説明

撮像機器の測定領域情報表示装置

【課題】表示部の測定領域を識別可能な複数の態様で表示状態にする電気回路や実装構成の複雑化を避けることができる撮像機器の測定領域情報表示装置等を提供する。
【解決手段】測定領域情報表示装置は、被写体像に重ね合せて複数の測定領域を表示する液晶表示装置22と、測定領域選択モード変更手段と、測定領域移動指示部材を備える。変更手段は、特定の測定領域を移動指示する操作が可能なモードと不可能なモードとの間で切換えを行う。指示部材は、移動指示操作が可能なモード時に、特定の測定領域を移動指示する。測定領域を示すセグメントの内、選択された特定の測定領域のセグメントを、共通の駆動電圧の印加状態し、他の測定領域のセグメントを、共通の駆動電圧が印加されない状態とする。移動指示が不可能なモード時の共通の駆動電圧に対し、移動指示が可能なモード時には共通の駆動電圧を高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な像の上に必要な情報を重ね合わせて表示できる透過型の液晶表示装置を持つ焦点検出領域などの測定領域を表示する測定領域情報表示装置、それを持つファインダ装置、撮像機器などに関する。特に、カメラの光学ファインダに用いられるスーパーインポーズ液晶表示装置を持つ測定領域情報表示装置、及びファインダ装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等のファインダ装置に、情報表示を行わせる液晶表示装置を組み込んで、カメラ等のファインダ視野内に各種情報を重ねて表示する所謂スーパーインポーズ式表示が行われている。
【0003】
特許文献1は、スーパーインポーズ式表示が可能なカメラのファインダ装置の一具体例を開示している。このファインダ装置では、ファインダのスクリーン(フォーカシングスクリーン)上部の正立像形成部材としてのペンタダハプリズムの後方に、ファインダ光軸とは異なる光軸を持つ反射面をハーフミラーやプリズムにて形成している。そして、ペンタダハプリズムの近傍に配置された液晶表示装置の表示パターンを上記反射面を介して、スクリーン上のファインダ像と重ねて観察できる様にしている。
【0004】
また、特許文献2は、別のスーパーインポーズ式表示が可能なカメラとして、同一の表示パターンについて複数(例えば3種類)の状態を区別して情報表現する機能を有するものを開示している。このカメラは、ファインダのスクリーン近傍に透過型液晶パネルを重ねて配置し、スクリーン上のファインダ像と液晶パネルの情報パターンとを重ねて観察できる様にしたファインダ内表示装置を有する。このファインダ内表示装置では、画面内に設けた複数の測定(例えば焦点検出)エリアを表すパターン個々に印加する駆動電圧を変化させることで、表示パターンの光拡散度を変化させる。このことで、対応エリアが、例えば、複数のエリアのうち選択され且つ合焦している焦点検出エリアか、選択され且つ被写体像に合焦していない焦点検出エリアか、選択されていない焦点検出エリアかの3段階の状態表示を可能としている。
【特許文献1】特開平11−237659号公報
【特許文献2】特開2000−75393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、スーパーインポーズ表示を達成するための主に光学的な構成に関しての記載に留まっており、特に、オートフォーカスの焦点検出領域などの測定領域選択時の表示識別に関したものではない。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置は、測定エリアを表す表示パターンの駆動電圧を個々に変化させる構成であることから、表示パターンの数、つまり焦点検出などの測定のエリアの数が多くなると、制御端子の数についても同じ数だけ増加してしまう。よって、電気回路や実装構成が複雑になることが避けられず、また場合によっては、表示可能な測定エリアの数に限りがあることになり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の撮像機器の測定領域情報表示装置は次の特徴を有する。この情報表示装置は、被写体像に重ね合せて複数の測定領域を表示する透過型の液晶表示装置と、測定領域選択モード変更手段と、測定領域移動指示部材と、を備える。測定領域選択モード変更手段は、前記複数の測定領域の内、特定の測定領域を移動指示する操作が可能なモードと不可能なモードとの間で切換えを行う。測定領域移動指示部材は、特定の測定領域を移動指示する操作が可能な測定領域選択モード変更手段の切換えによるモード時に、選択された特定の測定領域を移動指示する。また、液晶表示装置の複数の測定領域を示すセグメントの内、選択された特定の測定領域のセグメントを、共通の駆動電圧が印加された第1の状態とする。他方、前記選択された特定の測定領域以外の測定領域のセグメントを、前記共通の駆動電圧が印加されない第2の状態とする。更に、特定の測定領域の移動指示が不可能な測定領域選択モード変更手段の切換えによるモード時の液晶表示装置の前記共通の駆動電圧に対し、特定の測定領域の移動指示が可能なモード時には液晶表示装置の前記共通の駆動電圧を高くする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焦点検出領域などの測定領域を表す液晶表示装置の複数のセグメントの少なくとも一部のグループについて駆動電圧を共通とするので、測定エリアの数が多くなっても、電気回路や実装構成の複雑化を避けることができる。また、こうした比較的簡単な構成で、共通の駆動電圧の値を制御すると共に印加状態にするか非印加状態にするかによって、セグメントの表示状態を変化させることができる。これにより、複数の測定領域のセグメントのうち撮影者によって選択された特定の測定領域セグメントか、他の選択可能な測定領域セグメントか、等を識別することができる撮像機器の測定領域情報表示装置、ファインダ装置などを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の撮像機器の測定領域情報表示装置の実施形態について説明する。本発明の装置において重要なことは、次のことである。測定領域を示す複数のセグメントの少なくとも一部のグループについて駆動電圧を共通とし、共通の駆動電圧の値を制御すると共に印加状態にするか非印加状態にするかによって、セグメントの表示状態を識別可能に変化可能とすることである。これにより、比較的簡単な構成で、複数の測定領域のセグメントが、撮影者によって選択された特定の測定領域セグメントか、他の選択可能な測定領域セグメントか、等を識別することができる情報表示装置を実現できる様になる。
【0010】
