説明

撮像装置、ノイズ除去方法およびノイズ除去プログラム

【課題】ノイズリダクションを行う際、暗電流ノイズが発生しても精度の良い欠陥検出を行うこと、また暗電流ノイズの増加による撮像ダイナミックレンジの低下をできるだけ防ぐことが可能な撮像装置、該撮像装置によるノイズ除去方法およびノイズ除去プログラムを提供すること。
【解決手段】被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段と、非遮光状態で得られる明時信号を取得する明時信号取得手段と、遮光状態で得られる暗時信号を取得する暗時信号取得手段と、得られる明時信号または暗時信号を増幅する第1の増幅手段と、取得された明時信号から取得された暗時信号を減算して減算信号を出力する減算手段と、減算された減算信号を増幅する第2の増幅手段と、明時信号を取得する際の撮像条件を取得する撮像条件取得手段と、取得した撮像条件に基づいて、第1の増幅手段及び第2の増幅手段のゲインを変更するゲイン補正手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズの除去機能を備えたデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置、該撮像装置によるノイズ除去方法およびノイズ除去プログラムに関し、特に、より高品質な画像を撮影することが可能なノイズの除去機能を備えた撮像装置、該撮像装置によるノイズ除去方法およびノイズ除去プログラムに関するものである。
【0002】
本発明は、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に関し、特に、固定パターンノイズの除去機能を備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、主として静止画を撮像記録するために、電子スチルカメラが開発されている。
この種のカメラに用いられる撮像素子には、各画素の出力特性のバラツキや白キズと言われる暗電流の異常な画素、原料の結晶品質などに起因する固定パターンノイズが存在する。そのため、撮像素子の出力信号をそのまま用いると有効な信号成分に上記ノイズが重畳され、撮像画像の画質劣化の原因となる。
【0004】
また、画素欠陥には、結晶自体の経時劣化や撮像時の環境変化などの影響によって過渡的に発生する後発画素欠陥も存在する。
これらの固定パターンノイズを除去するために、ノイズリダクション機能を備えた電子スチルカメラがある。
【0005】
このノイズリダクション機能によると、画像撮像時において、まずシャッターを閉じた状態で撮像素子を露光し、これによって得られた暗時画像をメモリに記録する。続いて、シャッターが開いた状態で撮像素子を露光し、この露光によって得られる明時画像信号からメモリに記憶された暗時画像を減算する。
【0006】
この方法によると、暗時出力時に発生しているノイズ成分を差分により相殺することになるため、効率よく欠陥を除去することが可能となる。
また、画像取得時毎に暗時画像を取得するため、過渡的に発生する後発画素欠陥を含んだほとんどの固定パターンノイズを除去することが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記方法だけでは除去できない欠陥も存在する。
撮像素子中の各画素が検出できる画素値には上限があり、そのため、欠陥画素が画素値を検出できる最大値で飽和しているような明時画像信号から暗時画像信号を差し引くと、正しい差分値が得られない。
【0008】
そのため、飽和する可能性のある画素値の大きい欠陥画素に対しては、別途手段により欠陥位置を検出しておき、値の補正をすることによって欠陥を除去する必要がある。例えば、明時画像から暗時画像を引いた差分画像に対し、特定画素の上下閾値を決定し、閾値を上下に越える値を有する画素を欠陥画素と検出する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、この方法では差分画像を対象に検出を行っているため、対象画像は被写体によって様々な形状を有することになる。よって、様々な輝度値を有する画素が生じることになり、一定の基準を用いた精度の良い検出は出来ない。
【0010】
一方、暗時画像に対し、設定された閾値以上の画素値を有する画素の位置を検出し、記憶する。この欠陥検出データを用いることで、発生する欠陥画素を被写体に関わらず一定の基準で補正することができる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
また、撮像素子中の各画素は静電容量が決まっており、蓄積できる電荷量には限界がある。そのため、電荷量が最大値で飽和しているような明時画像信号から暗時画像信号を差し引くと、正しい差分値が得られない。白キズでは暗電流が異常に多く電荷が飽和しやすい上、ショットノイズといわれる暗電流のゆらぎ成分も多く、暗時画像減算だけでは画像補正することは出来ない。そのため、暗電流出力値の大きい欠陥画素に対しては、欠陥画素位置を検出しておき、他の手法で別途画素補正をすることによって欠陥を除去する必要がある。
【0012】
これに対して、暗時画像取得時に一定の閾値を越えた画素を欠陥画素として検出し、明時画像から暗時画像を減算後、その欠陥画素を補正する方法が示されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法によると、前述した白キズのような減算で補正しきれない欠陥画素に対しても、その画素位置を特定して別途補正を行うことができるため、効率がよい。また、露光時間・撮像感度・温度等のパラメータにより欠陥検出閾値を変動させることで、より適した画素欠陥検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−354340号公報
【特許文献2】特開2003−169258号公報
【特許文献3】特開2002−94884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、数十秒乃至数分を超えるような長時間露光時または高感度撮像時において暗時画像を取得すると、撮像素子の内部回路の熱に起因して、熱源に近い一部の画素領域だけ暗電流が上昇する。その結果、暗時画像上で上記画素領域に広大な輝度ムラが生じてしまう。このため、一様な欠陥検出閾値では精度の良い欠陥検出を行うことが出来ないという問題点があった。
【0015】
図23は、暗時出力値が上昇している様子を示す図である。
図23において、露光時間が長時間になるほど、図中の矢印方向に信号値が上昇していることを示している。
【0016】
