説明

放射線撮像システム

【課題】無線通信手段を備えた放射線システムにおいて、無線通信が失敗した場合においても、X線連携を確実に行い、被検体に無駄なX線放射を行うことがない放射線撮像システムを得る。
【解決手段】放射線撮像システムは、放射線発生装置Rと、放射線画像検出部22と、撮像制御手段30と、照射検知手段220bと、画像処理部13とを有し、撮像制御手段30は、放射線発生装置Rからの放射線照射開始の制御信号の入力があった場合、および照射検知手段220bによる放射線の照射の検知があった場合に、制御信号や検知に基づいて検出素子を電荷蓄積状態へ移行させ、画像処理部13は、撮像制御手段30が放射線照射開始の制御信号の入力により電荷蓄積状態へ移行させた場合に画像信号に第1の画像処理を施し、撮像制御手段30が照射検知手段220bによる放射線の照射の検知により電荷蓄積状態へ移行させた場合に画像信号に第2の画像処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に放射線を照射し、被検体を透過した放射線を検出する放射線撮像システムに関し、とくに無線通信手段を用いた放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に放射線を照射し、被検体を透過した放射線を検出して放射線画像を得る方法としては、近年、デジタル方式の放射線撮像装置が用いられている。このような放射線撮像装置としては、いわゆるFPD(Flat Panel Detetector)がある。
【0003】
FPDとは、基板上に複数の検出素子を2次元的に配列したものであり、被検体を透過した放射線が蛍光体(シンチレータ)に照射され、照射された放射線量に応じて発光する可視光を検出素子により電荷に変換してコンデンサに蓄積し、コンデンサに蓄積した電荷を読み出すことにより放射線画像を得るものである。
【0004】
このようなFPDにおいては、放射線の照射がされていない場合にも、コンデンサに微量の電荷が蓄積する現象がある。いわゆる暗電流と称されるものであるが、この暗電流現象によりコンデンサに蓄積された電荷は、放射線画像を得る上ではノイズとなり画像に悪影響を及ぼす。この暗電流の影響を極力少なくするためには、撮影時に、放射線の照射とFPDを同期させることが重要となってくる。
【0005】
放射線の照射とFPDを同期させる(以下、X線連携と称す)とは、放射線発生装置から放射線照射前までは、FPDのコンデンサの電荷をリセットさせておく掃き出し状態にしておき、放射線照射開始のタイミングに合わせて、コンデンサを電荷蓄積状態に変更し、放射線照射終了に合わせてコンデンサに蓄積した電荷の読み出しを行うものである(特許文献1参照)。
【0006】
また、FPDとしては近年、可搬性のカセッテ型FPDが用いられるようになっており、カセッテ型FPDでは可搬性と、撮影した放射線画像データを即時確認するという点で有用な、放射線発生装置とカセッテ型FPDとを無線により通信する無線通信手段を備えた放射線システムが提案されている(特許文献2参照)。特許文献2においては、さほど高速性は要求されていないコマンド通信や撮影タイミング制御或いはプレビュー画像の転送には、無線通信方式を利用し、大容量、高速を必要とする診断用の詳細画像の転送には、光ファイバー等のケーブルを使用した有線通信方式を利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−131337号公報
【特許文献2】特開2002−240895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし無線通信では、患者のポジションやカセッテに内蔵された無線通信手段の位置によっては、通信が一時的に遮断されて、放射線発生装置とカセッテ型FPDとの通信に通信失敗し、前述のX線連携が正常に行えない場合がある。特に、放射線の照射開始時に放射線の照射とFPDとの同期が正常に行えないとFPDのコンデンサの電荷リセットや電荷蓄積がタイミングよく行えず、放射線照射を行ったのに良好な放射線画像が得られないこととなり、再撮影を行うような場合には被検体に無駄なX線放射をしたこととなる。
【0009】
本発明は上記問題に鑑み、無線通信手段を備えた放射線システムにおいて、無線通信が失敗した場合においても、X線連携を確実に行い、被検体に無駄なX線放射を行うことがない放射線撮像システムを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0011】
