説明

撮像素子基板の製造方法、撮像素子、及びスパッタリング装置

【課題】受光部に光を導く導光部を形成する半導体基板に、スパッタリングにより厚さ均一の反射膜を形成すること。
【解決手段】半導体基板(26)は、受光部(42)を複数形成するウエハ(43)の表面が絶縁体(44)で覆われる構成である。絶縁体(44)には、各受光部(42)の上方に、半導体基板(26)と直交する方向に延びる筒状の導光部(45)が形成されている。また、開口(46)側の端部には、奥に向かうに連れて口径が小さくなるテーパ部(47)が切欠き形成されている。鉛直下方に向けて飛散するスパッタ原子(34)が斜めに被着する向きに半導体基板(26)を配置する。半導体基板(26)を、それに直交する中心軸回りに回転させながらスパッタ原子(34)を被着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子基板の製造方法、撮像素子、及びスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子の製造工程には、半導体基板上に薄膜を形成する成膜工程が種々含まれる。その成膜技術は、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)と物理気相成長(PVD;Physical Vapor Deposition)とに分けられる。物理気相成長の代表として、スパッタリング(「スパッタ」とも称される。)がある。スパッタリングとは、諸条件の下、ターゲットと呼ばれる成膜材料の塊に不活性なイオンガスを衝突させることで、成膜材料の原子を飛散させて半導体基板に被着させ、薄膜を形成する方法である。スパッタリングによる成膜は、化学気相成長による成膜と比較して下地材料の種類によらず良好な密着性が得やすいという特徴があり、その成膜技術は、固体撮像素子の製造工程に広く用いられている。
【0003】
スパッタリングによって平滑な半導体基板面に薄膜を形成する場合には、一般に、ターゲットと半導体基板とを平行に設置して行う。成膜材料の原子が、主にターゲットから垂直な方向に飛散するからである。これにより、成膜材料の原子を垂直に被着させることができ、膜厚を均一に成膜することができる。しかしながら、半導体基板面に凹凸がある場合には、成膜材料の原子が垂直に被着するとは限らず、膜厚を均一に形成することが難しい。
【0004】
一方、化学気相成長は、諸条件の下、半導体基板を気化した成膜材料中に配置することで、下地材料表面で反応させて成膜材料を堆積させ、薄膜を形成する方法のことである。化学気相成長による成膜は、スパッタリングによる成膜と比較して半導体基板面に凹凸がある場合にも膜厚を均一に形成することができる。そのため、化学気相成長は、膜厚の均一性が特に重要視される、光を受光部に導く導光部を形成する半導体基板の成膜に用いられたりする(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、下地材料の種類によっては、化学気相成長を用いることはできず、導光部を形成する半導体基板の成膜であっても、スパッタリング、その他の物理気相成長を用いざるを得ない。
【0006】
導光部を形成する半導体基板をスパッタリングにより成膜する場合、図13に示すように、先ず、真空状態のチャンバ(真空槽)101内に、成膜材料からなるターゲット102と、導光部103(図14参照)を形成する半導体基板104とを平行に配置した上で、ターゲット102にイオンガス(図示せず)を衝突させる。イオンガスの衝突によりターゲット102からスパッタ原子105が飛散して半導体基板104に被着し、薄膜106(図14参照)が形成される。
【特許文献1】特開2002−118245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図14に示すように、飛散するスパッタ原子105(図13参照)の多くが、導光部103の開口107側の端部や基板面108に被着するため、導光部103の側壁109に形成される薄膜106の厚さは、開口107側の端部や基板面108に形成される薄膜106より薄く、且つ、開口107から奥に向かうに連れて更に薄くなってしまう。また、開口107側の端部には、庇状のオーバーハング110が形成され、受光効率の悪化を招くことになる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、受光部に光を導く導光部を有した半導体基板に厚さ均一の反射膜を形成する撮像素子基板の製造方法、それに用いられるスパッタリング装置、及び上記製造方法を製造工程に組み込んで製造される撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撮像素子基板の製造方法は、基板の表面に形成された複数の開口から基板の一定深さ位置に各々形成された受光部までの間を受光部側で狭くなるテーパ状の導光部でそれぞれ空間的に連通させた撮像素子基板を平板状のターゲット材料と併せてチャンバ内に収容するとともに、撮像素子基板の表面をターゲット材料の表面に対して相対的に傾けてスパッタリングし、ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子をそれぞれの導光部を形成する内周壁に付着させ、内周壁に反射膜を形成することを特徴とする。
