説明

操作ペダル

【課題】運転キャビン内の足元スペースを確保することが可能であるとともに、運転席に着座したオペレータの下方視界の低下を防ぐことが可能な操作ペダルを提供する。
【解決手段】オペレータによって揺動操作される操作ペダル53は、運転席の前方に前後方向に揺動可能に設けられ、後方に下がって傾斜した踏面を有した前部ペダル53aと、前部ペダル53aの後端側に枢結されて取り付けられ、前部ペダル53aとの枢結部を中心に前後方向に回動可能な後部ペダル53bとを備え、後部ペダル53bは、後方へ回動して踏面が前部ペダル53aの踏面と略同一平面となる通常位置で前部ペダル53aに係止保持可能であり、且つ、前方へ回動して前記踏面が前部ペダル53aと近接した折畳み位置で前部ペダル53aに係止保持可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーショベル等の作業用車両の運転キャビン内に設けられ、運転席に着座したオペレータによって足踏み操作される操作ペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削したり、掘削した土等を移動させる場合、例えば、アームの先端部に揺動自在に枢支されたバケットを有するパワーショベルが使用されている。このパワーショベルは、左右一対の履帯を有した走行装置を備えた走行台車と、走行台車上に旋回可能に設けられた旋回台と、旋回台の前部に枢支されたパワーショベル機構と、旋回台の上部に設けられた運転キャビンとを有して構成されている。運転キャビン内には、パワーショベル機構側を向いて運転席に着座したオペレータの手動操作によって走行装置を操作するための走行レバーおよび、走行台車に対する旋回台の旋回操作やパワーショベル機構の操作を行うための操作レバーを備えている。
【0003】
このようなパワーショベルでは、掘削等の作業時において操作レバーと走行レバーとの操作が同時に求められる場合が多々あるが、これらのレバーを同時に操作することは困難であった。そのため、走行レバー又は操作レバーの下部にオペレータによって足踏み操作される操作ペダルを設け、走行レバー又は操作レバーに代えて操作ペダルによって走行装置又はパワーショベル機構等を操作可能に構成し、操作レバーと走行レバーとを同時に操作する際に一方のレバー操作を操作ペダルによって代わりに操作することができ、オペレータによる操作を容易にしている(例えば、特許文献1およぶ特許文献2を参照)。そして、このような操作ペダルは、オペレータによって足踏み操作されるものであり、踏み易く快適な操作性を得るために、ある程度大きな踏面を有することが求められる。
【0004】
しかし、踏面の大きな操作ペダルを設けた場合、足元スペースが小さくなるため運転キャビン内が狭く感じられ、運転キャビン内の居住性が低下するという問題があった。そこで、図7(a)に示すように、操作ペダル103が、前端部を中心に前後方向に回動可能に走行レバー102の下端側に取り付けられ、図中において二点差線で示すように運転キャビンの床面に対して略垂直となる跳ね上げ位置で走行レバー102に係止保持可能に構成されたものが知られている。この操作ペダル103では、例えば、作業現場への移動走行時など操作レバーを操作する必要がなく、走行レバー102のみを操作すればよい場合(操作レバーと走行レバー102とを同時に操作する必要がなく、操作ペダル103による操作を必要としない場合)に、操作ペダル103を跳ね上げ位置に移動させることで運転キャビン内の足元スペースを広く確保することができる。
【特許文献1】特開平5‐86756号公報
【特許文献2】特開平11‐324021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パワーショベル等の作業用車両において、掘削等の作業時または作業現場への移動走行時には、特に下方視界を確保することが必要である。しかしながら、上述の操作ペダル103では、跳ね上げ位置に移動させることにより運転キャビン内の足元スペースを広く確保することができる反面、図7(a)において一点差線で示す操作ペダル103が通常位置にあるときのオペレータの下方視界Aと、操作ペダル103が跳ね上げ位置にあるときの下方視界Bとを比較して明らかなように、オペレータの下方視界が跳ね上げ位置に移動した操作ペダル103によって遮られて低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、運転キャビン内の足元スペースを確保することが可能であるとともに、運転席に着座したオペレータの下方視界を遮って低下させることがない操作ペダルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明はオペレータによって揺動操作される操作ペダルであり、運転席の前方に前後方向に揺動可能に設けられ、後方に下がって傾斜した踏面(例えば、実施形態における第1,第2前部ステッププレート55,59の表面)を有した前部ペダルと、前記前部ペダルの後端側に枢結されて取り付けられ、前記前部ペダルとの枢結部を中心に前後方向に回動可能な後部ペダルとを備え、前記後部ペダルは、後方へ回動して踏面(例えば、実施形態における第1後部ステッププレート57の表面)が前記前部ペダルの踏面と略同一平面となる通常位置で前記前部ペダルに係止保持可能であり、且つ、前方へ回動して前記踏面が前記前部ペダルと近接した折畳み位置で前記前部ペダルに係止保持可能に構成される。
【0008】
上記操作ペダルにおいて、前記後部ペダルは、前記折畳み位置で前記前部ペダルに係止保持されたときに、前記踏面の裏側の面に設けられた第2の踏面(例えば、実施形態における第2後部ステッププレート58の表面)が前記前部ペダルの踏面と略同一平面となるように構成されることが好ましい。
【0009】
上記操作ペダルにおいて、前記前部ペダルおよび前記後部ペダルの踏面に滑り止め(例えば、実施形態における滑り止め用突起55c,57b)が設けられるとともに、前記後部ペダルの前記第2の踏面にも前記滑り止め(例えば、実施形態における滑り止め用突起58a)が設けられることが好ましい。
【0010】
上記操作ペダルにおいて、前記オペレータによって手動操作される操作レバー(例えば、実施形態における走行操作レバー52)が前記前部ペダルに繋がって備えられ、前記前部ペダルおよび前記後部ペダルの足踏み操作に代えて、前記操作レバーによって操作可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る操作ペダルによれば、運転席の前方に前後方向に揺動可能に設けられ、後方に下がって傾斜した踏面を有した前部ペダルと、前部ペダルの後端側に枢結されて取り付けられ、前部ペダルとの枢結部を中心に前後方向に回動可能な後部ペダルとを備え、後部ペダルが、後方へ回動して踏面が前部ペダルの踏面と略同一平面となる通常位置で前部ペダルに係止保持可能であり、且つ、前方へ回動して前記踏面が前部ペダルと近接した折畳み位置で前部ペダルに係止保持可能に構成される。この構成によれば、操作ペダルによる操作を必要としない場合には、後部ペダルを前方へ回動させて踏面が前部ペダルと近接した折畳み位置に移動させることが可能である。このように後部ペダルを折畳み位置に移動させることにより、運転キャビン内の足元スペースを広く確保することができるとともに、運転席に着座したオペレータの下方視界を折畳み位置に移動した後部ペダルにより遮って低下させることがない。
【0012】
上記操作ペダルにおいて、後部ペダルは、折畳み位置で前部ペダルに係止保持されたときに、踏面の裏側の面に設けられた第2の踏面が前部ペダルの踏面と略同一平面となるように構成されることが好ましい。このように構成すると、後部ペダルを折畳み位置に移動させた状態であっても、後部ペダルの第2の踏面と前部ペダルの踏面とによってフラットな踏面が保たれるため、オペレータは操作ペダルに少なくとも前方への踏込み操作を容易に行うことができる。なお、作業用車両において走行操作を操作ペダルによって行う場合、前方への踏込み操作による前進時の走行操作の場合が多い。
【0013】
上記操作ペダルにおいて、前部ペダルおよび後部ペダルの踏面に滑り止めが設けられるとともに、後部ペダルの第2の踏面にも滑り止めが設けられることが好ましい。このように構成すると、後部ペダルが通常位置または折畳み位置のどちらの位置にある状態であっても、各踏面に設けられた滑り止めによりオペレータの操作性を向上させることができる。
【0014】
上記操作ペダルにおいて、オペレータによって手動操作される操作レバーが前部ペダルに繋がって備えられ、前部ペダルおよび後部ペダルの足踏み操作に代えて、操作レバーによって操作可能に構成されることが好ましい。このように構成すると、オペレータは作業状況に応じて操作ペダルと操作レバーとを使い分けることができ、オペレータによる作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本発明を適用した一例として、地盤を掘削したり掘削した土砂等を移動させる際に使用するクローラ型のパワーショベル車1を図1に示し、まず、このパワーショベル車1の全体構成について説明する。なお、説明の便宜上、図中に示す前後、左右および上下と書いた矢印の方向を、以下の説明においてそれぞれ前後方向、左右方向および上下方向とする。
