説明

撮像装置

【課題】 航空機に搭載され、航空機の振動環境や飛行状態、運動状態によらず乱れのない画像を撮像することができる撮像装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 機体構造部材4に接合される取付基部5に光線を透過する材質で形成される風防6、防振装置7を取り付ける。防振装置7を介して、光学機器9が取付けられた直交二軸に回動可能なジンバル装置8を支持する。防振装置7は、取付基部5に対してジンバル装置8を直線移動させる直動案内装置と、直動案内装置の移動方向に緩衝作用を有するように配置された防振ゴムから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に装着され、搭載機器への振動を抑制する防振装置を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置においては、空間に対して光学機器の視軸を安定化させるための補正手段として、たとえばレートジャイロなどのセンサと駆動モータを有したジンバル装置を備えて、ジンバル装置に光学機器を搭載し、ジンバル装置を航空機の外部に取り付け、任意の方向に光学機器の視軸を指向させて、目標を撮像する技術が実用化されている。
【0003】
航空機の胴体にジンバル装置を取り付けるにあたっては、航空機の運動によって慣性加速度や、機体の構造を伝播するエンジンなどから生じる振動、シンバル装置の周囲の気流の乱れにより生じる振動などの外的環境要因による外乱が作用する。
【0004】
これらの外的環境要因による外乱のうち、振動については、ジンバル装置および搭載する光学機器に振動を誘引するため、光学機器が取得する画像に乱れが生じる場合がある。こうした振動による影響を低減するため、3軸方向に並進移動可能な固定架台にコイルスプリングを付設し、ジンバル装置全体を支えて高周波の振動を減衰させる構成にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ジンバル装置の内部にばねを配して、光学撮像機器を搭載したペイロードを支えて高周波の振動を減衰させる構成としている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−273888号公報
【特許文献2】特開2007−155091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の撮像装置においては、ジンバル装置に振動が伝達しないように3軸方向に並進移動可能な固定架台にコイルスプリングを付設し、振動を低減する構成が提案されている。しかしながら、コイルスプリングを用いた場合、コイルスプリングの固有振動数に近い振動数成分を有する振動が作用することで、サージングとよばれる激しい振動現象が励起されるために、ジンバル装置に高周波の振動成分が加わり、空間に対する視軸を安定させる補正がきかず、画像に乱れを生じるという欠点があった。
【0008】
また、コイルスプリングは、作用する荷重と発生する変位が線形となるため、振動以外の荷重が加わった場合、防振装置の固定架台は荷重作用方向に荷重に応じて支持点が偏移する特性を示す。防振装置は高周波の振動低減を目的とするために、固有振動数が低いコイルスプリングが用いられる。このため、航空機の飛行により生じる空気力学的な抗力や、航空機の旋回などの運動により生じる慣性加速度が作用した場合、架台の偏移が顕著となり、ばねに許容される変位量を超過し、固定架台同士もしくはジンバル装置と移動体の構造物が機械的に接触し損傷するという欠点があった。また、この損傷を回避するために、ダンパなどの緩衝機構を必要とし、構成が複雑になるという欠点があった。
【0009】
一方、ジンバル装置内部にばねにより支持されたペイロードを設け、振動の入力を低減する構成では、航空機の外部に搭載した場合に空気力学的な抗力がジンバル装置の構造に直接作用し、この抗力に対する必要な強度を確保するために、構造部材を厚くして発生応力を下げる、強度の高い材質を使用するなどの方策が必要となる。このため、構造が大型化し、装置の質量が増加するという欠点があった。
【0010】
また、質量増加を防ぐため、複合材に代表される高強度、低質量の材質を採用した場合は、装置全体が高額となってしまう。また、制御用駆動モータがペイロードに支持部に配されているため、回動するための駆動力をモータが発生した際に、その反作用として回転トルクと逆向きのトルクがペイロードに加わるため、ペイロード自体に回転運動が生じ、画像が乱れるという欠点があった。
【0011】
この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、航空機が外部に搭載され、航空機の振動環境や飛行状態、運動状態によらず乱れのない画像を撮像することができる、撮像装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による撮像装置は、取付基部と、上記取付基部に固定され光線を透過する材質で形成された風防と、上記取付基部に対し直動案内装置を介して支持される枠体と、上記枠体に支持される直交二軸に回動可能なジンバル装置と、上記ジンバル装置に支持される光学機器と、上記取付基部と上記枠体の間に取り付けられ、上記直動案内装置の移動方向に緩衝作用を有するように配置された防振ゴムと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