説明

撮像装置

【課題】フレア発生の検出精度の高い撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置1は、撮影レンズ2の光軸と所定明るさ以上の光源の方向とがなす角度、又は、この角度を特定するための情報を検出する検出手段と、撮影レンズ2の光軸と前記光源の方向とがなす角度又はこの角度を特定するための情報を少なくともパラメータとするフレア発生条件を示すフレア発生条件情報を記憶した記憶手段11と、前記検出手段により検出された前記角度又は前記情報を前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定する判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、撮像光学系で生じるフレアを電気的に補正するようにした撮像装置が開示されている。
【0003】
すなわち、下記特許文献1には、撮像カメラにおいて、光学系の少なくとも所定の絞り値、焦点距離のパラメータに応じて撮影結果が所定の明るさとなる光源で生じるフレアをあらかじめ記憶させておき記憶フレアとし、前記所定の値より大きい値の映像部分を映像信号から検出してその明るさを推定し、推定した明るさを持つ光源が存在していた場合に発生するフレアを前記記憶フレアを用いて予測フレアとして疑似的に発生させて、前記映像信号から減算する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−355636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている前記従来の撮像装置では、所定の値より大きい値の映像部分を映像信号から検出してその明るさを推定するので、所定明るさ以上の光源があれば、その光源の方向と撮影光学系の光軸とがなす角度を問わずにフレアが発生するものとみなしていることになる。
【0006】
しかしながら、撮像装置では、所定明るさ以上の光源があれば必ずフレアが発生するというものではなく、所定明るさ以上の光源があっても、その光源の方向と撮影光学系の光軸とがなす角度に依存して、フレアが発生したりフレアが発生しなかったりすることが、実験により確認された。
【0007】
したがって、前記従来の撮像装置では、本当はフレアが発生しないにも拘わらずフレアが発生するものとみなしている場合が多く、フレア発生の検出精度が低かった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フレア発生の検出精度が高い撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、以下の各態様を提示する。第1の態様による撮像装置は、撮影光学系の光軸と所定明るさ以上の光源の方向とがなす角度、又は、この角度を特定するための情報を検出する検出手段と、前記撮影光学系の光軸と前記光源の方向とがなす角度又はこの角度を特定するための情報を少なくともパラメータとするフレア発生条件を示すフレア発生条件情報を記憶した記憶手段と、前記検出手段により検出された前記角度又は前記情報を前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定する判定手段と、を備えたものである。
【0010】
第2の態様による撮像装置は、前記第1の態様において、前記検出手段は、撮像された画像からその画像内の前記光源の位置を取得する手段と、前記撮像装置の姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記画像内の位置と前記姿勢とに基づいて前記角度又は前記情報を取得する手段とを有するものである。
【0011】
第3の態様による撮像装置は、前記第1又は第2の態様において、前記撮影光学系がズームレンズであり、前記フレア発生条件は前記撮影光学系の焦点距離情報を他のパラメータとし、前記判定手段は、前記撮影光学系の現在の焦点距離情報も前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定するものである。
【0012】
第4の態様による撮像装置は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記撮影光学系は交換可能であり、前記フレア発生条件は前記撮影光学系に関する情報を他のパラメータとし、前記判定手段は、現在装着されている前記撮影光学系に関する情報も前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定するものである。
【0013】
第5の態様による撮像装置は、前記第4の態様において、前記撮影光学系に関する情報は、前記撮影光学系の種別を示す情報であるものである。
【0014】
