説明

撮像装置およびカメラモジュール

【課題】フレア光の発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレア光が目立つことのない良質の画像を得ることが可能な撮像装置およびカメラモジュールを提供する。
【解決手段】被写体像を結像可能な受光部112を含む光学センサ110と、光学センサの受光部112側を保護するためのシール材120と、少なくとも受光部112とシール材120の受光部112との対向面121間に形成され、光に対して透明な中間層130と、中間層130とシール材120の対向面121との間に配置された制御膜140と、を有し、制御膜140は、膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、CCDやCMOSイメージセンサ(CIS)等の光学センサがチップスケールのパッケージとして構成される撮像装置およびカメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学センサの簡易なパッケージ方法として、チップスケールパッケージ(Chip Scale Package;CSP)構造が提案されている。
【0003】
図1は、CSP構造の基本的な構成を示す図である。
CSP構造1は、光学センサ(センサチップ)2の前面の受光部21の上部を保護するためのシール材としてのシールガラス(カバーガラス)3が配置される。
CSP構造1においては、光学センサ2の受光部21を除く周縁部において樹脂4を介してシールガラス3が配置されている。したがって、CSP構造1では、光学センサ2の受光部21とシールガラス3の受光部21との対向面31との間に空隙5が形成される。
【0004】
このCSP構造は、センサチップの前面と裏面間を貫通する貫通ビア(TSV;Thru Silicon Via)により電極6を形成することでワイヤーボンドによる配線を失くしクリーンルーム内においてウェハー状態でガラスを貼り合わせることができる。
このため、従来のCOB(Chip On Board)タイプのパッケージと比較し、小型化、低コスト化、ダストレス化が期待できる。
【0005】
しかしながら、CSP構造は、貫通ビア(TSV)形成上、チップ厚みを薄くするため上記のようにカバーガラス、チップ(光学センサ)間に空隙5が存在するとリフローなどの熱プロセスを通した際、熱応力の影響でチップが反ってしまうおそれがある。
【0006】
これを解決する方法として、図2に示すように、上記空隙5を樹脂4で埋めて空隙を持たないCSP構造1Aが提案されている。
以下、この空隙を持たないCSP構造を、キャビティレス(Cavity less)CSP構造という場合もある。
【0007】
この空隙を持たないキャビティレスCSP構造を採用することにより、空隙を持つCSP構造の空隙内で発生していた熱応力を大幅に低減することで反りの発生を抑えることができる。
さらに、キャビティレスCSP構造は、光学的にも空隙(屈折率1)の界面で生じていた反射を屈折率が約1.5の樹脂で抑制することができるため光学センサ2における受光量増大も期待することができる。
【0008】
このキャビティレスCSP構造に関する技術は、たとえば特許文献1に開示されている。特許文献1には、キャビティレスCSP構造を実現するための製法について言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007‐73958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したキャビティレスCSP構造では従来のセンサパッケージ構造では生じることのなかったフレア(偽画像)光が発生する。
このフレア光の発生について、図3(A),(B)および図4に関連付けて説明する。
【0011】
図3(A)および(B)は、CSP構造における空隙の有無に応じたシールガラス上面の全反射モードを説明するための図である。図3(A)は空隙を持つCSP構造におけるシールガラス上面の全反射モードの状態を、図3(B)は空隙を持たないキャビティレスCSP構造におけるシールガラス上面の全反射モードの状態を示している。
図4は、空隙を持たないキャビティレスCSP構造で発生するフレア光を示す図である。
【0012】
フレア光の発生の要因は、図3(B)に示すように、キャビティレスCSP構造の場合、シールガラス下の屈折率がシールガラス3とほぼ同じになるために光学センサを反射した回折光がシールガラス上面において全反射することが可能になることに由来する。
これに対して、光学センサとシールガラス間に空隙のあるSCP構造では、図3(A)に示すように、シールガラス上面での全反射は起こりえない。
【0013】
このフレア光はセンサピッチが小さくなると増大する。特にセルサイズ2μmピッチ以下の微細な光学センサにおいては、図4に示すように、中心光源からぼけたような光が放射状態に拡散する、いわゆる線香花火状のフレアが発生する場合がある。
【0014】