、航空機に取り付けられた撮像装置について、飛行速度に応じて生じる空力的な荷重や、飛行運動により生じる慣性加速度や、エンジンや空気力学的な振動が生じる外乱環境下においても、外乱による振動を抑制して画像が乱れることのない撮像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施の形態1による撮像装置が搭載される状態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1による撮像装置が搭載される他の状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1による撮像装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1による撮像装置の構成を示す斜視図である。
【図5】コイルばねと防振ゴムの周波数と振幅の一般的な特性を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態1による振動緩衝機構の構成を示す図である。
【図7】防振ゴムの伸張比と引張または圧縮応力の一般的な特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1による撮像装置の航空機への搭載例を示す図である。図2は、本発明に係る実施の形態1による撮像装置の航空機への他の搭載例を示す図である。図1において、撮像装置2は航空機1の外部に取り付けられる。撮像装置2の取り付けの構成については、図2に示すように、機体外部搭載ポッド3を介して撮像装置2を航空機1の下部に取り付ける構成も同様である。
【0016】
図3は、実施の形態1における撮像装置の構成を示す図である。図3において、機体側構造部材4に、取付基部5が図示しない結合手段によって取り付けられる。取付基部5には、光線を透過する材質で形成される風防6が取り付けられている。防振装置7を介して、直交二軸に回動可能なジンバル装置8が取付基部5に取り付けられている。光学機器9はジンバル装置8に支持されている。
【0017】
このように構成された撮像装置においては、航空機の飛行状態によって生じる空気力学的な荷重は、風防6に作用し、荷重は取付基部5を介して、機体側構造部材4に伝達される。ジンバル装置8には荷重が伝達されないため、ジンバル装置8に支持された光学機器9は乱れのない画像を撮像することが可能である。
【0018】
また、エンジンや空気力学的な荷重は機体側構造部材4を介して、取付基部5に伝達されるが、ジンバル装置8は防振装置7を介して支持しているので、ジンバル装置8および光学機器9に伝達される荷重は緩和されたものとなり、乱れのない画像を撮像することができる。加えて、ジンバル装置8および光学機器9を小形、軽量にすることができ、さらには装置全体を小形、軽量にすることができる。
【0019】
図4は、ジンバル装置8を支持する防振装置7の構成を示す図である。図4において、防振装置基部10は図示しない結合手段により、取付基部5に取り付けられ固定されている。一定の方向に並行となるように配置された2個以上の第一の直動案内装置15を介して、第一の枠体11は防振装置基部10に支持される。また、第一の枠体11は、第一の直動案内装置15の可動方向の端面に対向するように配置された一対以上の第一の防振ゴム14の一端面に接合されており、第一の防振ゴム14の他端面は防振装置基部10の突起部に接合されている。
【0020】
また、第一の直動案内装置15と直交するように配置された一対以上の第二の直動案内装置17を介して、第二の枠体12は第一の枠体11に支持される。第二の枠体12と第一の枠体11の間には隙間が設けられている。第二の枠体12と第一の枠体11は、第二の直動案内装置17の可動方向の端面に対向するように配置された一対以上の第二の防振ゴム16の一端面に接合されており、第二の防振ゴム16の他端面は第一の枠体11の内側面にそれぞれ接合されている。
【0021】
また、第一の直動案内装置15および第二の直動案内装置17と直交するように配置された一対以上の第三の直動案内装置19を介して、第三の枠体13は第二の枠体12に支持される。また、第三の枠体13と第二の枠体12は、その間に一対以上の第三の防振ゴム18の端面がそれぞれ接合されており、両者の間には隙間が設けられている。
【0022】
防振装置基部10と第一の枠体11、第一の枠体11と第二の枠体12、第二の枠体12と第三の枠体13は、それぞれ、第一の直動案内装置15、第二の直動案内装置17、第三の直動案内装置19の可動方向に相対移動が可能となっており、第一の防振ゴム14、第二の防振ゴム16、第三の防振ゴム18により可動方向に作用する相対振動を緩衝することができるようになっている。
【0023】
したがって、取付基部5および防振装置基部10を介して、ジンバル装置8および光学機器9に伝達されるエンジンや空気力学的な振動は、第一の防振ゴム14、第二の防振ゴム16、第三の防振ゴム18による緩衝作用によって緩和されたものとなり、乱れのない画像を撮像することができる。加えて、ジンバル装置8および光学機器9を小形、軽量にすることができ、さらには装置全体を小形、軽量にすることができる。
【0024】