上記考え方に基づき、本発明の情報表示装置の基本的な実施形態は、次の様な構成を有する。情報表示装置は、所定面などに形成される被写体像に重ね合せて複数の測定領域を表示する透過型の液晶表示装置と、測定領域選択モード変更手段と、測定領域移動指示部材と、を備える。測定領域選択モード変更手段は、前記複数の測定領域の内、特定の測定領域を移動指示する操作が可能なモードと不可能なモードとの間で切換えを行うためのものである。測定領域移動指示部材は、特定の測定領域を移動指示する操作が可能な測定領域選択モード変更手段の切換えによるモード時に、選択された特定の測定領域を移動指示するためのものである。こうした構成で、液晶表示装置の複数の測定領域を示すセグメントの内、選択された特定の測定領域のセグメントを、スイッチ手段などで共通の駆動電圧が印加された第1の状態とできる様にする。他方、前記選択された特定の測定領域以外の測定領域のセグメントを、スイッチ手段などで前記共通の駆動電圧が印加されない第2の状態とできる様にする。更に、特定の測定領域の移動指示が不可能な測定領域選択モード変更手段の切換えによるモード時の液晶表示装置の前記共通の駆動電圧に対し、特定の測定領域の移動指示が可能なモード時には液晶表示装置の前記共通の駆動電圧を高くできる様にする。第1の状態は、後述の実施例では点灯状態とも言う。また、第2の状態は非点灯状態とも言う。
【0011】
前記基本的な実施形態において、以下に述べる様なより具体的な実施形態が可能である。一眼レフカメラなどの撮像機器の測定領域情報表示装置は、フォーカシングスクリーンと、LEDなどの発光素子と、正立像形成部材と、反射面と、を備えることができる(後述の第1実施例参照)。フォーカシングスクリーンは、撮影レンズからの被写体像を観察するために、例えばミラーで略直角に反射された撮影光束の少なくとも一部が結像される予定結像面に配置される。発光素子は、前記液晶表示装置にバックライトを供給する様にその近傍(例えばカメラにおける前方)に配置される。ペンタダハプリズムなどの正立像形成部材は、フォーカシングスクリーンの上部(撮影光束の光路における上方)に配置される。反射面は、正立像形成部材よりも後方(撮影光束の光路における後方)の接眼光学部材の一部に設けられる。こうして、前記発光素子からの光束を、前記液晶表示装置を介して前記反射面に投影することで、前記液晶表示装置の複数の測定領域を示すセグメントを、前記フォーカシングスクリーン上に結像された被写体像に重ね合せて、表示する。
【0012】
また、前記液晶表示装置の測定領域を表示する表示部には、前記複数の測定領域として、第1の複数の測定領域と、前記第1の複数の測定領域とは異なる第2の複数の測定領域とを備えることができる。そして、前記第1の複数の測定領域を示す複数のセグメントと、前記第2の複数の測定領域を示す複数のセグメントとは、夫々、独立に共通の駆動電圧の印加が可能である様に構成する(後述の第2実施例参照)。
【0013】
後述の実施例では、液晶表示装置の測定領域は焦点検出領域であるが、測定領域を測光センサーにおける測光領域として働かせることもできる。この場合も、前述した様に特定の測光領域が選択されたり移動されたりし、選択された特定の測光領域において被写体像の測光が行われ、これに基づいて絞りなどが制御されることになる。こうした制御は、後述するCPUなどの制御手段により行われる。
【実施例】
【0014】
(第1実施例)
図1には、本発明の第1実施例である一眼レフカメラの概略構成を示している。この図において、1はカメラ本体であり、2はカメラ本体に装着された撮影レンズである。図1では、撮影レンズ2は、便宜上、合焦レンズ3と変倍レンズ4の2枚のレンズで構成されているかの様に示したが、実際は更に多数のレンズから構成されている。
【0015】
5は主ミラーである。主ミラー5は、ファインダ観察時には撮影光路内に斜設されて撮影レンズ2から入射した光束の一部を反射して光学ファインダ系に導き、撮影時には撮影光路外に退避する。6はサブミラーであり、ファインダ観察時に主ミラー5を透過した光束をカメラ本体1の下方へ向けて反射する。
【0016】
7はシャッター、8は撮影画像を記録するための感光部材である。感光部材8は、銀塩フイルム若しくはCCDやMOS型等の固体撮像素子若しくはビディコン等の撮像管により構成される。以下の説明では、感光部材8が固体撮像素子であるものとする。
【0017】
9は位相差方式の焦点検出装置である。焦点検出装置9は、撮影レンズ2の結像面近傍に配置されたフイールドレンズ9a、反射ミラー9b、9c、2次結像レンズ9e、絞り9d、及び複数のCCDからなるラインセンサー9f等から構成される。焦点検出装置9は、後述するファインダ視野内の19個の各焦点検出領域に対応し、被写界の複数の焦点検出領域において焦点調節状態の検出を行う。
【0018】
10は、撮影レンズ2の予定結像面に配置されたピント板である。11はコンデンサレンズで、撮影レンズ2からの光束を有効に接眼レンズ16に導くためのものである。13は、ピント板10及びコンデンサレンズ11を通過した光束の光路を折り曲げて接眼系に導くペンタダハプリズムである。コンデンサレンズ11とペンタダハプリズム13との間には、ファインダ視野領域を規定するための視野マスク12が配置されている。
【0019】
ペンタダハプリズム13の射出面には、ペンタダハプリズム13から射出した光束の光路を変更するためのプリズム14、15が接着固定されている。プリズム14の面14a、14bには、例えば可視光を透過して赤外光を反射するダイクロイック特性を有するコーティングが施されており、これにより、後述するスーパーインポーズ表示のための赤外光が撮影者の眼球17に導かれる。プリズム15の後方には接眼レンズ16が配置されており、ピント板10に結像した被写体像の光束が、この接眼レンズ16を通って撮影者の眼球17に達し、撮影者により被写体像が観察される。
【0020】
18、19は、夫々、ファインダ視野(撮影画面)内の被写体輝度を測定するための結像レンズと測光センサーである。結像レンズ18は、ペンタダハプリズム13内の反射光路及びプリズム14を介してピント板10と測光センサー19とを共役な結像関係に位置付けている。
【0021】
20は、明るい被写体の中でも視認できる赤外光を発する高輝度LEDであり、21は集光レンズである。集光レンズ21は、LED20と撮影者の眼球(瞳孔)17とを共役な結像関係にして、LED20からの光を効率良く観察者の眼球17へ入射させるコンデンサレンズの働きをする。
【0022】
22は、電界効果型のツイステッドネマティックモード(Twisted
Nematic mode)を利用しているTN液晶表示ユニット(以下、スーパーインポーズ用LCDという)である。スーパーインポーズ用LCD22は、後述する19個の焦点検出領域をファインダ視野内に形成するため、複数のセグメント(表示部)によりパターン化されて、選択されたセグメント領域のみを光透過可能とする。
【0023】
LED20から発せられた光束は、集光レンズ21及びスーパーインポーズ用LCD22の透過セグメントを通過し、第1の投光レンズ23、ミラー24及び第2の投光レンズ25を通過してプリズム14に入射する。プリズム14に入射した光は、ダイクロイック面14aで反射し、ダイクロイック面14bに達する。ここで、ピント板10に結像された被写体像と透過セグメントのパターンとが重なり、プリズム15及び接眼レンズ16を通して観察者の眼球17に達し、観察される。
【0024】
27は、ファインダ視野外に、絞り値やシャッター秒時等の撮影情報を表示するためのファインダ内LCDであり、スーパーインポーズ用LCD22と同様にTN液晶表示ユニットから構成されている。このファインダ内LCD27は、照明用LED26からの光によって照明され、LCD27を透過した光が三角プリズム28によりファインダ内に導かれることにより、撮影情報がファインダ視野外に表示される。これによって、撮影者は設定されている撮影情報を確認することができる。
