説明

撮影装置

【課題】光利用率を高めることができるとともに、光量変動を低減させた照明光を被写体に照射して撮影する。
【解決手段】2つの光源手段5a,5bと、各光源手段5a,5bからの照明光をそれぞれ直交する2つの偏光成分に分離する偏光分離手段7と、偏光成分の偏光状態を変更可能な液晶スイッチ9と、2つの偏光成分の光路を合成する光路合成手段11とを備え、偏光分離手段7の各射出端面F1,F2と光路合成手段11の射出端面F3とが略等しい面積を有する照明手段2と、照明光の光量を検出する光量検出手段19と、撮影手段13と、撮像手段13の露光期間が1フレームの半分より長い場合に、検出された光量に基づいて、透過率特性の変化の始点または終点が、露光期間の終点または始点にほぼ一致するように、光源手段5a,5bの点滅および液晶スイッチ9の切替タイミングを制御する制御手段4とを備える撮影装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDのような高速パルス点灯可能な発光素子を用いて高出力かつ指向性の高い照明光を被写体に照射して撮影する撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLEDと、偏光ビームスプリッタと、液晶セルとを備えることにより、振動方向のそろった照明光を射出することのできる照明装置が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。この照明装置では、LEDを間欠的に駆動することにより、各LEDに対して定格よりも高めの電流を印加し、全体として輝度の高い照明光を出力している。
また、2つの光源から射出された照明光を偏光ビームスプリッタに対して異なる入射方向から入射させ、偏光ビームスプリッタにおいて、これら照明光を合成して共通する射出端面から射出させる光源装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−257872号公報
【特許文献2】特開2005−283818号公報
【特許文献3】特開2006−034330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の照明装置では、偏光ビームスプリッタへ入射する前段階での直線偏光化の効率が低いため、光の利用効率が低いという問題があった。
例えば、上述した特許文献1に開示されている発明では、光源部の反射による戻り光のリサイクルを前提としているため、偏光ビームスプリッタから射出される照明光の光量は、光源部における光の反射率に依存することとなり、光量の安定性に欠けるという問題がある。また、光源部の反射による戻り光がなければ、偏光ビームスプリッタから射出される照明光は所定の偏光方向の光に限られることから、光源部から射出される照明光の光量の1/2以下となり、光量の低下が著しい。
【0005】
また、特許文献3に記載されている光源装置では、2つの光源の光路をビームスプリッタにより重ね合わせることが開示されているが、合成後の光束径が合成前の2倍となることから、エタンデュ(Etendue)の関係により光利用率が低減するという問題がある。
ここで、エタンデュとは、LED等の光源と液晶セル等の空間光変調装置とを含めた光学系において、有効に利用可能な光束が存在する空間的な広がりを面積と立体角の積とで表したものである。つまり、光源から射出される照明光の光束径の面積と立体角との積が上記エタンデュを超えた場合には、超えた部分の光が有効利用されずに損失となり、光利用率が低減する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光利用率を高めることができるとともに、光量変動を低減させた照明光を被写体に照射して撮影することができる撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、点滅駆動可能な2つの光源手段と、各光源手段から射出された照明光をそれぞれ直交する2つの偏光成分に分離する偏光分離手段と、該偏光変換手段により分離された2つの偏光成分を入射させ、入射された偏光成分の偏光状態を変更可能な液晶スイッチと、該液晶スイッチを透過した2つの偏光成分の光路を合成する光路合成手段とを備え、前記偏光分離手段の各射出端面と前記光路合成手段の射出端面とが略等しい面積を有する照明手段と、該照明手段から出射される照明光の光量を検出する光量検出手段と、前記照明手段から出射された照明光により照明された被写体を撮影する撮影手段と、該撮像手段の露光期間が1フレームの半分より長い場合に、前記光量検出手段により検出された光量に基づいて、前記液晶スイッチの切替に基づく透過率特性の変化の始点または終点が、前記露光期間の終点または始点にほぼ一致するように、前記光源手段の点滅および前記液晶スイッチの切替タイミングを制御する制御手段とを備える撮影装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、2つの光源手段から射出された各照明光は、偏光分離手段において直交する2つの偏光成分(P偏光成分とS偏光成分)にそれぞれ分離される。分離された各偏光成分は、共通する液晶スイッチに入射され、偏光状態を調整された後に光路路合成手段により合成された同一の光路上の射出端面から出射される。
【0009】
この場合に、各光源手段を間欠的に点滅させ、液晶スイッチの切替タイミングと各光源手段の点滅タイミングとを連携させることにより、各光源手段に定格よりも高い電流を印加することが可能となり、輝度の高い照明光を射出させることができる。
また、偏光分離手段の各射出端面と光路合成手段の射出端面とが略等しい面積を有するので、光路合成手段により光路を合成された照明光のエタンデュと合成前の各偏光成分のエタンデュとを略一定に保つことができる。これにより、照明光の利用率を向上させることができ、更に明るい照明光を射出させることができる。
【0010】
照明手段からの明るい照明光が出射された被写体が、撮像手段の作動により撮影される。これにより、被写体の明るい画像を取得することができる。
この場合において、光量検出手段により検出された照明手段から出射される照明光の光量が液晶スイッチの切替の終点または視点において低下している場合には、制御手段が光源手段の点滅および液晶スイッチの切替タイミングを制御することにより、液晶スイッチの切替に基づく透過率特性の変化の始点または終点が、露光期間の終点または始点にほぼ一致させられる。これにより、露光期間の始点または終点において、照明光の光量の低下が抑制され、光量変動の少ない照明光により照明した被写体を撮影することができる。
【0011】
液晶スイッチの透過率特性は温度により大きく変化するので、液晶スイッチの透過率特性の変化の始点または終点は、温度によって移動する。本発明によれば、液晶スイッチの温度特性によって透過率特性の変化の始点または終点が変動しても、光量検出手段により検出された照明光の光量に基づいて制御手段を作動させることにより、液晶スイッチの透過率特性の変化期間と露光期間とが極力重複しないようにすることができる。その結果、撮像手段のシャッタースピードに関わらず、露光期間中に安定した照明光を被写体に照射して撮影することができる。
【0012】
また、本発明は、点滅駆動可能な2つの光源手段と、各光源手段から射出された照明光をそれぞれ直交する2つの偏光成分に分離する偏光分離手段と、該偏光変換手段により分離された2つの偏光成分を入射させ、入射された偏光成分の偏光状態を変更可能な液晶スイッチと、該液晶スイッチを透過した2つの偏光成分の光路を合成する光路合成手段とを備え、前記偏光分離手段の各射出端面と前記光路合成手段の射出端面とが略等しい面積を有する照明手段と、該照明手段から出射される照明光の光量を検出する光量検出手段と、前記照明手段から出射された照明光により照明された被写体を撮影する撮影手段と、該撮像手段の露光期間が遮光期間より長い場合に、前記光量検出手段により検出された光量に基づいて、前記液晶スイッチの切替に基づく透過率特性の変化期間が、前記遮光期間内に配されるように、前記光源手段の点滅および前記液晶スイッチの切替タイミングを制御する制御手段とを備える撮影装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、光量検出手段により検出された照明手段から出射される照明光の光量が液晶スイッチの切替の終点または視点において低下している場合には、制御手段が光源手段の点滅および液晶スイッチの切替タイミングを制御することにより、液晶スイッチの切替に基づく透過率特性の変化期間が、遮光期間内に配される。これにより、露光期間内において、液晶スイッチの切替に基づく照明光の光量の低下が抑制され、光量変動の少ない照明光により照明した被写体を撮影することができる。