【0010】
なお、ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段をターゲット材料と撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることが好ましい。
【0011】
また、ターゲット材料又は撮像素子基板のいずれかを撮像素子基板の表面に垂直な軸回りに回転させることが好ましい。
【0012】
本発明の撮像素子は、上記撮像素子基板の製造方法を製造工程に組み込んで製造される。
【0013】
本発明のスパッタリング装置は、基板の表面に形成された複数の開口から基板の一定深さ位置に各々形成された受光部までの間を受光部側で狭くなるテーパ状の導光部でそれぞれ空間的に連通させた撮像素子基板を平板状のターゲット材料と併せてチャンバ内に収容するとともに、撮像素子基板の表面をターゲット材料の表面に対して相対的に傾けてスパッタリングし、ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子をそれぞれの導光部を形成する内周壁に付着させ、内周壁に反射膜を形成することを特徴とする。
【0014】
なお、ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段をターゲット材料と撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることが好ましい。
【0015】
また、ターゲット材料又は撮像素子基板のいずれかを撮像素子基板の表面に垂直な軸回りに回転させることが好ましい。
【0016】
本発明の撮像素子基板の製造方法は、基板の表面に形成された開口から基板の一定深さ位置に形成された受光部までの間を受光部側で狭くなるテーパ状の導光部で空間的に連通させた撮像素子基板をターゲット材料とともにチャンバ内に収容し、ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子を導光部を形成する内周壁に付着させて内周壁に反射膜を形成する撮像素子基板の製造方法であって、ターゲット材料の表面は、撮像素子基板に近い側で外径が大きい円錐台の外周面に接する面形状に倣って円環状に連なるとともに全周にわたって内向きに傾斜し、撮像素子基板は、その表面がターゲット材料の円環状表面の中心を通る軸に対して垂直になるように配置されることを特徴とする。
【0017】
なお、ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段をターゲット材料と撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることが好ましい。
【0018】
本発明の撮像素子は、上記撮像素子基板の製造方法を製造工程に組み込んで製造される。
【0019】
本発明のスパッタリング装置は、基板の表面に形成された開口から基板の一定深さ位置に形成された受光部までの間を受光部側で狭くなるテーパ状の導光部で空間的に連通させた撮像素子基板をターゲット材料とともにチャンバ内に収容し、ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子を導光部を形成する内周壁に付着させて内周壁に反射膜を形成するスパッタリング装置であって、ターゲット材料の表面は、撮像素子基板に近い側で外径が大きい円錐台の外周面に接する面形状に倣って円環状に連なるとともに全周にわたって内向きに傾斜し、撮像素子基板は、その表面がターゲット材料の円環状表面の中心を通る軸に対して垂直になるように配置されることを特徴とする。
【0020】
なお、ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段をターゲット材料と撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の撮像素子基板の製造方法によれば、受光部側で狭くなるテーパ状の導光部を有した撮像素子基板を、その表面がターゲット材料の表面に対して相対的に傾くようにスパッタリングすることより、導光部を形成する内周壁に厚さ均一の反射膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、固体撮像素子の製造方法について図1の固体撮像素子の製造工程図を用いて説明する。但し、本発明は、ここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
