説明

撮像装置

【課題】深さ方向に位置が異なる2つの観察面を同時に撮像する場合に、いずれの観察面にも焦点の合った鮮明な画像を取得する。
【解決手段】試料Aの深さ方向に異なる2つの観察面B,Cから発生した互いに波長の異なる2つの観察光を区別して受光する受光面51a,52aを有し、2つの観察面B,Cの画像を取得する撮像部51,52と、2つの観察面B,C間の深さ方向の距離zに応じて、少なくとも一方の観察光の観察面Cから受光面52aまでの光路長を調節する光路長調節手段6,52とを備える撮像装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光像と赤外光像とを同時に撮像する撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の撮像装置によれば、例えば、可視光像により手術部位の組織表面を観察し、赤外光像により組織表面下に存在する血管を観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−188196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、可視光像と赤外光像とでは観察面が深さ方向に異なるが、この2つの像を共通の撮像素子を用いて撮像している。すなわち、一方の像に焦点が合うように光学系と撮像素子との位置を調節すると、他方の像においては焦点がずれて不鮮明になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、深さ方向に位置が異なる2つの観察面を同時に撮像する場合に、いずれの観察面にも焦点の合った鮮明な画像を取得することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、試料の深さ方向に異なる2つの観察面から発生した互いに波長の異なる2つの観察光を区別して受光する受光面を有し、前記2つの観察面の画像を取得する撮像部と、前記2つの観察面間の深さ方向の距離に応じて、少なくとも一方の前記観察光の前記観察面から前記受光面までの光路長を調節する光路長調節手段とを備える撮像装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、試料の観察面から発生した観察光が撮像部の受光面によって受光されることにより観察面の画像を取得することができる。
この場合に、各観察面の像が結像される結像面位置に受光面が配置されるように、光路長調節手段により少なくとも一方の観察光の光路長を調節することにより、試料の深さ方向に異なる2つの観察面を並行して観察しても、それぞれの観察面に焦点が合った鮮明な画像を取得することができる。
【0008】
上記発明においては、前記2つの観察光をそれぞれ異なる光路に分岐する光分岐部を備え、前記撮像部が、前記各光路に配置され前記光分岐部によって分岐された観察光を受光する前記受光面をそれぞれ有する撮像素子を備え、前記光路長調節手段が、一方の前記撮像素子を光軸に沿って移動させてもよい。
このようにすることで、一方の撮像素子を、一方の観察光の結像面位置に配置した状態で、他方の撮像素子を他方の観察光の結像面位置に移動させることにより、各撮像素子によって各観察面の鮮明な画像を取得することができる。
【0009】
また、上記発明においては、一方の前記観察面に、前記試料中の検出すべき物質が異なる光吸収特性を示し波長の異なる2つの検出光を照射する照明部を備え、前記光分岐部が、前記一方の観察面から反射されてきた前記2つの検出光と他方の観察面からの前記観察光をそれぞれ異なる光路に分岐し、前記撮像素子が、前記各光路に配置され、前記光路長調節手段が、前記検出光が分岐される前記光路に配置された2つの前記撮像素子を、該各撮像素子の前記受光面から前記一方の観察面までの光路長が一定になるように、同期させて光軸方向に移動させてもよい。
【0010】
このようにすることで、試料に照射された2つの検出光は、検出すべき物質が存在する位置において吸収率が異なり、その結果撮像素子に反射される光量が互いに異なる。すなわち、2つの検出光の画像の各位置の明るさを比較することにより、一方の観察面における検出すべき物質の分布を高い感度で検出することができる。
【0011】