図24は、暗電流ムラが発生している領域の一例を示す図である。
図24において、斜線部分が暗電流ムラが発生している画素領域を示している。暗電流ムラの発生傾向は時間というパラメータに限るものではなく、感度設定や温度というパラメータによっても変化する。
【0017】
このような画素領域(暗電流ムラが発生している画素領域)では、蓄積可能な電荷量が他の画素領域より必然的に少なくなるため、他の画素領域で通常の露光を行っている場合においても電荷飽和してしまう可能性が高い。その状況でノイズリダクションを行うと、減算による出力値反転が生じるため正常な画像が得られない。
【0018】
図25は、減算により出力値反転が生じてしまうことを示す図である。
このような反転現象を防止するため、感度を低下させるもしくは露光時間を短くした場合、画像全体として適正な光量および信号値が得られず、出力される画像が全体的に非常に暗くなってしまう。そのため、いずれの方法にしても観察者に対して違和感のある不自然な画像しか提供することが出来ないという問題点があった。
【0019】
また、撮像素子に蓄積できる電荷量には限界があることから、このとき発生した暗電流ノイズが大きくなるにつれ、その領域の画素が蓄積できる電荷量が減少してしまうことになる。つまり、撮像可能とするダイナミックレンジ(以下、Dレンジとする)が減少してしまう。上記状態を回避するためには、上記暗電流ノイズの少ない低感度で撮像を行ない、取得画像の各値を画像処理にて増幅させる必要がある。しかし、この方法では取得画像のS/N比が大きく悪化することになるため、品質の良い画像を取得することが出来ないという問題点があった。
【0020】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてなされたもので、ノイズリダクションを行う際、暗電流ノイズが発生しても精度の良い欠陥検出を行うこと、また暗電流ノイズの増加による撮像ダイナミックレンジの低下をできるだけ防ぐことが可能な撮像装置、該撮像装置によるノイズ除去方法およびノイズ除去プログラムを提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、高感度または長時間露光時において十分なダイナミックレンジが確保できない場合においても、正常にノイズ除去ができ、かつ撮像感度を維持した自然な画像を得ることが可能な撮像装置、該撮像装置によるノイズ除去方法およびノイズ除去プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の撮像装置は、被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段と、上記撮像手段によって非遮光状態で得られる明時信号を取得する明時信号取得手段と、上記撮像手段によって遮光状態で得られる暗時信号を取得する暗時信号取得手段と、上記撮像手段によって得られる明時信号または暗時信号を増幅する第1の増幅手段と、上記明時信号取得手段によって取得された明時信号から上記暗時信号取得手段によって取得された暗時信号を減算して減算信号を出力する減算手段と、上記減算手段によって減算された減算信号を増幅する第2の増幅手段と、上記明時信号取得手段によって明時信号を取得する際の撮像条件を取得する撮像条件取得手段と、上記撮像条件取得手段によって取得した撮像条件に基づいて、上記第1の増幅手段及び第2の増幅手段のゲインを変更するゲイン補正手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の撮像装置は、上記撮像条件が、上記撮像手段の露光時間、温度、撮像感度の何れか1つであることが望ましい。
また、本発明の撮像装置は、上記暗時信号取得手段によって取得した暗時信号のうち、予め定められた画素欠陥検出閾値を超える画素位置を検出する欠陥画素位置検出手段と、上記欠陥画素位置検出手段によって検出された画素位置に対応する画素における、上記減算手段によって出力された減算信号に対して補正を行なう画像信号補正手段とをさらに備え、上記撮像条件取得手段が、上記第2の増幅手段のゲインを変更するとともに上記画素欠陥検出閾値を変更することが望ましい。
【0024】
また、本発明の一態様によれば、本発明のデジタルカメラは、上述の何れかの撮像装置を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様によれば、本発明のノイズ除去方法は、被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段を備えた撮像装置が実行するノイズ除去方法であって、上記撮像手段によって非遮光状態で得られる明時信号を取得し、上記撮像手段によって遮光状態で得られる暗時信号を取得し、上記撮像手段によって得られる明時信号または暗時信号を増幅し、上記取得された明時信号から上記取得された暗時信号を減算して減算信号を出力し、上記減算された減算信号を増幅し、上記明時信号を取得する際の撮像条件を取得し、上記取得した撮像条件に基づいて、上記暗時信号の増幅及び上記減算信号の増幅のゲインを変更することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のノイズ除去方法は、上記撮像条件が、上記撮像手段の露光時間、温度、撮像感度の何れか1つであることが望ましい。
また、本発明のノイズ除去方法は、さらに、上記取得した暗時信号のうち、予め定められた画素欠陥検出閾値を超える画素位置を検出し、上記検出された画素位置に対応する画素における、上記出力された減算信号に対して補正を行い、上記暗時信号の増幅のゲインを変更するとともに上記画素欠陥検出閾値を変更することが望ましい。
【0026】
また、本発明の一態様によれば、本発明のノイズ除去プログラムは、被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段を備えた撮像装置に実行させるためのノイズ除去プログラムであって、上記撮像手段によって非遮光状態で得られる明時信号を取得する手順と、上記撮像手段によって遮光状態で得られる暗時信号を取得する手順と、上記撮像手段によって得られる明時信号または暗時信号を増幅する手順と、上記取得された明時信号から上記取得された暗時信号を減算して減算信号を出力する手順と、上記減算された減算信号を増幅する手順と、上記明時信号を取得する際の撮像条件を取得する手順と、上記取得した撮像条件に基づいて、上記暗時信号の増幅及び上記減算信号の増幅のゲインを変更する手順と、を実行させるためのコンピュータ実行可能なノイズ除去プログラムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、長時間露光時または高感度撮像時において、暗電流ノイズが増加しても、撮像素子の全画素領域にて一定精度で欠陥検出を行うことが可能となる。すなわち、撮像条件によらず全画素域で高品質の画像を取得することが可能となる。