(1)被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段を有する放射線発生装置と、前記放射線照射手段から照射された放射線を電荷信号に変換して蓄積する検出素子を二次元状に配置した放射線画像検出部と、該放射線画像検出部の動作状態を制御する撮像制御手段と、放射線の照射を検知する照射検知手段と、前記放射線画像検出部から出力された画像信号に画像処理を施す画像処理部と、を有する放射線撮像システムであって、
前記撮像制御手段は、前記放射線発生装置からの放射線照射開始の制御信号の入力があった場合、および前記照射検知手段による放射線の照射の検知があった場合に、前記制御信号または前記検知に基づいて前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させ、
前記画像処理部は、前記撮像制御手段が前記放射線発生装置からの放射線照射開始の制御信号の入力により前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させた場合に、前記放射線画像検出部から出力された画像信号に第1の画像処理を施し、前記撮像制御手段が前記照射検知手段による放射線の照射の検知により前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させた場合に、前記放射線画像検出部から出力された画像信号に第2の画像処理を施すことを特徴とする放射線撮像システム。
【0012】
(2)前記画像処理部は、前記第2の画像処理を施す際、前記第1の画像処理を施す場合よりも前記画像信号の濃度が大きくなるように前記画像信号の濃度補正を行うことを特徴とする(1)に記載の放射線撮像システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線通信手段により放射線発生装置からの照射開始の制御信号を受信せず、かつ照射検知手段により放射線の照射開始を検知したとき、に放射線画像検出部の検出素子を電荷掃き出し状態から電荷蓄積状態に移行させるので、放射線発生装置とカセッテ型FPDの無線通信が失敗した場合においても、X線連携を確実に行い、被検体に無駄なX線放射を行うことがない放射線撮像システムを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る放射線撮像システムの概略図である。
【図2】撮像装置Fの外観図である。
【図3】撮像パネル22の回路構成を示す模式図である。
【図4】実施形態に係る放射線撮像システムの制御フローを示す図である。
【図5】実施形態に係る放射線撮像システムのタイミングチャートである。
【図6】X線連携の制御処理を示すシーケンスチャートである。
【図7】他の実施形態に係るX線連携の制御処理を示すシーケンスチャートである。
【図8】通信エラー発生時の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0016】
図1は、実施形態に係る放射線撮像システムの概略図である。放射線撮像システムは、放射線発生装置Rと撮像装置Fとコンソール部1を備えている。図1に示すように放射線撮像システムはコンソール部1を操作することにより各種設定が行われ、設定された条件に基づいて放射線発生装置Rから放射線が照射される。被検体2を透過した放射線を撮像装置Fで検出して、放射線の情報をデジタル画像信号に変換する。
【0017】
コンソール1、放射線発生装置R、撮像装置Fは、それぞれに通信手段151、無線通信手段45を有しており、通信ネットワークNを介して通信を行う。通信方式としては、例えば、イーサーネット方式のLANを用いる。
【0018】
[コンソール部]
コンソール部1は、制御部12、画像処理部13、メモリ14、表示入力部16、通信手段151を有する。表示入力部16は、各種の情報を表示するLCD等の表示画面と、キーボードあるいはLCDに重ねて配置したタッチパネル等の入力部を備えていて、撮像条件や被検体情報の入力、あるいはこれらと放射線画像の表示等を行う。これら表示入力部16が警告通知手段としても機能する。画像処理部13では、撮像装置Fで取得した画像信号(画像データ)に対して、濃度ゲイン調整、空間周波数変換等の画像処理を行うことができる。