また、上記発明においては、それぞれ異なる前記観察面から前記観察光を発生させる2つの照明光を前記試料に照射する照明部と、前記試料に照射される前記照明光を交互に連続的に切り替える照明切替手段とを備え、前記撮像部が、前記2つの観察光を共通の前記受光面で受光する撮像素子を備え、前記光路長調節手段が、前記照明光切替手段による前記照明光の切り替えに同期させて、前記観察光が発生させられている方の前記観察面の像が形成される結像面位置に前記受光面が配置されるように、前記撮像素子を光軸方向に往復移動させてもよい。
【0012】
このようにすることで、2つの観察面から観察光が交互に発生させられて1つの撮像素子によって2つの観察面が並行して撮像される。このときに、観察光が発生させられている方の観察面に焦点が合うように撮像素子が移動させられことにより、2つの観察面の両方に焦点が合った画像を取得することができる。
【0013】
また、上記発明においては、それぞれ異なる前記観察面から前記観察光を発生させる2つの照明光を前記試料に照射する照明部と、前記照明部により前記試料に照射される前記照明光を交互に連続的に切り替える照明切替手段と、物体面から集光した光の像を結像面に結像する撮像光学系とを備え、前記撮像部が、前記2つの観察光を共通の前記受光面で受光する撮像素子を備え、前記光路長調節手段が、前記照明光切替手段による前記照明光の切り替えに同期させて、前記観察光が発生させられている方の前記観察面に前記物体面が配置されるように前記撮像光学系を構成する少なくとも一部の光学素子を光軸方向に往復移動させてもよい。
【0014】
このようにすることで、2つの観察面から交互に発生させられる観察光が撮像光学系によって集光されて共通の受光面に交互に結像されることにより、1つの撮像素子によって2つの観察面が並行して撮像される。このときに、撮像光学系の物体面が、観察光が発生させられている方の観察面に一致するように移動させられるので、2つの観察面の両方に焦点が合った画像を取得することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記撮像部は、それぞれ異なる前記観察光を受光する2つの受光素子群がアレイ状に配列されてなる前記受光面を有し、共通の該受光面により前記2つの観察光を受光する撮像素子を備え、前記光路長調節手段が、一方の受光素子群の前段に配置され、該一方の受光素子群により受光される方の前記観察光の光路長を変化させる屈折率を有する光学部材を備えてもよい。
このようにすることで、他方の受光素子群が他方の観察面からの観察光が結像される位置に配置された状態で、一方の観察面からの観察光が一方の受光素子群上に結像するように、光学部材によって一方の観察面から一方の受光素子群までの光路長を調節し、1つの撮像素子により2つの観察面に焦点が合った画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、深さ方向に位置が異なる2つの観察面を同時に撮像する場合に、いずれの観察面にも焦点の合った鮮明な画像を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置の全体構成図である。
【図3】水および酸化ヘモグロビンの光吸収特性と、図2の撮像装置における検出光の波長との関係を説明する図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る撮像装置の全体構成図である。
【図5】図4の撮像装置の変形例であり、撮像レンズを移動させることにより観察光の光路長を調節する構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る撮像装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第1〜第4の実施形態に係る撮像装置1について、生体(試料)Aの可視光画像および赤外光画像を撮像する場合を例に挙げて説明する。
本発明の第1の実施形態に係る撮像装置1について図1を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る撮像装置1は、図1に示されるように、可視光源2aおよび赤外光源2bを有する照明部2と、生体Aからの観察光を集光して結像する撮像レンズ3と、該撮像レンズ3により集光された光を波長によって2つの光路に分岐するダイクロイックミラー4(光分岐部)と、該ダイクロイックミラー4によって分岐された光をそれぞれ撮像する第1および第2の撮像素子(撮像部)51,52と、該第2の撮像素子(光路長調節手段)52の位置を制御する制御部(光路長調整手段)6とを備えている。
【0019】