【0023】
固体撮像素子の製造工程は、周知であるように、半導体基板に処理を施して回路形成を行う前工程(撮像素子基板の製造工程)と、その半導体基板からチップを切り出し、パッケージ化する工程との2つに大きく分けることができる。前工程は、基板工程(S1)、配線工程(S2)及び基板検査工程(S3)から構成される。
【0024】
各工程において処理が施されるウエハは、高純度単結晶シリコンのインゴットを外径150mm〜300mmの円盤形状に切り落とすことで準備される。そのウエハを半導体基板として、先ず、基板工程(S1)において成膜やフォトリソグラフィやイオン注入を行う。さらに、配線工程(S2)において配線構造を形成する。以上により、半導体基板上に同一のデバイスが複数形成されることとなる。最後に、基板検査工程(S3)において電気特性や光学特性の良否を判定する。なお、基板工程(S1)における成膜についての詳細は、後述する。
【0025】
後工程は、ダイシング工程(S4)、マウンティング工程(S5)、ボンディング工程(S6)、モールド工程(S7)、リード加工工程(S8)、マーキング工程(S9)、及びチップ検査工程(S10)から構成される。
【0026】
先ず、ダイシング工程(S4)において半導体基板をデバイスごとに切断してチップにする。切断には、ダイヤモンド粒子が貼付した円形刃などが用いられる。続いて、マウンティング工程(S5)においてチップをフレームに固定し、ボンディング工程(S6)においてチップをフレームに電気的に接続する。そして、モールド工程(S7)においてチップをフレームと一緒に樹脂で封止する。さらに、リード加工工程(S8)においてリード(導線)を成型し、マーキング工程(S9)においてパッケージ表面に製品情報などをマークする。最後に、チップ検査工程(S10)においてパッケージ化されたチップの電気特性や光学特性を調べる。このように、前工程及び後工程を経ることで固体撮像素子は製造される。
【0027】
次に、基板工程(S1)の成膜に用いる第1実施形態のスパッタリング装置11について図面を参照しながら説明する。但し、成膜に用いるスパッタリング装置は、ここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図2に示すように、スパッタリング装置11は、内部を真空にすることができるチャンバ(真空槽)12、薄膜を形成する際に必要となる様々な計器や装置からなる操作部13、及び、操作部13を構成する各種計器や装置を制御するコンピュータ14などから構成される。
【0029】
チャンバ12の内部には、ステージ16、ステージ駆動部17、ターゲット18、磁石ユニット19、及び、シャッタ20が配設されている。また、チャンバ(真空槽)12には、バルブ21,22を介してガスボンベ23,24が接続され、アルゴン(A)ガス及び窒素(N)ガスを導入することができる。
【0030】
ステージ16は、傾斜した状態に配設され、薄膜を形成する半導体基板26が配置される。ステージ16には、ヒータ(図示せず)が埋め込まれている。ヒータは、ステージ16に配置される半導体基板26を加熱する。ヒータに接続されるヒートコントローラ25は、ヒータの加熱温度を制御し、半導体基板26を所定温度に保つ。また、ステージ16は、半導体基板26に薄膜を形成する際、電極が印加され陽極になる。ステージ駆動部17は、ステージ16に直交する中心軸27回りにステージ16を回転させる。このステージ駆動部17は、チャンバ12の外部にあるステージコントローラ28の操作によって自在に駆動する。
【0031】
ターゲット18は、半導体基板26に薄膜を形成する成膜材料(例えば、アルミニウム)からなる平板状であり、磁石ユニット19に外接し、ステージ16と斜めに対面する。また、ターゲット18は、半導体基板26に薄膜を形成する際、電圧が印加され陰極になる。
【0032】
磁石ユニット19の内部には、磁石30が設けられている。磁石30は、2箇所のN極と1箇所のS極をターゲット18側に備えた永久磁石である。この磁石30は、ターゲット18の表面付近に半円状の磁力線を持つ磁場を生成する。
【0033】
アルゴンガスは、電界を有したチャンバ12内に導入されると、アルゴンイオン(A)と電子(e)とに電離する。アルゴンイオンは、電界や磁場が作用して螺旋状に運動し、ターゲット18に衝突する。アルゴンイオンの運動中、その移動経路上にアルゴンガスがあるとき、アルゴンイオンはアルゴンガスと衝突し、アルゴンガスはアルゴンイオンと電子とに電離する。
【0034】
アルゴンイオンとアルゴンガスとの衝突により発生したアルゴンイオンも上述のように運動し、ターゲット18に衝突したり、アルゴンガスの更なる電離を促したりする。なお、連鎖的にアルゴンガスが電離することによって、ターゲット18の表面付近にプラズマ32が生成される。