【0014】
液晶スイッチの透過率特性は温度により大きく変化するので、液晶スイッチの透過率特性の変化期間は、温度によって移動する。本発明によれば、液晶スイッチの温度特性によって透過率特性の変化期間が変動しても、光量検出手段により検出された照明光の光量に基づいて制御手段を作動させることにより、液晶スイッチの透過率特性の変化期間と遮光期間とを重複させることができる。その結果、撮像手段のシャッタースピードに関わらず、露光期間中に安定した照明光を被写体に照射して撮影することができる。
【0015】
上記発明においては、前記撮像手段の露光期間が1フレームの半分以下の場合に、前記制御手段が、いずれか一方の光源手段のみを点滅させるとともに、他方の光源手段の点灯を停止し、前記液晶スイッチの切替を停止するよう制御することとしてもよい。
このようにすることで、一方の光源手段のみを点滅させることで、該光源手段に定格よりも高い電流を印加することが可能となり、輝度の高い照明光を射出させることができる。また、一方の光源手段のみを点滅させ、液晶スイッチの切替を停止することにより、温度変化にかかわらず、一定の光量の照明光を発生させることができる。すなわち、シャッタースピードが速い場合においても、温度変化にかかわらず安定した明るい照明を行って、明るい画像を得ることができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記光源手段の電源投入を検出する電源投入検出部を備え、前記制御手段が、前記電源投入検出部からの検出信号に基づいて、前回の電源投入時に点滅させた光源手段とは異なる光源手段のみを点滅させるよう制御することとしてもよい。
このようにすることで、片方の光源手段のみが頻繁に使用されて劣化する不都合を防止して、長時間にわたり、安定した光量の照明光を照射して被写体を撮影することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光利用率を高めることができるとともに、光量変動を低減させた照明光を被写体に照射して撮影することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る撮影装置1について、図1〜図8を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る撮影装置1は、図1に示されるように、照明部2と、撮像部3と、これらを制御する制御部4とを備えている。図1は本実施形態に係る撮影装置1のブロック図である。
【0019】
照明部2は、図2に示されるように、直交する方向に照明光を出射するように点滅駆動可能な2つのLED(光源手段)5a,5bと、LED5a,5bから射出される照明光をそれぞれ導光するテーパロッド6a,6bと、該テーパロッド6a,6bにより導光された照明光に含まれるP偏光成分をそれぞれ透過し、S偏光成分をそれぞれ反射する偏光分離面7aを有する偏光ビームスプリッタ7とを備えている。また照明部2は、該偏光ビームスプリッタ7の一方の射出端面F1から出射された偏光成分を90°偏向して、他方の射出端面F2から出射された偏光成分と平行にする三角プリズム8と、偏光ビームスプリッタ7により分離された2つの偏光成分をそれぞれ入射させる液晶スイッチ9とを備えている。さらに、照明部2は、該液晶スイッチ9を透過した偏光成分のうち、偏光ビームスプリッタ7の射出端面F2から直接入射された偏光成分を90°偏向させる三角プリズム10と、該三角プリズム10により90°偏向された偏光成分および三角プリズム8を介して液晶スイッチ9を透過した偏光成分を入射させ、同一の射出端面F3から出射させる偏光ビームスプリッタ11とを備えている。
【0020】
液晶スイッチ9は、例えば、TN液晶であり、入射された偏光成分の偏光状態を、電圧無印加状態(以下、「オフ状態」という。)で90°回転させ、電圧印加状態(以下、「オン状態」という。)を回転させずにそのまま透過させる特性を有している。
偏光ビームスプリッタ7の射出端面F1から射出されて液晶スイッチ9を透過した偏光成分は、三角プリズム10により90°偏向されて、偏光ビームスプリッタ11に入射され、三角プリズム8から射出されて液晶スイッチ9を透過した偏光成分は、そのまま偏光ビームスプリッタ11に入射されるようになっている。