【0019】
制御部12は、CPU、システムメモリ等から構成され、システムメモリに記憶されている各種プログラムをCPUが実行することにより各種の制御を行う。
【0020】
[放射線発生装置]
放射線発生装置Rは、放射線照射手段11、制御部12、通信手段151を有する。放射線照射手段11は、重金属からなる陽極を有し、フィラメントに高電圧、例えば20kv〜150kvを印加することにより電子線を発生させ、電子線を陽極(ターゲット)に当てることにより放射線を発生させる。陽極は、固定陽極あるいは、耐久の点ですぐれる回転陽極が用いられる。実施形態で使用される放射線は、例えば波長が1×10-10m程度のX線が使用される。
【0021】
[撮像装置]
撮像装置Fは、無線通信手段45を有しており、放射線室の内部に設置されている無線アクセスポイント15を経由することにより無線通信を行う。無線通信方式は、IEEE802.11規格に準拠した無線LAN方式を用いるが、これに限られずUWB(UltraWideBand)、Blutooth等の他の電波方式あるいは、赤外線通信等の光学方式のものを用いてもよい。
【0022】
図2は、撮像装置Fの外観図である。図1と共通する部分に関しては同符号を付している。撮像装置Fは、可搬型の撮像装置でありいわゆるFPD(Flat Panel Detetector)と称されるものである。撮像装置Fは、図2に示すようにシンチレータ21、撮像パネル22、信号選択回路27、撮像制御手段30、走査駆動回路301、電源部42、コネクタ43、メモリ部44を有する。これらは筐体41に収納されている。
【0023】
シンチレータ21は、放射線照射手段11から照射された放射線量に応じて可視光を発光する。発光した可視光を撮像パネル22で光量に応じたデジタル画像信号に変換し、そのデジタル画像信号を読み出してメモリ部44に一時的に記憶する。CPU、システムメモリを有する撮像制御手段30は、システムメモリに記憶しているプログラムをCPUが実行することにより撮像装置F全体の制御を行う。バッテリからなる電源部42は、撮像装置F全体への電力供給を行う。コネクタ43は、撮像終了後に、撮像装置Fと物理的に接続することにより、放射線発生装置Rとの間でデータ通信(有線通信)、及び電源部42への充電等を行う。
【0024】
撮像パネル22は、照射された放射線の強度に応じて蓄積された電気エネルギー、を読み出す走査駆動回路301と、蓄積された電気エネルギーを画像信号として出力する信号選択回路27と接続されている。なお、筐体40の内部や走査駆動回路301、信号選択回路27、撮像制御手段30、メモリ44、無線通信手段45等は、図示しない放射線遮蔽部材で覆われており、筐体40の内部での放射線散乱や、各回路への放射線照射を防止する。
【0025】
図3は、撮像パネル22の回路構成を示す模式図である。図示のとおり撮像パネル22は光を電気信号に変換する複数の受光素子(以下検出素子と称す)220が2次元配置されており、一つの検出素子220は放射線画像の1画素に対応する。これらの画素は例えば200〜400dpi(dots per inch)の密度で、被検体の撮影領域の大きさに渡って配置されている。
【0026】
また、受光素子220間には走査線(横ライン)223と信号線(縦ライン)224とが配設されており、同図では両者が直交する様に格子状に配設されている。ここで、走査線223と信号線224とで囲まれた1つの区画を1画素とすると、撮像パネル22の画素数は、例えば、一方向にm個、もう一方向にn個配置してなる場合にはm×n個の画素数より構成されている。そして、撮像パネル22には、m×n個の画素数分に対応するコンデンサ221−(1,1)〜221−(m,n)とスイッチング素子であるトランジスタ222−(1,1)〜222−(m,n)が配置され、画素間には、走査線223−1〜223−m及び信号線224−1〜224−nが直交する様に配設されることになる。
【0027】
例えば、1つ目の受光素子内では、コンデンサ221−(1,1)にシリコン積層構造あるいは有機半導体で構成されたスイッチング素子であるトランジスタ222−(1,1)が接続する。トランジスタ222−(1,1)は、例えば、電界効果トランジスタが使用される。トランジスタ222−(1,1)のドレイン電極あるいはソース電極が検出素子220−(1,1)に接続されるとともに、ゲート電極は走査線223−1と接続される。ドレイン電極が検出素子220−(1,1)と接続する時はソース電極が信号線224−1と接続し、ソース電極が検出素子220−(1,1)に接続する時はドレイン電極が信号線224−1と接続する。また、他の画素における検出素子220、コンデンサ221及びトランジスタ222も同様に走査線223や信号線224と接続する。