第6の態様による撮像装置は、前記第4の態様において、前記撮影光学系に関する情報は、前記撮影光学系のレンズ構成、射出瞳距離及び焦点距離のうちの1つ以上であるものである。
【0015】
第7の態様による撮像装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、前記判定手段によりフレアの発生が有ると判定された場合に、警報を発する警報手段を備えたものである。
【0016】
第8の態様による撮像装置は、前記第1乃至第7のいずれかの態様において、前記判定手段によりフレアの発生が有ると判定された場合に、その判定の基礎となった前記角度又は前記情報を、当該フレアの発生があると判定された状態で撮像された画像と関連づけて記録する記録手段を備えたものである。
【0017】
第9の態様による撮像装置は、前記第1乃至6のいずれかの態様において、前記判定手段によりフレアの発生が有ると判定された場合に、撮像された画像を、フレアの影響が低減されるように処理する画像処理部を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フレア発生の検出精度が高い撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による電子カメラを示す概略ブロック図である。
【図2】図1に示す電子カメラと光源との位置関係の例を模式的に示す図である。
【図3】フレア発生条件の一例を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す電子カメラの所定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図5】図1に示す電子カメラの前記所定モードの動作を示す他の概略フローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態による電子カメラの所定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態による電子カメラの前記所定モードの動作を示す他の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による撮像装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による撮像装置としての電子カメラ1を示す概略ブロック図である。
【0022】
本実施の形態による電子カメラ1は、いわゆるデジタルカメラとして構成されているが、本発明による撮像装置は、デジタルカメラのみならず、ビデオカメラなどの他の撮像装置や、携帯電話に搭載された撮像装置などの種々の撮像装置に適用することができる。
【0023】
本実施の形態による電子カメラ1には、撮影光学系としての撮影レンズ2が装着される。撮影レンズ2は、レンズ制御部4よってフォーカスや絞りが駆動される。本実施の形態では、撮影レンズ2は、電子カメラ1の本体に対して着脱可能で交換可能となっており、ズームレンズや固定焦点レンズに交換することができるようになっている。もっとも、本発明では、撮影レンズ2は、交換不能に本体に装着されていてもよい。この場合にも、撮影レンズ2は、ズームレンズでもよいし、固定焦点レンズでもよい。
【0024】
本実施の形態では、撮影レンズ2は、自身の種別を示す情報としての型式を含むレンズ情報(自身に関する情報)を記憶する不揮発性メモリ等の記憶部(図示せず)を有している。この記憶部に記憶されたレンズ情報は、撮影レンズ2と本体が接する部分に設けられる端子などを介して、更には後述するバス9を介して、CPU10が取得することができるようになっている。また、撮影レンズ2がズームレンズである場合には、撮影レンズ2の現在の調節状態の焦点距離が、レンズ情報の一部として、撮影レンズ2からCPU10に供給されるようになっている。
【0025】
撮影レンズ2の像空間には、撮像素子3の撮像面が配置されている。撮像素子3は、撮像制御部5から出力される制御信号によって駆動され、画像信号を出力する。撮像素子3としては、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等が用いられる。撮像素子3から出力される信号は、増幅等を行う信号処理部6、及びA/D変換部7を介して処理された後、メモリ8に一旦蓄積される。メモリ8は、バス9に接続されている。バス9には、レンズ制御部4、撮像制御部5、CPU10、メモリ11、記録部12、画像処理部13、画像圧縮部14、背面液晶パネル及び/又は電子ビューファインダ等の表示部15、及び、電子カメラ1の姿勢を検出する姿勢検出部16なども接続されている。CPU10には、レリーズ釦などの操作部17が接続されている。また、記録部12には記録媒体12aが着脱自在に装着される。なお、信号処理部6及びA/D変換部7を撮像素子3に搭載してもよい。
【0026】