【0025】
29は、撮影レンズ2内に設けられた絞りであり、30は、後述する絞り制御回路109を含む絞り駆動装置である。31はレンズ駆動用モーターであり、32は駆動ギヤ等からなるレンズ駆動機構である。33はフォトカプラーであり、レンズ駆動機構32に連動するパルス板34の回転を検知してレンズ焦点調節回路110(図2参照)にレンズ駆動情報を伝える。焦点調節回路110は、このレンズ駆動情報と演算された合焦位置までのレンズ駆動量情報とに基づいてレンズ駆動用モーター31を駆動し、合焦レンズ3を合焦位置に移動させる。
【0026】
35は、カメラ本体1と撮影レンズ2との間の通信インターフェイスとなるマウント接点である。36は、合焦レンズ3をマニュアル操作によって駆動するためのマニュアルフォーカスリングである。撮影者が自ら焦点(ピント)調節を行う際にこのリング36を回動操作することで、合焦レンズ3を合焦位置に直接移動させることができる。
【0027】
37は、撮像素子8によって得られた画像データを表示するためのTFT液晶からなるモニター用LCDである。
【0028】
図2には、上記一眼レフカメラに内蔵された電気回路の構成を示している。この図において、図1で説明した構成要素には図1と同符号を付している。
【0029】
カメラ本体1には、マイクロコンピュータを構成する中央演算処理装置(以下、CPUという)100が内蔵されている。このCPU100には、デジタル回路101、測光回路102、自動焦点検出回路103、信号入力回路104、LCD駆動回路105、LED駆動回路106、シャッター制御回路107、モーター制御回路108、絞り制御回路109及び焦点調節回路110が接続されている。CPU100に付随したEEPROM100aは、各種データを記憶する記憶機能を有している。
【0030】
デジタル回路101は、撮像素子駆動回路101aと、RAM101bと、RAM101bに記憶された撮像信号を所定の画像データに変換する信号処理回路101cと、画像データを記憶するためのフラッシュメモリ101dで構成される。撮像素子駆動回路101aは、撮像素子8を駆動し、撮像素子8からの撮像信号の読み出しを行う。RAM101bは、読み出した撮像信号を記憶する。
【0031】
測光回路102は、測光センサー19からの被写界の明るさに対応した輝度信号出力を増幅後、対数圧縮、A/D変換し、各センサー19からの被写界輝度情報としてCPU100に送る。測光センサー19は、各焦点検出領域を包含する様にファインダ視野を63個に分割するよう設定された各測光領域に対応した63個のフォトダイオードSPC1〜SPC63から構成されている。
【0032】
自動焦点検出回路103は、19個の焦点検出領域に対応した19組のラインセンサーCCD−1〜CCD−19により構成されるCCDラインセンサーユニット9fから得た電圧をA/D変換し、CPU100に送る。
【0033】
SW1は、不図示のレリーズボタンの第1ストローク操作でONし、カメラの測光、焦点検出動作等を開始させるためのスイッチである。SW2は、レリーズボタンの第2ストローク操作でONし、レリーズ動作を開始させるためのスイッチである。
【0034】
SW−DIAL1は、撮影に必要な各種情報(例えば、シャッタースピード、絞り値等)を選択するためのスイッチである。SW−DIAL2も、各種撮影モードの設定に用いられるスイッチであり、電子ダイヤルであるSW−DIAL1の動作を補うためのサブ電子ダイヤルである。
【0035】
SW−Mは、カメラを作動状態とするためのメインスイッチである。SW−AF/MFは、焦点調節、すなわち撮影レンズ2のピント合わせを自動で行うか手動(マニュアル)で行うかを選択するためのスイッチであり、本実施例では、撮影レンズ2に設けられている。SW−AFSは、任意焦点検出領域選択モードと自動焦点検出領域選択モードとを切り換えるためのスイッチである。任意焦点検出領域選択モードでは、このカメラにおいてオートフォーカスの焦点検出領域として設定されている19箇所の焦点検出領域のうち、撮影者自身がマニュアル(手動)で特定の焦点検出領域を選択を行うことが可能である。自動焦点検出領域選択モードでは、19箇所の焦点検出領域のうち、カメラ内の所定のアルゴリズムにて焦点検出動作を行う領域の決定を自動で行う。上述した自動焦点検出領域選択モードでは所定のアルゴリズムによって1つ又は1まとまりの焦点検出領域が自動選択され、任意焦点検出領域選択モードにおいても特定の焦点検出領域は1つ又は1まとまりとして焦点検出領域が任意に選択される。
【0036】
SW−T、SW−B、SW−L、SW−Rは、上記したSW−AFSが任意焦点検出領域選択モードであるときに、特定の焦点検出領域の移動方向を指示するための焦点検出領域移動指示スイッチ(測定領域移動指示部材)である。SW−Tの押し操作で上方向、SW−Bの押し操作で下方向、SW−Lの押し操作で左方向、SW−Rの押し操作で下方向にそれぞれ焦点検出領域を移動することが可能となる。焦点検出領域の確定は所定タイマーの終了、又は、他のスイッチ操作を行うことにて行われる。
【0037】
また本実施例では、焦点検出領域移動指示スイッチとして、専用のスイッチを設けて説明をしたが、例えば、SW−DIAL1の電子ダイヤルや、SW−DIAL2のサブ電子ダイヤルの操作によっても同様の機能を割り当てることは可能である。
【0038】
SW−AFDは、カメラが測光や焦点検出動作が可能な状態時において、上記した任意焦点検出領域選択モードにて一度は確定された焦点検出領域を、更に選択移動する操作が可能なモードと、不可能なモードとを切換えるスイッチである。この焦点検出領域選択モード変更スイッチが、測定領域選択モード変更手段である。この焦点検出領域選択モード変更スイッチがオン状態であれば、カメラの測光や焦点検出動作が可能な状態時であり、次の様になる。即ち、上記したSW−T、SW−B、SW−L、SW−R、又は、SW−DIAL1、SW−DIAL2の操作に連動し、焦点検出領域の移動方向を指示するための焦点検出領域移動指示スイッチの操作が有効となる。
【0039】
これら各スイッチからの信号は信号入力回路104に入力され、データーバスによってCPU100に送信される。なお、SW−DIAL1、SW−DIAL2からの各信号は、信号入力回路104内のアップダウンカウンターに入力される。そして、アップダウンカウンターにて、これらスイッチからの信号、すなわち電子ダイヤルの回転クリック量がカウントされ、カウント値がCPU100に送信される。
【0040】
LCD駆動回路105は、スーパーインポーズ用LCD22、ファインダ内LCD27、モニター用LCD37を表示駆動させるためのLCD駆動回路であり、CPU100からの信号に従い各LCDの表示内容を制御する。
【0041】
LED駆動回路106は、スーパーインポーズ用LED20及びファインダ内LED26を点灯制御する。シャッター制御回路107は、シャッターチャージ状態においてマグネットMG−1に通電して先幕を走行させ、その後マグネットMG−2に通電して後幕を走行させる。これにより、撮像素子8に所定光量を蓄積させる。モーター制御回路108は、主ミラー5のチャージを行うモーターM1と、シャッター7のチャージを行うモーターM2とを制御する。これらシャッター制御回路107及びモーター制御回路108によってカメラにおける一連のレリーズシーケンスが動作する。