【0028】
また、本発明によれば、撮像条件によって適正に閾値設定を切り換え、暗電流ノイズ増加によるDレンジの減少を最小限に抑えることが可能となる。これにより、正常にノイズリダクションを実行できる撮像条件が広くなるため、S/N比を悪化させることなく画像取得が可能となる撮像条件範囲が増える。すなわち、撮像性能の広範性を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、暗電流ノイズが大きく発生する領域と他の領域で欠陥検出閾値を変更することができる。これにより、閾値低下させた際に起きる欠陥検出数の増加を最小限にできるため、処理時間が短縮されるほか、メモリ使用量の節約によるコストダウンにつながる。
【0030】
また、本発明によれば、高感度または長時間露光時において十分なダイナミックレンジが確保できない場合においても、正常にノイズ除去ができ、かつ撮像感度を維持した自然な画像を得ることができる。
【0031】
また、本発明によれば、画像処理工程で発生する画素欠陥の発達を防止し、よりノイズ成分の少ない優れた画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を実行するフローチャートである。
【図3】撮像素子上の特定画素xに対する隣接画素を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態で用いる欠陥検出方法を用いた際の画素位置と出力値のグラフを示した図である。
【図5】従来の方法による欠陥検出方法を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図(その1)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図(その2)である。
【図8】本発明の第1の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図(その3)である。
【図9】本発明の第1の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図(その4)である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
【図11】撮像素子内に発生する暗電流ノイズ領域を説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態を実行するフローチャートである。
【図13】撮像状態によって加算閾値を決定するためのテーブルを示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図(その1)である。
【図15】本発明の第2の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図(その2)である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
【図17】第3の実施の形態に用いるルックアップテーブル(LUT)を示す図である。
【図18】LUTを説明するための補助説明図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態を実行するフローチャートである。
【図20】本発明の第4の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
【図21】第4の実施の形態に用いるルックアップテーブル(LUT)を示す図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態を実行するフローチャートである。
【図23】暗時出力値が上昇している様子を示す図である。
【図24】暗電流ムラが発生している領域の一例を示す図である。
【図25】減算により出力値反転が生じてしまうことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について述べる。
まず、図1乃至図5を用いて、本発明に係る第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
【0034】
図1において、デジタルカメラ1は、各種レンズからなる光学系11、被写体からの光を選択的に遮光するためのシャッター12、撮像素子13、アナログアンプ(A−AMP)14、A/D変換器15、明時画像格納部16、暗時画像格納部17、加算回路18、閾値設定部20、欠陥検出部21、欠陥格納部22、欠陥補正部23、出力画像格納部24、CPU25、タイミングジェネレータ(TG)26を備える。
【0035】
被写体の像は、光学系11及びシャッター12を介して撮像素子13の受光面に結像される。このとき、タイミングジェネレータ26によってシャッター12、撮像素子13の駆動タイミングを制御することで、露光時間を制御することが可能である。また、CPU25はタイミングジェネレータ26を含む各部を制御する。
【0036】
アナログアンプ14は、撮像素子13で得たアナログ撮像信号に対し、CPU25で設定された撮像感度分のゲインをかける。A/D変換器15は、アナログ信号をデジタル値に変換する。明時画像格納部16は、明時信号(撮像素子が非遮光状態のときに通常の撮像を行って得られる信号)を記憶するためのメモリであり、暗時画像格納部17は、暗時信号(撮像素子を遮光状態にして撮像を行い得られる信号)を記憶するためのメモリである。加算回路18は、明時画像格納部16に記憶された明時信号に対し、暗時画像格納部17に記憶された暗時信号を減算して出力する。
【0037】
閾値設定部20は、暗時画像格納部17から得た暗時画像信号に基づいて欠陥検出閾値を計算する。欠陥検出部21は、閾値設定部20からの信号と暗時画像格納部17に記憶された暗時信号とを比較し、画素欠陥を検出する。検出した欠陥画素のアドレスは、欠陥格納部22に記憶される。欠陥補正部23は、欠陥格納部22に記憶された欠陥情報を元に加算回路18から得た出力画像データを補正し、その補正結果を出力画像格納部24に記憶する。
【0038】
次に、図2および図3を用いて、本第1の実施の形態における動作について説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態を実行するフローチャートであり、図3は、撮像素子上の特定画素xに対する隣接画素を示す図である。