【0028】
また、撮像パネル22は、図3に示す様に信号線224−1〜224−nにドレイン電極を接続した初期化用トランジスタ232−1〜232−nを設けるものもあり、この初期化用トランジスタ232−1〜232−nではソース電極を接地し、ゲート電極をリセット線231に接続する。
【0029】
撮像パネル22では、これらの回路を介して放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。すなわち、図3の撮像制御回路30が、走査線223−1〜223−m各々に、走査駆動回路25を介して読出信号RSを供給して画像走査を行い、走査線毎のデジタル画像信号を取り込み、放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。このことについて、以下詳述する。
【0030】
撮像パネル22の走査線223−1〜223−mとリセット線231は、図3に示す様に走査駆動回路301と接続する。走査駆動回路301から走査線223−1〜223−mのうち、任意の走査線223−p(pは1〜mのいずれかの値)に読出信号RSが供給されると、この走査線223−pに接続したトランジスタ222−(p,1)〜222−(p,n)がオンの状態になり、コンデンサ221−(p,1)〜221−(p,n)に蓄積した電荷を信号線224−1〜224−n上に出力する。
【0031】
信号線224−1〜224−nは、信号選択回路27の信号変換器271−1〜271−nに接続し、信号変換器271−1〜271−nでは信号線224−1〜224−n上に出力された電荷量に応じた電圧信号SV−1〜SV−nを出力し、信号変換器271−1〜271−nで出力した電圧信号SV−1〜SV−nをレジスタ272に供給する。
【0032】
レジスタ272は、信号変換器271より供給された電圧信号を順次選択し、選択された電圧信号は、アナログ/デジタル(A/D)変換器273により、12ビットないしは14ビットの1つのデジタル画像信号に変換され、このデジタル画像信号は制御回路30に供給されて、放射線画像を画素単位でデジタル画像信号に変換する。
【0033】
また、撮像パネル22の初期化を行う場合は、最初に、走査駆動回路301からリセット信号RTがリセット線231に供給されて初期化トランジスタ232−1〜232−nをオンの状態にした後、走査線223−1〜223−mに読出信号RSを供給してトランジスタ222−(1,1)〜222−(m,n)をオンの状態にする。そして、コンデンサ221−(1,1)〜221−(m,n)に蓄えられていた電荷を初期化トランジスタ232−1〜232−nを介して放出することにより撮像パネル22の初期化を行う。
【0034】
ここで、「電荷掃き出し状態」、「電荷読み出し状態」、「電荷蓄積状態」の各状態について説明する。「電荷掃き出し状態」とは前述の初期化を所定の間隔で連続して実行している状態のことであり、「電荷読み出し状態」とは、各コンデンサ221に蓄積した電荷を順次信号線に出力して、レジスタ272を介してデジタル画像信号に変換する状態のことであり、「電荷蓄積状態」とは、これら初期化あるいは読み出しをせずに放射線の照射にともない変換された電荷を各コンデンサ221に蓄積しつづける状態、いわゆる露光を行っている状態のことをいう。なおこれらの状態の変更制御は、撮像制御手段30(走査駆動回路301を含む)により実行される。
【0035】
なお、上記実施形態においては、シンチレータを用いて放射線を間接的に検知する間接型FPDについて説明を行ったが、これに限られず、光電変換素子が放射線を直接、電気信号に変換する直接型FPDを用いてもよい。
【0036】
[照射検知手段]
本実施形態においては、撮像パネル22(放射線画像検出部)の複数の検出素子220のうち、その一部を「照射検知手段」として用いている。具体的には、走査ライン223に沿った任意の1行(例えばp行)の検出素子220を一組として放射線照射手段の照射時間よりも短い周期で、走査線223−pに読出信号RSを供給して、電荷の読み出しを連続して行うように制御することにより、照射検知手段として用いる。放射線の照射時間としては、例えば数十msec〜数百msecであり、照射検知手段として用いる際の読み出し周期はそれよりも一桁以上短い周期、例えば0.1msec〜数msecの周期に設定している。
