説明

放射源及びルミネセンス材料を有する照明装置

本発明は放射源及びルミネセンス材料を有する照明装置に関するものである。放射源と、この放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射しうる第1蛍光体を含むルミネセンス材料とを有する照明装置であって、この第1蛍光体が、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する照明装置を提供するものである。放射源としては、特に発光ダイオードを想定している。本発明は、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する赤色−琥珀色−黄色のユウロピウム(III)付活蛍光体にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、放射源と蛍光体を含むルミネセンス材料とを有する照明装置に関するものである。本発明は、このような照明装置に用いる蛍光体にも関するものである。
【0002】
より詳しくは、本発明は、ルミネセンス材料のダウンコンバージョンと、青色から紫色で発光するダイオードに蛍光体を含む発光材料を組み合わせることによる加法混色とにより、白色光を含む特定色の光を発生するための照明装置に関するものである。
【0003】
近年、発光ダイオードを放射源として利用して白色光を発生させようという様々な試みがなされてきた。赤色、緑色及び青色の発光ダイオードを用いた構成により白色光を発生させようとすると、発光ダイオードの色調、輝度及びその他の要素が変動するため所望の色調の白色光を発生させることができないという問題が存在していた。
【0004】
この問題を解決するために、蛍光体を含むルミネセンス材料により発光ダイオードの光の色を変換して可視白色照明を得る種々の照明装置がこれまで開発されてきた。
【0005】
このような白色光照明装置は、特には、3色性(RGB)のアプローチ、すなわち赤色、緑色及び青色の3色を混合させるアプローチ(この場合、出力光の後者の成分は蛍光体によって得ることもできるし、LEDの一次放射によりによって得ることもできる)か、或いは、第2の簡単な方法として、2色性(BY)のアプローチ、すなわち黄色及び青色を混合するアプローチ(この場合、出力光の黄色の2次発光成分は黄色の蛍光体により得ることができ、青色の発光成分は蛍光体によって又は青色LEDの一次放射によって得ることができる)に基づくものであった。
【0006】
例えば米国特許第5998925明細書に開示されているように、2色性(BY)のアプローチは、InGaN半導体の青色発光ダイオードを、蛍光体としてのY3Al512:Ce(YAG−Ce)と組合わせて使用している。InGaNのLEDにYAG−Ce蛍光体が被覆されており、この蛍光体により、このLEDから放射された青色光の一部が黄色光に変換される。このLEDからの他の部分の青色光は蛍光体を透過する。従って、この装置は、LEDから放射される青色光と、蛍光体から放射される黄色光との双方を発する。青色及び黄色の発光バンドが混成することによりこれが観者に白色光として知覚される。この白色光は70台半ばの代表的なCRIを有し、色温度Tcは約6000K〜約8000Kの範囲にある。
【0007】
この方法は簡便で容易に実施しうる点で有利であるが、赤色成分の量が不足しているため低い色温度では演色性に乏しく、操作電流を増大させるとカラーシフトが生じるという不利がある。従って、このような装置は理想的な照明光源ではない。
【0008】
白色LEDを製造するための3色性のRGBによるアプローチは、紫外放射UV−LEDを用いて1組の蛍光体を励起させることにより実行することができる。この方法を使用する場合、可視部分の放射スペクトルは、全て蛍光体により発生させる。このLEDにより放射された紫外放射により蛍光体を励起させて、赤色、緑色及び青色光を発生させ、更にこれら3色の光を混合させて白色光とする。しかし、励起源を紫外スペクトル範囲に移すことにより、変換プロセスにおけるエネルギー損失が増大するため放射効率が下がってしまう。また、紫外光のダメージによりパッケージ材料が経年劣化してしまうという問題もある。従って、これは、白色照明源を得るための適切な方法とは言えない。
【0009】
米国特許第6686691号明細書には、白色光を発生させるための他の3色性のランプアプローチが開示されている。この米国特許第6686691号明細書による発明は、一般的な青色発光ダイオード(LED)により励起しうる特定の赤色及び緑色蛍光体を使用した3色ランプに係るものである。この構成は、3つの光源、すなわち、2つの蛍光体から発せられた光と、LEDから発せられた未吸収の光とを混合するものである。これら各光源の電力割合を変化させることで良好な演色性を得ることができる。
【0010】
しかし、青色から紫色を放射するLEDを使用して蛍光体を励起させる蛍光体変換LEDランプに関しては、一般的な問題として、現在既知の蛍光体がこのような励起に適するように開発されておらず最適なものとなっていないことがある。
【0011】
現在既知の蛍光体は、以下の2つの用途に向けて製造され最適化されている。
(1)Hg放電による254nmの紫外放射を利用して励起を行う蛍光ランプ
(2)電子ビームによりRGB蛍光体を励起させるCRT
【0012】
このように、蛍光体変換LEDの蛍光体には新たな課題が存在している。
【0013】
特に、米国特許出願公開第2004/0000862号明細書に記載されているように、通常の赤色蛍光体、例えばY23:Eu(III)の電気光学効率は、放射源としてLEDダイを使用する照明装置に用いるには不満足なものであることが確かめられている。その理由は、これらの赤色蛍光体は300nmより上の波長の放射を僅かにしか吸収しないからである。
【0014】
従って、青色−紫色の範囲で放射する放射源により励起可能で、可視黄色−琥珀色−赤色の範囲の電磁スペクトルを発する新規なルミネセンス材料を具える照明装置を提供する必要がある。
【0015】
一般用途の照明装置では、経済的なコストで高輝度が得られることも望ましい特性とある。
【0016】
従って、本発明は、放射源と、この放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射しうる第1蛍光体を含むルミネセンス材料とを有する照明装置であって、