【0035】
アルゴンイオンがターゲット18に衝突することで、ターゲット18からスパッタ原子34が叩き出され、スパッタ原子34が飛散する。スパッタ原子34の飛散する方向は、アルゴンイオンの衝突する向きに対応するが、主に、ターゲット18の面に対して垂直な方向となる。本実施形態のスパッタリング装置11の場合、主に、鉛直下方に向けてスパッタ原子34は飛散する。
【0036】
シャッタ20は、節36に回動自在に取り付けられ、モータ37の駆動によって開閉される。シャッタ20の開閉動作は、シャッタコントローラ38によって制御される。シャッタ20は、半導体基板26の表面を覆う閉じ位置にある場合、半導体基板26をスパッタ原子34から遮蔽する。一方、シャッタ20が半導体基板26を開放する開き位置にある場合、飛散するスパッタ原子34は半導体基板26に被着する。スパッタ原子34の被着により、半導体基板26上に薄膜が形成される。なお、垂直に近い角度を有してスパッタ原子34が被着する程、膜厚を均一に形成することができる。
【0037】
操作部13は、ヒートコントローラ25、ステージコントローラ28、シャッタコントローラ38、高圧電源39、及び、流量制御部40などから構成される。
【0038】
高圧電源39は、半導体基板26とターゲット18との間に電圧を印加する。半導体基板26とターゲット18との間に電圧が印加されると、チャンバ12内に導入されたアルゴンガスは電離し、上述したように、スパッタ原子34がターゲット18から飛散する。
【0039】
流量制御部40は、バルブ21に接続され、チャンバ12へ導入するアルゴンガスの流量を調節する。アルゴンガスの流量の調節によって、スパッタ原子34の発生量が調節され、半導体基板26上に形成する薄膜の成膜速度が調節される。
【0040】
次に、半導体基板26について図面を参照しながら説明する。但し、半導体基板は、ここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
【0041】
図3に示すように、半導体基板26は、受光部42を複数形成するウエハ43の表面が絶縁体44で覆われる構成である。絶縁体44には、各受光部42の上方に、半導体基板26と直交する方向に延びる筒状の導光部45が形成されている。導光部45は、その開口46から奥に向かうに連れて僅かに狭くなっている。また、開口46側の端部には、奥に向かうに連れて口径が小さくなるテーパ部47が切欠き形成されている。そのテーパ部47側壁の勾配は、半導体基板26と直交する軸48を基準に10°であることが好ましい。
【0042】
以下、上記構成のスパッタリング装置11の作用について図面を参照しながら説明する。図2に示すように、先ず、チャンバ12の内部に配設されたステージ16に、半導体基板26を配置する。半導体基板26は、ヒータによって加熱され、所定温度に保たれる。好ましくは、150℃である。チャンバ12内の気圧を10−7Pa程度の真空にした後に、半導体基板26とターゲット18との間に電圧を印加する。そして、流量を調節しながらアルゴンガスをチャンバ12に導入する。
【0043】
チャンバ12に導入されたアルゴンガスは、半導体基板26とターゲット18との間に生じる電界などによって、アルゴンイオンと電子とに電離する。アルゴンイオンは、電界や磁場によって、ターゲット18と衝突する。アルゴンイオンの衝突によって、ターゲット18からスパッタ原子34が叩き出され、スパッタ原子34が飛散する。シャッタ20を開くと、飛散するスパッタ原子34は半導体基板26に被着する。
【0044】
図4に示すように、半導体基板26は、飛散するスパッタ原子34が斜めに被着する向きに配置されている。導光部45側壁に被着するスパッタ原子34は、角度を有して被着する。特に、導光部45の開口46側の端部に形成されるテーパ部47には、より垂直に近い角度を有して被着する。半導体基板26を、それに直交する中心軸27回りに回転させながらスパッタ原子34を被着させることで、図5に示すように、導光部45には、開口46側の端部にオーバーハングを形成することなく、厚さ均一の薄膜50を形成することができる。
【0045】
また、受光部42に被着するスパッタ原子34は、半導体基板26が所定温度に保たれているので、導光部45側壁に被着したスパッタ原子34に引き寄せられるサーモマイグレーションをし、受光部42に薄膜50を形成しない。これにより、受光部42を露呈するために薄膜50をエッチングする必要はなく、エッチングすることによる受光部42への損傷はない。なお、導光部45側壁に形成した薄膜50は、光を反射させ、受光部42に光を導くことができる。
【0046】
