説明

撮像装置及びレンズ異常診断システム

【課題】レンズの異常の有無を自己診断することができるレンズ異常診断システム及び撮像装置を提供する。
【解決手段】赤外線レンズ群11と、赤外線レンズ群11で集光して得た像を撮像し、集光した光の強度に応じた階調値を有する撮像画像を出力する赤外線撮像素子13aとを備える赤外線撮像装置1に、赤外線レンズ群11の光軸Lに対する入射角度が半画角以下の光を前記赤外線レンズ群11に照射する照射部14及び平面反射鏡16を備える。また、赤外線撮像装置1と、赤外線撮像素子13aから出力された撮像画像に基づいて赤外線レンズ群11の異常の有無を診断する画像処理装置とをレンズ異常診断システムに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ異常の有無を自己診断する撮像装置及びレンズ異常診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載された撮像装置及び画像処理装置からなる自動車安全システム、例えばナイトビジョンシステム、プリクラッシュセーフティシステム等が実用化されている。自動車安全システムに使用される撮像装置は、高い信頼性が要求されている。このため、出荷前に撮像装置の各種信頼性試験を行い、その高い信頼性を保障している。
例えば、赤外線撮像素子異常の自己診断を、部品製造時に行うことができる赤外線検出器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−98872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車両に搭載された撮像装置のレンズ及び赤外線撮像素子は、熱、振動、水分等の厳しい環境下に晒されており、出荷前検査時においては正常であっても、自動車安全システム使用時に不具合、故障等が生じる可能性があり、特にレンズ異常の自己診断は特許文献1に係る赤外線検出器においても行うことはできない。
【0004】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、レンズの汚れ、ひび、傷、コーティングの剥離等による透過率の低下の有無を自己診断することができるレンズ異常診断システム及び該レンズ異常診断システムを構成する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る撮像装置は、レンズと、該レンズで集光して得た像を撮像し、集光した光の強度に応じた階調値を有する撮像画像を出力する撮像素子とを備える撮像装置であって、前記レンズの光軸に対する入射角度が半画角以下の光を前記レンズに照射する照射手段を備えることを特徴とする。
【0006】
第1発明にあっては、照射手段から照射されてレンズを透過した光は、撮像素子に集光する。レンズの光軸に対する光の入射角度が半画角以下である場合、該光は、撮像素子に入射するからである。撮像素子は、照射手段が光を照射している場合に撮像して得た撮像画像を出力する。撮像素子が出力した該撮像画像を参照することによって、レンズの異常の有無を診断することができる。
なお、半画角の文言には撮像素子の形状を限定する意図は無く、入射角度が半画角以上の光とは、撮像素子外に入射する光を意味している。従って、撮像素子の形状は、アスペクト比が3:4の長方形、アスペクト比が1:10の長方形、正方形等に限定されることは無く、当業者は任意の形状を採用することができる。
【0007】
第2発明に係る撮像装置は、開閉が可能であり、前記照射手段からの光以外の外光を遮断するシャッタを備え、前記照射手段は、前記シャッタが閉じた場合、光を照射するようにしてあることを特徴とする。
【0008】
第2発明にあっては、開閉可能なシャッタがレンズに入射する外光を遮断する。照射手段は、シャッタが閉じて外光が遮断された場合、光を照射する。撮像素子は、シャッタが閉じた状態で照射手段から照射されてレンズを透過し、集光した像を撮像し、撮像して得た撮像画像を出力する。撮像画像を構成する画素の階調値は、レンズの透過率に直接対応しているため、該階調値を参照することによって、レンズの異常の有無を直接的に自己診断することができる。
【0009】
第3発明に係る撮像装置は、前記照射手段は、光源と、該光源からの光を反射し、前記レンズに入射させる反射鏡とを備えることを特徴とする。
【0010】
第3発明にあっては、光源からの光が反射鏡によって反射され、レンズに入射する。
従って、反射鏡を使用せず、光源からの光を直接レンズに入射させる構成に比して、照射手段の配置自由度が高く、赤外線撮像装置を小型化することができる。
【0011】