この第1蛍光体が、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する照明装置を提供するものである。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、白色光照明装置は、放射源として325〜495nmの範囲のピーク放射波長を有する青色発光ダイオードを具える。
【0018】
この蛍光体を有する照明装置では、325〜495nmの波長λの青色から紫色の励起放射に対する量子収率が改良される。
【0019】
イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有するこの蛍光体は、赤色−琥珀色−黄色の範囲の電磁スペクトルを放射するため、このような蛍光体を有する照明装置は、赤色−琥珀色−黄色又は白色の光を発生しうるようになる。
【0020】
ユウロピウム(III)付活蛍光体は、580〜700nmの電磁スペクトルを放射する赤色−琥珀色−黄色の波長域の狭いバンドの放射体であるため、所望の赤色、琥珀色又は黄色の波長から離れた可視スペクトルの波長では殆ど又は全く光を発生しないことが重要である。
【0021】
このように狭いバンドで放射がなされることが、照明装置の効率を向上させるのに役立つ。
【0022】
本発明の用途としては、特に、交通照明、街路照明、セキュリティ照明、オートメーション工場の照明、車両用及び交通用の信号照明並びに一般的照明がある。本発明の用途には、車両及び交通用の信号照明の他にカラーのセキュリティ照明も含まれる。
【0023】
本発明の他の態様によれば、放射源として400〜495nmの青色−紫色の範囲のピーク放射波長を有する青色発光ダイオードと、ルミネセンス材料とを有する白色発光照明装置において、このルミネセンス材料は、前記放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射しうる第1蛍光体であって、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する当該第1蛍光体と、少なくとも1つの第2蛍光体とを具える白色発光照明装置を提供するものである。
【0024】
特に、このルミネセンス材料は、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を含む第1蛍光体と、緑色蛍光体との蛍光体混合物にすることができる。
【0025】
追加の緑色蛍光体を含むこのようなルミネセンス材料の発光スペクトルは、LEDの青色−紫色光と、本発明によるユウロピウム付活酸素ドミナント型蛍光体による黄色−赤色光と共に用いることにより、必要な色温度において良好な演色性を具える高品質の白色光を得るのに適した波長を有する。
【0026】
このような緑色蛍光体は、テルビウム(III)付活蛍光体化合物の群から選択することができる。
【0027】
この緑色Tb(III)付活蛍光体は、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、LaPO4:Tb、LaPO4:Ce,Tb、(YxGd1-x3Al512:Tb(0<x<1)、CeMgAl1119:Tb、GdMgB510:Ce,Tb、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、(YxGd1-x2SiO5:Tb(0<x<1)、Gd22S:Tb、LaOBr:Tb及びLaOCl:Tbからなる群から選択するのが更に好ましい。
【0028】
第2蛍光体としてテルビウム(III)付活蛍光体を有する照明装置は、良好な色バランスの複合白色出力光を提供することができる。特に、この複合白色光出力は、通常のランプでは赤色範囲に広いバンドの放射を有するのに対して狭いバンドの放射を有する。この特性により、高いルーメン等価性を必要とする用途において理想的な装置が得られる。
【0029】
本発明の一例によれば、このルミネセンス材料に、フォトニックバンドギャップ材料と組合わせて第1蛍光体を設け、LEDから放射された一次放射をルミネセンス材料の蛍光体の位置に集中させて吸収性を増大させる。
【0030】
このルミネセンス材料は、500ナノメートルより大きな中間粒径dm1の第1蛍光体を含むようにすることができ、この場も一次放射の吸収性を増大させることができる。
【0031】
本発明の他の例によれば、ルミネセンス材料が、第1蛍光体を、透明モノリシックセラミック微細構造材料として含むようにする。
【0032】
蛍光体を透明モノリシックセラミック材料として利用することにより、励起放射に対しては材料を透明なままとして極めて強い光吸収となるよう調整しうるようになる。
【0033】
青色励起LEDランプの変換層として透明セラミック材料を利用することにより、更に次のような利点が得られる。
−ハイパワーLEDでは、熱クエンチングにつながるおそれのある蛍光材料の顕著な加熱を防止することができないが、透明セラミック材料を使用することで熱伝導性がより良好になる。また、より大きな容積が加熱されるようになる。
−ルミネセンスイオンの濃度をより低く選択することができ、それにより濃度クエンチングを防止又は低減することができる。
−例えばレンズのような光学機能部材を容易に一体化することができる。
【0034】
本発明の一例によれば、ルミネセンス材料は、中間粒径dm1の第1蛍光体と、この中間粒径dm1より小さな中間粒径dm2の第2蛍光体とを具えるものとしうる。
【0035】
本発明の他の態様によれば、放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射する蛍光体であって、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する蛍光体を提供する。
【0036】
このルミネセンス材料は、200nm〜420nmの波長のUV放射により励起されうるものであるが、約400〜495nmの波長の青色発光ダイオードから発光される青色−紫色光よればより高い効率で励起される。従って、このルミネセンス材料は、窒化物半導体発光素子の青色光を白色光に変換するのに理想的な特性を有する。
【0037】
これらの蛍光体は狭いバンドの放射体で、その放射波長範囲が20nm未満となるような狭い可視放射となり、この可視放射が支配的に位置している。