本技術は、フレア光の発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレア光が目立つことのない良質の画像を得ることが可能な撮像装置およびカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術の第1の観点の撮像装置は、被写体像を結像可能な受光部を含む光学センサと、上記光学センサの上記受光部側を保護するためのシール材と、少なくとも上記受光部と上記シール材の当該受光部との対向面間に形成された中間層と、上記中間層と上記シール材の上記対向面との間に配置された制御膜と、を有し、上記制御膜は、膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする。
【0016】
本技術の第2の観点のカメラモジュールは、被写体像を結像可能な受光部を含む光学センサと、上記光学センサの上記受光部側を保護するためのシール材と、少なくとも上記受光部と上記シール材の当該受光部との対向面間に形成された中間層と、上記中間層と上記シール材の上記対向面との間に配置された制御膜と、上記光学センサの上記受光部に被写体像を結像するレンズと、を有し、上記制御膜は、膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、フレア光の発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレア光が目立つことのない良質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CSP構造の基本的な構成を示す図である。
【図2】空隙を持たないCSP構造の構成を示す図である。
【図3】CSP構造における空隙の有無に応じたシールガラス上面の全反射モードを説明するための図である。
【図4】空隙を持たないキャビティレスCSP構造で発生するフレア光を示す図である。
【図5】本実施形態に係る撮像装置の第1の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係るカラーフィルタの構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る多層膜の特性例および膜構造の一例を示す図である。
【図8】多層膜を樹脂とカバーガラス下面の間に挿入した場合と挿入しなかった場合のカバーガラス上面における反射率をシミュレーションした結果を示す図である。
【図9】本実施形態の空隙を持たず、かつ、多層膜を配置したキャビティレスCSP構造で発生するフレア光を示す図である。
【図10】多層膜がフレア対策として機能するための光学特性を満たす最も少ない膜数条件を見積もった結果を示す図である。
【図11】多層膜の配置位置(高さと)フレアの拡散の関係を示す図である。
【図12】本実施形態に係る撮像装置の第2の構成例を示す図である。
【図13】本実施形態に係るカメラモジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.撮像装置の第1の構成例
2.制御膜(多層膜)の基本的な構成および機能
3.制御膜(多層膜)の具体的な構成および機能
4.制御膜(多層膜)の典型的な構成および機能
5.撮像装置の第2の構成例
6.カメラモジュールの構成例
【0020】
<1.撮像装置の第1の構成例>
図5は、本実施形態に係る撮像装置の第1の構成例を示す図である。
本実施形態においては、光学センサとしては一例としてCMOSイメージセンサ(CIS:CMOS Image Sensor)が適用される。
【0021】
本実施形態の撮像装置100は、基本的に、光学センサチップサイズでパッケージするCSP構造を有し、かつ光学センサの前面(上面)を保護するシール材の間に中間層(本実施形態では樹脂)が形成された空隙を持たないキャビティレスCPS構造を有する。
本実施形態において、前面とは撮像装置の光学センサの受光部が形成された被写体の像光の入射側をいい、裏面とは光入射が行われず、バンプ等の接続電極やインターポーザー等が配置される面側をいう。
【0022】
撮像装置100は、光学センサ110、シール材120、中間層として樹脂層130、および制御膜140を含んで構成されている。
本実施形態において、制御膜140は中間層としての樹脂層130とシール材120との間に形成され、後で詳述するように、制御膜140は膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする多層膜により形成されている。
本実施形態の撮像装置100は、この制御膜140により、フレア光の発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレア光が目立つことのない良質の画像を得ることが可能となっている。
なお、中間層としての樹脂層130およびシール材120は、光を透過する光に対して透明な材料により形成され、これらの屈折率は空気の屈折率より高く、たとえば屈折率1.5程度の材料により形成される。
また、図5の構成において、シール材120はガラスにより形成される例を示しており、シール材120をシールガラスあるいはカバーガラスという場合もある。
【0023】
光学センサ110は、センサ基板111の前面111a側に受光部112が形成され、裏面111b側にバンプ等の接続用電極113が形成されている。
光学センサ110において、センサチップの前面と裏面間を貫通する貫通ビア(TSV;Thru Silicon Via)114により電極115を形成することでワイヤーボンドによる配線を失くしクリーンルーム内においてウェハー状態でガラスを貼り合わせることができる。