第4発明に係る撮像装置は、前記照射手段が、コリメータを備え、該コリメータからの平行光を前記レンズに照射するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
第4発明にあっては、コリメータによって生成された平行光はレンズに照射され、撮像素子に集光する。平行光は、非平行光に比してより正確にレンズに入射し、撮像素子に集光する。
特に、光学系の焦点が無限遠に合わせられている場合、撮像素子に集光した際の光の広がりを最小限に抑えることができる。
【0013】
第5発明に係る撮像装置は、前記照射手段が、前記レンズの全面、又は前記レンズの中心部分を含む所定範囲に光を照射するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
第5発明にあっては、照射手段からの光がレンズ全面に照射される場合、レンズ全面を透過した光が撮像素子に集光する。
従って、撮像素子は、レンズ全面における該レンズの透過率、つまりレンズ全面における異常の有無を示す撮像画像を出力することができる。
また、照射手段からの光がレンズの中心部分を含む所定範囲に照射される場合、レンズの前記所定範囲を透過した光が撮像素子に集光する。
従って、撮像素子は、レンズの前記所定範囲における異常の有無を示す撮像画像を出力することができる。
【0015】
第6発明に係る撮像装置は、前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を構成する画素の階調値に基づいて、前記レンズの異常の有無を診断する診断手段を備えることを特徴とする。
【0016】
第6発明にあっては、診断手段は、撮像素子が出力した撮像画像を構成する画素の階調値に基づいて、レンズの透過率に係る異常の有無を自己診断する。
【0017】
第7発明に係るレンズ異常診断システムは、第1発明乃至第5発明のいずれか一つの撮像装置と、前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を取得する取得手段、及び該取得手段が取得した撮像画像を構成する画素の階調値に基づいて、前記レンズの異常の有無を診断する診断手段を有する診断装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
第7発明にあっては、診断装置の取得手段が、撮像装置の撮像素子が出力した撮像画像を取得し、診断手段は、取得手段が取得した撮像画像を構成する画素の階調値に基づいて、レンズの透過率に係る異常の有無を自己診断する。
【0019】
第8発明に係るレンズ異常診断システムは、前記診断装置が、閾値を記憶する記憶手段を備え、前記診断手段は、前記取得手段が取得した撮像画像を構成する画素の階調値、及び前記記憶手段が記憶している閾値を比較することにより、前記レンズの異常の有無を診断するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
第8発明にあっては、診断装置の記憶手段がレンズの異常の有無を診断するための閾値を記憶しており、診断手段は、取得手段が取得した撮像画像を構成する画素の階調値と、記憶手段が記憶している閾値とを比較することにより、レンズの異常の有無を診断する。具体的には、レンズの透過率が所定の透過率以上であるか否かを判定する。
【0021】
第9発明に係るレンズ異常診断システムは、前記診断手段は、前記照射手段が光を照射している場合に前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を構成する複数画素夫々の階調値、及び前記照射手段が光を照射していない場合に前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を構成する複数画素夫々の階調値の差分を算出する差分算出手段を備え、該差分算出手段が算出した差分に基づいて、前記レンズの異常の有無を診断するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
第9発明にあっては、差分算出手段は、前記撮像素子が出力した各撮像画像を構成する複数画素夫々の差分を算出する。差分算出手段にて算出された差分は、レンズの透過率に直接対応しており、診断手段は該差分に基づいてレンズの異常を診断する。
【0023】
第10発明に係るレンズ異常診断システムは、前記診断装置は、前記レンズに異常があると診断した場合、警告を発する手段を備えることを特徴とする。
【0024】