なお、上記第1実施形態のスパッタリング装置11において、ステージ16に配置される半導体基板26を回転させながら成膜する場合を例に説明したが、これに限定されるのではなく、スパッタ原子34の半導体基板26へ被着する向きを変化させながら成膜することができれば良い。以下、第2実施形態のスパッタリング装置61について図面を参照しながら説明する。但し、成膜に用いるスパッタリング装置は、ここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
【0047】
図6に示すように、スパッタリング装置61は、チャンバ12、操作部13、及び、コンピュータ14などから構成される。チャンバ12の内部には、ステージ62、ターゲット18、磁石ユニット19、ユニット駆動部63、及び、シャッタ20が配設されている。
【0048】
ステージ62は、薄膜を形成する半導体基板26を水平に配置する台である。ステージ62には、半導体26を加熱するヒータ(図示せず)が埋め込まれている。
【0049】
磁石ユニット19は、ターゲット18を外接させる面が、ステージ62と斜めに対面する。ユニット駆動部63は、ステージ62に直交する中心軸27回りに磁石ユニット19を回転させる。このユニット駆動部63は、チャンバ12の外部にあるユニットコントローラ64の操作によって自在に駆動する。
【0050】
ターゲット18から飛散するスパッタ原子34の飛散方向は、本実施形態のスパッタリング装置61の場合、主に、ステージ62に配置される半導体基板26に所定角度を有して被着する方向となる。
【0051】
操作部13は、ヒートコントローラ25、シャッタコントローラ38、高圧電源39、流量制御部40、及び、ユニットコントローラ64などから構成される。
【0052】
なお、第1実施形態のスパッタリング装置11と同じ構成については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0053】
以下、上記構成のスパッタリング装置61の作用について図面を参照しながら説明する。先ず、チャンバ12の内部に配設されたステージ62に、半導体基板26を水平に配置する。半導体基板26は、ヒータによって加熱され、所定温度に保たれる。好ましくは、150℃である。そして、第1実施形態のスパッタリング装置11の場合と同様の過程によって、スパッタ原子34は飛散し、半導体基板26に被着する。
【0054】
図7に示すように、スパッタ原子34は、水平に配置される半導体基板26に対して斜めに被着する。導光部45側壁に被着するスパッタ原子34は、角度を有して被着する。特に、導光部45の開口46側の端部に形成されるテーパ部47には、より垂直に近い角度を有して被着する。磁石ユニット19を、半導体基板26に直交する中心軸27回りに回転させながらスパッタ原子34を被着させることで、図8に示すように、導光部45には、開口46側の端部にオーバーハングを形成することなく、厚さ均一の薄膜50を形成することができる。
【0055】
また、第1実施形態のスパッタリング装置11の場合と同様、スパッタリング装置61によれば、受光部42に被着するスパッタ原子34がサーモマイグレーションをし、受光部42に薄膜50を形成しない。これにより、受光部42を露呈するために薄膜50をエッチングする必要はなく、エッチングすることによる受光部42への損傷はない。
【0056】
なお、上記第1,2実施形態のスパッタリング装置11,61において、スパッタリング原子34の半導体基板26へ被着する向きを変化させながら成膜する場合を例に説明したが、これに限定させるのではない。以下、第3実施形態のスパッタリング装置71について図面を参照しながら説明する。但し、成膜に用いるスパッタリング装置は、ここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
【0057】
図9に示すように、スパッタリング装置71は、チャンバ12、操作部13、及び、コンピュータ14などから構成される。チャンバ12の内部には、ステージ62、ターゲット72、磁石ユニット73、及び、シャッタ20が配設されている。
【0058】
ターゲット72は、半導体基板26に薄膜を形成する成膜材料からなる、図10に示すような中空円錐台形状をしている。そのターゲット72は、磁石ユニット73に外接し、内周面がステージ62と斜めに対面する。また、ターゲット72は、半導体基板26に薄膜を形成する際、電圧が印加され陰極になる。
【0059】
磁石ユニット73には、底面に、円錐台形状に掘穿された凹部が形成され、その凹部にターゲット72が外接される。また、磁石ユニット73の内部には、磁石30が設けられている。
【0060】
ターゲット72から飛散するスパッタ原子34の飛散方向は、本実施形態のスパッタリング装置71の場合、主に、ステージ62に配置される半導体基板に所定角度を有して被着する方向となる。
【0061】
操作部13は、ヒートコントローラ25、シャッタコントローラ38、高圧電源39、及び、流量制御部40などから構成される。