図2は、電子カメラ1と光源100との位置関係の例を模式的に示す図である。図2には、電子カメラ1を基準とした互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を示している。Z軸は電子カメラ1の光軸Oの方向と一致し、X軸は電子カメラ1の左右方向と一致し、Y軸は電子カメラ1の上下方向と一致している。X軸回りの回転方向及び回転角度をそれぞれピッチ方向及びピッチ角度といい、Y軸回りの回転方向及び回転角度をそれぞれヨー方向及びヨー角度という。
【0027】
図2(a)では、電子カメラ1の撮影レンズ2の光軸Oと、電子カメラ1からの光源100の方向Aとが一致し、光軸O上に光源100が位置している。図2(b)では、電子カメラ1が図2(a)に示す状態からピッチ方向にピッチ角度θpだけ回転した状態を示している。図2(b)では、電子カメラ1は図2(a)に示す状態からヨー方向には回転しておらず、電子カメラ1の撮影レンズ2の光軸Oと、電子カメラ1からの光源100の方向Aとがなす角度θは、方向Aを基準としたピッチ角度θpと一致している。
【0028】
光源100の明るさが所定の明るさ以上であればフレアが発生し得るが、図2(a)に示すように光軸Oと方向Aとがなす角度θが0゜であれば、光源100から撮像素子3に入射する光は、光軸Oに沿って撮像素子3に入射し、撮像素子3に斜めに入射しないため、フレアは発生しない。このことは、実験によってもも確認された。
【0029】
そして、光源100の明るさが所定の明るさ以上である場合において、方向Aを基準にして電子カメラ1をピッチ方向及びヨー方向のいずれか一方向又は両方向に回転させることで、図2(a)に示すように光軸Oと方向Aとがなす角度θをある角度にすると、光源100から撮像素子3に入射する光は、光軸Oから角度θだけ傾いた方向に沿って撮像素子3に入射し、撮像素子3に斜めに入射するため、フレアが発生する。ところが、角度θが所定角度以上であればフレアが発生するというものではなく、角度θが比較的狭いある角度範囲内にあるときにのみフレアが発生することが、実験により確認された。光源100の明るさが所定の明るさ以上である場合においてフレアが発生する角度θの範囲を、フレア発生角度範囲と呼ぶ。フレア発生角度範囲は、同じカメラ本体であってもこれに装着される撮影レンズ2の種別(例えば、型式)毎に異なり、代表的には、撮影レンズ2のレンズ構成(球面レンズ・非球面レンズ、レンズ枚数、コーティングなどのうちの1つ以上)、射出瞳距離(PO値)及び焦点距離のいずれかが異なれば、フレア発生角度範囲が異なることが、実験により確認された。また、撮影レンズ2がズームレンズの場合には、撮影レンズ2が同じであっても、焦点距離の調節状態(調節された現在の焦点距離)によって、フレア発生角度範囲が異なることが、実験により確認された。
【0030】
本実施の形態では、電子カメラ1に交換可能に装着される各種別(本実施の形態では、各型式)の撮影レンズ2について、実験によりフレア発生角度範囲を求めることによって、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源100の方向Aとがなす角度θを少なくともパラメータとするフレア発生条件を取得し、このフレア発生条件を示すフレア発生条件情報を、事前に不揮発性のメモリ11に記憶させておく。なお、フレア発生条件情報を記憶するメモリ11は、CPU10の外部のメモリに限らず、CPU10の内部メモリ(図示せず)でもよい。
【0031】
前記実験は、例えば図2に示すように、所定明るさ以上の光源100を用意し、方向Aを基準にして電子カメラ1のピッチ角度θp及びヨー角度θyを変えることで、撮影レンズ2の光軸Oと光源100の方向Aとがなす角度θを変えつつ、電子カメラ1で撮像してその画像にフレアが発生するか否かを確認することによって、行うことができる。
【0032】
図3は、フレア発生条件の一例を模式的に示す図である。図3中のf1〜f4は焦点距離の値、θ1〜θ10は光軸Oと方向Aとがなす角度θの値をそれぞれ示している。図3に示す例では、説明の便宜上、電子カメラ1に交換可能に装着される撮影レンズ2は、3種類の撮影レンズ(型式「○○○○」、「××××」、「△△△△」の撮影レンズ)であるものとし、型式「○○○○」の撮影レンズ2は焦点距離をf1からf4までの範囲で変え得るズームレンズであり、型式「××××」の撮影レンズ及び型式「△△△△」の撮影レンズはそれぞれ固定焦点レンズであるものとしている。図3に示す例では、フレア発生条件は、撮影レンズ2の型式、撮影レンズ2の焦点距離(調節された状態の焦点距離)F、及び、光軸Oと方向Aとがなす角度θをパラメータとしている。例えば、条件No.1は、型式「○○○○」の撮影レンズが装着されその焦点距離Fがf1以上でかつf2よりも小さい値に調節されている場合には、角度θがθ1以上でかつθ2以下である場合にフレアが発生し、角度θがそれ以外の角度ではフレアが発生しないことを示している。また、条件No.4は、型式「××××」の撮影レンズが装着されている場合には、角度θがθ7以上でかつθ8以下である場合にフレアが発生し、角度θがそれ以外の角度ではフレアが発生しないことを示している。条件No.4及び条件No.5中の「−」は、型式「××××」の撮影レンズ及び型式「△△△△」の撮影レンズはそれぞれ固定焦点レンズであるので、焦点距離Fが不要であることを示している。