第10発明にあっては、診断装置は、レンズに異常があると判定した場合、警告を発することにより、レンズに異常がある旨を、撮像装置の使用者に通知する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、入射角度が半画角以下の光をレンズに照射する照射手段を備えることにより、レンズの異常を診断するための撮像画像を得ることができ、レンズの異常の有無を自己診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る赤外線撮像装置1を示す模式図である。
図中11は、複数の赤外線レンズからなる赤外線レンズ群であり、赤外線レンズ群11はアルミニウムからなる鏡筒12に内嵌固定されている。赤外線レンズ群11の背面側には赤外線撮像部13が配設されている。なお、作図及び説明の便宜上、赤外線レンズ群11は、前記複数の赤外線レンズからなる集光光学系と同等の光学性能を有する1枚のレンズにて図示している。
【0027】
赤外線レンズ群11は、例えば硫化亜鉛原料粉末をホットプレス法にて焼結してなる焼結体であり、8〜12μm帯の赤外線に対して透過性を有している。なお、赤外線レンズ群11の耐環境性を向上させるべく、赤外線レンズ群11の正面側の面をDLC(diamond like carbon)膜で被覆しても良い。DLC膜は、ダイヤモンドに類似した構造を有するアモルファスの炭素薄膜である。
【0028】
赤外線撮像部13は、波長が7〜14μmの赤外線にて車両前方を撮像、つまり赤外線レンズ群11にて結像した像を輝度信号に光電変換する素子、例えばサーモパイル、焦電素子、ボロメータをマトリクス状に配してなる略長方形の赤外線撮像素子13aを備えている。赤外線撮像素子13aは、その中心を赤外線レンズ群11の光軸Lが通り、焦点を無限遠に合わせるべく、光軸L方向における赤外線レンズ群11の主点と赤外線撮像部13との距離が赤外線レンズ群11の焦点距離と略等しくなるように配されている。焦点を遠方に合わせる程、被写界深度が深くなるため、焦点を無限遠に合わせることによって、ピント調整を行うこと無く、赤外線撮像装置1から約50m〜無限遠の距離範囲にある被写体を撮像することができるようになる。なお、赤外線撮像素子13aのアスペクト比は4/3である。赤外線撮像部13は、連続的又は断続的に撮像処理を行い、例えば1秒当たり30枚の撮像画像データを生成して信号処理部18へ出力する。なお、撮像画像を構成する各画素は、二次元に配列されており、撮像画像データは、各画素の位置、及び階調値として示される各画素の輝度を示すデータを含んでいる。
【0029】
信号処理部18は、マイクロコンピュータからなる制御部17によって制御されており、アナログの撮像画像データをデジタルの撮像画像データにAD変換する。より詳細には、画像を構成する各画素を256階調(1Byte)等の階調値にて示されるデジタルの撮像画像データに変換する。そして、画像処理部は、AD変換された撮像画像データに対して各種補正処理を実行し、出力部19を介して該撮像画像データを外部機器へ出力する。
【0030】
また、赤外線撮像装置1は、赤外線レンズ群11の異常の有無を診断するための照射部14(照射手段)、シャッタ15、平面反射鏡16(照射手段)、及びシャッタ駆動部15aを備えている。
【0031】
照射部14は、所定強度の赤外線を発する光源14aと、コリメータレンズ14bとを備えている。光源14aは、例えば通電によって発熱するフィラメントを有しており、コリメータレンズ14bの焦点に配されている。光源14aの点灯及び消灯は、制御部17によって制御される。
【0032】
鏡筒12は、赤外線レンズ群11を保持する円筒状の本体部12aと、本体部12aの外周面に一体形成されており、コリメータレンズ14b及び光源14aを保持する保持部12bとを備えている。保持部12bは、コリメータレンズ14bが正面、斜め内側を臨むような姿勢、詳細には、コリメータレンズ14bの光軸と、赤外線レンズ群11の光軸Lとが同一平面内にあり、且つ各光軸Lのなす角θが半画角α以下になるような姿勢でコリメータレンズ14bを保持している。
【0033】
シャッタ15は、開閉が可能な板状をなし、赤外線レンズ群11の正面側に設けられている。シャッタ15の開閉は、制御部17によって制御される。制御部17は、シャッタ駆動信号をシャッタ駆動部15aに与え、シャッタ駆動部15aは、シャッタ駆動信号を受信した場合、シャッタ15を開閉させる。シャッタ15が開いた場合、外光が赤外線レンズ群11に入射し、シャッタ15が閉じた場合、赤外線レンズ群11に入射する外光が遮断される。
なお、機械式のプレーンシャッタを例に挙げているが、外光を遮断可能であれば、他の構成のシャッタであっても良い。
【0034】
また、シャッタ15は、レンズ異常診断を阻害する外光を遮断するために設けられているが、シャッタ15自身からも赤外線が放射され、該赤外線がレンズ異常診断を阻害するおそれがある。従って、シャッタ15から放射される赤外線強度を一定に保ち、レンズ異常の自己診断を行うことが好ましい。シャッタ15から放射される赤外線強度が一定で既知の場合、該赤外線の影響を考慮してレンズ異常の有無を診断することができる。赤外線強度を一定に保つためには、例えばシャッタ15の表面温度が一様になるように、シャッタ15を熱伝導性が高い金属で形成し、図示しない熱電対温度検出器及びペルチェ素子にて一定温度に制御すると良い。
【0035】
更に、外光を遮断するシャッタ15は、レンズ異常診断のみならず、赤外線撮像素子13aが有する感度ばらつきを定期的にオフセット補正するためにも必要であるため、シャッタ15をレンズ異常診断用と、オフセット補正用とで兼用するように構成しても良い。
【0036】
シャッタ15の赤外線レンズ群11側の面には、照射部14から照射された赤外線を反射し、赤外線レンズ群11に入射させるための平面反射鏡16が固着されている。平面反射鏡16は、反射面が光軸Lに対して略垂直になるような姿勢で固定されている。従って、照射部14から照射された赤外線は入射角θで平面反射鏡16に入射し、反射角θで反射され、平面反射鏡16で反射された赤外線は入射角度θで赤外線レンズ群11に入射する。
【0037】
図2は、赤外線撮像装置1を備えた障害物検出システムの構成を示す模式図である。本発明の実施の形態1に係る障害物検出システム(レンズ異常診断システム)は、ステレオ視赤外線撮像装置を構成する2基の赤外線撮像装置1と、車両前方の障害物を検出し、警告を発する障害物検出機能、及び赤外線レンズ群11の異常の有無を診断するレンズ異常診断機能を有する画像処理装置(診断装置)3とを備えている。
【0038】
赤外線撮像装置1は、フロントグリル内部に並置されている。一の赤外線撮像装置1は、運転席側から見て車幅方向右側に配されている。他の赤外線撮像装置1は、車幅方向左側であって、路面からの高さが前記一の赤外線撮像装置1と等しくなる箇所に配されている。また、各赤外線撮像装置1は、光軸L方向が略並行になるような姿勢で固定されている。2基の赤外線撮像装置1にて共通の撮像対象を撮像することによって、両画像における撮像対象の視差を算出し、三角測量の原理により撮像対象までの距離を求めることができる。
【0039】
図3は、画像処理装置3の構成を示すブロック図である。画像処理装置3は、制御部31、画像メモリ32、RAM33、入力部34、映像出力部35、及び通信インタフェース部36、記憶部37を備えている。
【0040】
入力部34には、ケーブル7を介して赤外線撮像装置1の出力部19が接続されており、赤外線撮像装置1から出力された撮像画像データの入力を行う。入力部34に入力された撮像画像データは、1フレーム単位で順に画像メモリ32に記憶される。
【0041】
映像出力部35にはケーブル8を介して表示装置4、例えばメータ内ディスプレイ、ナビディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等が接続されている。映像出力部35は、入力された撮像画像データを適宜表示装置4に送信し、表示装置4に赤外線撮像装置1が撮像して得た撮像画像を表示させる。
【0042】
通信インタフェース部36には、CAN(Controller Area Network)に準拠した車載LANケーブル6を介して警報装置5が接続されており、制御部31の制御に応じた警報信号が通信インタフェース部36を介して警報装置5に送信されるように構成されている。
【0043】
警報装置5は、ブザー、スピーカ等を備えており、障害物検出処理において接触又は衝突する虞がある歩行者が検出された場合、その旨を音声、警告音等によって出力し、表示装置4は、「危険」等の文字を表示する。
また、警報装置5は、後述のレンズ異常診断処理において、赤外線レンズ群11に異常が有ると診断された場合、その旨を音声、警告音等によって出力し、表示装置4は、「レンズ異常」等の文字を表示する。
【0044】
画像メモリ32は、SRAM、フラッシュメモリ、SDRAM等であり、入力部34を介して赤外線撮像装置1から入力された撮像画像データを一時記憶する。
【0045】
記憶部37は、赤外線レンズ群11が正常な透過率を有するか否かを判定するための閾値を予め記憶している。閾値は、赤外線撮像装置1の製造時に予め測定して得られた値である。具体的には、シャッタ15を閉じた状態で照射部14から照射された赤外線が、汚れ、傷等が無い使用開始前の正常な赤外線レンズ群11を透過して赤外線撮像素子13aに集光した場合に、赤外線撮像素子13aが出力する撮像画像の最大階調値を測定し、測定された最大階調値に所定割合、例えば0.8を乗算し、乗算して得た値を閾値として設定する。なお、最大階調値とは、撮像画像を構成する複数画素の階調値の最大値である。