【0039】
以下に説明する全ての制御は、CPU25が統括的に行う。
まず、ステップS1において、使用者が撮像動作を開始すると、ステップS2において、タイミングジェネレータ26により設定された露光時間だけシャッター12を開いて撮像素子13を露光し、明時画像を取得する。取得した明時画像は、アナログアンプ14で撮像感度分ゲインアップされると、A/D変換器15を通って明時画像格納部16に記憶される。
【0040】
次に、ステップS3において、シャッター12を閉じ、遮光した状態で暗時画像を取得し、暗時画像格納部17に記憶する。
その後、ステップS4において、閾値設定部20にて暗時画像格納部17に記憶されている暗時画像から欠陥検出閾値TH(x)を設定する。このとき、図3に示す画素xと画素xに隣接する8つの周辺画素r1乃至r8に対して、下記に示す式(1)を用いて欠陥検出閾値TH(x)を求める。なお、V(x)とは画素xの画素値、加算閥値AddTHとは、設計上あらかじめ定められた定数である。
【0041】
TH(x)=(V(x)+V(r1)+V(r2)+V(r3)+V(r4)+V(r5)+V(r6)+V(r7)+V(r8))/9+AddTH ・・・式(1)
その後、ステップS5において、欠陥検出式TH(x)と暗時画像格納部17に記憶されている暗時画像を比較して各画素毎に欠陥検出を行う。各画素における閾値TH(x)を越えた画素値を有する画素が、欠陥として検出される。このとき検出した欠陥は、その画素位置を欠陥データとして欠陥格納部22に記憶する。
【0042】
欠陥データを取得すると、ステップS6において、欠陥補正が行われる。このとき、始めに明時画像格納部16から明時画像を読み出し、暗時画像格納部17から暗時画像を読み出し、加算回路18にて差分を取ることでノイズ低減を行う。次に、この差分画像を用いて、欠陥格納部22に記憶された欠陥データを元に欠陥補正部23にて画像補正が行われる。このとき、欠陥画素をx、補正後の出力値をMod(x)とすると、以下の式(2)を用いて画素補正される。
【0043】
Mod(x)=(V(x)+V(r1)+V(r2)+V(r3)+V(r4)+V(r5)+V(r6)+V(r7)+V(r8))/8 ・・・式(2)
最後に、ステップS7において、すべての欠陥画素の補正が終了すると、画像データが出力画像格納部24に保存される。
【0044】
図4は、本発明の第1の実施の形態で用いる欠陥検出方法を用いた際の画素位置と出力値のグラフを示した図であり、図5は、従来の方法による欠陥検出方法を示した図である。
【0045】
図1乃至図3を用いて上述したような方法をとることにより、図4に示すように検出閾値が暗電流ノイズの山に追従して変化し、画素欠陥を検出することが可能となる。
従来の方法によると検出閾値が固定であったため、図5に示すように暗電流ノイズのため欠陥検出できない欠陥(x3、x4)が存在することになり、欠陥補正されない残留欠陥が多数発生する可能性があった。しかし、本第1の実施の形態の方法によると、暗電流ノイズが発生してもすべての領域で精度よく欠陥検出することが出来ることになり、その結果、高品質の画像を取得することが可能となる。
【0046】
次に、図6乃至図15を用いて、本発明に係る第2の実施の形態について説明する。
始めに、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図である図6乃至図9を用いて本第2の実施の形態に関わるノイズリダクションアルゴリズムにおけるDレンジの範囲について説明する。
【0047】
図6は、明時画像および暗時画像の出力値を示すグラフであり、図7は、明時画像と暗時画像の差分値を示すグラフである。
明時画像の出力をV(x)、暗時出力をD(x)とし、最大検出レベルをMaxLevelとする。このとき、TH(x)<D(x)を満たす画素xは、画素欠陥として検出されることになる。図6中では画素x2、x3、x5が欠陥画素として検出されることになる。
【0048】
図6に示したように、周辺画素平均が最大となる位置における明時出力値Vmaxが下記の式(3)を満たすとき、明時画像と暗時画像の差分を取ると、図7に示したように差分出力V´の地点で欠陥画素x1、x4のような小さい欠陥は消える。
【0049】
Vmax≦MaxLevel−AddTH ・・・式(3)
また、欠陥画素x2、x5のようにMaxLevelによって値がクリップされてしまうと欠陥は残ってしまうが、TH(x2)<D(x2)となるような欠陥検出がなされるため、後に欠陥補正をすることが出来る。また、欠陥画素x3のような大きい欠陥は、通
常は差分により欠陥は消滅するが、欠陥値が大きくなると、暗時画像と明時画像で欠陥のリニアリティが崩れやすくなり、差分後も欠陥が残ってしまう可能性が高い。しかし、欠陥画素x3は閾値TH(x)により欠陥検出がなされるため、後の処理にて補正することが可能である。
【0050】
しかしながら、受光量が上昇し、図8に示すようにVmaxが下記の式(4)を満たすようになると、差分出力V´の地点で欠陥画素x2、x3、x5のほか欠陥画素x1も欠陥として残ってしまう。
【0051】
Vmax>MaxLevel−AddTH ・・・式(4)
欠陥画素x1は、TH(x1)>D(x1)であるため欠陥検出されず、他の欠陥画素と異なり残留欠陥としていつまでも残ることになる。すなわち、式(4)を満たした時点で欠陥画素x1のような検出不可能な画素が存在する可能性が生じることになる。このため、明時画像Vが正常に出力されるためのDレンジは、暗時画像の最大値Dmaxを用いて、下記の式(5)のように示される。
【0052】
Dmax≦Vmax≦MaxLevel−AddTH ・・・式(5)
次に、図10乃至図15を用いて、本発明に係る第2の実施の形態について具体的に説明する。
【0053】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
図10において、デジタルカメラ10は、各種レンズからなる光学系11、被写体からの光を選択的に遮光するためのシャッター12、撮像素子13、アナログアンプ(A−AMP)14、A/D変換器15、明時画像格納部16、暗時画像格納部17、加算回路18、撮像状態取得部19、閾値設定部20、欠陥検出部21、欠陥格納部22、欠陥補正部23、出力画像格納部24、CPU25、タイミングジェネレータ(TG)26、暗電流ノイズ発生領域格納部27を備える。
【0054】
図10において、デジタルカメラ10は、図1を用いて説明したデジタルカメラ1と比べ、撮像状態取得部19および暗電流ノイズ発生領域格納部27をさらに備えていることが特徴であるので、デジタルカメラ1と同様の箇所の説明については省略する。