【0016】
パワーショベル車1は、左右一対のクローラ式走行機構を有した走行装置30と、走行装置30の上に旋回機構35により水平旋回可能に設けられた車両本体10と、車両本体10の前部に水平旋回(水平揺動)可能に取り付けられたパワーショベル機構20とから構成される。
【0017】
走行装置30は、それぞれ駆動スプロケット32と従動スプロケット33とに掛け回された履帯34から構成されるクローラ機構を、走行フレーム31の左右に設けて構成される。走行フレーム31の中央上部に旋回機構35が設けられている。この旋回機構35により水平旋回可能に支持される車両本体10は、車体フレーム11の上に運転キャビン12、エンジン等の動力装置13等を配設して構成され、車体フレーム11の前端に前方に突出して本体側枢結部15が形成されている。
【0018】
パワーショベル機構20は、本体側枢結部15に水平旋回(水平揺動)自在に枢結されたスイング側枢結部25と、このスイング側枢結部25に垂直面内で上下揺動可能に枢結されたブーム21と、ブーム21の先端に同一垂直面内で上下に揺動可能に枢結されたアーム22と、アーム22の先端に同一垂直面内で上下に揺動可能に枢結されたバケット23とから構成される。さらに、ブーム21を上下揺動させる左右一対のブームシリンダ21a,21aがブーム21を左右に挟んだ状態で、且つスイング側枢結部25とブーム21とを繋いで配設され、アーム22を上下揺動させるアームシリンダ22aがブーム21とアーム22とを繋いで配設され、バケット23を上下揺動させるバケットシリンダ23aおよびリンク23bが図示のようにアーム22とバケット23とを繋いで配設されている。なお、スイング側枢結部25を水平旋回させるスイングシリンダ(図示せず)が車体フレーム11とスイング側枢結部25とを繋いで配設されている。
【0019】
動力装置13は、エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ、制御バルブ類等から構成され、運転キャビン12に搭乗したオペレータが運転キャビン12内に設けられている操作装置を操作すると、この操作に応じて制御バルブ類の作動制御がなされ、油圧ポンプから油圧をスイングシリンダ(図示せず)、ブームシリンダ21a,21a、アームシリンダ22a、バケットシリンダ23aに供給する制御が行われる。これによりオペレータの操作に応じて、車両本体10に対してパワーショベル機構20全体を左右に水平旋回させる作動、スイング側枢結部25に対してブーム21を上下揺動させる作動、ブーム21に対してアーム22を上下揺動させる作動、およびアーム22に対してバケット23を上下揺動させる作動を制御して、掘削作業を行うことができる。また、油圧ポンプから送られる油圧は、旋回機構35を旋回駆動する旋回油圧モータ、駆動スプロケット32を回転駆動する走行油圧モータにも供給され、オペレータの操作に応じて旋回機構35による車両本体10の水平旋回制御および走行装置30の駆動制御も行うことができる。
【0020】
運転キャビン12内には、図2に示すように、オペレータがパワーショベル機構20側(前方)に向いて座るオペレータシート41、オペレータシート41の左右に配設されパワーショベル機構20および旋回機構35の駆動を操作する左操作レバー45aおよび右操作レバー45b、オペレータシート41よりも前方に配設され走行装置30の駆動を操作する走行操作装置50等の各種操作装置が設けられているが、本発明は走行操作装置50に実施されており、以下これについて詳述する。
【0021】
走行操作装置50は、オペレータシート41に着座したオペレータの足踏みによって揺動操作される操作ペダル53と、操作ペダル53の揺動操作に基づいて切換え制御される走行制御用油圧弁が設けられたリモートコントロール弁機構51と、操作ペダル53に繋がって設けられた棒状の走行操作レバー52とを備え、左右一対(左右対称形)に構成される(図7(b)を参照)。走行操作レバー52は、オペレータシート41に着座したオペレータによって手動操作されるもので、この手動操作により操作ペダル53の足踏み操作に代えて走行装置30の駆動を操作することができる。オペレータは作業状況に応じて操作ペダル53と走行操作レバー52とを使い分けることができ、オペレータによる作業効率を向上させることができる。
【0022】
