説明

撮像システム

【課題】追跡対象の位置および大きさをより正確に検出することができる。
【解決手段】交差点に設けられる撮像システムであって、前記交差点内を移動する歩行者を撮像する全体視撮像部と、予め定められた条件に基づいて、前記全体視撮像部の撮像データから追跡対象とすべき前記歩行者を特定する追跡対象特定部と、前記全体視撮像部の撮像素子における画素密度よりも高い画素密度の撮像素子を有し、前記追跡対象を追跡しながら撮像する複数の特定対象撮像部と、前記特定対象撮像部の撮像データに基づいて、前記追跡対象が事故に遭う危険性の高い危険状態であるか否かを判定する危険状態判定部と、を備えることを特徴とする撮像システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に設けられる撮像システムに関する。より詳しくは、交差点内および交差点周辺を移動する複数の対象のうちの特定の対象を追跡しながら撮像する撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交差点を走行する車両の運転者を支援する交差点運転支援システムが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなシステムでは、自車両の前方および側方を撮像した画像から移動体を検出して当該移動体の危険度に応じて車両の運転者に通知または警報を行うことにより、交差点を走行する際の安全性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−352394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシステムでは、車両前方および車両側方にそれぞれ1台ずつ設けられた撮像装置により移動体を検知することから、移動体の位置および大きさを正確に検出することが難しかった。また、移動体の大きさが急に変化した場合、例えば、車両前方を横断中の歩行者が倒れたり、あるいは蹲ったりした場合は、事故に至る危険性が極めて高い状態となるが、このような移動体の大きさの変化についても正確に検出することができなかった。また、移動体の大きさなどの検出精度を高めるために撮像装置の解像度を上げると、撮像される画像のデータが大きくなり、それに伴って移動体の検出処理による負荷も大きくなることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することを目的として、本発明は、交差点に設けられる撮像システムであって、前記交差点内を移動する歩行者を撮像する全体視撮像部と、
予め定められた条件に基づいて、前記全体視撮像部の撮像データから追跡対象とすべき前記歩行者を特定する追跡対象特定部と、前記全体視撮像部の撮像素子における画素密度よりも高い画素密度の撮像素子を有し、前記追跡対象を追跡しながら撮像する複数の特定対象撮像部と、
前記特定対象撮像部の撮像データに基づいて、前記追跡対象が事故に遭う危険性の高い危険状態であるか否かを判定する危険状態判定部と、
を備えることを特徴とする撮像システムを提供する。
【0006】
このような撮像システムによれば、交差点内および交差点周辺を移動する一または複数の歩行者を全体視撮像部で撮像するとともに、その撮像データから例えば移動速度および移動方向などの条件に基づいて特定された歩行者を追跡対象として複数の特定対象撮像部で追跡しながら撮像することができる。したがって、追跡対象である歩行者の位置だけでなく、当該歩行者の姿勢の変化などを高い精度で検出することができる。したがって、当該歩行者が交差点内で倒れたり、あるいは蹲るなど危険な状態に至ったことを早期に発見することができる。また、全体視撮像部の撮像素子における画素密度は、特定対象撮像部の撮像素子における画素密度よりも低いので、交差点内外の撮像データから複数の対象を検出する際の検出処理の負荷を抑えることができる。
【0007】
また、上記撮像システムにおいて、前記追跡対象特定部は、複数の前記歩行者を移動方向に基づいてグループに分類し、前記グループの最後尾の前記歩行者を前記追跡対象とすることが好ましい。また、上記撮像システムにおいて、前記追跡対象特定部は、前記交差点内で立ち止まった前記歩行者を前記追跡対象としてもよい。
【0008】
これにより、危険な状態に至る可能性のより高い歩行者を追跡対象とすることができる。
【0009】
また、上記撮像システムにおいて、前記危険状態判定部は、前記特定対象撮像部の撮像データから前記追跡対象の姿勢の変化を検出し、交差点内で倒れているか、または蹲っている前記追跡対象を前記危険状態であると判定することが好ましい。
【0010】
これにより、交差点内において事故の危険性が高まった歩行者を他の歩行者から識別することができる。
【0011】
また、上記撮像システムは、前記交差点に設置された一対の歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を示す信号情報を取得して前記危険状態判定部へと出力する信号情報取得部をさらに備え、前記危険状態判定部は、前記信号情報取得部からの前記信号情報が、歩行者が横断不可であることを前記歩行者用信号が示す場合、又は、自動車が通行可能であることを前記自動車用信号が示す場合に、前記交差点内の前記歩行者を前記危険状態であると判定してもよい。