【0055】
撮像状態取得部19は、内部に撮像時の露光時間、受光感度によって加算閾値を定めるための加算閾値決定テーブルを有し、CPU25により露光時間、撮像感度の情報を取得すると、それらの値に基づいて加算閾値決定テーブルを参照することにより加算閥値AddTHを決定し、閾値設定部20へ送る。
【0056】
また、暗電流ノイズ発生領域格納部27は、後述する暗電流ノイズ発生領域の位置情報を格納している。
図11は、撮像素子内に発生する暗電流ノイズ領域を説明するための図である。
【0057】
図11において、撮像素子の画素領域全体は、領域R1および領域R2とからなっていることを示している。
撮像素子は、長時間露光時、高感度撮像時において暗電流ノイズが発生する領域R1を有している。領域R1は素子固有のため、撮像素子調整時など設計上あらかじめ撮像素子毎に設定する。領域R1の設定方法としては、シャッターを閉じた状態で所定の撮像条件で暗時画像を取得し、暗電流ノイズが一定値以上になる連続した領域を選択するものとする。なお、領域R2はCCD全画素領域からR1を除いた領域を指す。設定した領域R1、R2の位置情報は、予め暗電流ノイズ発生領域格納部27に格納する。
【0058】
図12は、本発明の第2の実施の形態を実行するフローチャートであり、図13は、撮像状態によって加算閾値を決定するためのテーブルを示す図である。
図12のステップS1乃至ステップS3は、図2を用いて説明した第1の実施の形態を実行するフローチャートにおけるステップS1乃至ステップS3と同様である。
【0059】
ステップS3の暗時画像を取得した処理の後、ステップS11において、撮像状態取得部19は、CPU25から撮影時の露光時間、受光感度の値を取得する。
そして、ステップS12において、ステップS11で取得した撮影時の露光時間、受光感度の値に基づいて、図13に示す加算閾値決定テーブルに照らし合わせ、領域R1の加算閾値(AddTH2)を決定する。加算閾値決定テーブルには、露光時間が長いほど加算閾値が小さい値になるよう(A4≦A3≦A2≦A1、B、C、D列も同様)設定されており、感度が上がるほど加算閾値が大きい値になるよう(A4≦B4≦C4≦D4、1、2、3行も同様)設定されている。また、領域R2の加算閾値AddTHは不変である。
【0060】
その後、ステップS13において、閾値設定部20にて、暗時画像格納部17に記憶されている暗時画像と撮像状態取得部19より取得した加算閥値AddTHから、領域R1についての欠陥検出閾値TH(x)R1および領域R2についての欠陥検出閾値TH(x)R2を設定する。このとき、欠陥検出閾値TH(x)R1およびTH(x)R2の算出式は、領域R1、R2とも第1の実施の形態と同様である。つまり、領域R1での検出閾値は、撮像状態取得部19で定められたAddTH2を用いて下記に示す式(6)で求められ、領域R2の検出閾値は、通常の加算閥値AddTHを用いて下記に示す式(7)で求められる。
【0061】
TH(x)=(V(r1)+V(r2)+V(r3)+V(r4)+V(r5)+V(r6)+V(r7)+V(r8))/9+AddTH2 ・・・式(6)
TH(x)=(V(r1)+V(r2)+V(r3)+V(r4)+V(r5)+V(r6)+V(r7)+V(r8))/9+AddTH ・・・式(7)
そして、以降のステップS5乃至ステップS7は、図2を用いて説明した第1の実施の形態を実行するフローチャートにおけるステップS5乃至ステップS7と同様である。
【0062】
図14および図15は、本発明の第2の実施の形態についての、画素位置と輝度値の関係を表したグラフを示す図である。
以上説明したような方法よると、図14に示すように、露光時間が長い撮像条件において加算閾値AddTH2を低下させる(図13:A4≦A3≦A2≦A1)ことで、領域R1のみ閾値を変化させることが可能となる。露光時間が長くなるほど暗電流ノイズが増加するためDレンジが狭くなるが、このときには加算閾値を低下させ、(AddTH−AddTH2)だけ広くDレンジを確保できる。このとき、必要以上に閾値を低下させることから、暗時画像のばらつき画素、画像差分で補正可能な小さい欠陥などが閾値にかかり、欠陥の誤検出が増加することになる(図15におけるx1)。しかし、加算閾値を低下させる範囲を領域R1に限定することで、欠陥の誤検出量を必要最小限に抑えることが可能となり、メモリの消費量、処理時間の増加を最小限に防ぐことができる。
【0063】
さらに、感度を向上させると出力値がよりばらつく傾向にあるため、欠陥検出閾値が低すぎるとバラツキ値が閾値にかかり欠陥の誤検出をしてしまう恐れが高くなる。そのため、高感度撮像条件時には加算閾値を上昇させる(図13:A4≦C4≦B4≦D4)ことで、上記状況を防ぐことが可能となる。
【0064】
なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態では、加算閾値AddTHは定数としたが、暗時出力レベルVを変数とする関数α(V)で設定を行っても良い。
また、第2の実施の形態において、領域R1の設定方法として、撮像素子調整時に決定するものとしたが、ノイズリダクション時に取得した暗時画像の画素値を元に各回領域R1を決定しても良い。
【0065】
次に、図16乃至図19を用いて、本発明に係る第3の実施の形態について説明する。
図16は、本発明の第3の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図である。
【0066】
図16において、デジタルカメラ30は、各種レンズからなる光学系51、被写体からの光を選択的に遮光するためのシャッター52、CCD等の撮像素子53、設定された撮像ゲインに応じて信号増幅をかける増幅器(AMP1)54、アナログ信号をデジタル値に変換するA/D変換器55、明時画像メモリ56、暗時画像メモリ57、画素欠陥検出部58、検出された欠陥画素のアドレスを記憶するための欠陥アドレスメモリ59、信号減算部60、欠陥補正部61、信号の出力調整を行う調整増幅器(AMP2)62、取得した画像を保存する取得画像メモリ63、ルックアップテーブル(LUT)64、撮像条件判定部65、タイミングジェネレータ(TG)66、CPU67を備える。
【0067】
このようなデジタルカメラ30において、被写体の像は、光学系51及びシャッター52を介して撮像素子53の受光面に結像される。このとき、TG66によってシャッター52、撮像素子53の駆動タイミングを制御することで、露光時間を制御することが可能である。
【0068】