【0037】
照射検知手段は、撮像パネル22の全走査ライン223に対して223−1〜223−m間で、例えば数十から百ラインに対して一ライン程度の間隔で全範囲に渡って配置させている。図2に示す例においては、B群検出素子220bが照射検知手段に相当する。撮像パネル22の全画素(検出素子220)のうち、その一部をB群検出素子の照射検知手段として機能させ、残りをA群検出素子220aとし本来の放射線画像を得るための画素として機能させている。なお、図2においては、説明のためにB群検出素子とA群検出素子を色分けしているが、実際には両検出素子は、同一構成のものであり、適宜相互に変更可能である。
【0038】
また、B群検出素子220bは、照射検知手段として機能させている場合には、A群検出素子220aと同様の画像信号が得られないので、画像欠陥となってしまう。この影響を少なくするため全画素数(m×n個)に対するB群検出素子220bの比率は0.1%から1%程度にしている。
【0039】
なお、本実施形態では、撮像パネル22の画素のうち走査ライン223に沿った画素一組として照射検知手段として機能させる例について説明したが、これに限られずトランジスタ221のソース電極とドレイン電極を短絡させた専用のトランジスタを設け、これらを一列の信号ラインに沿って配置させることにより、照射検知手段として用いてもよい。更に、撮像パネル22の一部を照射検知手段として用いずに撮像パネル22の近傍に専用の照射検知手段を配置させるようにさせてもよい。
【0040】
次に図4から図6を用いてX線連携に関する制御について説明する。図4は、実施形態に係る放射線撮像システムの制御フローを示す図である。操作者が操作するコンソール1、放射線発生装置R、撮像装置F、間の制御フローを示したものである。
【0041】
[X線連携]
まずステップS1で操作者が、コンソール1を操作することにより撮影の指示を行う。続くステップS2では、放射線発生装置Rで撮影指示を受け付け、その指示に基づいて、放射線照射の準備(ステップS3)と撮像装置Fに無線通信により準備指示信号(sig1)を送信する。ここで行う放射線照射の準備とは、放射線照射手段11の回転陽極(ターゲット)の回転準備等である。撮像装置Fでは、準備指示信号に基づいて撮像準備として撮像パネル22を電荷掃き出し状態(初期化)にセットする(ステップS4)。準備が完了し(ステップS5)、操作者が放射線の照射を指示した場合には、照射の前に照射開始信号(sig2a)を撮像装置Fに無線通信により送信する(ステップS6)。
【0042】
ステップS7では、撮像制御手段30により、照射開始信号sig2aが無線通信手段45で受信されたか否かが判断される。照射開始信号sig2aが受信された場合には(ステップS7のYes)、撮像装置Fでは、この照射開始信号に基づいて撮像パネル22を電荷蓄積状態にセットする(ステップS10)。
【0043】
ステップS8では、放射線照射手段11により放射線の照射を開始する。この放射線の照射にともない、B群検出素子220b(以下照射検知手段とも称す)では照射されたことを検知する(sig2b)。
【0044】
その際に、ステップS7において照射開始信号を受信していない場合(S7のNo)には、撮像制御手段30により、B群検出素子220bで照射が検知されたか否かが判断される(ステップS9)。照射が検知された場合には(S9のYes)、ステップS10の処理を実行し、検知されていない場合には(S9のNo)、ステップS7の処理を実行する。
【0045】
つまり、同図の破線部の照射検知sig2bに伴うステップS9の処理は、ステップS7において、照射開始信号sig2aが正常に通信された場合には不要な処理であり、いわばバックアップ処理として行うものである。これに関しては後述の図5、図6でも説明する。
【0046】
放射線照射手段11による放射線の照射終了(ステップS11)に伴い、照射終了信号sig3aが撮像装置Fに無線通信により送信される。撮像装置Fでは、この照射終了信号sig3aに基づいて撮像パネル22を電荷蓄積状態から電荷読み出し状態に変更して、読み出した電荷をA/D変換器273によりデジタル信号に変換し、変換した放射線画像データをメモリ44に一時的に記憶させる(ステップS12)。以上までが撮像に関する放射線発生装置Rと撮像装置FとのX線連携に関するフローである。