【0012】
これにより、例えば歩行者用信号が赤になっても交差点内に残っている歩行者など、事故に遭う可能性の高い歩行者を他の歩行者から識別することができる。
【0013】
また、上記撮像システムは、前記危険状態判定部が前記交差点内の前記歩行者を前記危険状態であると判定したことに応じて、前記自動車用信号を、自動車が通行不可であることを示す点灯状態とする信号情報制御部をさらに備えることが好ましい。
【0014】
これにより、歩行者用信号が赤になったときに交差点内に歩行者が残っている場合でも、当該歩行者を保護することができる。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像システム100が設けられた交差点500を上方から見た図である。
【図2】撮像システム100の構成を示すブロック図である。
【図3】撮像システム100による歩行者の追跡撮像の動作フローである。
【図4】コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態について説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態における特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像システム100が設けられた交差点500を上方から見た図である。また、図2は、撮像システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る撮像システム100は、交差点500内およびその周辺を移動する歩行者や自動車などの複数の対象を撮像するとともに、例えば撮像した複数の歩行者から特定の歩行者を選択して追跡撮像し、事故に遭う危険性の高い状態(危険状態)にある歩行者を検出することのできるシステムである。
【0019】
なお、撮像システム100の説明のために例示する交差点500は、図1の上下方向に自動車が対面通行可能な車道511と、図1の左右方向に自動車が対面通行可能な車道512とが交差する十字路型の交差点である。また、交差点500には、車道511,512側方の歩道521,522,523,524間を横断するための横断歩道531,532,533,534が設けられている。
【0020】
また、車道511,512の各横断歩道531〜534の手前側(交差点500の中心から遠い側)には、自動車用信号541,542,543,544が設けられている。また、横断歩道531〜534の両側(歩道521〜524側)には、歩行者用信号551,552,553,554が設けられている。
【0021】
例えば、歩道521から歩道522へと車道511を横断するための横断歩道531の手前側には、自動車用信号541が設けられている。また、横断歩道531の両側には、歩行者用信号551が設けられている。なお、自動車用信号541〜544および歩行者用信号551〜554は、いずれも路面から5〜10m程度の高さに設けられる。
【0022】
例えば車道511を交差点500に向けて移動する自動車621A,621Bは、例えば自動車用信号541が青である場合は、そのまま交差点500内に侵入することができるが、自動車用信号541が赤である場合は、横断歩道531の手前側に設けられた一時停止線より手前にて停車しなければならない。一方、歩行者611A,611B,611C,611D,611Eは、歩行者用信号551が青である場合は、横断歩道531を横断できるが、歩行者用信号551が赤である場合は、横断することはできない。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る撮像システム100は、固定部105と、全体視撮像部110と、2台の特定対象撮像部120,130とを備える。固定部105は、車道511の両側に設けられた支柱部と当該支柱部に両端が固定された梁部によって構成される。全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130は、固定部105の梁部に固定される。
【0024】
本例において、2台の特定対象撮像部120,130は、全体視撮像部110の両側に設けられる。また、全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130は、いずれも車道511の路面から10m程度の高さに設置されることが好ましい。なお、全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130の配置およびこれらを設置する路面からの高さは、本例に限られず、それぞれの撮像部の撮像対象および撮像範囲などにより適切に設定される。
【0025】
図2に示すように、撮像システム100は、さらに、撮像データ取得部141,142と、動体識別部150と、追跡対象特定部160と、制御部170と、信号情報取得部175と、危険状態判定部180と、信号情報制御部190とを備える。
【0026】