【0038】
これら蛍光体の他の重要な特性としては、
1)代表的な装置操作温度(例えば80℃)におけるルミネセンスの熱クエンチングに対する耐性があること、
2)装置の製造に使用するカプセル化樹脂との干渉性の反応がないこと、
3)可視スペクトル中での無効吸収を最小にする好適な吸収プロファイルであること、
4)装置の動作寿命に亘って光出力が時間的に安定していること、
5)蛍光体の励起及び放射特性が組成により制御的に調整されること
がある。
【0039】
ホスト格子のガドリニウムのモル比は、50モルパーセントより小さくするのが好ましい。
【0040】
更に、この蛍光体には、ビスマス(III)及びプラセオジム(III)から選択された共付活剤を含ませることができ、それにより青色光を吸収させてその吸収エネルギーをユウロピウム(III)付活剤カチオンに移動させることができる。
【0041】
アニオン性酸素含有種は、酸化物、酸硫化物、オキシハライド、ホウ酸塩、アルミン酸塩、没食子酸塩、ケイ酸塩、ゲルマニウム酸塩、リン酸塩、ヒ酸塩、バナジン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択するのが好ましい。
【0042】
蛍光体が、ホスト格子のカチオンに対して0.001〜20mol%のモル比の付活剤と、ホスト格子のカチオンに対して0.001〜2mol%のモル比の共付活剤とを有するのも好ましい。
【0043】
特に好ましくは、これら蛍光体を、(Y1-x-yGd22S:Eu、(Y1-x-yGd)VO4:Eu、(Y1-x-y-zGd)OCl:EuBi、(Y1-x-yGd)(V,P,B)O4:Eu、(Y1-x-yGd)NbO4:Eu、(Y1-x-yGd)TaO4:Eu及び(Y1-x-y-zGd23:EuBi(これらにおいて0<x<1、0<y<0.2及び0<z<0.02)からなる群から選択する。
【0044】
これらの蛍光体には、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムのフッ化物及びオルトリン酸塩と、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物と、アルミニウムの窒化物とからなる群から選択した被膜を設けることができる。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明による照明装置は、放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射する蛍光体を含むルミネセンス材料を有しており、この蛍光体は、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する。
【0046】
この蛍光体及びルミネセンス材料は広い範囲の照明用途に用いることを想定しているが、本発明は、放射源として発光ダイオード、特には青色−紫色発光ダイオードを有する照明装置に特に用いられるものであり、このような照明装置を特に参照して説明する。
【0047】
この蛍光体化合物中に存在するカチオン金属種のイットリウム及びガドリニウムの種類及び量により、当該化合物の物理的及び化学的特性の双方又はいずれか一方が決まり、酸素ドミナントホスト格子のユウロピウム(III)の局所結合環境により放射及び吸収スペクトル特性か決定される。
【0048】
アニオン性酸素含有種(すなわち酸素ドミナントアニオン)は、通常、陰イオン電荷を有する酸素含有種として規定される。酸素ドミナントアニオンを含むホスト格子は、以下の特性を有する。
a)バンドギャップが大きく、付活剤から放出された放射を吸収しない、
b)比較的堅固であるため、効率を低下させる非放射緩和につながるような格子振動を励起しにくい。
【0049】
このアニオン性酸素含有種としては、酸化物、酸硫化物及びオキシハライド、並びにホウ素、アルミニウム、ガリウム、シリコンゲルマニウム、リン、ヒ素、バナジウム、ニオブ及びタンタルのオキソアニオン又はこれらの組合わせ若しくは混合物が特に好ましい。
【0050】
代表的には、これらオキソアニオンは、個々のモノマーサブユニット[Aa+xy/2a-2-yから構成されるもので、式中、Aは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、シリコンゲルマニウム、リン、ヒ素、バナジウム、ニオブ及びタンタルから選ばれ、aはこれら各々の酸化数であり、Oは酸素であり、x+yは3又は4の整数になる。これらサブユニットは、通常の共有結合の酸素架橋結合(すなわち電子を共有する)により互いに結合することができる。
【0051】
オキソアニオンは、分離された(有限な)状態であるか、又はオリゴマーすなわち酸素架橋により限定数の隣接するオキソアニオンと結合した状態であるか、又は酸素の結合により互いに直接結合して無限の鎖状、シート状若しくは3次元フレームワーク構造になっている。
【0052】
ホスト格子は、単一のオキソアニオン種、異なるオキソアニオンの混合物、又は1つのオキソアニオン種中にホウ素、アルミニウム、ガリウム、シリコンゲルマニウム、リン、ヒ素及びバナジウムから選択された複数の元素を組合せたものとすることができる。
【0053】
例として、このような組合せとして、ホウケイ酸塩、リン酸ケイ酸塩、リン酸バナジン酸塩、リン酸タンタル酸塩、アルミノケイ酸塩及びアルミノホウ酸塩を挙げることができる。
【0054】
本発明による蛍光体のホスト格子においては、アニオン性酸素含有種を、特定の対イオン、すなわちイットリウム及びガドリニウムを含むカチオン金属種と共に使用する。
【0055】
ホスト格子内へガドリニウム(III)を組み込むことにより、共有結合及び配位子場分裂の割合が増える。その結果、イットリウム(III)のみを有する基本的なホスト格子と比べて励起(発光)バンドがより長波長側にシフトする。
【0056】
ガドリニウムを含有するホスト格子は、増感ホスト格子として優れた作用を示す。その理由は、基底状態及び励起状態の双方がホスト格子の約6eVのバンドギャップ内に存在するためである。ガドリニウムは、4f−5df遷移、すなわちf軌道のエネルギー準位に関連する電子遷移を介して放射を吸収及び発生する。f−f遷移が量子メカニズム的に禁制状態にあることで発光強度が弱くなるが、Gd(III)は、(d−軌道/f−軌道混成を介する)許容4f−5df遷移を通じて放射を顕著に吸収するため、電磁スペクトルのUVB範囲において高い発光強度を呈することが知られている。
