水平走査回路105に信号を供給するもので、さらに、列増幅部102のゲインを制御する信号を供給しても良い。なお、タイミング生成部106は固体撮像素子1の外部に設けても良い。
【0012】
図1に示す固体撮像素子1において、列増幅部102のゲインが1倍であるときの、画素101に入射する光量に対する、固体撮像素子1から出力される信号成分との関係を、横軸に入射光量、縦軸に固体撮像素子1の出力の大きさを取って図2(A)の「信号(×1)」で示した。入射光量がIsat(×1)を超えると、出力は飽和してVsatとなる。ここでは、飽和レベルVsatは、列増幅部102の飽和レベルであっても、出力部103の飽和レベルであっても、以下の議論は適用できる。図中、破線は画素101に起因して生じる画素ノイズnを示し、一点鎖線は出力部103に起因する出力ノイズNを示している。画素ノイズnは、例えば画素に含まれる画素出力部や画素選択部で発生するノイズなどが考えられる。より具体的には、画素出力部が、垂直信号線VLに設けられた定電流源とでソースフォロワ回路を構成するような場合において、定電流源を流れる電流値の時間的な揺らぎなどが画素ノイズnの要因となりうる。出力ノイズNには、例えば出力アンプ103を駆動することで発生するノイズが含まれる。なお、画素ノイズnならびに出力ノイズNは、常に一定のレベルのノイズとなるわけではなく、時間によって変動する。図2(A)では、それぞれのノイズが時間的に変動したときの最大レベルを示している。
【0013】
図2(A)に示すように、列増幅部102におけるゲインが1倍であるときには、一般に出力ノイズNの方が画素ノイズn(×1)よりも大きいので、出力ノイズNが支配的となる。つまり、信号(×1)が出力ノイズNよりも小さくなるような入射光量を受けた画素101からの信号は、出力ノイズNの影響のために固体撮像素子1から正しく取り出すことができない。例えば、固体撮像素子1から出力される出力のレベルがv0であったとする。出力v0が出力されたタイミングにおいてはノイズのレベルが小さく、入射光量に正しく対応したレベルであるかもしれないし、本来はv0よりも小さいレベルの出力が得られるにも関わらず、ノイズの影響で出力がv0になっているのかもしれない。なお、出力ノイズNが画素ノイズnよりも大きいのは、一般に画素の走査はライン単位で行われるために出力部よりも前の領域は比較的低速で駆動し、かつ狭帯域であるのに対して、出力部はより高速で駆動し、かつ広帯域であるためである。
【0014】
図2(A)において、信号(×1)を得たのと同一の画素から出力された信号に対して、列増幅部102によりG倍のゲインをかけることを考える(G>1)。このときの入射光量と固体撮像素子1からの出力との関係を図2(A)中の「信号(×G)」で示した。信号(×G)は、信号(×1)よりも少ない入射光量Isat(×G)で飽和出力Vsatになる。言い換えると、列増幅部102のゲインが大きいほど、入射光量に対する固体撮像素子1の出力を表す直線の傾きが大きくなる。また、列増幅部102のゲインを変えることで、信号成分のみならず、画素ノイズnもG倍のゲインで増幅されるが、出力ノイズNは列増幅部102のゲインに依存しない。そのため、列増幅部102のゲインを高くすると、増幅された画素ノイズnが出力ノイズNを上回るようになる。つまり、列増幅部102のゲインをG倍にすることで増幅された画素ノイズnが支配的となり、出力ノイズNが相対的に小さくなる。したがって、列増幅部102のゲインが1の時には支配的であった出力ノイズNのために正しく取り出すことができなかった入射光量での信号を取り出すことができるようになる。列増幅部102のゲインをG倍にすることで取り出すことができるようになった入射光量の範囲をAとして示している。つまり、入射光量の範囲Aの分だけ固体撮像素子1のダイナミックレンジが拡大したことと同義に扱える。
【0015】
そこで、入射光量が0からIaまでの範囲は信号(×G)を、入射光量がIaより大きい領域では信号(×1)を利用することが考えられるが、入射光量Iaを境に信号レベルが大きく変化してしまう。そのため、固体撮像素子1から出力された信号(×G)を、信号処理部である外部の処理回路で1/G倍する。この様子を図2(B)に示す。信号(×G)は信号(×G・1/G)となり、信号(×1)の特性と一致する。同様にして、画素ノイズn(×G)は1/G倍されることで画素ノイズn(×1)と一致する。一方で、出力ノイズNは、列増幅部のゲインをG倍にしても変化しないので、固体撮像素子1の外部に設けられた処理回路で1/G倍すると、出力ノイズN(1/G)になる。つまり、外部の処理回路で1/G倍することにより、入射光量が0からIsatまでの範囲における出力ノイズNによるノイズ成分が低減されることにより、信号(×1)よりも信号(×G・1・G)の方が出力ノイズNに対するS/N比が高い信号となる。
【0016】
また、図2(B)のように、Isat(×G)がIaよりも大きい場合には、入射光量がIaからIsat(×G)の範囲についても信号(×G・1/G)を利用することでS/N比の高い信号を得ることができる。入射光量がIsat(×G)までの領域は、被写体が相対的に暗い状態であるので、S/N比が向上することの効果は特に顕著である。
【0017】
以上で説明したことをまとめたものが図2(C)である。入射光量が0からIsatまでの範囲では信号(×G・1/G)を利用し、入射光量がIsatよりも大きい範囲では信号(×1)を利用する。入射光量がIsatの点についてはどちらを利用しても良いが、信号(×G・1/G)の方がより高いS/N比となるので、信号(×G・1/G)を用いることが好ましい。出力ノイズと画素ノイズに着目すると、入射光量が0からIsatまでの範囲では出力ノイズNよりも画素ノイズn(×1)の方が支配的となり、入射光量がIsatよりも大きい範囲では出力Nが画素ノイズn(×1)よりも支配的となる。なお、図2(C)においてAで示した入射光量の範囲よりも入射光量が少ない範囲においては、信号(×G・1/G)が画素ノイズn(×1)よりも小さいレベルになってしまう。したがって、固体撮像素子1から出力される信号が有効であるのは、入射光量がIbよりも大きい範囲に限られる。しかし、先述のように出力ノイズや画素ノイズは時間的な揺らぎを持っており、その最大レベルを図2では示している。動画のように連続的に画像を取得すると、ノイズ成分が平均化されるので、全体としては画素ノイズnよりも低いレベルになる。このため、信号(×G・1/G)が画素ノイズn(×1)よりも小さい領域の画像の一部を認識できるようになる。つまり、本発明によって入射光量の小さい範囲における出力ノイズNを抑圧することで、図2(B)における画素ノイズn(×1)よりも低いレベルの入射光量であっても、画像としては認識できる可能性が高まるという効果がある。