より好ましくは、シャッタ15の表面温度をレンズ異常診断時の所定温度に維持した状態で前記最大階調値を測定し、閾値を設定すると良い。閾値設定時と、レンズ異常診断時とでシャッタ15の表面温度を同一にしておくことにより、シャッタ15から放射される赤外線がレンズ異常の診断に与える影響を除外するためである。
【0046】
制御部31は、画像メモリ32に記憶された撮像画像データをフレーム単位で読み出し、読み出した撮像画像データに基づいて、車両前方の障害物を検出する障害物検出処理を実行する。また、制御部31は、所定のタイミングで後述のレンズ異常診断処理も行う。
【0047】
次に本発明の赤外線撮像装置1及び画像処理装置3のレンズ異常自己診断処理を行う際の動作を説明する。
図4は、赤外線レンズ群11の自己診断に係る赤外線撮像装置1側の制御部17の処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
赤外線撮像装置1の制御部17は、シャッタ駆動信号をシャッタ駆動部15aに与えることにより、シャッタ15を閉じ(ステップS11)、光源14aを点灯させる(ステップS12)。なお、シャッタ15を閉じる場合、シャッタ15の表面温度を閾値設定時の所定温度に加熱又は冷却すると良い。シャッタ15から放射される赤外線がレンズ異常の診断に与える影響を除外するためである。
【0049】
次いで、制御部17は、赤外線レンズ群11によって集光された像を赤外線撮像素子13aにて撮像し(ステップS13)、撮像して得た撮像画像データを画像処理装置3へ出力する(ステップS14)。
【0050】
そして、制御部17は、光源14aを消灯し(ステップS15)、シャッタ駆動信号をシャッタ駆動部15aに与えることにより、シャッタ15を開き(ステップS16)、処理を終える。
【0051】
図5は、赤外線レンズ群11の自己診断に係る画像処理装置3側の制御部31の処理手順を示すフローチャートである。
画像処理装置3の制御部31は、赤外線撮像装置1から出力された撮像画像データを取得する(ステップS31)。次いで、制御部31は、取得した撮像画像データに基づいて、撮像画像の最大階調値を算出する(ステップS32)。最大階調値は、撮像画像を構成する各画素の階調値の最大値であり、照射部14から照射され、赤外線レンズ群11を透過し、赤外線撮像素子13aに集光した光の強度を示している。
【0052】
次いで、制御部31は、閾値を記憶部37から読み出し(ステップS33)、ステップS32で算出した最大階調値が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS34)。つまり、赤外線レンズ群11の透過率が正常範囲であるか否かを判定する。
【0053】
最大階調値が閾値未満であると判定した場合(ステップS34:YES)、制御部31は、赤外線レンズ群11に異常がある旨の警告を発し(ステップS35)、処理を終える。最大階調値が閾値以上であると判定した場合(ステップS34:NO)、制御部31は、赤外線レンズ群11に異常が無いとして、処理を終える。
【0054】
このように構成された障害物検出システムにあっては、シャッタ15を閉じた状態で照射部14を点灯させ、赤外線レンズ群11を透過して赤外線撮像素子13aに集光した像を撮像することによって、赤外線レンズ群11の異常の有無を自己診断するために必要な撮像画像データを得ることができる。
【0055】
また、画像処理装置3は、撮像画像データの最大階調値に基づいて、赤外線レンズ群11の異常の有無を診断することができる。最大階調値は、赤外線レンズ群11の透過率に対応しているため、最大階調値と閾値とを比較することによって、赤外線レンズ群11の透過率が正常であるか否かを診断することができる。
【0056】
更に、照射部14は、コリメータレンズ14bを備え、光源14aからの赤外線を平行光にして赤外線レンズ群11に入射させるため、コリメータレンズ14bを備えない場合に比して、より正確に光源14aからの赤外線を赤外線撮像素子13aに集光させることができる。
【0057】
更にまた、照射部14を鏡筒12に保持させ、照射部14から照射された赤外線を反射させて赤外線レンズ群11に入射させるように構成してあるため、照射部14を赤外線撮像素子13aの正面側に配する場合に比して、赤外線撮像装置1を小型化することができる。
【0058】
更にまた、赤外線レンズ群11の一部にレンズ異常診断用の赤外線が入射するように構成してあるが、赤外線レンズ群11の略全面、又は赤外線レンズ群11の表面の中心部及び該中心部周縁を含む所定範囲にレンズ診断用の赤外線を入射するように構成しても良い。
【0059】
図6は、本発明の変形例に係る赤外線撮像装置101を示す模式図である。変形例に係る赤外線撮像装置101は、正面側略全面にレンズ診断用の赤外線を照射するように構成されている。