全体視撮像部110は、交差点500内およびその周辺(本例では全体視撮像部110から見て横断歩道531よりも向こう側の車道511上)を撮像可能なCCDカメラ111、およびCCDカメラ111による撮像データを記憶する画像記憶部112を有する。CCDカメラ111は、例えば画素数が320×240のCCDイメージセンサを撮像素子として有し、30fpsのフレームレートで上記撮像範囲を撮像可能なCCDカメラであってよい。また、本例において、CCDカメラ111は、例えば固定部105に固定されており、その撮像範囲は一定である。なお、全体視撮像部110は、CCDカメラ111に替えて、CMOSイメージセンサなど他の方式の撮像素子を有するカメラを有してもよい。
【0027】
画像記憶部112は、CCDカメラ111によって上記フレームレートで撮像された撮像データを撮像時間に対応付けて記憶する。画像記憶部112には、例えばフラッシュメモリなどの記憶素子またはハードディスクドライブなどの記憶装置が用いられる。
【0028】
特定対象撮像部120は、全体視撮像部110が有するCCDカメラ111の撮像範囲のうちの特定の範囲を拡大して撮像する光学ズーム機能を有するCCDカメラ121、CCDカメラ121による撮像データを記憶する画像記憶部122、およびCCDカメラ121を駆動する駆動部123を有する。また、特定対象撮像部130は、特定対象撮像部120のCCDカメラ121、画像記憶部122、および駆動部123のそれぞれと同様の機能を有するCCDカメラ131、画像記憶部132、および駆動部133を有する。
【0029】
CCDカメラ121,131は、例えば画素数が640×480のCCDイメージセンサを撮像素子として有し、30fpsのフレームレートで上記撮像範囲を撮像可能なCCDカメラであってよい。画像記憶部122は、CCDカメラ121によって上記フレームレートで撮像された撮像データを時系列で取得し、それぞれの撮像データを撮像時間に対応付けて記憶する。なお、特定対象撮像部120,130は、CCDカメラ121,131に替えて、CMOSイメージセンサなど他の方式の撮像素子を有し、かつ所定の光学ズーム機能を有するカメラを有してもよい。
【0030】
画像記憶部132は、CCDカメラ131によって上記フレームレートで撮像された撮像データを撮像時間に対応付けて記憶する。画像記憶部132は、画像記憶部122,132には、画像記憶部112と同様に、例えばフラッシュメモリなどの記憶素子またはハードディスクドライブなどの記憶装置が用いられる。
【0031】
撮像データ取得部141は、画像記憶部112に対して所定のタイミングでアクセスして画像記憶部112が記憶する撮像データを取得する。動体識別部150は、撮像データ取得部141から出力される撮像データを受け取り、CCDカメラ111の撮像範囲内において移動する一または複数の対象を当該撮像データから識別する。
【0032】
より具体的には、動体識別部150は、ある時点における撮像データが撮像データ取得部141から送られると、当該撮像データから画素毎の輝度の情報を抽出して記憶する。そして、動体識別部150は、次に撮像データ取得部141から送られる撮像データにおける対応する画素の輝度との差分を求める。動体識別部150は、時系列で送られる撮像データについてこの処理を繰り返すことにより、CCDカメラ111の撮像範囲内において移動する対象を識別する。
【0033】
ここで、動体識別部150は、識別される対象の種類(歩行者、自動車など)まで識別できることが好ましいが、本例では、全体視撮像部110のCCDカメラ111による撮像範囲内で移動する対象の位置および数を少なくとも検出できればよく、さらには検出した対象の移動速度および予想進路などを算出してもよい。
【0034】
追跡対象特定部160は、動体識別部150により識別された対象から、特定対象撮像部120,130により追跡撮像させるべき対象(以下、「追跡対象」と称する)を、予め定められた条件に基づいて特定する。より具体的には、追跡対象特定部160は、動体識別部150により識別された対象それぞれの位置および移動速度に関する情報を動体識別部150から取得し、例えば交差点500内を移動中に立ち止まったまま動かない歩行者のように、通常の横断歩行者と異なる動きをする歩行者を特定して追跡対象とする。
【0035】
また、このような歩行者がいない場合は、追跡対象特定部160は、横断歩道上を横断中の複数の歩行者について、その移動方向に基づいてグループに分類し、当該グループの最後尾の歩行者を追跡対象とする。また、追跡対象特定部160は、複数の歩行者が追跡対象として特定される場合は、それぞれの歩行者について、その位置および移動速度、あるいは車道を走行中の自動車との位置関係などから事故に遭う危険性を示す危険度を算出して当該危険度のレベルに応じて順位付けを行ってもよい。
【0036】
制御部170は、特定結果取得部171および撮像条件制御部172を有する。特定結果取得部171は、追跡対象特定部160による追跡対象の位置および移動速度などの情報を取得する。具体的には、特定結果取得部171は、例えば、追跡対象特定部160により特定された追跡対象の位置および移動速度などの情報を取得する。撮像条件制御部172は、特定結果取得部171が取得した追跡対象に関する上記情報に基づいて、特定対象撮像部120のCCDカメラ121および特定対象撮像部130のCCDカメラ131の撮像方向および焦点などの撮像条件を設定する。