【0018】
また、上記の説明においては、1の画素から出力される信号に対して2種類のゲインで増幅するものを説明した。しかし、本発明の思想に従えば、1の画素から出力される信号に対して3種類以上のゲインで増幅してもよいことは明らかである。これにより、より広範な入射光量の範囲に対してS/N比の向上が実現できる。
【0019】
また、列増幅部102における増幅率を1倍とG倍に設定する場合を例に取って説明したが、増幅率の組み合わせを限定するものではない。例えば、2倍と16倍との組み合わせや、0.5倍と4倍の組み合わせなどでもよい。
【0020】
また、上記説明では、G倍で増幅した信号に対して1/G倍、すなわち列増幅部におけるゲインの逆数をかける処理を行った。しかし、これは異なるゲインで増幅して得られた2つの信号の特性を合わせる(図2における同一直線に乗るようにする)ためのものであるので、必ず1/G倍しなければならないものではない。例えば一の信号を列増幅部102で2倍および16倍のゲインで増幅した場合には、16倍のゲインで増幅することで得られた信号を1/8倍すればもう一方の信号と特性を合わせることができる。また、2倍のゲインで増幅することで得られた信号を1/2倍し、16倍のゲインで増幅することで得られた信号を1/16倍しても特性を合わせることができる。
【0021】
なお、ダイナミックレンジを拡大し、さらにS/N比を向上するという目的は2つの信号について上記特性を合わせなくても達成できる。1倍とG倍のゲインで増幅された2つの信号のうち、G倍のゲインで増幅された信号に対して、1/G倍ではなく、たとえば1/(2G)倍であっても出力ノイズNを低減することは可能なので、ダイナミックレンジを拡大し、さらにS/N比を向上することができる。ただし、この場合には、図2(C)におけるIsat(×G)を境に特性の連続性がなくなる(オフセットが生じる)ので、オフセット補正を行うことが望ましい。
【0022】
以上のことをまとめると、ある画素から出力された一の信号から、列増幅部によってp倍のゲインで増幅した信号とq倍のゲインで増幅信号とを得る。ここで、p<qであり、1<qであるとする。さらに、高いゲインであるq倍のゲインで増幅された信号に基づいて固体撮像素子から出力される画像信号に対して、1を下回る倍率をかける処理を行う。これによって、ダイナミックレンジが拡大し、さらにS/N比を向上させることができる。
【0023】
また、1を下回る倍率をp/q倍とすることで、p倍のゲインで増幅された信号と特性を合わせることができる。仮にp倍のゲインで増幅された信号に対してさらにrの倍率をかける場合には、1を下回る倍率を(p/q)×rとすることで2つの信号の特性を合わせることができる。つまり、1を下回る倍率がp/qを約数に持つ値であればよい。
【0024】
比較のために特許文献2に開示される技術について検討する。特許文献2においては、信号を増幅する手段が撮像素子の外部に設けられている。つまり、図2における出力ノイズNも増幅されてしまうので、S/N比は改善せず、また、ダイナミックレンジが拡大されることもない。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の構成例を図3に示す。図1と同じ構成については同じ符号を付している。固体撮像素子1は、出力部103に信号保持部107を備える。
【0026】
図3における1つの画素101に関して、出力アンプ1031までの構成をより詳細に示した等価回路図が図4である。
【0027】
画素101は光電変換素子であるフォトダイオードPDと、フォトダイオードに蓄積された電荷を、画素出力部SFを構成するMOSトランジスタのゲート端子に転送する転送部TXを含む。画素出力部SFの入力部であるゲート端子は、リセット部RESを介して電源VDDと接続されている。さらに、画素出力部SFのソース端子は画素選択部SELを介して列増幅部102の入力容量C0の一方の端子と接続されると共に、定電流源Iconstにも接続される。
【0028】
列増幅部102はオペアンプAmpを備える。オペアンプAmpの反転入力端子は入力容量C0の他方の端子と接続される。オペアンプAmpの反転入力端子と出力端子とを、帰還容量C1、C2、C3がそれぞれスイッチを介して接続するように設けられている。さらに、オペアンプAmpの反転入力端子と出力端子とを短絡するスイッチが設けられている。オペアンプAmpの非反転入力端子には電源Vrefが与えられる。画素101から垂直信号線VLに出力された信号に対しては、オペアンプAmpの帰還経路に接続される帰還容量C1、C2、C3の容量値と、入力容量C0の容量値との比で決定されるゲインがかかって増幅される。ここでは、帰還容量C1、C2およびC3の容量値はそれぞれ入力容量C0の容量値の1倍、1/8倍および1/16倍とする。つまり、本実施例においては各列増幅部にゲインが可変である列増幅器を備えている。後述するが、画素に起因するノイズが入力容量C0で低減される。ここでは入力容量C0、オペアンプAmp、信号φCが入力されるスイッチとを含めて第1のCDS(Correlated Double Sampling;相関二重サンプリング)回路とする。
【0029】
列増幅部102で増幅された信号は、保持容量CTS1、CTN1、CTS2、CTN2に選択的に伝達されて保持される。保持容量CTS1およびCTS2には、フォトダイオードPDで光電変換されることで得られる電荷に基づく信号が保持され、保持容量CTN1およびCTN2には、画素出力部SFをリセットしたことに基づく信号が保持される。保持容量CTS1、CTN1、CTS2、CTN2はそれぞれ異なる水平信号線HLn(nは1〜4)に接続される。保持容量CTS1およびCTN1に保持された信号は、それぞれスイッチを介して差動増幅器D.Amp1の異なる入力端子に接続される。保持容量CTS2およびCTN2に保持された信号は、それぞれスイッチを介して差動増幅器D.Amp2の異なる入力端子に接続される。水平走査回路105から信号φH1、φH2、・・・が入力されると、保持容量CTS1、CTN1、CTS2、CTN2に保持された信号が水平信号線を介して対応する差動増幅器に入力される。差動増幅器D.Amp1からは、保持容量CTS1およびCTN1で保持された信号の差分が出力される。差動増幅器D.Amp2からは、保持容量CTS2およびCTN2で保持された信号の差分が出力される。ここで、保持容量と差動増幅器とを含めて第2のCDS回路とする。第2のCDS回路によって列増幅部に起因するオフセットが低減される。
【0030】