【0062】
なお、第1,2実施形態のスパッタリング装置11、61と同じ構成については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0063】
以下、上記構成のスパッタリング装置71の作用について図面を参照しながら説明する。先ず、チャンバ12の内部に配設されたステージ62に、半導体基板26を水平に配置する。半導体基板26は、ヒータによって加熱され、所定温度に保たれる。好ましくは、150℃である。そして、第1,2実施形態のスパッタリング装置11,61の場合と同様の過程によって、スパッタ原子34は飛散し、半導体基板26に被着する。
【0064】
図11に示すように、スパッタ原子34は、水平に配置される半導体基板26に対して斜めに被着する。導光部45側壁に被着するスパッタ原子34は、あらゆる方向から所定の角度を有して被着する。特に、導光部45の開口46側の端部に形成されるテーパ部47には、より垂直に近い角度を有して被着する。図12に示すように、導光部45には、開口46側の端部にオーバーハングを形成することなく、厚さ均一の薄膜50を形成することができる。
【0065】
また、第1,2実施形態のスパッタリング装置11,61の場合と同様、スパッタリング装置71によれば、受光部42に被着するスパッタ原子34がサーモマイグレーションをし、受光部42に薄膜を形成しない。これにより、受光部42を露呈するために薄膜50をエッチングする必要はなく、エッチングすることによる受光部42への損傷はない。
【0066】
なお、上記各実施形態において、ターゲット18,72から飛散するスパッタ原子34が半導体基板26に直接被着する場合を例に説明したが、ターゲット18,72の面と平行となるように、ターゲット18,72と半導体基板26との間にコリメータを配置して、ターゲット18,72から飛散するスパッタ原子34を、コリメータを介して半導体基板26に被着させても良い。コリメータは、垂直に入射するスパッタ原子34を通過させ、斜めに入射するスパッタ原子34をトラップする。これにより、ターゲット18,72の面に対して垂直な方向にのみスパッタ原子34を飛散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】固体撮像素子の製造工程図である。
【図2】第1実施形態のスパッタリング装置を示す概略図である。
【図3】成膜前の半導体基板の横断面図である。
【図4】成膜開始時の半導体基板の横断面図である。
【図5】成膜後の半導体基板の横断面図である。
【図6】第2実施形態のスパッタリング装置を示す概略図である。
【図7】成膜開始時の半導体基板の横断面図である。
【図8】成膜後の半導体基板の横断面図である。
【図9】第3実施形態のスパッタリング装置を示す概略図である。
【図10】第3実施形態のターゲットの外観斜視図である。
【図11】成膜開始時の半導体基板の横断面図である。
【図12】成膜後の半導体基板の横断面図である。
【図13】従来のスパッタリング装置の概略図である。
【図14】従来のスパッタリングによる成膜方法を説明する導光部を有する半導体基板の横断面図である。
【符号の説明】
【0068】
11,61,71 スパッタリング装置
12 真空槽
16,62 ステージ
17 ステージ駆動部
18,72 ターゲット
26 半導体基板
27 中心軸
34 スパッタ原子
42 受光部
43 ウエハ
44 絶縁体
45 導光部
46 開口
47 テーパ部
48 軸
50 薄膜
63 ユニット駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成された複数の開口から基板の一定深さ位置に各々形成された受光部までの間を前記受光部側で狭くなるテーパ状の導光部でそれぞれ空間的に連通させた撮像素子基板を平板状のターゲット材料と併せてチャンバ内に収容するとともに、前記撮像素子基板の表面を前記ターゲット材料の表面に対して相対的に傾けてスパッタリングし、前記ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子を前記それぞれの導光部を形成する内周壁に付着させ、前記内周壁に反射膜を形成することを特徴とする撮像素子基板の製造方法。
【請求項2】
前記ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、前記ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段を前記ターゲット材料と前記撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることを特徴とする請求項1記載の撮像素子基板の製造方法。
【請求項3】