【0060】
照射部114は、光源14aと、コリメータレンズ114bとを備えており、シャッタ15に側断面楔型の平面反射鏡116が設けられている。コリメータレンズ114bは、赤外線レンズ群11と略等しい口径を有しており、斜め内側を臨むような姿勢で鏡筒112の保持部112bに固定されている。コリメータレンズ114bからの赤外線の光束は、赤外線レンズ群11の口径と略等しい直径を有する平行光である。
【0061】
平面反射鏡116は、コリメータレンズ114bからの赤外線を反射し、反射された赤外線が入射角度θで赤外線レンズ群11の表側全面に入射するような姿勢で固定されている。
【0062】
第1の変形例に係る赤外線撮像装置101にあっては、赤外線レンズ群11の略全面にレンズ診断用の赤外線を入射させ、該赤外線レンズ群11を透過した赤外線が撮像素子に集光するため、赤外線レンズ群11全面における汚れ、ひび、傷等の有無を診断することができる。
【0063】
なお、本実施の形態1にあっては、一例として赤外線にて被写体を撮像する赤外線撮像装置を例示したが、可視光、その他の波長の光にて被写体を撮像する撮像装置に本発明を適用しても良い。
【0064】
また、本実施の形態1にあっては、コリメータレンズを備えているが、平行光の照射が可能な光源を備える場合、コリメータレンズは不要である。例えば、光源として半導体レーザを備えることも可能であり、該光源を備えた場合、コリメータレンズは不要になる。
【0065】
更に、画像処理装置がレンズ異常診断処理を行っているが、赤外線撮像装置がレンズ異常診断を行うように構成しても良い。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る障害物検出システムは、実施の形態1と同様、赤外線撮像装置201、画像処理装置3、表示装置4、警報装置5等を備えている。
図7は、本発明の実施の形態2に係る赤外線撮像装置201を示す模式図である。実施の形態2に係る赤外線撮像装置201は、実施の形態1に係る赤外線撮像装置と同様の赤外線レンズ群11、鏡筒12、赤外線撮像部13、照射部14、制御部17、信号処理部18、出力部19を備えている。
ただし、実施の形態2に係る赤外線撮像装置201においては、赤外線撮像素子13aのオフセット補正に用いられるシャッタ215が赤外線レンズ群11と撮像素子との間に配されている。この場合、シャッタ215の閉鎖によって光源14aからの赤外線も遮断されるため、実施の形態1で説明した様にシャッタ215を用いて外光を遮断した上でレンズ異常の有無を診断することができない。
本実施の形態2に係る赤外線撮像装置201は、シャッタ215を閉鎖せずにレンズ異常の自己診断を行うことを可能にしたものであり、平面反射鏡216及び制御部31の処理手順が実施の形態1に係る赤外線撮像装置と異なる。以下では主に上記相違点について説明する。
【0067】
鏡筒12の正面側先端部には、平面反射鏡216を支持する平板状の反射鏡支持体216cが光軸L方向正面側に延設されている。平面反射鏡216は、反射鏡支持体216cの先端部に回動軸216aにて回動可能に支持されており、二点鎖線で示すように平面反射鏡216が反射鏡支持体216c側に折り畳まれた閉状態と、実線で示すように反射鏡が赤外線レンズ群11を臨む開状態とをとることができる。
【0068】
平面反射鏡216は、反射鏡駆動部216bによって駆動されて回動する。反射鏡駆動部216bは、例えば平面反射鏡216を回動させるステッピングモータ、該ステッピングモータを駆動するモータ駆動部等から構成されており、反射鏡駆動部216bの動作は制御部17によって制御されている。
【0069】
図8は、実施の形態2における赤外線レンズ群11の自己診断に係る赤外線撮像装置201側の制御部17の処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
赤外線撮像装置201の制御部17は、反射鏡駆動信号を反射鏡駆動部216bに与えることにより、平面反射鏡216を開き(ステップS51)、光源14aを点灯させる(ステップS52)。次いで、制御部17は、光源14aが点灯している状態において赤外線レンズ群11によって集光された像を赤外線撮像素子13aにて撮像し(ステップS53)、撮像して得た撮像画像データを出力する(ステップS54)。
【0071】
そして、制御部17は、光源14aを消灯し(ステップS55)、光源14aが消灯している状態において赤外線レンズ群11によって集光された像を赤外線撮像素子13aにて撮像し(ステップS56)、撮像して得た撮像画像データを出力する(ステップS57)。