【0042】
絞り制御回路109及び焦点調節回路110は、図1で示した様に、撮影レンズ2内に配置され、マウント接点35を介してCPU100との信号の伝達を行う。
【0043】
次に、図3は、本実施例において光学ファインダを覗いた場合に見えるファインダ視野内の構成を示している。この図では、スーパーインポーズ用LCD22が全点灯した状態をしている。この全点灯状態では、液晶表示装置の複数の測定領域を示すセグメント(例えば、所定形状の透明電極で構成される)の全てが、オン状態の各スイッチ手段を介してLCD駆動回路105の共通の駆動電圧源に導通された点灯状態にある。また、実際には、ファインダ視野の周辺部には、各種撮影に関する情報表示のためのファインダ内LCD27による表示も存在するが、図3においては省略している。
【0044】
図3において、外側の枠は視野マスク12によって形成されるものである。1001と1002は、いずれも、ピント板10の予定結像面であるマット面上に微細なプリズム形状を一体的に形成することで常時ピント板上に示される刻線である。1001はオートフォーカスの検出が可能な範囲を示し、1002は最小の測光可能範囲を示したものである。2201〜2219は、スーパーインポーズ用LCD22によりスーパーインポーズ表示される19組の表示指標(セグメント)であり、19個の焦点検出領域に対応する様に配置されている。
【0045】
図4は、スーパーインポーズ用LCD22等に用いる液晶表示装置のセグメントの濃度とバイアス電圧との関係を示す説明図である。一般に、点灯状態のセグメントSdの濃度と、非点灯(消灯)状態のセグメントSpの濃度と、液晶表示体を駆動するバイアス電圧との関係は、図4に示す様な関係にある。点灯状態では、前述した様に、例えば、共通の駆動電圧源からのバイアス電圧がセグメントに印加され、これに対応する液晶の部分が、光を充分透過する光透過状態にある。非点灯状態では、例えば、共通の駆動電圧源からのバイアス電圧がオフ状態のスイッチ手段によりセグメントに印加されず、これに対応する液晶の部分が、光をあまり透過しない非透過状態にある。スイッチ手段は、各セグメントに対して、トランジスタスイッチなどで設けられる。
【0046】
通常、点灯セグメントSdの濃度を高めるには液晶表示装置の駆動電圧値を高めることで可能であるが、同時に非点灯セグメントSpにも僅かながらの洩れ電圧が発生してしまうため、実際には非点灯状態のセグメントも薄く表示が成されてしまう。従って、通常の液晶の駆動電圧値については、非点灯状態のセグメントSpの濃度は低い電圧AのpA点を非点灯セグメントとして設定し、点灯状態のセグメントSdの濃度は同じ電圧AのdA点に設定されてしまう。
【0047】
また、液晶表示装置の駆動電圧値を図4中の電圧Bとした場合は、電圧Aよりも高い駆動電圧値となるので、点灯状態のセグメントはdB点となって、より点灯セグメントの表示濃度は濃くなる。そして、非点灯状態のセグメントはpB点となって、表示濃度はdBよりは低いものの前述のpA点よりも濃い表示となる。つまり、非点灯状態のセグメントであっても、その濃度は、電圧Bの値を所定の値とすることによって制御することが可能である。
【0048】
本実施例においては、スーパーインポーズ用LCD22の背面には高輝度赤外光LED20を配置する。そして更に、スーパーインポーズ用LCD22の液晶表示板の表面には、前述した焦点検出領域を示す四角形のセグメント以外の部分を遮光するために、例えばレジスト方式の印刷や蒸着などによって不図示のマスキング処理を行う。この構成によって、曲線Sd、Spに印加される電圧が高くなれば、各セグメント部は透過率が高くなり、LED20からの光束はより多くファインダ光学系へ導かれる。各セグメント部は、例えば、周りが上記の様な遮光部分となった透明電極で形成され、この透明電極と共通透明電極との間に挟まれた液晶層の部分が、セグメント部への共通のバイアス電圧のオン・オフに従って透過状態・非透過状態となる。
【0049】
つまり、図4においてグラフの縦軸をセグメント濃度として説明をしたが、本実施例では、スーパーインポーズ用LCD22の各焦点検出領域を示す四角形のセグメント部の透過率が、図4におけるセグメント濃度と同等の意味を持つ。
【0050】
図5は、図4にて説明したスーパーインポーズ用LCD22に用いる液晶表示装置の駆動電圧を変更した場合の表示の一例を示す。スーパーインポーズ用LCD22に用いる液晶表示装置の駆動電圧として、図4で示した電圧Aにて表示を行った場合を図5(a)に示し、電圧Bにて表示を行った場合を図5(b)に示す。
【0051】
図5(a)では、スーパーインポーズ用LCD22に用いる液晶表示装置の駆動電圧は、前述した電圧Aによって行われている。よって、特定の焦点検出領域として選択されている点灯セグメント2208だけが、ファインダ内のオートフォーカス検出可能範囲を示す刻線1001の内側の左付近に濃く表示される。また、特定の焦点検出領域として選択されていないその他の焦点検出領域として割り当てられている非点灯セグメント2201〜2207、2209〜2219は、ファインダ内では殆ど視認することができない。
【0052】
一方、図5(b)では、スーパーインポーズ用LCD22に用いる液晶表示装置の駆動電圧は、前述した電圧Bによって行われている。この場合、特定の焦点検出領域として選択されている焦点検出領域を示す点灯セグメント2208は、ファインダ内のオートフォーカス検出可能範囲を示す刻線1001の内側の左付近に鮮明に表示される。また、特定の焦点検出領域として選択されていないその他の焦点検出領域として割り当てられている非点灯セグメント2201〜2207、2209〜2219についても、点灯セグメント2208よりも薄い状態でファインダ内に表示される。
【0053】
図6は、以上の様に構成されたカメラ全体(主としてCPU100)の動作フローチャートを示している。以下、カメラの動作について、このフローチャートと、図1、図2、図7〜図9とを併せ用いて説明する。なお、図6のフローチャートでは、「焦点検出」を「側距」という表現で示す所もある。
【0054】
まず、撮影者が電子ダイヤルをSW−MがONになる位置に回転させると、カメラ電源がONし(#300)、CPU100はSW1がONされるまで待機する(#301)。
【0055】
次に、CPU100は、SW−AFSが自動焦点検出領域選択モードか任意焦点検出領域選択モードかを確認し(#302)、自動焦点検出領域選択モードのときは、所定のアルゴリズムによって所定の焦点検出領域を選択する(#303)。ここでの、焦点検出領域の自動選択のアルゴリズムとしては幾つかの方法が考えられるが、いわゆる多点AFカメラにおいて採用されることが多い、中央の焦点検出領域に重み付けを置いた近点優先アルゴリズムが有効である。
【0056】