【0037】
より具体的には、撮像条件制御部172は、特定結果取得部171が取得した追跡対象に関する上記情報に基づいて、駆動部123に駆動制御信号を与える。そして、駆動部123は、上記駆動制御信号に基づいて、CCDカメラ121の撮像範囲内に追跡対象が入るようにCCDカメラ121の撮像方向を設定する。また、駆動部123は、上記駆動制御信号に基づいて、CCDカメラ121の光学系を制御することにより焦点および露出などを追跡対象の撮像に適した条件に設定する。
【0038】
また、これと同様に、撮像条件制御部172は、駆動部133にも駆動制御信号を与える。そして、駆動部133は、上記駆動制御信号に基づいて、CCDカメラ131の撮像方向、焦点、および露出などを追跡対象の撮像に適した条件に設定する。
【0039】
そして、撮像条件制御部172は、CCDカメラ121,131による追跡対象の撮像データに基づいて、CCDカメラ121,131による追跡対象の撮像条件を適宜変更する。これにより、CCDカメラ121,131の撮像範囲は、いずれも上記追跡対象の移動に追従する。また、これに替えて、撮像条件制御部172は、特定結果取得部171が上記追跡対象の位置、移動速度、予想進路などが変化したことを示す情報を取得した場合に、当該新たな情報に基づいてCCDカメラ121,131による追跡対象の撮像条件を変更してもよい。
【0040】
このように、2台の特定対象撮像部120,130(CCDカメラ121,131)で同一の追跡対象を追跡させながら撮像させることにより、特定対象撮像部120,130をステレオカメラとして機能させることができる。したがって、追跡対象までの距離を正確に測定することができる。
【0041】
また、本例のCCDカメラ121,131は、高倍率の光学ズーム機能を有するとともに、それぞれのCCDカメラが備える撮像素子は、CCDカメラ111が備える撮像素子よりも高い画素密度を有する。したがって、追跡対象の大きさを正確に測定することができるので、例えば追跡対象として撮像している歩行者が横断歩道を横断中に倒れたり蹲って立往生するなど、当該歩行者が事故に遭う危険性が極めて高い状態に至ったことを正確に検出することができる。
【0042】
また、本例において、追跡対象特定部160が複数の歩行者を追跡対象として特定し、危険度のレベルに応じて順位付けを行っている場合、制御部170は、それらの歩行者の当該順位に関する情報を追跡対象特定部160から取得し、最も順位の高い歩行者を特定対象撮像部120,130により追跡撮像させてもよい。
【0043】
このように、複数の追跡対象が特定された場合でも、その中でより事故に至る危険性の高い(より危険度の高い)追跡対象を正確に選択して特定対象撮像部120,130により追跡撮像させることができる。また、特定対象撮像部120,130のCCDカメラ121,131をステレオカメラとすることにより、追跡対象が危険な状態となったことをより正確に検知することができる。
【0044】
信号情報取得部175は、交差点500に設置された歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を示す信号情報を取得して危険状態判定部180へと出力する。例えば、信号情報取得部175は、交差点500に設置された歩行者用信号551〜554、および自動車用信号541〜544のうち、一方が通行または横断不可(例えば赤)を示すときに他方が青(通行または横断可能)を示す一対の信号(例えば自動車用信号541と歩行者用信号551)の各々の点灯状態を示す信号情報を取得して危険状態判定部180へと出力する。
【0045】
危険状態判定部180は、特定対象撮像部120,130による追跡対象の撮像データに基づいて、当該追跡対象が事故に遭う危険性の高い危険状態であるか否かを判定する。より具体的には、危険状態判定部180は、例えば、特定対象撮像部120,130で追跡撮像している歩行者(追跡対象)の撮像データから当該歩行者の姿勢の変化を検出する。そして、危険状態判定部180は、歩行者が交差点内で倒れたり、または蹲っていることを検出した場合、その歩行者が危険状態であると判定する。
【0046】
また、危険状態判定部180は、特定対象撮像部120,130による追跡対象の撮像データに加えて、信号情報取得部175からの信号情報を参照することにより追跡対象を危険対象として識別してもよい。より具体的には、危険状態判定部180は、信号情報取得部175からの信号情報が、歩行者が横断不可であることを歩行者用信号が示すか、又は、自動車が通行可能であることを自動車用信号が示しているにも関わらず交差点500内(横断歩道上)に歩行者が残っている場合、当該歩行者が危険状態であると判定する。
【0047】