受光部112は、センサ基板111の前面111aに形成されており、複数の画素(受光素子)がマトリクス状に配置された受光面(画素アレイ部)1121を有する。
受光部112は、画素アレイ部1121のさらに前面側にカラーフィルタ1122が形成されている。
カラーフィルタ1122は、色の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが、たとえば図6に示すように、ベイヤー(Bayer)配列をもってオンチップカラーフィルタ(OCCF)としてアレイ状に形成されている。ただし、カラーフィルタの配置パターンはベイヤーパターンに限る必要はない。
なお、図6の例では、カラーフィルタ1122に重なるように、赤外カットフィルタ(IRCF)150が形成されている。
ただし、本実施形態においては、後述するように、このIRCF150は、制御膜とは別に設ける構成であっても、また、制御膜140がIRCFの機能を併せ持つことから、制御膜140とは個別に配置しない構成であってもよい。
【0024】
受光部112は、カラーフィルタ1122のさらに前面側に各画素に入射光を集光するためのマイクロレンズアレイ1123が配置されている。
受光部112は、このマイクロレンズアレイ1123のさらに前面側に、たとえば反射防止膜等が形成される。
【0025】
中間層としての樹脂層130は、上記構成を有する受光部112とシール材(シールガラス)120の受光部112との対向面121間に形成されている。樹脂層130の厚さは50μm程度に設定される。また、シールガラス120の厚さは450〜500μm程度に設定される。
【0026】
そして、制御膜140は、中間層としての樹脂層130とシール材の対向面121との間に配置されている。
【0027】
以上、本実施形態の撮像装置100の基本的な構成について説明した。
以下に、撮像装置100のさらに具体的な構成および機能を、本実施形態の特徴的な構成要素である制御膜140の構成および機能を中心に説明する。
【0028】
<2.制御膜(多層膜)の基本的な構成および機能>
制御膜140は、膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする機能を有している。制御膜140は、屈折率が異なる複数の膜の多層膜140A(たとえば図7)により形成されている。
多層膜140Aは、2種以上の膜材料を高屈折率、低屈折率の順に交互に配置されている。多層膜140Aは、この2種以上の膜材料のうち屈折率最大の材料と屈折率最小の材料の間の屈折率差Δが0.5より大きいように形成される。
多層膜140Aは、1層あたりの膜厚が50nm〜150nmの厚みを有する膜が6層以上配置される。
【0029】
制御膜140である多層膜140Aは、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタIRCFとしての機能を含む。
前述したように、多層膜140Aとは別に、光学センサの受光部112への光路に、多層膜140Aとは別に、赤外領域の光を遮断するIRCF150が配置される構成も採用可能である。
この場合、多層膜140AとIRCF150のカットオフ波長、カットオフ線幅が次の条件を満足する。
【0030】
[数1]
λcf_IRCF+Δλcf_IRCF/2 < λcf_ML−Δλcf_ML/2
・・・(1)
ここで、λcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ波長を、Δλcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ線幅を、λcf_MLは制御膜のカットオフ波長を、Δλcf_MLは制御膜のカットオフ線幅を、それぞれ示している。
【0031】
また、多層膜140Aは、光学センサ110の受光部112からシールガラス120の光入射側面(上面)122までの高さの中間の高さ、たとえば200μm程度の位置に配置される。
【0032】
<2.制御膜(多層膜)の具体的な構成および機能>
上述したように、撮像装置100は、フレア光発生を抑制するため、樹脂層130とカバーガラス120の受光部112との対向面(下面)121の境界に当たる部分に多層膜140Aが形成されている。
【0033】
多層膜140Aは、光入出射面140a,140bに対して垂直に入射する光に対して可視領域をほぼ透過させ、近赤外領域をほぼ反射させる機能を持つ。
この多層膜140Aは、光入出射面140a,140bに対して斜めに入射する光に対してはその角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする性質を持つ。
本実施形態の撮像装置100は、この性質を利用することで光学センサ110の受光部112からの反射回折光のうち、全反射に寄与する高次回折成分を多層膜部で選択的に反射させ、フレア光の拡散を防ぐ。
一般的にこのカットオフ周波数のシフトは入射角をθとした場合、次式で表される。
【0034】
[数2]
λCF(θ) =λCF(0) * cos(θ) ・・・(2)
ここで、λCF(θ)は入射角θのカットオフ波長を、λCF(0)は入射角0度のカットオフ波長をそれぞれ示している。