なお、ステップS53及びステップS56における光源14a点灯時及び消灯時の撮像画像データは、当該撮像画像が安定している場合、例えば車両が停止しているときのデータであることが望ましい。光源14aの点灯及び消灯、撮像処理に時間を要するため、撮像画像が安定していない場合、正確な差分データを得ることができないためである。従って、例えば、車両が停止しているか否かを示す車速センサ信号を受信する受信手段と、該受信手段が受信した車速センサ信号に基づいて車両が停止しているか否かを判定する車両停止判定手段とを備え、該車両停止判定手段が車両停止と判定した場合に撮像素子が撮像して得た撮像画像に基づいてレンズの異常の有無を判定するように構成すると良い。このように構成することによって、レンズの異常の有無をより正確に判定することが可能になる。
【0072】
次いで、制御部17は、反射鏡駆動信号を反射鏡駆動部216bに与えることにより、平面反射鏡216を閉じ(ステップS58)、処理を終える。
【0073】
図9は、実施の形態2における赤外線レンズ群11の自己診断に係る画像処理装置3側の制御部31の処理手順を示すフローチャートである。
画像処理装置3の制御部31は、赤外線撮像装置201から出力された光源14a点灯時及び消灯時の撮像画像データを取得する(ステップS71)。次いで、制御部31は、取得した撮像画像データに基づいて、各撮像画像データの階調値の差分を、画素毎に算出する(ステップS72)。
【0074】
図10は、赤外線撮像装置201から取得した撮像画像、及び差分算出後の撮像画像を示す模式図である。図10(a)は、光源14a消灯時の撮像画像、図10(b)は、光源14a点灯時の撮像画像、図10(c)は、光源14a点灯時の撮像画像を構成する各画素夫々の階調値から、光源14a消灯時の撮像画像を構成する各画素夫々の階調値を減算することによって得られた撮像画像である。図10(c)に示すように、光源14a点灯時の撮像画像の階調値から、光源14a消灯時の撮像画像の階調値を減算することによって、被写体の画像を除去し、照射部14のみの画像を得ることができる。
【0075】
ステップS72の処理を終えた場合、制御部31は、算出された差分のうち最大の値を有する最大差分値を算出する(ステップS73)。次いで、制御部31は、閾値を読み出し(ステップS74)、ステップS73で算出した最大差分値が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS75)。つまり、赤外線レンズ群11の透過率が正常範囲であるか否かを判定する。
【0076】
最大差分値が閾値未満であると判定した場合(ステップS75:YES)、制御部31は、赤外線レンズ群11に異常がある旨の警告を発し(ステップS76)、処理を終える。最大差分値が閾値以上であると判定した場合(ステップS75:NO)、制御部31は、赤外線レンズ群11に異常が無いとして、処理を終える。
【0077】
実施の形態2に係る赤外線撮像装置201及び障害物検出システムにあっては、シャッタ215が赤外線レンズ間に配されている場合であっても、赤外線レンズ群11の異常を診断することができる。
【0078】
なお、実施の形態2にあっては、照射部14から照射された赤外線を所定の入射角度θで入射させるように構成してあるが、平面反射鏡216を回動させながら、赤外線レンズ群11の異なる箇所に赤外線を照射し、赤外線レンズ群11の異常を自己診断するように構成しても良い。この場合、照射部14を大形化すること無く、赤外線レンズ群11の異常診断可能な表面部分の面積を増大させることができる。
【0079】
実施の形態2に係る赤外線撮像装置201及び障害物検出システムの他の構成、作用及び効果は、実施の形態1に係る赤外線撮像装置及び障害物検出システムの構成、作用及び効果と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0080】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1に係る赤外線撮像装置を示す模式図である。
【図2】赤外線撮像装置を備えた障害物検出システムの構成を示す模式図である。
【図3】画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】赤外線レンズ群の自己診断に係る赤外線撮像装置側の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】赤外線レンズ群の自己診断に係る画像処理装置側の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る赤外線撮像装置を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る赤外線撮像装置を示す模式図である。