図5を用いて、本実施形態に係る動作を説明する。ここでは、帰還容量C1とC2を用いる場合であり、それぞれの容量値は、入力容量C0の容量値の1倍と1/8倍であるものとする。すなわち、1倍と8倍のゲインで一つの信号を増幅する場合を説明する。また、図4において、TX、RES、SELで示されるスイッチに入力される信号をそれぞれφTX、φRES、φSELで表し、信号がハイレベルである時にスイッチが導通するものとする。また、帰還容量C1、C2、C3とオペアンプAmpの反転入力端子との間に存在するスイッチに与えられる信号をそれぞれφC1、φC2、φC3と表し、信号がハイレベルである時にスイッチが導通するものとする。保持容量CTS1、CTN1、CTS2、CTN2と列増幅部102の出力端子との間にあるスイッチに与えられる信号をそれぞれφCTS1、φCTN1、φCTS2、φCTN2と表し、信号がハイレベルである時にスイッチが導通するものとする。
【0031】
まず、時刻t0において信号φTXおよびφHnを除く信号がハイレベルに遷移する。信号φSELがハイレベルになると画素選択部SELが導通するので、画素出力部のソース端子と定電流源Iconstとが電気的に接続されてソースフォロワ回路が形成される。これにより画素出力部SFのゲート端子の電位に応じたレベルが信号として垂直信号線VLに現れる。このタイミングで信号φRESがハイレベルであるので、垂直信号線VLには、画素出力部SFのゲート端子をリセットしている状態に対応するレベルが現れる。また、信号φC、φC1、φC2、φC3がそれぞれハイレベルになることでオペアンプAmpの反転入力端子と出力端子とが短絡されると共に、帰還容量C1、C2およびC3がリセットされる。オペアンプAmpの仮想接地により、帰還容量C1およびC2の両端子の電位は電源Vrefと同電位と見なせる。信号φCTN1、φCTS1、φCTN2およびφCTS2がハイレベルであるので、オペアンプAmpの出力によって保持容量CTN1、CTS1、CTN2およびCTS2がリセットされる。
【0032】
時刻t1に信号φRESがローレベルに遷移し、画素出力部SFのゲート端子のリセット状態が解除される。このリセット状態の解除に伴って発生するノイズ成分が画素ノイズnの一因である。
【0033】
時刻t2において信号φC1、φC2、φC3、φCTN1、φCTS1、φCTN2およびφCTS2がローレベルになり、それぞれに対応するスイッチが非導通状態になる。
【0034】
その後、時刻t3において信号φCがローレベルに遷移することで、オペアンプの入出力端子の短絡状態が解除される。入力容量C0では、画素出力部SFのゲート端子をリセットしたことに対応するレベルが、Vrefによりクランプされる。
【0035】
時刻t4に信号φC1およびφCTN1がハイレベルになり、時刻t5に信号φCTN1がローレベルになることで、この時の列増幅部102の出力が保持容量CTN1に保持される。ここでは信号φC1がハイレベルであるので、オペアンプAmpの期間経路には帰還容量C1のみが電気的に接続されている。すなわち、列増幅部102のゲインがC0/C1=C0/C0=1となる。保持容量CTN1に保持される信号には、列増幅部102に起因するオフセット成分が含まれる。
【0036】
時刻t6に信号φC1がローレベルに遷移し、時刻t7に信号φC2がハイレベルに遷移することで、オペアンプAmpの帰還経路には帰還容量C2のみが電気的に接続される。つまり、列増幅部102のゲインがC0/C2=C0/(C0/8)=8となる。
【0037】
時刻t7から信号φCTN2がパルス状にハイレベルになり、信号φCTN2がローレベルになると、列増幅部102に起因するオフセット成分を含む信号が保持容量CTN2に保持される。
【0038】
時刻t8に信号φTXがハイレベルに遷移すると、フォトダイオードPDに蓄積されていた電荷が画素出力部SFのゲート端子へと転送される。これにより画素出力部SFのゲート端子の電位が変化するので、垂直信号線VLに現れるレベルも変化する。このとき入力容量C0は浮遊状態にあるので、時刻t1でクランプされた垂直信号線VLのレベルからの電位の変動分のみがオペアンプAmpの反転入力端子に入力される。つまり、クランプ容量よりも前で発生したノイズ成分のうち、時刻t3における垂直信号線VLのレベルと、時刻t8以降のタイミングにおけるレベルとで、相関性のあるノイズ成分はクランプ動作により低減することができる。これにより光電変換に基づく信号がオペアンプAmpに入力される。ただし、定電流源Iconstを流れる電流のゆらぎや、画素出力部SFで発生する1/fノイズと呼ばれるノイズなどは時刻t1と時刻t8とで異なる(相関性がない)ので、クランプ動作により低減することができない。本実施形態においては、このような相関性がないノイズ成分が画素ノイズnに相当する。
【0039】
時刻t8では入力容量C0の容量値の1/8倍の容量値を持つ帰還容量C2のみがオペアンプAmpの帰還経路に存在するので、光電変換に基づく信号は8倍のゲインで増幅されることになる。時刻t8から信号φCTS2がパルス状にハイレベルになっており、列増幅部102で8倍に増幅された信号は信号φCTS2がローレベルに遷移することで保持容量CTS2に保持される。保持容量CTS2に保持される信号には、保持容量CTN2と同様に、列増幅部102に起因するオフセットが含まれる。
【0040】
時刻t9に信号φC2がローレベルに遷移し、時刻t10に信号φC1がハイレベルに遷移することで、オペアンプAmpの帰還経路には帰還容量C1のみが電気的に接続された状態になる。帰還容量C1の容量値は入力容量C0の容量値と同じであるので、列増幅部102に入力される信号は1倍のゲインで増幅される。
【0041】
時刻t10から信号φCTS1がハイレベルになり、これがローレベルに遷移すると、垂直信号線VLに現れたレベルを1倍のゲインで増幅した信号が保持容量CTS1に保持される。ここで保持容量CTS1に保持される信号には、保持容量CTN1と同様に、列増幅部102に起因するオフセットが含まれる。
【0042】
この後、信号φSELがローレベルになることで、画素101の選択状態が解除される。
【0043】
時刻t11から信号φHnが順次ハイレベルとなることで、1行分の画素からの信号が順次差動増幅器D.Amp1およびD.Amp2を介して出力される。各保持容量に保持される信号には、列増幅部102に起因するオフセットが含まれるので、差動増幅器により差分を取ることでオフセット成分を低減することが可能となる。ここでは差動増幅器D.Amp1からは1倍のゲインで増幅された信号S1が、差動増幅器D.Amp2からは8倍のゲインで増幅された信号S2が出力される。信号S1およびS2には、上述の出力ノイズNが含まれる。ここでの信号S1およびS2は、図2における出力Vに対応する。