可視光源2aは、生体Aに可視光を照射する。生体Aに照射された可視光は、生体Aの表面(観察面)Bにおいて反射される。
赤外光源2bは、生体Aに赤外光を照射する。生体Aに照射された赤外光は、生体Aの内部まで伝搬し、生体Aの表面より深い位置において反射される。このときに、生体Aの表面B下の血管が存在する部分においては、血管内を流れる赤血球により赤外光が吸収されて他の部分と比べて反射される赤外光の光量が低くなるので、赤外光画像において血管を暗部として観察することができる。
【0020】
撮像レンズ3は、生体Aの表面Bにおいて反射された可視光および生体Aの表面より下層の観察面Cにおいて反射された赤外光を観察光として集光し、集光した各光の像を、その光が反射された面の位置に応じた結像面位置に結像する。撮像レンズ3は、図示する例では1つのレンズにより構成されているが、複数のレンズにより構成されていてもよい。
ダイクロイックミラー4は、撮像レンズ3により集光された観察光のうち、350〜700nmの波長の可視光を透過させ、800nm以上の波長の赤外光を偏向する。
【0021】
第1の撮像素子51は、撮像レンズ3に対して位置が固定されており、ダイクロイックミラー4を透過した可視光を受光面51aにおいて受光することにより可視光画像を取得する。第1の撮像素子51は、赤、緑、青の光に対してそれぞれ略同等の感度を有する。具体的には、赤の波長帯域として550〜700nm、緑の波長帯域として450〜600nm、青の波長帯域として380〜530nmの波長に対して感度を有する。したがって、第1の撮像素子51により取得される可視光画像は、観察者が肉眼で見たときと同様の生体A表面の画像となる。
【0022】
第2の撮像素子52は、ダイクロイックミラー4により偏向された赤外光を受光面52aによって受光することにより赤外光画像を取得する。第2の撮像素子52は、ダイクロイックミラー4との間の光軸に沿って移動可能に設けられている。
第1および第2の撮像素子51,52はそれぞれ、取得した画像の情報を図示しないディスプレイに送信する。ディスプレイは各撮像素子51,52から受信した可視光画像および赤外光画像を並べて表示する。
【0023】
制御部6は、観察者が赤外光画像により観察したい観察面Cの深さ方向の位置に応じて、第2の撮像素子52を光軸方向に移動させる。例えば、観察者が、可視光画像により観察される観察面から距離zだけ深い位置の観察面を赤外光画像により観察したい場合、距離zを制御部6に入力する。制御部6は、撮像レンズ3の焦点距離などの光学的設計値に基づき、第1の撮像素子51により取得される像の物体面位置よりも距離zだけ深い位置に配される物体面からの観察光が結像する結像面の位置を算出し、算出した結像面位置に、第2の撮像素子52の受光面52aが配置されるように、第2の撮像素子52を移動させる。
【0024】
次に、このように構成された撮像装置1の作用について説明する。
本実施形態に係る撮像装置1を用いて生体Aを撮像するためには、観察者は、予め、赤外光画像により観察したい観察面Cの生体Aの表面Bからの深さzを制御部6に入力して第2の撮像素子52を移動させておく。観察者は、2つの光源2a,2bにより生体Aを照明し、ディスプレイに表示された可視光画像を観察しながら、生体Aの表面Bに可視光画像の焦点が合うように、撮像装置1の位置を調節する。このときに、赤外光画像において、観察者が観察したい生体Aの表面下の観察面Cに焦点が合わされる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、各画像により観察する観察面B,C間の深さ方向の距離に応じて一方の撮像素子52を移動させることにより、生体Aの深さ方向に異なる観察面B,Cを観察する場合でも、それぞれ観察面B,Cに焦点の合った可視光画像および赤外光画像を取得することができるという利点がある。
【0026】
本実施形態においては、第1の撮像素子51が、青、緑、赤の光に対して略同等な感度を有することとしたが、これに代えて、長波長側に広い赤の波長帯域に対して感度を有していてもよい。例えば、第1の撮像素子51は、赤の波長帯域として、550〜800nmの波長に対して感度を有していてもよい。
【0027】