【0033】
本実施の形態では、姿勢検出部16は、例えばジャイロセンサを用いて構成され、適宜指定された基準の方向に対する電子カメラ1のピッチ角度及びヨー角度を検出する。前記ジャイロセンサとしては、例えば、手振れ検出用のジャイロセンサを用いてもよい。なお、姿勢検出部16は、加速度センサを用いて構成することもできる。
【0034】
図4及び図5は、本実施の形態による電子カメラ1の所定モードの動作を示す概略フローチャートである。このモードは、静止画撮影に際してフレア発生の事前検出を行ってその検出時に警報を発する動作モードである。
【0035】
操作部17からの指令等によって本動作モードを開始すると、CPU10は、メモリ8内に格納されるフレア検出フラグをオフにリセットする(ステップS1)。フレア検出フラグは、フレア発生が検出された状態か否かを示すものである。フレア検出フラグのオフはフレア発生が検出されていない状態を示し、フレア検出フラグのオンはフレア発生が検出されている状態を示す。
【0036】
次いで、CPU10は、撮像制御部5及び表示部15等を制御して、所定時間間隔(例えば、1/30秒のフレームレート)で、間引き読み出し等によって撮像素子3にスルー画像を撮像させるとともにそのスルー画像を表示部15へ表示させる動作を、開始させる(ステップS2)。撮像素子3からアナログ信号として読み出されたスルー画像は、信号処理部6で増幅等された後にA/D変換部7によりデジタル信号に変換され、更にメモリ8に一旦格納された後に、動画像として表示部15に表示される。このスルー画像の撮像・表示は、本動作モード中は、後述するステップS7の本画像の撮影時を除いて繰り返される。
【0037】
次に、CPU10は、操作部17のうちのレリース釦(図示せず)が半押しされたか否かを判定し(ステップS3)、半押しされるとステップS4へ移行する一方で、半押しされなければステップS13へ移行する。
【0038】
ステップS4において、CPU10は、自動焦点調節や自動露出制御などを行い、本画像の撮影に用いる撮影条件を設定する。引き続いて、CPU10は、レリース釦が全押しされたか否かを判定し(ステップS5)、全押しされるとステップS7へ移行し、全押しされければ所定のタイムアウト時間を経過するまでは全押しされるのを待ち(ステップS6でNO)、全押しされずに所定のタイムアウト時間を経過する(ステップS6でYES)と、ステップS11へ移行する。
【0039】
ステップS7において、CPU10は、撮像制御部5を制御して撮像素子3に本画像を撮像させる。撮像素子3からアナログ信号として読み出されたこの本画像は、信号処理部6で増幅等された後にA/D変換部7によりデジタル信号に変換され、更にメモリ8に一旦格納される。
【0040】
次に、CPU10は、ステップS7で読み出されてメモリ8内に格納された本画像を、記録部12によって記録媒体12aに記録させる(ステップS8)。
【0041】
その後、CPU10は、現在のフレア検出フラグがオンであるか否かを判定し(ステップS9)、フレア検出フラグがオンであれば、フレア検出の基礎情報(本実施の形態では、最新にフレア検出フラグをオンにした後述するステップS26の直近のステップS22,S24で得たレンズ情報及び角度θ。)をステップS8で記録した本画像と関連づけて、記録部12によって記録媒体12aに記録させた(ステップS10)後に、ステップS11へ移行する。ステップS9でフレア検出フラグがオンでないと判定されると、ステップS10を経由することなく直ちにステップS11へ移行する。なお、ステップS10において、フレア検出の基礎情報のうちの角度θのみを、本画像と関連づけて記録してもよい。また、ステップS10において、角度θに代えて、角度θを特定するための情報である後述のステップS23で取得するピッチ角度θp及びヨー角度θyを、本画像と関連づけて記録してもよい。
【0042】
ステップS11において、CPU10は、操作部17から本動作モードを終了させる旨のモード終了指令(例えば、他の動作モードへの切り替え指令や電源オフ指令など)を受けたか否かを判定する。CPU10は、モード終了指令を受けていないと判定するとステップS3へ戻る一方、モード終了指令を受けたと判定すると、後述するフレア警報をオフにした(すなわち、フレア警報を発生していない状態にした)後に、本動作モードを終了する。
【0043】