【0035】
図7(A)および(B)は、本実施形態に係る多層膜の特性例および膜構造の一例を示す図である。図7(A)が多層膜の特性例を、図7(B)が膜構造例を示している。
【0036】
本例では、多層膜140Aは、多層膜材料として高屈折率の第1膜141としてTiO,定屈折率の第2膜142としてSiOが使用され、第1膜141と第2膜142を順に交互に配置した17層の多層膜として形成されている。
図7(B)は、この17層の多層膜140Aを形成した際に実現できる光学特性を示しており、カットオフ(cut off)波長は650nmに設定されている。
【0037】
この多層膜140Aの全反射によるフレアに対するカットオフ波長は全反射条件から次式で表すことができる。
【0038】
[数3]
sin θtir = 1/ng ・・・(3)
ここで、θtirは臨界角を、ngはカバーガラス120の屈折率をそれぞれ示している。
【0039】
たとえば、カバーガラス120の屈折率ng=1.51を仮定すると、臨界角θtir=41degが導出される。
これを(2)式のθに代入すると全反射によるフレアのカットオフ波長は、λCF(θtir)≒490nmとなり、少なくとも490nm以上の可視域に対してこの多層膜がフレア対策として有効であることを見積もることができる。
【0040】
図8は、多層膜を樹脂とカバーガラス下面の間に挿入した場合と挿入しなかった場合のカバーガラス上面における反射率をシミュレーションした結果を示す図である。
図8(A)がシミュレーション結果を示し、図8(B)は多層膜を樹脂とカバーガラス下面の間に挿入しなかった場合の状態を、図8(C)は多層膜を樹脂とカバーガラス下面の間に挿入した場合の状態を模式的に示している。
【0041】
このシミュレーションでは、光学センサ110のピクセルサイズは1.4μmを前提としており、その反射電場は厳密な電磁場解析をもとに導出している。
この結果は、多層膜140Aのカットオフ波長シフトの効果を定量的に裏付ける計算であり、これにより対策の効果を理論的に説明することができる。
【0042】
図9は、本実施形態の空隙を持たず、かつ、多層膜を配置したキャビティレスCSP構造で発生するフレア光を示す図である。
図9からわかるように、多層膜140Aがフレア光抑制の効果があることを実デバイスにおいても確認できており、制御膜である多層膜のフレア抑制効果は明らかである。
【0043】
<4.制御膜(多層膜)の典型的な構成および機能>
撮像装置100は、その典型的な構成としては、上述したように、制御膜140として多層膜140Aを含む構造が基本となる。ここで重要となるのは多層膜の膜構造の条件および膜の配置場所である。
【0044】
まず、多層膜構造についてフレア対策として機能するためには、次の光学特性を有することが必要である。
・多層膜140Aの光入出射面140a,140bに対する垂直入射に対してカットオフ波長が赤外域にあり、全反射フレアの回折角においてカットオフ波長が可視域にあること、並びに、
・カットオフ波長より短波側で十分大きい透過率(80%以上)、長波側で十分小さい透過率(20%以下)、
の光学特性を有することである。
【0045】
図10(A)および(B)は、多層膜がフレア対策として機能するための光学特性を満たす最も少ない膜数条件を見積もった結果を示す図である。図10(A)が多層膜の特性例を、図10(B)が膜構造例を示している。
【0046】
この計算より、多層膜構造として、次の条件を満たすことができれば、フレア対策としての機能を果たすことができる。
・膜の総数は第1膜141と第2膜142で6層程度以上(設計は7層)である。
・1層の膜厚さはλCF/4/n程度である。
ここで、λCFは設計カットオフ波長を、nは屈折率を示している。
たとえば、λCF=650nm、n(高屈折率n_highは2.2〜2.5、低屈折率n_lowは1.4〜1.6)のためこの値は50〜150nm程度に相当する。
・屈折率最大の材料と屈折率最小の材料の間の屈折率差Δは0.5以上(図10で用いた値はΔn=約1)である。
【0047】
この多層膜の上記条件はカメラモジュールにおいて一般的に使用されるIRCF(InfraRed Cutoff Filter)と兼用することが可能である。
すなわち、一般的には別部品として配置していたIRCFを削減して上記多層膜140Aを所望のIRCF特性にすることでカメラモジュールの部品点数削減が期待できる。
【0048】
一方でIRCFと上記多層膜140Aをそれぞれ別々に配置する方法を採用することも可能である。
この場合、上記多層膜はIRCFの特性に影響を及ぼさないためにカットオフ波長およびカットオフ線幅を設定する必要がある。
このためには、IRCFのカットオフ波長をλcf_IRCF、カットオフ線幅をΔλcf_IRCF、多層膜(ML)のカットオフ波長をλcf_ML、カットオフ線幅をΔλcf_MLとして、上記した(1)式の条件を満足する必要がある。
【0049】
λcf_IRCF+Δλcf_IRCF/2 < λcf_ML−Δλcf_ML/2
・・・(1)
【0050】
また、この多層膜140Aの配置高さが、フレア対策として機能するために重要である。ここで、多層膜140Aの配置高さとは、光学センサ110の受光部112の所定面、たとえば受光面1121からの配置位置(高さ)をいう。