【0044】
本実施形態においては、各列に列増幅部102が設けられているので、1行分の画素について並列的に処理を行える。つまり、出力アンプ1031と比較してより低速に駆動することができるので、ノイズの発生源となりにくいという利点がある。
【0045】
次に、固体撮像素子から出力された信号をどのように処理するかを説明する。図6に固体撮像素子1を用いた撮像システム100の構成例を示す。
【0046】
固体撮像素子1の差動増幅器D.Amp1およびD.Amp2から出力された信号S1およびS2は、それぞれ対応するゲイン補正回路110に入力される。ゲイン補正回路110は、固体撮像素子1から出力された信号に対してゲイン補正処理を施す。例えば、列増幅部102でのゲインを決定する入力容量C0や帰還容量C1、C2などの容量値は、製造条件のバラツキ等のために必ずしも設計した通りの容量値にならないことがある。このようなバラツキに起因するゲイン誤差を補正するのがゲイン補正回路110となる。ゲイン補正の手法としては、予めメモリに記憶された補正値に基づいて補正することも考えられる。なお、ゲイン誤差が無視できる程度のレベルである場合には、ゲイン補正回路110を省略することも考えられる。
【0047】
ゲイン補正回路110で処理された信号は、アナログ/デジタル変換部(ADC)120にてデジタル信号に変換される。
【0048】
ADC120から出力されるデジタル信号はビット変換部130に入力されてビット変換と呼ぶ処理を施される。ビット変換については詳しくは後述する。
【0049】
ビット変換部130から出力された信号はデジタル信号処理装置(Digital Signal Processor;DSP)140にて例えばγ(ガンマ)補正などが施された上で表示部150に画像として表示されたり、記録部160に記憶されたりする。本実施形態においては、信号処理部がゲイン補正回路110、ADC120、ビット変換部130、DSP140を含むものとする。
【0050】
表示部150は例えばデジタルカメラに設けられた電子ビューファインダー(Electronic View Finder;EVF)のようなディスプレイ装置である。
【0051】
記録部160は半導体メモリや光磁気ディスクのような取り外し着脱可能な記録媒体でもよいし、システムに固定的に取り付けられた記録媒体であってもよい。
【0052】
CPU170は撮像システム100全体の制御を司る回路であり、例えば固体撮像素子1に含まれるタイミング生成部106の動作タイミングや、ゲイン補正回路の設定を行う。
【0053】
図7は、ビット変換部130の構成例を示す図である。ここでは、ADC120−1および120−2はともに12ビットの分解能を有するものとし、出力されるデータをそれぞれDATA1およびDATA2とする。ここでは、ゲインGは8であるとして説明を行う。また、各データDATA1、DATA2、DATA3は、それぞれDa11、Db11、Dc14が最上位ビットであるものとする。図7中、Da0〜Da11、Db0〜Db11はデータDATA1、DATA2の各ビットの出力端子を表し、Dc0〜Dc14はビット変換部130における各ビットの入出力端子を表している。
【0054】
ビット変換部130は、12ビットのデータであるDATA1およびDATA2を選択的に15ビットのデータに変換して出力するもので、列増幅部102において8倍のゲインで増幅された信号に対してそのゲインの逆数をかける演算を施す機能を担う。
【0055】
ビット変換部130の動作をより詳しく説明する。データDATA1は、1倍のゲインで増幅された信号に基づくデータであるので、図2(C)において「信号(×1)」として示された特性に沿った値となっている。データDATA2は、G倍のゲインで増幅された信号に基づくデータであるので、図2(C)において「信号(×G)」として示された特性に沿った値となっている。データDATA2が飽和している、すなわち、データDATA2のビット列が全て1である場合を考える。ところで、図2における固体撮像素子の出力の飽和レベルVsatよりも低い信号レベルをAD変換器の最大値、すなわち飽和レベルとすることが一般的である。これは、図2においては説明を簡単にするために、入射光量に対する出力レベルの特性を、飽和レベルまで直線として扱っていたが、実際には、入射光量Isatの付近では特性が曲線になっているためである。
【0056】
データDATA2が飽和している場合には信号φbがスイッチ群SWに入力されて、ビット変換部130におけるデータ入力端子Dc0〜Dc14のうちDc3〜Dc11までの入力端子がデータDATA1の下位ビットDa0〜Da8と接続されるようになる。データ入力端子Dc0〜Dc2は、固定ビット入力端子CNSTに接続される。固定ビット入力端子CNSTから与えられるビットは0であっても1であってもよい。このようにスイッチ群SWが端子a側に接続されることで、データDATA1に対して3ビットの冗長ビットを下位ビット側に付加することと等しい動作が行われる。付加された下位3ビットは、出力ノイズNによって取り出すことができないレベルに相当するので、0であっても1であっても画像に与える影響は非常に小さい。
【0057】
一方、データDATA2が飽和していない、すなわちデータDATA2のビット列に0が含まれる場合には、信号φbがスイッチ群SWに入力されて、データ入力端子Dc0〜Dc11がデータDATA2のDb0〜Db11と接続されるようになる。データ入力端子Dc12〜Dc14には、データDATA1のDa9〜Da11が接続される。ここではデータDATA2は、データDATA1に対して8倍高いゲインで増幅された信号に基づくデータであるので、データDATA2が飽和しない光量の範囲においては、データDATA1の値はデータDATA2の1/8の大きさになる。つまり、この範囲においてはDa9〜Da11のビットは必ず0になる。したがって、データDATA2が飽和していないときの、ビット変換部130の出力データDATA3は、12ビットのデータDATA2に対して0である冗長ビットを3ビット分だけ上位ビット側に加えて15ビットに変換したデータとなる。つまり、データDATA1の信号に対しては3ビット分(2の3乗分の1=1/8)だけレベルが小さくなるので、図2(c)で示した、×1/G(ここでは×1/8)の動作を行っていることと同義である。
【0058】