ステップS13において、CPU10は、現在がフレア検出タイミングか否かを判定する。現在がフレア検出タイミングでなければステップS11へ移行する一方で、現在がフレア検出タイミングであればステップS14へ移行する。例えば、1フレームのスルー画像が得られる毎の時点をフレア検出タイミングとしてもよいし、複数の所定数のフレームのスルー画像が得られる毎の時点をフレア検出タイミングとしてもよいし、所定周期のタイミングをフレア検出タイミングとしてもよい。
【0044】
ステップS14において、CPU10は、最新に取得されたスルー画像中に飽和輝度領域が有るか否かを判定する。ステップS14で飽和輝度領域が無いと判定されると、CPU10は、フレア検出フラグをオフにした(ステップS17)後にステップS28へ移行する。なお、本実施の形態では、ステップS14の判定対象となるスルー画像を取得する際の絞りの状態は、当該スルー画像中の非飽和輝度領域は、所定明るさ以上ではない(フレアを発生させる明るさではない)というように設定される。
【0045】
ステップS14で飽和輝度領域が有ると判定されると、CPU10は、レンズ制御部4を介して撮影レンズ2の絞りを一旦絞り、その絞った状態で取得されたスルー画像の信号レベル、特に、ステップS14で有ると判定された飽和輝度領域に相当する領域の信号レベルを取得する(ステップS15)。なお、その絞った状態でスルー画像を取得した後には、撮影レンズ2の絞りを元に戻しておく。
【0046】
次に、ステップS15で絞った撮影レンズ2の絞りの状態とステップS15で取得された信号レベルとに基づいて、ステップS14で有ると判定された飽和輝度領域が、所定明るさ以上の光源(フレアを発生させる明るさの光源。以下、高輝度光源と呼ぶ場合がある。)に相当するか否かを判定する(ステップS16)。
【0047】
なお、先に説明したように、本実施の形態では、所定以上の明るさであるか否かを判定するために、絞りを変えることでスルー画像の感度を変えているが、その代わりに又はそれに加えて、例えば、スルー画像のフレームレートを変えることでスルー画像の感度を変えてもよい。
【0048】
ステップS16で高輝度光源に相当しない(ステップS16でNO)と判定されると、CPU10は、フレア検出フラグをオフにした(ステップS17)後に、ステップS28へ移行する。一方、ステップS16で高輝度光源に相当する(ステップS16でYES)と判定されると、ステップS21へ移行する。
【0049】
ステップS21において、CPU10は、スルー画像内の高輝度光源の位置情報(すなわち、ステップS14で有ると判定された飽和輝度領域の位置情報、あるいは、ステップS14で有ると判定された飽和輝度領域のうちの高輝度光源の相当する領域の位置情報)を取得する。
【0050】
次に、CPU10は、装着されている撮影レンズ2から、前記レンズ情報のうち、型式、及び、撮影レンズ2がズームレンズであれば現在の調節状態の焦点距離を取得する(ステップS22)。
【0051】
次いで、CPU10は、姿勢検出部16から、ステップS21で取得した高輝度光源の位置情報に基づく当該高輝度光源の方向Aを基準とした、ピッチ角度θp及びヨー角度θyを取得する(ステップS23)。
【0052】
引き続いて、CPU10は、ステップS23で取得したピッチ角度θp及びヨー角度θyから、高輝度光源の方向Aと撮影レンズ2の光軸Oとがなす角度θを算出する(ステップS24)。
【0053】
その後、CPU10は、ステップS22で取得したレンズ情報(本実施の形態では、型式、及び、撮影レンズ2がズームレンズであれば現在の調節状態の焦点距離)及びステップS24で取得した角度θを、メモリ11内のフレア発生条件情報と照合することによって、フレア発生の有無を判定する(ステップS25)。すなわち、CPU10は、ステップS22で取得したレンズ情報及びステップS24で取得した角度θがメモリ11内のフレア発生条件情報が示すフレア発生条件を満たすか否かを判定し、満たす場合にはフレアの発生が有る(ステップS25でYES)と判定する一方で、満たさない場合にはフレアの発生が無い(ステップS25でNO)と判定する。例えば、ステップS22で取得した型式が「○○○○」でステップS22で取得した現在の焦点距離Fがf2以上でかつf3より小さい場合には、CPU10は、図3中の条件No.2に従って、ステップS24で取得した角度θがθ3≦θ≦θ4の角度範囲(フレア発生角度範囲)内であるか否かを判定することによって、フレア発生条件を満たすか否かを判定する。また、例えば、ステップS22で取得した型式が「△△△△」である場合には、CPU10は、図3中の条件No.5に従って、ステップS24で取得した角度θがθ9≦θ≦θ10の角度範囲(フレア発生角度範囲)内であるか否かを判定することによって、フレア発生条件を満たすか否かを判定する。
【0054】
ステップS25でYESと判定されると、CPU10は、フレア検出フラグをオンにした(ステップS26)後に、ステップS28へ移行する。一方、ステップS25でNOと判定されると、CPU10は、フレア検出フラグをオフにした(ステップS27)後に、ステップS28へ移行する。