【0021】
偏光ビームスプリッタ11において、互いに異なる入射端面から入射された偏光成分の光路は合成され、共通の射出端面F3から射出されるようになっている。この場合において、偏光ビームスプリッタ11の射出端面F3は、偏光ビームスプリッタ7の射出端面F1,F2と同等の面積を有している。換言すると、偏光ビームスプリッタ11の射出端面F3は、LED5a,5bからの照明光を偏光ビームスプリッタ7へそれぞれ導くテーパロッド6a,6bの射出端面と略同等の面積に設定されている。
【0022】
撮像部3は、被写体からの光を集光する撮影光学系12と、該撮影光学系12により集光された被写体からの光を撮影する撮像素子13とを備えている。撮像素子13は、例えば、CCD素子であり、被写体の2次元的な画像を取得することができるようになっている。
【0023】
制御部4は、前記撮像素子13の駆動信号を生成するCCDコントローラ14と、露光期間判定部15と、電源投入回数判定部16と、タイミング生成部17と、光源制御部18と、光量検出手段19とを備えている。
前記露光期間判定部15は、該CCDコントローラ14において生成された露光期間(LIGHT_EN)に基づいて、当該露光期間が1フレームの半分以上か否かを判定し、タイミング生成部17に対して判定情報を出力するようになっている。
【0024】
前記電源投入回数判定部16は、撮影装置1自体の電源が投入された回数を計数し、現在の電源投入回数が奇数か偶数かを判定して判定情報を出力するようになっている。
前記光量検出手段19は、前記照明部2から出射された照明光の光量を随時検出するようになっている。
【0025】
前記タイミング生成部17は、前記CCDコントローラ14において生成された垂直ブランキングの情報(VTG)、露光期間判定部15から出力された露光期間の判定情報および電源投入回数判定部16から出力された電源投入回数の判定情報および光量検出手段19から出力された照明光の光量情報を受けて、LED5a,5bの切替タイミングを生成するとともに、液晶スイッチ9の切替タイミングを生成するようになっている。
前記光源制御部18は、タイミング生成部17から出力された2つのLED5a,5bの切替指令信号(LED_TG)およびCCDコントローラ14から出力された露光期間を受けて、LED5a,5bのオン/オフを切り替えるLED駆動信号(LED5a_ON,LED5b_ON)を出力するようになっている。
【0026】
2つのLED5a,5bを交互に点滅駆動するので、図3に破線で示されるように、2つのLED5a,5bを定格の直流電流によって連続的に駆動する場合と比較して、各LEDに、それらの定格よりも大きい電流を印加することができ、明るい照明光を出射させることができるようになっている。
【0027】
前記タイミング生成部17におけるLED5a,5bおよび液晶スイッチ9の切替タイミングについてさらに詳しく説明する。
まず、LED5a,5bの切替タイミングとしては、図4に示されるように、CCDコントローラ14から出力された垂直ブランキングの略中央に設定している。垂直ブランキングの開始時刻は、撮像素子13の露光期間の間に設けられる遮光期間の開始時刻に一致しており、垂直ブランキングの略中央にLED5a,5bの切替タイミングを設定することにより、LED5a,5bの切替を遮光期間内に確実に行うことができるようになっている。
【0028】
光源制御部18は、タイミング生成部17から出力される垂直ブランキングに対応したLED5a,5bの切替指令信号(LED5a_TG,LED5b_TG)と、CCDコントローラ14から出力される露光期間を示す信号(LIGHT_EN)との論理積により、LED駆動信号(LED5a_ON,LED5b_ON)を生成し、2つのLED5a,5bのオンオフを切り替えるようになっている。
【0029】
次に、液晶スイッチ9の切替タイミングについて説明する。液晶スイッチ9は、オン切替またはオフ切替のいずれかにおいて応答が遅くなる特性を有している。さらに、液晶スイッチ9の応答特性は、図8に示されるように、温度によって大きく変化する。
【0030】