また、この段階では(#303)、ファインダ視野内の焦点検出領域の何処に合焦するかは特定できないため、このモード(自動焦点検出領域選択モード)においては、図7(a)に示した様に焦点検出領域は何も点灯されない状態である。また、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、前述した電圧Aによって行う表示形態がこれ以降の動作では維持される。
【0057】
その後、ここで選択された焦点検出領域での焦点検出動作を自動焦点検出回路103に行わせる(#308)。
【0058】
一方、#302において任意焦点検出領域選択モードである場合には、選択された焦点検出領域に対応する表示指標がファインダ視野内にスーパーインポーズ表示される(#304)。ここでのファインダ視野内の表示は図7(b)に示した様に、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、前述した電圧Bによって行う表示形態に変更される。例えば、図7(b)では、焦点検出領域2210が任意焦点検出領域である点灯セグメントとして選択された状態である。その他の焦点検出領域2201〜2209、2211〜2219の18点は、選択可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるものの、薄く焦点検出領域が表示された状態となる。
【0059】
更に、焦点検出領域移動指示スイッチ(SW−T、SW−B、SW−L、SW−R)のいずれかが押されたならば、対応する焦点検出領域のセグメント位置に焦点検出領域の移動を行い表示する(#305)。例えば、焦点検出領域移動指示スイッチSW−Lの2回押し操作が行われると、図7(c)に示した様に、焦点検出領域2208が任意焦点検出領域である点灯セグメントとして表示される。その他の焦点検出領域2201〜2207、2209〜2219の18点は、選択可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるものの、薄く表示された状態となる。また、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、前述した電圧Bによって行う表示形態がこれ以降の動作では維持される。
【0060】
なお、#305の焦点検出領域移動指示は、次の焦点検出領域選択モードの状態判別(#306)がON状態であり、且つSW1がON中であるAND条件により、割り込み操作を行うことが可能である。
【0061】
次に、焦点検出領域選択モード変更スイッチ(SW−AFD)の状態を判別する(#306)。本実施例では物理的なスイッチの状態判別として説明をしたが、例えばCPU100に付随したEEPROM100aに記憶されるパラメータ値にて変更するものであってもよい。
【0062】
焦点検出領域選択モード変更スイッチがON状態である場合には、#304にて説明した表示形態を維持したまま、選択された焦点検出領域での焦点検出動作を自動焦点検出回路103に行わせる(#308)。また、焦点検出領域選択モード変更スイッチがOFF状態である場合には、#306にて選択された焦点検出領域に対応する表示指標のみが点灯セグメントとしてファインダ視野内にスーパーインポーズ表示される(#307)。このとき、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、前述した電圧Aによって行う表示形態に変更される。よって、ここでのファインダ視野内の表示は、図7(d)に示した様に、焦点検出領域2208が任意焦点検出領域の点灯セグメントとして表示された状態である。その他の焦点検出領域2201〜2209、2211〜2219の18点は、選択不可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態として視認できなくなる。これ以降の動作では、この表示形態(表示形態3)が維持される。
【0063】
以降の表示形態は、前記した焦点検出領域選択モード変更スイッチ(SW−AFD)の状態がON状態に変更されるまでは、前述の表示状態を維持する。
【0064】
こうして、選択された焦点検出領域での焦点検出動作を自動焦点検出回路103に行わせる(#308)。自動焦点検出回路103による焦点検出動作が行われると、CPU100は選択された焦点検出領域が焦点検出不能な領域か否かを判定する(#309)。不能であれば、CPU100はLCD駆動回路105に信号を送ってファインダ内LCD27の合焦マーク(不図示)を点滅表示させる。この様にして、焦点検出が不能であることを撮影者に警告し(#310)、SW1がOFFされるまでこの動作を続ける(#311)。
【0065】
また、選択された焦点検出領域が焦点検出可能な領域であり、この焦点検出領域での焦点調節状態が合焦でなければ(#312)、CPU100はレンズ焦点調節回路110に信号を送って撮影レンズ3を合焦駆動させる(#313)。レンズ駆動後、自動焦点検出回路103は再度、焦点検出を行い(#308)、焦点検出領域が合焦しているか否かの判定を行う(#312)。そして、焦点検出領域の合焦が得られると、CPU100はLCD駆動回路105に信号を送ってファインダ内LCD27の合焦マーク(不図示)を点灯させる。
【0066】
他方、自動焦点検出領域選択モードのときは、図8(a)に示した様に、自動選択された焦点検出領域に対応する焦点検出領域(例えば2208)を、一瞬高輝度に点灯し、撮影者に合焦であることを知らせる(#314)。任意焦点検出領域選択モードで、且つ焦点検出領域選択モード変更スイッチがONの時は、図8(b)に示した様に、任意焦点検出領域として表示されていた焦点検出領域2208が一瞬高輝度に点灯し、撮影者に合焦であることを知らせる(#314)。この一瞬の高輝度点灯は、LED20の一瞬の高輝度発光で行うことができる。
【0067】
このとき、前述した#305の焦点検出領域移動指示を割り込み操作として可能としている。よって、その他の焦点検出領域2201〜2207、2209〜2219の18点は、撮影者の焦点検出領域移動指示操作による選択移動可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるものの、薄く焦点検出領域が表示された状態となる。また、任意焦点検出領域選択モードで、且つ焦点検出領域選択モード変更スイッチがOFFの時は、図8(a)と同様な表示を行う。
【0068】
次に、合焦状態がファインダ内に表示されたのを撮影者が見て、その焦点検出領域が正しくないと認識してSW1をOFFすると(#315)、引き続きCPU100はSW1がONされるまで待機する(#301)。また、撮影者が合焦表示された焦点検出領域を見て、引き続きSW1をONし続けたときは(#315)、CPU100は測光回路102に信号を送信して測光を行わせる(#316)。
【0069】
このとき、本実施例では、合焦した焦点検出領域を含む測光領域(不図示)に重み付けした測光演算を行い、露出値が演算される。そして、この演算結果として、ファインダ内LCD27の絞り値(不図示)を表示する。
【0070】