図5は一般的なコイルスプリングと防振ゴムの周波数と振幅の関係を示した図である。コイルスプリングの場合は、2番目以降の山に代表される激しい共振現象、すなわちサージングが発生するが、防振ゴムの場合には内部摩擦が金属に比べて1000倍以上大きいために、サージングが生じにくく、全周波数帯にわたり緩衝効果が大きい。よって、防振ゴムを用いることにより、コイルスプリングを使用した防振装置に比べて、画像の乱れが少ないことに加え、ジンバル装置8および光学機器を小形、軽量にすることができ、さらには装置全体を小形、軽量にすることができる。
【0025】
図6は防振装置7の振動緩衝機構の構成として防振ゴムの配置例を示す図である。図6において、第一の防振ゴム14は、第一の直動案内装置15の可動方向と、圧縮または引張方向の作用線が同一になるように対向して配置されている。
【0026】
図7は圧縮型防振ゴムの伸張比と引張と圧縮応力の関係を示したものである。図7では圧縮力を負の数値で記載している。圧縮型防振ゴムは、圧縮方向と引張方向での特性は非線形であり、ある伸張比を超えると圧縮応力が著しく大きく、すなわちばね剛性が大きくなり、変形しにくくなるという特性がある。よって、圧縮方向に荷重が作用する場合は、この特性を利用して、コイルスプリングを用いた場合に生じる過大な変位による損傷が防止できるうえ、ダンパなどの付帯機構も必要がないため、小形、軽量、安価な構成で、振動の緩衝、慣性加速度に耐えることが可能となる。ここで防振ゴムは、引張荷重をうける側の伸張比が許容変位内となるように、選定する。
【0027】
図6は防振装置基部10と第一の枠体11の間の第一の防振ゴム14の配置を示したものであるが、第一の枠体11と第二の枠体12、第二の枠体12と第三の枠体13の間についても同様に構成することで、部品点数が少なく、廉価な構成で、航空機の運動による慣性加速度と、エンジンや空気力学的な振動を緩衝することが可能である。
【0028】
以上説明した通り、実施の形態1による撮像装置は、光学機器を支持する直交2軸に回動可能なジンバル装置8と、外囲を覆う風防6と、取付基部5に対し直動案内装置を介して支持される枠体と、取付基部5と枠体の間に取り付けられ、直動装置の移動方向に緩衝作用を有するように配置された防振ゴムを具備して、取付基部5に対するジンバル装置8の相対振動を緩衝する。これによって、航空機に取り付けられた撮像装置について、飛行速度に応じて生じる空力的な荷重や、飛行運動により生じる慣性加速度や、エンジンや空気力学的な振動が生じる外乱環境下においても、外乱による振動を抑制して画像が乱れることのない撮像装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 航空機、2 撮像装置、3 機体外部搭載ポッド、4 機体側構造部材、5 取付基部、6 風防、7 防振装置、8 ジンバル装置、9 光学機器、10 防振装置基部、11 第一の枠体、12 第二の枠体、13 第三の枠体、14 第一の防振ゴム、15 第一の直動案内装置、16 第二の防振ゴム、17 第二の直動案内装置、18 第三の防振ゴム、19 第三の直動案内装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付基部と、
上記取付基部に固定され光線を透過する材質で形成された風防と、
上記取付基部に対し直動案内装置を介して支持される枠体と、
上記枠体に支持される直交二軸に回動可能なジンバル装置と、
上記ジンバル装置に支持される光学機器と、
上記取付基部と上記枠体の間に取り付けられ、上記直動案内装置の移動方向に緩衝作用を有するように配置された防振ゴムと、
を備えた撮像装置。
【請求項2】
取付基部と、
上記取付基部に固定され光線を透過する材質で形成された風防と、
上記取付基部に固定される防振装置と、
上記防振装置に支持される直交二軸に回動可能なジンバル装置と、
上記ジンバル装置に支持される光学機器と、
上記取付基部に対し第一の直動案内装置を介して支持される第一の枠体と、
上記第一の枠体に対し第二の直動案内装置を介して支持される第二の枠体と、
上記第二の枠体に対し第三の直動案内装置を介して支持される第三の枠体と、
上記取付基部と上記枠体の間、上記第一の枠体と上記第二の枠体の間、上記第二の枠体と上記第三の枠体の間にそれぞれ取り付けられ、上記第一乃至第三の直動案内装置の各移動方向に緩衝作用を有するようにそれぞれ配置された防振ゴムと、
を備えた撮像装置。
【請求項3】
上記防振ゴムは、圧縮型防振ゴムであって、上記直動案内装置の可動方向と荷重の作用方向が一致し、かつ上記取付基部と枠体が相対移動した場合に、引張荷重と圧縮荷重が相互に発生するように配置されたことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
上記防振ゴムは、圧縮型防振ゴムであって、上記第一乃至第三の直動案内装置のそれぞれの可動方向と荷重の作用方向が一致し、かつ上記取付基部と第一の枠体または上記第一の枠体と第二の枠体または上記第二の枠体と第三の枠体がそれぞれ相対移動した場合に、引張荷重と圧縮荷重が相互に発生するように配置されたことを特徴とする請求項2記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209540(P2011−209540A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77723(P2010−77723)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】