【0051】
図11(A)および(B)は、多層膜の配置位置(高さと)フレアの拡散の関係を示す図である。図11(A)は多層膜がない場合を、図11(B)は多層膜がある場合を示している。
【0052】
この図を見て分かるように多層膜の位置140Aが高くなればなるほどフレア光の拡散が大きくなることが分かる。
上述した実験結果において効果のある多層膜140Aの高さ(=樹脂厚み)は50μmであった。
これに対し、全反射が問題になっているシールガラス(カバーガラス)120の上面121の位置は450μmであり、この高さに多層膜を配置してもフレア対策として機能しないことは明白である。
これらを考慮して、多層膜の配置高さはこの値(400μm程度)の中間にあたる200μmより小さいことが望ましい。
【0053】
また、この多層膜の製造方法としてセンサ上樹脂の上に成膜で形成する方法およびガラス上に成膜して樹脂に貼り合わせる方法を採用することが可能である。
しかしながら、樹脂上に屈折率が大きい無機膜を精度良く形成することは非常に難しく、製造方法として後者が望ましい。このため接着層が樹脂と多層膜の間に配置されることが望ましい。
また、この構造はたとえば特開2003‐31782号公報に見られるようなシールガラスレス構造についてもガラスと樹脂はほぼ同じ屈折率を持つため、光学的には同じ機能を持つ。
このため、前述した各条件を満たした場合、この構造についても本技術の適用範囲となることは明白である。
【0054】
<5.撮像装置の第2の構成例>
図12は、本実施形態に係る撮像装置の第2の構成例を示す図である。
【0055】
図12の撮像装置100Aが図5の撮像装置100と異なる点は次の通りである。
図5の撮像装置100において、光学センサ110は、センサ基板111の前面111a側に受光部112が形成され、裏面111b側にバンプ等の接続用電極113が形成されている。
これに対して、図12の撮像装置100Aにおいて、光学センサ110Aは、センサ基板111の裏面111b側がインターポーザー160の一面160a上にダイボンド材170を介して取り付けされている。
センサ基板111の前面111a側の周縁部に形成されたワイヤーボンドパッドPD1111,PD112とインターポーザー160の一面160aの周縁部に形成されたワイヤーボンドパッドPD161,PD162がワイヤーボンド配線WBLで接続されている。
【0056】
その他の構成は、撮像装置100Aと撮像装置100とは同様の構成を有し、多層膜により形成される制御膜140としての機能は上述した通りである。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の撮像装置によれば、フレア光の発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレア光が目立つことのない良質の画像を得ることが可能となる。
【0058】
以上説明した撮像装置100,100Aは、撮像レンズを有するカメラモジュールに適用することが可能である。
【0059】
<6.カメラモジュールの構成例>
図13は、本実施形態に係るカメラモジュールの構成例を示す図である。
【0060】
このカメラモジュール200は、撮像装置100の前面側(被写体側)に光学センサ110の受光部112に被写体像を結像する撮像レンズ210が配置されている。図13の例では図5の撮像装置100を例に示しているが、図12の撮像装置100Aを適用することも可能である。
カメラモジュール200は、撮像レンズ210に加えて、図示しない信号処理部等を有する。
【0061】
このような構成のカメラモジュール200においては、撮像レンズ210で取り込んだ被写体からの光を、撮像装置で電気信号に変換しやすいように受光部において光学的な処理を施す。その後、光学センサ110の光電変換部に導き、光電変換して得られる電気信号に対して、後段の信号処理部で所定の信号処理を施す。
【0062】
本実施形態のカメラモジュールにおいても、フレア光の発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレア光が目立つことのない良質の画像を得ることが可能となる。
【0063】
なお、本技術は以下のような構成をとることができる。
(1)被写体像を結像可能な受光部を含む光学センサと、
上記光学センサの上記受光部側を保護するためのシール材と、
少なくとも上記受光部と上記シール材の当該受光部との対向面間に形成された中間層と、
上記中間層と上記シール材の上記対向面との間に配置された制御膜と、を有し、
上記制御膜は、
膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする
撮像装置。
(2) 上記制御膜は、
屈折率が異なる複数の膜の多層膜により形成されている
上記(1)記載の撮像装置。
(3)上記多層膜は、
2種以上の膜材料を高屈折率、低屈折率の順に交互に配置されている
上記(2)記載の撮像装置。
(4)上記多層膜は、
上記2種以上の膜材料のうち屈折率最大の材料と屈折率最小の材料の間の屈折率差が0.5より大きい
上記(3)記載の撮像装置。
(5)上記多層膜は、
1層あたりの膜厚が50nm〜150nmの厚みを有する膜が6層以上配置されている