次に、CPU100は、SW2がONされているかどうかを判定し(#317)、SW2がOFFであれば再びSW1の状態確認を行う(#315)。SW2がONされているときは、CPU100はシャッター制御回路107、モーター制御回路108及び絞り駆動回路108にそれぞれ信号を送信する。つまり、まず、モーターM2に通電し、主ミラー5をアップさせ、絞り29を絞り込んだ後、マグネットMG1に通電してシャッタ7の先幕を走行させる。絞り値及びシャッタ速度(シャッタ秒時)は、先に演算された露出値と設定された撮像素子8の感度とに基づいて決定される。そして、決定されたシャッタ秒時が経過した後、マグネットMG2に通電し、シャッタ7の後幕を走行させ、露光を終了する。
【0071】
露光が終了すると、モーターM2に再度通電し、感光部材8の駒送りを行い、一連のシャッタレリーズシーケンスを終了する(#318)。その後、CPU100は再びSW1がONされるまで待機する(#301)。
【0072】
本実施例では、焦点検出動作は位相差検出方式により行われる。以下に、図1及び図9を用いてこの方式を説明する。図1に示す様に、撮影レンズ2から入射した光の一部は主ミラー5を透過し、サブミラー6によって下方に反射される。サブミラー6によって反射された光は、1次ピント面pを通り、更にフイールドレンズ9a、反射ミラー9b及び絞り9dを経て、メガネレンズと呼ばれる2次結像レンズ9eに達し、ここで2つの像A、Bが分離形成される。
【0073】
この分離形成された2つの像A、Bは、反射ミラー9cにて反射され、ラインセンサーユニット9fにそれぞれ投影される。ラインセンサーユニット9fは、所定ピクセル数の光電変換素子(ラインセンサーSPC)が所定ピッチで配列されて構成されており、ラインセンサーユニット9fに投影された2つの像A、Bは光電変換される。これにより、図9に示す出力が得られる。
【0074】
この出力は、2つの像A、Bの光量分布の相対的な位置関係、即ち光量分布のずれ量により異なり、更に光量分布のずれ量は撮影レンズ2の焦点調節状態により異なってくる。例えば、ラインセンサー上の素子の並び方向に、撮影レンズ2の予定結像面(一次ピント面)pからの焦点外れ量に応じた横ずれ量となって表れてくる。
【0075】
図9において、(a)は合焦状態における、(b)は前ピン状態における、(c)は後ピン状態におけるラインセンサー上の被写体像の状態をそれぞれ表しており、2つの被写体像の間隔が所定の値になった時、合焦と判定するものである。
【0076】
以上説明した様に、本実施例によれば、特定の焦点検出領域を選択する操作が不可能なモード時には、選択されている焦点検出領域のセグメントは鮮明に表示されるとともに、その他の選択が不可能な焦点検出領域は表示されない。そのため、被写体を観察する際の目障り感が少ないファインダ視野となる。また、特定の焦点検出領域を選択する操作が可能なモード時には、前記モードよりも液晶表示装置の全体の駆動電圧を高くすることで、選択移動が可能な焦点検出領域が非点灯状態のセグメントであっても液晶表示上には薄く表示される。そのため、選択移動先の焦点検出領域として視認可能となる。これによって、選択移動が可能な焦点検出領域のファインダ上の位置が示されるため、被写体と移動させたい焦点検出領域との相対位置を考慮したフレーミングや、焦点検出領域の選択操作性が向上する。
【0077】
また、前記した特定の焦点検出領域を選択するモードに応じた表示状態の切換えは、液晶表示装置の全体の駆動電圧を切換える構成である。よって、表示セグメントごとに独立した制御ポートを設けることなく、従来の表示装置に対しても、電気回路や実装規模を大きく変更することなく構成を実現することが可能である。
【0078】
また更には、前記特定の焦点検出領域を選択するモードに応じてファインダ表示状態が異なるため、焦点検出領域の選択モードが何れの状態になっているかを一目で判別することが可能となる。
【0079】
また、液晶表示装置の背面に配置した発光素子からファインダ光学系へ導かれる焦点検出領域の状態を表示する光束と、撮影に際し被写体輝度を検出するためのフォーカシングスクリーンから測光センサーへの被写体像の光束とは、異なる。この様に異なる光路によって構成されるので、撮影前に行う被写体の輝度検出時も含め、発光素子を用いた焦点検出領域の状態表示を常時行うことが可能となる。
【0080】
また、液晶表示装置の焦点検出領域表示部が小型であっても、ファインダ視野内の比較的広い面積の領域に大きく表示することができる。そして、これと同時に、液晶表示装置を含めた焦点検出領域表示部の機構と、フォーカシングスクリーン部の機構とが異なる部品にて構成されるため、フォーカシングスクリーン部の構成が簡略化できる。このことで、ユーザー自身によるフォーカシングスクリーンの交換が可能なカメラを安価に提供することが可能となる。
【0081】
(第2実施例)
本発明の第2実施例を説明する。図10は、本発明の第2実施例においてファインダを覗いた場合に見えるファインダ視野内の構成を示している。
【0082】
図10(a)において、2201〜2219はスーパーインポーズ用LCD22によりスーパーインポーズ表示される19組の第1の表示指標群であり、19個の焦点検出領域に対応する様に配置されている。図10(b)の2230〜2255は、同じくスーパーインポーズ用LCD22によりスーパーインポーズ表示される26組の第2の表示指標群である。本実施例において、図2にて説明したCCDからなるラインセンサー9f等から構成された位相差方式の焦点検出装置9は、45箇所の焦点検出領域に対応したラインセンサーを備える。即ち、前述したファインダ視野内の第1の表示指標群の19個と第2の表示指標群の26個との合計45箇所の焦点検出領域に対応したラインセンサーを備え、個々の焦点検出に対応した焦点検出領域において焦点調節状態の検出を行う。
【0083】
図10の説明では、第1の表示指標群と第2の表示指標群とを別々の図面にて説明したが、実際には同一の液晶表示装置にて構成されるものである。また、本実施例において、前述の第1の表示指標群セグメント2201〜2219を駆動する電圧値と、第2の表示指標群セグメント2230〜2255を駆動する電圧値とは、LCD駆動回路105内の回路上、独立して制御可能な構成としている。即ち、それぞれの表示指標群について、前述した様に電圧Aと電圧Bの間で切り換えられるが、これらの電圧値は独立に制御可能であるので、同じにもできるし異ならせることもできる。
【0084】
図11は、上記構成を有する第2実施例のカメラ全体(主としてCPU100)の動作フローチャートを示す。以下、カメラの動作について、このフローチャートと、図1、図2、図12〜図13を併せ用いて説明する。
【0085】
まず、撮影者が電子ダイヤルをSW−MがONになる位置に回転させると、カメラ電源がONし(#400)、CPU100はSW1がONされるまで待機する(#401)。
【0086】
次に、前述したファインダ視野内の第1の表示指標群の19個の焦点検出領域と第2の表示指標群の26個の焦点検出領域とを加えた45個の焦点検出エリアで焦点検出するか選択する(#401a)。ここでの選択は、例えばCPU100に付随したEEPROM100aに記憶されるパラメータ値にて変更するものであってもよい。
【0087】
焦点検出エリアが19点のときは、第1の表示指標群セグメント2201〜2219のみを駆動する(#401b)。一方、焦点検出エリアが45点のときは、第1の表示指標群セグメント2201〜2219と第2の表示指標群セグメント2230〜2255の両方を駆動する(#401c)。