ここで、明時画像メモリ56は、明時画像信号(撮像素子が非遮光状態のときに通常の撮像を行って得られる画像信号)を格納するためのメモリであり、暗時画像メモリ57は、暗時画像信号(撮像素子を遮光状態にして撮像を行い得られる画像信号)を格納するためのメモリである。
【0069】
画素欠陥検出部58は、暗時画像メモリ57に記憶された暗時信号値と予め内部に設定された画素欠陥検出閾値とを比較し、画素欠陥検出閾値を越える信号を画素欠陥として検出し、欠陥と判定した画素のアドレス(画素位置)を欠陥アドレスメモリ59に格納する。
【0070】
信号減算部60では、明時画像メモリ56に格納された信号から暗時画像メモリ57に格納された信号を減算して出力し、欠陥補正部61へ送信する。欠陥補正部61では、欠陥アドレスメモリ59に格納された欠陥情報に基づいて信号減算部60の出力データを補正する。この欠陥補正は、現在の画素アドレスが欠陥アドレスメモリ59に格納された画素アドレスと一致した場合に、周辺画素の信号平均値に値を置き換えることで行う。
【0071】
調整増幅器(AMP2)62は、信号減算部60が行なう暗時画像減算により暗電流成分だけ減少した信号に対し、フルレンジまで活用できるよう信号増幅を行う。その結果得られた信号値を、取得画像メモリ63に格納する。
【0072】
撮像条件判定部65は、CPU67から得た撮像条件に適合する設定値をLUT64から読み出し、増幅器(AMP1)54および調整増幅器(AMP2)62のゲイン設定を行う。なお、LUT64は、撮像条件判定に用いる判定値や各種設定値を格納している。
【0073】
そして、TG66によってシャッター52および撮像素子63の駆動タイミングを制御することで、露光時間と、遮光または非遮光状態とを制御することが可能である。なお、CPU67はタイミングジェネレータ66を含む各部を制御する。
【0074】
次に、本第3の実施の形態に用いるLUTの設定内容について説明する。
図17は、第3の実施の形態に用いるルックアップテーブル(LUT)の入出力関係を示す図であり、図18は、LUTを説明するための補助説明図である。
【0075】
図17において、LUT64の入力値としては露光時間および撮像感度を有し、出力値としては増幅器(AMP1)54及び調整増幅器(AMP2)62のゲイン設定値を有している。図18中に記された、例えば「A×2」に該当する箇所は、「A」に該当する箇所と同じ条件で撮像及びノイズリダクションを行い、調整増幅器(AMP2)62にて2倍(×2)のゲイン補正を行うことを示している。なお、前述した調整増幅は調整増幅器(AMP2)62にて別途行われているものとする。
【0076】
このLUT64によると、特定の露光時間に注目した場合、一定以上の感度設定に対しては増幅器(AMP1)54で行う増幅量にリミットをかけ、調整増幅器(AMP2)62でのゲイン補正を用いることでトータルのゲインアップを行っている。これらのゲイン設定により、増幅器(AMP1)54での増幅を抑え、信号減算部60が行なう暗時画像減算の際の暗電流のピーク値が、所定の値を越えないように調整されている。
【0077】
次に、図19を用いて本第3の実施の形態における動作について説明する。
図19は、本発明の第3の実施の形態を実行するフローチャートである。
以下に説明する全ての制御は、CPU67が統括的に行う。
【0078】
まず、ステップS191において、使用者が撮像動作を開始すると、ステップS192において、撮像条件判定部65が、設定された露光時間及び撮像感度の値をCPU67から得て、図17を用いて説明したLUT64と照らし合わせる。そして、ステップS193において、撮像条件判定部65は、LUT64から該当する設定値を得ると、増幅器(AMP1)54及び調整増幅器(AMP2)62のゲイン値を設定する。
【0079】
次に、ステップS194において、明時画像および暗時画像を取得する。具体的には、TG66を用いて所定の露光時間だけシャッター52を開いて撮像素子53を露光し、明時画像を取得する。取得した画像は増幅器(AMP1)54において信号増幅がなされ、明時画像メモリ56に記憶される。同様に、シャッター52を閉じ遮光した状態で暗時画像を取得し、同様の処理を経て暗時画像メモリ57に記憶する。
【0080】
そして、ステップS195において、ノイズリダクションを実行する。具体的には、まず、画素欠陥検出部58により画素の欠陥を抽出し、欠陥と判定した画素のアドレス(画素位置)を欠陥アドレスメモリ59に保存する。一方で、信号減算部60によって明時画像メモリ56に格納された画像信号から暗時画像メモリ57に格納された画像信号を減算し、その結果を出力する。欠陥補正部61では、信号減算部60から出力された減算結果に対して、欠陥アドレスメモリ59に格納された位置に該当する画素を補正する。これら一連の動作により、ノイズリダクションが行われることになる。
【0081】
その後、ステップS196において、ステップS193で設定された調整増幅器(AMP2)62のゲイン値を用いて、出力画像に対して補正ゲインをかける。最後に、ステップS197において、得られた画像を取得画像メモリ63に保存する。
【0082】
以上の方法によると、予めLUT64の設定を行っておくことで、暗電流の発生量に対してゲイン制限を行い、信号減算時の反転を防止することが可能となる。これにより、より幅広い使用環境を持つノイズリダクション機能を提供することができる。すなわち、高感度あるいは長時間露光時で暗電流ムラが生じた場合においても、正常にノイズ除去ができ、かつ見かけの感度を維持した自然な画像を得ることができる。
【0083】
なお、LUT64を数種類作成しておき、使用するLUT64を変更する構成も容易に実現可能である。このようにすれば、画像取得を行う際、目的あるいは用途に応じて様々な処理法を選択することが出来る。
【0084】
さらに、LUT64の入力パラメータとして露光時間及び撮像感度を挙げたが、撮像素子53の温度をパラメータとして追加しても実現可能である。これにより、さらに細かくゲイン設定を規定することができ、撮像条件ごとに好適な画像を得ることが可能となる。
【0085】
次に、図20乃至図22を用いて、本発明に係る第4の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態と同様の箇所についての説明は省略する。
本第4の実施の形態は、第3の実施の形態における撮像条件判定部65が、欠陥検出閾値を変更する機能を有していることを特徴としている。
【0086】
はじめに、本第4の実施の形態の原理について説明を行う。
一連のノイズリダクション処理では、欠陥検出閾値(TH)以上の画素欠陥は欠陥補正部61により画素補正を行い、欠陥検出閾値(TH)以下の画素欠陥については信号減算部60による減算で補正を行う。このとき、厳密には欠陥検出閾値(TH)以下の画素欠陥については減算補正しきれずに残るものも存在するが、画素欠陥のレベルは十分小さいため欠陥とみなされない。