【0057】
このホスト格子は、代表的には、主成分のイットリウムと、最大で約50モルパーセントのガドリニウムと、微量な付活成分、代表的には約0.03〜2モルパーセントの希有土類付活剤のEu(III)と、更にはビスマス及びプラセオジムから選択した共付活剤とを含むのが好ましい。
【0058】
本発明による蛍光体に特に有用な材料は、(Y1-x-yGd22S:Eu、(Y1-x-yGd)VO4:Eu、(Y1-x-y-zGd)OCl:EuBi、(Y1-x-yGd)(V,P,B)O4:Eu、(Y1-x-yGd)NbO4:Eu、(Y1-x-yGd)TaO4:Eu及び(Y1-x-y-zGd23:EuBi(これらにおいて0<x<1、0<y<0.2及び0<z<0.02)である。
【0059】
表1は、本発明による蛍光体から選択したものの色点及びルーメン等量を、2種の従来の蛍光体(イタリックで表記)と比較して示す表である。
【0060】
【表1】

【0061】
特にイットリウム及びガドリニウムのオキソアニオン化合物は、ユウロピウム(III)に対して有用なホストである。その理由は、ユウロピウム(III)の酸素連結が放射及び吸収スペクトルに大きな影響を与えるためである。オキソアニオンの電気陰性度が限定されたものとなることにより、ユウロピウムの電子状態の縮重が減少し、例えばハロゲン化物ホストにおいて発生されるのと大きく異なる放射及び吸収バンドが得られる。これらバンドは、より狭いもので、異なる相対強度及び異なる位置を有する。一般に、周囲のアニオンの電気陰性度が減少すると、放射又は吸収バンドの絶対位置及び幅がより低いエネルギーにシフトする。
【0062】
ホスト格子にガドリニウム及びイットリウムを有する蛍光体の発光スペクトルは、イットリウムのみを含む蛍光体のものと類似している。この蛍光体は、Eu(III)の4f−4f遷移による580〜700nmの狭い発光バンドを示す。
【0063】
Eu(III)のモル比zは、0.003<z<0.2の範囲とするのが好ましい。Eu(III)の割合zが0.003以下であると、Eu(III)によるフォトルミネセンスの励起発光中心の数が減るため輝度が低くなってしまい、割合zが0.2を超えると密度クエンチングが生じてしまう。密度クエンチングとは、ルミネセンス材料の輝度を増すために添加した付活剤の濃度が最適レベルを越えた場合に起こる発光強度の低下を意味する。
【0064】
ユウロピウム付活蛍光体のユウロピウムの一部を増感剤としてのビスマスに置き換えることにより、このビスマスが放射維持組成物の放射から入射エネルギー、光子又は励起電子を吸収し、付活剤が電子が放射的に弛緩する部位を形成するという効果が得られる。
【0065】
本発明によるユウロピウム(III)付活酸素ドミナント蛍光体は、電磁スペクトルのうち可視部分よりもエネルギー性の部分に応答する。
【0066】
特に、本発明によるこの蛍光材料は、200nm〜400nmの波長を有するUV放射により励起されうるものであるが、400〜495nmの波長を有する青色−紫色発光成分を放射するLEDによっても高い効率で励起する。従って、このルミネセンス材料は、窒化物半導体発光部材の青色光を白色光に変換するのに理想的な特性を有する。
【0067】
本発明によるユウロピウム(III)付活型蛍光体は、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムのフッ化物及びオルトリン酸塩と、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物と、アルミニウムの窒化物とからなる群から選択した1種以上の化合物の均一な薄肉保護層により被覆することができる。
【0068】
この保護層の厚さは、通常0.001〜0.2μmの範囲とし、放射源からの放射が、大幅なエネルギー損失を伴うことなくこの層を透過しうるような薄さにする。これら材料の被膜は、例えば、気相からの堆積又はウェットコーティング処理により蛍光体粒子上に被着させることができる。
【0069】
これらの蛍光体は、吸収特性を向上させるため、中間粒径dm1>500nmの粒度分布のものを使用するのが好ましい。蛍光体の粒径は、その蛍光体の放射吸収特性や可視放射の散乱及び吸収特性により決定されるだけでなく、基板に良好に接着する蛍光体被膜を形成する必要性によっても決められる。後者の条件は粒子を極めて小さい粒子によってのみ満足されるが、光出力は、中間粒径dm1>500nmのやや大きい粒子により向上する。
【0070】
本発明は、また、放射源と、この放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射しうる第1蛍光体を含むルミネセンス材料とを有する照明装置であって、この第1蛍光体が、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を含む照明装置にも関するものでもある。
【0071】
本発明においては、放射源及び蛍光体組成物を有しており、好ましくは他の周知の蛍光体を追加して組合わせ上述したように一次UV光又は青色光で照射した場合に特定色又は白色光が得られるようにしたいかなる構成の照明装置も想定されている。
【0072】
水銀低圧及び高圧放電ランプや、硫黄放電ランプや、分子ラジエータに基づく放電ランプのような放電ランプ及びルミネセンスランプといった放射源も本発明の蛍光体組成物と共に利用する放射源として使用することが想定されている。
【0073】
好適な放射源には、電気励起に応答して光放射を発生する任意の半導体光放射体及びその他の装置が含まれる。半導体光放射体には、特に、発光ダイオード(LED)チップ、発光ポリマー(LEP)、有機発光装置(OLED)、ポリマー発光装置(PLED)などがある。
【0074】
本発明の好適な態様によれば、放射源は、325〜495nmの範囲のピーク放射波長を有する青色−紫色発光ダイオードとする。図1に示すような、ルミネセンス材料及び放射源を有するこのような照明装置の詳細な構造を説明する。
【0075】