【0088】
次に、CPU100は、SW−AFSが自動焦点検出領域選択モードか任意焦点検出領域選択モードかを確認し(#402)、自動焦点検出領域選択モードのときは、所定のアルゴリズムによって所定の焦点検出領域を選択する(#403)。ここでも、焦点検出領域の自動選択のアルゴリズムとしては幾つかの方法が考えられるが、いわゆる多点AFカメラにおいて採用されることが多い、中央の焦点検出領域に重み付けを置いた近点優先アルゴリズムが有効である。
【0089】
また、この段階では(#403)、ファインダ視野内の焦点検出領域の何処に合焦するかは特定できないため、このモード(自動焦点検出領域選択モード)においては、図12(a)に示した様に焦点検出領域は何れも点灯されない状態(表示形態1)である。また、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、前述した電圧Aによって行われる表示形態がこれ以降の動作では維持される。
【0090】
その後、ここで選択された焦点検出領域での焦点検出動作を自動焦点検出回路103に行わせる(#408)。
【0091】
一方、#402において任意焦点検出領域選択モードである場合には、選択された焦点検出領域に対応する表示指標がファインダ視野内にスーパーインポーズ表示(表示形態2)される(#404)。
【0092】
ここで、#401bの19点の焦点検出エリアが選択されているときは、ファインダ視野内の表示は図12(b)に示した様になる。即ち、液晶スーパーインポーズ用LCD22の第1の表示指標群セグメント2201〜2219の駆動電圧は、前述した電圧Bによって行う表示形態に変更される。
【0093】
一方、#401cの45点の焦点検出エリアが選択されているときは、ファインダ視野内の表示は図12(c)に示した様になる。即ち、液晶スーパーインポーズ用LCD22の第1の表示指標群セグメント2201〜2219及び第2の表示指標群セグメント2230〜2255の駆動電圧は、前述した電圧Bによって行う表示形態に変更される。
【0094】
更に、焦点検出領域移動指示スイッチ(SW−T、SW−B、SW−L、SW−R)のいずれかが押されたならば、対応する焦点検出領域のセグメント位置に焦点検出領域の移動を行い表示する(#405)。
【0095】
#401bの19点の焦点検出エリアが選択されているときは、例えば、焦点検出領域移動指示スイッチSW−Lの2回押し操作が行われると、図12(d)に示す様に、焦点検出領域2208が任意焦点検出領域の点灯セグメントとして表示される。その他の焦点検出領域2201〜2207、2209〜2219の18点は、選択可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるものの薄く焦点検出領域が表示された状態となる。
【0096】
一方、#401cの45点の焦点検出エリアが選択されているときは、次の様になる。例えば、焦点検出領域移動指示スイッチSW−Lの5回押し操作が行われると、図12(e)に示した様に、焦点検出領域2208が任意焦点検出領域である点灯セグメントとして表示される。その他の焦点検出領域2201〜2207、2209〜2219の18点と2230〜2255の26点は、選択可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるものの薄く焦点検出領域が表示された状態となる。
【0097】
また、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、対応した表示セグメント群が前述した電圧Bによって行われる表示形態がこれ以降の動作では維持される。
【0098】
なお、#405の焦点検出領域移動指示は、次の焦点検出領域選択モードの状態判別(#406)がON状態であり、且つSW1がON中であるAND条件により、割り込み操作を行うことが可能である。
【0099】
次に、焦点検出領域選択モード変更スイッチ(SW−AFD)の状態を判別する(#406)。本実施例の説明でも物理的なスイッチの状態判別としたが、例えばCPU100に付随したEEPROM100aに記憶されるパラメータ値にて変更するものであってもよい。焦点検出領域選択モード変更スイッチがON状態である場合には、#404にて説明した表示形態を維持したまま、選択された焦点検出領域での焦点検出動作を自動焦点検出回路103に行わせる(#408)。
【0100】
また、焦点検出領域選択モード変更スイッチがOFF状態である場合には、#406にて選択された焦点検出領域に対応する表示指標のみが点灯セグメントとしてファインダ視野内にスーパーインポーズ表示(表示形態3)される(#407)。
【0101】
このとき、液晶スーパーインポーズ用LCD22の駆動電圧は、対応した表示セグメント群について前述した電圧Aによって行う表示形態に変更されるので、ここでのファインダ視野内の表示は図12(f)に示した様になる。即ち、焦点検出領域2208が任意焦点検出領域の点灯セグメントとして表示された状態である。
【0102】
他方、その他の焦点検出領域2201〜2209、2211〜2219の18点又は2230〜2255の26点を加えた44点は、選択不可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態として視認できなくなる。これ以降の動作ではこの表示形態が維持される。
【0103】
以降の表示形態は、前記した焦点検出領域選択モード変更スイッチ(SW−AFD)の状態がON状態に変更されるまでは、前述の表示状態が維持される。
【0104】
次に、選択された焦点検出領域での焦点検出動作を自動焦点検出回路103に行わせる(#408)。自動焦点検出回路103による焦点検出動作が行われると、CPU100は選択された焦点検出領域が焦点検出不能な領域か否かを判定する(#409)。不能であれば、CPU100はLCD駆動回路105に信号を送ってファインダ内LCD27の合焦マーク(不図示)を点滅表示させる。こうして、焦点検出が不能であることを撮影者に警告し(#410)、SW1がOFFされるまでこの動作を続ける(#411)。
【0105】
選択された焦点検出領域が焦点検出可能な領域であり、この焦点検出領域での焦点調節状態が合焦でなければ(#412)、CPU100はレンズ焦点調節回路110に信号を送って撮影レンズ3を合焦駆動させる(#413)。レンズ駆動後、自動焦点検出回路103は再度、焦点検出を行い(#408)、焦点検出領域が合焦しているか否かの判定を行う(#412)。そして、焦点検出領域の合焦が得られると、CPU100はLCD駆動回路105に信号を送ってファインダ内LCD27の合焦マーク(不図示)を点灯させる。
【0106】
また、自動焦点検出領域選択モードのときは、図13(a)に示した様に、自動選択された焦点検出領域に対応する焦点検出領域(例えば2208)を、一瞬高輝度に点灯し、撮影者に合焦であることを知らせる(#414)。
【0107】