【0047】
[撮像後の後処理]
ステップS21では、撮像装置Fは、メモリ44に記憶されている放射線画像データを無線通信手段45により、無線アクセスポイント15を経由してコンソール1に送信する。受信した放射線画像データは撮像した際の撮像条件、被検体の情報等とともに、メモリ14に記憶される。記憶した放射線画像データに対して、濃度ゲイン調整、空間周波数変換等の、必要な画像処理を画像処理部13で行い(ステップS22)。コンソール1上に表示(ステップS23)させることにより、撮像フローは終了する。
【0048】
図5は、実施形態に係る放射線撮像システムのタイミングチャートである。同図に示す制御フローは、図4のS9が実行された場合に行うものである。また、図4と異なり照射終了も照射検知手段220bの検出値により行っている(sig3b)。以下説明する。
【0049】
照射検知手段220bは、時間t0における準備指示信号sig1に応じて測定状態、つまり短い周期tcで連続して電荷の読み出しを行っている状態に移行している。なおこの時点では、放射線は照射されていないので照射検知手段220bからの出力値は暗電流にともなう微少な測定値(L1)が出力されている。
【0050】
放射線照射手段11の放射線照射がされると(時間t1)、それに応じて照射検知手段220bの検出値(L2)は増加し、時間t2における検出値はSH(スレッシュホールド)レベルを上回るので、撮像制御手段30は、放射線が照射されていると判断し、検出素子220aを電荷蓄積状態にセットする。図にしめすように検出素子の蓄積電荷量は、放射線照射量に伴い増加している。
【0051】
時間t3のタイミングで放射線の照射が終了すると、それに伴い、照射検知手段220bの検出値は減少(L1)し、時間t4における検出値はSHレベルを下回るので、撮像制御手段30は、放射線の照射が停止したと判断し、検出素子220aを電荷読み出し状態にセットする。その後は図4のステップS21以降のフローを行い終了する。
【0052】
なお、図5の説明においては一つの照射検知手段220bの出力により照射有無を判断する例について説明したが、実際には、照射検知手段220bは複数の検出素子がその機能を担っていることから、複数の検出素子をモニターすることにより判断している。
【0053】
図6は、X線連携の制御処理を示すシーケンスチャートである。図6の左側は、コンソール1、放射線発生装置R、撮像装置F、間のシーケンスを示したものであり、同図の右側は、A群検出素子220a、B群検出素子220b(照射検知手段)の状態を示したものである。なお、A群、B群とは前述のとおり、多数の検出素子(検出素子220)をA群、B群の二つに分け、そのうちのB群検出素子220bを照射検知手段として用いたものである。
【0054】
図6のシーケンスチャートにおいて、図4と共通する処理については同符号を付すことにより説明に代える。同図においては、無線通信によるsig2aの照射開始信号(予告)が、何らかの不具合により正常に行われず、通信エラーが生じた場合のシーケンスについて記載したものである。
【0055】
まず操作者からの撮像指示(S1)を受けた放射線発生装置Rは、無線通信により撮像準備信号sig1を送信する。その信号に基づいてA群検出素子220aは、電荷掃き出し状態にセットされる(状態A1)。撮像装置Fから放射線発生装置Rには、準備OK(sig15)が送信される。その信号に応じて放射線発生装置Rから、放射線の照射を開始する。
【0056】
次に、放射線発生装置Rから照射開始信号sig2aを送信したが、通信エラーにより撮像装置Fでは、その信号は受信できなかった場合でも、放射線発生装置Rの方では、あらかじめ決められた手順に従い、放射線照射手段11から放射線の照射が開始される(sig2b)。B群検出素子220bはあらかじめ測定状態となるように、B群検出素子に対応する走査線223−p(pは複数)に読出信号RSを短い周期で供給して、電荷の読み出しを連続して行うように制御することにより、照射検知手段として機能させているので、放射線照射手段11からの照射開始を検知することができる。この検知に基づいて撮像制御手段30が、A群検出素子220aを電荷掃き出し状態から電荷蓄積状態(A2)へと変更する(S10)。
【0057】