以上の動作により、ビット変換部130からは、常に適切な信号が得られる。すなわち、より高いゲインで増幅した信号が飽和していない範囲においてはより高いゲインで増幅した信号に基づくデータが出力され、より高いゲインで増幅した信号が飽和する範囲においてはより低いゲインで増幅した信号に基づくデータが出力される。なお、図7では2つのデータDATA1とDATA2とのゲイン差が8倍である場合に対応するビット変換部の構成例を示したが、ゲイン差が8倍以外の場合や、複数のゲイン差が列増幅部102で設定できる場合にも対応できるように構成できる。図7に示す構成を拡張することができるので、具体的な構成は割愛する。
【0059】
ここで、各データDATA1およびDATA2に付加する冗長ビットの長さについて検討する。データDATA1が、画素からの信号をp倍のゲインで増幅したことに基づくデータであり、データDATA2が、画素からの信号をq倍のゲインで増幅したことに基づくデータであるものとする。ただし、p<qであり、1<qである。このとき、ある入射光量に対するデータDATA2の大きさはデータDATA1に対してq/p倍である。したがって、両データに付加する冗長ビットのビット数をq/pビットとすることで、両データの特性を合わせることができる(図2において同一の特性直線に乗ることと同義)。
【0060】
なお、ビット変換部130に相当する機能ブロックは他の構成要件に対して図6に示す接続関係になっていなくても良い。例えば、ADC120によってAD変換される前に信号S2に対して×1/8の演算を施してもよい。
【0061】
次に、デジタル信号処理装置140において行われるガンマ(γ)補正動作を説明する。図8(a)は入射光量と固体撮像素子1の出力(センサ出力)との関係を、図8(b)はセンサ出力とγ値との関係を示している。
【0062】
図8(a)は図2と同様に、列増幅部102におけるゲインが大きいほど、小さい入射光量で飽和出力に達することを示している。図8(a)におけるセンサ出力を入力として、その信号にかけるγ値を示したものが図8(b)である。ここでは縦軸がゲイン補正回路110、ADC120、ビット変換部130などを経てDSPに入力されるデータに相当し、入力されたデータに対するγ値を横軸に示している。ここでは便宜的にセンサ出力として表している。
【0063】
入射光量I1の光が入射した画素について考える。入射光量I1は、例えば列増幅部102で8倍のゲインをかけても出力が飽和しないレベルのものであるとする。先の説明に従い、入射光量I1は高いゲインをかけた信号が利用される。図8(a)においては、入射光量I1に対して8倍のゲインをかけたときの固体撮像素子からの出力がv1となる(出力A)ことを示している。また、入射光量がI2であるときに列増幅部102でかけるゲインを1倍とすると、センサ出力がv1になる(出力B)。つまり、入射光量が異なっていても、列増幅部102でかけるゲインの値によっては、センサ出力が同じレベルになることがある。
【0064】
センサ出力が同じレベルであれば、そのセンサ出力に対してかけるγ値は同じであることが一般的である。つまり、入射光量がI1であり、列増幅部102でのゲインが8倍であるときのセンサ出力v1と、入射光量がI2であり、列増幅部102でのゲインが1倍のときのセンサ出力v1とで、同じγ値(ここではγ1)をかけることになる。センサ出力としては同じレベルではあるが、出力Aと出力Bとでは、基となる入射光量が異なっているため、両者に同じγ値をかけるような処理を行うと、得られる画像の明るさが不自然になってしまう。これは、列増幅部102でのゲインが8倍であるときのセンサ出力v1に対応する入射光量I1は、列増幅部102でのゲインが1倍のときのセンサ出力v1に対応する入射光量I2よりも小さい(暗い)にも関わらず、両者に同じγ値をかけることになるためである。
【0065】
そこで、本実施形態においては次のようにしてγ値を決定する。図6において、列増幅部102でのゲインが1倍であるときの信号をS1とし、列増幅部102でのゲインが8倍であるときの信号をS2とする。入射光量がI1であり、列増幅部102でのゲインが1倍であるときのセンサ出力をv2として、出力Aに対してかけるγ値は、このセンサ出力v2に対応したγ値をかける。これにより、自然な明るさの画像を得ることができる。
【0066】
上の説明では、信号S1にも信号S2にも、図8(b)に×1で示した特性のγ値をかけているが、列増幅部102でのゲインに応じたγ値の特性を用いると、より好適な明るさの画像を得ることができる。
【0067】
なお、γ値は、例えばルックアップテーブルを用意しておき、DSP140に入力されるデータDATA3の値との比較によって決定するような方法が考えられる。
【0068】
また、本実施形態では、画像信号に対して1を下回る倍率をかける処理を施した後にγ処理を行っているが、1を下回る倍率をかける処理に先立ってγ処理を行ってもよい。
【0069】
以上で説明したように本発明の第1の実施形態によれば、固体撮像素子のダイナミックレンジを拡大することが可能となるとともに、撮像システムのS/N比を向上させることができる。さらに、列増幅部102のゲインに応じたγ値をかける処理をDSP140で行うことにより、好適な画像を得ることができる。
【0070】
本実施形態においては、列増幅部102毎に複数設けられた帰還容量のいずれか1つのみを利用してゲインを決定する場合を例にとって説明したが、オペアンプAmpの期間経路には2つ以上の帰還容量を同時に電気的に接続してもよい。この組み合わせを変えることで列増幅部102のゲインをより多様に切り替えることができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図9を用いて本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるのは、画素の各列に対して列増幅器を複数備えている点である。
【0072】
図9はある画素の列の1画素を抜き出して示したものであるが、垂直信号線VLに対して2つの列増幅部102−1および1021−2が設けられている。ここで列増幅部102−1および102−2の入力容量C0は同じ容量値であるとする。列増幅部102−1および1021−2とでは、オペアンプAmpの反転入力端子と出力端子との間の帰還経路に設けられた帰還容量の大きさが異なる。列増幅部102−1には帰還容量C1およびC2、列増幅部102−2には帰還容量C3およびC4が接続されている。ここで、帰還容量C1、C2、C3、およびC4の容量値は、それぞれ入力容量C0の容量値に対して1倍、1/2倍、1/8倍、1/16倍であるとする。つまり、本実施例では各列増幅部が、互いに異なるゲインを設定可能な列増幅器を備えている。互いに異なるゲインを設定できれば、互いに同じゲインを設定し得るものであってもよい。また、保持容量CTS1とCTS2は信号φCTSにより、そして保持容量CTN1とCTN2は信号φCTNによって制御される。
【0073】