ここで、#401bの19点の焦点検出エリアが選択され、更に任意焦点検出領域選択モードで、且つ焦点検出領域選択モード変更スイッチがONの時は、図13(b)に示した様になる。即ち、任意焦点検出領域として表示されていた焦点検出領域2208が一瞬高輝度に点灯し、撮影者に合焦であることを知らせる(#414)。このとき、前述した#405の焦点検出領域移動指示を割り込み操作として可能としている。よって、その他の焦点検出領域2201〜2207、2209〜2219の18点は、撮影者の焦点検出領域移動指示操作による選択移動可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるものの薄く焦点検出領域が表示された状態となる。
【0108】
一方、#401bの45点の焦点検出エリアが選択され、更に任意焦点検出領域選択モードで、且つ焦点検出領域選択モード変更スイッチがONの時は、図13(c)に示した様になる。即ち、任意焦点検出領域として表示されていた焦点検出領域2208が一瞬高輝度に点灯し、撮影者に合焦であることを知らせる(#414)。このとき、前述した#405の焦点検出領域移動指示を割り込み操作として可能としている。よって、その他の焦点検出領域2201〜2207、2209〜2219の18点と2230〜2255の26点の44点は、焦点検出領域移動指示操作による選択移動可能な焦点検出領域として非点灯セグメントの状態ではあるが、薄く表示される。
【0109】
また、任意焦点検出領域選択モードで、且つ焦点検出領域選択モード変更スイッチがOFFの時は、図13(a)と同様な表示を行う。
【0110】
以降の動作については、第1実施例の図6にて説明した内容と同様なため、省略する。
【0111】
本実施例によれば、選択移動可能な焦点検出領域の領域と、選択移動不可能な焦点検出領域の領域との表示領域を複数(ここでは2つ)のグループに分けて個々に異なる電圧で駆動する。このことで、より多くのオートフォーカスの焦点検出領域が存在するカメラにおいても、選択移動可能な焦点検出領域のみに限定した表示ができる。よって、選択不可能な焦点検出領域が表示されてしまうと言ったことが無くなり、被写体を観察する際に目障り感の少ないファインダが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施例である一眼レフカメラの概略構成を示す図。
【図2】本発明の実施例である一眼レフカメラに内蔵された電気回路の構成を示す図。
【図3】本発明の第1実施例であるファインダの視野内の構成を示す図。
【図4】本発明の実施例である液晶表示装置のセグメントの濃度とバイアス電圧との関係を示す説明図。
【図5】本発明の第1実施例であるファインダの視野内の構成を示す図。
【図6】本発明の第1実施例である一眼レフカメラの動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の第1実施例であるファインダ視野内の焦点検出領域の選択を表す表示形態を示す説明図。
【図8】本発明の第1実施例であるファインダ視野内の合焦状態の表示形態を示す説明図。
【図9】本発明の実施例における位相差検出方式の焦点検出動作を説明する図。
【図10】本発明の第2実施例であるファインダの視野内の構成を示す図。
【図11】本発明の第2実施例である一眼レフカメラの動作を示すフローチャート。
【図12】本発明の第2実施例であるファインダ視野内の焦点検出領域の選択を表す表示形態を示す説明図。
【図13】本発明の第2実施例であるファインダ視野内の合焦状態の表示形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0113】
10 フォーカシングスクリーン
13 正立像形成部材(ペンタダハプリズム)
14a、14b 反射面
16 接眼光学部材
20 発光素子
22 液晶表示装置
2201〜2219、2230〜2255 測定領域(セグメント、焦点検出領域、側光領域)
2201〜2219 第1の測定領域
2230〜2255 第2の測定領域
SW−AFD 測定領域選択モード変更手段
SW−T、SW−B、SW−L、SW−R、SW−DIAL1、SW−DIAL2 測定領域移動指示部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像に重ね合せて複数の測定領域を表示する透過型の液晶表示装置と、
前記複数の測定領域の内、特定の測定領域を移動指示する操作が可能なモードと不可能なモードとの間で切換えを行う測定領域選択モード変更手段と、
特定の測定領域を移動指示する操作が可能な前記測定領域選択モード変更手段の切換えによるモード時に、選択された特定の測定領域を移動指示する測定領域移動指示部材と、を備え、
前記液晶表示装置の複数の測定領域を示すセグメントの内、選択された特定の測定領域のセグメントを、共通の駆動電圧が印加された第1の状態とし、前記選択された特定の測定領域以外の測定領域のセグメントを、前記共通の駆動電圧が印加されない第2の状態とし、
特定の測定領域の移動指示が不可能な前記測定領域選択モード変更手段の切換えによるモード時の前記液晶表示装置の前記共通の駆動電圧に対し、特定の測定領域の移動指示が可能なモード時には前記液晶表示装置の前記共通の駆動電圧を高くすることを特徴とする撮像機器の測定領域情報表示装置。
【請求項2】
撮影レンズからの被写体像を観察するために、撮影光束の少なくとも一部が結像される予定結像面に配置されたフォーカシングスクリーンと、
前記液晶表示装置の近傍に配置された発光素子と、
前記フォーカシングスクリーンの上部に配置された正立像形成部材と、
前記正立像形成部材よりも後方の接眼光学部材の一部に設けられた反射面と、を備え、
前記発光素子からの光束を、前記液晶表示装置を介して前記反射面に投影することで、前記液晶表示装置の複数の測定領域を示すセグメントを、前記フォーカシングスクリーン上に結像された被写体像に重ね合せて、表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像機器の測定領域情報表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示装置の測定領域を表示する表示部には、前記複数の測定領域として、第1の複数の測定領域と、前記第1の複数の測定領域とは異なる第2の複数の測定領域とを備え、
前記第1の複数の測定領域を示す複数のセグメントと、前記第2の複数の測定領域を示す複数のセグメントとは、夫々、独立に共通の駆動電圧の印加が可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像機器の測定領域情報表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示装置の測定領域は、焦点検出領域または測光領域であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の撮像機器の測定領域情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−134026(P2010−134026A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307486(P2008−307486)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】