リモートコントロール弁機構51は、バルブケーシング51aの上端に一体に固定される取付ブラケット51bをボルト固定することで運転キャビン12の床面12a(本体フレーム11の上面)に取り付けられる。取付ブラケット51bの上面に支軸(図示せず)を介して可動部材51cが前後方向に揺動自在に軸支されている。そして、この可動部材51cの上面に操作ペダル53が取り付けられており、これによって操作ペダル53はリモートコントロール弁機構51に対して前後方向に揺動可能に設けられている。なお、リモートコントロール弁機構51は、制御バルブ類と油圧ホースを介して接続されており、操作ペダル53および走行操作レバー52の揺動方向に応じて制御バルブ類の作動を制御し、パワーショベル車1の前進走行又は後進走行を操作することができる。例えば、図2において一点鎖線で示す操作ペダル53Aおよび走行操作レバー52Aのように前方に揺動させることでパワーショベル車1を前進走行させ、二点鎖線で示す操作ペダル53Bおよび走行操作レバー52Bのように後方に揺動させることでパワーショベル車1を後進走行させる。さらに、リモートコントロール弁機構51は、操作ペダル53および走行操作レバー52の操作量に応じてパワーショベル車1の走行速度を変化させることができる。
【0023】
操作ペダル53は、図3〜5に示すように、リモートコントロール弁機構51の可動部材51cの上面に取り付けられる前部ペダル53aと、前部ペダル53aの後端側に枢結されて枢結部を中心に回動可能な後部ペダル53bとから構成される。なお、上述のように操作ペダル53は左右一対(左右対称形)に構成されているため、図3〜5では右側の操作ペダル53を図示し、操作ペダル53の構造について説明する。
【0024】
前部ペダル53aは、可動部材51cの上面に前後方向および上方に延びて設けられる板状の前部フレーム54と、前部フレーム54の前方上端面に固設された第1前部ステッププレート55と、前部フレーム54の後方上端面に固設された第2前部ステッププレート59とからなり、前部フレーム54の下端が左方に屈曲して設けられた取付部54aが可動部材51cの上面と当接した状態でボルト固定される。前部フレーム54の前方上部の右側面には、第1前部ステッププレート55の形状に応じて右方に延びるリブ54bが固設されている。前部フレーム54およびリブ54bは、後方に下がって傾斜した上端面を有しており、これらの上端面に第1前部ステッププレート55および第2前部ステッププレート59が固設される。なお、走行操作レバー52は前部フレーム54の左側面に取り付けられる(図3を参照)。
【0025】
第1前部ステッププレート55は、左右に延びる基部55aおよび基部55aの右端側が後方に屈曲した屈曲部55bを有して上方から見てL字状に形成され、前部フレーム54の前方上端面およびリブ54bの上端面に固設されている。このように第1前部ステッププレート55がL字状に形成され、且つ、前部フレーム54の上端面の中央部に形成された凹部54cにより、後述するように折畳み位置で係止保持された後部ペダル53bを受容可能になっている。第2前部ステッププレート59は、前部フレーム54の上端面における凹部54cによりも後方に固設されている。
【0026】
なお、第1,2前部ステッププレート55,59は、上述したように前部フレーム54およびリブ54bの上端面に固設されるため、第1前部ステッププレート55(基部55aおよび屈曲部55b)および第2前部ステッププレート59の表面(上面)は後方に下がって傾斜しており、これらの表面がオペレータによって足踏み操作される際の踏面となる。基部55aの表面には、バーリング加工によって立ち上がり部を上方に突設させて形成された複数の滑り止め用突起55cを有している。
【0027】
後部ペダル53bは、前部フレーム54の後端側に枢結される後部フレーム56と、後部フレーム56の上端面(図4に示す状態における上端面)に固設された第1後部ステッププレート57と、後方フレーム56の下端面(図4に示す状態における下端面)に固設された第2後部ステッププレート58とから構成される。後部フレーム56は、前後方向に延びる板状のフレーム本体56aと、前部フレーム54の側面とフレーム本体56aとに挟持される管状の挟持部材56bとを備え、前部フレーム54を挟んで左右一対(左右対称形)に構成される。そして、後部フレーム56は、左右のフレーム本体56aと前部フレーム54の左右側面との間に挟持部材56bをそれぞれ挟持させた状態で、左右のフレーム本体56a、挟持部材56bおよび前部フレーム54の側面を左右方向に貫通して延びる枢結部材56cによって前部フレーム54の後端側に枢結され、前部フレーム54に対して枢結部材56cを軸に前後方向に回動可能に設けられている。
【0028】