図1は、ルミネセンス材料を含む被膜を有するチップ型発光ダイオードを示す線図である。この装置は、放射源としてチップ型発光ダイオード(LED)1を有する。発光ダイオードのダイスは、リフレクタカップのリードフレーム2に配置されている。このダイス1は、結合ワイヤ7を介して第1端子6に接続されており、また第2端子6には直接接続されている。リフレクタカップの凹部は、本発明によるルミネセンス材料を含む被膜材料で充填されており、この材料がリフレクタカップに埋め込まれた被膜層を形成している。蛍光体は、別々に又は混合して被着されている。
【0076】
被膜材料は、代表的には、蛍光体又は蛍光体混合物をカプセル化するポリマーを含んでいる。本例では、蛍光体又は蛍光体混合は、カプセル化に対して高い安定性を呈する必要がある。ポリマーは、光の散乱が大きくなるのを防止するために光学的に透明なものとするのが好ましい。LED業界では、LEDランプを形成するための種々のポリマーが知られている。
【0077】
一例として、ポリマーは、エポキシ及びシリコン樹脂からなる群から選択する。蛍光体混合をポリマー前駆体の液体に加えることにより、カプセル化を実行しうる。例えば、蛍光体混合は粒状粉末とすることができる。蛍光体粒子をポリマー前駆体の液体に入れることにより、スラリー(すなわち粒子の懸濁液)が形成される。このカプセル化により、蛍光体混合は重合時に適所に強固に固定されることになる。一例においては、ルミネセンス材料及びLEDダイスの双方をポリマー内にカプセル化する。
【0078】
透明な被膜材料には、ディフューザと称される光拡散性の粒子を加えることができる。このようなディフューザの例は、鉱物質の充填剤であり、特に、CaF2、TiO2、SiO2、CaCO3又はBaSO4あるいは他の有機顔料である。これらの材料は、上述した樹脂に簡単な方法で加えることができる。
【0079】
本発明の一例によれば、被膜材料を、蛍光材料の屈折率範囲の屈折率を有する被膜材料から選択する。
【0080】
本発明の更に好適な例では、被膜層を2重層とし、第1蛍光体を薄膜層として設けるか、又は当該第1蛍光体をナノ粒子として有する層として設ける。この第1層は、LEDダイスと接触するように設ける。層の厚さは、効率的な吸収を行うのに十分な厚さにする必要がある。この第1層の上に、緑色−黄色で発光する蛍光体を含む第2層を設ける。
【0081】
他の例においては、LEDランプの変換層として、第1蛍光体を含むモノリシック透明セラミック材料を利用することを想定している。第1蛍光体をモノリシック透明セラミック材料として設けると、この第1蛍光体材料による吸収及び散乱が小さくなる。
【0082】
半透明から透明の光透過特性により、高エネルギー放射の変換における光収率が高くなり、ルミネセンス材料内のルミネセンス放射の透過率が確実に高くなる。
【0083】
透明セラミック材料を利用することにより、その材料の励起放射に対する透明性を維持したままで光吸収が極めて強くなるよう調整することができる。
【0084】
蛍光材料のこのような光透過特性は、最適な低残留気孔率を有する高密度セラミックによって達成することができる。結晶構造が均一でないことによる光屈折率の結晶異方性の他に、異相の含有や粒界、及び特に気孔により、ルミネセンス放射の最適な透過性は悪影響を受ける。
【0085】
透明モノリシックセラミック微細構造を有する蛍光材料は、通常のフラックス処理により得ることもできるし、或いは湿式化学法により得ることもでき、この場合、前駆体共沈物を形成して、その後これら前駆体共沈物を、好ましくは均衡圧力下で焼結することにより酸素含有モノリシックセラミックに変換する。このモノリシックセラミック材料は機械加工しうるため、光抽出性を向上させたり、レンズ及び導光作用を得たりすることができる。
【0086】
本発明による蛍光体による一次放射の吸収は、蛍光体をフォトニックバンドギャップ材料と組合わせると更に向上させることができる。
【0087】
フォトニックバンドギャップ(PBG)材料は、新しい種類の誘電体材料であり、光の波長スケールで光の流れを案内し操作することができる。フォトニックバンドギャップ材料は、誘電性の元素を周期的に配置したもの、例えば高い屈折率を有しする誘電性ホスト材料による中空球又は中空円筒であって、光の波長に匹敵する格子定数を有するものである。
【0088】
このような材料は、半導体における電子に対する禁制エネルギー範囲(バンドギャップ)と類似して、光子のエネルギースペクトルに対してバンドギャップを呈しうるものである。従って、このようなPBG材料の表面は、衝突する光に対して完全な誘電体ミラーとして作用しうる。このことにより、以前ではアクセスし得なかった曲率半径の光を2次元及び3次元的に捕捉すなわち集中させることができる。
【0089】
本発明の一例によれば、1次元的な周期配置の誘電体元素からなるフォトニックバンドギャップ材料を、蛍光層と交互に積層したPBG層として用いることができる。このPBG層は、高屈折率及び低屈折率の材料を交互に設けた2重層とすることができ、各PBG層の層厚はq=λ/4とし、蛍光層の層厚はλとする(λは青色から紫色の入射一次放射の波長である)。
【0090】
他の例によれば、蛍光体を、オパール又は逆オパールのような既知の3次元フォトニックバンドギャップ材料に組み込むこともできる。
【0091】
更に他の例によれば、3次元PBG材料が本発明の第1蛍光体材料に含まれれるようにすることも想定される。
【0092】
操作時には、ダイスに電力を供給してこれを駆動させる。ダイスが駆動すると、このダイスは一次光、例えば青色−紫色の光を発する。放出された一次光の一部は、被膜層のルミネセンス材料により完全に又は一部吸収される。次に、この一次光の吸収に応答して、ルミネセンス材料が、二次光、すなわちより長ピーク波長の変換光を発し、十分に広いバンドの主たる黄色−琥珀色−赤色と、特には顕著な割合の狭いバンドの赤色とが放射される。放出された一次光のうちの残りの未吸収部分は、この二次光と共にルミネセンス層を透過する。カプセル化部分により、未吸収の一次光及び二次光が出力光として全方位に向けられる。従って、出力光は、ダイスから発された一次光と、ルミネセンス層から発せられた二次光との複合光となる。
【0093】
本発明による照明装置の出力光の色温度又は色点(CIE色度図における色位置)は、一次光に対する二次光のスペクトル分布及び強度に応じて変化する。
【0094】
第一に、一次光の色温度または色点は、発光ダイオードを適切に選択することにより変化させることができる。
【0095】