このため、液晶スイッチ9の切替タイミングを固定した場合には、図8に実線で示されるように、例えば、25℃において露光期間の始点および終点において、高い光量の照明光を出射させることができるように設定されていたとしても、それよりも応答が遅くなる温度10℃時(図中破線で示される。)には、露光期間の始点において光量が低下し、応答が速くなる温度40℃時(図中一点鎖線で示される。)には、露光期間の終点において光量不足が発生する不都合が発生する。
【0031】
そこで、本実施形態においては、タイミング生成部17において、露光期間判定部15から出力された判定情報に基づいて、露光期間が1フレームの半分より長い場合と、半分以下である場合とで制御を切り替えることとしている。
すなわち、露光期間が1フレームの半分より長い場合(シャッタースピードが遅い場合)には、タイミング生成部17は、光量検出手段19により検出された照明光の光量に基づいて、液晶スイッチ9の透過率特性の変化の始点が、露光期間の終点に一致するように液晶スイッチ9の切替タイミングを生成するようになっている。
【0032】
さらに具体的には、図4に示されるように、一方のLED5a,5bの発光開始付近のサンプリングポイントbにおける光量と比較して、露光期間終了付近のサンプリングポイントgにおける光量が低下している場合には、両サンプリングポイントb,gにおける光量が一致するように液晶スイッチ9の切替タイミングを遅らせていくようになっている。また、他方のLED5a,5bの発光終了付近のサンプリングポイントGにおける光量と比較して、露光期間開始付近のサンプリングポイントDにおける光量が低下している場合には、サンプリングポイントgにおける光量がサンプリングポイントbにおける光量と比較して低下しない範囲で、両サンプリングポイントD,Gにおける光量が一致するように、液晶スイッチ9の切替タイミングを早めて行くようになっている。
【0033】
また、露光期間が1フレームの半分以下である場合(シャッタースピードが速い場合)には、一方のLED5a(またはLED5b)のみでシャッタースピードが遅い場合と同等の光量の照明光を得ることができるので、図5または図6に示されるように、一方のLED5a(5b)のみを点滅駆動し、他方のLED5b(5a)の駆動を停止し、かつ、液晶スイッチ9の切替を停止することとしている。すなわち、液晶スイッチ9を切り替えないので、液晶スイッチ9の応答特性の遅れによる部分的な光量低下の問題が発生しないようになっている。
【0034】
この場合に、一方のLED5aのみについて駆動し続ける場合には、当該LED5aの早期劣化を招くことになるため、本実施形態においては、電源投入回数判定部16から入力される電源投入回数に基づいて駆動するLED5a,5bを電源投入毎に切り替えるようになっている。すなわち、タイミング生成部17は、電源投入回数が偶数の場合と奇数の場合とで異なるLED5a,5bを点滅駆動するようになっている。
【0035】
このように構成された本実施形態に係る撮影装置1の作用について、図7に示されるフローチャートを参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る撮影装置1を用いて被写体を撮影するには、制御部4は、まず、初期設定されたシャッタースピード、LED5a,5bの切替タイミングおよび液晶スイッチ9の切替タイミングで照明部2および撮像部3を駆動する(ステップS1)。
【0036】
まず、図2に示すように、液晶スイッチ9がオン状態とされている期間においては、LED5aが点灯し、LED5bが消灯する。LED5aから射出された照明光は、テーパロッド6aに入射され、指向性を高められた後に、偏光ビームスプリッタ7に入射させられる。照明光のS偏光成分は、偏光分離面7aにおいて反射され、P偏光成分は偏光分離面7aを透過することにより、LED5aからの照明光はP偏光成分とS偏光成分とに分離される。
【0037】
P偏光成分は、偏光ビームスプリッタ7の射出端面F2から射出されて、液晶スイッチ9に入射される。液晶スイッチ9はオン状態とされているので、入射されたP偏光成分は、偏光方向を90°旋回されることによりS偏光成分に変換される。変換されたS偏光成分は、三角プリズム10によって90°偏向されて、偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0038】