【図8】実施の形態2における赤外線レンズ群の自己診断に係る赤外線撮像装置側の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2における赤外線レンズ群の自己診断に係る画像処理装置側の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】赤外線撮像装置から取得した撮像画像、及び差分算出後の撮像画像を示す模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1 赤外線撮像装置
3 画像処理装置(診断装置)
11 赤外線レンズ群
13a 赤外線撮像素子
14,114 照射部
14a 光源
14b,114bb コリメータレンズ
15 シャッタ
16,116,216 平面反射鏡
31 制御部(取得手段、診断手段、差分算出手段)
37 記憶部
L 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、該レンズで集光して得た像を撮像し、集光した光の強度に応じた階調値を有する撮像画像を出力する撮像素子とを備える撮像装置であって、
前記レンズの光軸に対する入射角度が半画角以下の光を前記レンズに照射する照射手段を備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
開閉が可能であり、前記照射手段からの光以外の外光を遮断するシャッタを備え、
前記照射手段は、
前記シャッタが閉じた場合、光を照射するようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記照射手段は、
光源と、
該光源からの光を反射し、前記レンズに入射させる反射鏡と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記照射手段は、
コリメータを備え、該コリメータからの平行光を前記レンズに照射するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記照射手段は、
前記レンズの全面、又は前記レンズの中心部分を含む所定範囲に光を照射するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を構成する画素の階調値に基づいて、前記レンズの異常の有無を診断する診断手段を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の撮像装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の撮像装置と、
前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を取得する取得手段、及び該取得手段が取得した撮像画像を構成する画素の階調値に基づいて、前記レンズの異常の有無を診断する診断手段を有する診断装置と
を備えることを特徴とするレンズ異常診断システム。
【請求項8】
前記診断装置は、
閾値を記憶する記憶手段を備え、
前記診断手段は、
前記取得手段が取得した撮像画像を構成する画素の階調値、及び前記記憶手段が記憶している閾値を比較することにより、前記レンズの異常の有無を診断するようにしてある
ことを特徴とする請求項7に記載のレンズ異常診断システム。
【請求項9】
前記診断手段は、
前記照射手段が光を照射している場合に前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を構成する複数画素夫々の階調値、及び前記照射手段が光を照射していない場合に前記撮像素子が撮像して得た撮像画像を構成する複数画素夫々の階調値の差分を算出する差分算出手段を備え、該差分算出手段が算出した差分に基づいて、前記レンズの異常の有無を診断するようにしてある
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のレンズ異常診断システム。
【請求項10】
前記診断装置は、
前記レンズに異常があると診断した場合、警告を発する手段を備える
ことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一つに記載のレンズ異常診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−80003(P2009−80003A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249297(P2007−249297)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】