第二に、二次光の色温度又は色点は、ルミネセンス材料の蛍光体、その粒径及び濃度を適切に選択することにより変化させることができる。更に、これらの構成においては、ルミネセンス材料に蛍光体混合物を有利に利用することができ、それにより所望の色相をより正確に設定することができ有利である。
【0096】
本発明の一例では、出力光が「白色」光に見えるようなスペクトル分布を有するものとしうる。
【0097】
本発明による白色光を発生する照明装置は、青色発光ダイオードにより発される青色放射を相補的な波長範囲に変換し、RGBの考え方に基づき3色性の白色光が得られるようにするルミネセンス材料を選択することにより有利に製造することができる。この場合、ルミネセンス材料は、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有する黄色−赤色の蛍光体と、緑色蛍光体との2種の蛍光体の混合物とすることができる。
【0098】
この赤色発光蛍光体は、特に、(Y1-x-yGd22S:Eu、(Y1-x-yGd)VO4:Eu、(Y1-x-y-zGd)OCl:EuBi、(Y1-x-yGd)(V,P,B)O4:Eu、(Y1-x-yGd)NbO4:Eu、(Y1-x-yGd)TaO4:Eu及び(Y1-x-y-zGd23:EuBi(これらにおいて0<x<1、0<y<0.2及び0<z<0.02)からなる群から選択することができる。
【0099】
この緑色発光蛍光体は、テルビウム(III)付活緑色蛍光体、特には、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、LaPO4:Tb、LaPO4:Ce,Tb、(YxGd1-x3Al512:Tb(0<x<1)、CeMgAl1119:Tb、GdMgB510:Ce,Tb、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、(YxGd1-x2SiO5:Tb(0<x<1)、Gd22S:Tb、LaOBr:Tb及びLaOCl:Tbからなる群から選択する。
【0100】
このルミネセンス材料は、中間粒径dm1の第1蛍光体と、この中間粒径dm1より小さな中間粒径dm2の第2蛍光体とを具えるものとしうる。
【0101】
更に、第2赤色ルミネセンス材料を追加的に使用して、この照明装置の演色性を向上させることができる。これらルミネセンス材料は、2種の蛍光体、即ち、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有する黄色−琥珀色−赤色蛍光体と、(Ca1-xSrx)S:Eu(0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay2-zSi5-aAla8-aa:Euz(0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1及び0<z≦0.2)からなる群から選択した赤色蛍光体との混合物とすることができる。
【0102】
最大発光波長が400〜495nmに位置する青色LEDにより特に良好な結果が得られる。イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有する蛍光体の励起スペクトルを特に考慮すると、最適条件は445〜465nmに位置することを確かめた。
【0103】
イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有する黄色−赤色発光蛍光体と、青色発光ダイオードと一緒に、赤色及び緑色蛍光体を用いることにより更に高いルーメン効率の白色発光を得ることができる。
【0104】
本例では、本発明による白色光を発生する照明装置は、2種の蛍光体の混合物を含む無機ルミネセンス材料を、発光変換カプセル部又は層を得るのに利用するシリコン樹脂と混合することにより特に好適に実現することができる。第1蛍光体(1)は赤色発光蛍光体(Y,Gd)23:Eu(III)とし、第2蛍光体(2)は赤色発光蛍光体CaS:Euとし、第3蛍光体(3)は緑色発光蛍光体(Ce,Tb)MgAl1119とする。462nmのInGaN発光ダイオードから発生した青色放射の一部は、無機ルミネセンス材料(Y,Gd)23:Eu(III)により赤色のスペクトル領域にシフトされ、結果として、青色に対して補色の波長範囲となる。462nmのInGaN発光ダイオードから発生した青色放射の他の部分は、無機ルミネセンス材料(Ce,Tb)MgAl1119により緑色のスペクトル領域にシフトされる。人間は、青色の一次光と、蛍光体混合物の多色二次光との組合せを白色光として知覚する。
【0105】
この場合、このようにして得られる白色光の色相(CIE色度図の色点)は、蛍光体の混合及び濃度を適切に選択することにより変化させることができる。
【0106】
図2は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、広いバンドの緑色蛍光体とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDの発光スペクトルを示すものである。
【0107】
図3は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、広バンドの緑色蛍光体とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDのCRI及びルーメン効率を示すものである。
【0108】
図4は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、緑色蛍光体としての(Ce,Tb)MgAl1119とを有しているTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDの発光スペクトルを示すものである。
【0109】
図5は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、緑色蛍光体としての(Ce,Tb)MgAl1119とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDのCRI及びルーメン効率を示すものである。
【0110】
