説明

放射線画像変換パネルの製造方法

【課題】 鮮鋭性に優れる放射線画像変換パネルの製造。
【解決手段】 真空チャンバー内で、支持体(基板)上にハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を蒸着法により蒸着する工程を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、基板の中央部をゲル状の両面粘着性物質で基板ホルダーに密着させて、基板表面温度の変動幅を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用の鮮鋭性に優れた放射線画像変換パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法が開発されている。
【0003】
即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収させ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0004】
具体的な方法としては、支持体上に輝尽性蛍光体層を設けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線及び赤外線の一方又は両方を用いる放射線像変換方法が知られている(米国特許第3,859,527号参照)。
【0005】
より高輝度、高感度の輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換方法として、例えば特開昭59-75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線像変換方法、同61-72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体を用いた放射線像変換方法が開発されており、又、同61-73786号、同61-73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+及びCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体も開発されている。
【0006】
更に、近年診断画像の解析において、より高鮮鋭性の放射線像変換パネルが要求されている。
【0007】
鮮鋭性改善の為の手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0008】
これらの試みの1つの方法として、例えば特開昭61-142497号等に記載されている微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0009】
また、特開昭61-142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62-39737号に記載されている支持体上に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62-110200号に記載に記載されているように、支持体上に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等が提案されている。
【0010】
更に、特開平2-58000号には、真空蒸着膜形成方法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが記載されている。
【0011】
また、最近、CsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来不可能であったX線変換効率の向上が可能になると期待されていた。
【0012】
しかしながら、Euは熱による拡散が顕著で、真空下における蒸気圧も高いという性質を有するため、母体中で離散しやすく、Euが母体中に、遍在して存在するという問題が発生した。その結果、Euを用いて賦活させ、高X線変換効率を得ることが難しく、市場での実用化には至らなかった。
【0013】
また、高X線変換効率が得られる希土類元素の賦活剤においては真空蒸着膜形成方法は蒸着時の加熱が基板の輻射熱となり、基盤の熱分布に影響を与える。
【0014】
この熱分布は真空度によっても変化し、熱分布によって結晶成長が不均一となり輝度、鮮鋭性に急激な乱れを生じさせ、真空蒸着形成方法では、これらの性能を制御することが難しい問題であった。
【0015】
従って、真空蒸着膜形成方法は、特に、Eu等の希土類元素を用いる場合、蒸気圧特性を制御するだけでは、高X線変換効率を達成することが困難であった。
【0016】
また、真空蒸着膜形成方法は、原材料利用効率が数%〜10%にすぎず、利用効率の低さから高価なものとなり汎用性に欠けていた。(例えば、特許文献1、2を参照)
一方、塗布型輝尽性蛍光体層中に、従来実用化されていた化合物として、BFX:Eu(X=ハロゲン原子)等のバリウムヨウ化物があり、安価であるが、該化合物は発光領域390〜410nmでの透明性が悪く、粒子表面における散乱が顕著となり、鮮鋭性を低下させるという問題があった。
【0017】
一方、特にマンモグラフィー用途に利用される場合には、高鮮鋭性が要求されるため、蛍光体層を薄膜にした放射線画像変換パネル用いる必要があり、真空蒸着膜形成方法(蒸着プレート法)で薄膜を形成し、アルカリハライド結晶を柱状化させようとすると結晶の形状が基板側で細くなり、表面側で太くなり、三角錐上の結晶が得られ、該結晶は特に120μm未満の膜厚では、蛍光体層中の蛍光体の充填率が低く、鮮鋭性、X線吸収量が極めて悪いことがわかった。(例えば、特許文献1、2を参照)
従って、市場では、輝度、鮮鋭性及びX線変換効率(X線吸収量)、特に鮮鋭性に優れる方射線画像変換パネルの製造方法が求められていた。
【特許文献1】特開平10−140148号公報
【特許文献2】特開平10−265774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、特に鮮鋭性に優れる放射線画像変換パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0020】
(請求項1)
真空チャンバー内で、支持体(基板)上にハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を蒸着法により蒸着する工程を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該基板の中央部を両面粘着性物質で基板ホルダーに密着させて、輝尽性蛍光体層を蒸着法により設けることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0021】
(請求項2)
前記両面粘着性物質がゲル状であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0022】
(請求項3)
前記ハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0023】
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
【発明の効果】
【0024】
本発明による放射線画像変換パネルの製造方法は特に鮮鋭性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を更に詳細に述べる。
【0026】