そして、危険状態判定部180は、交差点500内の歩行者を危険状態であると判定した場合、交差点500内を自動車が通行不可とすべき旨の情報を信号情報制御部190へと出力する。信号情報制御部190は、危険状態判定部180から上記情報を受け取ると、自動車用信号を赤に変更して交差点500内に自動車を侵入させないようにする。このように、本実施形態に係る撮像システム100によれば、歩行者用信号が赤になったときに交差点500内に歩行者が残っている場合でも、当該歩行者を保護することができる。
【0048】
また、本実施形態において、全体視撮像部110のCCDカメラ111が有する撮像素子の画素密度は、特定対象撮像部120,130のCCDカメラ121,131が有する撮像素子の画素密度よりも低い。したがって、CCDカメラ111は、CCDカメラ121,131よりも解像度は低くなるものの、より広範囲の対象を検出処理の負荷を抑えつつ特定することができる。そして、追跡対象のみをより高解像度のCCDカメラ121,131で撮像することにより、注目すべき追跡対象までの距離、および当該追跡対象の大きさ、姿勢などをより正確に検出することができる。
【0049】
以下において、撮像システム100の動作フローをより具体的に説明する。
【0050】
図3は、撮像システム100による歩行者の追跡撮像の動作フローである。本フローにおいては、まず、全体視撮像部110によって、横断歩道531および横断歩道533を撮像する(ステップ:S300)。次に、動体識別部150は、全体視撮像部110による撮像データから、横断歩道531を横断中の歩行者611A〜611Eおよび横断歩道533を横断中の歩行者613A〜613Eを、移動する対象として識別する(ステップ:S305)。
【0051】
追跡対象特定部160は、歩行者611A〜611Eおよび歩行者613A〜613Eから、特定対象撮像部120,130により追跡撮像させるべき追跡対象を特定する(ステップ:S310)。
【0052】
例えば、追跡対象特定部160は、横断歩道531を横断中の歩行者611A〜611Eと、横断歩道533を横断中の歩行者613A〜613Eを、横断方向によってそれぞれ2つのグループ(計4グループ)に分類する。本例では、横断歩道531を横断中の歩行者611A〜611Eは、歩行者611A,611B,611Cのグループと歩行者611D,611Eのグループに分類される。また、同様に、横断歩道533を横断中の歩行者613A〜613Eは、歩行者613A,613B,613Cのグループと歩行者613D,613Eのグループに分類される。
【0053】
そして、追跡対象特定部160は、各グループの最後尾の歩行者を追跡対象とする。したがって、本例では、歩行者611A,611D,613A,613Dが追跡対象となる。なお、追跡対象特定部160は、横断歩道上で動かない歩行者がいる場合、その歩行者を上記歩行者611A,611D,613A,613Dに替えて追跡対象とする。
【0054】
そして、本例のように追跡対象が複数特定される場合(ステップ:S315 YES)、追跡対象特定部160は、歩行者611A,611D,613A,613Dのそれぞれについて、その位置および移動速度、あるいは車道を走行中の自動車との位置関係などから事故に遭う危険性を示す危険度を算出して当該危険度のレベルに応じて順位付けを行う。例えば、追跡対象特定部160は、歩行者611A,611D,613A,613Dのうち、例えば横断歩道を渡り切るまでの距離が最も遠い歩行者611Dの危険度が最も高い歩行者として順位付けする。
【0055】
そして、制御部170は、最も上記順位の高い追跡対象である歩行者611Dを特定対象撮像部120,130により撮像させる(ステップ:S320)。なお、追跡対象特定部160により追跡対象として特定される歩行者が一人の場合(ステップ:S315 NO)、制御部170は、当該歩行者を特定対象撮像部120,130により撮像させる(ステップ:S330)。
【0056】
次に、信号情報取得部175は、歩行者用信号551,553および自動車用信号541,543の点灯状態を示す信号情報を取得して危険状態判定部180へと出力する(ステップ:S335)。そして、危険状態判定部180は、特定対象撮像部120,130による追跡対象の撮像データおよび信号情報に基づいて、追跡対象である歩行者が危険な状態となっていないかを判定する(ステップ:S340)。
【0057】
そして、危険状態判定部180は、特定対象撮像部120,130により追跡撮像していた歩行者611A,611D,613A,613Dが交差点内で倒れたり、または蹲っていることを検出した場合、その歩行者が危険状態であると判定する(ステップ:S340 NO)。また、危険状態判定部180は、歩行者用信号551,553が赤であることを信号情報が示しているときに歩行者611A〜611Eおよび歩行者613A〜613Eのいずれかが横断歩道531,553上に残っている場合、その歩行者が危険状態であると判定する(ステップ:S340 NO)。
【0058】
そして、危険状態判定部180は、交差点500内の歩行者を危険状態であると判定した場合、交差点500内を自動車が通行不可とすべき旨の情報を信号情報制御部190へと出力し、信号情報制御部190は、自動車用信号を赤にして自動車(例えば自動車621A,621B)を停止させる(ステップ:S345)。
【0059】