ルミネセンス材料は、3種の蛍光体の混合物とすることができ、黄色−赤色の第1蛍光体として、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物、例えば(Y1-x-yGd22S:Eu、(Y1-x-yGd)VO4:Eu、(Y1-x-y-zGd)OCl:EuBi、(Y1-x-yGd)(V,P,B)O4:Eu、(Y1-x-yGd)NbO4:Eu、(Y1-x-yGd)TaO4:Eu及び(Y1-x-y-zGd23:EuBi(これらにおいて0<x<1、0<y<0.2及び0<z<0.02)と、赤色の第2蛍光体として、(Ca1-xSrx)S:Eu(0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay2-zSi5-aAla8-aa:Euz(0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1及び0<z≦0.2)からなる群から選択した蛍光体と、緑色の第3蛍光体として、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、LaPO4:Tb、LaPO4:Ce,Tb、(YxGd1-x3Al512:Tb(0<x<1)、CeMgAl1119:Tb、GdMgB510:Ce,Tb、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、(YxGd1-x2SiO5:Tb(0<x<1)、Gd22S:Tb、LaOBr:Tb及びLaOCl:Tbからなる群から選択したTb(III)付活蛍光体とを混合することができる。
【0111】
有用な第2緑色蛍光体及び第3赤色蛍光体とこれらの光学特性を表2にまとめる。
【0112】
【表2】

【0113】
本例では、本発明による白色光を発生する照明装置は、2種の蛍光体の混合物を含む無機ルミネセンス材料を、発光変換カプセル部又は層を得るのに利用するシリコン樹脂と混合することにより特に好適に実現することができる。第1蛍光体(1)は赤色発光蛍光体(Y,Gd)23:Eu(III)とし、第2蛍光体(2)は赤色発光蛍光体CaS:Euとし、第3蛍光体(3)は緑色発光蛍光体(Ce,Tb)MgAl1119とする。
【0114】
本発明の他の態様では、「黄色−赤色」光に見えるようなスペクトル分布の出力光を発する照明装置も想定している。
【0115】
一例においては、本発明による黄色−赤色光を発生する照明装置は、青色発光ダイオードにより発される青色放射が相補的な波長範囲に変換されて2色性の黄色−赤色光が構成されるようなルミネセンス材料を選択することにより有利に製造することができる。この場合、黄色光は、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有する蛍光体を具えるルミネセンス材料により得る。
【0116】
蛍光体として、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有するルミネセンス材料は、例えばUVA発光LED又は青色発光LEDのような一次UVA又は青色放射源による刺激に対して黄色成分を発生させるのに特によく適している。
【0117】
これにより、電磁スペクトルの黄色−琥珀色−赤色の領域で発光する照明装置を実現することができる。
【0118】
他の例においては、本発明による黄色発光照明装置は、青色発光ダイオードにより発される青色放射が相補的な波長範囲に変換されて2色性の黄色−赤色光が構成されるようなルミネセンス材料を選択することにより有利に製造することができる。
【0119】
この例では、黄色−赤色光は、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有するルミネセンス材料により得る。
【0120】
最大発光波長が400〜480nmに位置する青色LEDにより特に良好な結果が得られる。イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物を有する蛍光体の励起スペクトルを特に考慮すると、最適条件は445〜465nmに位置することを確かめた。
【0121】
462nmのInGaN発光ダイオードから発生された青色放射の一部は、無機ルミネセンス材料により黄色−赤色のスペクトル領域にシフトされ、結果として、青色に対して補色の波長範囲になる。人間は、青色の一次光と黄色−赤色蛍光体により発せられる多量の二次光との組合せを黄色−赤色として知覚する。
【0122】
LED−蛍光体装置の色出力は蛍光体層の厚さに極めて影響されやすい。蛍光層が、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を具えるアニオン性酸素含有種のユウロピウム(III)付活化合物の黄色−赤色蛍光体を過剰に含み、且つ厚肉であると、この厚肉の蛍光層を透過する青色LEDの光量が少なくなる。この場合、蛍光体による黄色−赤色の二次光が支配的になるため、複合LED−蛍光体装置は黄色−赤色に見える。従って、蛍光層の厚さは、装置の色出力に影響を及ぼする臨界的な変数である。
【0123】
このようにして得られる黄色−赤色光の色相(CIE色度図の色点)は、蛍光体の混合及び濃度を適切に選択することにより変化させることができる。
【0124】
本発明による赤色光を発生する照明装置は、過剰量の無機ルミネセンス材料(Y,Gd)23:Eu(III)を、ルミネセンス変換カプセル部又は層を得るのに利用するシリコン樹脂と混合することにより特に好適に実現することができる。462nmのInGaN発光ダイオードから発生された青色放射の一部は、無機ルミネセンス材料(Y,Gd)23:Eu(III)により赤色のスペクトル領域にシフトされ、結果として、青色に対して補色の波長範囲になる。人間は、青色の一次光と、この赤色蛍光体の過剰な二次光との組合せを赤色−シアン色光として知覚する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、LED構造体により放出される光の経路に配置された本発明の蛍光体を有する2色性の白色LEDランプを示す線図である。
【図2】図2は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、広いバンドの緑色蛍光体とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDの発光スペクトルを示すグラフである。