【0055】
本実施の形態では、前述したステップS14〜S17,S21〜S27は、フレア(厳密に言えば、フレアが発生することになる状態)を事前に検出するフレア検出処理に相当している。また、本実施の形態では、ステップS14〜S16,S21,S23,S24の機能は、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源の方向Aとがなす角度θを検出する検出手段に相当している。もっとも、角度θを検出する検出手段はこれに限らない。例えば、本実施の形態では、ステップS16のように所定明るさ以上であるか否かを(フレアを発生させる明るさの光源であるか否か)をスルー画像を用いて検出しているが、撮像素子とは別の光量センサ等を用いて検出してもよい。
【0056】
ステップS28において、CPU10は、現在のフレア検出フラグがオンであるか否かを判定する。ステップS28で現在のフレア検出フラグがオンであると判定されると、CPU10は、ステップS29でフレア警報をオンにした(すなわち、フレア警報を発生している状態にした)後に、ステップS11へ移行する。一方、ステップS28で現在のフレア検出フラグがオンでない(オフである)と判定されると、CPU10は、ステップS29でフレア警報をオフにした(すなわち、フレア警報を発生していない状態にした)後に、ステップS11へ移行する。
【0057】
前記フレア警報は、現在の状態が撮像画像(本画像)にフレアが発生することになる状態である旨の警報である。この警報は、例えば、表示による警報でもよいし、音又は音声による警報でもよい。すなわち、フレア警報を発生させる場合、具体的には、例えば、その旨のマークや文字等を表示部15に表示させたり、それに代えて又はそれに加えて、その旨の警報音をスピーカ等の発音部(図示せず)に発生させてもよい。フレア警報によって、使用者は、電子カメラ1の撮影角度を変えてフレアの発生を回避することを促されたり、電子カメラ1の撮影角度を変えない場合には、フレア発生を容認した上で本撮像を行うことを促されることになる。
【0058】
なお、前述したCPU10の行う各ステップのうち適当なステップについては、例えば、DPS(デジタル信号処理回路)が行うようにしてもよい。
【0059】
本実施の形態では、前述したように、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源の方向Aとがなす角度θを検出し、この検出された角度θを、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源の方向Aとがなす角度θをパラメータとするフレア発生条件を示すフレア発生条件情報と照合することによって、フレア発生の有無を判定する。したがって、本実施の形態によれば、所定以上の光源があっても角度θがフレアを発生しない角度であれば、フレア発生として検出されないので、フレア発生の検出精度が高まる。
【0060】
このように、本実施の形態によれば、フレア発生の検出精度が高いので、より正確にフレア警報を発することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、フレア警報にも拘わらずに本画像が撮像された場合(ステップS9でYESの場合)には、フレア検出の基礎情報が本画像と関連づけて記録される(ステップS10)。したがって、本実施の形態によれば、後に、その本画像に対してフレアを目立たなくするようなレタッチ等を施すような場合に、その本画像に関連づけられた基礎情報(特に、角度θの情報)を参照することで、そのようなレタッチをより容易に行うことができる。
【0062】
本実施の形態では、ステップS10の後に直ちにステップS11へ移行している。しかし、例えば、ステップS10の後に、CPU10は、ステップS7で撮像した本画像に対して、フレアの影響が低減されるような処理(フレア低減処理)を画像処理部13に行わせ、そのフレア低減処理後の画像を本画像とは別に記録部12によって記録媒体12aに記録させた後に、ステップS11へ移行してもよい。前記フレア低減処理としては、限定されるものではないが、例えば、前記特許文献1に開示されている手法に準じて、記憶フレアを用いて予測フレアを擬似的に発生させて本画像から予測フレアを減算する処理を採用してもよい。なお、フレア低減処理後の画像を記録する場合には、フレア低減処理前の本画像は必ずしも記録しなくてよい。
【0063】
ところで、撮影レンズ2が電子カメラ1の本体に対して交換不能に装着されている場合において、撮影レンズ2が固定焦点レンズであれば、フレア発生条件は、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源100の方向Aとがなす角度θのみをパラメータとした条件としてもよい。例えば、前述した型式「××××」の撮影レンズが交換不能に本体に装着されている場合には、レンズの型式や焦点距離Fをパラメータとすることなく、フレア発生条件を「θ7≦θ≦θ8」のみとすればよい。この場合、ステップS22は不要である。