このようにすることで、可視光画像と赤外光画像との波長帯域の間の700〜800nmの波長帯域の光も可視光画像の撮像に利用されるので、生体Aからより多くの情報を得ることができる。例えば、癌のマーカとして用いられるタンパク質であるDK−1は650〜800nmの波長の発光を示すので、可視光画像からDK−1の有無を検出することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、観察したい観察面Cの深さ方向の位置に応じて第2の撮像素子52を予め移動させておくこととしたが、これに代えて、可視光画像により生体Aの表面Bを観察しながら、第2の撮像素子52を移動させることにより赤外光画像の観察面Cの位置を調整することとしてもよい。
このようにすることで、観察面Cの深さ方向の位置を任意に選択しつつ、焦点の合った赤外光画像を取得することができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態に係る撮像装置1について図2および図3を参照して説明する。
なお、本実施形態の説明において、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成について主に説明する。
【0030】
本実施形態に係る撮像装置1は、図2に示されるように、赤外光源2bから波長の異なる2つの赤外光が生体Aに照射される点、および、赤外光を受光する撮像素子がもう1つ設けられている点において第1の実施形態と異なっている。
照明部2は、例えば、赤外光源2bからの赤外光を生体Aへ向けて照射する2つの光路(図示略)と、該各光路に配置され互いに異なる波長を透過させるバンドパスフィルタ(図示略)とを備えることにより、赤外光の波長帯域において波長の異なる第1の検出光および第2の検出光を生体Aに照射する。あるいは、異なる波長の赤外光を放射する赤外光源を2つ備え、各赤外光源から赤外光を検出光として生体Aに照射してもよい。
【0031】
2つの検出光の波長は、生体A内の検出すべき物質が異なる吸収特性を示す波長が選択される。本実施形態においては、血液中に含まれる酸化ヘモグロビンを検出する場合を例に挙げて説明する。図3に、酸化ヘモグロビンおよび水の光吸収特性を示す。酸化ヘモグロビンおよび水は、波長800nm付近においては十分に異なる光吸収特性を有し、波長950nm付近においては略同一の光吸収特性を有する。そこで、例えば、第1の検出光の波長を800nm、第2の検出光の波長を950nmに設定する。
【0032】
ダイクロイックミラー4は、可視光を透過させ、第1の検出光を第2の撮像素子52の方向へ偏向し、第3の検出光をもう1つの撮像素子である第3の撮像素子53の方向へ偏向する。
第3の撮像素子53は、赤外光に対して第2の撮像素子52と同様の感度を有するとともに、ダイクロイックミラー4との間の光軸に沿って移動可能に設けられている。
制御部6は、第3の撮像素子53を、第2の撮像素子52と同期させて、該第2の撮像素子52と同じく移動させる。
【0033】
このように構成された撮像装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る撮像装置1を用いて生体Aを撮像するためには、観察者は、第1の実施形態と同様に、赤外光画像により観察したい観察面Cの生体Aの表面Bからの深さ位置に応じて第2および第3の撮像素子52,53を予め移動させておく。そして、生体Aに可視光および赤外光を照射し、可視光画像の焦点が生体A表面に合うように撮像装置1の位置を調整する。このときに、第2および第3の撮像素子52,53により取得される2つの赤外光画像はともに観察面Cに焦点が合わされる。
【0034】
ここで、第2の撮像素子52により取得された赤外光画像においては、酸化ヘモグロビンによって第1の検出光が吸収されるため、酸化ヘモグロビンが存在する領域が他の領域に比べて暗くなる。一方、第3の撮像素子53により取得された赤外光画像においては、酸化ヘモグロビンと水の両方によって第2の検出光が吸収されるため、水と酸化ヘモグロビンの少なくとも一方が存在する領域が他の領域に比べて暗くなる。そこで、例えば、2つの赤外光画像内の対応する画素の明度の比を算出し、算出された比をその画素の明度とした演算画像を作成すると、酸化ヘモグロビンが存在する領域は他の領域とは十分に異なる明度で表示される。
【0035】
例えば血管を1つの赤外光(検出光)のみで検出しようとすると、得られる情報は画像の明るさ情報のみとなる。この場合、画像の明るさ情報は、観察領域に存在する物質の分布の他に、観察面の距離等によっても変化する。従って、画像の明るさの差が、物質の量に起因しているのか、または、観察面の距離等の照明結像の条件に起因しているのかを画像から判断することは難しくい。
【0036】