本実施形態に係る動作を、図10を用いて説明する。図10は、行列状に配列された画素のうちのある行の画素について、固体撮像素子から信号を得るタイミング図である。図5と同様の構成に入力される信号には、図5と同じ符号を付している。ここでは、列増幅部102−1のゲインは1倍であり、列増幅部102−2のゲインが8倍である場合を考える。
【0074】
まず、時刻t0において、信号φTXおよびφHnを除く信号がハイレベルに遷移する。信号φSELがハイレベルになると画素選択部SELが導通するので、画素出力部のソース端子と定電流源Iconstとが電気的に接続されてソースフォロワ回路が形成される。これにより画素出力部SFのゲート端子の電位に応じたレベルが信号として垂直信号線VLに現れる。このタイミングで信号φRESがハイレベルであるので、画素出力部SFのゲート端子をリセットしている状態に応じたレベルが垂直信号線VLに信号として現れる。また、信号φC,φC1、φC2、φC3およびφC4がそれぞれハイレベルになることで、各オペアンプAmpの反転入力端子と出力端子とが短絡されると共に、帰還容量C1、C2、C3およびC4がリセットされる。オペアンプAmpの仮想接地により、帰還容量C1およびC3の両端子の電位は電源Vrefと同電位と見なせる。信号φCTNおよびφCTSがハイレベルであるので、オペアンプAmpの出力によって保持容量CTN1、CTS1、CTN2およびCTS2がリセットされる。
【0075】
時刻t1に信号φRESがローレベルに遷移し、画素出力部SFのゲート端子のリセット状態が解除される。このリセット状態の解除に伴って発生するノイズ成分が画素ノイズnの一因となる。
【0076】
時刻t2に、信号φC1、φC2、φC3、φC4、φCTN、φCTSがローレベルに遷移し、それぞれに対応するスイッチが非導通状態になる。
【0077】
時刻t3に、信号φCがローレベルに遷移することで、各オペアンプの入出力端子間の短絡状態が解除される。これにより、入力容量C0では、画素出力部SFのゲート端子をリセットしたことに対応するレベルが、Vrefによりクランプされる。
【0078】
時刻t4に信号φC1およびφCTNがハイレベルになり、時刻t5に信号φCTNがローレベルになることで、この時の列増幅部102−1の出力が保持容量CTN1に、列増幅部102−2の出力が保持容量CTN2に保持される。保持容量CTN1およびCTN2に保持される信号には、対応する列増幅部102に起因するオフセット成分が含まれる。
【0079】
時刻t6に信号φTXがハイレベルに遷移すると、フォトダイオードPDに蓄積されていた電荷が画素出力部SFのゲート端子へと転送される。これにより画素出力部SFのゲート端子の電位が変化するので、垂直信号線VLに現れるレベルも変化する。このとき入力容量C0は浮遊状態にあるので、時刻t1でクランプされた垂直信号線VLのレベルからの変動分のみが各オペアンプの反転入力端子に入力される。つまり、クランプ容量よりも前で発生したノイズ成分はクランプ動作により低減することができ、光電変換に基づく信号が各オペアンプAmpに入力される。本実施形態においても、先述したような相関性がないノイズ成分が画素ノイズnとして残存する。
【0080】
時刻t7から信号φCTSがパルス状にハイレベルとなる。信号φCTSがローレベルになると、保持容量CTS1には列増幅部102−1から出力される信号が、保持容量CTS2には列増幅部102−2から出力される信号が、それぞれ保持される。保持容量CTS1およびCTS2に保持される信号には、保持容量CTN1およびCTN2と同様に、対応する列増幅部102に起因するオフセット成分が含まれる。
【0081】
その後信号φC1およびφC3がローレベルに遷移した後に、時刻t8に信号φSELがローレベルになることで、画素101の選択状態が解除される。
【0082】
時刻t9から信号φHnが順次ハイレベルとなることで、1行分の画素からの信号が差動増幅器D.Amp1およびD.Amp2を介して出力される。各保持容量に保持される信号には、列増幅部102に起因するオフセットが含まれるので、差動増幅器により差分を取ることでオフセット成分を低減することが可能となる。ここでは差動増幅器D.Amp1からは1倍のゲインで増幅された信号S1が、差動増幅器D.Amp2からは8倍のゲインで増幅された信号S2が出力される。信号S1およびS2には、上述の出力ノイズNが含まれる。
【0083】
本実施形態においては、各列に列増幅部102が設けられているので、1行分の画素について並列的に処理を行える。つまり、出力アンプ1031と比較してより低速に駆動することができるので、ノイズの発生源となりにくいという利点がある。
【0084】
固体撮像素子1から出力された信号に対して施される処理は、第1の実施形態と同様のものであってよい。
【0085】
本実施形態によれば、固体撮像素子のダイナミックレンジを拡大することが可能となるとともに、撮像システムのS/N比を向上させることができる。さらに、列増幅部102のゲインに応じたγ値をかける処理をDSP140で行うことにより、好適な画像を得ることができる。特に本実施形態によれば、垂直信号線VLに対してゲインの異なる列増幅器を複数設けているので、並列的に処理できるという利点がある。つまり、高速化に適している。
【0086】
(第3の実施形態)
本発明を適用できるさらに別の実施形態を、図11を用いて説明する。
【0087】
図11は、本実施形態に係る画素部の1列の一部を抜き出して模式的に示したものである。ここでは画素部の1列分として4つの画素を図示しているが、この数に限定するものではない。本実施形態ではフォトダイオードPDと転送部TXとを備える画素が行列状に配列される。信号φTXに応じて転送部TXがオン状態になると、フォトダイオードPDに蓄積された電荷が垂直CCD回路VCCDへと転送され、不図示の垂直転送パルスに応じて順次バッファ部bufへと転送される。バッファ部bufは、垂直CCD回路VCCDから転送された電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部であり、バッファ部bufの出力は列増幅部102へと入力される。列増幅部102や出力部103は、既に説明したものと同様の構成を有していても良い。
【0088】
バッファ部bufにおいて、信号φbresがハイレベルになると、バッファ部bufの入力部がリセットされる。垂直CCD回路VCCDから次の画素の電荷が転送される前にリセットを行う必要がある。本実施形態においては、画素ノイズnに相当するノイズはバッファ部bufで発生する。
【0089】
本実施形態においても2つの保持容量CTSおよびCTNと差動増幅器D.Ampを用いれば、バッファ部bufに起因するオフセット成分は列増幅部102に起因するオフセット成分と合わせて低減できる。