本発明は、蒸着チャンバー内で、支持体(基板)上にハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を蒸着法により蒸着する工程を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該基板の中央部を両面粘着性物質で基板ホルダーに密着させて、輝尽性蛍光体層を蒸着法により設けることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法であり、これらの構成により本発明の目的を達成することができたのである。
【0027】
上記、両面粘着性物質がゲル状であることが、本発明の効果をより奏する点から好ましい。
【0028】
本発明いうゲル状とは、固体と液体の丁度中間的な状態で、ゲルの分子構造は大きな網目状なっていて、その網目の中に液体が閉じこめられている状態のことをいう。
【0029】
常温でゲル状を呈するものであれば、化合物として特に限定されるものではなく、各種の化合物等用いることができるが、本発明においては、シリコーンゲル、エポキシ樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れるシリコーンゲルが特に好ましい。
【0030】
また、本発明のゲル状は流動性を示さないグリース状、ゼリー状のものも含む。
【0031】
両面粘着性物質としては、例えば不織布又はフィルムのような基材の両面に接着剤を挟み込んだもの、基材のない粘着剤転写テープ等が挙げられ、それらの、粘着剤はゲル状のであることが好ましい。
【0032】
厚みとしては、0.03mmの薄いテープ状のものから、5mm程度のシートものが好ましい。
【0033】
また、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成させることも可能である。更に、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いは電子線銃を用いて共蒸着し、支持体上で目的とする器蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成させることも可能である。
【0034】
また、蒸着法においては、蒸着時必要に応じて、被蒸着体(支持体、保護層又は中間層)を加熱しても良い。
【0035】
また、蒸着法においては必要に応じO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行っても良い。
【0036】
本発明において、前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体は、その母体成分M1Xよりも賦活剤成分Euの方が蒸気圧が顕著に高いために、蒸着開始直後の蒸発流は殆ど母体成分であり、逆に蒸着終了直前には賦活剤成分Euの濃度が当初の蛍光体組成比よりも高くなる傾向にある。よって、シャッタ7を一定時間閉じて蒸着開始直後の蒸発流を使用しないことにより、得られる蒸着膜中の賦活剤Eu濃度の分布(ムラ)を低減することもできる。
【0037】
このようにして、輝尽性蛍光体からなる柱状結晶がほぼ厚み方向に成長した層が得られる。蛍光体層の層厚は、通常は50〜1000μmの範囲にあり、好ましくは200μm〜700mmの範囲にある。
【0038】
なお、上記本発明の製造方法に用いられる蒸着装置は、図1に示した装置に限定されるものではなく、あるいは、上記輝尽性蛍光体からなる蒸着膜を形成するに先立って、蛍光体母体成分のみからなる蒸着膜を形成してもよい。
【0039】
これによって、柱状結晶性の良好な蒸着膜を得ることができる。なお、蛍光体からなる蒸着膜中の賦活剤など微量成分は、特に蒸着時の加熱および/または蒸着後の加熱処理によって、蛍光体母体からなる蒸着膜中に拡散するために、両者の境界は必ずしも明確ではない。
【0040】
次に、本発明に好ましく用いられる前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体について説明する。
【0041】
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体において、M1は、Li、Na、K、Rb及びCs等の各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表し、中でもRb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、更に好ましくはCs原子である。
【0042】
2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNi等の各原子から選ばれる少なくとも1種の二価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Be、Mg、Ca、Sr及びBa等の各原子から選ばれる二価の金属原子である。
【0043】
3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びIn等の各原子から選ばれる少なくとも1種の三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びIn等の各原子から選ばれる三価の金属原子である。
【0044】
AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1の金属原子であり、好ましくはEu金属原子でる。
【0045】
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンで原子を表すが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましく、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が更に好ましい。
【0046】
一般式(1)で表される化合物において、aは0≦a<0.5、好ましくは0≦a<0.01、bは0≦b<0.5、好ましくは0≦b≦10-2、eは0<e≦0.2、好ましくは0<e≦0.1である。
【0047】
蛍光体原料としては、
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0048】
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCI2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0049】
(c)Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子を有するハロゲン化合物が用いられる。
【0050】
(d)賦活剤の原料としては、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMg等の各原子から選ばれる金属原子を有する化合物が用いられる。
【0051】
一般式(1)において、前記a、b、cの数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(d)の蛍光体原料を秤量し、純水にて溶解する。
【0052】
上記の数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(d)の蛍光体原料を秤量し、純水にて溶解する。
【0053】
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
【0054】
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0055】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は保護層を有していても良い。
【0056】
保護層は保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手段を取ってもよい。