【図3】図3は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、広いバンドの緑色蛍光体とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDのCRI及びルーメン効率を示すグラフである。
【図4】図4は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、緑色蛍光体としての(Ce,Tb)MgAl1119とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDの発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】図5は、青色発光LEDダイ(460nm)と、赤色発光蛍光体としての(Y,Gd)23:Eu(III)と、緑色蛍光体としての(Ce,Tb)MgAl1119とを有するTc=2500K(CRI=76)の白色発光LEDのCRI及びルーメン効率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射源と、この放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射しうる第1蛍光体を含むルミネセンス材料とを有する照明装置において、
この第1蛍光体が、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記放射源は、325〜495nmの範囲のピーク放射波長を有する発光ダイオードである照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の照明装置において、
前記ルミネセンス材料は、更に第2蛍光体を含む照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置において、
前記第2蛍光体は、テルビウム(III)付活化合物からなる群から選択した緑色蛍光体である照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置において、
前記第2蛍光体は、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、LaPO4:Tb、LaPO4:Ce,Tb、(YxGd1-x3Al512:Tb(0<x<1)、CeMgAl1119:Tb、GdMgB510:Ce,Tb、(YxGd1-x)BO3:Tb(0<x<1)、(YxGd1-x2SiO5:Tb(0<x<1)、Gd22S:Tb、LaOBr:Tb及びLaOCl:Tbからなる群から選択されたものである照明装置。
【請求項6】
請求項1に記載の照明装置において、
前記ルミネセンス材料は、フォトニックバンドギャップ材料と組合わせた前記第1蛍光体を含む照明装置。
【請求項7】
請求項1に記載の照明装置において、
前記ルミネセンス材料は、中間粒径dm1>500ナノメートルの第1蛍光体を有する照明装置。
【請求項8】
請求項1に記載の照明装置において、
前記ルミネセンス材料は、透明モノリシックセラミック微細構造を呈する前記第1蛍光体を含む照明装置。
【請求項9】
請求項1に記載の照明装置において、
前記ルミネセンス材料は、中間粒径dm1の第1蛍光体と、この中間粒径dm1より小さな中間粒径dm2の第2蛍光体とを具える照明装置。
【請求項10】
放射源により放射される光の一部を吸収し、この吸収された光と異なる波長の光を放射する蛍光体であって、
この蛍光体が、イットリウム(III)及びガドリニウム(III)を含むカチオン金属種を有するアニオン性酸素含有種の化合物から選択したホスト格子の付活剤としてユウロピウム(III)を有する蛍光体。
【請求項11】
請求項10に記載の蛍光体において、
ホスト格子のガドリニウムのモル比が50モルパーセントより小さい蛍光体。
【請求項12】
請求項10に記載の蛍光体において、
この蛍光体が更に、ビスマス(III)及びプラセオジム(III)から選択した共付活剤を有する蛍光体。
【請求項13】
請求項12に記載の蛍光体において、
前記アニオン性酸素含有種は、酸化物、酸硫化物、オキシハライド、ホウ酸塩、アルミン酸塩、没食子酸塩、ケイ酸塩、ゲルマニウム酸塩、リン酸塩、ヒ酸塩、バナジン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択されたものである蛍光体。
【請求項14】
請求項12に記載の蛍光体において、
この蛍光体が、ホスト格子のカチオンに対して0.001〜20mol%のモル比で前記付活剤を有する蛍光体。
【請求項15】
請求項12に記載の蛍光体において、
この蛍光体が、ホスト格子のカチオンに対して0.001〜2mol%のモル比の共付活剤を有する蛍光体。
【請求項16】
請求項12に記載の蛍光体において、
この蛍光体が、(Y1-x-yGd22S:Eu、(Y1-x-yGd)VO4:Eu、(Y1-x-y-zGd)OCl:EuBi、(Y1-x-yGd)(V,P,B)O4:Eu、(Y1-x-yGd)NbO4:Eu、(Y1-x-yGd)TaO4:Eu及び(Y1-x-y-zGd23:EuBi(これらにおいて0<x<1、0<y<0.2及び0<z<0.02)からなる群から選択されたものである蛍光体。
【請求項17】
請求項12に記載の蛍光体において、
この蛍光体には、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムのフッ化物及びオルトリン酸塩と、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物と、アルミニウムの窒化物とからなる群から選択した被膜が設けられている蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−508707(P2008−508707A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523212(P2007−523212)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052442
【国際公開番号】WO2006/013513
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】