蓄積状態から、電荷読み出し状態(A3)へと変更するのは、図4と同様、照射検知手段220bの検出値(sig3b)により照射終了を判断して読み出し状態にセットする(ステップS12)。以降は、図4のステップS21のフローを実行して終了する。
【0058】
このように、無線通信手段を備えた放射線システムにおいて、無線通信が失敗した場合においても、照射検知手段により放射線の照射開始を検知したとき、に放射線画像検出部の検出素子を電荷掃き出し状態から電荷蓄積状態へ移行させることによりX線連携を確実に行い、被検体に無駄なX線放射を行うことがない、放射線撮像システムを得ることが可能となる。
【0059】
図7は、他の実施形態に係るX線連携の制御処理を示すシーケンスチャートである。図4〜図6では、撮像パネル22の検出素子の一部を照射検知手段としてとして機能させている実施例について説明した。しかし、このような場合には、その部分では本来の画像信号が得られないので、その部分は画像欠陥となってしまう。このような問題に対する対応として、図7に示す実施形態は、無線通信により正常に通信が行えた場合においては、照射検知手段として機能させているB群検出素子220bを解放して、本来の検出素子(画素)として機能させことにより画像欠陥がでることを避けるものである。同図のシーケンスでは、通常の検出素子として用いているA群検出素子220aについては、図4〜図6と同一なので説明を省略する。また図6と共通する処理については同符号を付すことにより説明に代える。以下説明する。
【0060】
照射開始信号sig2aが無線通信により正常に通信された場合には、その信号に基づいて、照射検知手段とし機能させているB群検出素子220bを、測定状態(B1)から掃き出し状態(B2)に変更し、続いて蓄積状態(B3)に変更する(S10−2)。なお照射開始信号sig2aから放射線照射開始sig2bまでの時間は、例えば数百msec程度に設定しているので、B群検出素子220bを掃き出し状態(B2)に変更してから蓄積状態(B3)への変更する制御は、その間に行うようにしている。
【0061】
そして照射終了信号sig3aに基づいてB群検出素子220b、A群検出素子220aを電荷蓄積状態から電荷読み出し状態に変更して、読み出した電荷をA/D変換器273によりデジタル信号に変換し、変換した放射線画像データをメモリ44に一時的に記憶させる(S12−2)。以降は、図4のステップS21のフローを実行して終了する。
【0062】
このように、無線通信手段により前記放射線発生装置からの放射線照射開始の制御信号を受信したときに、照射検知手段として用いている撮像パネル22(放射線画像検出部)の一部のB群検出素子220bを、電荷蓄積状態へ移行させ、通常の画素として機能させるように制御する放射線撮像システムとすることにより、無線通信が失敗した場合においてもX線連携を確実に行いつつ、正常通信時においては、画像欠陥の生じない放射線撮像システムを得ることが可能となる。
【0063】
[照射開始信号(予告)が通信エラーで通知できない場合の対応]
照射開始信号(予告)が通信エラーとなり、照射検知手段による放射線の照射の検知により検出素子を電荷掃き出し状態から電荷蓄積状態へ移行させた場合、つまり図6の事態が発生した場合についての対応について説明する。
【0064】
本来は、照射検知手段の検知によりX線連携を行うものではなく、照射の開始前に発信する照射開始信号(予告)sig2aに基づいてX線連携を行うべきものである。図6に示す制御は、無線通信エラーの異常が発生した場合に本来の機能を落としてシステムの稼働を行うものであり、いわゆるフェイルソフトともいうべきものである。
【0065】
つまり図6に示すようなシーケンスが行われた場合には、放射線照射開始してからA群検出素子220aが電荷蓄積状態となるまでには、時間t2の遅れが生じている。つまり放射線照射時間t1に応じた蓄積時間(露光時間)を確保すべきものが、時間t2分だけ短い露光時間しか露光(電荷蓄積)できなかったこととなる。この場合には、いわゆる露光不足となり本来確保すべき電気信号が得られなかったこととなる。以下は、これらの問題に対する対応を行うものである。
【0066】
図8は、通信エラー発生時の制御フローを示す図である。
【0067】