なお、左右のフレーム本体56aの前端部には、前部フレーム54の側面に向かって屈曲した係止部56dが形成されており、この係止部56dが第2前部ステッププレート59の下面と当接することにより、後部フレーム56の前部フレーム54に対する前後方向の回動を規制し、後部ペダル53bを後述する通常位置および折畳み位置で前部ペダル53aに係止保持するようになっている。
【0029】
第1後部ステッププレート57は、後部フレーム56が前後方向に回動したときに第2前部ステッププレート59を受容可能な開口部57aを有する上方から見てコ字状に形成され、左右のフレーム本体56aの上端面に固設されている。第1後部ステッププレート57の表面には、上記第1前部ステッププレート55と同様に、バーリング加工によって立ち上がり部を外方に突設させて形成された複数の滑り止め用突起57bを有しており、この表面が後部ペダル53bを通常位置に保持したときにオペレータによって足踏み操作される際の踏面となる。
【0030】
第2後部ステッププレート58は、左右のフレーム本体56aの後方下端面に固設され、第1後部ステッププレート57の開口部57aを上下方向から見て塞がない大きさの矩形板状に形成されている。また、第2後部ステッププレート58の表面にも、上記第1前部ステッププレート55および第1後部ステッププレート57と同様に、バーリング加工によって形成された複数の滑り止め用突起58aを有しており、この表面が後部ペダル53bを折畳み位置に保持したときにオペレータによって足踏み操作される際の踏面となる。
【0031】
このように構成される操作ペダル53では、図3の矢印に示すように、後部ペダル53bを前部ペダル53a(前部フレーム54)に対して枢結部材56cを軸に後方に回動させると、フレーム本体56aの係止部56dが第2前部ステッププレート59の下面(枢結部材56cよりも前方の下面)と当接することにより、図4に示すように、後部ペダル53bの第1後部ステッププレート57の表面が前部ペダル53aの第1前部ステッププレート55の表面と略同一平面となる位置(この位置を、通常位置という)で、後部ペダル53bが前部ペダル53aに係止保持される。このように後部ペダル53bが通常位置にある状態で、操作ペダル53はオペレータによって前方および後方にそれぞれ揺動操作される。
【0032】
一方、後部ペダル53bを前部ペダル53a(前部フレーム54)に対して枢結部材56cを軸に前方に回動させると、フレーム本体56aの係止部56dが第2前部ステッププレート59の下面(枢結部材56cよりも後方の下面)と当接することにより、図5に示すように、後部ペダル53bが前部フレーム54に形成された凹部54c内に受容されて第2後部ステッププレート58の表面が前部ペダル53aの第1前部ステッププレート55の表面と略同一平面となる位置(この位置を、折畳み位置という)で、後部ペダル53bが前部ペダル53aに係止保持される。このように後部ペダル53bが折畳み位置にある状態であっても、操作ペダル53はオペレータによる前方への揺動操作が可能である。
【0033】
以上のような操作ペダル53によれば、例えば、作業現場への移動走行時など左右操作レバー45a,45bを操作する必要がなく、走行操作レバー52を操作すればよい場合(操作ペダル53による操作を必要としない場合)に、後部ペダル53bを前方へ回動させて第2後部ステッププレート58の表面が前部ペダル53aの第1,2前部ステッププレート55,59の表面と略同一平面となる折畳み位置に移動させることが可能である。このように後部ペダル53bを折畳み位置に移動させることにより、運転キャビン12内の足元スペースを広く確保することができるとともに、運転席41に着座したオペレータの下方視界(図7(b)に示す一点鎖線Cを参照)を、折畳み位置に移動した後部ペダル53bにより遮って低下させることがない。
【0034】
また、後部ペダル53bが折畳み位置にある状態において、第2後部ステッププレート58の表面と第1,2前部ステッププレート55,59の表面とによってフラットな踏面が保たれるため、オペレータは操作ペダル53に少なくとも前方への踏込み操作を容易に行うことができる。また、第1前部ステッププレート55および第1後部ステッププレート57の表面に滑り止め用突起55c,57bが設けられるとともに、後部ペダル53bの第2後部ステッププレート58の表面にも滑り止め用突起58aが設けられているため、後部ペダル53bが通常位置または折畳み位置のどちらの位置にある状態であっても、各ステッププレートの表面に設けられた滑り止め用突起によりオペレータの操作性を向上させることができる。