【0087】
しかしながら、第3の実施の形態に示すようにノイズリダクション後に調整増幅器(AMP2)62においてゲイン補正を行うことにより、暗時画像減算時には目立たなかった画素欠陥であっても、ゲイン補正後には目立つレベルに発達する可能性が出てくる。そのため、調整増幅器(AMP2)62で2倍以上のゲイン補正を行う際には、通常時に用いる欠陥検出閾値(TH)より低下させた欠陥検出閾値TH1、TH2、TH3、…(TH≧TH1≧TH2≧TH3≧…)を用いることで、発達する画素欠陥の抑制を行うことができる。
【0088】
このとき、画素欠陥を余剰に検出及び補正すると画像本来の情報が失われる恐れがあるため、欠陥検出閾値を低下させすぎないように注意する必要がある。よって、画素欠陥の発達防止と余剰な欠陥検出の防止のバランスを保つように、予め欠陥検出閾値(TH1、TH2、TH3、…)を定めるものとする。
【0089】
図20は、本発明の第4の実施の形態に係わるデジタルカメラの基本構成を示すブロック図であり、図21は、第4の実施の形態に用いるルックアップテーブル(LUT)を示す図である。
【0090】
図20において、デジタルカメラ40は、各種レンズからなる光学系51、シャッター52、撮像素子53、増幅器(AMP1)54、A/D変換器55、明時画像メモリ56、暗時画像メモリ57、画素欠陥検出部71、欠陥アドレスメモリ59、信号減算部60、欠陥補正部61、調整増幅器(AMP2)62、取得画像メモリ63、ルックアップテーブル(LUT)72、撮像条件判定部73、タイミングジェネレータ(TG)66、CPU67を備える。
【0091】
図20において、デジタルカメラ40は、図16を用いて説明したデジタルカメラ30と比べ、画素欠陥検出部58の替わりに画素欠陥検出部71を備え、ルックアップテーブル(LUT)64の替わりにルックアップテーブル(LUT)72を備え、撮像条件判定部65の替わりに撮像条件判定部73を備えていることが特徴であるので、デジタルカメラ30と同様の箇所の説明については省略する。
【0092】
LUT72は、出力値として増幅器(AMP1)54及び調整増幅器(AMP2)62のゲイン値のほか、欠陥検出閾値(TH1、TH2、TH3、…)を有している。なお、図21に示したLUT72の構成図において、欠陥検出閾値THは露光時間t、撮像感度gにより定めるため、図中ではTH(t,g)と示している。
【0093】
撮像条件判定部73は、CPU27から得た撮像条件に適合する設定値をLUT72から読み出し、増幅器(AMP1)54及び調整増幅器(AMP2)62のゲイン設定を行うとともに、画素欠陥検出部71で用いる欠陥検出閾値の設定を行う。
【0094】
そして、画素欠陥検出部71は、暗時画像メモリ57に格納された暗時画像信号と撮像条件判定部73により送られた閾値とに基づいて欠陥画素を検出し、欠陥と判定した画素のアドレスを欠陥アドレスメモリ59に格納する。
【0095】
次に、図22を用いて本第4の実施の形態における動作について説明する。
図22は、本発明の第4の実施の形態を実行するフローチャートである。
以下に説明する全ての制御は、CPU67が統括的に行う。
【0096】
ステップS191における撮像動作の開始及びステップS192における撮像条件の判定は、図19を用いて説明した本発明の第3の実施の形態におけるステップS191及びステップS192と同様である。
【0097】
ステップ221において、撮像条件判定部73は、LUT72から該当する設定値を得ると、増幅器(AMP1)54及び調整増幅器(AMP2)62のゲイン値を設定する。そして、ステップS222において、画素欠陥検出部71で用いる欠陥検出閾値を設定する。
【0098】
ステップS194における明時画像および暗時画像の取得は、第3の実施の形態におけるステップS194と同様である。
その後、ステップS223において、ノイズリダクションを実行する。具体的には、まず、画素欠陥検出部71が、撮像状態判定部73により設定された欠陥検出閾値を用いて画素欠陥を抽出し、欠陥アドレスメモリ59に保存する。一方で、信号減算部60によって明時画像メモリ56に格納された画像信号から暗時画像メモリ57に格納された画像信号を減算し、その結果を出力する。欠陥補正部61では、信号減算部60から出力された減算結果に対して、欠陥アドレスメモリ59に格納された位置に該当する画素を補正する。これら一連の動作により、ノイズリダクションが行われることになる。
【0099】
ステップS196における補正ゲイン及びステップS197における画像保存は、第3の実施の形態におけるステップS196及びステップS197と同様である。
以上の方法によると、調整増幅器(AMP2)62のゲイン設定が行われた際に、画素欠陥の検出閾値を通常値より低下させることが可能となる。これにより、通常より低レベルの画素欠陥まで抽出することになるため、調整増幅器(AMP2)62で増幅が行われた際に発達する画素欠陥を抑制することができる。また、あらかじめLUT72を調整しておくことで、出力画像に対してより最適化することが可能となるため、よりノイズ成分の少ない優れた画像を提供できる。
【0100】
以上、本発明の各実施の形態を、図面を参照しながら説明してきたが、本発明が適用される撮像装置は、その機能が実行されるのであれば、上述の各実施の形態等に限定されることなく、単体の装置であっても、複数の装置からなるシステムあるいは統合装置であっても、LAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであってもよいことは言うまでもない。
【0101】
また、バスに接続されたCPU、ROMやRAMのメモリ、入力装置、出力装置、外部記録装置、媒体駆動装置、可搬記録媒体、ネットワーク接続装置で構成されるシステムでも実現できる。すなわち、前述してきた各実施の形態のシステムを実現するソフトェアのプログラムコードを記録したROMやRAMのメモリ、外部記録装置、可搬記録媒体を、撮像装置に供給し、その撮像装置のコンピュータがプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0102】
この場合、可搬記録媒体等から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した可搬記録媒体等は本発明を構成することになる。
【0103】
プログラムコードを供給するための可搬記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROMカード、電子メールやパソコン通信等のネットワーク接続装置(言い換えれば、通信回線)を介して記録した種々の記録媒体などを用いることができる。