これに対して、検出光として2つの波長の赤外光を用いることで、観察領域に存在する物質の分布を正確に検出することができる。すなわち、例えば、波長800nmの検出光の画像をI_800、波長950nmの検出光の画像をI_950とする。酸化ヘモグロビンの吸収係数は波長800nmと波長950nmとで略同一であるので、観察面の距離などによって画像の明るさが変化しても、2つの画像の各画素の明るさ比(I_800/I_950)はほぼ一定の値となる。一方、水は波長800nmと波長950nmとでは吸収係数が異なり、水が多く存在する領域では、水の800nmの吸収係数が小さいためにI_800の画像が明るくなり、比(I_800/I_950)の値が大きくなる。つまり、各画素における明るさの比(I_800/I_950)を画像化した場合に、水が多く存在する領域は明るく表示され、血管等の酸化ヘモグロビンが多く存在する領域は暗く表示される。
【0037】
このように、本実施形態によれば、可視光画像の他に、同一の観察面Cにおいて異なる波長の赤外光画像を2つ取得し、2つの赤外光画像の各位置における明るさの比を算出して画像化することにより、距離等の条件等に影響されることなく、観察面Cにおける酸化ヘモグロビン等の物質の分布を高感度で検出することができるという利点がある。なお、明るさの比をI_950/I_800としても同様の効果が得られる。
【0038】
本実施形態においては、光吸収特性の異なる波長の2つの検出光を利用し、第2および第3の撮像素子52,53が同じ観察面Cを撮像するようにこれらの撮像素子52,53を同期させて移動させることとしたが、これに代えて、第2および第3の撮像素子52,53が互いに独立に移動することとしてもよい。
この場合、第1および第2の検出光の波長は、互いに異なっていればよい。このようにすることで、第1および第2の検出光は、波長に応じて生体Aの異なる深さまで到達して反射される。したがって、各赤外光画像においてそれぞれ焦点が合うように第2および第3の撮像素子52,53を移動させることにより、生体Aの表面下の2つの観察面を撮像することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態について図4および図5を参照して説明する。
本実施形態の説明においても、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成について主に説明する。
本実施形態に係る撮像装置1は、図3に示されるように、撮像素子5を1つのみ備えている点、および、生体Aに照射される照明光が制御部6(光源切替手段)によって可視光と赤外光とで交互に切り替えられる点において、第1の実施形態と異なる。
【0040】
撮像素子5は、可視光と赤外光の両方の波長帯域に感度を有する。このような撮像素子5としては、例えば、赤、緑、青の各波長帯域に対して感度を有する3つの受光素子群がアレイ状に配列された受光面を有し、各受光素子群が赤外光の波長帯域に対しても感度を有するものが用いられる。これにより、可視光と赤外光とを時分割で受光することにより、1つの撮像素子5を用いて可視光画像と赤外光画像の両方を取得することができる。撮像素子5により取得された可視光画像および赤外光画像は、重畳されて1つの画像としてディスプレイに表示されてもよいし、照明光の切り替えに同期させて撮像素子5により取得された画像を処理することにより可視光画像と赤外光画像とに分けて表示されてもよい。
【0041】
制御部6は、例えば、各光源2a,2bから可視光および赤外光を生体Aへ照射する光路(図示略)の途中位置に配置されたシャッター(図示略)を交互に開閉させることにより、可視光および赤外光を交互に連続的に生体Aへ照射させる。可視光および赤外光の切り替えは、観察者がディスプレイに表示された画像を観察したときに照明光の切り替えを認識しない程度に十分に高速で行われることが好ましい。
【0042】
制御部6は、可視光と赤外光との切り替えに同期させて、撮像素子(光路長調節手段)5を光軸方向に往復移動させる。この場合も、第1の実施形態と同様に、制御部6は、撮像レンズ3の設計値に基づいて、撮像素子5を移動させる位置を算出する。すなわち、生体Aに可視光が照明されているときには、生体Aの表面Bからの観察光が結像する結像面の位置に受光面5aを配置し、生体Aに赤外光が照射されているときには、生体Aの表面Bから所望の距離だけ深い位置からの観察光が結像する結像面の位置に受光面5aを配置するように、撮像素子5を往復移動させる。
【0043】