【0090】
本実施形態においては、各列に列増幅部102が設けられているので、1行分の画素について並列的に処理を行える。つまり、出力アンプ1031と比較してより低速に駆動することができるので、ノイズの発生源となりにくいという利点がある。
【0091】
固体撮像素子1から出力された信号に対して施される処理は、第1の実施形態と同様のものであってよい。
【0092】
本実施形態によれば、固体撮像素子のダイナミックレンジを拡大することが可能となるとともに、撮像システムのS/N比を向上させることができる。さらに、列増幅部102のゲインに応じたγ値をかける処理をDSP140で行うことにより、好適な画像を得ることができる。特に本実施形態によれば、フォトダイオードPDで発生した電荷を垂直CCD回路VCCDに転送しているので、第1および第2の実施形態において行ったクランプ動作を行わなくてもノイズ成分が少ないという利点がある。
【0093】
(その他)
本発明を実施するに際しては、様々な構成が考えられる。その一例を図12に示す。図3に示した固体撮像素子と同じ構成には同じ符号を付している。
【0094】
図12に示す固体撮像素子は、列増幅部102の後段に列AD部108を持つ。画素の各列つまり列増幅部毎にAD変換器を設ける構成は、1行分の信号を並列してAD変換できるので、高速化に適するという利点がある。図12においては水平信号線HLが1本しか図示していないが、実際には列AD部の解像度(ビット数)に応じた数の水平信号線HLが設けられる。また、列AD部108は列増幅部102と一部構成を共有してもよい。
【0095】
また、図9に示したように各画素列につき2つの列増幅器を設けるような構成においては、列増幅器毎にAD変換器を設けると、さらに高速化を図ることができる。
【0096】
図4に示した構成をブロック図として表したものが図13である。固体撮像素子は、画素101が行列状に配列された画素部10と、画素部10に起因するノイズを低減する第1のCDS回路CDS1とを備える。固体撮像素子はさらに、第1のCDS回路CDS1から出力された信号を増幅する列増幅部と、列増幅部に起因するオフセット成分を低減する第2のCDS回路CDS2とを備える。固体撮像素子は、第2のCDS回路CDS2から出力される信号を出力する出力部103をさらに備える。第1のCDS回路CDS1によって画素部10に起因するノイズを低減することで、列増幅部102の入力側のダイナミックレンジを有効に利用できる。また、列増幅部102に用いる増幅器は、製造条件のバラツキなどに起因するオフセットが存在するので、第2のCDS回路102を備えることは画質を向上するためには有効である。また、この構成においても、図12に示したように列AD部を設けてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0097】
1 固体撮像素子
10 画素部
100 撮像システム
101 画素
102 列増幅部
1021 列増幅器
103 出力部
1031 出力アンプ
104 垂直走査部
105 水平走査部
106 タイミング生成部
110 ゲイン補正回路
120 AD変換器(ADC)
130 ビット変換部
140 デジタル信号処理装置(DSP)
150 表示部
160 記録部
170 CPU
VL 垂直信号線
HL 水平信号線
PD フォトダイオード
TX 転送部
SF 画素出力部
RES リセット部
SEL 画素選択部
CTS、CTN 保持容量
D.Amp 差動増幅器
SW スイッチ群
buf バッファ部
CDS1 第1のCDS回路
CDS2 第2のCDS回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配列された複数の画素と、前記複数の画素の各列に設けられた列増幅部と、前記列増幅部で増幅されたことに基づく画像信号を出力する出力部と、を有する固体撮像素子と、
前記画像信号を受ける信号処理部と、を備える撮像システムであって、
前記列増幅部は、前記画素から出力される一の信号を1よりも大きいq倍のゲインで増幅し、
前記信号処理部は前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号に対して、1を下回る倍率をかけることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記画像信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有するとともに、
前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対して、前記1を下回る倍率をかけることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記固体撮像素子は、前記列増幅部からの信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有するとともに、
前記信号処理部は、前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対して、前記1を下回る倍率をかけることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記アナログ/デジタル変換部は、前記画素の各列に設けられることを特徴とする請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記アナログ/デジタル変換部は、前記列増幅部毎に設けられることを特徴とする請求項3に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記列増幅部は、前記一の信号を前記qよりも小さいp倍のゲインでも増幅し、前記信号処理部は、前記p倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部により変換されたデジタル信号および、前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対して、冗長ビットを付加することで前記デジタル信号のビット数を変換するビット変換部を有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項7】
前記ビット変換部は、前記p倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対しては前記冗長ビットを下位ビット側に付加し、