【0057】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化-塩化エチレン、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層としてもちいることもできる。これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
【0058】
また、光エネルギーで励起する際、輝尽励起光の反射光と輝尽性蛍光体層から放出される輝尽発光とを分離する必要があることと、輝尽性蛍光体層から放出される発光を受光する光電変換器は一般に600nm以下の短波長の光エネルギーに対して感度が高くなるという理由から、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光はできるだけ短波長領域にスペクトル分布を持ったものが望ましい。
【0059】
本発明の輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射線像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で、且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は680nmであることが好ましく、本発明の放射線像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、680nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0060】
即ち、本発明の輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を高めることができる。
【0061】
輝尽励起光源としては、放射線像変換パネルに使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率をあげることができ、より好ましい結果が得られる。
【0062】
レーザとしては、例えば、He-Neレーザ、He-Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe-NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。
【0063】
また、フィルタを用いずに特開昭59-22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0064】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0065】
フィルタとしては放射線像変換パネルから放射される輝尽発光を透過し、輝尽励起光をカットするものであるから、これは放射線像変換パネルに含有する輝尽性蛍光体の輝尽発光波長と輝尽励起光源の波長の組合わせによって決定される。
【0066】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C-39、C-40、V-40、V-42、V-44、コーニング社製7-54、7-59、スペクトロフィルム社製BG-1、BG-3、BG-25、BG-37、BG-38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置25としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、ほんっは爪医の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0068】
(放射線画像パネルの作製)
基板ホルダーに辺押さえをして保持された基板アルミニウムからなる支持体の片面上に輝尽性蛍光体(CsBr:0.0002Eu)を図1に示す蒸着装置1を使用して蒸着させ輝尽性蛍光体層を形成した。
【0069】
先ず、上記輝尽性蛍光体の原料を蒸着源として蒸発源ボートに充填し。また、回転する支持体ホルダ4に支持体11を設置し、支持体11と蒸発源3との間を400mmに調節した。
【0070】
続いて蒸着装置1内を一旦排気し、Arガスを導入して0.1Paに真空度をを調整した後、10rpmの速度で支持体11を回転させながら支持体温度を100℃に保持した。
【0071】
次に、蒸発源ボートを加熱して所定時間が経過した所で輝尽性蛍光体を蒸着し、輝尽性蛍光体層の膜厚が500μmとなった所で蒸着を終了させた。
【0072】
ついで、乾燥空気内で輝尽性蛍光体層を保護層袋に入れ、輝尽性蛍光体層が密封された放射線画像変換パネル(試料)1を得た。
【0073】
放射線画像変換パネル(試料)1の作製において、表1に示す条件を変更した以外は同様にして、放射線画像変換パネル(試料)2〜放射線画像変換パネル(試料)6を作製した。
【0074】
得られた、各試料について以下のような評価を行った。
【0075】
(基板温度の面内変動幅)
各試料の各測定点における最大温度の最大値、最小値の幅を12点の測定点の平均値で表したものである。
【0076】
(鮮鋭性)
各放射線画像変換パネル(試料)1〜6にCTFチャートを貼り付けた後、菅電圧80kVP・PのX線を10mR(管球からパネルまでの距離:1.5m)で照射した後、半導体レーザ光(発振波長:780nm、ビーム径:100μm)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光として、読み取り、光検出器(被価値電子増倍菅)で光電変換して画像信号を得た。この信号により、画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、比較例1を100とし相対値で示した。尚、MTFは、空間周波数が1サイクル/mmの時の値である。
【0077】
(支持体ホルダーからの取り外し性)
人が放射線画像変換パルを取り出す時間で評価した。
【0078】
◎:3分未満
○:3〜5分未満
△:8〜10分未満
×:10分以上
【0079】
【表1】

【0080】
表から明らかなように本発明の試料が比較に比して鮮鋭性点で特に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の輝尽性蛍光体層を形成するのに用いられる蒸着装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1 蒸着装置
2 真空容器
3 蒸発源源
4 支持体ホルダー
5 支持体回転機構
6 真空ポンプ
7 シャッタ
11 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー内で、支持体(基板)上にハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を蒸着法により蒸着する工程を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、該基板の中央部を両面粘着性物質で基板ホルダーに密着させて、輝尽性蛍光体層を蒸着法により設けることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記両面粘着性物質がゲル状であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕

【図1】
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【公開番号】特開2006−64433(P2006−64433A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244765(P2004−244765)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】