一方、危険状態判定部180によって、特定対象撮像部120,130により追跡撮像していた歩行者611A,611D,613A,613Dを含むいずれの歩行者も危険状態とならず(ステップ:S340 YES)に、そのまま交差点500外に出た場合(ステップ:S350 YES)、すなわち、全ての歩行者が横断歩道531,553を渡り切った場合、本フローは終了する。
【0060】
なお、全体視撮像部110により撮像される全ての歩行者が横断歩道531,553を渡り切るまでは、再び上記ステップS335以降を繰り返す(ステップ:S350 NO)。
【0061】
図4は、コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す。コンピュータ1000は、与えられるプログラムに基づいて、図1から図3において説明した撮像システム100の全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130を制御するホストコンピュータとして機能する。例えば、コンピュータ1000がホストコンピュータとして機能する場合、プログラムは、コンピュータ1000を、図1から図3に関連して説明した撮像システム100の撮像データ取得部141,142、動体識別部150、追跡対象特定部160、制御部170、信号情報取得部175、危険状態判定部180、および信号情報制御部190として機能させてよい。
【0062】
コンピュータ1000は、CPU周辺部、入出力部、及びレガシー入出力部を備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ1082により相互に接続されるCPU1005、RAM1020、グラフィック・コントローラ1075、及び表示装置1080を有する。入出力部は、入出力コントローラ1084によりホスト・コントローラ1082に接続される通信インターフェース1030、ハードディスクドライブ1040、及びCD−ROMドライブ1060を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ1084に接続されるROM1010、フレキシブルディスク・ドライブ1050、及び入出力チップ1070を有する。
【0063】
ホスト・コントローラ1082は、RAM1020と、高い転送レートでRAM1020をアクセスするCPU1005及びグラフィック・コントローラ1075とを接続する。CPU1005は、ROM1010及びRAM1020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ1075は、CPU1005等がRAM1020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置1080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ1075は、CPU1005等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0064】
入出力コントローラ1084は、ホスト・コントローラ1082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース1030、ハードディスクドライブ1040、CD−ROMドライブ1060を接続する。通信インターフェース1030は、ネットワークを介して全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130などと通信する。ハードディスクドライブ1040は、コンピュータ1000内のCPU1005が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ1060は、CD−ROM1095からプログラム又はデータを読み取り、RAM1020を介してハードディスクドライブ1040に提供する。
【0065】
また、入出力コントローラ1084には、ROM1010と、フレキシブルディスク・ドライブ1050、及び入出力チップ1070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM1010は、コンピュータ1000が起動時に実行するブート・プログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ1050は、フレキシブルディスク1090からプログラム又はデータを読み取り、RAM1020を介してハードディスクドライブ1040に提供する。入出力チップ1070は、フレキシブルディスク・ドライブ1050や、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0066】
RAM1020を介してハードディスクドライブ1040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク1090、CD−ROM1095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM1020を介してコンピュータ1000内のハードディスクドライブ1040にインストールされ、CPU1005において実行される。