偏光ビームスプリッタ7において、偏光分離面7aにより反射されたS偏光成分は、三角プリズム8により90°偏向されて、液晶スイッチ9に入射させられる。液晶スイッチ9はオン状態とされているので、当該S偏光成分は、偏光方向を90°旋回されることによりP偏光成分に変換される。変換されたP偏光成分は、偏光ビームスプリッタ11に入射させられ、三角プリズム10からのS偏光成分と合成され、共通の射出端面F3から射出される。
【0039】
一方、液晶スイッチ9がオフ状態とされている期間においては、LED5aが消灯し、LED5bが点灯する。LED5bから射出された照明光は、テーパロッド6bに入射され、指向性が高められた後に、偏光ビームスプリッタ7に入射させられる。この照明光のS偏光成分は、偏光分離面7aにおいて反射され、P偏光成分は偏光分離面7aを透過することにより、LED5bからの照明光はP偏光成分とS偏光成分とに分離される。
【0040】
S偏光成分は、偏光ビームスプリッタ7の射出端面F2から射出されて、液晶スイッチ9に入射される。液晶スイッチ9はオフ状態とされているので、入射されたS偏光成分は、偏光方向がそのまま維持されて液晶スイッチ9を透過し、その後、三角プリズム10によって90°偏向されて、偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0041】
偏光ビームスプリッタ7の偏光分離面7aを透過したP偏光成分は、三角プリズム8により90°偏向されて、液晶スイッチ9に入射させられる。液晶スイッチ9はオフ状態とされているので、当該P偏光成分は、偏光方向がそのまま維持されて液晶スイッチ9を透過し、偏光ビームスプリッタ11に入射させられ、三角プリズム10からのS偏光成分と合成され、共通の射出端面F3から射出される。
【0042】
すなわち、本実施形態に撮影装置1に備えられる照明部2によれば、2つのLED5a,5bを交互に点滅駆動するので、各LED5a,5bの定格よりも大きい電流を印加することが可能となる。これにより、照明部2から射出する照明光の光量を高めることができる。
【0043】
更に、照明部2によれば、偏光ビームスプリッタ11の射出端面F3が、偏光ビームスプリッタ7の2つの射出端面F1,F2と略等しい面積を有するので、偏光ビームスプリッタ7によって分離された照明光の光束径と、偏光ビームスプリッタ11により合成された後の照明光の光束径とを同等に保つことができる。合成前と合成後におけるエタンデュを一定に維持することができる。このように、分離した照明光を、エタンデュを増加させずに合成することができ、光利用率を向上させることが可能となる。
【0044】
次いで、制御部4は、撮像素子13の露光期間の設定を行う。露光期間の設定は、例えば、取得された画像に輝度の飽和する画素が存在するか否かに基づいて行う。輝度の飽和する画素が存在する場合に、露光期間を短くしていく。これにより、露光期間が決定される。
【0045】
1枚の画像を取得するための1フレームの期間は固定されているので、露光期間が決定されると、露光を行わない遮光期間も設定される。そして、CCDコントローラ14からは、露光期間情報(LIGHT_EN)が露光期間判定部15に対して出力され、露光期間判定部15においては、それが1フレームの半分以上か否かが判定される(ステップS2)。
【0046】
また、CCDコントローラ14からは、設定された露光期間に基づいて決定された垂直ブランキングの期間を示すブランキング情報(VTG)が、タイミング生成部17に出力される。また、光量検出手段19からは、照明部2から出力される照明光の光量情報がタイミング生成部17に出力される。さらに、電源投入回数判定部16からは、電源投入回数がタイミング生成部17に入力される。
【0047】
露光期間の判定の結果、露光期間が1フレームの半分より長い場合には、タイミング生成部17は、2つのLED5a,5bを切り替えて点滅駆動することとし、垂直ブランキングの期間の略中央においてLED5aからLED5bへの切替を行う。また、タイミング生成部17は、所定の切替タイミングで液晶スイッチ9をオンオフ駆動する(ステップS3)。
【0048】