このように構成された撮像装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る撮像装置1を用いて生体Aを撮像するためには、観察者は、可視光源2aおよび赤外光源2bを点灯させ、ディスプレイに表示された画像の可視光像において生体Aの表面Bに焦点が合うように撮像装置1の位置を調整する。このときに、赤外光像においても、生体Aの表面下の所望の観察面Cに焦点が合った状態となる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、撮像素子5が1つであっても、可視光と赤外光とを切り替えながら生体Aに照射することにより、可視光画像と赤外光画像の両方を撮像することができる。また、いずれの観察面B,Cから観察光が発生させられているかに応じて、撮像素子5の受光面5aが、発生させられている観察光の結像する結像面の位置に移動させられるので、可視光画像と赤外光画像のいずれにおいても焦点の合った鮮明な画像を取得することができるという利点がある。
【0045】
なお、本実施形態においては、制御部6が、照明光の切り替えに同期させて撮像素子5を光軸方向に往復移動させることとしたが、これに代えて、図5に示されるように、撮像レンズ3を構成する少なくとも一部のレンズ(光学素子)を光軸方向に往復移動させることにより撮像レンズ3の物体面を往復移動させてもよい。
生体Aに可視光が照射されているときは物体面を生体Aの表面Bに合わせ、生体Aに赤外光が照射されているときは物体面を生体Aの表面下の所望の観察面Cに合わせるように、撮像レンズ3を往復移動させることによっても、可視光画像と赤外光画像のいずれにおいても焦点の合った鮮明な画像を取得することができるという利点がある。
【0046】
次に、本発明の第4の実施形態に係る撮像装置1について図6を参照して説明する。
本実施形態の説明においても、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成について主に説明する。
本実施形態に係る撮像装置1は、図6に示されるように、撮像素子5が1つのみ備えている点、および、撮像素子5の受光面5aに光学部材(光路長調節手段)7を備える点において、第1の実施形態と異なる。
【0047】
撮像素子5は、赤、緑、青、赤外光の波長帯域に対してそれぞれ感度を有する4つの受光素子群がアレイ状に配列された受光面を有し、1つの撮像素子5により可視光画像と赤外光画像の両方を取得する。撮像素子5により取得された可視光像および赤外光像は、第3の実施形態と同様に、同一の画像として表示されてもよいし、赤、緑、青の受光素子群と赤外光の受光素子群とからそれぞれ画像を生成することによりが別々に表示されてもよい。
【0048】
赤、緑、青の波長帯域に対して感度を有する受光素子群の表面には光学部材7が貼り付けられている。光学部材7は、赤、緑、青の波長帯域の光の光路長を長くする屈折率を有する。光学部材7は、観察者が赤外光画像により観察したい観察面Cの生体Aの表面Bからの深さ距離に応じ、撮像レンズ3の設計値に基づいて、屈折率および光軸方向の寸法が設計されている。すなわち、可視光画像において生体Aの表面Bに焦点を合わせた状態において、観察面Cからの観察光が赤外光の受光素子群の位置において結像するように、撮像レンズ3から赤外光の受光素子群までの光路長が光学部材により調節されている。
【0049】
このように構成された撮像装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る撮像装置1を用いて生体Aを撮像するためには、観察者は、第1の実施形態と同様に、生体Aに可視光および赤外光を照射する。そして、ディスプレイに表示された画像において可視光像の焦点が生体Aの表面Cに合うように、撮像装置1の位置を調整する。このときに、生体Aの表面Bより深い位置の観察面Cに赤外光像の焦点が合うこととなる。
このように、本実施形態によれば、撮像素子5が1つであっても、撮像レンズ3の後方において生体Aからの赤外光または可視光のいずれかの光路長を調節して結像面の位置を受光面5aの位置に合わせることにより、生体Aの表面Bと該表面B下の観察面Cのそれぞれに焦点があった可視光画像および赤外光画像を取得することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、可視光用の受光素子群と赤外光用の受光素子群とを光軸方向にずらした位置に配置してもよい。この場合、可視光用の受光素子群よりも、赤外光用の受光素子群が突出した位置に配置される。このようにして撮像レンズ3の異なる結像面位置に可視光用の受光素子群と赤外光用の受光素子群を配置することにより、可視光画像において生体A表面に焦点を合わせつつ、赤外光画像において生体Aの表面B下の観察面Cに焦点を合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 撮像装置