【0035】
なお、上述の実施形態において、操作ペダル53が走行装置30の駆動を操作する走行操作装置50に配設された場合を例示して説明したが、走行操作装置に配設される場合に限定されず、本発明に係る操作ペダルは、例えば、パワーショベル機構や旋回機構を操作する操作装置に配設されてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態において、前部ペダル53aおよび後部ペダル53bの形状は、上述の実施形態に限定されず種々の形状を設定することが可能であり、後部ペダルが折畳み位置に移動した際に、前部ペダルの踏面と後部ペダルの踏面とによりフラットな踏面を形成するように構成されることが好ましい。
【0037】
また、上述の実施形態において、後部ペダル53が折畳み位置に移動した際に、第2後部ステッププレート58の表面が前部ペダル53aの第1,2前部ステッププレート55,59の表面と略同一平面となる場合を例示して説明したが、図6に示す操作ペダル60のように、後部ペダル62が前部ペダル61に対して前方へ回動し、前部ペダル61の踏面61aと後部ペダル62の踏面62aとが近接対向するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る操作ペダルが適用されるパワーショベル車の全体構成を示す側面図である。
【図2】上記パワーショベル車の運転キャビン内の構成を示す一部破断の側面図である。
【図3】操作ペダルの構成を示す側面図である。
【図4】後部ペダルが通常位置にある状態を示す図であって、(a)は操作ペダルの平面図であり、(b)は操作ペダルの側面図である。
【図5】後部ペダルが折畳み位置にある状態を示す図であって、(a)は操作ペダルの平面図であり、(b)は操作ペダルの側面図である。
【図6】本発明に係る操作ペダルの他の実施例を示す側面図である。
【図7】操作ペダルとオペレータの下方視界の関係を示した図であって、(a)は、従来の操作ペダルの側面図および正面図であり、(b)は、本発明に係る操作ペダルの側面図および正面図である。
【符号の説明】
【0039】
52 走行操作レバー(操作レバー)
53 操作ペダル
53a 前部ペダル
53b 後部ペダル
55 第1前部ステッププレート
55c 滑り止め用突起(滑り止め)
57 第1後部ステッププレート
57b 滑り止め用突起(滑り止め)
58 第2後部ステッププレート
58a 滑り止め用突起(滑り止め)
59 第2前部ステッププレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータによって揺動操作される操作ペダルにおいて、
運転席の前方に前後方向に揺動可能に設けられ、後方に下がって傾斜した踏面を有した前部ペダルと、
前記前部ペダルの後端側に枢結されて取り付けられ、前記前部ペダルとの枢結部を中心に前後方向に回動可能な後部ペダルとを備え、
前記後部ペダルは、後方へ回動して踏面が前記前部ペダルの踏面と略同一平面となる通常位置で前記前部ペダルに係止保持可能であり、且つ、前方へ回動して前記踏面が前記前部ペダルと近接した折畳み位置で前記前部ペダルに係止保持可能であることを特徴とする操作ペダル。
【請求項2】
前記後部ペダルは、前記折畳み位置で前記前部ペダルに係止保持されたときに、前記踏面の裏側の面に設けられた第2の踏面が前記前部ペダルの踏面と略同一平面となることを特徴とする請求項1に記載の操作ペダル。
【請求項3】
前記前部ペダルおよび前記後部ペダルの踏面に滑り止めが設けられるとともに、前記後部ペダルの踏面の裏側の面に設けられた第2の踏面にも前記滑り止めが設けられたことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の操作ペダル。
【請求項4】
前記オペレータによって手動操作される操作レバーが前記前部ペダルに繋がって備えられ、前記前部ペダルおよび前記後部ペダルの足踏み操作に代えて、前記操作レバーによって操作可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の操作ペダル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−289168(P2009−289168A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143156(P2008−143156)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】