【0104】
また、コンピュータがメモリ上に読み出したプログラムコードを実行することによって、前述した各実施の形態の機能が実現される他、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した各実施の形態の機能が実現される。
【0105】
さらに、可搬型記録媒体から読み出されたプログラムコードやプログラム(データ)提供者から提供されたプログラム(データ)が、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した各実施の形態の機能が実現され得る。
【0106】
すなわち、本発明は、以上に述べた各実施の形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 デジタルカメラ
10 デジタルカメラ
11 光学系
12 シャッター
13 撮像素子
14 アナログアンプ(A−AMP)
15 A/D変換器
16 明時画像格納部
17 暗時画像格納部
18 加算回路
19 撮像状態取得部
20 閾値設定部
21 欠陥検出部
22 欠陥格納部
23 欠陥補正部
24 出力画像格納部
25 CPU
26 タイミングジェネレータ(TG)
27 暗電流ノイズ発生領域格納部
30 デジタルカメラ
40 デジタルカメラ
51 光学系
52 シャッター
53 撮像素子
54 増幅器(AMP1)
55 A/D変換器
56 明時画像メモリ
57 暗時画像メモリ
58 画素欠陥検出部
59 欠陥アドレスメモリ
60 信号減算部
61 欠陥補正部
62 調整増幅器(AMP2)
63 取得画像メモリ
64 ルックアップテーブル(LUT)
65 撮像条件判定部
66 タイミングジェネレータ(TG)
67 CPU
71 画素欠陥検出部
72 ルックアップテーブル(LUT)
73 撮像条件判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段と、
前記撮像手段によって非遮光状態で得られる明時信号を取得する明時信号取得手段と、
前記撮像手段によって遮光状態で得られる暗時信号を取得する暗時信号取得手段と、
前記撮像手段によって得られる明時信号または暗時信号を増幅する第1の増幅手段と、
前記明時信号取得手段によって取得された明時信号から前記暗時信号取得手段によって取得された暗時信号を減算して減算信号を出力する減算手段と、
前記減算手段によって減算された減算信号を増幅する第2の増幅手段と、
前記明時信号取得手段によって明時信号を取得する際の撮像条件を取得する撮像条件取得手段と、
前記撮像条件取得手段によって取得した撮像条件に基づいて、前記第1の増幅手段及び第2の増幅手段のゲインを変更するゲイン補正手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像条件は、前記撮像手段の露光時間、温度、撮像感度の何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記暗時信号取得手段によって取得した暗時信号のうち、予め定められた画素欠陥検出閾値を超える画素位置を検出する欠陥画素位置検出手段と、
前記欠陥画素位置検出手段によって検出された画素位置に対応する画素における、前記減算手段によって出力された減算信号に対して補正を行なう画像信号補正手段と、
をさらに備え、
前記撮像条件取得手段は、前記第2の増幅手段のゲインを変更するとともに前記画素欠陥検出閾値を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の撮像装置を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項5】
被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段を備えた撮像装置が実行するノイズ除去方法において、
前記撮像手段によって非遮光状態で得られる明時信号を取得し、
前記撮像手段によって遮光状態で得られる暗時信号を取得し、
前記撮像手段によって得られる明時信号または暗時信号を増幅し、
前記取得された明時信号から前記取得された暗時信号を減算して減算信号を出力し、
前記減算された減算信号を増幅し、
前記明時信号を取得する際の撮像条件を取得し、
前記取得した撮像条件に基づいて、前記暗時信号の増幅及び前記減算信号の増幅のゲインを変更することを特徴とするノイズ除去方法。
【請求項6】
前記撮像条件は、前記撮像手段の露光時間、温度、撮像感度の何れか1つであることを特徴とする請求項5に記載のノイズ除去方法。
【請求項7】
さらに、
前記取得した暗時信号のうち、予め定められた画素欠陥検出閾値を超える画素位置を検出し、
前記検出された画素位置に対応する画素における、前記出力された減算信号に対して補正を行い、
前記暗時信号の増幅のゲインを変更するとともに前記画素欠陥検出閾値を変更することを特徴とする請求項5または6に記載のノイズ除去方法。
【請求項8】
被写体を撮像するための複数の画素を有する撮像手段を備えた撮像装置に実行させるためのノイズ除去プログラムであって、
前記撮像手段によって非遮光状態で得られる明時信号を取得する手順と、
前記撮像手段によって遮光状態で得られる暗時信号を取得する手順と、
前記撮像手段によって得られる明時信号または暗時信号を増幅する手順と、
前記取得された明時信号から前記取得された暗時信号を減算して減算信号を出力する手順と、
前記減算された減算信号を増幅する手順と、
前記明時信号を取得する際の撮像条件を取得する手順と、
前記取得した撮像条件に基づいて、前記暗時信号の増幅及び前記減算信号の増幅のゲインを変更する手順と、
を実行させるためのコンピュータ実行可能なノイズ除去プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図18】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−273378(P2010−273378A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173369(P2010−173369)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2005−136967(P2005−136967)の分割
【原出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】