上記(3)または(4)記載の撮像装置。
(6)上記制御膜は、
赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタとしての機能を含む
上記(1)から(5)のいずれか一に記載の撮像装置。
(7)上記光学センサの受光部への光路に、上記制御膜とは別に、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタが配置されている
上記(1)から(6)のいずれか一に記載の撮像装置。
(8)上記多層膜と上記赤外カットフィルタのカットオフ波長、カットオフ線幅が次の条件を満足する
上記(7)記載の撮像装置。
λcf_IRCF+Δλcf_IRCF/2 < λcf_ML−Δλcf_ML/2
ここで、λcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ波長を、Δλcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ線幅を、λcf_MLは制御膜のカットオフ波長を、Δλcf_MLは制御膜のカットオフ線幅を、それぞれ示している。
(9)上記制御膜は、
上記光学センサの上記受光部から上記シール材の光入射側面までの高さの中間の高さの位置に配置されている
上記(1)から(8)のいずれか一に記載の撮像装置。
(10)上記制御膜の上層のシール材がガラスによって形成されている
上記(1)から(9)のいずれか一に記載の撮像装置。
(11)上記制御膜は、
上記シール材の上記対向面の直接成膜されている
上記(1)から(10)のいずれか一に記載の撮像装置。
【0064】
(12)被写体像を結像可能な受光部を含む光学センサと、
上記光学センサの上記受光部側を保護するためのシール材と、
少なくとも上記受光部と上記シール材の当該受光部との対向面間に形成された中間層と、
上記中間層と上記シール材の上記対向面との間に配置された制御膜と、
上記光学センサの上記受光部に被写体像を結像するレンズと、を有し、
上記制御膜は、
膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする
カメラモジュール。
(13)上記制御膜は、
屈折率が異なる複数の膜の多層膜により形成されている
上記(12)記載のカメラモジュール。
(14)上記多層膜は、
2種以上の膜材料を高屈折率、低屈折率の順に交互に配置されている
上記(13)記載のカメラモジュール。
(15)上記多層膜は、
上記2種以上の膜材料のうち屈折率最大の材料と屈折率最小の材料の間の屈折率差が0.5より大きい
上記(14)記載のカメラモジュール。
(16)上記多層膜は、
1層あたりの膜厚が50nm〜150nmの厚みを有する膜が6層以上配置されている
上記(14)または(15)記載のカメラモジュール。
(17)上記制御膜は、
赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタとしての機能を含む
上記(12)から(16)のいずれか一に記載のカメラモジュール。
(18)上記光学センサの受光部への光路に、上記制御膜とは別に、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタが配置されている
上記(12)から(17)のいずれか一に記載のカメラモジュール。
(19)上記多層膜と上記赤外カットフィルタのカットオフ波長、カットオフ線幅が次の条件を満足する
上記(18)記載のカメラモジュール。
λcf_IRCF+Δλcf_IRCF/2 < λcf_ML−Δλcf_ML/2
ここで、λcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ波長を、Δλcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ線幅を、λcf_MLは制御膜のカットオフ波長を、Δλcf_MLは制御膜のカットオフ線幅を、それぞれ示している。
(20)上記制御膜は、
上記光学センサの上記受光部から上記シール材の光入射側面までの高さの中間の高さの位置に配置されている
上記(12)から(19)のいずれか一に記載のカメラモジュール。
【符号の説明】
【0065】
100,100A・・・撮像装置、110・・・光学センサ、111・・・センサ基板、112・・・受光部、120・・・シールガラス、130・・・樹脂層(中間層)、140・・・制御膜、140A・・・多層膜、150・・・赤外カットフィルタ(IRCF)、160・・・インターポーザー、200・・・カメラモジュール、210・・・撮像レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を結像可能な受光部を含む光学センサと、
上記光学センサの上記受光部側を保護するためのシール材と、
少なくとも上記受光部と上記シール材の当該受光部との対向面間に形成された中間層と、
上記中間層と上記シール材の上記対向面との間に配置された制御膜と、を有し、
上記制御膜は、
膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする
撮像装置。
【請求項2】
上記制御膜は、
屈折率が異なる複数の膜の多層膜により形成されている