【0064】
また、撮影レンズ2が電子カメラ1の本体に対して交換不能に装着されている場合において、撮影レンズ2がズームレンズであれば、フレア発生条件は、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源100の方向Aとがなす角度θ、及び、撮影レンズ2の焦点距離Fのみをパラメータとし、撮影レンズ2の型式をパラメータとしなくてもよい。例えば、前述した型式「○○○○」の撮影レンズが交換不能に本体に装着されている場合には、フレア発生条件を、レンズの型式をパラメータから除いた条件No.1〜3のみとすればよい。この場合、ステップS22において、型式は取得しなくてもよい。
【0065】
また、電子カメラ1の本体に交換可能又は交換不能に装着される撮影レンズ2がズームレンズであっても、フレア発生条件は必ずしも撮影レンズ2の焦点距離(調節された状態の焦点距離)Fをパラメータとする必要はない。例えば、図3中の条件No.1〜3のフレア発生角度範囲のオアをとった角度範囲全体を、前述した型式「○○○○」の撮影レンズ2に対するフレア発生角度範囲(いずれの焦点距離Fについても共通する角度範囲)としてもよい。この場合、ステップS22において、焦点距離Fは取得しなくてもよい。この場合には、本実施の形態ほどにはフレア発生の検出精度は高まらないものの、この場合であっても、それなりにフレア発生の検出精度を高めることができる。
【0066】
さらに、前述したように、フレア発生角度範囲は、同じカメラ本体であってもこれに装着される撮影レンズ2の種別(例えば、型式)毎に異なり、代表的には、撮影レンズ2のレンズ構成(球面レンズ・非球面レンズ、レンズ枚数、コーティングなどのうちの1つ以上。以下同じ。)、射出瞳距離(PO値)及び焦点距離のいずれかが異なれば、フレア発生角度範囲が異なる。したがって、撮影レンズ2が電子カメラ1の本体に対して交換可能である場合には、フレア発生条件は、撮影レンズ2の型式をパラメータとする代わりに、撮影レンズ2のレンズ構成、射出瞳距離(PO値)及び焦点距離のいずれか1つ以上をパラメータとしてもよい。フレア発生条件が撮影レンズ2のレンズ構成、射出瞳距離(PO値)及び焦点距離のいずれか1つ以上をパラメータとする場合には、CPU10は、ステップS22でそれらに対応するレンズ情報を撮影レンズ2から取得し、ステップS24をフレア発生条件と照合する。ここで、前記焦点距離は、固定焦点レンズの場合はその固定された焦点距離とし、ズームレンズの場合は現在の調節状態の焦点距離とする。撮影レンズ2の型式をパラメータとする代わりに、フレア発生条件が撮影レンズ2のレンズ構成、射出瞳距離(PO値)及び焦点距離のいずれか1つ以上をパラメータとする場合、それらの全てをパラメータとすることがフレア発生の検出精度をより高めるために好ましい。しかしながら、それらのうちの1つ又は2つをパラメータとする場合であっても、フレア発生の検出精度をそれなりに高めることができる。
【0067】
さらにまた、本実施の形態では、フレア発生条件は、撮影レンズ2の光軸Oと所定明るさ以上の光源100の方向Aとがなす角度θをパラメータとしているが、角度θをパラメータとする代わりに、角度θを特定するための情報をパラメータとしてもよい。具体的には、例えば、フレア発生条件は、角度θの代わりに、角度θの算出する元となるピッチ角度θp及びヨー角度θyをパラメータとしてもよい。この場合、ステップS24は不要であり、ステップS23で取得したピッチ角度θp及びヨー角度θyを、ステップS25でフレア発生条件と照合する。このとき、ステップS10で記録する基礎情報は、角度θの代わりに、ピッチ角度θp及びヨー角度θyをする。
【0068】
以上説明した本実施の形態の変形例と同様の変形は、以下に説明する第2の実施の形態についても適用することができる。
【0069】
[第2の実施の形態]
図6及び図7は、本発明の第2の実施の形態による電子カメラの所定モードの動作を示す概略フローチャートであり、図4及び図5に対応している。図6及び図7において、図4及び図5中のステップと同一又は対応するステップには同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0070】
本実施の形態による電子カメラが前記第1の実施の形態による電子カメラと異なる所は、所定モードにおいて、図4及び図5に示す動作に代えて、図6及び図7に示す動作を行う点である。
【0071】