そして、光量検出手段19により照明部2から出射される光量を検出し(ステップS4)、タイミング生成部17が、光量検出手段19により検出された光量を、まず、サンプリングポイントb,gで比較して、露光期間の終点において光量低下があるか否かを判定する(ステップS5)。判定の結果、光量低下が存在する場合には、液晶スイッチ9の立ち下がりエッジを遅らせる方向に切替タイミングをずらしていく(ステップS6)。
【0049】
一方、露光期間の終点において光量低下がない場合には、光量検出手段19により検出された光量を、サンプリングポイントD,Gにおいて比較して、露光期間の始点において光量低下があるか否かを判定し(ステップS7)、光量低下が存在する場合には、サンプリングポイントgにおける光量がサンプリングポイントbにおける光量と比較して低下しない範囲で、液晶スイッチ9の立ち上がりエッジを早める方向に切替タイミングをずらしていく(ステップS8)。
【0050】
これにより、図4に示されるように、液晶スイッチ9の透過率特性の変化期間の始点が、露光期間の終点に一致させられるので、LED5aによる露光期間の全範囲にわたって、一定の光量の照明光を発生させることができるとともに、LED5bによる露光期間の始点付近の光量低下を最小限に抑えることができる。
【0051】
一方、露光期間の判定の結果、露光期間が1フレームの半分以下である場合には、図5および図6に示されるように、タイミング生成部17は、電源投入回数判定部16からの入力を判定し(ステップS9)、例えば、電源投入回数が奇数回である場合には、一方のLED5a(5b)を点滅駆動し、他方のLED5b(5a)の駆動を停止することとし、垂直ブランキングの期間の略中央においてLED5a(5b)からLED5b(5a)への切替を行う(ステップS10)。また、電源投入回数が偶数回である場合には、一方のLED5b(5a)を点滅駆動し、他方のLED5a(5b)の駆動を停止することとし、垂直ブランキングの期間の略中央においてLED5b(5a)からLED5a(5b)への切替を行う(ステップS11)。
また、タイミング生成部17では、駆動するLED5a,5bに応じて、液晶スイッチ9をオン状態またはオフ状態に連続して維持する。
【0052】
このように、本実施形態に係る撮影装置1によれば、照明部2からエタンデュを維持した照明光を被写体に照射して、LED5a,5bから発せられる照明光を無駄なく利用して、低消費電力で明るい画像を取得することができる。
そして、露光期間が1フレームの半分より長い場合には、液晶スイッチ9の透過率特性の変化期間が温度によって変化しても、露光期間の終点における光量の低下をなくし、かつ、露光期間の始点における光量の低下を最小限に抑えるので、光量不足や過度の光量変動の発生を未然に防止することができる。
【0053】
また、露光期間が1フレームの半分以下の場合には、液晶スイッチ9を切り替えることなく連続的にオン状態またはオフ状態に維持するので、温度変化に基づく透過率特性の変化を考慮する必要がなく、安定した高輝度の照明光を照射することができる。したがって、シャッタースピードが速い場合においても、露光期間において適正な照明光を照射して、明るい画像を取得することができる。
【0054】
さらに、電源投入回数に応じて点滅させるLED5a,5bを切り替えることにより、片方のLED5a(5b)のみの劣化が進んで、寿命による光量低下を生じてしまう不都合を防止することができる。したがって、一方のLED5a(5b)のみを点滅駆動している状態から露光期間が延びて両方のLED5a,5bを点滅駆動する状態に切り替わったときに、急激に光量が増大する不都合の発生を防止することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、液晶スイッチ9の透過率特性の変化期間の始点を撮像素子13の露光期間の終点に一致させるように制御することとしたが、これに代えて、液晶スイッチ9の透過率特性の変化期間の終点を撮像素子13の露光期間の始点に一致させるように制御することとしてもよい。また、遮光期間の略中央と透過率特性の略中央とを一致させるように制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮影装置を説明するブロック図である。
【図2】図1の撮影装置の照明部の構造と動作を説明する図である。
【図3】図2の照明部から出射される照明光の光量の時間変化を示すグラフである。