図6に示すように照射開始信号sig2aが通信エラーにより通知できず、かつ、放射線照射sig2bを照射検知手段により検知したことにより、蓄積状態A2に変更した場合(ステップS31のYes)には、次のステップS32で、異常通知を行う。これは撮像装置Fからコンソール1に通知し、その通知に基づいて、警告通知手段として機能するコンソール1の表示入力部16の表示画面に警告表示を行う。これは、何らかの障害により通信エラーが生じたことを操作者に促すことにより、続いて撮像を行う場合に同じような通信エラーが繰り返して発生するのを防ぐためである。
【0068】
ステップS32に引き続き、ステップS33で、第2の画像処理を行う。これは、放射線画像データをコンソール1に送信したのち、コンソール1の画像処理部13で画像処理を行う。第2の画像処理としては、例えば露光時間が短くなった分に応じた係数(t1/t3)を掛けることにより濃度補正を行う。図6に示すとおり、通常時において確保できる電荷蓄積時間(以下露光時間と称す)は、照射時間t1と同じ時間t1である。しかし通信エラー発生時の露光時間t3は、通常時の露光時間t1に比べて時間t2分短くなる(t3=t1−t2)。そこでステップS33においては、この不足分の露光時間の影響を補うためのものである。
【0069】
一方、通信異常が発生せずに通常のX線連携が行われた場合(ステップS31のNo)には、露光不足問題は生じないので、通常時の第1の画像処理を行えばよい(S34)。
【0070】
このように放射線照射開始の制御信号を受信したことにより前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させた場合と、照射検知手段による放射線の照射の検知により前記検出素子を電荷掃き出し状態から電荷蓄積状態へ移行させた場合と、で読み出された画像信号(放射線画像データ)に対して異なる画像処理を行うことにより、適正な放射線画像を得ることが可能な放射線撮像システムを得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
2 被検体
11 放射線照射手段
13 画像処理部
22 撮像パネル(放射線画像検出部)
220 受光素子(検出素子)
220b B群検出素子(照射検知手段)
30 撮像制御手段
R 放射線発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段を有する放射線発生装置と、
前記放射線照射手段から照射された放射線を電荷信号に変換して蓄積する検出素子を二次元状に配置した放射線画像検出部と、
該放射線画像検出部の動作状態を制御する撮像制御手段と、
放射線の照射を検知する照射検知手段と、
前記放射線画像検出部から出力された画像信号に画像処理を施す画像処理部と、
を有する放射線撮像システムであって、
前記撮像制御手段は、前記放射線発生装置からの放射線照射開始の制御信号の入力があった場合、および前記照射検知手段による放射線の照射の検知があった場合に、前記制御信号または前記検知に基づいて前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させ、
前記画像処理部は、
前記撮像制御手段が前記放射線発生装置からの放射線照射開始の制御信号の入力により前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させた場合に、前記放射線画像検出部から出力された画像信号に第1の画像処理を施し、
前記撮像制御手段が前記照射検知手段による放射線の照射の検知により前記検出素子を電荷蓄積状態へ移行させた場合に、前記放射線画像検出部から出力された画像信号に第2の画像処理を施すことを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記第2の画像処理を施す際、前記第1の画像処理を施す場合よりも前記画像信号の濃度が大きくなるように前記画像信号の濃度補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−245359(P2012−245359A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160108(P2012−160108)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2006−321322(P2006−321322)の分割
【原出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】