前記第1の実施の形態の図4及び図5に示す動作が本実施の形態の図6及び図7に示す動作と異なる所は、主に、図4及び図5に示す動作では、レリース釦の半押し前にフレア検出処理を行うのに対し、図6及び図7に示す動作では、レリース釦の半押し後でかつレリース釦の全押し前にフレア検出処理を行う点である。
【0072】
本実施の形態では、ステップS3でNOの場合は、ステップS11へ移行する。ステップS3でYESの場合は、ステップS14へ移行する。ステップS29の後及びステップS30の後には、ステップS4へ移行する。ステップS11でNOの場合は、ステップS41でフレア警報をオフにした後に、ステップS3へ戻る。
【0073】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0074】
なお、フレア発生が検出された場合には本画像を撮像できないようにしてもよい。この場合、例えば、ステップS29の後に、ステップS4へ移行することなく、ステップS11へ移行すればよい。
【0075】
以上、本発明の各実施の形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
例えば、前記各実施の形態では、スルー画像を用いて、フレア発生の事前検出を実現しているが、スルー画像に代えて任意の撮像画像を用いて、フレア発生の事前検出を実現してもよい。
【0077】
前記各実施の形態は、フレア発生の検出を静止画撮影に利用した例であるが、本発明では、フレア発生の検出を動画撮影に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 電子カメラ
3 撮像素子
10 CPU
11 メモリ
16 姿勢検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の光軸と所定明るさ以上の光源の方向とがなす角度、又は、この角度を特定するための情報を検出する検出手段と、
前記撮影光学系の光軸と前記光源の方向とがなす角度又はこの角度を特定するための情報を少なくともパラメータとするフレア発生条件を示すフレア発生条件情報を記憶した記憶手段と、
前記検出手段により検出された前記角度又は前記情報を前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記検出手段は、撮像された画像からその画像内の前記光源の位置を取得する手段と、前記撮像装置の姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記画像内の位置と前記姿勢とに基づいて前記角度又は前記情報を取得する手段とを有することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮影光学系がズームレンズであり、
前記フレア発生条件は前記撮影光学系の焦点距離情報を他のパラメータとし、
前記判定手段は、前記撮影光学系の現在の焦点距離情報も前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮影光学系は交換可能であり、
前記フレア発生条件は前記撮影光学系に関する情報を他のパラメータとし、
前記判定手段は、現在装着されている前記撮影光学系に関する情報も前記フレア発生条件情報と照合することによって、フレアの発生の有無を判定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮影光学系に関する情報は、前記撮影光学系の種別を示す情報であることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮影光学系に関する情報は、前記撮影光学系のレンズ構成、射出瞳距離及び焦点距離のうちの1つ以上であることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項7】
前記判定手段によりフレアの発生が有ると判定された場合に、警報を発する警報手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記判定手段によりフレアの発生が有ると判定された場合に、その判定の基礎となった前記角度又は前記情報を、当該フレアの発生があると判定された状態で撮像された画像と関連づけて記録する記録手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記判定手段によりフレアの発生が有ると判定された場合に、撮像された画像を、フレアの影響が低減されるように処理する画像処理部を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−55566(P2013−55566A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193497(P2011−193497)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】