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
上記多層膜は、
2種以上の膜材料を高屈折率、低屈折率の順に交互に配置されている
請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
上記多層膜は、
上記2種以上の膜材料のうち屈折率最大の材料と屈折率最小の材料の間の屈折率差が0.5より大きい
請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
上記多層膜は、
1層あたりの膜厚が50nm〜150nmの厚みを有する膜が6層以上配置されている
請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
上記制御膜は、
赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタとしての機能を含む
請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
上記光学センサの受光部への光路に、上記制御膜とは別に、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタが配置されている
請求項1記載の撮像装置。
【請求項8】
上記多層膜と上記赤外カットフィルタのカットオフ波長、カットオフ線幅が次の条件を満足する
請求項7記載の撮像装置。
λcf_IRCF+Δλcf_IRCF/2 < λcf_ML−Δλcf_ML/2
ここで、λcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ波長を、Δλcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ線幅を、λcf_MLは制御膜のカットオフ波長を、Δλcf_MLは制御膜のカットオフ線幅を、それぞれ示している。
【請求項9】
上記制御膜は、
上記光学センサの上記受光部から上記シール材の光入射側面までの高さの中間の高さの位置に配置されている
請求項1記載の撮像装置。
【請求項10】
上記制御膜の上層のシール材がガラスによって形成されている
請求項1記載の撮像装置。
【請求項11】
上記制御膜は、
上記シール材の上記対向面の直接成膜されている
請求項1記載の撮像装置。
【請求項12】
被写体像を結像可能な受光部を含む光学センサと、
上記光学センサの上記受光部側を保護するためのシール材と、
少なくとも上記受光部と上記シール材の当該受光部との対向面間に形成された中間層と、
上記中間層と上記シール材の上記対向面との間に配置された制御膜と、
上記光学センサの上記受光部に被写体像を結像するレンズと、を有し、
上記制御膜は、
膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする
カメラモジュール。
【請求項13】
上記制御膜は、
屈折率が異なる複数の膜の多層膜により形成されている
請求項12記載のカメラモジュール。
【請求項14】
上記多層膜は、
2種以上の膜材料を高屈折率、低屈折率の順に交互に配置されている
請求項13記載のカメラモジュール。
【請求項15】
上記多層膜は、
上記2種以上の膜材料のうち屈折率最大の材料と屈折率最小の材料の間の屈折率差が0.5より大きい
請求項14記載のカメラモジュール。
【請求項16】
上記多層膜は、
1層あたりの膜厚が50nm〜150nmの厚みを有する膜が6層以上配置されている
請求項15記載のカメラモジュール。
【請求項17】
上記制御膜は、
赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタとしての機能を含む
請求項12記載のカメラモジュール。
【請求項18】
上記光学センサの受光部への光路に、上記制御膜とは別に、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタが配置されている
請求項12記載のカメラモジュール。
【請求項19】
上記多層膜と上記赤外カットフィルタのカットオフ波長、カットオフ線幅が次の条件を満足する
請求項18記載のカメラモジュール。
λcf_IRCF+Δλcf_IRCF/2 < λcf_ML−Δλcf_ML/2
ここで、λcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ波長を、Δλcf_IRCFは赤外カットフィルタのカットオフ線幅を、λcf_MLは制御膜のカットオフ波長を、Δλcf_MLは制御膜のカットオフ線幅を、それぞれ示している。
【請求項20】
上記制御膜は、
上記光学センサの上記受光部から上記シール材の光入射側面までの高さの中間の高さの位置に配置されている
請求項12記載のカメラモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−175461(P2012−175461A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36337(P2011−36337)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】