【0067】
当該プログラムは、コンピュータ1000にインストールされる。当該プログラムは、CPU1005等に働きかけて、コンピュータ1000を、前述した撮像データ取得部141,142、動体識別部150、追跡対象特定部160、制御部170、信号情報取得部175、危険状態判定部180、および信号情報制御部190として機能させる。
【0068】
以上に示したプログラムは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク1090、CD−ROM1095の他に、DVDやCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1000に提供してもよい。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0070】
100…撮像システム
105…固定部
110…全体視撮像部
120,130…特定対象撮像部
111,121,131…CCDカメラ
112,122,132…画像記憶部
123,133…駆動部
141,142…撮像データ取得部
150…動体識別部
160…追跡対象特定部
170…制御部
171…特定結果取得部
172…撮像条件制御部
175…信号情報取得部
180…危険状態判定部
190…信号情報制御部
500…交差点
511,512…車道
521,522,523,524…歩道
531,532,533,534…横断歩道
541,542,543,544…自動車用信号
551,552,553,554…歩行者用信号
611A〜611E,612,613A〜613E,614…歩行者
621A,621B…自動車
1000…コンピュータ
1005…CPU
1010…ROM
1020…RAM
1030…通信インターフェース
1040…ハードディスクドライブ
1050…フレキシブルディスク・ドライブ
1060…CD−ROMドライブ
1070…入出力チップ
1075…グラフィック・コントローラ
1080…表示装置
1082…ホスト・コントローラ
1084…入出力コントローラ
1090…フレキシブルディスク
1095…CD−ROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設けられる撮像システムであって、
前記交差点内を移動する歩行者を撮像する全体視撮像部と、
予め定められた条件に基づいて、前記全体視撮像部の撮像データから追跡対象とすべき前記歩行者を特定する追跡対象特定部と、
前記全体視撮像部の撮像素子における画素密度よりも高い画素密度の撮像素子を有し、前記追跡対象を追跡しながら撮像する複数の特定対象撮像部と、
前記特定対象撮像部の撮像データに基づいて、前記追跡対象が事故に遭う危険性の高い危険状態であるか否かを判定する危険状態判定部と、
を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記追跡対象特定部は、複数の前記歩行者を移動方向に基づいてグループに分類し、前記グループの最後尾の前記歩行者を前記追跡対象とすることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記追跡対象特定部は、前記交差点内で立ち止まった前記歩行者を前記追跡対象とすることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記危険状態判定部は、前記特定対象撮像部の撮像データから前記追跡対象の姿勢の変化を検出し、交差点内で倒れているか、または蹲っている前記追跡対象を前記危険状態であると判定することを特徴とする請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記交差点に設置された一対の歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を示す信号情報を取得して前記危険状態判定部へと出力する信号情報取得部をさらに備え、
前記危険状態判定部は、前記信号情報取得部からの前記信号情報が、歩行者が横断不可であることを前記歩行者用信号が示す場合、又は、自動車が通行可能であることを前記自動車用信号が示す場合に、前記交差点内の前記歩行者を前記危険状態であると判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記危険状態判定部が前記交差点内の前記歩行者を前記危険状態であると判定したことに応じて、前記自動車用信号を、自動車が通行不可であることを示す点灯状態とする信号情報制御部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の撮像システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−81567(P2011−81567A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232786(P2009−232786)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】