前記ターゲット材料又は前記撮像素子基板のいずれかを前記撮像素子基板の表面に垂直な軸回りに回転させることを特徴とする請求項2記載の撮像素子基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3何れか記載の撮像素子基板の製造方法を製造工程に組み込んで製造される撮像素子。
【請求項5】
基板の表面に形成された複数の開口から基板の一定深さ位置に各々形成された受光部までの間を前記受光部側で狭くなるテーパ状の導光部でそれぞれ空間的に連通させた撮像素子基板を平板状のターゲット材料と併せてチャンバ内に収容するとともに、前記撮像素子基板の表面を前記ターゲット材料の表面に対して相対的に傾けてスパッタリングし、前記ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子を前記それぞれの導光部を形成する内周壁に付着させ、前記内周壁に反射膜を形成することを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項6】
前記ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、前記ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段を前記ターゲット材料と前記撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることを特徴とする請求項5記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記ターゲット材料又は前記撮像素子基板のいずれかを前記撮像素子基板の表面に垂直な軸回りに回転させることを特徴とする請求項6記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
基板の表面に形成された開口から基板の一定深さ位置に形成された受光部までの間を前記受光部側で狭くなるテーパ状の導光部で空間的に連通させた撮像素子基板をターゲット材料とともにチャンバ内に収容し、前記ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子を前記導光部を形成する内周壁に付着させて前記内周壁に反射膜を形成する撮像素子基板の製造方法において、
前記ターゲット材料の表面は、前記撮像素子基板に近い側で外径が大きい円錐台の外周面に接する面形状に倣って円環状に連なるとともに全周にわたって内向きに傾斜し、前記撮像素子基板は、その表面が前記ターゲット材料の円環状表面の中心を通る軸に対して垂直になるように配置されることを特徴とする撮像素子基板の製造方法。
【請求項9】
前記ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、前記ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段を前記ターゲット材料と前記撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることを特徴とする請求項8記載の撮像素子基板の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の撮像素子基板の製造方法を製造工程に組み込んで製造される撮像素子。
【請求項11】
基板の表面に形成された開口から基板の一定深さ位置に形成された受光部までの間を前記受光部側で狭くなるテーパ状の導光部で空間的に連通させた撮像素子基板をターゲット材料とともにチャンバ内に収容し、前記ターゲット材料表面からの反射性をもつ飛散粒子を前記導光部を形成する内周壁に付着させて前記内周壁に反射膜を形成するスパッタリング装置において、
前記ターゲット材料の表面は、前記撮像素子基板に近い側で外径が大きい円錐台の外周面に接する面形状に倣って円環状に連なるとともに全周にわたって内向きに傾斜し、前記撮像素子基板は、その表面が前記ターゲット材料の円環状表面の中心を通る軸に対して垂直になるように配置されることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項12】
前記ターゲット材料の表面から垂直に飛散する飛散粒子を通過させ、前記ターゲット材料の表面から斜めに飛散する飛散粒子をトラップするコリメート手段を前記ターゲット材料と前記撮像素子基板との間に配置してスパッタリングすることを特徴とする請求項11記載のスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−140955(P2008−140955A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325209(P2006−325209)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】