2 照明部
2a 可視光源
2b 赤外光源
3 撮像レンズ(撮像光学系)
4 ダイクロイックミラー(光分岐部)
5,51〜53 撮像素子(撮像部)
5a,51a〜53a 受光面
6 制御部(光路長調節手段、照明切替手段)
7 光学部材(光路長調節手段)
A 生体(試料)
B 生体の表面(観察面)
C 観察面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の深さ方向に異なる2つの観察面から発生した互いに波長の異なる2つの観察光を区別して受光する受光面を有し、前記2つの観察面の画像を取得する撮像部と、
前記2つの観察面間の深さ方向の距離に応じて、少なくとも一方の前記観察光の前記観察面から前記受光面までの光路長を調節する光路長調節手段とを備える撮像装置。
【請求項2】
前記2つの観察光をそれぞれ異なる光路に分岐する光分岐部を備え、
前記撮像部が、前記各光路に配置され前記光分岐部によって分岐された観察光を受光する前記受光面をそれぞれ有する撮像素子を備え、
前記光路長調節手段が、一方の前記撮像素子を光軸方向に移動させる請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
一方の前記観察面に、前記試料中の検出すべき物質が異なる光吸収特性を示し波長の異なる2つの検出光を照射する照明部を備え、
前記光分岐部が、前記一方の観察面から反射されてきた前記2つの検出光と他方の観察面からの前記観察光をそれぞれ異なる光路に分岐し、
前記撮像素子が、前記各光路に配置され、
前記光路長調節手段が、前記検出光が分岐される前記光路に配置された2つの前記撮像素子を、該各撮像素子の前記受光面から前記一方の観察面までの光路長が一定になるように、同期させて光軸方向に移動させる請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
それぞれ異なる前記観察面から前記観察光を発生させる2つの照明光を前記試料に照射する照明部と、
前記試料に照射される前記照明光を交互に連続的に切り替える照明切替手段とを備え、
前記撮像部が、前記2つの観察光を共通の前記受光面で受光する撮像素子を備え、
前記光路長調節手段が、前記照明光切替手段による前記照明光の切り替えに同期させて、前記観察光が発生させられている方の前記観察面の像が形成される結像面位置に前記受光面が配置されるように、前記撮像素子を光軸方向に往復移動させる請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
それぞれ異なる前記観察面から前記観察光を発生させる2つの照明光を前記試料に照射する照明部と、
前記照明部により前記試料に照射される前記照明光を交互に連続的に切り替える照明切替手段と、
物体面から集光した光の像を結像面に結像する撮像光学系とを備え、
前記撮像部が、前記2つの観察光を共通の前記受光面で受光する撮像素子を備え、
前記光路長調節手段が、前記照明光切替手段による前記照明光の切り替えに同期させて、前記観察光が発生させられている方の前記観察面に前記物体面が配置されるように前記撮像光学系を構成する少なくとも一部の光学素子を光軸方向に往復移動させる請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像部は、それぞれ異なる前記観察光を受光する2つの受光素子群がアレイ状に配列されてなる前記受光面を有し、共通の該受光面により前記2つの観察光を受光する撮像素子を備え、
前記光路長調節手段が、一方の受光素子群の前段に配置され、該一方の受光素子群により受光される方の前記観察光の光路長を変化させる屈折率を有する光学部材を備える請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107942(P2012−107942A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256082(P2010−256082)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】