前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対しては前記冗長ビットを上位ビット側に付加することを特徴とする請求項6に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記冗長ビットのビット数は、q/pビットであることを特徴とする請求項6または7に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記信号処理部は、前記p倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号と前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号とで、異なるγ値をかけることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項10】
前記列増幅部は、前記複数の画素の列につきゲインが可変である列増幅器を1つ備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項11】
前記列増幅部は、前記複数の画素の列につき、互いに異なるゲインを設定可能な列増幅器を複数備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項12】
前記複数の画素の各々は、
光電変換素子と、
入力部の電位に基づく信号を出力する画素出力部と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記画素出力部の入力部に転送する転送部と、
前記画素出力部の入力部をリセットするリセット部と、を有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項13】
前記固体撮像素子は、前記画素に起因するノイズを低減する第1のCDS回路を有し、前記第1のCDS回路にてノイズを低減された信号が前記列増幅部に入力されることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項14】
前記固体撮像素子は、前記複数の画素の列毎に設けられたCCD回路と、
前記CCD回路から転送された電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部とを有し、
前記複数の画素の各々は、
光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記CCD回路に転送する転送部とを備えることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項15】
前記出力部は、列増幅部に起因するオフセットを低減する第2のCDS回路を有することを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項16】
前記1を下回る倍率はp/qであることを特徴とする請求項1ないし15に記載の撮像システム。
【請求項17】
前記pが1であることを特徴とする請求項16に記載の撮像システム。
【請求項18】
行列状に配列された複数の画素と、前記複数の画素の各列に設けられた列増幅部と、前記列増幅部で増幅されたことに基づく画像信号を出力する出力部と、を有する固体撮像素子と、
前記画像信号を受ける信号処理部と、を備える撮像システムの駆動方法であって、
前記画素から出力される一の信号を前記列増幅部によって1よりも大きいq倍のゲインで増幅する工程と、
前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号に対して、前記信号処理部によって1を下回る倍率をかける工程と、を含むこと特徴とする撮像システムの駆動方法。
【請求項19】
前記列増幅部は、前記一の信号を前記qよりも小さいp倍のゲインで増幅し、
前記1を下回る倍率はp/qであることを特徴とする請求項18に記載の撮像システムの駆動方法。
【請求項20】
前記pが1であることを特徴とする請求項19に記載の撮像システムの駆動方法。
【請求項21】
前記信号処理部は、前記画像信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有し、
前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部により変換されたデジタル信号に対して、前記1を下回る倍率をかけることを特徴とする請求項18ないし20のいずれかに記載の撮像システムの駆動方法。
【請求項22】
前記p倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号および、前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対して、冗長ビットを付加することで前記デジタル信号のビット数を変換する工程をさらに有することを特徴とする請求項21に記載の撮像システムの駆動方法。
【請求項23】
前記p倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対しては前記冗長ビットを下位ビット側に付加する工程と、前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号が前記アナログ/デジタル変換部で変換されたデジタル信号に対しては前記冗長ビットを上位ビット側に付加する工程とを有することを特徴とする請求項22に記載の撮像システムの駆動方法。
【請求項24】
前記冗長ビットのビット数は、q/pビットであることを特徴とする請求項22または23に記載の撮像システムの駆動方法。
【請求項25】
前記p倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号と前記q倍のゲインで増幅されたことに基づく画像信号とで、異なるγ値をかける工程をさらに有することを特徴とする請求項18ないし24のいずれかに記載の撮像システムの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−78153(P2013−78153A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7291(P2013−7291)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2008−171747(P2008−171747)の分割
【原出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】