【図4】図1の撮影装置において、撮像素子の露光期間が1フレームの半分より長い場合のタイミングチャートを示す図である。
【図5】図1の撮影装置において、撮像素子の露光期間が1フレームの半分以下の場合の一方のLEDを点滅駆動する場合のタイミングチャートを示す図である。
【図6】図1の撮影装置において、撮像素子の露光期間が1フレームの半分以下の場合の他方のLEDを点滅駆動する場合のタイミングチャートを示す図である。
【図7】図1の撮影装置における制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図8】図1の撮影装置において、液晶スイッチの切替タイミングを固定した場合のタイミングチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0057】
F1,F2,F3 射出端面
1 撮影装置
2 照明部(照明手段)
3 撮影部(撮影手段)
4 制御部(制御手段)
5a,5b LED(光源手段)
7 偏光ビームスプリッタ(偏光分離手段)
9 液晶スイッチ
11 偏光ビームスプリッタ(光路合成手段)
16 電源投入回数判定部(電源投入検出部)
19 光量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滅駆動可能な2つの光源手段と、各光源手段から射出された照明光をそれぞれ直交する2つの偏光成分に分離する偏光分離手段と、該偏光変換手段により分離された2つの偏光成分を入射させ、入射された偏光成分の偏光状態を変更可能な液晶スイッチと、該液晶スイッチを透過した2つの偏光成分の光路を合成する光路合成手段とを備え、前記偏光分離手段の各射出端面と前記光路合成手段の射出端面とが略等しい面積を有する照明手段と、
該照明手段から出射される照明光の光量を検出する光量検出手段と、
前記照明手段から出射された照明光により照明された被写体を撮影する撮影手段と、
該撮像手段の露光期間が1フレームの半分より長い場合に、前記光量検出手段により検出された光量に基づいて、前記液晶スイッチの切替に基づく透過率特性の変化の始点または終点が、前記露光期間の終点または始点にほぼ一致するように、前記光源手段の点滅および前記液晶スイッチの切替タイミングを制御する制御手段とを備える撮影装置。
【請求項2】
点滅駆動可能な2つの光源手段と、各光源手段から射出された照明光をそれぞれ直交する2つの偏光成分に分離する偏光分離手段と、該偏光変換手段により分離された2つの偏光成分を入射させ、入射された偏光成分の偏光状態を変更可能な液晶スイッチと、該液晶スイッチを透過した2つの偏光成分の光路を合成する光路合成手段とを備え、前記偏光分離手段の各射出端面と前記光路合成手段の射出端面とが略等しい面積を有する照明手段と、
該照明手段から出射される照明光の光量を検出する光量検出手段と、
前記照明手段から出射された照明光により照明された被写体を撮影する撮影手段と、
該撮像手段の露光期間が遮光期間より長い場合に、前記光量検出手段により検出された光量に基づいて、前記液晶スイッチの切替に基づく透過率特性の変化期間が、前記遮光期間内に配されるように、前記光源手段の点滅および前記液晶スイッチの切替タイミングを制御する制御手段とを備える撮影装置。
【請求項3】
前記撮像手段の露光期間が1フレームの半分以下の場合に、前記制御手段が、いずれか一方の光源手段のみを点滅させるとともに、他方の光源手段の点灯を停止し、前記液晶スイッチの切替を停止するよう制御する請求項1または請求項2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記光源手段の電源投入を検出する電源投入検出部を備え、
前記制御手段が、前記電源投入検出部からの検出信号に基づいて、前回の電源投入時に点滅させた光源手段とは異なる光源手段のみを点滅させるよう制御する請求項3に記載の撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−299095(P2008−299095A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145200(P2007−145200)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】